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吉川末次郎君
只今委員長のお話がありました神戸、京都、大津及び名古屋、当時なお膝元の東京都においても同様な、主として
朝鮮人を中心といたしますところの一種の
騒擾事件が起りまして、院議に基きまして我々三人が神戸、京都、大津、名古屋に出張を命ぜられまして、その事件の
いきさつ等につきまして、調査をいたしました結果について御報告申上げたいと思うのであります。我々はその間現地におきまして、
自治体警察、
国家地方警察、並びに
検察当局及び知事、市長その他多くの関係者に面接いたしまして、これにつきまて事情をいろいろと聽取いたしまして、大体におきましてその事件の全貌は把握することができたと思つておるのであります。我々が調査いたしましたところの具体的な内容につきまして、ここに
調査報告書を大体用意いたしておりますが、つぶさにそのことをば詳しくお話申上げるということは冗漫にもなりますし、又相当時間を要するかと思いまするので、その調査に参りました四つの地域、特に神戸市に起りました事件につきまして、やや詳しくお話を申上げまして、大体において共通点が非常に多いのでありますから、それについて御了知を得まして、他の地におけるところの事件の内容につきましては、この報告書を速記録にそのままお載せを願いまして、それによりまして詳細のことは御了解下さるように
委員長にお取計らい願いたいということを先ずお願い申上げる次第であります。
それで今申しましたごとく、神戸の事件の内容につきましてお話し申上げて見たいと思うのであります。
朝鮮事変が発生いたしましてから、
神戸地方の、以前、民青系と言われておる、
民主主義青年同盟でありますか、民青系と大体言われておるのでありますが、その系統に属しておりまするところの
朝鮮人は、
日鮮共同の反帝闘争、即ち
帝国主義反対鬪争という名によるそうした運動のために、
特別工作隊と名付けるところの団体を結成いたしておつたのであります。それは
專ら青年行動隊とみなすべきところの、行動を目標に置きました一つの団体でありますが、それによりまして、国連に対するところの反対的な
秘密活動を
朝鮮人のこの団体が続けておつたのであります。ところが昨年の十月に入りますると、その
特別工作隊を組織いたしまするところの青年層のほかに、前の朝連系の幹部、それから
朝鮮人の
父兄会等の
北朝鮮系の勢力をば一体化しまして、そうして名目といたしましては、
レツド・パージの反対、反税即ち税金の徴収及び増徴等に対するところの
反対運動であります。反税運動と一般に言つておるのでありますが、それから
越年闘争、即ち
越年資金をよこせというようなことを目標にいたしました反
税越年闘争に
朝鮮人のすべての
生活闘争をからみ合せまして、そうして活溌な動きを示して来まして、地方におきまして治安上、看過しがたい情勢を呈して来たのであります。十一月の下旬頃からこれらの
朝鮮人は
神戸市内の市の各
区役所に押しかけまして、
朝鮮人に対する市民税を全免せよ、或いは
朝鮮人に対するところの
生活保護法の適用というようなことを
要求項目といたしまして、波状的に集団的な陳情を行いまして、旧朝連系の幹部や、先に申しました
特別工作隊員等が、これを指導するような模様でやつたのであります。特に神戸市の長田区の
区役所の管内というものは、
ゴム工場等に働いておりました
朝鮮人が特に多いのでありますが、その登録数は七千六百二十三名、
神戸市内に
朝鮮人労働者が居住いたしておりますその約半数であります。それからそこに更にそれ以外の移住者約一千名を加えまして、約九千名が
朝鮮人として在住しておるのでありますが、今申しましたようにこの
長田区役所に押しかけましたところの
陳情運動が、外の地区に行われましたよりも特に激しいものであつたということができると思うのであります。十一月の二十日には
朝鮮人六十五名、同じく生徒約二百名が今申しました
長田区役所に押しかけまして、形勢が不穏となりまして、出動いたしました警察官は
公務執行妨害の現行犯といたしまして、全相福という
朝鮮人を警察のほうでは逮捕いたしたのであります。十一月の二十四日には、約三百名の
朝鮮人及び
