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説明員(
河野通一君) お求めによりまして最近の
金融政策並びに
金融制度につきまして一応私
どもの考えておりますところを御説明申上げたいと思います。
金融政策の
基調と申しますか、基本的な
考え方につきましては、いろいろ前
国会中申上げたと思うのでありますが、当時の
考え方と基本的には変
つておりません。つまり
日本の
経済が極めて底が浅いと言いますか、或いは彈力性が乏しいと言いますか、一例を
物価にとりましても、
ちよつとした外的なシヨツクによりまして、非常に大きな
変動を来たす。これは
朝鮮動乱が勃発いたしましてから、今日まで約一年の間の経過を
御覧頂けばこの点はよくおわかり願えると思うのであります。こういうふうに
日本の
経済が非常に、
生産におきましても、或いは貿易におきましても先ず順調なる進展を見ておるとは申しながらその基盤と申しますか、
経済の
基礎というものがなかなかまだ十分に強固とは申し難いような現在の
状態、これを
基礎にして、やはり私
どもは
金融政策を考えて参らなければならんと思うのであります。この弱い
基礎をできるだけ強固にして行かなければならんというところに私
どもの
金融政策の基本があると思うのであります。
経済が非常に
基礎が弱いとか、或いは底が浅いと言われておりますことの
意味でありますが、これはいろいろな点から申上げることができるのであります。併しながらその中の、一番大きな点は何かと言いますと、やはり
日本の
経済が、
資本が絶対的に
不足しているということが何と
言つても
日本の
経済の一番大きな弱点と言いますか、弱い点であろうというふうに私
どもは考えておるのであります。
この
資本の
不足ということは、これは
意味がいろいろあるのでありまけれ
ども、結局この
資本の
不足を何らかの形で補
つて行くということが必要にな
つて参るわけであります。これが
対策といたしまして
一つ考えられることは、これは
インフレーシヨンによ
つて何と言いますか、
資本でない
資金を供給して行くということが
一つの
考え方であります。併しこれは今申上げましたように、
資金は出ます、
資金は出ますけれ
ども、これは決して
資本の充実ではない。逆に
インフレーシヨンによ
つて、
日本の
経済が、
戰後極めて困難な
事態に逢着したことを考え及びますならば、そういうふうな
方法によ
つて、この
資本の
不足を補おうということは、これは絶対に避けなければならんと私
どもは考えております。そういうふうな
観点からいたしますると、
金融政策の
基調は極く
考え方としては
簡單明瞭である。
資本の
不足を補填いたしますために、
方法は
二つしかない。
一つは
資本の
蓄積を殖やして行くことが
一つ。それでもなお足りない
資本はできるだけけ効率的に使う。この
二つに
金融政策につきましては集約できると思うのであります。そういう
意味におきまして、私
どもは従来から考えております
原則的な
考え方は先般
国会で申上げましたことと何ら変
つておらんのであります。
第一の
資本の
蓄積を強化するという問題につきまして、これは必ずしも
銀行その他の
金融機関の
預貯金を殖やすという問題だけでありません。或いは
自己の
蓄積を殖やして行くということも
一つの大きな問題であります。又個人の
証券等に対する直接投資はできるだけ
促進して参るということも
一つの
方法であります。必ずしも
預貯金或いは
保険というようなものの
増強だけが
資本の
蓄積のみではないのでありますけれ
ども、やはり何と言いましても
預貯金の
増強或いは
保険の
促進ということが当面としては極めて重要な問題であろうかと思うのであります。これが
対策といたしましては、或いは税法上の
立場からの問題或いは
金利その他の
問題等についていろいろ問題があるかと思いますが、この点につきましても後ほど或いは御
質問によ
つてお答え申上げたいと考えております。
それから、そういうふうにして
資本の
蓄積を
促進すると同時に、それでもなお十分でない
日本の
経済の持
つておりますこの
資本を最も有効に使うということが必要にな
つて参るわけであります。
資本を有効に使いますという点も、先ほど申上げました
資本の
蓄積を
促進すると同じような
意味において、必ずしも
金融機関からの
融資だけが
資本の
使用方法の唯一の途ではない。
企業の
経営を
合理化して、できるだけ無駄を排除する。それによ
つて出て来たものを
資本の本当の
意味の
増強に充てて行くというようなことも、当然これは
資本の有効なる活用の
一つであろうと思います。併しながら今当面問題にな
つておりまする
金融政策から申しますと、やはり
金融機関の
資金の
使用方法という点について十分効率的な配慮が必要にな
つて参ります。これは
金融機関だけでありません。政府の
機関であります。例えば
