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公述人(神宅賀壽惠君) 私は只今御紹介を賜わりました神宅賀壽惠であります。
自治体公安委員会全体を
代表するものではありませんが、その
方面の役目もしておりますので、今日は大多数の
自治体公安委員会がかように
考えておるということを申上げたいと思うのであります。
本日は参議院におかせられましては、
公聴会をお開き下さいまして、我々
自治体公安委員の
意見をお聞き下さることになりましたことを厚く感謝する次第であります。と申しますのは、二月の六日に大橋
法務総裁に全国の
公安委員の
代表がお目にかかりましたときに、永田さんも申されましたように、
法律を
改正するのに業者の
意見は聞かない、業者の
意見なんかは聞いてお
つては
法律の
改正はできないのだ、こういうお話がありました。そのときに我我が参りましたのは一月の二十五日、長崎市における
自治体全国
公安委員連絡協議会において常任理事会を開いて、その決議文を持
つて行
つて、
警察法を御
改正になるならば、一千六百の
自治体公安委員の
意見も十分お聞き取りの上で願いたいと言うたら、そういう御挨拶であ
つたのです。それにもかかわりませず参議院におかれましては、我々の
意見をお聞き下さるのでありますから、全く無上の光栄であります。厚く感謝いたします。一月の初め頃新聞で大橋
法務総裁や齋藤
国警長官の御
意見を新聞で拝見しました当時の感想を申しますと、これは
警察国家再現をするのだ、こういう
意見を述べた人もありましたが、私どもは少くともこの
改正意図の中には
中央集権的な
意見があるのだ、かように
考えまして
憲法なり
警察法なりマツカーサー元帥の書簡に相反するものになりはしないかということを恐れたのであります。その後いろいろな経過がありまして、
自治体公安委員の
代表、
自治体警察長の
代表者、
国警側からは辻
公安委員長、齋藤
国警長官等の御出席を頂きました。齋藤
国警長官の官舎において数度、いろいろお話をなさいました結果、妥結案がございました。それが法文化されて、只今議会に御提出にな
つておるものでありますが、この
法案の内容は、全部が
自治体側と
国警側と完全な
意見が一致したのであるというのではありません。大部分がそうであるというのであます。又
自治体公安委員なり
自治体警察側では、この妥結を完全なものだとは今も
考えておりません。理想的なものではないのでありますが、現在の
警察法の早急の
改正とするならば、先ずこの程度で辛抱しようじやないか、こういうことにな
つたのであります。それは大橋
法務総裁なり辻さんなり、齋藤さんのお話によりますと、共産党の八幹部がつかまらない、その他今にもその
方面の人たちの跳梁があ
つて、非常に急速に
改正しなければならん、こういう事情であるというお話でありましたので、それならばこの程度の
改正は先ず一応御賛成を申上げようじやないか、こういうことにな
つたのであります。それでその
改正要綱、或いは二月の二十日の
東京新聞に出ました当時までの
自治体公安委員会側の
意見は、二月の二十日の衆議院の
地方行政委員会におきまして小幡全国
自治体公安委員連絡協議会
会長なり私が供述してありますので、甚だ厚かましい
お願いでありますが、これを御一覧賜わりまして、私のその
方面に関する
意見は今日は省略することにさして頂きたいと、こう
考えるのであります。
それで今日申上げたいと思いますのは、御送付を受けました
地方行政委員会専門調査室でお書き下す
つた警察法改正案についての問題点、これで大体現に
政府の御提出にな
つておりまする
改正案についての主な問題点が出ておると思いますので、これについて申上げたいと思いますので、さよう御了承賜わりたいと思います。その一から三までは、これは
国家地方警察若しくは
政府に対する御疑問のように
考えますので私から申上げることは差控えます。四、五、六、七、八、これを一括しまして、即ち二十條の二の点であります。これについて私どもの
考えを少し詳しく述べさせて頂きたいと思うのであります。二十條の二に、
治安上重大なる事案につき止むを得ざる事由ありと認むるとき、
知事が
府県公安委員会に対し
警察の出動要請を認める
條項については、これは
自治体側の主体性にかかわる基本的な問題でありまして、今次
改正法中の最も重大論点とな
つたものでありまして、妥結案は絶対に
国家地方警察の優位を認める趣旨のものではありません。
国家地方警察の首脳部と
自治体警察代表側との相互にこの点において運用上過誤なきを期するように徹底的に了解し合
つておるものであります。本條におきまする
治安上重大なる場合と申しますのは、飽くまでも特別な非常例外の場合のみに限るものであ
