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公述人(鈴木一夫君)
委員長さんのほうから
公述人の私たちに与えられました時間が十五分でございまして、その間に重大案件でございます
警察法改正の問題についての焦点を論じ盡すということは非常に至難ではないかと思われますので、私は午前前中述べられたかたかたと重複する面は避けるということと、極力修飾語は省いて私の
意見の要点を述べさして頂きたい、こう考える次第でございます。そう申しながらもやはり
根本問題に触れなければなりませんので本
改正案、これに対しまして直接の関連はございませんけれ
ども、法全体の問題としてやはりそこには一連の関連を持
つておると思いますので、先ほど東京新聞のほうの塚本さんもその点は御指摘に
なつたと思うのでございますが、やはり議会制、この本義から行きましてでき得ベくんば議員提出議案というものにやはり重点が置かれ、
政府の一方的な
政府案によ
つて法が提出される、そういうふうな傾向と申しますと誤解があるかもわかりませんけれ
ども、状態が可及的に早くなくなりまして、やはり
一般民衆は
自分たちの選良という
意味合いから議員に期待すること非常に大でございますので、できた法が
自分たちの法であるというふうな気持を育成するためつにも、先ほど塚本さんとやはり同じ
意見になりますが、議員提出議案がやはり重点を占めて行く、こういう恰好に行
つて頂きたいと思考するわけでございます。更に次は
現下の状態から行きまして、大陸傾向から、私たちの法機構というものが米英系の法のシステムを取入れるということに急でありますために、ややもすると
日本の国の社会的、経済的なバツク・グラウンドというものを十分考えないで、この案でいいだろうというふうな深い思考を伴わない法制定というものも、間々見られるのではないかと思われるわけであります。そういうふうな
意味合いから、折角
根本精神において立派な目標を掲げた、次から次へ出て参ります法が朝令暮改、
国会のたびことに一部
改正、一部
改正を重ねまして竜頭蛇尾に終
つてしまう。いつの間にか最初作られた法の精神がそのうちに沒却されるというふうな事態もあるのでなかろうかと考えますので、この
警察法改正に当りましても私たちは
警察法の前文に掲げましたあつの
基本精神というものは、全面的に支持したいと考えるものでございますけれ
ども、それがいつしか
警察国家、或いは官僚
国家、これは中央集権化というふうなことのないようにということを祈念するわけでございます。
次はそれにやはり総合的に
関係するのでございますけれ
ども、大体向うの
言葉の訳語でございますけれ
ども、
日本人は非常に何と申しますか、語感というものに存外囚われる習性を持
つておりまして、先ほど午前中も討議の的になりました
自治体警察の名称をどうするか、更には
国家地方警察の名称をどうするか、この名前はとにかく
国家という名前が
国民に何といいますか、
国家主義の再現を招来するような心配を与えるのだからして、こういうふうな名称はやはり是非
改正案に盛り込んでもらつたほうがいいのじやないかというような御
意見が強か
つたようでございますけれ
ども、この点私も同感でございまして、やはりほかの用語というものにも英語そのまま私たちの個々に当てはめるという場合に、マツチしない
言葉もあるわけでございますので、その語感、それを十分
一つお考え願いたい。最初余談は申上げないということにな
つておりますし、
制限時間でございますので、本論のほうに入りたいと思いますが、私たちが
警察法の前文で許容した精神、これの具体的な現われが
警察の他方分権と
運営の
民主化ということに帰着するのでないかと思うわけでございまするが、この
法律実施三年有半の実績を考えました場合に、必ずしもこれが所期の
目的を達しているかどうかということには多分の疑義が持たれるのでありまして、公僕、
警察官の公僕問題が言われながらもその公僕は結局一部のものの私僕と化してしま
つている。又
地方分権の
意味から行きましてもこの
地方分権の真意がそこに酌み取られずに孤立、対立化というふうな傾向を讓成しているなんじやないか、その結果岡
警察機構の中には相剋がありまして、統一性の欠如というものもその結果生れて来ているのじやないか。更にその結果としまして機動性、
能率性というものの低下が見られ、
一般大衆からは
警察力の弱体化というふうな批判が強く下されているのでなかろうかと思います。そこでこれらの問題を勘案いたしまして、この
改正の論点とでも申すべきところは、
根本精神においては変らない。この民主的な
警察がより
能率の高い
警察になるというのが論点でなければならないのではなかろうかと考えます。そこでそのためには
