○
説明員(
小室恒夫君) 最近の我が国の
輸出の動向でございますが、御
承知の
通り朝鮮事件を契機といたしまして、世界の
貿易情勢が、一変いたしまして、それまで各国の戰後の復興が次第に進歩するに伴いまして、いずれかというと、生産力のほうが有効需要よりも過剰になるような
傾向が、世界市場一般に、見られておりました。その結果といたしましいわゆる
貿易上の用語でいうバイヤース、マーケット、金を持
つておる買手が非常に強いマーケットであ
つたのでありますが、朝鮮事件を契機といたしまして、主として軍需
関係の職略
物資の買急ぎというようなことが契機となり、又全般的には、各国の経済が自然一種のインフレ的な気運を世界一般に招来いたしまして、各国の有効需要が、ずつと殖えて参り、
従つて日本品に対する
輸出需要というものも、
相当活溌に
なつて参
つたわけであります、いわば金よりも物の時代という気運が
相当濃厚に現われております。又丁度
アメリカあたりが中心になりまして、国防生産体制を確立する意味からいたしまして、
綿花の
輸出統制とか、その他のいろいろな重要
物資の
輸出統制などが先鞭をつけまして、原料面の不安というようなことも手伝こいまして、
相当原料に制約せられておるような製品、直截に言いますれば、
綿花の
輸出割当が行われれば綿製品のほうがより強く蓬頭して参ります。そういうような一般的な背景の下におきまして、我が国の
輸出は、当初期待しておりました一
年間に六億四、五千万
ドルというようなところからは、遥かにこれを凌駕した
輸出の規模に
なつて参
つたわけであります。その間において、もとより
輸出価格の値上りというものも
相当ございまし数量も伸び、
価格も
上つたというのが、概して言えば大勢でございます。今日
貿易の振興といえば、
輸入の促進ということと同じことのように言われておるのでありますが、
輸出のほうは、先ず供給力のほうに支障がなければ大体各商品とも軒並みに伸びておる、軒並みに買
つてもらえるというのが今日只今の
情勢でございます。もとより国際
情勢がいろいろな意味で変
つて来れば、我が国の
輸出の大勢も変
つて来ると思いますが、今日只今の
輸出のほうは、問題は供給力にかか
つておるわけであります。供給力の点について申し上げますと、結局
輸出産業の供給力を海外の有効需要の増大に対応いたしまして、できるだけ拡大していくということが何よりも肝心でありますが、申すまでもなく、電力の供給が一般的に隘路に
なつておる。更に又金詰りで、生産設備を拡張していくというようなことがなかなか思うにまかせない。或いは、海外からの原料の
輸入というようなものが
思つたよりもなかなか進捗しないというような事情によりまして、生産能力を有効需要に即応するだけ殖やして行くということは、なかなか困難な事情があるわけであります。又生産設備の拡張なども紡績なんかは比較的順調に参
つておりますが、例えば化学肥料という問題になれば、電力からすつかり隘路ができてしまうというようなのが一例でございます。まあそういう状況におきまして、結局如何にして
輸出産業の供給力を確保するかという問題と、それから国内で以て必要な需要、内需と
特需、別需、いろいろな言葉で呼ばれておりますが、要するに内需の重要なものと
輸出の動向というものをどうや
つて調整して行くかという問題も
従つて生じて来る状況に
なつております。而して今日のところ
輸出産業の供給力をできるだけ拡大して行く。その中に一番大事な裏付けである
輸出用原材料の
輸入に最大の努力を拂うということに重点をおかれておるわけであります。又
輸入の場合ほどではありませんけれども、
輸出品の入れ物の問題、いわば船腹の問題というようなこと今後はなかなか重要な問題に
なつて来るかと思います。そういうような状況でありまして、大体本年の年初以来の
輸出は丁度只今お手許に
輸出入
統計総括表、
調査課作成という表をお廻ししてありますが、これはスキャップで以
つて作
つた統計表でございますが、一月から八月までの
総計が四億五千七百万
ドルということに
なつております。そのうちで以て大体
繊維品が四割六分、鉄鋼が九%、又非鉄
金属関係等とか、そういうようなものが一一%、又
機械関係が九%、それから農水産物
関係が一〇%、つまり一割、それから雑貨
関係が一二%、肥料等の化学製品
関係が二%、
石炭が一%、こういうような大雑把な構成に
なつております。で、先ほども申上げましたように、これらの主要
輸出品はいずれも海外における有効需要の増大に対応して
輸出は伸びて行
