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1951-07-25 第10回国会 参議院 大蔵委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年七月二十五日(水曜日)    午前十時四十三分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○金融政策並びに制度に関する調査の  件  (最近の金融問題に関する件) ○小委員会設置の件 ○小委員の選任の件   —————————————
  2. 小串清一

    委員長(小串清一君) それではこれより大蔵委員会を開会いたします。  本日の議題は金融政策並びに金融制度に関する調査で、今まですでに調査しておつたのでございますが、最近の各種金融問題について政府側のほうからいろいろ御説明を聞き、例えば輸入引取資金融資問題だとか、滞貨金融の問題だとか、国民金融公庫を拡充する問題とかというようなことについて、丁度河野銀行局長が見えておりますから聞きたいと思います。なおこの問題について先ほどからあちらこちらに派遣されました各委員諸君から各地においていろいろ聞取られました事柄等を加えて質疑並びに御意見を承わりたいと思います。
  3. 河野通一

    説明員河野通一君) お求めによりまして最近の金融政策並びに金融制度につきまして一応私どもの考えておりますところを御説明申上げたいと思います。  金融政策基調と申しますか、基本的な考え方につきましては、いろいろ前国会中申上げたと思うのでありますが、当時の考え方と基本的には変つておりません。つまり日本経済が極めて底が浅いと言いますか、或いは彈力性が乏しいと言いますか、一例を物価にとりましても、ちよつとした外的なシヨツクによりまして、非常に大きな変動を来たす。これは朝鮮動乱が勃発いたしましてから、今日まで約一年の間の経過を御覧頂けばこの点はよくおわかり願えると思うのであります。こういうふうに日本経済が非常に、生産におきましても、或いは貿易におきましても先ず順調なる進展を見ておるとは申しながらその基盤と申しますか、経済基礎というものがなかなかまだ十分に強固とは申し難いような現在の状態、これを基礎にして、やはり私ども金融政策を考えて参らなければならんと思うのであります。この弱い基礎をできるだけ強固にして行かなければならんというところに私ども金融政策の基本があると思うのであります。経済が非常に基礎が弱いとか、或いは底が浅いと言われておりますことの意味でありますが、これはいろいろな点から申上げることができるのであります。併しながらその中の、一番大きな点は何かと言いますと、やはり日本経済が、資本が絶対的に不足しているということが何と言つて日本経済の一番大きな弱点と言いますか、弱い点であろうというふうに私どもは考えておるのであります。  この資本不足ということは、これは意味がいろいろあるのでありまけれども、結局この資本不足を何らかの形で補つて行くということが必要になつて参るわけであります。これが対策といたしまして一つ考えられることは、これはインフレーシヨンによつて何と言いますか、資本でない資金を供給して行くということが一つ考え方であります。併しこれは今申上げましたように、資金は出ます、資金は出ますけれども、これは決して資本の充実ではない。逆にインフレーシヨンによつて日本経済が、戰後極めて困難な事態に逢着したことを考え及びますならば、そういうふうな方法によつて、この資本不足を補おうということは、これは絶対に避けなければならんと私どもは考えております。そういうふうな観点からいたしますると、金融政策基調は極く考え方としては簡單明瞭である。資本不足を補填いたしますために、方法二つしかない。一つ資本蓄積を殖やして行くことが一つ。それでもなお足りない資本はできるだけけ効率的に使う。この二つ金融政策につきましては集約できると思うのであります。そういう意味におきまして、私どもは従来から考えております原則的な考え方は先般国会で申上げましたことと何ら変つておらんのであります。  第一の資本蓄積を強化するという問題につきまして、これは必ずしも銀行その他の金融機関預貯金を殖やすという問題だけでありません。或いは自己蓄積を殖やして行くということも一つの大きな問題であります。又個人の証券等に対する直接投資はできるだけ促進して参るということも一つ方法であります。必ずしも預貯金或いは保険というようなものの増強だけが資本蓄積のみではないのでありますけれども、やはり何と言いましても預貯金増強或いは保険促進ということが当面としては極めて重要な問題であろうかと思うのであります。これが対策といたしましては、或いは税法上の立場からの問題或いは金利その他の問題等についていろいろ問題があるかと思いますが、この点につきましても後ほど或いは御質問によつてお答え申上げたいと考えております。  それから、そういうふうにして資本蓄積促進すると同時に、それでもなお十分でない日本経済の持つておりますこの資本を最も有効に使うということが必要になつて参るわけであります。資本を有効に使いますという点も、先ほど申上げました資本蓄積促進すると同じような意味において、必ずしも金融機関からの融資だけが資本使用方法の唯一の途ではない。企業経営合理化して、できるだけ無駄を排除する。それによつて出て来たものを資本の本当の意味増強に充てて行くというようなことも、当然これは資本の有効なる活用の一つであろうと思います。併しながら今当面問題になつておりまする金融政策から申しますと、やはり金融機関資金使用方法という点について十分効率的な配慮が必要になつて参ります。これは金融機関だけでありません。政府の機関であります。例えば資金運用部でありますとか、或いは開発銀行日本輸出銀行、或は国民金融公庫その他の政府機関資金使用方法についても同じような問題があるのであります。こういう観点から、私ども金融機関資金使用につきましては、できるだけ重点的に最も必要な方面への資金を確保いたしまするために比較的不急でありますとか、或いは不要でありますとか、そういつたものに対する資金使用をできるだけ抑制して行くという方途をとらざるを得ないのであります。不急或いは不要の資金を抑えるということは、ただ抑えるために抑えるのじやなくして、もつと必要な方面への資金を十分に確保するという目的のために、今申上げました絶対量において不十分な日本の持つております資本でありますから、これを比較的不急でありますとか不急でありますとかいう方面への資金使用を抑えることによつて、今申上げました非常に必要な重点的な方面への資金を確保して参りたい。かような考え方金融政策を進めて参つておるのであります。  先ほど申上げましたインフレーシヨンによつて日本資本不足を補つて行くということが適当でないという点をもう一度申上げて見たいと思うのでありますが、このインフレーシヨンということは、これはまあ皆様がたも御專門のかたが沢山ございますので、私がここで御説明申上げることは甚だどうも適当でないかと思うのでありますが、私どもはこれを現在のような金本位制をとつておらない管理通貨制度の下におきまして、何を目安にして考えるかという問題であります。今、信用通貨の問題は一応抜きにして、現金通貨の問題としてこれを考えました場合に、結局管理通貨の下におきまして、通貨の出て行く途は二つしかない。一つは国庫の收支の尻を通して通貨が出て行くものがあります。もう一つ日本銀行から市中金融機関に対する貸出なり、或いは有価証券のマーケツト・オペレーシヨンなりの形を通して資金が出て行くのが一つ、この二つしかないわけであります。日本経済がだんだん或いは生産におきましても、或いは貿易量におきましても、向上し、発展して参るに応じまして、経済の所要いたしまする通貨の量というものは、当然殖えて行つて差支えないということは申すまでもないことであります。私どもインフレーシヨンを回避するという立場で申上げておりますのは、必ずしも通貨量を一定の額、例えば三千九百億なり、或いは三千五百億なりに数量的にチエツクをしようという考え方ではありません。経済の実態が一般取引におきましても、或いは貿易量におきましても、増大するに応じまして、これは当然必要な通貨量というものは殖えて行つて差支えない。ただそれが野放図に殖えることは、これは適当でないのであつて、今の管理通貨制度の下において、何を基準にしてこの通貨量というものを判断するかと言えば、これは申上げるまでもなく結局物価であります。この物価というものもなかなかむずかしいのでありまして、一口に物価水準ということを申しますが、なかなか分析して参りますと、むずかしい問題でありますけれども、極く抽象的に申上げますならば、この物価水準を適当なる線に安定して行くということが、結局インフレーシヨン抑制一つの大きな指標であると思うのであります。よく国際物価水準ということを言われております。私どもも勿論これは当然そういうことが考えられなければならんと思うのでありますが、この国際物価水準への鞘寄せによりまして、日本経済が今後国際経済に参加して公正なる競争に堪えて日本経済を拡大的に発展させて行くというためには、どうしても自由なる競争で、それに勝つて行けるような條件が備わらなければならん。そのためには勿論価格だけの問題ではありません。品質の問題、その他いろいろあろうと思いますが、そういう観点から産業自体合理化と言いますか、価格を下げ品質を向上させるということが今当面最も必要でありますことは申すまでもないのであります。