組織の改革を如何にやればいいかというふうな問題に移るわけでございますけれ
ども、先ず
結論を申上ずます前に、気付きました主な要点を指摘しまして、その後におきまして
結論を申上げたいと考える次でございます。
なお私たちの本日の使命は、
警察法の一部
改正に対する
意見開陳でございますけれ
ども、ここで私たちが忘れてはいけない大きな問題を指摘したいと思うのでございます。それは
警察の
組織法でありますこの法の
改正に汲々として、これらに
関係のあります一連の法、こういうものを私たちが育成し、或い廃止統合するというふうなまじめさというものをなくしたときには、如何に
組織法である
警察法だけをよりよいものにいたしましてもその実は挙らない。実は
警察の弱体化と言われておりますその原因の大きな中にも、新らしい
警察の
関係、或いは先ほ
どもちよつと
お話が出ました予備隊との関連、海上保安庁との関連、こうい
つたような一連
関係、相関
関係においての再検討というものに私はもう少し重点が注がれてもいいじやないか、このように考えるわけでございます。ですからここで特に指摘したいことは、単に
警察法の
改正のみに私たちは専念するのでなとに、これを活かすべくやはりバツク・グラウンド、これの人たちがやはりウエイトにおいても、努力においても惜しまないものがなければならないと考えるわけでございます。
次にそれでは本日の問題であります
警察法の実体そのものに入るわけでございますが、これにつきましての私の
意見は、結局目途とするところは
治安の
維持、更には予防
警察とでも申しますか、
治安を
維持する、それを回復するという以上に、やはり医学の
立場の予防医学のような
意味合いでの私は
治安というものが確保されなければならないのではないか、私たちには
国家警察、
地方警察、これは非常にお互い長を延ばし、短を矯めるというふうな
意味合いから非常によさそうにも見えながらも、
治安維持というこの
目的のためには却
つてこの二重の
組織が禍いをしておるのではなかろうか。それであればこれを如何なる
組織を持
つて行くべきかということになりますと、午前中の
田中さんの御
意見と大体合じようになるわけでございますけれ
ども、名称は先ほど申上げました
通りで、
府県単位の
警察と、それから
都市警察ではその
自治体の、
都市の
人口の問題はございますけれ
ども、特にローカル、
地方の
府県の
実情からいたしましたときには、その
人口十万くらいのところへ置いて然るべきでないか、それについてのいわゆるデータは揃
つておりますので、又後刻御質問の際にそれについてはお答えしたいと思います。結局におきまして名称は十分又考こることにいたしまして、
組織をとにかく一元化する。
府県の民主的な
警察とそれから
都市の民主的な
警察、そういうふうな
組織にいたしまして、結局現在の相剋の問題も、同じ
警察官でありながらも
市町村の
警察と
国家公務員であるところの
警察、この間に身分、待遇においてひとしく見えてはおりますけれ
ども、非常に大きいアン
バランスも介在する。こうい
つたような事例も
組織の一元化というところから私は解消いたしまして、
府県と
都市とのウエイトは如何という場合には、先ほどこれも
田中さんがおつしや
つたのと同じでございますが、そういうふうな
組織にして行けば、午前中に問題になりました両者の
協力、提携ということも、上下
関係ではなしに、身分待遇においてもひとしいというふうな
組織機構を考えれば、機動、
能率性というふうな問題におきましても十分の成果が挙り、
従つて国民の期待します民主
警察の
能率化という問題も私は徐々に解消されて行くのではなかろうかと思います。而もその場合私だちは現在の
改正案では満足できないのでございまして、最初
国警当局或いは
政府が意図しましたものとは
町村会長の
意見聽取、或いは
府県知事の
意見聽取、
自治体警察の
意見聽取、或いはそういう面からの反撃というふうなものからいたしまして、最初企図したものとは
相当変つたものにな
つてしま
つて、
妥協的なものにな
つておるというふうなここに実態もあるのではないかと思いますが、実際
地方で私たちが
自治体警察或いは
国家地方警察、民衆、更には検察庁というふうな方面での
意見を聞きました場合におきましても、とにかく現在よりももつと
治安の確保を頼める、頼もしい
警察にな
つて欲しい。その場合に頼もしいという
言葉の中には、ちよつと
言葉が前後撞着してしまいましたけれ
ども、そういうふうな
根本の希望は変りはないといたしましても、漸く最初企図したものよりは折衷が加えられまして、
自治体警察あたりにおきましても現在のなら我慢できる、こういうふうな