資金運用部でありますとか、或いは
開発銀行、
日本輸出銀行、或は
国民金融公庫その他の
政府機関の
資金の
使用方法についても同じような問題があるのであります。こういう
観点から、私
どもは
金融機関の
資金の
使用につきましては、できるだけ重点的に最も必要な
方面への
資金を確保いたしまするために比較的
不急でありますとか、或いは不要でありますとか、そういつたものに対する
資金の
使用をできるだけ
抑制して行くという方途をとらざるを得ないのであります。
不急或いは不要の
資金を抑えるということは、ただ抑えるために抑えるのじやなくして、もつと必要な
方面への
資金を十分に確保するという目的のために、今申上げました絶対量において不十分な
日本の持
つております
資本でありますから、これを比較的
不急でありますとか
不急でありますとかいう
方面への
資金の
使用を抑えることによ
つて、今申上げました非常に必要な重点的な
方面への
資金を確保して参りたい。かような
考え方で
金融政策を進めて参
つておるのであります。
先ほど申上げました
インフレーシヨンによ
つて日本の
資本の
不足を補
つて行くということが適当でないという点をもう一度申上げて見たいと思うのでありますが、この
インフレーシヨンということは、これはまあ
皆様がたも御專門のかたが沢山ございますので、私がここで御説明申上げることは甚だどうも適当でないかと思うのでありますが、私
どもはこれを現在のような
金本位制をと
つておらない
管理通貨の
制度の下におきまして、何を目安にして考えるかという問題であります。今、
信用通貨の問題は一応
抜きにして、
現金通貨の問題としてこれを考えました場合に、結局
管理通貨の下におきまして、
通貨の出て行く途は
二つしかない。
一つは国庫の收支の尻を通して
通貨が出て行くものがあります。もう
一つは
日本銀行から
市中金融機関に対する
貸出なり、或いは
有価証券のマーケツト・オペレーシヨンなりの形を通して
資金が出て行くのが
一つ、この
二つしかないわけであります。
日本の
経済がだんだん或いは
生産におきましても、或いは
貿易量におきましても、向上し、発展して参るに応じまして、
経済の所要いたしまする
通貨の量というものは、当然殖えて行
つて差支えないということは申すまでもないことであります。私
どもが
インフレーシヨンを回避するという
立場で申上げておりますのは、必ずしも
通貨量を一定の額、例えば三千九百億なり、或いは三千五百億なりに数量的にチエツクをしようという
考え方ではありません。
経済の実態が
一般取引におきましても、或いは
貿易量におきましても、増大するに応じまして、これは当然必要な
通貨量というものは殖えて行
つて差支えない。ただそれが野放図に殖えることは、これは適当でないのであ
つて、今の
管理通貨の
制度の下において、何を基準にしてこの
通貨量というものを判断するかと言えば、これは申上げるまでもなく結局
物価であります。この
物価というものもなかなかむずかしいのでありまして、一口に
物価水準ということを申しますが、なかなか分析して参りますと、むずかしい問題でありますけれ
ども、極く抽象的に申上げますならば、この
物価水準を適当なる線に安定して行くということが、結局
インフレーシヨンの
抑制の
一つの大きな指標であると思うのであります。よく
国際物価水準ということを言われております。私
どもも勿論これは当然そういうことが考えられなければならんと思うのでありますが、この
国際物価水準への
鞘寄せによりまして、
日本の
経済が今後
国際経済に参加して公正なる
競争に堪えて
日本の
経済を拡大的に発展させて行くというためには、どうしても自由なる
競争で、それに勝
つて行けるような
條件が備わらなければならん。そのためには勿論
価格だけの問題ではありません。
品質の問題、その他いろいろあろうと思いますが、そういう
観点から
産業自体の
合理化と言いますか、
価格を下げ
品質を向上させるということが今当面最も必要でありますことは申すまでもないのであります。その
産業の
合理化、或いは
経営を更に改善して行くということを裏腹にな
つて、今申上げました
観点からの
金融政策というものが裏腹にな
つて進められて参らなければならない。かように考えておるのであります。
国際物価水準につきましても、これはいろいろな点から
運用しなければなりません。又
個々の物資につきましては、例えば
鉄鋼でありますとか、或いは
機械工業等、なかなか
日本の
経済の置かれておりまするいろいろな諸条件の下におきまして、特別の
措置をとらないで
国際競争に、つまり
輸出を、各国の同じ製品と
競争をして安い値でいい品を外国へ
輸出するためには、いろいろ困難な
條件があるかと思います。これは一例を今
鉄鋼、機械について申上げたのでありますが、その他
個々の問題については相当問題があると思いますけれ
ども、そういう
個々の問題を一応