その産業合理化、或いは経営を更に改善して行くということを裏腹になつて、今申上げました観点からの金融政策というものが裏腹になつて進められて参らなければならない。かように考えておるのであります。  国際物価水準につきましても、これはいろいろな点から運用しなければなりません。又個々の物資につきましては、例えば鉄鋼でありますとか、或いは機械工業等、なかなか日本経済の置かれておりまするいろいろな諸条件の下におきまして、特別の措置をとらないで国際競争に、つまり輸出を、各国の同じ製品と競争をして安い値でいい品を外国へ輸出するためには、いろいろ困難な條件があるかと思います。これは一例を今鉄鋼、機械について申上げたのでありますが、その他個々の問題については相当問題があると思いますけれども、そういう個々の問題を一応抜きにして水準の問題としてこれを考えますならば、国際物価水準というものに鞘寄せをして行くということは、これは当然私どもの基本的な考え方であろうと思うのであります。但しその場合におきましても、国際物価水準というものが一体固定しておるものではないのでありまして、国際物価水準自体が御承知のように相当な変動を受けておる。最近においては水準自体において横ばい乃至はだんだん下つて来ておるような面も見えておるのでありまして、これらの点を的確に把握しながら、日本経済国際経済に参加し、而もその自由なる競争に堪えて行くような措置を築き上げる、そういうふうな所へ持つて行くために、金融政策というものが裏付けとして運営されて参らなければならない。かように考えておる次第であります。なお、いろいろ御質問がありましたならば、後ほどこれらの点についてもお答え申上げたいと思いますが、先般かような意味におきまして、銀行初め各金融機関に対しまして、当面の金融政策乃至金融機関として心掛けて参らなければならん数個の点につきまして、私から各金融界に対して大臣の命令によつて通牒を発しておるのであります。これは新聞紙等でいろいろ御覧になつておると思うのでありますが、新聞が正しぐ報道しておらない点もありまして、相当誤解等を生んだ点もあつたのでありますけれども、私どもの見ておりまする当面の問題につきまして、銀行経営という点からいろいろ注意をいたしました事柄につきまして、簡單に申上げて見たいと思います。  一つ融資方針という問題についてであります。融質の方針は、先ほど申上げましたように、日本経済が財政におきまして健全財政という点を堅持して行く。それと同じ意味において、言葉は非常に適当であるかどうか分りませんが、やはり健全金融の線を堅持して参らなければならない。これによつて国全体としてのインフレーシヨンを回避するということが、金融政策、特に融資方針についての基本的な原則であることは申すまでもないのであります。更に、先ほど申上げましたように、日本経済を自立させ、発展させて行きますために必要な重要産業でありますとか、或いは国民経済を運営して参りますためにどうしても必要な中小企業に対する金融、これらの所要資金をできるだけ確保するように努めて参る。特に中小企業所要資金については、或いは見返資金中小企業融資制度、或いは中小企業信用保険制度或いは信用保証協会保証制度等を更に積極的に活用することが必要であるということを申しておるのであります。  第三には、先ほどちよつと申上げましたように、そういうふうな重点的な所要資金を確保いたしますために、一方で不要不急であります資金抑制、これを特に強く私どもは要望いたしたのであります。  それから融資方針の次に、いわゆる大口信用集中の問題について、私から注意を喚起いたしたのであります。これは一般大口信用集中に偏しておる傾向が実はあるのでありまして、この点は、危險を分散するという見地におきましても、又投機思惑抑制して行きますという点から申しましても、できるだけこれは避けて行かなければならんのであります。そういう観点から私ども金融界に対して注意を喚起いたしたのでありますが、この大口信用集中に偏することを是正いたしまするということは、重要産業、殊に基礎産業等におきまする所要資金が極めて厖大なる額に上りますことは、これは当然でありまして、大企業に対する所要資金金融をしなくてもよろしいという意味で申しておるのではない。この辺が言葉が足りませんためにいろいろ誤解を生んでおるようでありますが、私どもはそういう見地で考えたのではない。日本企業がまだまだ先ほど申上げましたように、自己蓄積が十分でない。従つて自分資本よりも、外部からの借入金その他に依存するウエイトが極めて大きい現在、これは逐次直して行かなければなりませんが、さればと言つて、この外部からの借入金を極端に抑えるということは、これは経済の、産業自体の運行をとめることにもなるのでありまして、必要なる資金はできるだけ確保して参ることは当然であります。併しながら現在までの金融機関取扱い振り等を見ますと、この点について二つの問題があるのであります。  一つは、ややもしますと、大企業等に対する資金の供給が、言葉は非常に悪いのですが、まあルーズになると言いますか、十分なる審査をして、先ほど申上げましたような必要なる資金を最も効率的に使うという意味において、十分なる審査を経て必要最小限度資金を供給するという観点から、もう少し抑制ができるのではないかという点が一点であります。例えば今或る会社に対して十億の貸出をいたしておる。これにいろいろ当つて見ると、或いはそれは八億で済むかも知れない。或いは七億で済むかも知れないにもかかわらず、回收が取敢えず心配ないという点から、それをルーズに貸しておる点がないか。先般来、後に又問題になるかと思いますが、輸入引取資金或いは輸出用滞貨金融の問題が非常にやかましくなつて参つたのであります。去年の暮から最近までの状況御覧になつても、各大きな企業、これはメーカーも或いはデイーラーも入れてでありますが、これらの企業に対する融資は、まあ言葉は非常に悪いのですが、オーバー・ボロウイングという、まあ極端なオーバー・ボロウの状況に達しておる。而もその中の資金は、これは見方によつて違いますけれども相当程度、思惑的という言葉はあえて私は使いたくありませんが、必ずしも必要でないと思われる方面資金が出ておることも事実であります。こういう点を十分是正して参らなければならないというのが、大口信用集中について私ども注意を喚起した第一点であります。  それから第二点は、今申上げました例で申上げまして、例えば十億貸しておるものが八億で済む場合に、この八億についても、更にできるだけ危險を分散するという見地から、これを或いは数行で分け合つて金融をして行く。普通にはこれを協調融資という言葉を使つておりますが、そういうような処置をとるべきであるということを申しておるのであります。この二点から私ども大口信用集中について注意を喚起いたした次第であります。  第三点は、日本銀行外貨貸付制度の利用であります。この点につきましては、いわゆる日銀外貨貸付制度というのは、日銀ユーザンスと言われておる制度でありまして、これは皆様よく御承知の通り、一時二千八百億という数字まで上つたのであります。最近は大体二千億前後になつておるかと思いますが、こういうふうな日銀ユーザンス制度、この制度についても、運用に当りまして、相当過去の経験から反省を要する点が多々あるのであります。昨年九月にこのユーザンス制度を開始します当時は、何分にも日本経済輸出が先行して輸入が非常に遅れた、そのために非常に物価が不当に上つて、一種のブーム的な状態を呈した、そういうふうなことを是正いたして参りますために、輸入促進ということが非常に強く叫ばれたのであります。この輸入促進をいたしますために、輸入金融はできるだけ寛大と申しますか、円滑に付けて行くということのために、日銀ユーザンス制度はいわば機械的に運用された、通り抜け的に運用されておつたのであります。それがために、最近先ほど申上げました輸入引取資金問題等で極めて厄介な問題を生じた一つの原因もここにあつたのでありますが、本来の輸入金融という点から見ますと、このユーザンス制度運用方針につきましては、相当検討を要する。極く簡單な例を申上げますと、或る銀行輸入信用状を開きます場合に、その輸入業者自体の力なり或いは信用なりというものを殆んど審査しないで、信用状を開いておるような例も実はあるのであります。その輸入業者輸入信用状を開いて運用いたしました後の、それを更に引取り、或いはメーカーに引渡す場合まで、金融が如何に付けられるかということは殆んど考えないで、ユーザンスというものが運用されておつた。これは結局その尻があとになつて輸入引取資金の問題を結局困難にして参る一つの理由でもあるわけであります。こういう観点から、この日銀ユーザンス制度を利用いたしますにつきましても、今後十分審査をやつて参らなければならない。こういう観点から銀行注意を喚起いたしたのであります。日銀ユーザンス制度そのものにつきましては、最近も御承知のように或いは外貨のユーザンス制度、或いはドル取引制度その他の問題もありますが、制度そのものにつきましては、目下いろいろ検討いたしておりますが、その問題とは別に、現在の制度を続けて参ります場合にも、今申上げましたような観点から、更に金融機関として審査を十分にして行くことが必要であろうという観点に立つて銀行に通達をいたしたのであります。  第四点は金利の問題であります。金利につきましては、先ほどちよつと申上げましたように、資本蓄積促進して、いわゆるオーバー・ローンという事態を解消いたしますためにも、金融機関金利引上げて、そうして預金者に対するサービスを向上いたすことが何より必要なわけであります。