改正案なら我慢ができるのじやないか、
府県知事さんのほうにおかれましても、午前中の
意見がございましたようにとにかくまあ了解できるというふうなことでございましたけれ
ども、単にそうい
つたような反撃といいますか、そういうものによ
つて妥協されたものが、これが一応
妥協点まで来たからこれで
改正ができたので、問題はないのだというふうな微温的なものではなしに、もつと高邁な
見地からの検討がなされていいのではないかと思う次第でございまして、その
意味で先ほどそれぞれのかたかたの
意見がございましたけれ
ども、やはり公正な批判を下すという
見地に立ちましても、
自分の地位というものはどうしても人間の弱体の
関係りで介入するのではないか、こういうふうに考えます。単なる
妥協ではなしに、先ほど申しましたようによりよきものを得るという方面での真摯なる努力というものが払われなければいけないのじやないか。それで色目と申上げますと語弊があるかも知れませんが、そういうものをなくするという
意味合いからも一本の……
府県と
都市の
警察がございますけれ
ども、それが内容的には同じようなことをする、而も
府県知事の下にそれを置くということになりますけれ
ども、その
府県知事が思想的な問題と関連いたしまして、極めて右である、或いは極めて左であるというふうな場合には、二十二條の二項の精神も私はむしろ逆行するというふうなこともなきにしもあらずというふうに考えますので、現在の
国家地方警察のあの人員、あの
組織、あの装備というものは、これをとにかく
府県の
自治体の、
府県の
警察の中にこれを移行する。そうしてだんだんこれに対しましては知事その者にも啓蒙の時期が来、而も
国警が移行しました
自治体警察というものにも、その間のやはり切瑳琢磨によりまして、私はむしろそれが民主的
警察の、
一つの過程になるのじやないかというふうに考えるのでございます。でございますので結局一元化する。而もその一元化を、
府県と名称は分けてございますが、それと
都市警察……、
都市警察は
地方の
自治体からして十万以上、或いはその人的装備の面におきましては現在の
国家地方警察を延用する、そういうふうな仕組。而も更に
府県の
警察と
都市の
警察との間の上下のそこに関連はつけなければいけない。こういうふうな恰好の
あり方を期待したいと考えるものでございます。
それから更にこの中央集権化、独裁化というふうなものを防ぐ
一つの
目的といたしましては、
委員会制度につきまして、そういうまだ私たちもこれの妙味を発揮するだけの運用が十分なされていないわけでございますけれ
ども、この
委員会、例えば
警察の場合でございましたら
公安委員会の運用の妙を期するということになれば、独裁化、専制化、或いは中央集権化というようなものも、そこにおのずから私は防止できる途も講じられるではなかろうか、このように考えるわけでございます。この
国警を一応
府県の
警察に人員を延用すると言いましたのは、戰時中……、これは先ほど
田畑さんもその点を指摘されたのでございますが、人員の多くなるということは好ましくないという論拠のように伺
つたのでございますが、戰時中三重県の場合でありますと、一千名くらいの
警察官で
治安の確保がほぼできておつた。ところが現在
地方警察が八百人、
市町村の
警察が八百八名、それから
国家地方警察が六百名ばかりで、千四百余名ばかりでありますが、併しその中には二つの
組織がうまく噛み合わない
関係でのギヤツプ或いはロスというものがございますので、この一体化というものを実現しました場合には、私は一千四百名くらいの現在数で以てローカルの、とにかく
治安は確保できるというふうに、人的な問題の面から考えるわけでございます。
次は少し小さいと申しますと誤解があるかも知れませんけれ
ども、人民投票の問題でございます。現在の人民のいわゆる意識の状態というものから考えました場合には、私はむしろこの人民投票という
制度は逆効果を及ぼす場合が多いのじやないか、このたびの
地方議会の選挙におきましても、その投票が本当に正しい投票ではなく、単に数のみの投票であつたというふうな点も勘案されますので、この人民投票の
制度については更に私は十分なる考究を加えなければならんところの
余地がここに介在しているのではないかと考えるわけであります。午前中からも名
公述人のかたにおかれましていろいろな面を指摘されておりますので、与えられた時間を余り超過することも如何つかと思いますので、触れ得ない面も多々ございまして残念なんでございますけれ
ども、一応この点でとどめまして、あとの御質問の際にいろいろ調査したその内容、こういつたものを
一つお話したいと思います。以上で私の
意見開陳を終らせて頂きます。