朝鮮人の生徒が二隊に分れまして、一隊は教師に引率されまして、
長田警察署に押しかけました。そうして先に申しましたところの全相福というこの警察が逮捕いたしました
朝鮮人の釈放を要求いたしました。そうして二隊の中の一隊は
長田区役所に
集団示威行進を行いまして、革命歌を盛んに合唱いたしまする等のことで気勢を挙げまして、午後は約三十名の
朝鮮人が区長の部屋に入つて参りまして、内外呼応して喧騒を極め、区長が出て行けというところの退去の要求にも応じないで、
朝鮮人の生
従数十名は
区役所の庁舎内に侵入しまして、
窓ガラス或いは
区役所の什器等を破壊する等の暴行を働きましたがため、二十六名がそのために逮捕されたのであります。その二十六名の中には日本人も若干名含んでおるのであります。なお当日は、以上のほか
葺合区役所、それから
葺合警察署、
長田税務署及び
長田警察署、生田県
税事務所及び
灘区役所の各地に先に申しましたような形においての
集団陳情が行われたのであります。
十一月の二十七日には、朝からこの
西神朝鮮人学校という
朝鮮人の学校、西神というのは西と神戸の神であります。
朝鮮人の父兄や生徒が続々集合しておるというところの情報がありますし、更に又
姫路地区、
相生地区、大久保町の方面から神戸市に向つたというところの情報がありましたので、
神戸市警察局は
緊急事態に備えて、
神戸地方検察庁、
国家地方警察側とも連絡して
警備体制を整えておつたのであります。午前十時過ぎに、学校におけるところの集団は約四百名に達しまして、前回の事件で勾留中の被疑者の
釈放要求と、
生活保護の陳情を行おうと気勢を挙げますと共に、これらの
朝鮮人と呼応していると認められるところの
自由労務者、それから
民主商工会の会員、それから
朝鮮人らは市内の各税務署、
区役所等に
集団陳情を名として押し寄せまして、警察力の分散を企図しておるというように考えられるので、午前十一時に
神戸市警察局長は
甲号非常召集を発令したのであります。同日正午頃になりまして、今申しました
西神朝鮮人学校の
朝鮮人の集団は、代表者を選びましてそれぞれ
神戸市役所、
長田区役所、
神戸地方検察庁等に対して、前に言いましたような要求の交渉を始めたのでありますが、学校の中におきましては刻々参集者の数を増加して参りまして、ここに集まりましたところの
朝鮮人らは手に手に棍棒、或いは薪のようなものを携えまして、そうして学校の校庭には
石ころ等を投げるために用意して、そうして不穏の形勢を示し、特に白鉢巻をしましたところの青年約百五十名が中心となりまして、
スクラムを組んで行進の演習をしまして、
実力行動に移行せんとするところの徴候が極めて顯著であるという情報が入つて来たのであります。午後三時頃には、約九百名の集団となりました学校内の
朝鮮人は、三列縦隊の
スクラムを組みまして、解放歌を高唱し、梶棒、薪など、先に申しましたような兇器を振りかざしまして同校の南門から表通りに出まして、北のほうに行列して進んで、行進を始めたのであります。
学校附近に
警察隊が待機しておつたのでありますが、
警察隊はその後方から追尾していましたところ集団から
警察隊に向つて猛烈に石を投げるようになりましたので、そこで
警察隊は、この行列をして行進をしておりますところの石を投げた者の検挙に移りまして、ここで
警察隊とこの
朝鮮人の
行列行進隊との間に大乱闘が行われて、そうして激しい抵抗を排して
警察隊は現場で約百二十名の
朝鮮人を逮捕したのでありますが、残余の
朝鮮人集団は、沿道の民家、
巡査派出所等に投石いたしまして、警察を誹謗いたしますところのビラを撒き散らしまして、そうして途中警察官と衝突しながら
長田区役所前広場に至りまして、同
区役所及び隣接の
長田税務署に石を投げ、梶棒を振つてこれを襲撃し、
窓ガラス等を破壊したのであります。午後四時頃、計百八十一名に達する
大量検挙によりまして漸く暴徒を鎮圧することができたのであります。夜になりまして更に十二名を逮捕いたしましたので、逮捕いたしました
朝鮮人の総数は百九十三名になつておるわけであります。
この
騒擾事件の負傷者は、警察側では五十名、
朝鮮人側では三十七名というところの報告を
警察当局から現地におきまして聞いたのであります。逮捕しました者は取調べの結果、九十八名が騒擾罪及び政令第三百二十五号の違反として起訴されたのであります。