抜きにして
水準の問題としてこれを考えますならば、
国際物価水準というものに
鞘寄せをして行くということは、これは当然私
どもの基本的な
考え方であろうと思うのであります。但しその場合におきましても、
国際物価水準というものが一体固定しておるものではないのでありまして、
国際物価水準自体が御
承知のように相当な
変動を受けておる。最近においては
水準自体において横ばい乃至はだんだん下
つて来ておるような面も見えておるのでありまして、これらの点を的確に把握しながら、
日本の
経済が
国際経済に参加し、而もその自由なる
競争に堪えて行くような
措置を築き上げる、そういうふうな所へ持
つて行くために、
金融政策というものが裏付けとして運営されて参らなければならない。かように考えておる次第であります。なお、いろいろ御
質問がありましたならば、後ほどこれらの点についてもお答え申上げたいと思いますが、先般かような
意味におきまして、
銀行初め各
金融機関に対しまして、当面の
金融政策乃至
金融機関として心掛けて参らなければならん数個の点につきまして、私から各
金融界に対して大臣の命令によ
つて通牒を発しておるのであります。これは
新聞紙等でいろいろ
御覧にな
つておると思うのでありますが、新聞が正しぐ報道しておらない点もありまして、相当
誤解等を生んだ点もあ
つたのでありますけれ
ども、私
どもの見ておりまする当面の問題につきまして、
銀行の
経営という点からいろいろ
注意をいたしました事柄につきまして、
簡單に申上げて見たいと思います。
一つは
融資方針という問題についてであります。融質の
方針は、先ほど申上げましたように、
日本の
経済が財政におきまして
健全財政という点を堅持して行く。それと同じ
意味において、
言葉は非常に適当であるかどうか分りませんが、やはり
健全金融の線を堅持して参らなければならない。これによ
つて国全体としての
インフレーシヨンを回避するということが、
金融政策、特に
融資方針についての基本的な
原則であることは申すまでもないのであります。更に、先ほど申上げましたように、
日本の
経済を自立させ、発展させて行きますために必要な
重要産業でありますとか、或いは
国民経済を運営して参りますためにどうしても必要な
中小企業に対する
金融、これらの
所要資金をできるだけ確保するように努めて参る。特に
中小企業の
所要資金については、或いは見返
資金の
中小企業の
融資の
制度、或いは
中小企業の
信用保険制度或いは
信用保証協会の
保証制度等を更に積極的に活用することが必要であるということを申しておるのであります。
第三には、先ほど
ちよつと申上げましたように、そういうふうな重点的な
所要資金を確保いたしますために、一方で
不要不急であります
資金の
抑制、これを特に強く私
どもは要望いたしたのであります。
それから
融資方針の次に、いわゆる
大口信用集中の問題について、私から
注意を喚起いたしたのであります。これは
一般に
大口信用集中に偏しておる傾向が実はあるのでありまして、この点は、
危險を分散するという
見地におきましても、又
投機思惑を
抑制して行きますという点から申しましても、できるだけこれは避けて行かなければならんのであります。そういう
観点から私
どもは
金融界に対して
注意を喚起いたしたのでありますが、この
大口信用集中に偏することを是正いたしまするということは、
重要産業、殊に
基礎産業等におきまする
所要資金が極めて厖大なる額に上りますことは、これは当然でありまして、大
企業に対する
所要資金は
金融をしなくてもよろしいという
意味で申しておるのではない。この辺が
言葉が足りませんためにいろいろ誤解を生んでおるようでありますが、私
どもはそういう
見地で考えたのではない。
日本の
企業がまだまだ先ほど申上げましたように、
自己の
蓄積が十分でない。
従つて自分の
資本よりも、
外部からの
借入金その他に依存するウエイトが極めて大きい現在、これは逐次直して行かなければなりませんが、さればと
言つて、この
外部からの
借入金を極端に抑えるということは、これは
経済の、
産業自体の運行をとめることにもなるのでありまして、必要なる
資金はできるだけ確保して参ることは当然であります。併しながら現在までの
金融機関の
取扱い振り等を見ますと、この点について
二つの問題があるのであります。
一つは、ややもしますと、大
企業等に対する
資金の供給が、
言葉は非常に悪いのですが、まあルーズになると言いますか、十分なる
審査をして、先ほど申上げましたような必要なる
資金を最も効率的に使うという
意味において、十分なる
審査を経て
必要最小限度の
資金を供給するという
観点から、もう少し
抑制ができるのではないかという点が一点であります。例えば今或る会社に対して十億の
貸出をいたしておる。これにいろいろ当
