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参考人(五
藤齊三君) 只今御紹介を頂きました
東京精密機器工業協同組合理事長の五藤でございます。
只今
稻川さんから今度の
協同組合法の
改正案と、将来の
改正に対する
要望につきまして、詳しく御証言があつたのでありまして、私のほうの言わんとすることはことごとく盡して頂いたように思
つておるのであります。ただ一、二の点に関しまして、
稻川さんのお触れにならなかつたことで、私
どもの考えておりますこと或いは
稻川さんのおつしやつたことに裏付けを申上げるようなことを、極く簡單に申上げて見たいと存じます。今度の
改正案は、主として事務
手続的のことが大変たくさん盛られております。殊に
商法改正の結果これを準用するために、いろいろの
手続法が
改正せられておりまするわけであります。これらの点につきましては、
日本中小企業連盟において、
稻川さんが主宰をされましていろいろ研究をなさ
つて、詳細に亘
つての
意見がまとま
つておるわけであります。この点を縷々お述べに
なつたわけでありまするので、私は極めて簡單に申上げたいと存じます。
現在の
改正案の中の、
定款の
認証を
行政庁に行わしむることにするということに対しまし予ては、私も同感でありまして、これは結構だと存じます。ただこれが官庁の干渉を繁くするような結果を招来いたしませんために、
認証の形が実質的に認可制のような形がとられないように、うまく運用をせられることを希望をいたしておきたいと存じます。まあこれは法案の問題ではな問いと思いまするが、運用の問題と思いますけれ
ども、そういうことを申上げておきたいと存じます。
もう
一つは、
監事の
権限を会計検査に限定をする、これも大体においてそのイデオロギー的な面においては同感でありまするが、
稻川さんも触れられましたように、
協同組合は少数の同志的団結によ
つてこそうま
運営のできるものでありまするので、何らかの除外例を設けて頂きたいような気がいたしますわけであります。殊に
企業組合のような極少の
業者の、少数の同志的結合によ
つて沒人的な
運営を必要といたしますような場合は、
監事が他の仕事に携われないために、
組合員でない
監事を雇わなければいかんというようなことに隔りまして、実質上経経的な
運営ができないといつたような
実情に追込まれるような場合もあるのではないかと思われますので、この点は考慮を拂われる必要があるのではないかと存ずるわけであります。
次に
行政庁が報告を徴し検査をなし得る場合のことも、大体において御同解によ
つて組合員からの申出がない場合でも、何時でも検査ができるということに
なつているようでありまするが、これはむしろ
組合員から不服の申出があり或いは検査の請求のあつた場合に、
行政庁がこれを行うことができる、こういうふうにせられたほうが、官庁の干渉を少くするという考え方からいいのではないか、こういうふうに私は考えるわけであります。以上が
監事に対し帳簿書類の閲覧又は謄写を求むることができるように
なつておりますが、これも又
組合の
民主化の精神から申しますと、誠にいい
規定であると思うのでありまするが、ただこれを無制限にこの権利を行使いたしまするというと、ときに
組合の混乱を招く嫌いができるのではないかと恐れるものでありまして、少しこれは但書を付けて頂いて、理由を附した
書面を以てこれを請求して、その理由による帳簿書類に限
つて閲覧謄写の請求ができる、こういうふうな但書を付けて頂くことが、
組合の
運営を円滑ならしむるために必要ではないか、このように考えるものであります。
まあ
現行法に対する私の特に考えておりますことはこの
程度にいたしまして、次に将来の
改正を
要望申上げたいのでありますが、全国
連合会の
経済事業を許して欲しいという御説は、これも私全く御同感であります。このためにトラスト、カルテル的の弊害を起さないであろうということは、
稻川さんのおつしやつた
通りであります。これを理論的に申しましても、
中小企業の団結権によりまして、大企業が全国に支店を持
つているような経営体に
中小企業が対抗して行くというような理論的根拠からも、これは必然に許さるべきものではないか、こういうふうに私は考えるものであります。この
法律のできました当初におきましては、経済
民主化の初期におきましてこういう制限が必要でありましたでしようが、今日におきましては……一応経済
民主化の軌道に乗りました今日、今後の日本経済の発展が
中小企業の振興に負うところが多くなければならん観点から、こういつたような制限が緩和さるべきではなかろうか、こう考えるものであります。急速にこれが困難でありまするならば、せめて
連合会の地域が行政管轄区域を超えて、二つの行政管轄区域に跨が
つておる場合でありましても、
公正取引委員会が、その地域間は密接な経済的な
関係があると認めた場合に、