この点につきましては、勿論金融機関というものが公共的な使命のものでありまして、最終的に預金者利益を保護いたしますためには、ただ預金利子幾らでも殖やしていいということには相成らんのでありまして、最終的な預金者の保護は、やはり銀行自体の内容を堅実にして、いつでも支拂いのできるようにして行くことが何よりも必要なことである。銀行堅実性原則、それと預金利子引上げとは、おのずから睨み合せて行われなければならない。その上に、あとに申上げたいと思いましたが、銀行との取引者の、これは信用を與えるほうの意味取引者でありますが、貸付先等に対するサービスも更に向上することによつて、その企業等の国際的な競争力を養つて行くということがどうしても必要でありますために、産業所要資金に対する貸出利率というものもできるだけこれを引下げて行くことが必要であろうと思うのであります。ただ、今ここで表面的な貸出利率を下げるかどうかの点につきましては、なかなか困難な問題もありますが、少くとも産業の実質的な金利負担を軽減するということは、今後極力やつて参りたいと、かように考えております。今申上げましたように、銀行堅実性信用の保持を図りながら、更に一方で預金者に対するサービスも向上し、他方、貸出先に対する実質的な金利負担を軽減して行く。この三つのことを金融機関に要望いたしておるのであります。  具体的に、十の利益のうち、どれをどれに幾らを振当てるかということは、場合々々によりましてなかなか困難な問題ではありますけれども、今申上げましたような観点から、單に預金利子引上げる。銀行は收益が非常に外見的にいいから、それを皆預金利子引上げに充てろというわけには参らないのでありまして、今申上げました三つの観点から、これを適当に按配して行くということが今後の金融行政の大きなかなめになるかと思うのであります。金利の問題につきましては、特に預金金利でありますが、現在各金融機関に対して、どの程度預金利子引上ができるかという点について意見を取まとめて申出るように只今やつております。まだ今のところはつきり結論的なことを申上げるわけに参りませんが、大蔵省自体といたしましても、まだ金融機関からの申出を聞いた上、更に日本銀行政策委員会等意見も参酌いたしまして結論を得たいと思いますが、並行して私どもといたしましてもいろいろの観点から検討は進めております。この度は先般数回に亘つて金利引上をいたしましたときと違いまして、日多預金と申しますか、普通預金等についても或る程度利子引上を行なつて参りたい。定期預金についても勿論引上を行なつて参りたい、かように考えておるのであります。なおこの点に関連いたしまして郵便貯金利子の問題があります。これは大蔵大臣から正式に申上げておりますのは、現在二分七厘六毛でありますが、これは普通貯金であります。二分七厘六毛でありますのを、四分前後まで引上げるということを今公式に申上げております。この点についても金融機関銀行等から意見があれば申出るようにということを今言つております。具体的に最終の決定は得ておりませんが、大体四分前後のところで落着くかと考えております。これは余談でありますが、郵便貯金は御承知のように月々利子を拂いますために、金利でいたしますと十二で割れる数字が必要なのでありまして、そのために今現在でも二分七厘六毛というような数字が出ております。そういう観点から四分前後で十二で割れる数字が適当であろうというのが結論であろうというようにお考え頂いていいかと思うのであります。更に今の問題に関連いたしまして、郵便貯金預入限度を現在三万円を相当程度引上げて行きたいと思います。これもやはり資本蓄積促進して参りますための一つの手段でありますが、現在のところでは大体十万円見当、或いはできますれば十五万円見当までと思つておりますが、大体十万円見当まで引上げることを考えております。これに対応いたしまして、一般銀行等の取扱つておりまする貯蓄組合預金につきましても、限度を現在三万円をこれらと同額程度まで引上げることを考えております。なお貸出しの利率でありますが、これは当然今の預金利子引上げの問題と関連いたして参りましようが、先ほど申上げましたように、産業の実質的な金利負担を軽減いたします観点から問題を判断いたしますと共に、中小企業に対する金融の疏通を更に積極化して行くという要請を更に考慮に入れまして、或る程度の小額の融資につきましては、金利調整法の金利調整の対象外に置いたらどうかということを今考慮中であります。私どもといたしましてはまだ結論を出しておりませんが、金融機関方面からは、中小金融の疏通のための一つの大きな寄與にもなるという観点から、この点について強い要望がございます。  それから金利につきましては、この点は非常に実は私ども殊に私銀行局長として申訳ないのでありますが、金融機関の取扱で実質的に金利調整法の違反の事実が相当実はあるわけでございます。先般この自粛につきましては十分なる注意を喚起し、又検査方法も嚴重に行なつて参つたのでありますが、未だにその跡を絶たないような状態であります。今申上げましたのは、実質的な金利違反でありまして、これが臨時金利調整法の違反になるかどうかの問題はいろいろの観点から問題はありますが、特に問題になつておりますのは、いわゆる両建預金という問題であります。この両建にもいろいろな性質のものがありまして、本当の意味で脱法的な両建預金というものを把握することは私どもの経験からいたしましても、なかなか困難なる点はありますが、少なくともはつきりいたしておるものも相当あるのであります。これらは一切止めさせるという方針で嚴重なる通達をいたしております。今後検査等によりまして、この事実が明らかになりました場合には、嚴重なる処置を講じたいという所存でおります。これらの点を直して参りますことによりまして、産業に対する実質的な金利負担というものは相当軽減されるというふうに私どもは期待いたしておるのであります。  それから次はウインドウ・ドレツシングという言葉で言われておりますが、預金の外見的な粉飾の問題であります。これは最近特に多くなつて参つたのであります。この出て参りました動機はやはり預金がなかなか集まらないために、外面上預金が殖えたようなことにいたしたいという、まあ一つの焦りが原因であります。もう一つは、日本銀行の高率適用の制度がやはり預金を基準にして考えておりますために、この預金が相当外見上殖えたような形をとりたいというような点がこのウインドウ、ドレツシングが非常に彌漫して参りました大きな理由だと思います。これも金融機関が堅実な経営をして参りますために、実質的な資金の増加でないものを架空的に両建的に粉飾いたしますことは、どういう観点から見ましても適当でないことは申すまでもないことでありまして、この点も嚴重な検査を今後執行いたしまして、一切取止めさせるようにいたしたいと思つております。これが技術的にはなかなか困難な点がありまして、粉飾するための預金であつたか、そうでなく日常の取引から正常に起つて参りますものであつたかなかなか境のところは見分けのむずかしい問題もございますが、できるだけそういうふうな粉飾的なものは一切やめさせるように今後嚴重に処置して参りたい、かように考えております。そのほか銀行経営合理化の問題、或いは増資の問題、或いは不動産の取得の問題につきまして銀行局におきましてあれこれいろいろと申渡したのでありますが、この点は特に本日の金融政策自体の問題とは余り深く関係いたしませんので省略をさして頂きたいと思います。  要するに、銀行といたしましても、その公共的な見地からいたしまして、できるだけサービスをするものはサービスをする、併しながら内容の堅実をそこなうようなことであつてはいけないので、この点を睨み合せながら公共機関としての使命を全うするために遺憾のないように努めよということが、この通達の骨子になつているわけであります。  それから先程もちよつと御指摘がありましたので、中小企業金融についての目下の私どもの考えを申上げておきたいと思います。  現在中小企業金融につきましては、一般銀行、或いは無盡会社、信用組合、商工中金、その他の既設の機関が中小金融の面に積極的に活動することが要望されておりますことは勿論であります。このほうはこのほうとして今後ますます中小金融への積極的参加を進めて参りたいと思いますが、何分にも中小金融というものは、御承知のように、このうちには何と言いますか、一〇〇パーセント、コンマーシヤル・べースで考えられないような金融もまあ性質上どうしても出て来るわけであります。これらの問題を單に今申上げましたような純然たるコンマーシヤルな金融機関だけでこれを賄わせるということは、事柄の性質上困難な部面も起つて参るのであります。これがため、一面におきまして見返資金から今年度四十億の枠を割きまして、中小金融のほうへ振向けることをいたしたのであります。この見返資金の四十億は昨年から本年へ持越しましたものが約十二億、本年の四十億と合せて五十二億ほどで二十六年度出発いたしたのであります。四月以来まあいろいろな事情でこの見返資金融資の実績というものは必ずしも十分でなかつたのであります。国会方面でたびたび私どもお呼出しを受けましてお叱りを受け、鞭撻を受けて参つたのであります。その後いろいろな改善策を講じまして逐次この見返資金融資方面も実績は上つてつております。四月頃は大体一億数千万、一億台でありましたものが、六月には二億五、六千万円まで伸びて参つております。相当成績は順調に上つてつておると思います。併しながらいろいろ制度上の改善を今後もやつて参るつもりであります。例えば現在五百万円までということになつておるのでありますが、これを千万円程度まで拡張いたしますとか、或いは現在直接的な見返資金からの融資ということになつておりますのを、できれば資金を紐付きで金融機関に渡して、金融機関の責任においてこれを運用させるような方法を講じられないかというような点、その他いろいろ制度上の改善も今後考えて参りたいと思います。