○
説明員(首藤新八君) 先ほど吉田さんから
羊毛の
備蓄の問題が提案されたのであります。昨年の十月頃でありましたか、
日本経済の自立をする
ためには、あらゆる犠牲を払
つても
輸入を促進することが前提であるという一致した思想の下に
民間の協力を求めたことは事実でありまするし、又同時に
備蓄ということを強く取上げまして、一応法案を準備したことも事実であります。
従つて当時これは
羊毛のみではありません。他の重要
商品に対しましても一応
備蓄の思想を以ちまして法案を準備いたしたのであります。
従つて当時これらの
業界に対しましては
政府が
備蓄をするということが強く反映したであろうことも十二分に想像されるのでありますが、その後大蔵省並びに司令部
方面といろいろ折衝いたしました結果、到底それは無理であるということが結論付けられまして、その提案を見合したのであります。同時にこの間の
事情はそれぞれの
業界にはつきり周知できるように原局からそれぞれお知らせしてあるというふうに了解しておるのでありまして、多分
羊毛のほうでも
政府が買上げる、かように考えて
輸入をしたとは我々は考えていないのであります。併しいずれにいたしましても主管庁でありますところの通産省は、かような反動の来た場合、どの省よりも熱意を持
つてこれが
対策を練らねばならんということもこれ又議論の余地はないのでありまして、
政府といたしましてもあらゆる方法を以てこれが安定策に今日まで努力して参
つております。
ところが先ほどからの皆さんがたの御意見を承りますと、結論的に全部が
金融である、又一応常識的に考えて
金融をすることによ
つて安定するということも考えられまするけれども、今の
日本経済はどういう立場に置かれておるか、これは国際
経済と遮断された、統制
経済の間でありまするならば、
金融することによ
つて安定するという確実な効果を狙い得るのであります。併しながら今日の
日本の
経済は一
通り全くの自由でありまするし、国際
価格は日々
日本の
経済に反映して参る。そうして、然らば今この
金融をすることによ
つて果して安定するであろうか。これは基本的には綿糸、或いは
羊毛それぞれの
事情は若干違いまするけれども、これを綿糸について考えた場合、根本的に綿糸の需給
関係が今どういう
状態にあるか、昨年は
米綿が千百万俵という近年稀有の不作であ
つて、エジプト綿とかアラビヤとか、特に
米国の
綿花がことごとく不作であ
つた。而もその上に
朝鮮事変があり、又
アメリカの
未曾有の軍拡によるところの厖大な購入があ
つた。然るに過去一年に亘るところのこの棒上げによりまして大体
世界の需用は一段落した。そうして
値段が異常に高くな
つた値頃に対する警戒、又は購入者の充足、更に今度は
朝鮮事変の停戦、或いは又肝心の
米綿その他
世界的な
綿花の大豊作という点を考えた場合に、ここで一時的に
金融することは安定するかも知れませんけれども、むしろ安定することによ
つて、その間に
国際相場が漸次下
つて行
つて、
日本だけ取り残されるような憂いがないかという点に深く思いをいたさなければ相成らんと存ずるのであります。すでに御
承知のごとく
米綿は本日の発表では千七百三十五万俵、これはまあ今日までの新聞予想の千八百万俵に
比較すれば六十五万俵少いので、若干は
気分的にはいいのでありますけれども、併しながらその他
世界的に
綿花がいずれも豊作だ。そうして先ほど申上げましたごとく、当面
世界の需要は大体一段落したというような点を考慮いたしますると、
国際相場の前途はなおなお下る余地が残されておりはせんか。もう
一つは
日本の今日までのマル公十四万円がどういう
相場であ
つたか。当時の原価計算によりますると、
米綿が五十二セントを基礎といたしまして、十万五千円ならば十二分に採算のとれる
価格でありました。併しながら一方
輸出のほうが十四万円
程度で
輸出はできる。若しこのマル公によ
つて厳格なマル公を設定いたしますならば、
内地に販売する量がことごとく
輸出のほうに廻
つて、
内地の販売量が一〇〇%闇にな
