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参考人(
圓城寺松一君) それでは
合理化資金確保のための
金融機構ということについてお願い申上げます。先ほど
高木さんから
炭鉱の
能率が終戰後順次上
つて参りまして、最近は一カ月十トンに達するという
程度まで来たという御
説明がございました。
炭鉱の
能率につきましては戰前の
能率と比較をしてそうして今の
能率がいいか惡いかということをよく言われるのでございまするが、戰前におきましては労働基準法のようなこともなくて、時間も随分長いこと働いておりました。それから戰前からしますと、すでに十何年
経過しておりますから、掘りまする場所も深くな
つておる。又少し專門的になりますが、
炭鉱の中から掘出したものを水で洗
つていい炭にしまするときの歩止りも惡くな
つております。そういうことから
考えますと、今日の十トンを戰前のトン数に換算いたしますと、十五トン、或いは見ようによ
つては十六トンになるだろうと思います。そこで現段階においては、
合理化は
限度に達しておるという
高木さんの表現は、私はその
通りだと思います。従
つて今日以後
炭鉱の
生産能率を向上いたしまして、そうしてコストを下げて
供給いたしまするためには、どうしても
設備の
改善をしなければならない。ところが御
承知の
通り、
復金は二十三年度の第四四半期から卒然として融資の
方法を停止いたしたのでございます。その後我々は金融難に対処いたしまして、常に
政府当局に対しましても、事あることにお願いを申しておるわけでありまするが、長期の
資金を求めることはできないのでございます。それにこの
炭鉱の本質といたしまして、先ほ
ども高木さんが述べましたように、急に
増産ができない、或いは急に減らすことができない、こういう性質のものであるにもかかわらず、二十四年の中頃、以後におきまして、出炭が漸く
需要にミートするような時分になりましたら、世間の人が
炭鉱に対する認識をけろりと忘れてしま
つております。これはやがて
炭鉱の
能率を低下して
減産を来たす原因をなすものと私は
考えております。そこでどうしても
炭鉱に対しましては、絶えず次の計画をいたしまして
改善をして行かなければならんのでございまするが、先ほど総括的に
高木さんが申上げましたように、莫大なる借金を背負つたままであります。最近何がしかの利益を得ましても、これは負債の返還と納税をいたしまするというと、新規の投資というものは全然できないような
状態でございます。そこで私たちはこの
復金が融資を停止いたしまして以来、他の
産業の皆さんと一緒になりまして、長期の金融機関の設立をお願いしておるようなわけでございまするが、戰前におきましては、興業銀行が
炭鉱の長期の金融を扱
つておりました。併し戰後におきましては、普通銀行と変
つておりまして、これが長期
資金供給の用をなさんのであります。そこで
炭鉱のことは忘れ勝ちになりまして、最近は電気、製鉄、造船、そういうことのみに囚われておられてそうしてじりじりと
炭鉱の
設備が落ちて行くということを忘れられておる形でございます。こういう際にこそ、堅実に投資をいたしまして、低廉豊富な
石炭を出す準備をしなければならん、かように
考えております。最近
開発銀行が設立されるということで、これも日産協あたりで他の
産業のかたと御一緒に、この銀行が一日も早く、たとえ不完全であ
つても拙速を尊ぶという皆の声がございまして、一日も早くこれができることを希望しておるわけであります。これなくんば先ほど申しましたように、
炭鉱の
生産能率というものは低下の一途を迫るという原因を作るわけでございます。
その次は
復金の
借入金に関することでございまするが、今申上げまするように、一般銀行が長期の貸付ができない、特殊銀行はなしということでございますので、どうしても新規な長期の
資金が借りられないということになりまするというと、
復金の私たちの借りておりまする金の返済を一時猶予して頂きたい、これは新規に借金をしたのと同じように、私たちの仕事には働いて来るのでございます。
復金の貸金はひとり
炭鉱のみでないからお前たちだけにそういう便宜を計るわけには行かん、こう言われると思いますが、
炭鉱が終戰後に
復金から借りました金は、全貸金の三割以上、三分の一は
炭鉱が借金しておるのでございまして、何としても将来はともあれ、早く金を貸してや
つて炭を出せということで借りておりまして、他の
産業に比べますというと、
復金の
借入金の荷が非常に重いのでございます。そういう特異性をお
考え願いまして、一時これを猶予して頂く、そうして
開発銀行でもできましたら、その際に私たちはそのほうの金融を得て予定の返済をする、こういうふうにや
つて頂きたいと思うのでございます。特に今私は
復金の
借入金を一括してお願いを申上げましたが、
復金の
借入金の中には、約総額の半分が、いわゆる世に炭住と言われまして、
炭鉱の
労務者の住宅を建てることに相成
つております。これは戰後
石炭が不足して非常に困りましたときに、
政府が年産三千万トンに
石炭をするのにはどうしたらいいかということを非常に
研究しておられまして、その当時一人当りの
能率が非常に低
能率でありましてから、どうしても住宅を建てなければいかん、併しやがて
能率が回復するのだから、遠からず不要になるものである、これを民間に建てろと言
つても、建たない、
政府の力によ
つてこれは建てなければ困る、然らずんば
石炭の
増産はできないということを進言いたしまして実現いたしましたのが、この炭住の制度でございます。これに対しましては当時
政府は、今申上げました
趣旨で、今は住宅が要るがやがて要らなくなる、そういうものに対して
業者が危險を冒して住宅を建てない、そうしたら
石炭を殖やせと言
つても殖えんじやないか、この
趣旨を御了承になりまして、然らば炭住建設
資金の九割は炭価に入れて、償却金として炭価に織込んで
政府が持
つてやろう、
あとの一割は昔じやないから廃物価格で回收したらいいじやないかということで、明らかに九割というものは
業者に負担をかけないという約束の下に、炭住というものは、
炭鉱労働者の住宅というものは建つたものでございます。その後どうなりましたかというと、全体の償却が、炭価に繰入れられておりまする償却が僅かに十一円何がし、炭住の償却どころでございません。一般
設備の償却もできない。こういうわけでありまして、未だにこれが
解決付いておりません。そこでこれもいろいろ
事情がございまして、白紙の上に書くがごとく我々の
要求のみ申上げるのもどうかと思いまするから、せめて一時返済を延期してもらう。又以上申上げました特殊
事情の下に、而も特殊の約束、特約を以て建てたものでございますから、これに対しては金利を現在の見返
資金の金利並みに下げて頂きたい。そうでなくても
炭鉱の金利は、先ほど
高木さんから
お話がありましたように、非常な負担でございます。そうしてかくのごとき今申上げまするような炭住の金利も負担しておるわけであります。このことにつきましては
炭鉱のことを常に惡口を言う他の
産業の人も、そういう約束があ
つて、諸君がこれを何ともしてもらえんというのはおかしいじやないかと言うくらいでございまして、この点につきましてはもう一年半前から御陳情申上げて、その間私は病気で引つ込んでおりましたが、少しも片付いておりませんので、これを真劍に取上げてそうして約束したことは果すというようにして頂きたい。これは何も
日本に
炭鉱だけあるわけじやございませんから、今申上げますように、私たちの要望をそのまま白紙の上に自由に書いて入れるようなわけには行かんと思いますが、理窟が立
つておると思いまするから、入れられるような
方法を講じて頂きたい。これは私たちの痛切な叫びでございます。極端な言葉で申上げますと、騙されたというような気持でおりまするのですから、これは
政府ばかりじやございません、議員の各位に特にお願いいたしまして実現するようにして頂きたいと思います。私から申上げることは終ります。