又かねがね強い御要望であります見返資金から運転資金を融通できないかという問題もあるのであります。これは先般この委員会で申上げましたかどうですか、私、忘れましたが、この点はなかなか直接に中小企業に見返資金を投資いたします限りにおきましては、長期といえども運転資金にこれを廻すことは相当困難になるという結論も出ておりますが、今後もこの方面をできれば促進いたして参りたいと考えております。そういうような制度上の改善をいたしましても、なお年度初め五十二億の資金を年度内に全部消化いたしますことは相当困難であろうというふうに見込まれますので、そのうち困難と思われる残額を寝かしたまま来年度へ繰越して行くことは如何にも残念でありますから、これを何らかの形で活用して参りたいという配慮の下に、現在のところ大体二十億程度を考えておりますが、これを国民金融公庫の出資に振向けて参りたい。そういうことによりまして、国民金融公庫は、先ほど申上げましたように、見返資金を直接出します場合には、設備資金に限るのでありますが、この国民金融公庫でやらせて参れば、運転的な資金にも出して行くということもできるのでありまして、そういう配慮もありまして、できるだけそういう配慮の下に約二十億、これはもう少し当つて見ませんと、或いは十五億になりますか或いは二十五億出せるか、実績を見た上で判断いたさなければなりませんが、それを国民金融公庫の出資に振向けたい。かように考えておるのであります。それから中小企業金融を更に促進いたしますために、政府資金を更に注ぎ込むことによつて何らかこれを促進できないかという問題でありまして、国会方面の強い御要望もあり、次の国会におきまして私どもはこの問題を是非実現すべく努力をいたしたいと思つておるのでありまするが、目下の構想では、中小企業金融のための政府資金の、結局政府資金を流すことになりますが、政府資金をどの機関に流して中小企業金融をやらせるかという問題が一つございます。政府部内の或る方面では、新らしい金融機関をこの目的のために作つたらどうかという意見もありますが、現在まで結論を得ましたところでは、新しい金融機関をこれのために作ることは適当でない。それが動き出すまでの間のブランクということもありますから、できるだけ既存の機関を使つてこの政府資金を活用していくことを考えたい。この政府資金の中には、只今申上げました国民金融公庫への二十億という問題も併せてお考え頂きたいと思うのであります。然らば如何なる機関にこれをやらせるかという問題につきましては、現在二つ意見が出ております。  一つ国民金融公庫を活用すべし。国民金融公庫政府機関でありますから、政府資金を使うのには最も適当しておる機関であります。ただ現在の小口貸出とかそういう零細金融だけではいけないので、若し国民金融公庫にやらせる場合には新らしい部門を作つて別な勘定で中小金融をやらせるようにすべきではないかとは思いますが、そういう意見があるのであります。  もう一つは、現在ある中小商工業の金融の中枢機関としてこの商工中金を活用すべしという意見が政府内にあります。これは現在までまだいずれがいいか結論を得ておりません。私どもは前者を可といたすという強い意見を持つておりますが、まあこの点はまだ結論を得ておりません。後に事情を若し必要でありますならば申上げまして、いろいろお智慧を拜借いたしたいと思いますが、現在までのところではその程度の話を申上げるに止めたいと思います。  政府資金をどの程度出すかの点でありますが、これは先ほど申上げました見返資金の中小枠の二十億を含めて一般会計からと、資金運用部資金からの借入れになりますか或いは出資になりますかその点は分りませんが、この三つのルートからできるだけ多額を出したい。総金額につきましては現在のところまだ申上げる段階に至つておりませんが、できるだけ多額を割いてこの新しい機構でもつて中小企業金融促進に資したい。かように考えております。どういうふうな運営をいたしますかにつきましても、細部について私ども考えておるところもございますが、そういう元の問題について結論をまだ得ておりませんので、この程度のもので御勘弁を頂きたいと思います。それから商工中金の改組拡充の問題が、これと並行して、これは問題が関連いたしておりますが、これは商工中金について今問題になつておりますのは、御承知のように組合に対して貸し、組合から預金を預かることができるだけになつておるわけであります。この点につきましては間接構成員と申しますか、この事業協同組合の組合員から直接商工中金に預金をし、又この間接構成員に対する直接融資ができるようにしてもらいたいというのが、各方面の強い要望であります。これは組合金融という筋から言いますと稍々原則を申上げると外れるようなことになるのでありますけれども、同じ組合金融の中枢機関である農林中金が、その下部に持つております協同組合がすべて預金を扱い、それ自体が大きな資金を持つておりますのと比較いたしまして、商工業関係では、その事業協同組合が組合員からの預金を持ちませんので、組合自体の金しか持つておらんわけでありますから、農林中金とはおのずから同じ組合金融機関でありましても性質を異にして参りますので、今の間接構成員との直接取引の問題につきましてはできるだけそういう方向において考えたいという気持を持つておりますが、まだ決定的な結論にまで至つておりません。それから商工中金につきましては現在債雰を発行いたしましてこの金融をいたしておるのでありますが、この債券の市中の消化が非常に実は悪いために、いろいろ日本銀行等でこの債券のマーケツト・オペーレーシヨン等を行なつておるのでありますが、どうも消化が悪い。それがため商工中金といたしましては資金力の充実については難澁をいたしております部面も実はあるわけであります。先般の資金運用部の審議会におきまして、資金運用部が商工中金の債券を引受けますのは三年以上の長期のものに限つてつたのでありますが、商工中金に限つて、そういう市中消化がうまく行かない点も考えまして、三年以上のものが十分に消化できない場合には、一年物の割商についても資金運用部資金が暫定的に引受けることができるようにいたしたいという決定をされたのであります。そういうラインから、商工中金の資金力を充実して参りますための配慮もやつております。  なお、これは商工中金に限りませんが、かねがね政府の国庫余裕金をできるだけ中小企業方面に廻すことの要望が出ております。この点も今後の情勢の推移によりまして、そういう方向で考えて参りたいと思いますが、具体的な方法、並びに金額等につきまして、又、時期等につきましても、只今まだはつきり申上げられる段階になつておらないのであります。それからその他、信用保証協会制度、或いは信用保険制度等の改善等の問題もあると思います。時間が長くなりますので、後ほど御質問によりましてお答えいたすことにいたしまして、私の話は一応これで終る次第であります。  ただ最後に、次の国会で私どもにいろいろ又皆様方にお世話になつて参らなければなりませんが、大体現在考えております法案の項目だけ、件名だけ今考えておりますところを申上げておきたいと思います。  一つは、先ほど御説明申上げましたような観点から、銀行法について或る程度改正を加える必要があるかと思います。これは全面的改正を短期の国会で行うことは適当でありませんので、やれば一部の、極く差迫つた問題の改正にとどめるということになると思いますが、或いは簡單なものを御審議頂かなければならないかと思つております。  それから、実は先般の国会でも問題になつたのでありますが、輸出銀行の法律を直しまして、輸入金融も行えるようにして行きたいという問題と、それの附則で、開発銀行輸出銀行の関係を若干現行法を直したい点もありますので、輸出銀行法の改正をお願いいたすことになると思います。それから中小金融につきましては、只今申上げました何らかの構想で、いずれにいたしましても、法律を要すると思いますが、この点も考えております。又、信用保険制度等の改正も、場合によりましては、一部お願いいたさなければならんかと思います。  それから金利その他の問題につきまして、先ほど申上げました郵便貯金法の改正、それからこれに関連して国民貯蓄組合法の改正、これは預入限度引上げでありますが、これが改正が当然問題になつて来ると思います。それから先ほどちよつと申上げました商工中金につきまして、間接構成員との取引を認めることにいたします場合には、これはやはり法律的措置を要することに相成ります。大体大きな問題は今申上げたような点でありますが、そのほか保險業法の一部になりますが、保險の関係で、事業者団体法等の関係、その他で従来問題になつております料率算定団体の問題がありますが、これらも若し間に合えば今度の国会に提出する準備をいたしたいと考えております。  それから、これは直接法律には関係いたしませんが、予算の関係では、例の開発銀行の法律ができるときに、復金を吸收することになつてつたのでございますが、これは予算の裏付けがないために、延びのびになつおりますが、これもできまするならばこの次の国会にお願いいたすことに相成るかと思います。そのほか開発銀行、住宅金融公庫、それから先ほど申上げました国民金融公庫、これに対する出資の増加の問題が当然起つて来るかと思つております。これらにつきましてはまだ結論を得ておりません。得ておりませんが、現在いろいろ部内において折衝いたしておりますので、次の国会において或いは御審議を頂くことに相成るかと思います。  非常に雑駁なお話を申上げてお聞き苦しかつたと思いますが、私の説明は一応これで終ります。
  4. 松永義雄