つてしまうという観点を考慮いたしまして、十四万円という、実はマル公としては未だ曾てない不当と申しましても差支えない
高値のマル公を付けてあ
つたことは、これ又御
承知の
通りであります。
従つて政府といたしましては、この
程度のマル公を付けておけばかなり
内地のほうにも廻るであろう。闇がなくて行けるであろうという実は予想の下に十四万円というマル公を付けたのであります。ところがその不当と思われるマル公の十四万円も実は実際においては全く適用されていない。二十何万円というような不当な
価格まで行
つたこと、これ又改めて申上げるまでもないのであります。そこでそれはそれといたしましても、現在の
米綿の
価格は大体三十三セントか四セント前後でないかと思うのであります。十四万円のマル公を設定した場合が、十万五千円の原価計算でありますが、それでも五十二セント、八万円のマル公が四十二セントの
米綿でありまして、無論雑綿の計算も考慮に入れたのでありまするが、それらの点から現在の三十三セント、四セントということを期待して綿糸の
価格を算定いたしますると、現在の
相場よりもなお遥かに下げる余地が残されておるというところに帰着するのであります。而も
内地紡績の増錘は現在五百七十万錘くらいに達しておりまするが、年末にはおよそ六百万に達して来るであろうという予想も行われまするし、又昨年の今頃は一カ月八万梱乃至九万梱の
生産であ
つたものが、今日では十五万五千、これは少く見ても十五万を割るという予想はつかんのであります。そうしますると、先ほども立川さんから
お話がありましたが、
輸出八万といたして置きましても、
内地に七万以上出る、而も四——六におきまして御
承知の
通り大量の放出をや
つたということ、それから更に又
内地の需要も今日まで余りにも
相場が高いので実需筋は
相当買溜めしておるというような点、そうしてこの根本的な需給のバランスが極めて悲観的であるというような点を考慮いたしますると、
相当前途は暗いものであるというふうな結論に到達せざるを得ないのであります。
そこでこの
状態にあるものに対して
相当高値の
金融をした場合、一時的には安定するかも知れませんけれども、これによ
つて生産は依然として続けられる、そうして需要が伴わない限り、在庫はますます殖えて来て、次に来るべきものは何か、現在よりも更に大きな在庫が当然処分されなければならんという、今よりももつと深刻な苦境に直面せざるを得ないということに相成
つて参るであろうということを我々は虞れるものであります。先ほど大蔵省から
お話もありましたが、銀行も営利を目的といたしております。
従つて金融をいたしまする以上は、どうしても確実にこれが回収できる、或いは又前途に何らかの希望が持てるというような、何らかのそこに
融資するところの根拠がなければ、徒らに
政府がこれを
金融々々と申しても、そう簡単には
金融は行かない。而も実態そのものが極めて悲観な
状態にあるというような点に思いをいたした場合、ここでただ
金融することだけが、それによ
つて市況が安定するとは到底我々は考えられないのであります。だからとい
つて政府は毫末も放任する意思はありません。御
承知のごとくあらゆる方法を以て
金融の斡旋をいたしております。ただ
金融の斡旋の方法がケース・バイ・ケース、個々の
金融をや
つてもらいたいということにな
つております。これは見方によりますれば、この辺にな
つたら
政府は或る
程度援助するのだという声明をすることによ
つて、ケース・バイ・ケースによる
融資よりも遥かに少い
金額によ
つて目的を達しはせんかと……、ケース・バイ・ケースということは言うべくして、個々の
金融でありまするから、
信用状態が個々に異
つておる、容易に
金融が進まない。その間に
相場は
暴落してしまう、折角ケース・バイ・ケースと言いながら何ら実効が現れないのじやないか。そうして
政府が一律に
対策を発表したときよりも遥かに
金融額は大きくなるじやないかという見方も実はあるのであります。
もう
一つは滞貨に
金融しない、これは
只今境野