これが神戸の事件でありますが、大体他の地域におきましても共通点が非常に多いのであります。併しながら必ずしもその要求いたしておりまするところの事柄、或いはそのときの暴動の起りましたことについての、闘争の題目といたしておりまするようなことは違つております。又京都のごときは、それに
自由労働者及び
京都大学の学生を中心とするところの
学生隊等も参加いたしておりまして、
朝鮮人だけの運動ではないのであります。ただ併しながら時を同じくしてそれが行われており、その闘争の題目、或いは闘争の様相は多少違つておりますけれども、目標にいたしておるところは大抵同じものがあるだろうと思われるところに、極めて重視すべきところの点があるのではないかと考えるのであります。名古屋、大津及び京都のことについての具体的な事件の内容は、さつき申しましたごとく、ここに申上げることは長くなりますから省略いたしますが、大体以上申しましたようなことにおきまして、こういうことが窺われるのであります。
第一には、これら各地におけるところのこの
騒擾事件というものが、非常に計画的に行われたということであります。即ち同時多発的に、ほぼ時を同じうして各地に事件を起しまして、そうしてその目的は警察力の分散を狙つたと見られるのでありまして、即ち今お話申上げませんでしたけれども、名古屋の
愛知県庁に対するところの
集団デモ事件と、神戸の只今報告いたしました
長田区役所及び
長田税務署襲撃事件等はいずれも十一月の二十七日であります。それから名古屋におきましては翌二十八日にも、これを繰返しているばかりでなくして、十一月の一日に起りました
大津地方検察庁に対する
デモ事件は、彼らの当初の計画では十一月二十八日に決行する予定であつたと言われておるのであります。更に二十七日当日、京都におきましては先に
日本共産党京都府
委員会が開催されまして、
井上電機の犠牲者、
レツド・パージを受けました犠牲者であります。それの
奪還祝賀大会というものが計画されておりましたのですが、その集会の許可が与えられなかつたので、共産党の
公開党大会と称しまして、個々の参集者五百名が気勢を挙げたのであります。又十二月一日
大津事件の当日は、競輪が催される予定でありましたので、大津市の警察はそのほうに警備が割かれるだろうというようなことを予定した。併しながらそれは雨天のために中止されたのでありまするけれども、そういうことを非常に狙つてやつておるということが、当局からは報告いたしておるのであります。即ち以上申しましたようなことにおいて、非常に計画的である。そうしていわゆる同時多発的な戦略で以て、それを同時にやつたということが窺われるのであります。暴徒の行動に見られるところの計画性につきましても、名古屋の事件について見まするというと、三々五々各地から余り目立たないような方法で
ひつそりと集まつて参りまして、そうしてそれが一定の所で集合して群集となり、或いは
グループと
グループとが一定の地点で計画的に合流いたしまして、そうしてそれが有力な集団となるように初めから計画しておる。或いは他の地区から一味を動員いたしまして、大集団を形成する等の集合の方法や、例えば
愛知県庁の
ガラス窓が破壊されたのでありますが、その場合に用いましたところの
朝鮮人学童の
パチンコ操作、子供がよく鳥を打つたりする遊びに使つておりまするところの
パチンコに石ころをつけて、コムの弾力ではね返して鳥を打つあの
パチンコであります。それを非常に使つておるのでありますが、それは名古屋におきましては、県庁の
窓ガラスを割るのに子供にそれを使わせたのでありますが、同様にこれをほかの所でやはりその
パチンコを使つておる。或いは目潰しをするために、紙でこしらえたところの紙筒の中へ唐辛を詰めて来まして、そうしてその唐辛しの紙筒を振り廻して、警察官その他の目潰しをやるというようなことは、名古屋で検察庁の当局がそういう証拠品を挙げて来て、我々にいろいろと説明いたしたのでありますが、そのほかの地方でもやはり唐辛の紙筒を警察官の目潰しに使う。或いは集団的にそういう行動をして押しかけて来るときには、警察官に