    ○松永義雄君 最初にちよつと簡單直截にお伺いをしたいと思います。  滞貨金融に対して何かイデオロギー的な、イデオロギー的でないまでも、アイデイアというものがありますか。
  5. 河野通一

    説明員河野通一君) 滞貨金融と言われますのは恐らく輸出の関係の問題ではないかと思いますが、そう了解していいですか。
  6. 松永義雄

    ○松永義雄君 まあ一般的でもいいですが、輸出に関連して……。
  7. 河野通一

    説明員河野通一君) 一般論としての滞貨金融ということは、少くとも私ども先ほど申上げた金融政策の基本的な考え方からこれを特別に取上げてどうしようというように考えておりません。
  8. 松永義雄

    ○松永義雄君 滞貨金融というものに対して、或いは救済という言葉はないかも知れませんが、そうした方向に向つて行くことは、いいことであるか、悪いことであるかというようなことについて、何かお考えがあるでしようか。
  9. 河野通一

    説明員河野通一君) 先ほど申上げましたような観点から、私どもといたしましては、滞貨金融とは何ぞやという点については、先ず私どもその定義から御説明申上げなければなりませんが、滞貨にもいろいろありまして……。
  10. 松永義雄

    ○松永義雄君 簡單でいいのです。私の質問しておるのはあ……。
  11. 河野通一

    説明員河野通一君) 滞貨が正常ならこれは問題はありませんが、非常にそれが何と言いますか、正常の滞貨を遥かに超えておるような滞貨については、これは結局経済が回転しておる場合に、それだけが、上積みが常に残つておるような場合には、私生活における貧乏人の生活をお考えになつても直ぐお分りのように、それに全部金融を付けて行くということは、而もそれを積極的に措置するということは、決して健全なことではないというように考えております。
  12. 松永義雄

    ○松永義雄君 そこで先だつて名古屋で銀行家諸君の寄合いの所でちよつと質問みたような言葉が出たが、日本産業中小企業本位にするのか、それとも大企業本位で行くのかというような考え方が現われたが、我々としては大口の貸出についてとやかく言うのではありませんけれども、ただ徒らに大口のほうだけは資本蓄積資本蓄積言つて、小さいほうだけ、中小企業方面を放つたらかして行つていいかどうかという点について、我々としても当然疑問を持つたのでありますが、それで、これ又お役所方面の話でありましたが、健全なる中小企業が、或いはそこまで言われたんではないけれども、手形の不渡りが出るかも知れない。そういうことがひとり我々の心配ばかりではなく、銀行方面にも見えて来ておる。これは何とかいたさなければならんものである。そうした健全なる中小企業の……、値下りのために売行きが思わしくない。それから疏通が悪くなつて、そうして、それではいざ潰れるというような場合において大蔵省では一体どういうふうに考えられるかということが、先ずもつて我々非常に聞きたいと思つておることです。
  13. 河野通一

    説明員河野通一君) 中小企業資金に非常に困つておられる点は私もよく分つております。それがために先ほど来申上げましたように中小企案の資金難を解決するために、まあ非常に微力であつて、十分なことは実はできておりませんが、今後におきましても、あらゆる努力を傾けたいということは先ほど来申上げた通りであります。  それでは、具体的にどのくらい中小企業は潰れるかということの点については、私どもできるだけ潰れないで堅実に巧く行くことを期待しております。  併しながらただ中小企業自体としても十分これは……。若しそれが企業でありますならば、やはり結局それが国際競争力に繋がつておるのでありますし、十分な合理化をしてみずからの力をつけて行くことも並行してやつて行かなければならない。力は付かないし、あらゆる必要の金融を付けて行くということになると、これはやはり結局はインフレーンヨンになつて物価を上げる、物価を上げることによつて更に国際競争力はそれだけ削がれるということに、結局ぐるぐる廻るわけでありまして、これではやはりいけないので、一方では私どもできるだけ必要な中小金融につきましては、それは疏通の道を今後考えて参りたいと思いますし、それがために一般コンマーシヤル・ベースではできませんので、政府資金をできるだけ注ぎ込むように努力して参りたいというつもりでおるんです。それと併せて金融機関に対しましても、言葉は非常に悪いが、これが中小企業にできるだけコンマーシヤル・ベースでできる限りにおいては金融をつけるように私共尻を引つぽたいておるようなわけであります。そういうことと並行して企業自体としても合理化を進め自分の力を付けるようにあらゆる積極的な配慮がいたされることを私どもは衷心から望んでおります。こういうことを申上げて置きます。
  14. 松永義雄

    ○松永義雄君 私のお尋ねしたいことは、先行きの御計画のことではないの「で、目下差迫つておる問題について何か考え方がおありになるかということなんです。
  15. 河野通一

    説明員河野通一君) 現状に対しては、非常にさつき申しましたように金融に困つておることはよくわかつております。それに対して、今申しました考えで、できるだけ金融は付けて行くという方向で進みたいと思います。ただ併し、それは飽くまで、どんなに物価があがつても、どうなつてもいいということではなくして、基本的な考え方は、飽くまで金融であります以上は、やはり合理化を進めて或る一定のところにインフレーシヨンを起さないで金融を進めて行くという以外に方法はないのであります。それから先は或いは財政支出による救済の問題がありますれば、それは別問題だと私は思いますが。この点につきましては私から今ここでそのほうの担当者でありませんのではつきりしたことは申上げられません。
  16. 小串清一

    委員長(小串清一君) ちよつと松永さんの質問に関連して私からお聞きしますが、東海方面辺りで聞きますと、今松永委員の言われた通りであつて、一方、名古屋の日本銀行支店長あたりは大変楽なことを言つておりますが、岐阜県或いはその近県の金融関係者の話を聞きますと、とに角あの辺の大工業はどうやら間に合つているが、これは大体銀行貸出金は昨年の同期に対して倍以上になつているけれども預金はやはり昨年同期と同じくらいの程度である。それほど金融が逼迫している。各綿織物とか毛織物とか陶器とかいうものも、この朝鮮事変の中だるみに会つて、折角注文を受けたのもそのままになつておる。大分ストツクができている。むしろメーカーよりも問屋側が非常に苦しんでいる。今言つた通り金融機関のほうでは昨年の倍の貸付をして手持が一ぱいになているけれども預金はその程度しかない だからこの際政府で何とかして金を銀行のほうに廻してもらうということにしてもらいたい。そうしなければだんだん窮屈になつて来て、結局不渡りができたり或いは倒産するようなものもできないとも限らない。めいめいが、大きなメーカーはそうでもないけれども、問屋などは荷物を持つてつて、而もはけ口がない。それから又一方においてはあと資金をこれからあてがわなければならん、そのあともそういうわけで銀行のほうからは十分出ない。今岐阜、愛知辺のお話では、いわゆる大きい企業はそうでもないけれども中小企業に対しては極度に切迫しておる。これについてどうか政府で適当なお考えをしてもらいたい。そのうちにはいろいろな国庫金を、例の翌月拂込むやつを緩和してもらうとか、或いは政府から国庫金の集つているものを一時そのまま政府預金としてもらつて銀行の手持を揃えたらどうかというような意味のいろいろなこと言つておりましたが、つまりこれらに対して銀行局長のほうでは何かお考えがありませんか。まだお耳に入つておりませんか。今御答弁があつたようですけれども、私からもお尋ねします。
  17. 河野通一

    説明員河野通一君) 今の国庫金の問題につきましては、先ほどちよつと私からも申上げた通り今いろいろ考えております。ただこれは理窟を申上げますと、銀行等に国庫金の余裕金を出すことと、それから日本銀行貸出政策で行く場合と、これはどつちから行つても同じことなんです。形がただ日本銀行からの市中貸出金が非常に膨らむような恰好になるのが嫌か嫌でないかという問題だけです。国庫金を出す場合にも、これが金融調節に国庫金を使うのであれば、金融調節が二元化することになつていけませんから、必ずそれは日本銀行貸出政策で表裏一体で貸出ししなければならないという問題があるのです。ただ現実の問題としては、日本銀行に頭を下げに行くのは嫌だから政府のほうから金を出してもらいたいという話があつたかも知れないが、併しそれだけは日本銀行貸出と別に出て行きますならば、言葉は非常に悪いのでありますが信用のエキスパンシヨンになるわけです。一方の途でそれだけ国庫金が引揚げられたものが出て行きますならば、條件が同じならば日本銀行貸出がそれだけ減らなければならないことになる。それが今金が詰つているから、日本銀行貸出を殖やすというならいいのであつて日本銀行貸出が多いか少いかということはいろいろお話があると思う。筋はそういうことであつて日本銀行貸出政策一本で行くのと何ら理論的には変りない。ただ問題は日本銀行の取引先以外のところに国庫金が流れる場合、例えば無盡会社であるとか信用組合であるとか、そういうところに流れる場合には、それは銀行貸出金が殖えた形になつて、クレヂツトはエキスパンシヨンされるわけです。もう一方は、国庫金というものはこれは長く寝かせて置くわけには参りません。勿論年間を通ずれば殆んどこれはやはり出資状態になるわけですが、いずれは引揚げなければならない。アメリカ等でやつておりまする最近租税を引上げた場合に、一部銀行に残すことをやつておりますが、これなんかもいつでも返さなければならんわけなんで、長く寝かせておる金じやないのです。それはまあ一月置けるか二月置けるか、それはいろいろの国庫の収支の状況を見なければなりませんが、その期間しか置けない金なんです。それを長く寝かしてずつと運用して行くためには、一つのそれは別の固定した資金というものが政府から支出されなければならない。余裕金としてこれを使うなら短期にしか使えない。それでは今お話のような点に十分固定した或る程度資金を注ぎ込むという目的には大して役に立たない。こういうことになりはせんかと思いますが、併しこの点は先ほど申上げました通り今考えております。できるだけそういう方向で参りたいと思つております。
  18. 小串清一

