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参考人(
酒井喜四君) 私
帝国石油株式会社の
社長酒井喜四でございます。
石油鉱業の概況について
簡單に申上げて、この際特に
各位におかれまして御配慮をお願いしたいと思う一、二の点に触れたいと思うのであります。
すでに御
承知かと思いますが、
日本の
石油鉱業、これを結果の数字から表わしますると、
国庫原油の
生産量でありますがこれは
大正、
昭和を通じてかなり大きな変動をいたしておるのであります。最もたくさん出ましたときが
大正の初期において約
年産五十万キロ
リッター、
昭和に入りましてからは
昭和九年ごろだつたかと思いますが、四十万にちよつと足りないというようなところまで参
つております。最近は戰争中三十万台を維持し、更にそれが二十万台に落ち、
終戰後においては最も惡いときは不幸にして
年産十六万キロ
リッターという台まで落ちたのであります。併しながらその後
探鉱その他
企業の
合理化或いは
政府の
助成等によりまして、当
年度におきましては大体三十二万キロ
リッターを超えるという確実な目算が立
つておる次第でございます。このように
石油の
生産に大きな消長がございますが、それならば
国産原油としての
資源は果してあるのかないのかということがしばしば問題になるのであります。この点につきましてはいろいろと推算をする
方式がございまして、何人も確実にこれこれであるということは断言できないことであろうかと思いますが、少くともその
方面の
專門家が推算したところによりますと、先ず千五百万キロ
リッターぐらいは埋蔵しておる、こういうことが言われておるんであります。これはひとり
日本の
地質方面の
專門家、学者の
意見のみならず、
GHQのほうの
天然資源局の
專門家も同様の似た数字を
推定しておる。又ときどき
日本へ技術指導に参りまする
アメリカ或いはイギリスのその
方面の
專門家も、先ず一千二百万トンから五六百万トンというようなところを
推定埋蔵量として推算いたしております。従いまして我々といたしましては、少くともこの
程度のものが地下に埋蔵されてお
つて、今後我々の
調査、試掘、
採掘というような段階が科学的に
合理的に推進されて行く限りにおいては、これらのものをして陽の目を見せて重要なる
資源としての活用が可能であるという確信の下に
事業を進めておるような次第でございます。現在その一千五百万内外のうち、確定
埋蔵量として我々が把握いたしておりまするのは約五百万キロリツター、これも実は戰争の済んだ直後あたりは二百万そこそこというように言われておりましたのですが、その後綿密な
調査、試掘、
探鉱をしたことによりまして、現在では約五百万キロリツタ一台の確定
埋蔵量を把握しておるような次第であります。この確定
埋蔵量というものと現実の
年産額との
比率は、
アメリカあたりの常識によりますると先ず
年産額の十五倍乃至二十倍というものを
確保して、ここに初めて
石油工業というものが安定した基礎の上に
企業化され得る、こういうことが
一つの常識に相成
つております。
従つて現在
年産三十二万に対しまして五百万内外ということはややその域に達しておりまするが、我々の考えといたしましては過去における最高の
生産額、即ち
年産五十万キロリツターまでは確実に
生産を向上せしめ得るという考えの下に仕事を進めておりまして、
従つて今後確定
埋蔵量も七百万或いは八百万というところまで是非確実につかみ得る段階に持
つて行きたい、かように考えておるわけであります。この点におきまする我々の仕事は、これは先ほど
金属工業についても
お話がありましたが、やや似ております。即ち広範な地域に亘りまして先ず
地表の
地質調査をやるんであります。そしてその次には更に精密な
地表調査をやり、その結果に基いて或いは重力
探鉱であるとか或いは地震
探鉱であるとかという、最近非常に発達して参りました物理的な
探鉱をいたしまして、これによ
つておおむね地下の千メーター或いは二千メーター下の構造を推測するわけであります。そこでその推測された構造に向
つていわゆる試掘井を掘
つて行くわけであります。そしてその試掘の段階におきましては、綿密にその中間の地層を調べついわゆるコーア掘というものをや
つて、そしてそこに構造、即ち容れものの形はわかつたが果してその中に