経済事業行い得るというような但書ぐらいは、せめて付けて頂くことが差当り必要ではないか、こんなように考えるものであります。それから
従業員の制限を超える
組合でも、公取が実質的に
中小企業と認めた場合は、独禁法の非適用
組合と認めるということを明文化じて頂きたいように思う次第であります。で、今日大企業に
関連する下請工業の中で、
協同組合組織が発達をいたしますような状況が見られるのでありますが、これらの場合に下請工業なら下請工業として
一つのグループを組んで親工業と取引をする、こういうやり方がいいのではありまするけれ
ども、ややもすると対立的な形が起る嫌いもないではないかと思うのでありまして、むしろ親工業、下請工業を打
つて一丸とした
協同組合が当然法規上作り得るということにいたしましたほうが、今後の経済を円滑に
運営するゆえんではなかろうか、こんなふうに考えるものであります。で、預
貯金の受入れ斡旋を認める問題も私同感であります。納税
貯金を預かるなんということは、国家の施策に協力することではあるけれ
ども、これは行えない。殊に先ほど
稻川さんの触れられましたように、金融の斡旋等の場合にはどうしても預
貯金を預かる必要が生じて来るわけであります。今日の
協同組合の使命の最も大きな
一つであります金融斡旋の
事業に、この制限がありまするので、非常に制約を受けておる、こういう点から考えまして、
是非ともこれは認めて頂きたいと思います。それから
保險協同組合をもう一度法案として出して頂くということも私
ども同感であります。で、
稻川さんは先ほど料率の安く扱い得る点、
中小企業の振興の必要性を述べられたわけでありますが、又これの安全性から申しましても、決して営業保險
事業と譲らない安全性を持ち得ると思うのであります。それはおのずからこの業種、業態別の保險
組合ができまするならば、櫛比した町において軒並みに保險をつけるということで、比較的安全性も固く
運営ができる、こういうことが考えられると思う次第であります。又
一つは
協同組合で共済
事業ができるということを
一つ明文化して頂きたい。で、この点に関しましては、実際現在共済
事業を行
なつておる
協同組合が多々あるのでありまして、これが
法律上許される行為であるかどうかということに非常な
疑義がありまして、
中小企業庁あたりへ伺いを立てておる点もあるのでありまして、大体差支えなかろうというような御回答も頂いておるようでありまするけれ
ども、せめてこの
保險協同組合法ができますまで、これを
協同組合法の中に明文化して頂きまして、これを公然とできることを周知徹底せしめることが必要ではないか、そういうふうに私は考えるものであります。でこの際、
事業協同組合の
範囲外でありますが、信用
組合の問題でありまして、近く信用金庫法も実現をするように承わ
つておるのでありますが、この信用金庫法が実現いたしますというと、これの選に洩れました信用
組合は員外利用のない信用
組合になるわけであります。その場合に
組合員の最低
限度を三百人以上、
出資を五百万以上というふうな枠をはめられておるようでありまするが、極く小さい信用
組合はむしろ
企業組合のような沒人的な同志的結合によ
つて行う、うまく
運営ができるのではないかと思いますが、この最小
限度をずつと引下げるか、或いはこれを撤廃して頂きたいように考えるものであります。これら
企業組合の
組合員の加入の場合に、或る
程度の制限を認めることを
規定をしたいと思うものであります。加入脱退の自由を認めますことは、
民主化の線に沿つた誠に結構な
規定であると思うのでありまするが、脱退は勿論制限をすべきではないと思うのでありまするが、同志的結合という面から自由なる加入というものには、時に
組合の混乱を来たすような加入も拒めないというようなことになりますのであります。これはいろいろの制約を付けることができるという苦しい解釈をしておる現状でありまするけれ
ども、これを法文上明確にすることがよりよいのではないかと、かように私は考えるものであります。
それからいま
一つ、
企業組合が
組合員の
事業分量に応じて割戻す配当は、課税上損金と認めることを明文化して頂きたい。
企業組合の税務の取扱についてはいろいろの議論が出ておりまするし、紛議も起
つておりまするのでございまするが、これらの点を
一つ税法上明確にすることが今後の
企業組合の発達に資するゆえんではないかと、こういうふうに考えるものであります。この
組合法の
改正案に対しましての
意見は、以上の
程度でございまするが、昨日御連絡においでを頂きましたかたが、この折に
中小企業振興に対する
要望も述べてくれという、こういう御
要望でありましたから一言触れさして頂きます。
中小企業の振興策の大事であることは、今更申すまでもないわけでありまするが、これを大別いたしまするならば、税の問題と金融の問題と、経営合理化の問題に盡きると思う次第であります。その中の税の問題を二三ちよつと申上げて見たいと思いまするが、只今同族