つて見ると、或いはそれは八億で済むかも知れない。或いは七億で済むかも知れないにもかかわらず、回收が取敢えず心配ないという点から、それをルーズに貸しておる点がないか。先般来、後に又問題になるかと思いますが、
輸入引取資金或いは
輸出用の
滞貨金融の問題が非常にやかましくな
つて参つたのであります。去年の暮から最近までの
状況を
御覧にな
つても、各大きな
企業、これは
メーカーも或いはデイーラーも入れてでありますが、これらの
企業に対する
融資は、まあ
言葉は非常に悪いのですが、オーバー・ボロウイングという、まあ極端なオーバー・ボロウの
状況に達しておる。而もその中の
資金は、これは見方によ
つて違いますけれ
ども、
相当程度、思惑的という
言葉はあえて私は使いたくありませんが、必ずしも必要でないと思われる
方面に
資金が出ておることも事実であります。こういう点を十分是正して参らなければならないというのが、
大口信用集中について私
どもが
注意を喚起した第一点であります。
それから第二点は、今申上げました例で申上げまして、例えば十億貸しておるものが八億で済む場合に、この八億についても、更にできるだけ
危險を分散するという
見地から、これを或いは数行で分け
合つて金融をして行く。普通にはこれを
協調融資という
言葉を使
つておりますが、そういうような処置をとるべきであるということを申しておるのであります。この二点から私
どもは
大口信用集中について
注意を喚起いたした次第であります。
第三点は、
日本銀行の
外貨貸付制度の利用であります。この点につきましては、いわゆる
日銀の
外貨貸付制度というのは、
日銀ユーザンスと言われておる
制度でありまして、これは皆様よく御
承知の通り、一時二千八百億という
数字まで
上つたのであります。最近は大体二千億前後にな
つておるかと思いますが、こういうふうな
日銀ユーザンスの
制度、この
制度についても、
運用に当りまして、相当過去の経験から反省を要する点が多々あるのであります。昨年九月にこの
ユーザンスの
制度を開始します当時は、何分にも
日本の
経済が
輸出が先行して
輸入が非常に遅れた、そのために非常に
物価が不当に
上つて、一種のブーム的な
状態を呈した、そういうふうなことを是正いたして参りますために、
輸入の
促進ということが非常に強く叫ばれたのであります。この
輸入促進をいたしますために、
輸入の
金融はできるだけ寛大と申しますか、円滑に付けて行くということのために、
日銀ユーザンスの
制度はいわば機械的に
運用された、通り抜け的に
運用されてお
つたのであります。それがために、最近先ほど申上げました
輸入引取資金の
問題等で極めて厄介な問題を生じた
一つの原因もここにあ
つたのでありますが、本来の
輸入金融という点から見ますと、この
ユーザンスの
制度の
運用方針につきましては、相当
検討を要する。極く
簡單な例を申上げますと、或る
銀行が
輸入の
信用状を開きます場合に、その
輸入業者自体の力なり或いは
信用なりというものを殆んど
審査しないで、
信用状を開いておるような例も実はあるのであります。その
輸入業者が
輸入信用状を開いて
運用いたしました後の、それを更に引取り、或いは
メーカーに引渡す場合まで、
金融が如何に付けられるかということは殆んど考えないで、
ユーザンスというものが
運用されておつた。これは結局その尻が
あとにな
つて輸入引取資金の問題を結局困難にして参る
一つの理由でもあるわけであります。こういう
観点から、この
日銀の
ユーザンス制度を利用いたしますにつきましても、今後十分
審査をや
つて参らなければならない。こういう
観点から
銀行の
注意を喚起いたしたのであります。
日銀の
ユーザンス制度そのものにつきましては、最近も御
承知のように或いは外貨の
ユーザンス制度、或いは
ドル取引の
制度その他の問題もありますが、
制度そのものにつきましては、目下いろいろ
検討いたしておりますが、その問題とは別に、現在の
制度を続けて参ります場合にも、今申上げましたような
観点から、更に
金融機関として
審査を十分にして行くことが必要であろうという
観点に立
つて、
銀行に通達をいたしたのであります。
第四点は
金利の問題であります。
金利につきましては、先ほど
ちよつと申上げましたように、
資本の
蓄積を
促進して、いわゆるオーバー・ローンという
事態を解消いたしますためにも、
金融機関の
金利を
引上げて、そうして
預金者に対する
サービスを向上いたすことが何より必要なわけであります。この点につきましては、勿論
金融機関というものが公共的な使命のものでありまして、最終的に
預金者の
利益を保護いたしますためには、ただ
預金利子を
幾らでも殖やしていいということには相成らんのでありまして、最終的な
預金者の保護は、やはり
銀行自体の内容を堅実にして、いつでも
支拂いのできるようにして行くことが何よりも必要なことである。
銀行の
堅実性の
原則、それと
預金利子の
引上げとは、おのずから睨み合せて行われなければならない。その上に、
