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政府委員(奧野誠亮君) 昨年
地方財政平衡交付金法を立案するに当りまして、いろいろな
考え方があ
つたわけでありますけれども、
地方財政の
平衡化を進めるためには、
税收入を一〇〇%把握すべきではないか、こういう
考え方が有力にあ
つたわけであります。各
地方団体の
財政需要を測定いたしまして、更に
財政收入を測定いたしまして、その
差額を
平衡交付金として
交付するわけでありますから、各
地方団体の
財政需要を個々に的確に把握いたしまするならば、この法律の理想から言いまして、
大臣が
先ほどお話になりましたように
收入も一〇〇%と見るべきであろうと思うのであります。併しながらこれに対しまして
地方財政委員会といたしまして持ちました
考え方は、若し
税收入を一〇〇%計算に入れるということにいたしますと、
税收入を測定いたします際に、各
地方団体が現実に課税いたしました額というものを
基礎にして計算せざるを得ないものが非常に多いだろう。そういたしますと一生懸命に課税対象を把握いたしまして、
税收入を挙げました
団体はそれだけ
交付金を少ししかもらえないということにな
つてしまうわけでありますから、
徴税意欲を阻害するだろうということを第一に心配したわけであります。そこで
税收入は七〇%しか計算に入れない
半面に、その
程度だけ
財政需要も切下げて、全体について測定しなければならないということにな
つて参るわけであります。ところが一年間この結制度を運用いたして参りました果、現実の個々の
団体の課
税額を
基礎にしないでも、
相当多くの部分につきましては、客観的な測定方法があるということを発見して参
つたわけであります。そうするのならできるだけたくさんな
收入を計算に入れたほうがこの制度の理想にかなうのではなかろうかというふうに
考えておるわけであります。例えば遊興飲食税の額を把握するにいたしましても、一面には遊興関係の業者に国が課しましたところの所得税の課税標準額を
基礎にと
つております。もう一つには、これらの業者の数を法人経営のものと個人経営のものとに分けまして
基礎にと
つておるわけであります。こういうふうなものを
基礎にして測定して行くのなら、何も七〇%を把握しないでも場合によ
つては全額を把握いたしましても、必ずしも
徴税意欲を阻害するということにならないわけであります。これが第一点であります。
第二点は、今までは個々の
地方団体の
財政需要を測定するというふうなことは少しもや
つて参らなか
つたわけであります。
地方財政を調整する制度といたしまして、
地方配付税制度というものがあ
つたわけでありますけれども、この場合におきましても課税力が全国平均よりも少い
団体にはそれだけ多く行くように配分しておりましたけれども、課税力というものは山の中の農山村の課税力も、或いは東京や大阪の
大都市におきますところの課税力も同じに見るべきではないだろうと思うのであります。言い換えれば、課税力が不足しておるから不足額を補わなければならないという場合の課税力は、同一に見るべきではないだろうと思うのであります。併しながら
地方財源の徴税制度として
地方配付税制度をと
つておりましたときには、やはり同一に見てお
つたわけであります。言い換えれば、余り個々の
地方団体の
財政内容に深入りしたような徴税制度は避けなければならない。それによ
つて個々の
地方団体の自主的な
財政運営というものを成るべく尊重して行かなければならない、こういう
考え方を堅持して参
つたわけであります。併しながら
地方財政平衡交付金制度におきましては、何百種類という個々の、国からの補助金を通ずる関渉を一挙に断ち切
つてしまいたい。かたがた
半面個々の
地方団体の必要な
財源というものは完全に確保されるようにして行かなければならない、こういうところから一万有余の個個の
地方団体につきまして、現実に必要な
財政需要というものを測定して行かなければならないことに
なつたわけであります、言い換えれば、
地方財政につきまして革命的な変化が加えられた年が
昭和二十五
年度であります。未だ曾
つてない一万有余の個々の
地方団体の個々の
財政需要を測定いたして参りますというのは大事業であります。これを我々は個々の
地方団体に現実に適応した