ピストルなどをば使用させないように、又相手方の戦闘力を削ぐという計画的な戦術によつて、これは東京でも同様であつたということでありますが、いたいけない小さな子供、それからか弱い女等をばその
示威運動の先頭に立たせまして、そうしてその子供にわざと警察官に冗談を言つて、
ピストルをいじくらせたり何かして、そうしてそういうことをやらさして、まあ向うの言葉で言いますと、「おつさん、ええ
ピストルやなあ」というようなことを言つて、その子供に警察官の腰の
ピストルをいじくらせたり何かさしておいて、そうしてその隙に青年が石を投げたりいろいろなことをやつておるというような、そういう行動も視察いたしました地域においてそれぞれ極めて共通的なものがあるのであつて、一定の統制のある行動をやり、又かねてそういう訓練を相当にやつて、然る後にこれをやつたということが窺われるのであります。
第二に、視察いたしまして共通的に感じますることは、さつき具体的に御報告いたしました事例によつておわかりになりますように、それが暴力的であり、又戦闘的であるということであります。これらの暴徒らは警察との衝突に備えまして、あらかじめ小石或いは瓦片、目潰し、梶棒等の
攻撃道具を用意いたした者が多いのでありまして、又実際にこれらのものを使用いたしまして、果敢、執拗に
警察官等に抵抗して、攻撃を警官に加えておるのであります。名古屋の旧朝連の
財産接収反対運動、そういう旧朝連の
財産接収に反対するという
闘争題目で名古屋ではそうした暴動が行われたのでありますが、その中心地でありまするところの
中村会館というところでやつたのであります。そこにおきましても
神戸騒擾事件の根拠地でありまするさつき申しました
朝鮮人の
西神小学校におきましても、戦闘的な
青年行動隊員が
尖鋭活動の中心となつておるのであります。殊に神戸の場合は、先に御報告いたしましたように、彼ら青年は白鉢巻をいたしまして、みずから決死隊であると放言いたしておるのであります。又暴徒の行動は警察力に対しまして極めて挑戦的でありまして、警備に当るところの
警察官等が、これに誘発されて行き過ぎた行動に出ないように苦心したというように警察のほうの幹部は私たちに言つておるのであります。又警察官と衝突するに当つては、先ず警察官の帽子を奪うというようなことも戦術として共通的にやつておるのであります。名古屋の事件におきまして、血と汗で築いた会館は血で守る、
台東会館、これは東京の事件でありますが、
台東会館のようにやるから犠牲を覚悟してかかれというような言葉を使いまして、その言辞は
実力行使を暗示しておるということが窺われるのでありまして、その行動は極めてさつき申しましたように挑戦的であります。
それからいわゆる共産党的テクニカル・タームを以ていたしますると、
地域権力闘争の展開と見られるのであります。それにつきましては
日本共産党の機関誌の「前衛」第五十三号にそうした
地域権力闘争のことについての記述があるのでありますが、長くなりますからこれは省略いたしますが、どうぞ報告書によ
つて御覧を願いたいと思うのであります。今回の事件及びその前後に起りましたデモ、
集団陳情、
集団暴行等の対象の多くは県庁、検察庁、警察署、それから税務署、市役所、
区役所、
県税務事務所、
職業安定所等の官公署であります。又各地で
各種各様の問題をとらえまして陳情、要求、抗議等を名として、
デモ行為から
集団暴行、
騒擾事件になるようにいたしておるのでありまして、
要求事項は、例えば十二月一日に大津の
地方検察庁に対する
ところデモ事件の際に、庁内に撤かれました朝鮮語によるとこのビラの内容の一端をここに翻訳したものによりまして御報告いたしますと、このようなことが書いてあるのであります。
吾等は次のことを要求する。
一、夫の賃金では食つて行けない。
一、寒さを凌げる内職をよこせ。
一、貧困な同胞に正月を越せる物品を無料で出せ。
一、米代を上げるのは反対だ。
一、失業者に家賃、電燈、水道、米代を無償でせよ。
一、
生活保護法を適用せよ。
一、
朝鮮兒童に
教育補助金を出せ。
一、先生に
越冬資金三カ月分を出せ。
一、晝食のかけを認めよ。
一、炭、毛布等の
越冬物資を出せ。
一、にんにく、唐辛、胡麻、塩辛、白菜を出せ。
一、
商工業者に無担保、無利子の資金を借せ。
一、貧困者より一切の税金を取るな。
一、