つたのでございますけれども、特に供給力の点で非鉄
金属、或いはまあ特に不足した非鉄
金属等を使うような
金属製品、そういうようなものには、
輸出上の隘路も出て参るわけでございます。又鉄鋼等についても総体として申せば、
輸出の需要が極めて活溌でありまして、特に
特需と
輸出とが競合した時期におきましては、鉄板等の
輸出が思うに任せなか
つたというような事情も
相当あ
つたわけでございます。先ほど
貿易局長から御
説明があ
つたように、
中共向けの
輸出の七、八割までが鉄鋼
関係であるから、
輸出市場の転換ということも、概して言えば心配はなかろう、そういうような御
説明があ
つたのでありますが、大体こういう金物
関係は、世界的軍拡態勢ということもありまして、
輸出市場の確保もさることながら、供給力を如何にして確保するかということに重点が置かれて参るかと思うのであります。
我が国の
輸出の大宗は、今のパーセンテージで申上げたことでも明らかなように、依然として
繊維製品であります。
繊維品についても、又特に綿製品でありますが、本年は大体年初以来の
輸出の
契約高から申せば千億ヤールを遥かに上廻
つておりますし、積出しにおいても大体十億ヤールに達するかと思うのであります。で今日の世界的な綿製品の市場の状況と申しますると、千億ヤールということは、世界第一の綿製品
輸出国であるということになるわけでございます。もとより曾
つて二十七億ヤール
輸出した記録を有する
日本からいえば、
輸出、よほど綿製品の
輸出の規模は違
つて参
つておりまするけれども、今後
米綿の生産の
見通しとか、各国の綿の
輸出の
見通しとか、そういうものに関連いたしまして、どの程度にこの伸張度を持続できるか、そういうことはなかなか
見通しが困難でありまするけれども、紡績において設備制限の撤廃を初めといたしまして、毎年七十万錘その他の施設
計画を以て進んで参
つておるということは、
輸出においても更に々々今日の発展を続げて行かせるという積極的意図を業界においても示し、又当然主要
輸出品に対し、政府としてもこれを助成振興して行かなければならんという考えを持
つておるわけでございます。
国別ということでありますが、御
承知のように、綿製品の主要市場と申しますると、広い意味での英系諸国、これがやはり一番大きな問題でありまして、英本国並びにその植民地、それから一応
協定の面からいいますると、独立
協定を結んでおりまするが、パキスタン、これらの国々を一纏めにいたしますると、一番これは大きな市場であります。それに次いではインドネシア或いはタイ及び世界各国で
日本の綿製品を需要しない国はむしろ少いくらいに各国に行き渡
つておるわけでございます。値段等もむしろ
米綿の上がり方等に比べれば、却
つて輸出の値段のほうが据置きであ
つたということも言えると思うのであります。尤もそり牛面
米綿の
輸出割当に関連いたしまして、各国が、より小さな
綿花の生産国が、
輸出の統制も行い又
輸出の値段を上げたというようなこともあ
つて、原料も
米綿だけを標準にして参るわけに行きませんけれども、値段が
相当強か
つたということは、一般的に言えることでございます。
その次に我が国の古来の重要
輸出品である生糸につきましては、大体米国の景気の回復、特に最近では米国の軍拡景気の進展というようなことに関連いたしまして、米国を王といたしまして、フランス、スイス等の欧洲向け等を含めまして、大体本年は昨年慶の四万八千俵弱ぐらいの
数字に達して、八万俵を超えるような
実績になるかと
思つております。絹織物等についても特に羽二重等を中心といたしまして
相当米国向け或いはエジプト、カナダというような国々に対しまして、
相当の期間の
輸出が今までに行われ、又今後においても或る程度期待されておるわけでございます。この人絹、スフ製品等につきましても、糸の売行はやや不活澄でありまして、特に重要市場であるインドにおける
輸入許可等と関連いたしまして、必ずしも期待
通りには参りませんでした。又
羊毛製品につきましては、市場が比較的限定されておるということ、又相場がどうも海外の相場のほうが
日本の国内のコストというか、相場に比しまして割安であ
つたということで、競争が十分できなか
つたというような事情がありまして、必ずしも所期の効果を挙げなか
つたのでありますけれども、そういう小さな比較的伸びなか
つた、或は不振であ
つた商品もございますけれども、概していえば、
繊維製品全体として
輸出は伸張しまして、当初の
輸出計画を上廻るということに予想される、それが又全体としての六億五千万