あとに申上げたいと思いましたが、
銀行との
取引者の、これは
信用を與えるほうの
意味の
取引者でありますが、
貸付先等に対する
サービスも更に向上することによ
つて、その
企業等の国際的な
競争力を養
つて行くということがどうしても必要でありますために、
産業の
所要資金に対する
貸出の
利率というものもできるだけこれを引下げて行くことが必要であろうと思うのであります。ただ、今ここで表面的な
貸出利率を下げるかどうかの点につきましては、なかなか困難な問題もありますが、少くとも
産業の実質的な
金利負担を軽減するということは、今後極力や
つて参りたいと、かように考えております。今申上げましたように、
銀行の
堅実性、
信用の保持を図りながら、更に一方で
預金者に対する
サービスも向上し、他方、
貸出先に対する実質的な
金利負担を軽減して行く。この三つのことを
金融機関に要望いたしておるのであります。
具体的に、十の
利益のうち、どれをどれに
幾らを振当てるかということは、場合々々によりましてなかなか困難な問題ではありますけれ
ども、今申上げましたような
観点から、單に
預金利子を
引上げる。
銀行は收益が非常に外見的にいいから、それを皆
預金利子の
引上げに充てろというわけには参らないのでありまして、今申上げました三つの
観点から、これを適当に按配して行くということが今後の
金融行政の大きなかなめになるかと思うのであります。
金利の問題につきましては、特に
預金金利でありますが、現在各
金融機関に対して、どの
程度の
預金利子の
引上ができるかという点について
意見を取まとめて申出るように只今や
つております。まだ今のところはつきり結論的なことを申上げるわけに参りませんが、
大蔵省自体といたしましても、まだ
金融機関からの申出を聞いた上、更に
日本銀行の
政策委員会等の
意見も参酌いたしまして結論を得たいと思いますが、並行して私
どもといたしましてもいろいろの
観点から
検討は進めております。この度は先般数回に
亘つて金利引上をいたしましたときと違いまして、日多
預金と申しますか、
普通預金等についても或る
程度の
利子の
引上を行な
つて参りたい。
定期預金についても勿論
引上を行な
つて参りたい、かように考えておるのであります。なおこの点に関連いたしまして
郵便貯金の
利子の問題があります。これは
大蔵大臣から正式に申上げておりますのは、現在二分七厘六毛でありますが、これは
普通貯金であります。二分七厘六毛でありますのを、四分前後まで
引上げるということを今公式に申上げております。この点についても
金融機関、
銀行等から
意見があれば申出るようにということを今
言つております。具体的に最終の決定は得ておりませんが、大体四分前後のところで落着くかと考えております。これは余談でありますが、
郵便貯金は御
承知のように
月々利子を拂いますために、
金利でいたしますと十二で割れる
数字が必要なのでありまして、そのために今現在でも二分七厘六毛というような
数字が出ております。そういう
観点から四分前後で十二で割れる
数字が適当であろうというのが結論であろうというようにお考え頂いていいかと思うのであります。更に今の問題に関連いたしまして、
郵便貯金の
預入限度を現在三万円を
相当程度引上げて行きたいと思います。これもやはり
資本蓄積を
促進して参りますための
一つの手段でありますが、現在のところでは大体十万円
見当、或いはできますれば十五万円
見当までと思
つておりますが、大体十万円
見当まで
引上げることを考えております。これに対応いたしまして、
一般の
銀行等の取扱
つておりまする
貯蓄組合預金につきましても、限度を現在三万円をこれらと
同額程度まで
引上げることを考えております。なお
貸出しの
利率でありますが、これは当然今の
預金利子の
引上げの問題と関連いたして参りましようが、先ほど申上げましたように、
産業の実質的な
金利負担を軽減いたします
観点から問題を判断いたしますと共に、
中小企業に対する
金融の疏通を更に積極化して行くという要請を更に考慮に入れまして、或る
程度の小額の
融資につきましては、
金利調整法の
金利調整の対象外に置いたらどうかということを今考慮中であります。私
どもといたしましてはまだ結論を出しておりませんが、
金融機関方面からは、中小
金融の疏通のための
一つの大きな寄與にもなるという
観点から、この点について強い要望がございます。
それから
金利につきましては、この点は非常に実は私
ども殊に私
銀行局長として申訳ないのでありますが、
金融機関の取扱で実質的に
金利調整法の違反の事実が相当実はあるわけでございます。先般この自粛につきましては十分なる
注意を喚起し、又検査
方法も嚴重に行な
つて参つたのでありますが、未だにその跡を絶たないような
状態であります。今申上げましたのは、実質的な
金利違反でありまして、これが臨時
