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説明員(森誓夫君) 先ず競輪場認可の経過について申上げます。立川市に競輪場を建設しようとする動きは、昭和二十四年三月に地元有力者の中野氏が競輪場設置についての請願を市議会定例会に提出し採択されて表面化しました。市議会は二十五年二月に招致委員会を全員で構成して、東京都に働きかけ、当時同様の希望を持
つておりました八王子市に優先して八月に都の推薦を受けまして
通産省にその書類が出て参つたのでありますが、
通産省は諸般の事情、特に同市の教育関係者の意見なども書面によ
つて十分審議をいたしました上、東京都及び立川市に対して設置承認の通知を行
なつたのであります。然るに一方東京都は立川市が建築承認願の書類が不備であるということを理由
にして競輪場の建設中止命令を出しておりますので、競輪場は完成の運びに至らないで今日に至
つております。
次に立川市の財政状況について申上げますと、立川市は戰時中は重工業の
工場を多数擁しておりまして、財源には恵まれていたのでありますが、終戰と同時に一挙にこれらの重要財源を失い、財政には極めて困難な
状態に立至づております。同市二十六年度の
予算は一億五千六百万円でありますが、教育関係の
予算は二千五百万円程度でありまして、全
予算額の僅かに一七%に過ぎません。現在の教育施設は市立小学校六校のうち五校は二部教授制であり、又高等学校は夜間制の一校を持つのみで極めて不完全であります。又上水道の
設備も不完全であります。一般
産業の不振は特殊風紀問題と合せて市の重大な問題とな
つておるわけであります。
従つて、この財政的な困窮を救い、積極的に種々健全な市政を築く
ための財源の捻出は市の当局者のみでなく、市の財政に関心を持つ人々の焦眉の急として考究いたしておるところでありまして、その
ための
一つの
施策として競輪場の設置が大きく取上げられた模様であります。
次に競輪場設置場所の環境について申上げます。競輪場建設地と近隣学校との距離は曙小学校が約二百メートル、高松小学校が約五百五十メートルであります。なお近傍にあります立川二中の場合には中間に生物学研究所が存在いたしておりますので影響は比較的少いと
考えられます。又曙小学校の場合は中間に障壁を設けることを市で
計画いたしておるようであります。曙小学校の校長は当校のPTAは市財政の現状において教育費の財源を獲得する
ためには競輪場設置もやむを得ないものと
考えておるようだとの所感を述べております。市と学校若しくはPTAどの間には競輪収益は教育費に最優先的に振向けるとの口約がある模様であります。又教育関係者が個人的利害関係によ
つて節を曲げたというような事実は全く認められません。なお関係のPTA会長三人のうち、二人はその後教育委員に選挙せられております。
次に立川市の輿論と、その後の動向について申上げます。競輪場設置賛成論者は、市財政の充実による
施策よろしきを得れば、多少の弊害を補な
つて余りあるとしているのに反し、反対論者は競輪そのものには反対しないが、場所が学校に近接することから生ずる文教上の弊害を取上げて、他に敷地を変更するように主張いたしております。尤も立川市内に、他に適格な敷地がないならば、現位置も又止むを得ないと
考えている向きもあります。先般の市長並びに市議会の改選に際して、当選した者二十六名でありますが、そのうち一名を除いて、すべてが賛成論者であつた点に徴しても、市民の輿論の動向は窺えると
考えられます。なお改選後の市会におきましても、競輪場建設
促進が議決せられております。反対論者は、競輪場に最も接近している曙町三丁目地区の市民に多く、他は婦人層の一部であります。今後の見通しとしては、当市の治安の掌に立つ責任者は、一部少数の反対はあ
つても、既定
方針の
通りで大体納まるものと
考えている模様であります。
次に競輪場の代替地の有無について申上げます。代替地につきましては、二つの場所が反対者側から主張されております。併し第一の場所である立川国立間の約七千坪の国有地は狭過ぎて不適当であります。又第二の市有総合グラウンド一万五千坪は幅員が百三十メーターで地形的の難がある上、河畔にあり流水の虞れもあ
つて、川の流れを変えて埋立てしない限り同様に不適当であります。なお後者の場合はグラウンド中央を低目に高圧線が通過していてこのままでは危険であります。こういうわけで現在適当な代替地は見当らない
状態であります。
次に都の建築中止命令の理由と、将来の見通しについて申上げます。都は敷地が住宅地であること、手続の不備の二点に基いて中止を命じたものでありまして、他に特段の含みはないことが判明いたしました。なお今年五月十六日都の主催で立川関係者を招致して開催した、立川競輪公聴会では、約九割が賛成し、反対は一割程度でありました。この間の経緯に鑑み都としては、今後特に顕著な反対理由が認められない限り建築を許可するものと
考えられます。
次に立川競輪株式会社の内容と市会との関係について申上げます。会社は未成立でありますが、建築許可のあり次第設立の運びに至るものと思われます。発起人代表でりあますと同時に、立川競輪場設置請願者であります中野氏は徳望のある地元有力者で、本件に関して特に悪質の利害関係の
ために動いているとは認められません。競輪賛成者が市会議員に多く当選した結果、発起人の中におきまする市会議員の数が多くなり、又顧問中には市の要職にあるものなども名を貫ねておりまして、会社はむしろ公的
機関に類した構成にな
つております。なお最近立川市から聞きましたところによりますと、市会の議員総会におきまして、競輪場の所有は立川市が行うというふうに
方針をきめたようであります。
従つて個人的営利会社等の存在は今後
考えられなくなるということであります。
次に敷地の所有者との利害関係について申上げます。予定地は約二万坪の住宅地でありまして、そのうち
先ほど申上げました中野氏の義弟に当るかたの所有地もあります。併しこれは、中野氏は特に市に対して、公定
価格で貸与いたしておりますることから
考えましても、不当な策謀は介在しないものと認められます。
大体以上でこの前御依頼のありました
調査の御報告をいたしました。