つて、一般犯罪につき積極的に解釈することは断じて許されるべきものでないのであります。私どもの妥結しました限界は、
一つは
自治体公安委員会が全くその
機能を失
つて自主的な応援要請をなし得ないような場合、これを例えまするならば
公安委員会が暴力
団体等のために自由を奪われましてその正当な
機能を発揮できないような場合、次には
治安維持上事態が重大であ
つて、
公安委員会が速かに隣接の
自治体警察又は
国家地方警察の応援によ
つて管轄区域内の法と秩序とを回復すべき事態であるにかかわらず、その土地の特殊な勢力に圧迫せられまして、応援要請を躊躇逡巡して適切な措置を懈怠しておる場合等、特別な異例極端な場合におきまして、
治安維持の
立場から速かに事態を収拾するため客観的に見て止むを得ざる事由があると認められた場合に限りまして
知事の要請権を非常例外的に認めたに過ぎないのでありまして、このことは斎藤
国警本部長官も妥結に当りまして進んで強く同感の意を表明せられたところであります。
従つて当初の
政府案に掲げておられました特殊犯罪に関して
国家地方警察の
自治体管内への一方的乗入れという問題は理念的にも完全に撤回されたと見るべきでありまして、本條は
現行警察法の
盲点を救済するための補充的な規定なんでりあます。それから九として問題にな
つておりますること條文と六十二條と六十三條との
関係でありますが、本條は六十二條及び六十三條にいう国家非常事態の場合とは全然別個の場合でありまして、さような国家非常事態に立至
つていない場合であります。これの運用の程度に至らない一地方の局地的なものであります。この実例として斎藤長官がお挙げになりましたのは、
地方自治体が
機能を失
つておるというような場合、その場合に多く適用したいのだ、又一部思想的な不法的な行為をするものが将来蜂起したような場合、これを地方的に片付けたい、こういうのでありますから
知事にその権限を與える、こういうことにな
つたのであります。それから十二、十四として
自治体警察の、小
自治体警察と言いますか、この存廃に関することと、
国家地方警察の
管轄区域内にある
町村で
自治体警察に隣接してお
つて、
国家地方警察の地区
警察署とは非常な間隔を持
つておるというような、こういうようなところをどうするかという点でありますが、これは
自治体警察側のほうからは強くそういう隣接の
国家地方警察官轄区域内で
自治体警察と
組合警察を作
つて頂くようにお話したのでありましたけれども、これは現行法の
改正というよりもむしろ
政府、或いは自由党の政策として
考えるべき問題であるから、我々もそれには反対しないけれども、この
自治体公安委員なり
自治体警察長との協議会では別にして置こう、こういうのであ
つたのでありますが、この点につきましては五月の十七日附で全国自公連の小幡
会長から陳情をしておりますし、大阪
警察管区自治体公安委員会連絡協議会からは本院に対しても請願書を差出しておるのでありますから、これを十分御高覧賜わりまして、
自治体警察の発展
強化のために、或いは
住民の
意思によ
つて警察を自治でやろうということのために十分の御同情を賜わりたい、かように本院において御
改正案を出して頂きたい、かように
考えておる次第であります。それから小
自治体の存廃に関する点でありますが、小
自治体を
廃止しなければならないという事情はこれは主として財政面であります。今までは或いは相互援助
関係が問題にな
つたかも知れませんが、今度は
改正案で相互援助、即ち隣接の
自治体警察に対する、或いは
国家警察に対してできないのでありますから、小
自治体のその点に対する不安は、即ち弱小であるという点は解消するのであります。ただ財政の面において困
つておるために返上したい、こういうのが今後に残る
一つの問題でありますが、私は
法律を議会の協賛を得て作られて三年間、この弱小
自治体が如何にして
警察を維持するかというとように
考えさせられまして、困難の上に困難と鬪
つたのであります。これは金がないからというのがその主なる
理由なのでありますが、それは三年た
つてお取上げになるという言葉は悪いかも知れませんが、さよなうことは
自治体警察に対して
政府が本当に温かい心持と言いますか、
自治体警察を育成してやろうという
考えがないのであろうと思うのであります。これを
自治体警察側からお取上げになります数が、全部
廃止すると
警察官は一万九千とか八千とか言われる、半分ぐらいはできるだろうというのが
国家地方警察側の予想であるように或る所で聞いたのでありますが、これは勿論
国家地方警察の
強化策になりまして、地方
町村自治の本義に反すること甚だしいものなのでまります。十分に