石油が現存するや否やということを確認するための井戸を掘るわけであります。これはかなかむずかしい仕事であると同時に非常に大きな費用を要するものであります。と同時にその井戸は決して百発百中じやない、過去の例から見ますると三十本に一本、或いは五十本に一木しか現実に油の暦にはぶつからないというような状況であ
つたのであります。これらの点から今申しましたような物理的な
探鉱が発達すると同時に、適中率も逐次上昇して参
つておりますが、何分にも試掘であるだけに費用の
負担というものは一個の私
企業として、は堪え切れないものになるわけなんであります。かくして試掘井から幸いにして油層に逢着いたしますると、更にその周囲に今度は
採掘井を掘りましてそしてその油の埋蔵している地域の大きさがどのくらいあるか、又埋蔵の量がどのくらいになるか、又地下におけるガスの
関係、水の
関係、圧力の
関係等をその数本の探掘井によ
つて調べまして、ここに初めて確定理蔵量というものが把握されるわけであります。そしてそれからがいわゆる
採掘の段階に相成るわけでありまして、そこに初めてその油田を基礎として何本ぐらいの井戸をどの
程度に掘り採油をして行つたならば、最も
合理的な且つ残されたる鉱利というものをなからしめる
合理的な採油ができるかというようなことでそこに採油計画が立つ、こういうような段階を経て
石油鉱業が
企業として成立
つて行
つている、こういうような状況にあるのであります。従いましてその前段におきまする広範なる
地質調査並びに試掘の段階につきましては、前々から
政府の
助成制度がございまして勿論慾を申しますればその
助成の
金額等について、もう少し手厚い保護が欲しいということを我々は希望いたしまするが、この
制度を更に維持しそれを
合理的に運用されるという面から、現在ありまする
石油資源開発法に基いて
政府及び国会においていろいろ御検討をなす
つておられるというように伺
つておりまするので、その機会におきまして是非
石油鉱業の特殊な状況を十分認識されて、
日本の
石油が更に更に
増産の域に達するように御支援をお願いいたしたい、かように思うのであります。
次にこの機会に特に
皆様方に申上げて御了解を得たいと思いますのは関税の問題であります。
一般的によく原料資材というようなものには関税をかけないほうがいいのだという主張があるのであります。併しながらこれはあくまで
一般論でありまして、その
対象となりまする
企業の重要度、又国内における現況並びにその将来性というようなものから具体的に勘案せられて、果してこの
企業は
日本の重要なものとして保護する価値ありや否やというように判断を願うべきものであると我々はかねがね思
つているのでありまして、そういう観点からいたします場合において、
石油鉱業並びにその基礎の上に立つ
日本の
石油精製業というものは、関税の保護の上に国内
産業としての確立を是非図
つて頂きたいと我々は考えている次第なのでありまして、その点につきまてはしばしばそれぞれの官庁、或いは国会、
関係方面当局にも我我の意のあるところをつぶさに申上げて御了承を願
つているような次第でありまするが、冒頭に申上げましたように、
日本の
石油鉱業というものがここでもう将来性がないということであるならば、又おのずから考え方も変わ
つて来るかと思いますが、ともかくも現在において三十万を超え将来は五十万キロリットルを目的とする
増産が
資源的に見て可能であり、又或る
程度の関税の保護によ
つて十分
企業として採算的に成立し得るという
石油鉱業に対しては、妥当な関税を算出されてそれを即時実行されるということについて特に御配慮をお願いしたい、かように思うのであります。
そこで又言訳がましくなるのでありますが、最近
石油殊に原油の関税に関連いたしましてそれの影響がどうなるか、或いは現在どうな
つているかというような面について、かなり新聞記事等におきましても誤解されているのじやないかというように思われるふしがありますので、この機会を拜借いたしまして数学的にそれらの点について一応の釈明をさせて頂きたいと思うのであります。お手許に
石油関税の消費者に対する影響度の問題という刷物を配付して頂きましたのでそれを御覧願えれば十分おわかりになると思いますが、蛇足とは思いまするがそれについて
簡單に御説明を申上げたいと思うのであります。一部の新聞記事等によりますと仮に原油の関税が一割かけられますると、それが製品に変つた場合において二割五分の