金利調整法の違反になるかどうかの問題はいろいろの
観点から問題はありますが、特に問題にな
つておりますのは、いわゆる両建
預金という問題であります。この両建にもいろいろな性質のものがありまして、本当の
意味で脱法的な両建
預金というものを把握することは私
どもの経験からいたしましても、なかなか困難なる点はありますが、少なくともはつきりいたしておるものも相当あるのであります。これらは一切止めさせるという
方針で嚴重なる通達をいたしております。今後検査等によりまして、この事実が明らかになりました場合には、嚴重なる処置を講じたいという所存でおります。これらの点を直して参りますことによりまして、
産業に対する実質的な
金利負担というものは相当軽減されるというふうに私
どもは期待いたしておるのであります。
それから次はウインドウ・ドレツシングという
言葉で言われておりますが、
預金の外見的な粉飾の問題であります。これは最近特に多くな
つて参つたのであります。この出て参りました動機はやはり
預金がなかなか集まらないために、外面上
預金が殖えたようなことにいたしたいという、まあ
一つの焦りが原因であります。もう
一つは、
日本銀行の高率適用の
制度がやはり
預金を基準にして考えておりますために、この
預金が相当外見上殖えたような形をとりたいというような点がこのウインドウ、ドレツシングが非常に彌漫して参りました大きな理由だと思います。これも
金融機関が堅実な
経営をして参りますために、実質的な
資金の増加でないものを架空的に両建的に粉飾いたしますことは、どういう
観点から見ましても適当でないことは申すまでもないことでありまして、この点も嚴重な検査を今後執行いたしまして、一切取止めさせるようにいたしたいと思
つております。これが技術的にはなかなか困難な点がありまして、粉飾するための
預金であつたか、そうでなく日常の取引から正常に起
つて参りますものであつたかなかなか境のところは見分けのむずかしい問題もございますが、できるだけそういうふうな粉飾的なものは一切やめさせるように今後嚴重に処置して参りたい、かように考えております。そのほか
銀行の
経営の
合理化の問題、或いは増資の問題、或いは不動産の取得の問題につきまして
銀行局におきましてあれこれいろいろと申渡したのでありますが、この点は特に本日の
金融政策自体の問題とは余り深く関係いたしませんので省略をさして頂きたいと思います。
要するに、
銀行といたしましても、その公共的な
見地からいたしまして、できるだけ
サービスをするものは
サービスをする、併しながら内容の堅実をそこなうようなことであ
つてはいけないので、この点を睨み合せながら公共
機関としての使命を全うするために遺憾のないように努めよということが、この通達の骨子にな
つているわけであります。
それから先程も
ちよつと御指摘がありましたので、
中小企業金融についての目下の私
どもの考えを申上げておきたいと思います。
現在
中小企業金融につきましては、
一般の
銀行、或いは無盡会社、
信用組合、商工中金、その他の既設の
機関が中小
金融の面に積極的に活動することが要望されておりますことは勿論であります。このほうはこのほうとして今後ますます中小
金融への積極的参加を進めて参りたいと思いますが、何分にも中小
金融というものは、御
承知のように、このうちには何と言いますか、一〇〇パーセント、コンマーシヤル・べースで考えられないような
金融もまあ性質上どうしても出て来るわけであります。これらの問題を單に今申上げましたような純然たるコンマーシヤルな
金融機関だけでこれを賄わせるということは、事柄の性質上困難な部面も起
つて参るのであります。これがため、一面におきまして見返
資金から今年度四十億の枠を割きまして、中小
金融のほうへ振向けることをいたしたのであります。この見返
資金の四十億は昨年から本年へ持越しましたものが約十二億、本年の四十億と合せて五十二億ほどで二十六年度出発いたしたのであります。四月以来まあいろいろな事情でこの見返
資金の
融資の実績というものは必ずしも十分でなか
つたのであります。
国会方面でたびたび私
どもお呼出しを受けましてお叱りを受け、鞭撻を受けて参
つたのであります。その後いろいろな改善策を講じまして逐次この見返
資金の
融資の
方面も実績は
上つて参
つております。四月頃は大体一億数千万、一億台でありましたものが、六月には二億五、六千万円まで伸びて参
つております。相当成績は順調に
上つて参
つておると思います。併しながらいろいろ
制度上の改善を今後もや
つて参るつもりであります。例えば現在五百万円までということにな
つておるのでありますが、これを千万円
程度まで拡張いたしますとか、或いは現在直接的な見返
資金からの
融資ということにな
つておりますのを、できれば
資金を紐付きで
金融機関に渡して、
金融機関の責任においてこれを
運用させるような
方法を講じられないかというような点、その他いろいろ