財政需要というものを一挙に把握できるだろうかどうだろうかということにつきましては、非常な不安を持
つて参
つたわけであります。併しながらいろいろ運営いたして参りますと、大体甚だしい不的確なことのない
程度に測定することが可能ではなかろうかという自信を持ち始めたわけであります。最初に申上げましたように非常に不安でありましただけに、不的確な形において或いは教育費、或いは土木費、或いは衞生費として測定されたものが、それが個々の
地方団体が則るべき
財政需要として、言い換えればその
団体が編成すべき予算の項目として
考えられてはならないという気持を持
つたのであります。不的確に測定されましたところの個々の衛生費、個々の土木費というものが、その
団体の
財政規模、或いは予算の編成に当りまして、そのまま基準となるようなことにな
つてしまいますと、甚だしい不当な
行政が行われて来ることになるわけであります。而も又個々の
地方団体につきまして土木費が幾ら、或いは警察費が幾らというふうな金額が出て参りますと、それぞれに関係する人たちからどうしてもその
程度の額までは予算に計上しないと
承知しないというふうな問題も生じて来るわけであります。そうすればこのような自信のない
財源需要の測定なら、標準的なものよりもできる限り少い金額、言い換えれば必要最少限度にとどめる必要があるのじやないだろうか、言い換えればできる限りこれを最少限度の
財政需要として測定して行く代りに、若干のものをプラス・アルフアとして残すべきではないか、必要最少限度のものとして測定して行きますなら、そこに若干不的確なものがございましてもプラス・アルフアとして残されました
財源を以て足りない部分は補う、若干多いものは或いはそのままでもよろしいでしようし、僅かなものは調整も可能だろうと思うのであります。そうするのならプラス・アルフアとして残すための
財源を
考えて行かなければならんわけであります。そこで
財政收入は全額を把握いたしませんで、七〇%にとどめたいというふうに
考えたわけであります。併しながらこの欠陥も、一年間の運営に徴しますればそう甚だしい不的確もなく測定して行ける、更に二十六
年度におきましては一歩的確性に近付けて行くことが可能であるというふうなことを
考えたわけであります。それなら
地方財政平衡交付金制度の持ちますところの理想に、一歩々々近付けて行く
意味合いにおいて基準
財政收入七〇%として計算いたしますものも八〇%に
引上げたほうがよろしい。これが又逆に全
地方団体におきまして
先ほど次長からいろいろ
お話がありましたような
財政需要の増加があ
つたわけであります。
半面に又、
地方税法の改変におきましては若干税源の偏在するものが出て参
つております。例えば市町村税について申上げますと、新たに法人税割を課することにいたしました。現に固定資産税がかなり偏在しておるわけであります。これにつきましても若干研究問題が残
つておるわけであります。その上に、更に法人の所在いたしますところの市町村におきましては法人税割が加わ
つて来るわけでありますから、従来の持ちました偏在性が一層強化されることにな
つてしまうわけであります。
税收入が偏在するということは
平衡交付金制度の下におきましては、
基準財政需要額から
基準財政收入額を控除いたしましたものは
交付金であります。ところが偏在する
団体におきましては、この基準
財政收入が大きいわけであります。大きくな
つて余
つて参りました税源というものは、他の
団体では使えないわけであります。言い換えればそれだけ無駄が生じて来るわけであります。この無駄を少しでも少くしようとしますなら、基準
財政需要から控除いたしますところの基準
財政收入が標準
税收入額の七〇%でありますよりは、八〇%にいたしましたほうが、無駄の生ずる生じ方というものは少くな
つて来るわけであります。この面からもやはり七〇%を若干
引上げなければならないというふうな問題が生じて参
つたわけなんでありまして、私はこれは税種の一面を取
つて申上げたわけであります。
地方税全体に対しまして若干その嫌いが生じて参
つておりますのは事実でございます。こういうふうなものを総合的に
考えました結果、
先ほど西郷委員から縷々おつしやいましたことも一つの形式であります。我々もこの両案につきましていろいろ
考えたのでございますが、只今私が申上げましたような
意味合において、現に提出いたしておりますところの案を最善と
考えたわけでございます。