○
三輪貞治君 私は日本社会党を代表いたしまして、
只今議題とな
つておりまする
資金運用部資金法案並びに関連
法案に対して反対をするものであります。
先ずこの
法案は、簡易保険積立金の統一運用を恒久化するものでありますが、これは根本において認識の錯誤に立脚するものであります。およそ統一は非常なよいことと考え勝ちでありますけれ
ども、統一の結果、事物の本質を滅却するような統一は有害無益であります。今回の簡易保険積立金の運用部統一は、まさにこの有害無益の典型であります。今更くどくどしく説明する必要もないのでありますが、現在の日本にとりまして、資本の
蓄積と民生の安定は最も大切でありますけれ
ども、簡易保険はこの資本
蓄積と民生安定とに最も効果的な経済的施設であります。従
つて簡易保険
事業を強化発展させることは、日本再建のために極めて大きな意義を有すると考えるのであります。然るに簡易保険は、御承知の
通り国民に加入を強制する保険ではなくて、郵便局員勧誘によ
つて加入する制度であります。従
つて郵便局員が勧誘し、募集しやすいように制度を組立ててやるのがこの
事業の強化発展に肝要であります。(「私語うるさいぞ」と呼ぶ者あり)私語をやめて下さい。
ところが簡易保険積立金を大蔵省に統一運用するとすれば、如何なる結果が起るかといいますと、第一に二十六万郵政従業員の士気は目に見えて沮喪いたしまして、勤労意欲が失墜することは、数十万の陳情者によ
つて明らかであります。
第二に、
資金運用部は、簡易保険積立金の預託に対して年五分五厘以下の
利子を
支払うのでありますが、これを郵政省において運用すれば、六分五厘以上の
利子収入があり、これによる利差益は契約者配当の
方法によ
つて加入者に割戻され、その結果簡易保険の契約募集も容易となるのであります。而も簡易保険積立金をいわゆる地方還元の原則によ
つて従来
通り郵政省自体運用することをば認めまするならば、地方公共団体は保険加入に一層熱意と協力とを示し、簡易保険の契約募集と契約保全とは一層容易となり、従
つて資本
蓄積は現在以上に促進せられるのであります、勿論我々は郵政
当局をして簡易保険
資金を勝手は放資せしめよと言うのではありません。大蔵省の
金融財政方策に順応せしめつ、
資金を地方還元せしめよと言うのであります。かくすることによ
つて郵政省二十六万の従業員をして、旺盛なる勤労意欲の下に簡易保険の募集活動に従事せしめ、而も半面大蔵省の意図する財政
金融方針に順応する
資金融資を行うものとすれば、大蔵省は何を苦しんで
資金の統一的管理という理念に焦慮する必要がありましようか。私は大蔵省のセクシヨナリズムにすべての癌があることを率基に指摘する者であります。
次に
資金運用部資金法案が万一不成立となりますれば、
金融債引受は不可能となり、経済界の混乱を惹起するのみならず、郵便
貯金預入者に対する
利子支払は不能となり、大蔵省
預金部職員四百数十名に対する俸給
支払を中止せざるを得なくなるから、原案
通り通過きしめねばならんという説も一部に行われているようであります。併しこれはためにするものの宣伝に過ぎません。即ち
預金部資金から
金融債の引受をなすことが国家のために必要なりとすれば、そこには合法的な途が開かれておるのであります。即ち先に木村
委員も指摘されましたように、昭和二十一年一月二十九日のマーカツト指令第四項によれば、国債、地方債の需要を充たした後なお余裕金あらば、これは
司令部の承認を受けて、
銀行に対する
貸付、又は
銀行債の引受購入をなし得ることを公然に認めておるのであります。
預金部資金運用法令においても、この
金融債の引受買入を認めておるのであります。これらの
司令部指令や、国内法の
規定が厳存すればこそ、
預金部は
資金運用部金融法案の成立しておらない二十五年度において、
司令部承認の下に、本年一月及び二月中に九十七億円の
金融債を引受購入し、又三月中に約五十億円の
金融債投資を内定しておるのではありませんか。即ち
司令部の承認を得ることを條件として、
金融債の引受は
資金法成立、不成立の如何にかかわらず可能であるということが立証されております。いわんや郵便
貯金の
利子支払や、
預金部職員の
給料支払は、前者は郵政
特別会計において、後者は
非現業員共済組合において一時立替
支払をいたしまして、五月を待
つて、
予算の
修正を行い、而も単に
資金運用部とあるを、
預金部に改めることによ
つて、何ら本質的支障を惹起するものではありません。いわんや本
法案によ
つて簡易保険積立金を永久的に、大蔵省の支配下に置くがござときは、徒らに
政府資金の統一を焦
つて、反面微妙な従業員心理を没却し、遂には資本
蓄積にも阻害を与えるものであることを率直に指摘したいのであります。簡易保険積立金のごときは、一時的にドツジ書簡に敬意を表して
預金部に預託することは止むを得ないとしても、これを永久化して簡易保険の企業的生命を奪い、二十六万従業員の士気を沮喪せしめ、一万数千の地方公共団体の地方還元に対する熱烈な期待を抹殺するがごときは、一体何の必要があ
つてかかる愚を強行せねばならないのでありますか、全く本員の判断に苦しまざるを得ない
ところであります。
この点の
意見の一致を見ました本
委員会において
各党共同提案の
修正案をその筋に出して、我々はその成功に
努力をいたして参
つたのでありまするが、不幸にして先ほどの会合において
油井委員から御報告がありましたように、OKが得られなか
つたのでありまするが、これを理由にして或いは先ほどからの会合等で承わ
つておりまするというと、皆さんがたの中には、又しても過去において第三、第四、第五、第七
国会等で形式的な決議案を可決いたしまして、而も何らこれが
政府或いは
司令部当局に容れられる
ところとな
つていない。そういつたような附帶決議のごときものをいたしまして一時を糊塗するというようなことは、全く我々のとらない
ところであるわけであります。よろしく
国会は立法権としての自主権をみずから昂揚する上におきましても、この際断固たる処置をとるべきであると確信して疑わないのであります。我が参議院におきましては特にその性格に鑑みまして、この事態の本質を見極め、冷静事に処する
ところがなければならんと思います。
私は生命保険の本質を破壊し、
国民の輿論を等閑視し、而も何ら実益を収め得ざる
ところの本
法案、而もいろいろな理由に籍口いたしまして、大衆の零細なる保険、共済等の
資金を独占資本に奉仕せしめるごとき本
法案に対しまして、
国民の代表者といたしまして絶対に反対をいたすものであります。(拍手)