職安労働者に食える賃金一日三百円を出し、一切の失業者に職を与えよ。
一、朴光海、岡田を初め、あらゆる愛国者を
即時釈放。
この朴光海、岡田というのは、これはこの指導者でありますが、それが大津におきまして検束されておるのであります。
一、
朝日人民間の離間を策動する八幡の
暴力団捏造事件を即時取消せ。
一、何の根拠のない
救護資金の
捏造事件を即時中止せよ。
一、あらゆる捜査に
外国人登録証を悪用するな。
一、今回の事件に誣告、中傷をし、同胞を日警に売らんとする
居留民団を叩きこわせ。
一、
義勇軍募集絶対反対。
一、
国連協力の美名をかり、
朝鮮内戦に対し
干渉反対。
一、戰争反対、
ピストル政治は真つ平。
一、一切の
外国軍隊は朝鮮より手を切れ。
一、
自由平和独立を守ろう。
というようなことであります。そこで旧朝連系の
朝鮮人と
共産主義勢力とが連携合作して、そうして事件の主導力を握つておるということは明らかでありまして、各事件で検挙されました者の顔触れ、経歴などからそのことが十分窺われるのであります。各事件に殆んど常に
日本共産党名で激越な文句の
アジビラが撒かれ、或いは貼られ、又
共産党員の
アジ演説等の応援が行われているのであります。
共産党幹部級の
有力分子というものは、殆んど第一線の行動には出ていない、わざと出ていないように見えるのであります。間接的な応援乃至指導に当つておるもののように思われると、当局は我我に報告いたしておるのであります。従つてこの地域におけるところの
日本共産党の幹部級の者で検挙された者は極めて少いというのが、当局の我々に対する報告であります。併しながらその他事件前における両者間の往来、動静というようなものは認められて、実質的には共産党の各地における支部が合作して、こうした事件をやつたものであるということは明白であるというのが、当局の説明でありました。
大津事件におきましても、
京都円山事件におきましても、先に若干御報告いたしましたが、一部の
自由労務者が一翼として参加いたしておりますことは、注目すべきことであると思うのであります。
自由労務者は、従来といえどもしばしば各地におきまして、職よこせの
集団デモ事件を起していたのでありますが、今回の事件におきましては、
朝鮮人、学生等の集団と合流して、
集団暴行に加わつているのであります。最近
レツド・パージによつて解雇された
尖鋭分子は、その旧職場に働きかけても受入れられなくなりましたので、方向を変えて
自由労務者に対する働きかけに力を注いでいるとの情報と睨み合せまして、この
騒擾事件における
自由労務者の動向と役割を大体推察することができると、当局は我々に説明をいたしているのであります。
神戸の
騒擾事件に関して男二十名、女四十六名について
警察当局が行いました、
デモ行進をやつたときの、その
デモ行列行進が通過いたしましたときの市民の記録なんかを集めているのでありますが、その
警察当局が私たちに物語るところのことをば、
参考資料としてここに申上げますというと、「
デモ行動沿線罪体調査」というのでありまして、昭和二十五年十一月二十九日午後五時現在での調査であります。これらの沿道の人間が、
警察当局にそのときの事情について申しておりますところによりますというと、大体次のようなことが言われているのであります。
一、戸を閉めて屋内でふるえていた。
二、玄関の戸を閉め、奥の間に逃げ込みふるえていた。
三、屋内で子供とふるえていた。
四、屋内で手を耳に当てふるえていた。
五、鮮人の殺気立つた空気を見て焦躁と不安にかられた。
六、恐ろしいので屋内に隠れていた。
七、店の商品をなおして屋内に逃げた。
八、家を捨てて逃げた。
九、鮮人が家に侵入して来たので、奥の間でふるえていた。
一〇、鮮人が家に侵入して来たので、窓から飛び出て逃げた。
一一、家の裏口へ鮮人が侵入して来たのでふるえていた。
一二、鮮人が靴ばきのまま畳の上に上つて来たのでふるえていた。
一三、恐ろしくて屋内で仕事が手につかなかつた。
一四、志里池小学校教頭は生徒を避難させた。
一五、八百屋の台を暴徒にひつくり返された。(被害一千二百円)
一六、事務所の門を閉めた。
一七、事務所の警戒についた。
一八、警察官に対する暴行を見て不安焦躁にかられた。
一九、鮮人が唐辛を持つているのを現認した。