制度上の改善も今後考えて参りたいと思います。又かねがね強い御要望であります見返
資金から運転
資金を融通できないかという問題もあるのであります。これは先般この
委員会で申上げましたかどうですか、私、忘れましたが、この点はなかなか直接に
中小企業に見返
資金を投資いたします限りにおきましては、長期といえ
ども運転
資金にこれを廻すことは相当困難になるという結論も出ておりますが、今後もこの
方面をできれば
促進いたして参りたいと考えております。そういうような
制度上の改善をいたしましても、なお年度初め五十二億の
資金を年度内に全部消化いたしますことは相当困難であろうというふうに見込まれますので、そのうち困難と思われる残額を寝かしたまま来年度へ繰越して行くことは如何にも残念でありますから、これを何らかの形で活用して参りたいという配慮の下に、現在のところ大体二十億
程度を考えておりますが、これを
国民金融公庫の出資に振向けて参りたい。そういうことによりまして、
国民金融公庫は、先ほど申上げましたように、見返
資金を直接出します場合には、設備
資金に限るのでありますが、この
国民金融公庫でやらせて参れば、運転的な
資金にも出して行くということもできるのでありまして、そういう配慮もありまして、できるだけそういう配慮の下に約二十億、これはもう少し当
つて見ませんと、或いは十五億になりますか或いは二十五億出せるか、実績を見た上で判断いたさなければなりませんが、それを
国民金融公庫の出資に振向けたい。かように考えておるのであります。それから
中小企業の
金融を更に
促進いたしますために、政府
資金を更に注ぎ込むことによ
つて何らかこれを
促進できないかという問題でありまして、
国会方面の強い御要望もあり、次の
国会におきまして私
どもはこの問題を是非実現すべく努力をいたしたいと思
つておるのでありまするが、目下の構想では、
中小企業の
金融のための政府
資金の、結局政府
資金を流すことになりますが、政府
資金をどの
機関に流して
中小企業の
金融をやらせるかという問題が
一つございます。政府部内の或る
方面では、新らしい
金融機関をこの目的のために作つたらどうかという
意見もありますが、現在まで結論を得ましたところでは、新しい
金融機関をこれのために作ることは適当でない。それが動き出すまでの間のブランクということもありますから、できるだけ既存の
機関を使
つてこの政府
資金を活用していくことを考えたい。この政府
資金の中には、只今申上げました
国民金融公庫への二十億という問題も併せてお考え頂きたいと思うのであります。然らば如何なる
機関にこれをやらせるかという問題につきましては、現在
二つ意見が出ております。
一つは
国民金融公庫を活用すべし。
国民金融公庫は
政府機関でありますから、政府
資金を使うのには最も適当しておる
機関であります。ただ現在の小口
貸出とかそういう零細
金融だけではいけないので、若し
国民金融公庫にやらせる場合には新らしい部門を作
つて別な勘定で中小
金融をやらせるようにすべきではないかとは思いますが、そういう
意見があるのであります。
もう
一つは、現在ある中小商工業の
金融の中枢
機関としてこの商工中金を活用すべしという
意見が政府内にあります。これは現在までまだいずれがいいか結論を得ておりません。私
どもは前者を可といたすという強い
意見を持
つておりますが、まあこの点はまだ結論を得ておりません。後に事情を若し必要でありますならば申上げまして、いろいろお智慧を拜借いたしたいと思いますが、現在までのところではその
程度の話を申上げるに止めたいと思います。
政府
資金をどの
程度出すかの点でありますが、これは先ほど申上げました見返
資金の中小枠の二十億を含めて
一般会計からと、
資金運用部資金からの借入れになりますか或いは出資になりますかその点は分りませんが、この三つのルートからできるだけ多額を出したい。総金額につきましては現在のところまだ申上げる段階に至
つておりませんが、できるだけ多額を割いてこの新しい機構でも
つて中小企業の
金融の
促進に資したい。かように考えております。どういうふうな運営をいたしますかにつきましても、細部について私
ども考えておるところもございますが、そういう元の問題について結論をまだ得ておりませんので、この
程度のもので御勘弁を頂きたいと思います。それから商工中金の改組拡充の問題が、これと並行して、これは問題が関連いたしておりますが、これは商工中金について今問題にな
つておりますのは、御
承知のように組合に対して貸し、組合から
預金を預かることができるだけにな
つておるわけであります。この点につきましては間接構成員と申しますか、この事業協同組合の組合員から直接商工中金に
預金をし、又この間接構成員に対する直接
融資ができるようにしてもらいたいというのが、各
方面の強い要望であります。これは組合
金融という筋から言いますと稍々
原則を申上げると外れるようなことになるのでありますけれ