    委員長(小串清一君) それでは今の話の、つまり仕入金と、それから売拂つた金との間に、もとは仕入金は四十五日なら四十五日の間に決済ができた、ところが今度は自分のほうで売つた問屋の品物は、今まで四十五日なら四十五日の間で決済ができたものが、今度は九十日経たなければ決済ができないという形になるのだから、少しそこを緩和すれば、即ち短期資金で一時助かる。その間のつまり期間の喰い違いだけはどうしても救つてもらわんと、中小企業者が困るというようなことを言つております。一方、長期に亘る問題については、今度の開発銀行の関係もありますが、現在一番すぐ当面に弱つておることはその程度の問題で、それを何とか救う考えを、今申す通り日本銀行から借りてもむろんよろしいが、或いは日本銀行との話合いで代理店、或いは地方銀行政府の金を一時預かつておるという方法でも、それは同じだろうと思います。そういうことを言つておつたということを今申上げておきます。
  19. 松永義雄

    ○松永義雄君 今ちよつとお話があつたのですが、露骨に言うなら、大蔵省の出先方面では非常に緊急状態の印象を持つておる。ところが日本銀行の支店においては中だるみといつたような、やや楽観というか何というか軽く見ておる。それであなたのお話のような、政府が金を出そうが、日本銀行が金を出して来ようが、同じことを繰返して行つて、ところが銀行へ金を皆借りに行つても貸してくれないそのこぼれが無盡会社とか信用組合に来たりして、それで金がないから貸して上げられないとかいうような話を聞いているのです。そこで問題は、最初少し長たらしい前置きがあつたのですけれども中小企業の健全なるものに対しては、当然これは保護しなければならない。そこですぐあなたがたはインフレーシヨンと、こう言う。一体インフレーシヨンのことばかりが国家のためか。こうした健全なる中小企業を守るための金融機関ということも、これは相当重大なことであろうと思いますが、特に最近あなたがさつきおつしやつたような大口金融についていろいろ御批評があつたのでありますが、そうしたルーズなことを他方面ではやつて、おいて、健全なるものに対して融資しないのは怪しからんと思うのであります。日本銀行の支店長の態度は、お役所のほうから聞いたから何も言うわけじやない、あつちこつち実情を聞いて見ると成るほど気の毒だという感じは強く受けて来たわけであります。一つこれは考えて頂きたいと思います。
  20. 木内四郎

    ○木内四郎君 さつき委員長の質問に対して局長が答えられたことを他の言葉で言えば、こういうことなんですか。政府財政政策はディス・インフレだといつておりながら、国庫金は非常に吸上げ超過になつておる。従つてその国庫金の吸上げ超過のところを金融で補つておるんだ。いわゆるその金融のほうに皺寄せして行くんだ。そういうことですね。
  21. 河野通一

    説明員河野通一君) まあ時期的にはそうです。年間を通ずればそういうことにはなりません。
  22. 木内四郎

    ○木内四郎君 年間を通じてそういうことになるのじやないのですか。
  23. 河野通一

    説明員河野通一君) いや、そういうことにはなりません。財政支出全部御覧になれば分りますが、そういうふうにはなりません。今後補正予算の問題その他ありますからね。
  24. 木内四郎

    ○木内四郎君 それは年間を通じてそうなつておるから、日本銀行貸出というものは依然として多いのであつて、而もそれが続いて行つておるんじやないのですか。年間を通じて非常にうまく行つておるということを国庫金の吸上げ超過になつておらんということであれば、貸出のほうが殖えて而も殖え放しでおるということはあり得ないことじやないのですか。それはそのままにしておいてもいいのですか。結局言い換えれば、ディス・インフレの政策といいながら、財政のほうは非常にデフレだ、だから金融政策金融機関が補わざるを得ないということを他の言葉であなたが答えられておるというように我々は了解していいのじやないのですか。
  25. 河野通一

    説明員河野通一君) いや必らずしも然らずですよ、これは例えば今の国庫収支が揚超であるかどうかという問題は、去年のものを御覧になつても、去年は四百数十億の撒布超過です。去年の予算を御覧になれば実績が四百数十億の撒布超過です。揚超じやなくて拂い超です。財政全体としては。
  26. 木内四郎

    ○木内四郎君 それ役人はいろいろな計算をするけれども、僕はその計算を信じられないから、一応撒布超過とか或いは吸上超過とかを我々の勉強のために一つよこしてもらいたい。この前も、去年の丁度今頃金融団体協議会へ出席して、銀行家が全部吸上げ超過だといつても、大蔵省の事務官は数百億の撒布超過だということを言つておる。僕は実におかしいのじやないかということを感じたが、その当時銀行家の先生は吸上げ超過というようなことを言つておる。従つてその期間において八百億だつたか貸出しの超になつている。それはそれを補うためにやらざるを得なくなつて自分達は皺寄せして来たんだということを言つておられた。あなたの立場があるから私は申しませんけれども、結局は……。
  27. 河野通一

    説明員河野通一君) 別に立場はないのですが、今の点は、申上げますと、去年の今頃だつたら同じように引上げ超過です。第一四半期から第二四半期の初めにかけては必らず引上げるのです。第三四半期が少し出て、第四四半期で或る程度上げて行く。それを今度は非常に急激に出ておるものですから、第二四半期から第三、第四四半期にかけては相当支出をすることと存じております。
  28. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで、若し事実がそうであるとするならば、政府の国庫金のほうも非常に撒布超過であつたのに非常にオーバー・ローンになつておる。そこで非常にここに信用の膨脹になつてそれが続いて行くということを金融政策上認めておることになるんですか。
  29. 河野通一

    説明員河野通一君) 撒布超過といいますが、去年の二十五年度中途、二十六年度の第一四半期は六百五十億の引上げ超過、第二四半期は恐らくそれと大体同じくらいの引上げ超過でしよう。このうちの犬部分は……、併しこれは非常に複雑な御説明をしなければなりませんが、例の日銀ユーザンスの関係なんです。日銀ユーザンスの関係の貸出しが落ちることによつて、国庫がそれだけ引上げる、これが大部分です。これを日銀ユーザンス金融と見るか財政と見るかという点はあります。
  30. 木内四郎

    ○木内四郎君 金融でしよう。
  31. 河野通一

    説明員河野通一君) それは去年は財政と見たから、それがそれだけ支拂超過になつたんです。これを財政と見るか金融と見るかという問題はあります。
  32. 木内四郎

    ○木内四郎君 日銀ユーザンス財政と見るということは……。
  33. 河野通一

    説明員河野通一君) いや財政です。財政資金です。これは外為特別会計の資金繰入の予算にそれが反映しておる。そこの問題はありますよ、だからそれは金融と見るか財政と見るかという問題はあります。
  34. 木内四郎

    ○木内四郎君 一度その真の受け拂いのことを……。
  35. 河野通一

    説明員河野通一君) あれは私のほうの理財局長をお呼び下さればわかりますから。
  36. 木内四郎

    ○木内四郎君 それから、御承知の通り、実は大蔵委員として、国税局、専売公社或いは税関など、更に証券取引所或いは金融機関の代表者、信用組合、無盡会社の代表者に会つたのですが、そのときに無盡会社の人々が、今度相互銀行法ができまして、相互銀行になるについて、或るものはなり、或るものは相互銀行にされないということはあり得るでしようが、それが余り数回に分けてやられるということになると、信用に非常に響影があるから、成るべく一回にやつてもらいたい、或いは少くとも二回ぐらいにやつてもらいたいというような意向があつたのですが、そういう点についてはどんなふうに扱われるお考えですか。私はこれは報告にかねてここでちよつと質問しておきたいと思います。
  37. 河野通一

    説明員河野通一君) これは成るべくたくさんの無盡会社を成るべく早く、而も成るべく同時にやりたい。同時と言いましても、これは半月や一月は手続上どうしても遅れますから、今の予定では大体こういうふうに考えております。八月中に申請書を出してもらう、九月中に内免許をいたしたいと思います。そうして十月の定時総会で正式に切換をいたしたい。こういう形においてやる。そのためにお話のように定時総会の日にちが違いますから、半月や一月はずれるかも知れませんが、会社の数は今はつきり申上げられませんが、第一回でやるのは少くとも半数以上、今七十数社あるうちの半数以上をやります。
  38. 木内四郎