二〇、事務所の責任者が人夫を避難させた。
二一、
区役所で机の下に隠れていた。
二二、
区役所の小使室に逃げた。
これは
区役所の吏員だろうと思いますが、
二三、座布団を頭の上に乗せて避難した。
こういうようなまあ調査を
警察当局が我々に報告いたしているのでありますが、大体においてそのときの実情と、それを目撃していたところの周辺の人心の動きがこの一端で御了承を願えるかと思うのであります。
以上のようなことで、結論的に我々調査団の共通いたしますところの所感を申上げたいと思うのであります。この種の事件は、これを個別的に切り離してばらばらに観察するのでは、到底その真の性格と意味を把握することはできないと考えます。千変万化する事件の表面的形態に眩惑されるということなくして、これを一連の相関関係において把握し、その奥に潜み、その根底にあるものを衝かなければならんと思われるのであります。即ち今回の各事件は、表面の様相は異なつておりましても、ひとしくいわゆる二つの世界の対立する国際政治情勢を反映するものとして、これを総合的に認識する必要があると考えるのであります。更に具体的に申しまするならば、今回の事件はいずれも朝鮮動乱の推移に刺激され、影響された
共産主義勢力と、旧朝連糸の
朝鮮人の
尖鋭分子らが互いに気脈を通じて、現下の情勢を利用し、勢いに乗じて学生、
自由労務者、一般左翼分子等に働きかけて、共産党のいわゆる
地域権力闘争を同時発生的に各地に展開いたしまして、その暴力的戦術を実地に試みることによつて、かねて企図しているところの暴力共産主義革命行動の予備演習をやつたものとまあ疑われても、彼らはこれを否認することはできない、断じて否定することはできないであろうと私は考えるのであります。これが我々視察団の共通的に、三名の名で御報告申上げたい事項であります。
次に、私、一委員といたしましての私見が多少加わるかと思うのでありますが、今結論的に御報告申上げましたように、それが国際政治との関連性において行われているところの、共産主義的な暴力革命的行為の少くとも予行演習的なものとして行われているということについて、各地におけるところの調査いたしました
警察当局が、そういう認識が極めて薄弱である。或いは極言いたしまするならば、私たちが今御報告申上げましたような考え方を少しも持つておらなかつたと言つても誤りでないほどの認識しかなかつたということが、私は極めて重要なことではないかと考えるのでありまして、それがどこから来るかということが、警察行政のことを担当いたしておりまするところの
地方行政委員会において考えられなければならないことであるかと思うのであります。例えば名を挙げると、視察に行きましたその土地の人が、或いは困られるかも知れませんが、露骨に申しますると、各地ともすべてそうであります。併しながらその例として、例えば京都府の
国家地方警察の公安
委員長のごときは、我々に対しましてそれほど重大な事件であるというわけでもないのですから、どうぞできるだけ穏便に済ましたいと思うというような話でありまして、全く今申したような横断的な意味において、それが行われているというところの何らの認識がないということを表白いたしておるのであります。そのほかの地方においても皆そうであります。考えますのに、そういうような見方をするということは、第一には警察組織におけるところの必要
委員会及び警察行政の単位というものが地域的に独立的なものであつて、横断的な連繋というものは必ずしも完全でないということが、一つの原因であるかと思うのであります。大津でその事件が起るならば、大津
自治体警察の所管としての大津市内の一つのローカル・アフエアーとしてのみしかその
警察当局及び公安
委員会はそれを考えない。それが今言うように同時に多発的に全国各地において行われておるということについての関連性をどうしても考えないようになるのであります。
それからもう一つは、こうした重大な政治的な意味、国際政治的な意味、或る意味におきましては治安上におけるところの警察行政上の事件といたしまして、現段階におけるところの最大の問題であり、又日本における政治上の最大の政治問題の一つであるとして考えなければならん。そうした事件というものをば、そういう重大な意味においてこれを少しも考えない。そう考えることができるような知的能力を持つたところの責任者というものが、各地において公安