ドルというような
輸出計画を
年間において上廻る大きな原因をなしておるわけでございます。
次に
機械類
輸出について簡單に申上げまするが、
機械類は昨年におきましては大体七、八千万
ドル、
契約高で八千万
ドルばかり、
総額に対して一四%というような
数字に
なつておりまして、本年においては、
さつき申上げたと思いまするが、大体九%というような
数字でありまして、金額からいうて、
輸出の
実績からいうて、四千二、三百万
ドルというようなところに
なつております。パーセンテージが減少したのは、
繊維製品がむしろ金額的に殖えたからということもありまするが、まあどちらかというと、大型の
機械が最近昨年に比して減少いたしました。特に船の
輸出などは減
つております。御
承知のように船の
輸出というと、一隻百万
ドルを超えるということは、直ぐ出て参りますので、こういう大ものが減りますると、
機械の
輸出に
相当影響するわけでございます。それから又もう一つ
機械類の大ものといいますると、紡織
機械が昔から出たのでありますが、これが我が国の紡績の設備拡張というようなことも関連いたしまして、やはり海外に値段が引き合うというわけに参らん、そういうようなことで、腱械類の中ではやや凸凹がありまして、最近では船舶とか、紡織とか、ディーゼルエンジンというようなものに代りまして、むしろ、シンだとか或は自転車だとか、或は小型の消火
機械類、それにまあ車両というようなものが、
機械類の
輸出の主力に
なつておるわけでございます。これらの部門は、比較的
部分的にではありまするけれども、
特需等の影響も受け易い部門に
なつておるわけでございます。
それから鉄鋼でありまするが、鉄鋼については全体として
さつき九%と申しましたが、年初以来
輸出は好調で、特に朝鮮事変後においては、時局の影響も受けまして、海外からの引合が、どちらかというと殺到いたしまして、全額的にいうと昨年よりよほど伸びております。まあ現在の主要な
輸出品目は亜鉛、鉄板でありまして、その市場も濠洲それから今の
中共或いはフイリツピンというようなところが主な市場になるわけでございます。又亜鉛鉄板以外にも各種の鉄鋼材、或いは又鋼材に至るまでの半製品等について、特にアルゼンチン等においては需要があるわけでございます。亜鉛鉄板が鉄鋼
輸出に次いで大体毎月どのくらいになりまするか、大体五割前後に
なつていやしないかと思います。それから最近では二次製品等も
相当出て参りました。特に
アメリカ軍需生産の増大の態勢と関連いたしまして民需品がやや枯渇するというような
傾向もあると思いますが、
アメリカ等の二次製品として出るというような、従来例を見なか
つたような
輸出も行われて曲るわけであります。
又非鉄
金属はこれは申すまでもなく最も時局の転換の影響を受けるものでありまして、各国の或る程度奪い合いになる品物でありまして、九〇%というような金額的にも大きなものに上
つておるわけでございまするが、大体その中心が銅並びに銅の製品でありまして、電気銅、銅線、銅板というようなものが多いわけでありますが、かなり広汎な
地域に亘
つております。ベルギー、オランダ、スイス、イタリー或いはインドというような国々、それから又濠洲というような国々がこういう銅に対する需要が
相当あるわけであります。又アルミニュームにつきましても鋼と或る程度代替
関係に立つという
関係もありまして、朝鮮事変以後非常に国際需要が増大いたしまして、従来ありましたストックを全部売盡したというような状況に至
つたわけであります。特にアルゼンチン向けに大量のアルミニユームの
輸出が目立
つておるわけであります。
他の品物、農水産物、或いは雑貨というようなものになりますが、これは特に
アメリカの景気の回復というようなことが大きな原因に
なつて可なり軒並に伸びておるわけでありますが、一つ一つの品物について
余り詳しく御
説明することは取りあえず避けたいと思います。又化学製品、特に肥料については朝鮮事変の結果といたしまして、朝鮮における東亜最大の化学肥料工場が破壊せられた影響がありまして、特に
日本の硫安に対する
輸出需要というものが殺到しておるわけでございますが、これは衆議院の農林
委員会等においても大分問題になりまして、国内の需要と
輸出との
関係をどういうふうに調整するかという問題があ
つたわけでありますが、
香港、又最近では
台湾等に対して或る枠の中で
輸出が行われておる
関係でございます。商品別、
地域別に見た
輸出の状況はこの程度にいたして置きたいと思います。