国家警察になりましても費用はかかります。
国家警察にな
つてからその費用は外国が出してくれるのでもございません。
国民の費用でこれは支弁するのであります。最初
国家警察が二万に
増員しようという計画をなされたときの新聞の記事を見ますと、六十億というのでありまして、一人当り三十万円の国費をこれにお使いになろうとする計画であります。その半分でも、現在の
自治体にもら
つております平衡交付金の上にくれるならば、即ち現在は十六万三千五百円だそうでありますが、これを倍加でもして頂くならば、
自治体が如何に小
自治体といえども、返上するというようなことを言うものはないと私は
考えるのであります。でありますから、折角
自治体に
警察を持たしたのでありますから、そうたやすくお取上げにならないで、これを育成して頂きたいのであります。親が子供にものをやりましても、都合が悪いからすぐ取上げるということになりましたら、子供は怒ります。
地方自治体がどうしても返上しようという本当の心持の根底を十分にお酌み取り下さるならば、この
住民の
意思によ
つて返上するというようなことは、規定はできないと思います。
住民の
意思によ
つて返上するというのは、現在困
つておるかち返上するという思想であります。それを金も與えて見ずに取上げるというなら、初めからおやりにならなか
つたらいい。
警察法をこしらえるときからわか
つてお
つた事情だと思うのであります。そのときから地方の財政事情がわからなか
つたというならば、それは当時の
政府が責任を負うべきものだと私は思うのであります。その当時から悪か
つた、如何に多少でもよくな
つておる、よくな
つてお
つても困
つておるのでありまするが故に、これをどうか
国会におかせられましては、平衡交付金を十分に出すようにしてや
つて頂きたいと思うのであります。それからなお九万五千の枠を外しまして、これは枠を外すというのは、大体において減少するということにはならないと思うのであります。
自治体が、
警察法ができましたときの人口比率によ
つて割当てられたものが、その後都会におきましては
相当人口が
増加をしておりまして、
警察の職員を
増員しなければならない、こういう事情にな
つておるのであります。これは大阪の近くにも、尼崎市とか布施市とかいうのが最もその顯著なものでありますが、
増員するのでありますが、
増員されました場合に、その平衡交付金は、必要によ
つて増員するのでありますから、従前に與えられた平衡交付金の基準に
従つて、即ち定員の
一定の最高率を決定して頂いて、交付をして頂くようにお取計らいを願いたいと思うのであります。従前の比率以上に
増員をしたものは、当該
自治体が勝手にや
つたのだから、お前のほうで費用を支弁せよ。こういうようなことは、その地方の
治安維持に非常な困難を生ずるものであります。
警察職員を
地方自治体が殖やすのは、贅沢でや
つておるのでもありませんし、飾りものにするためにやるのでもありません。市
町村長並びに市
町村会議員は、
警察費の膨脹を非常にやかましく言うておるのであります。それを殖やさなければならないというのは、
治安維持上さような必要があ
つてなされるのでありますから、平衡交付金は、その
増員しました場合には、
増員に応じて、而も十分な金を出して頂くようにしたいと
お願いする次第であります。最初十八万二千八百円出そうというのが、実際の支給額は十六万三千五百円にな
つたというようなけちなことをなさらないで、十分に賜わりまするように、皆様方の御
協力によりまして、実現をさせて頂きたいと
考えるのであります。それから最後に二十一というところで、
自治体警察相互援助の出動の場合に要した費用の負担が不明瞭のようであるがというお話でありますが、條文の書き方が不明瞭なのですが、
国家警察に通知をして置いたら出そうというのでありますが、これを明確にして頂くこと、私どもの熱望するところであります。非常事態で応援を、非常事態と言
つても、小さな市
町村だけの非常事態ですけれども、急を要する場合に、
国家地方警察へ御案内を申上げて、それから応援要請をする、或いは要請に出かけるということのできない場合もありましようから、その点を十分御考慮下さいまして、法文化して頂くと結構であります。斎藤長官はそういう場合は勿論出そうじやないかということで、この條文を作る場合に明確にならなか
つた憾みが私どもあるのでありますが、そういうお話でありましたから、どうかこの現行法を
修正を願えれば、さようにして頂いたほうが、
自治体側といたしまして最も喜ぶべき点であります。まとまらないことを而も無遠慮に申上げましたが、どうか意のあるところをお酌み取り下さいまして、私どもの
希望に副うように
改正案が通過することを
お願いする次第であります。