委員会の委員或いは警察署長の職に必ずしも就いていない。彼らのインテリジエンスからするならば、その事件が余りにその知的能力より離れたる大きな問題となつておるというようなことを考えるのであります。
それからもう一つは、これ又私見でありますが、たびたびこの
地方行政委員会で言つたことでありますけれども、共産党の行動というものが如何なるところの理論的な基礎において、それが行われておるかということに対する、多くの政治家というものの認識の欠除でありまして、これは本
委員会において特に私が吉田首相及び樋貝、殖田その他のいわゆる治安閣僚を招致いたしまして、この問題について多くの言を費して質問し、論戰をいたしたのでありますが、吉田内閣総理大臣を初め、治安閣僚の当局というものが、共産主義撲滅、或いは共産主義反対ということを旗印にしながら、その反対をしておるところの共産主義というものはどういうものかという、即ちマルクス・レーニン主義に対する理論的な認識というものを持たないで、ただそういうことを叫んでおるところに、私は吉田内閣総理大臣に対して……、自由党内閣の持つておるところの最大の外交及び政治上における欠陥があるのであるということを言つたのでありますが、同様のことを痛感するのでありまして、中央の国政の担当者それ自身が、現下の世界に対処すべきところの、相手方の理論的な基礎というものに対する何らの理解を持つておらんのでありますから、況んや地方警察の警察長、或いは公安
委員会等が十分なるこうした理解をしておらんということは、又無理がないということも言えるのでありますが、これは非常に大きなる私は政治上の問題であると考えておるわけであります。これは私見になりますが、併しながら私の私見は、更にこれらの問題を調査いたしまして痛切にそれを感じたのであります。それらの詳しいことは議論に亘りますから、これを省略して置きます。
それからこうした神戸事件、その他の事件のその後の処置につきましては、新聞記事等で多少その後知つたのでありますが、大橋法務総裁の、新聞紙上におけるところの記事による総裁の言といたしまして、これらの暴動を起すような
朝鮮人をば本国へ返すということでありますが、総裁からその詳しき意見の内容を承わりたいと考えておりますが、それは当然に考えられるべきところの、この際適切なる処置であるというように私も考えるのであります。ただ聞いておりまするところでは、視察に行きました名古屋の検察庁で聞いたことでありますが、南朝鮮では
共産党員が若し日本からでも送還されて来るならば、何か向うの本国ではすぐ死刑に処せられるということになつておりますから、これは一つのエピソードでありますが、これはやはり調査の内容でありますから、エピソードとして申上げたいと思うのであります。
それからなお、これは京都の公安委員の一人で、アメリカに長くいた人が我々に話したことでありますが、アメリカではそうしたアメリカ全国を通じてのそういう国家的な意味を持つた、ナシヨナルな意味を持つたところの警察行政、各地域別的に、各州或いは各自治体において地域的に分別されておるところの警察行政の横断的な立場からする欠陥を補充するために、フエデラル・ビユーロー・オブ・インヴエステイゲーシヨンというものがあつて、それを補充しておるということを話しておりましたが、私たち十分にそれに対するところのインフオーメーシヨンを持つておりませんが、今日、読売新聞に
国家地方警察の武藤君がアメリカを視察されて、そのことを話していられるのが新聞記事に非常に大きく出ておりましたので、出張いたしましたところの公安
委員会についてもたまたまその話が出たんであります。ビユーロー・オプ・インヴエステイゲーシヨンでありますから、検察局とでも訳すのでありましようか、全米国を通じての、そういうものに対する警察行政の機関であります。武藤君の新聞記事にも出ておるのでありますから、
国家地方警察等におきましても武藤君がそれについての御調査がありますならば、この
委員会へ調査の報告書を一つ提出してもらつて、我々の参考にするようにして頂きたいと思うのであります。ほかのことはこの
調査報告書を一つ速記録に載せて頂くということをお願いいたしまして、これを以て一応私の報告を終ります。