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説明員(
河野通一君) 輸出入及びそれに関連する
金融の問題につきましては、先般の機会に申上げたのでありますが、今お尋ねの第一点は、最近人絹、羽二重その他が非常に下
つている。下
つている場合にそれがダンピングになるかという問題が一点であります。私
どもはダンピングになるような輸出はこれは好ましくないということは申しているのでありまするが、ダンピングの意義であります。これは私
どもはこういうふうに解釈しているのでありまして、国内の価格と同じ
程度の価格で出すのはダンピングじやないと考えております。国内の価格でとい
つてもなかなかむずかしいのでありますが、国内の価格を割
つて輸出します場合にはダンピングになる。国内の価格と同し価格で輸出されるならばダンピングじやない。ただこれを相手国がどういうふうにとりますか、いろいろこれは問題があると思います。殊にイギリス等におきましては
相当こういう点について考えている向きもあるようでありますけれ
ども、私
どもはダンピングという
意味は今申しましたように解釈しております。
それから繊維品を中心にして、国内の価格乃至は国際価格というものが今後どういうふうになるか、それによ
つて普通言われております……本当の
意味ではありませんが、普通言われております輸出滞貨
金融をどういうふうに扱うかということが問題の中心になるかと思うのでありますが、一例をと
つて申上げましても、今綿
関係、これは最近梱十一万円
程度かと思います。御
承知のようにこのアメリカの綿花の問題があるわけでありますが、大体今の見通しでは綿花が大体三十一セント或いは二セント
程度に落ちつくのではないかということが予想されております。こういうことに
なつた場合に、一体今後安い綿花が入
つて来て、而もそれが生産に入
つて、生産品として国外に輸出する場合に、公正な競争に耐え得るような価格というようなものは幾らぐらいになるかということを考えて見ますと、それはいろいろの計算がありますが、少くとも現在の十一万円
程度の価格ではなかなか出て行かないというのが現在のところの見通しであります。これはいろいろ専門家の御
意見もあるわけでありますが、少くとも十一万円というものじや綿花が三十二、三セントに
なつた場合にこれは出て行かないというのが普通の常識的な見方であります。そういうような観点からいたしますと、どうせ国外におきましては先を見て
契約というものは恐らく行われるのでありますから、少くとも今のような価格を維持して輸出を更に伸ばして行きますということは、当面としても、いわんや将来の見通しの問題として申上げますならば荷重でありますが、なかなかそう簡単に行かないのではないかということが一点であります。
それから価格が一般的に非常に下
つて来ておる。これをどつかでとめなければ誰かが損をするという問題があります。インフレーシヨンによ
つて問題を解決せざる限り、まあ不当と申します言葉が悪いならば過当と申しますか、過当に値上
つたものが、或る
程度国際水準その他の点から見まして適当なところに価格が安定して参ります場合には、高い物を買
つた人が安く売らなければならんということがどつかに起るのでありますから、誰かが損をする者があるわけであります。結局誰かが
負担をするという問題に帰すると思うのでありますが、いずれにいたしましても、数カ月前に過当に値が上がり過ぎてお
つた。国内の値が上がり過ぎてお
つた。これは今申しました日本の経済というものが国際貿易に依存することが非常に大きい現在の情勢或いは将来から申しまして、この過当に値上
つておるものを或る
程度叩いて行かなければならんということは当然起るのであります。国際価格に鞘寄せしながら価格を安定して行くというのが当面の国策の根本であります以上は、高い物を買
つた人がどうしても安く売らなければならんということは、
程度の問題はありましても、当然起
つて来るわけであります。この際における切替をできるだけ円滑に、ロスを少くして行くことの配慮は政策として当然講じなければなりませんが、基本的には今申上げましたような高い物を買
つた人がやはり安く売らなければならんというもので、どこかで損失というものが出て来るだろう。その損失をどういうふうに配分して、誰が損を
負担するかということを国策として
研究して行かなければならん問題はあるにいたしましても、先ほど申上げましたようにインフレーシヨンで問題を解決せざる限りこの問題はどうしても起ると思うのであります。その場合の切替をできるだけ、重ねて申しますが円滑に、ロスを少くしてや
つて行くという配慮が国策のために必要であると思います。
それから今油井さんからの
お話に、或いは直接触れておらんかと思います。が、輸出滞貨
金融ということがよく言われる。私
どもは輸出滞貨
金融というものを別枠的な特別の措置としてこれを処理することは考えていません。併しながら経済が安定した基礎の下に運営される限りにおいて必要とされる
金融は特にこれは見て参らなければならん。現に御
承知の通りに日本
銀行の貸出
資金は数カ月前までは千二百億
程度であ
つたが、現在のところでは二千百億を超えております。その間日本
銀行の一般の貸出
資金による
信用の放出は八、九百億を増加いたしておるわけであります。この事実が示しておりますように、日本
銀行はただ一律にがむしやらに機械的に
金融を締めるということはいたしておりません。必要なものはどんどん
金融をつけて参
つておるわけであります。
金融界、市中
銀行といたしましても、これが必要な限りにおきましては個々に判断して必要な
金融はつけておるわけであります。その趣意で日本
銀行の貸出金はあるのでありますから、私
どもは一律に全部
金融を断わるということにいたしません代りに、オーバーローンに特別の措置として中小
関係の
金融は別枠的に、これも機械的に
金融をつけるということもいたしません。個々に判断いたしまして、必要なものについては
金融を極力つけるという
方向に進めて参
つておる。かように考えております。併しながら今申上げましたように綿
関係にいたしましても、まだ国際価格水準というものの将来の見通しは決して強気ではないと思うのでありまして、これらの点も十分睨み合して、将来を見通しながら国際競争に堪え得るような価格を基礎として
金融というものは、若しつけるにいたしましてもつけて参らなければならんと、かように考えておる次第であります。