会社の保留所得の課税を、七%から五%に二十六年度予算において引下げられることに
なつておるようであつりまするが、これは
一般法人の保留所得の二%課税を撤廃せられることにバランスを合せまして、こういうことを計画せられておるようでありまするが、資本蓄積の叫ばれており、ます現在におきましては、
中小企業の振興のためにこの保留所得の課税を
是非とも全廃さして頂きたいと私は考えます。この点について大蔵当局に
意見を聞いて見ますると、いうと、個人所得税の課税率と非常なるアンバランスになるので、それは困難だということを言われるのであります。その点に関しまして私は個人所得の中でも資産所得と企業所得とあるわけでありまして、この企業所得の中の企業中の保留所得の分に対しては、よろしく法人税並みに税率を軽減すべきだと私は考えております。
中小企業の大部分は個人の経営であると思うのでありまするが、この個人経営の所得が資産所得、企業所得も同一に見られまして、非常に税の上に圧迫を受けておる。それにバランスをとるために同族
会社の保留所得税の撤廃を困難ならしめておると、こういうことを考えますならば、両方の問題を一括して考えまして、個人所得の中の、企業所得の中の保留しました保留分に対しましては法人並みの税率に軽減すべきであると考えるものであります。それからその
一つは、同族
会社の株の評価が現在富裕税の徴收とからみまして、実際に行われておるのでありますが、これが甚だしい不均衡な評価を徴税当局から受けておる
実情であるのであります。昨日も商工会議所の会合におきましてその
一つの実例を聞いたのでありますが、一機械工業の中におきましてその株の評価を、税務署によ
つて五十円の株を二千五百円と評価された実例がある、併し同じ
程度の含み資産を持
つている大企業の市場上場株の機械工業の株は額面を出たり入つたりしている
程度の評価を受けている。これは資産上取引所上場株の値段で評価をせられる。
中小企業なるが故に上場株でないから、それが二千五百円にも評価をせられる。又地方の小さなデパートの株が、当然な評価をいたしますと百円か百五十円くらいの含み資産の評価でありますものを千円と評価を受けた。非常にそれは不当だというのでだんだん交渉をいたしました結果、それでは君のほうで公正だと思う値段を出して見ろ、但し
東京における三越の株を下廻
つては絶対に認めない、こういうことを税務署が言
つている。こういうような
実情を実は昨日商工会議所で聞いたのであります。こういつたようなアンバランスを税の上で行われておりますということは、
中小企業の振興を阻害する大きな問題であろうと思いまするので、これは
是非とも適正を期せられなければならんことではないかと思います。
それからいま
一つ、償却不足額の繰越を認めて頂きたいことであります。企業のうちで或る期におきまして利益が少くて、法定償却をなし得なかつた場合には、その不足償却額を後期に繰越して償却ができるということを税法上作つ頂きたい。
いま
一つは、棚卸資産に一割
程度の含みを許容するということを認めて頂きたい。それから機械類の耐用年数の短縮を、今資本蓄積の観点から大蔵省で
委員会を作
つて審議しておられるようでありまするが、非常に細分化しまして表を作ります
関係上、十八年の耐用年数で償却を許されておつたものを、二十三年に長期化するという案が当局から出されているということを聞き及ぶものでありますが、これなどは資本蓄積の観点から逆行するものでなかろうかと思うのであります。耐用年数の短縮は、いわゆる短縮に徹底しなければり資本の蓄積の可能性が極めて薄いものである。このように考えるわけであります。一連のこういつたようなものを併せ行うことによりまして、現在の至上命題でありますところの企業内の資本蓄積というものが初めてできるのではないか、このように考えます。
それから金融の問題につきましては、
中小企業專門の地方
銀行がぼつぼつあちらこちらに生れつあるようでありまするが、これは
是非とも促進を図るような施策を講じて頂きたいと存じます。
中小企業金融に関しましては商工中金あり、信用
組合あり、無盡あり、或いは市中
銀行の專門店舖がありますけれ
ども、それぞれ性格に制約を受けまして、中金のごときは
組合金融でなければできないという法令上の制約がありまするし、無盡、信用
組合は余りに少額の
資金しか取扱えない、全国平均におきまして約七万円、
東京平均におきまして十一万円の貸付しか行われてないという
実情に鑑みまするならば、
中小企業の真に必要とする五十万円
程度の
資金の出所が非常に少いのであります。そういう面から
中小企業專門の地方
銀行を
是非設立せられたいと思う次第であります。これに関しまして独禁法の
関係で、
金融機関がこれらの新らしくできます株式の所有を阻まれている現状がありまするので、この点は
事業者団体法に独禁法の
関係におきまして緩和
規定ができますことを希望いたしたいと存じます。
それから見返
資金の融資を、長期運転
資金に