委員から、本日の新聞でマーカツト声明が従来と若干異にしている、大蔵大臣に一任して
政府からするというような記事がありました。私も昨日の会見の内容はまだ聞いておりませんが、数日前の会見の内容は、依然として
滞貨金融は相成らんということを強く要望されたということでありますが、この
滞貨金融は相成らんということでありますが、メーカーでありますならば原材料の購入その他のことによ
つて融資を受ける資格は当然ありませんけれども、サプライヤーか或いは
問屋、こういうかたが
輸出しようとして
引取つた、
信用状は来ない、滞貨にな
つた、これが若し
金融がつかん場合に一体この不足をどうするかということは非常な問題でありまして、メーカーのほうはケース・バイ・ケースのほうで大体私はつくであろう。時間的な多少ずれはあ
つても大体つくであろう。ただ問題はこのデイラー或いはサプライヤーのストツクに対するところの
金融はどうなるかということにつきましては、
相当苦慮いたしておるのでありまして、通産省といたしましても、先ほど吉田さんか安藤さんでありますか、大臣が名古屋或いは大阪において十二分に希望に応じ得るように考慮すると言明されたそうであります。大臣もこの点につきましては深く憂慮いたしましていろいろの
対策を現在練りつつありますが、いずれにいたしましても根本的に現在の
情勢から見ますれば、
金融することのみによ
つて市況が安定するとは、到底私らは賛成いたしかねるのであります。ただ一時的には安定するかも知れませんけれども、
却つてこれが
ためにその次に来る
恐慌を深刻ならしめることは、
業界によ
つてそれぞれ異なりまするけれども、少くとも
繊維界の現状ではさように申上げて私は間違いないと考えておるのであります。ただ
化繊のほうは最近操短をや
つておるとのことであります。どうしても需給のバランスから来ておる
相場でありまするから、この需給の調節をせなければ市況の安定ということは期しがたいのであります。
従つて化繊のほうで自発的にそれぞれ
生産調節されておるこの現在の
状態を或る
程度続けて行きまするならば、おのずから市況はそこに安定するであろう、又同時にそれによ
つて海外からの引合も再び活發化するであろうという
一つの希望が持てるように相成
つて来ると思うのであります。
繊維のほうは未だそこまで行
つていないのでありまして、又紡績の面から見ますると、非常に損だと言いますけれども、我々の計算では紡績はそう損ではありません。今の十一万の
相場ならば十二分に採算の余地があるのであります。大体十万円乃至十万五千円ならば採算の余地があるのでありまして、それは現在はどういう
相場にな
つておるか知りませんが、大体紡績のほうはまだ十一万という
相場には行
つていないのじやないか、そうするとまだ採算の余地がある、こう
言つても一向差支ないと私は考えておるのであります。
従つてこのものに対して操短をせないということも或いはそういう
事情によるのではないか、本当に採算が割れまして引合わないという
状態になるならば、おのずからそこには操短ということは真剣に考えられて来るのではないかというような考え方も実は我々は持
つておるのであります。
さような
事情で、
皆様がたの御満足するような
金融はできないかも知れませんが、少くとも、併し実際問題としてケース・バイ・ケース、これによ
つて相当金融が進捗をしているということだけはこの際私からはつきり申上げてもいいという
状態にあることを申上げておきたいと存じます。
なお最後に先ほど
備蓄に関連いたしまして四——六の強制
割当という御意見でありますが、御
承知の
通り四——六はまだ統制を継続しておる最中でありまして、一四半期に十五万梱でありましたかの
割当をしておる。まだそれまでに繰越が三万なんぼありました
関係上、これはそれまでのいわゆる統制方式によるところの各企業家に
割当をや
つたということは、これは事実でありますが、けだしこれは通産省としましては止むを得ない
措置であることは、恐らく
業者のかたもその点は十二分に御理解を願
つておることと存じておるのであります。