ども、同じ組合
金融の中枢
機関である農林中金が、その下部に持
つております協同組合がすべて
預金を扱い、それ自体が大きな
資金を持
つておりますのと比較いたしまして、商工業関係では、その事業協同組合が組合員からの
預金を持ちませんので、組合自体の金しか持
つておらんわけでありますから、農林中金とはおのずから同じ組合
金融機関でありましても性質を異にして参りますので、今の間接構成員との直接取引の問題につきましてはできるだけそういう方向において考えたいという気持を持
つておりますが、まだ決定的な結論にまで至
つておりません。それから商工中金につきましては現在債雰を発行いたしましてこの
金融をいたしておるのでありますが、この債券の市中の消化が非常に実は悪いために、いろいろ
日本銀行等でこの債券のマーケツト・オペーレーシヨン等を行な
つておるのでありますが、どうも消化が悪い。それがため商工中金といたしましては
資金力の充実については難澁をいたしております部面も実はあるわけであります。先般の
資金運用部の審議会におきまして、
資金運用部が商工中金の債券を引受けますのは三年以上の長期のものに限
つてお
つたのでありますが、商工中金に限
つて、そういう市中消化がうまく行かない点も考えまして、三年以上のものが十分に消化できない場合には、一年物の割商についても
資金運用部資金が暫定的に引受けることができるようにいたしたいという決定をされたのであります。そういうラインから、商工中金の
資金力を充実して参りますための配慮もや
つております。
なお、これは商工中金に限りませんが、かねがね政府の国庫余裕金をできるだけ
中小企業の
方面に廻すことの要望が出ております。この点も今後の情勢の推移によりまして、そういう方向で考えて参りたいと思いますが、具体的な
方法、並びに金額等につきまして、又、時期等につきましても、只今まだはつきり申上げられる段階にな
つておらないのであります。それからその他、
信用保証協会の
制度、或いは
信用保険制度等の改善等の問題もあると思います。時間が長くなりますので、後ほど御
質問によりましてお答えいたすことにいたしまして、私の話は一応これで終る次第であります。
ただ最後に、次の
国会で私
どもにいろいろ又皆様方にお世話にな
つて参らなければなりませんが、大体現在考えております法案の項目だけ、件名だけ今考えておりますところを申上げておきたいと思います。
一つは、先ほど御説明申上げましたような
観点から、
銀行法について或る
程度改正を加える必要があるかと思います。これは全面的改正を短期の
国会で行うことは適当でありませんので、やれば一部の、極く差迫つた問題の改正にとどめるということになると思いますが、或いは
簡單なものを御審議頂かなければならないかと思
つております。
それから、実は先般の
国会でも問題にな
つたのでありますが、
輸出銀行の法律を直しまして、
輸入金融も行えるようにして行きたいという問題と、それの附則で、
開発銀行と
輸出銀行の関係を若干現行法を直したい点もありますので、
輸出銀行法の改正をお願いいたすことになると思います。それから中小
金融につきましては、只今申上げました何らかの構想で、いずれにいたしましても、法律を要すると思いますが、この点も考えております。又、
信用保険制度等の改正も、場合によりましては、一部お願いいたさなければならんかと思います。
それから
金利その他の問題につきまして、先ほど申上げました
郵便貯金法の改正、それからこれに関連して国民貯蓄組合法の改正、これは
預入限度の
引上げでありますが、これが改正が当然問題にな
つて来ると思います。それから先ほど
ちよつと申上げました商工中金につきまして、間接構成員との取引を認めることにいたします場合には、これはやはり法律的
措置を要することに相成ります。大体大きな問題は今申上げたような点でありますが、そのほか保險業法の一部になりますが、保險の関係で、事業者団体法等の関係、その他で従来問題にな
つております料率算定団体の問題がありますが、これらも若し間に合えば今度の
国会に提出する準備をいたしたいと考えております。
それから、これは直接法律には関係いたしませんが、予算の関係では、例の
開発銀行の法律ができるときに、復金を吸收することにな
つてお
つたのでございますが、これは予算の裏付けがないために、延びのびに
なつおりますが、これもできまするならばこの次の
国会にお願いいたすことに相成るかと思います。そのほか
開発銀行、住宅
金融公庫、それから先ほど申上げました
国民金融公庫、これに対する出資の増加の問題が当然起
つて来るかと思
つております。これらにつきましてはまだ結論を得ておりません。得ておりませんが、現在いろいろ部内において折衝いたしておりますので、次の
国会において或いは御審議を頂くことに相成るかと思います。
非常に雑駁なお話を申上げてお聞き苦しかつたと思いますが、私の説明は一応これで終ります。