一つ拡げて頂きたいということであります。これは現在の国際情勢の下におきまして、いわゆる資材の備蓄輸入を
政府は懸命に図
つておられますのでありますが、各企業におきましても
一定期間のランニング・ストックを持
つているということはどうしても必要なことでありまして、大企業におきましてはそれぞれの
金融機関に連絡をとりまして、大童で資材の買漁りをや
つている隠れなき事実がある現在であります。ところで
中小企業にはそういう意欲はありましても金融の途がない、こういう点から考えまして
是非とも見返
資金の長期運転
資金への放出を希望したいと思います。これは設備
資金に限
つての放出が許されておるのでありますが、一面におきましては現段階の日本経済の睨み合せにおきまして設備の拡張は極力避けるべきだという指導が
中小企業庁あたりで行われておりますることから考えまするならば、設備
資金としてたくさんの運用がしかく容易ではない、事実昨年の暮以来たくさんの余剩が生れまして、日銀のほうに眠
つておる状態であると聞き及んでおりますが、この際は
是非とも長期運転
資金にこれが放出せられるように願いたいと私
どもは熱望をいたしますものであります。
それから信用保險の保險
限度の引上げもできないかと考えるものであります。現在七五%の保險を付せられることに
なつておりますが、これ又周知のごとくなかなか促進が図られない、年度内三十六億の貸付をせられる予定で進んでおられますけれ
ども、必ずしも容易でない。殆んどこれは不可能ではなかろうかと考えられます今日、やはりこの保險
限度が低いということもその
一つの原因に
なつておるのではないかと存じますのでこれを経営上ペイする、コンマーシヤル・べースに乗せるようなアイデアによ
つて政府が
運営せられますというと
中小企業の振興策にはならん、よろしく多少の損失を
政府が覚悟せられてや
つてこそ
中小企業の振興策になるのではないか、こういう面から九〇%或いは一〇〇%の引上げができまするように
改正が願いたいものと存ずるのであります。
経営合理化の点を一、二点、二十六年度予算におきまして工業技術庁に技術
奨励の補助費が四億五千万組まれておるようでありますが、それに対しまして特許庁に対して同じ予算で僅かに八百万円しか組まれてないのであります。工業技術庁におきましては大体研究の終りました工業の実施化
資金に対しまして補助が與えられておる現況のようでありまして、これは主として塩化ビニールの新らしい工業というようなふうに、長期企業の実施化
資金に対して多額の補助が與えられておる現状であります。でありまするから金額も四億五千万というふうに
なつておりますが、特許庁におきましては町の発明家を掘り出しまして無から有を生ずるような小さな発明に補助を與えるということをや
つておるようであります。それに対して僅かに八百万円の補助費しか計上せられていない、少くともいま少しく訂正されまして、
中小企業の明日の発達のために無から有を生ずる特許の補助等をもう少し増額して頂きたい、かように考えるものであります。
協同施設の補助も年額二億円と承わ
つておるのでありますが、これももう少し全国的な面におきまして殖やして頂きたい、それから補助の
手続が如何にも煩瑣でありまして、三分の二は自己
資金で賄
つて、三分の二できたときに初めて
資金放出の請求ができるというような余りにも嚴重な枠がはめられておりますので、事実
協同施設を進めます上に非常に不便を感じ、やり得ない面がありますので、これも簡素化するようにお願いを申上げたいと存じます
最後に甚だ私の奇矯な議論でありまするが、今日の経済の段階が、いわゆる税によります
政府の強制蓄積を考えました戰後の経済界の推移に鑑みまして、今日におきましてはとにかく一先ず安定の方向の軌道に乗りまして、今後ば企業内の自己資本の蓄積を至上命題と考えなければならない段階へ参
つておりますので、これを容易ならしむるために
一つ経営報賞
制度を創設して頂きたい。或る企業が最も優れた才能を持ち、最も勤勉な当事者を持ちまして、非常な利益を上げましたような場合には、
一定率の利益は控除いたしまして、過剩利益に対しましては、まさに国家の要請する資本蓄積に協力したものとして、それによ
つて徴收せられる税の半額ぐらいは補給をするという
制度を
一つ考えて頂きたい。今日有能な経営者がありますならば、多く儲ければ儲けるほど税は過重にかか
つて来るというようなことで、怠惰にもなりましようし、或いは少し何とかしてカムフラージしようというようなことも考えられましようし、あらゆるアンバランスがこの面から生れると思うのであります。まさに国家の期待する資本蓄積に逆行しているものであると思いまするので、有能なこれらの者に対しましては、
相当の国家の保護が與えられますことによ
つて、こういう企業が
一つ一つと殖えて参りまして、すべての経済界の繁栄が導かれますようなふうに施行せられます配慮が與えられたいと存ずるものであります。
甚だ長くなりましたが、私の証言を終ります。