    ○木内四郎君 それから無盡会社の連中は、中小企業金融の問題について非常に張切つておることが見受けられたのですが、中小企業金融の問題は毎年々々繰返されて、各政党政派皆これはいろいろ案持つて政府も又案を持つておるが、うまく行つておらない。大銀行大蔵大臣が非常に非難しておられるように、採算上どうも中小企業のほうに余り力を入れておられないのではないかと思うのです。そこで無盡会社は、自分たちは一つ中小企業金融に大いに乗り出そう、こういう考えを持つておるように見受けたのですが、併しそれについては資金がどうも少し足りない。そこで預金部の資金とか、或いは見返資金という、つまり国庫資金をもう少し無盡会社のほうに広く入れてもらいたい。さつき委員長の言われた意味ちよつと違うかも知れませんけれども金融に廻し得る金を無盡会社のほうにも相当入れてもらえば、自分たちは一つ中小企業金融を引受けてやつて行こうと、こういう甚だ意気壯とするあれがあるのです。そういう点について銀行局長はこれを大いに働かせて行こうというお考えですかどうですか。
  39. 河野通一

    説明員河野通一君) 大いに働かせて行こうと思います。
  40. 木内四郎

    ○木内四郎君 同時にその方法についても……。
  41. 河野通一

    説明員河野通一君) その方法としては、さつきも申上げましたように、無盡会社の相当部分はすでに見返資金の中小金融の取扱機関になつておりますから、これをどんどん促進して行、く。これを促進して行くためにできるだけやつて貰えば……。
  42. 木内四郎

    ○木内四郎君 ずつと無盡会社のほうにも広く預けよう……。
  43. 河野通一

    説明員河野通一君) いや、取扱機関になつております。見返資金中小企業の取扱機関に無盡会社がなつております。全部じやありませんけれども
  44. 木内四郎

    ○木内四郎君 併し実際上極く少部分のものに限られて、広く行かないということはないですか。
  45. 河野通一

    説明員河野通一君) そんなことはありません。半分ぐらい取扱機関になつております。
  46. 木内四郎

    ○木内四郎君 ところが見返資金貸出については手続がなかなかむずかしいのですね。殊に半額というものを自分が出さなきやいけないのでしよう。
  47. 河野通一

    説明員河野通一君) 今七割、三割でしよう。
  48. 木内四郎

    ○木内四郎君 非常に手続が煩雑であるから、手続を簡素化して頂きたいということを頻りに言つておりました。
  49. 河野通一

    説明員河野通一君) その点はたびたび国会でもお叱りを受けているので、最近では非常によくなつておると思つております。
  50. 小串清一

    委員長(小串清一君) ちよつとお諮りいたしますが、午後やはりやりたいと思うのですが、御都合は皆さんどうすか。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  51. 小串清一

    委員長(小串清一君) 速記を始めて。それでは継続いたします。
  52. 木内四郎

    ○木内四郎君 それから無盡会社が相互銀行になると、今の無盡会社は中央銀行的の親会社というものがなくて困る。日本銀行とも直接取引を認められておらないのですな。相互銀行になつてもこれは認められないようであると非常に困るということと、親銀行的なものはどうしても必要だということを言つておるのですが、これは私は尤もな点があると思うのです。相互銀行になつていろいろな業務をやるとなればですな。そういう点についてもお考えになつておりますか。
  53. 河野通一

    説明員河野通一君) 恐らく相互銀行になれば日本銀行と直接取引を開かれるほうが筋だと思います。併しそれができない場合には、やはり何か適当な機関を考えなきやならんかとも考えております。むしろ今の私の考え、これは外部とはまだ十分相談はいたしておりませんが、前者によつて大体行くべきだろうと思います。併しその場合に、相互銀行なつたものは全部日本銀行と取引を開くことが必要であるかないかは相当問題があると思います。必ずしも全部一挙にやる必要はないのじやないかと思つております。
  54. 木内四郎

    ○木内四郎君 只今の局長の御配慮は御尤もな点があると思うのですが、なお信用組合においてもこの資金量の問題などについていろいろ意見がありました。例えば信用組合でも国税金を取扱わして貰つたらいい。或いは株式の拂込金を取扱わせて貰う。言葉を換えれば、一般銀行の業務の範囲と同じようなふうに、できるだけこの範囲を拡張して貰いたいというような希望があるのですが、この国税金の取扱とか拂込金の取扱とかいうことについてはどんなものでしようか。
  55. 河野通一

    説明員河野通一君) 国税金のほうは、いろいろありましようが、まあおいおい行くべきじやないかと思いますがね。信用組合が今度信用金庫にでもなつて来れば、その際にいろいろそういう問題も、言葉は非常に悪いのですけれども、相当一人前の金融機関ということになるのですから、そのときにはだんだんそうい問題も解決して行くのがいいのじやないか。今すぐ信用組合を今の形のままをそういうところまで持つて行くのは、まだ時期が早いというふうに考えております。
  56. 木内四郎

    ○木内四郎君 それからなお報告に兼ねてお聞きしたいのですが、証券取引所のほうで、証券市場の非常に振わない原因として、例の讓渡所得課税ですね、この問題が非常に邪魔になつているということを強調しておりました。それからレギユラー・ウエイは東京のほうは非常に賛成だつたけれども、実は内心、大阪のほうは余り賛成していなかつた、むしろそれよりも長期の清算取引を認めて貰つたほうが非常にいいというようなことを言つておりましたが、そんな点については何か課税の問題その他についていろいろお考えですか。
  57. 河野通一

    説明員河野通一君) 私どうも証券のほうは担当いたしておりませんから……。
  58. 木内四郎

    ○木内四郎君 関係ないですか。
  59. 河野通一

    説明員河野通一君) いや、今の証券の讓渡所得の問題は、これは税全体の問題として、預金課税の問題その他と一貫して今いろいろ検討をいたしております。
  60. 小宮山常吉

    ○小宮山常吉君 それでは私は七月の八日から、四国高松を中心として、金融問題、税の問題でいろいろ調査に参りまして、高松中心であそこにみんな集つて頂いて、いろいろの資料を頂いたり、いろいろ意見を聞いて参りましたが、丁度今木内委員が申されたように、やはり相互銀行法については、あとになるものと先になるものとでは非常な遠心がある。やはり銀行という意味において、下手をするとあとなつたものが困る。なかなか今後は継続が容易でないから、これは少しは遅れても、できるだけ一つ大蔵省の意に副うように資金の問題もあらゆる問題もやるから、一つ今木内さんが言つたように、余り離れずに一つ許可を貰いたい。これは特にということで頼まれました。それから今の信用金庫法も、やつぱり信用組合で、割合に高松あたりで聞いてみますと、小さいけれども非常に皆さん堅くやつているようであります。運転も相互銀行と同じようにできるだけ堅実にやつて資金もできるだけ集めるから、一つ信用金庫法も成るたけ公平に許可を貰いたい。いろいろ聞いてみても、高松あたりでは、やはり今おつしやつたように、割合に無盡会社、殖産会社というものが非常に中小企業の役に立つているようです。特に高松あたりは丁度島のような所でございまして、東京の銀行と違つて金融のやりくりが非常にむずかしい所なんですから、只今局長がおつしやつたように、一番皆さんの要望は、中小企業金融を専門に、長期のものの金融をやつて貰いたい、是非一つ自分達が出て行つてもいいからその点に力を添えて貰いたいということの熱心なお話がありました。どうかその点も一つ含まれまして、相互銀行法と信用金庫法というようなものについて是非一つ……。丁度四日ばかりあちらを廻りまして、税のほうは昨日皆さんからお話がありましたが、私は金融についていろいろ聞いて参りました。それから今の無盡会社と殖産というのの差がありますが、その点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  61. 河野通一

    説明員河野通一君) これはなかなかむずかしい問題ですから、今ここでまだお答えをいたしかねますが……。
  62. 小宮山常吉

    ○小宮山常吉君 併し高松は是非長期の金……それからあそこの産業の発展しないというのは、電力が一番の問題になつておる。それで銀行資金などでは電力の開発なんということはとてもむずかしいから、これも開発銀行あたりで長期に金を貸して、是非電力を一番にやらないと、あそこは非常に企業の遅れている所だからということでありました。私のお願いしたいのは、今の相互銀行信用金庫、それから産業の発展のために何とかして電力の開発に一つ何か金融をやつて貰いたい、こういうことであります。
  63. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 私はたくさんあるのですが、一点だけ今日はお伺いしておきます。それは先ほど局長が、通貨の量は物価に比例して大体増減するようなことが一番望ましいというようなお話なんですね。ところが今の日本生産状況を見ると、非常に増加率が多いのですね。物価だけじやなしに、生産量にもやはりこれは比例さすべきだと思うのです。そういう点から行くと、最近の通貨発行高というのはこれは当を得ていないと私は思うのです。局長はさつきはまあ物価の面だけで以てお話になつておられる。その面から言うと成るほど或いは適当なことかも知れませんけれども生産量の増大という点から見ると、やはりもつと通貨は増加してもいいんじやないかと思います。この点はどういうふうにお考えになりますか。
  64. 河野通一