負担の増加になるということがいわれているのでありますが、これは全くの誤算でありまして、この表にも附けてありますように計算いたしました結果は、一割の関税は製品に対する影響は五%乃至は六%という約その半分の
程度しか響かない、こういうことを
一つ御了解願いたいと思うのであります。この数字の表の説明は省略いたしますが
一つあとからでも御覧願いたいと思います。それから関税が消費者の
負担を増すという場合において、何が最終において消費者の
負担になるかということになりますると、結局最終商品としての
価格が問題になるわけであります。ところが今度の関税定率法の改正を拜見いたしましても原料が一割、それから製品については二割乃至三割、こういうような関税率に相成こておるのであります。そういたしますると国内において最終商品に対して関税が影響する面は結局二割乃至三割の面において製品
価格にこれが響くのでありまして、勿論この点は
日本の
石油精製業というものの現在のスケール、或いは
経営の内容、いろいろな面から見て保護助長する必要があるという観点から立てられた税率であろうと思うのでありまして、私はあえてこの税率そのものを批判する意味ではございません。何か原料だけが消費者のほうに
負担として転嫁され、製品の関税というものが消費者との
関係においてどうなるかというような面の検討があまりされておらんような記事などを見ますのでここに私から申述べたような次第でございます。それからもう
一つここで申上げておきたいことは、今海外から
石油として入
つて参りまするものはすべてが原油ではないのでありまして、これは正確な数字は私伺
つておりませんが、四割乃至五割くらいのものは製品として海外から
現状においては
輸入されておる、こう思うのであります。
従つて国内の
価格というものは、
輸入された製品
価格というものがかなり大きな市場の支配力を持つわけでありまして、
従つて現在原料関税のみが国内の市価に影響するという見方には大きな誤りがあるということが言い得ると思うのであります。なおここでもう
一つ申上げておきたいものに国内の
石油の原料の
価格が一万円にもな
つておるような話がよく言われております。これはどうしてもはつきり認識して頂きたいことは、現在の公の
価格は八千四百五十円でありまして、現段階においては
輸入採算価格よりも遥かに下廻つた
価格に抑えられておる。勿論これらの点については
関係当局のほうで
輸入採算と見合つた
価格の
改訂を企図されておることと伺
つておりますが、
現状においては八千四百五十円に抑えられておるというような点も
一つ御認識願いたいと思うのであります。少し弁解がましくなりましたが、我々としましては
日本の
石油鉱業、これを維持発展せしめるためには是非妥当な関税をこの際御決定願いたい、かように思いまして少しくどくなりましたが弁明をさして頂くように
なつた次第でございます。もう
一つ附加えておきたいのは、関税がかけられたためにこの
輸入が非常に阻止されはしないかというこういう面であります。これは過去の歴史を考えてみますると、関税は大体
戰前におきましてもこれは従量税でありましたが、従価に換算いたしますと原油、及び重油は一割五分から二割くらいにな
つておつたかと記憶いたしております。そつの当時は
石油業法という
石油精製業を保護する法律のあつた時代でありまして、当時外国
会社との
関係においては、外国
会社はできるだけ製品で
輸入をして、原料を入れることを抑えるというような意向の強かつた時期であります。そして先方と
日本政府との折衝の結果、半分々々にしようと、製品半分、原料半分にしようというような事実上の話合いがあつたような、そういうような時代におきましても関税が一割五分、二割かかつたために、原油の
輸入が阻止されたという事実は一度もなかつたんであります。いわんや
現状におきましては、
日本の精製業の有力なものは外国の原油
生産会社と結び付いてここに発展を企図しておる
現状から見ますると、国内
産業保護のためにするこの
程度の関税が
石油の
輸入に障害になるというふうには、毛頭私としては考えられませんので、是非この関税問題につきましては、私どもの意のあるところをお汲み取り下さいまして、将来への発展に対しての絶大なる御支援を賜わりたいと、かように存ずる次第であります。大分取とめもなくて失礼いたしました。