    説明員河野通一君) 今のお話は油井さん誤解があるのじやないかと思いますから、もう一遍申上げておきます。私は通貨を……適正通貨量というものははつきり計算はできません。できないが、今考えられる方法は、生産も増加し、貿易も殖えて来ている際に、通貨というものは三千九百億なら三千九百億、三千五百億なら三千五百億というふうにきめることは適当でない。私は物価上つておれば通貨が殖えてよろしいということは一切申上げておりません。然らば一体適正通貨量とは何かというのであつて、結局今の管理通貨の下においては、金本位制なら自動的に動くのですが、管理通貨の下においては適当な物価を見なければならない。適当な物価で安定するような配慮の下に、通貨量というものは規正されて行かなければならない。こういうことを申上げたのであります。物価が上れば通貨が殖えてよろしいということは毛頭申しておりません。それからあと追いかけて計算いたします場合には、やはり通貨量というものは、生産物価の推移をかけ合せたものの比例で見なければなりません。過去の実例を見ましても、結局何をとつたらいいかということは、これは非常に不完全な数字ですけれども、諸外国でも同じような考え方を持つておりますが、やはり国民所得に対する通貨の平均発行高の比率をとるのが普通のやりかたです。国民所得に対する比率は、大体戰前からずつととりますと一〇%……年間の平均発行高が大体国民所得の一〇%前後ですな、九%から一一%くらいのところです。平均発行高というものは……。それで戰後非常に生産が落ちまして、国民所得はインフレーシヨンでぐつと殖えましたから、あのときは非常に異常な状態を呈しておりますけれども、昭和二十五年は一体国民所得に対して通貨の平均発行高の数字も、余り適当でないのですけれども、九・三、四%でしよう。今年は今私どもは大体国民所得に対して九・五%程度の平均発行高くらいが適当のところじやないか。これは極く腰だめですが考えております。  外国のは、今資料が手許にありますのは、年末の残高をとつておりますが、アメリカ、イギリスあたりが大体十一くらいですな。国民所得の……。これは年末発行高ですから、非常に多いのです。向うは平均発行高を出しておりませんからわかりませんが、日本の年末発行高をとりますと、おそらく去年あたりで幾らになりますか、はつきり覚えませんが、十三、四%になるのじやないですか。この物価は御承知のように、パリテイは、最近お聞きになつたと思いますけれども、大体四月一四一、五月が一三八、六月がずつと下つております。これは大体ウエイトのかけかたはありますけれども物価については相当下つて来ております。殊に繊維はウエイトが大きいですからずつと下つて来ている。どこまで下げたら……言葉が悪いかも知れませんが、どこが適正かということになるとむずかしい。さつきの中小企業でもお話がありましたが、企業が一体どの価格で決済をすればいいかということになる。どの価格まで金融を付けたらいいかということは、非常にむずかしい問題なんです。問題は結局それなんです。金融をどこに付ける……代価が低いところで付ければ……。併し今まで余り過ぎているから、どうしても物価というものは或る程度安定させなければならない。国際物価鞘寄せするために……。そうしなければ取引の関係において高い物を買つて取引しなければならんというので、それを一応持つていたら、物価というものは上つて来なければならんのですね。結局みんな物価が上らざるを得ないということになるのですね。
  65. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 それに多少私は異論があるのですが、今までの金融政策というものは、あなたのおつしやるのも一理あるのですが、大体においていつも私が大蔵当局や通産当局に言うのですが、物が上るときは金融機関幾らでも金を出すのであつて、物がなければ締めちやう。だから下げなくてもいい値段が暴落をしているのです。企業自体を弱体化させるこれはやはり当を得たものじやないのです。
  66. 河野通一

    説明員河野通一君) お話の通り、それで私ども後手々々を踏んではなはだ申訳ないのですけれども金融機関もオーバー・ローンをやつたのです。去年の暮から今年にかけて……。そういうことをやるからいかん、ユーザンスも現にそうです。ユーザンスもいかん。現にやつたのですから、それをいかんということを私どもは強く言つてるのです。
  67. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 時期的にその注意がずれちやつて……。
  68. 河野通一

    説明員河野通一君) 併し非常に雑なことを申上げて恐縮ですが、貧乏人というのは結局高いものを買うのじやないですか。去年の朝鮮動乱が起つたときに、輸出が殖えた。皆が安心しておつた。そのときに輸入に是非手を打たなければ嘘だつたのですね。それが打つてない。これがぐつと上つちやつて、それで輸入をして物価を安定させようとやつたが、その場合物価は上る……下ることを意図してやつたのですが、ところが下つたら大変だということが起つて来るのです。高いものを買つたらすぐ売らなければ損をするのだから、だから物価が下るというときには合理的にやはり損するという問題が起つて来ますね。金融機関も同じです。金融機関も非常にルーズに貸し過ぎたということは、お話の通りだと思います。
  69. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 それと関連してもう一点。政府のさつきのお話のこの資金の撒布とか或いは揚超の問題、これは意識的にやられるのですか。政府の支拂というものは、やはり拂うべきものは時期をずらさないようにするのが至当で、それを意識的にこの辺で金融を引緊めてやろうというので、支拂いを遅らしたり、この辺で緩めてやろうといつてどんどん拂つたりというようなことをされたのでは、国民は迷惑なんです。それをさつきそういうお話があつたのですが……。
  70. 河野通一

    説明員河野通一君) そういうことはございません。ちよつと誤解があるかも知れませんが、意識的にやつてないので、少くとも税その他の歳入はどうしても先に上るのです。それをできるだけ調節するためにやるということは、歳出の成るべく時期を前に持つて来るということをやらなければならん。その歳出の時期もいろいろありまして、私ども例えば、例が非常に悪いが、月給を十二月分を六月に拂つてしまうわけにも行かないので、どうしても拂えないものがある。而も税その他は時期的に先に入つて来るのですね。公共事業費であるとか、平衡交付金であるとか、そういうふうな時期的に余り差違のないものはできるだけ早く付けてしまうのです。どんどん第一四半期に付けるようにやつている。そういう制度を更に促進するということは、現在やつております。それによつて時期的に国庫收入のでこぼこをなおすようにやつております。第二四半期について申上げますと、大体当初私ども引上超過が九百億くらいになりやせんかということは申上げたかと思いますけれども、そうなるのですね。それは、つまりひど過ぎるのであつて、歳出をできるだけ、今申上げたように、促進を図る意味を以て五、六百億程度引上超過で止めたいということで、止めたいということで、今努力しております。それから五、六百億くらいの引上超過の大部分は、先ほど申上げましたようなユーザンスの関係が非常に多いのです。だから曲目通の場合と今年は違いますので、その点もお含み願いたい。
  71. 小串清一

    委員長(小串清一君) 如何ですか。金融に関する問題はまだいろいろあるようですが、次の機会にするか、或いは只今やるかという問題ですが、午後続けましようか……。   —————————————
  72. 小串清一

    委員長(小串清一君) それから租税特別措置法の一部を改正する法律案の小委員会の設置に関する問題ですが。
  73. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 拵えてあつたのじやないのですか。あれは小委員会ではなく、我々のほうでお調べ願いますという曖昧なものだつたが、正式な小委員会を作つたらどうですか。
  74. 小林政夫

    ○小林政夫君 これは是非お願いします。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 小串清一

    委員長(小串清一君) それでは各党から御人選はどうしますか。    〔「委員長一任」と呼ぶ者あり〕
  76. 小串清一

    委員長(小串清一君) それでは大矢君、小林君、油井君、松永君、森君、それだけのかたにお願いします。  もう一つ、租税特別措置法の内容についてお調べ願うことで、その小委員会の委員長はどういうふうにやりましようか。    〔「小委員会一任」と呼ぶ者あり〕
  77. 小串清一

    委員長(小串清一君) それでは小委員できめますか。……それじや今の小委員は五人のかたに願うこと、それから金融の関係はなかなかまだ問題がいろいろありますから、これは来月初旬に続いて継続審議をやつて頂きますから、どうぞ御了承願います。  では本日はこれを以て散会いたします。    午後零時三十一分散会  出席者は左の通り。    委員長     小串 清一君    理事            大矢半次郎君            清澤 俊英君            杉山 昌作君            木内 四郎君    委員            黒田 英雄君            菊川 孝夫君            松永 義雄君            小林 政夫君            小宮山常吉君            油井賢太郎君            森 八三一君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君    常任委員会專門    員       小田 正義君   説明員    大蔵省銀行局長 河野 通一君