○團伊能君
外務委員会といたしまして下関にこの
拿捕事件につきまして
調査に私が参
つて参りました。二月二十八日に
たちまして三月一日、一日を費しまして各方面とこの
事件につきまして問合せをいたしました。殊に午後二時から
漁業関係、山口県知事、下関市一長その他
漁業組合、海員組合、底曳協会等の代表者五十名と懇談をいたしました。そのときに得ました報告を総合いたしましてここに御報告いたします。但しこの大部分におきまして
只今四人の
証人、及びお二人の
参考人から伺
つたことと重複いたしますのでその点は略さして頂きます。
私は、送還されましたかたで今日御出席の山木
証人ともお日にかかりましたが、それ以外に会いましたのは第六十九
明石丸甲板長小山君であります。これは
拿捕されないで追跡せられましたが途中から脱走して帰
つた甲板長であります。これは同じ
拿捕された第六十八明石九と二艘で
操業いたして、おりまするうちに、両側から国籍のわからない船にはさまれまして、その船の形は
米式の
巾着船でありました。何だか少しもわけがわからないうちに両方から追られてその
行動が非常にあやしいので遁走しました。丁度三百七農林省の海区あの辺で
操業したのであります。時間が四時五十分頃でありました。大方夕方か近くな
つて来てこれならば逃げられるというので
全速力で逃走しておりました。そのうちに両船がだんだん遠くなりまして、遂にこの
拿捕されました六十八
明石丸を見失
つてしま
つた。一艘で逃げておりますうちに一艘の船に追跡せられて或るときは二百メートル近い距離になりましたけれども、丁度夕刻暗くなりましたので闇に隠れて遂に脱走し得たのであります。そのときの
模様を聞きました、これは
拿捕せられたのでございませんから、ただ船に追跡されてその
方向を変えながら逃げた
状態を詳しく詳細に聞きました。それによりましても襲撃いたされいろんな非常な不安の中にこの危地を脱したことが、ございましたが、その調書は後に報告に附加えたいと存じます。
なお
只今まで御説明を頂きました中で一つ御報告いたしたいことは、今日の以西底曳
漁場でありますが、これは大体
漁場の
支那海における海域の約三分の一くらいに当りますけれども、琉球近海は非常に深海でありまして、底曳
漁業は非常に不可能でありまして、むしろ西によるほど優良な
漁場に触れますので、その
操業は
マツカーサー・ラインの一番西の端、農林省海区の三百七、八の辺から五百十一辺の線で今日集団的に
操業いたしております。これは皆この線に沿いますことはこの辺が一番優秀な
漁場に近いためであります。そこで集団的に船はそこに来れば必ず
日本の船が集
つているということが一つのこの海域、この
漁業の
状態でございますことは先ほど田中さんも御説明にな
つたようなわけであります。
次にこの
マッカーサー・
ラインのことでございますが、今
日本の
漁船の
操業者はこの
ラインは一つこの中で
操業していれば保護せられるものであり、又
許可されている所でございますが、同時に安全であるという非常な安心感を持
つてこの辺に
操業いたしておりまして、従来
拿捕されたものの中にこのたびの
中共関係でなく
韓国或いは台湾に関しまして、いささか
漁場を出たというような測定をいたしたものもありますので、その
マッカーサー・
ラインの外に出ては非常に危険でありますけれども、内ならば絶対に安全であるという考えをも
つて操業いたしておりまし、た。先ほど
証人からもお話もありましたように、怪船が現われましたときにこれが
拿捕の目的とは考えなか
つたようなことがございます。
次にこの
マツカーサー・ラインにつきましては、更に西の方、
マツカーサー・ラインより遥かに西に出まして
日本の
監視船が行ける地域が設定されております。
この海域は
マツカーサー・ラインよりも外におりました。ずつと広く西に拡が
つておりますが、この西に
監視船のある水域その内に
マツカーサー・ラインがありますのでますます安全だと
思つていたのでありますが、図らずもこういう
事件が頻発して今日は非常な恐怖に置かれておる次第でございます。
次にこの先ほど海員のことでございますが、海員は殆んど皆失業いたしております。その上に最も悲惨なのはこの家族でありまして、
拿捕された家族が将来
帰つて来るか、その
拿捕されました
船員の将来の処置が全く不明でございますために、家族は非常に不安と焦慮に打たれておりました。今日併しながらこれに対する補償の方法もございませんので、要するに近隣からの補助を受けておるというような
状態でございましてこれが下関その他
漁場におきまして相当大きな不安を一般的に投げかけておる問題の一つと考えられます。
次にこれに対する
拿捕の
状態は先ほど
証人からおのおの説明がありましたような
状態でございますが、この防衛に対する考えを各種
関係者から聞きましたところでは、この業者の考えは極めて平和的でございますが、同時にまあ今日このことが非常に荒立ちますときに一般的
操業がなかなか困難になる傾向があるので、成るべく穏便にというような考えが業者といたし、又
船員といたし、その主流とな
つております。併し勿論これの永久的な解決があることも切望いたしておりますが、先ず永久的な解決は相当時がたつものと考えて、一応今日の保護の、今日の
対策を我々に説明せられたところを申しますと、この
マツカーサー・ラインよりも西にある、
監視船の行ける水域に監帆船をなるべくたくさん出して頂いて、この
監視船にできるならば電波探知機、発火信号その他の適当なる通報設備を置いて頂いて、怪しい船が来たという時は
漁船に向
つて一斉に一つの信号をして頂く、その信号を聞いて
漁船は一散に束のほうに引揚げるというような、極めて消極的なお考えでありまして、今日
監視船は九艘でございますか、七艘でございましたか、それに最近四月までに更に四艘附加わるということに非常な希望を持
つていられましたが、この
監視船それ自身も決して大きな船ではなく、
速力も制限いたされておりますので、これがどれだけの効力を発揮するか疑問でございます、か、一、応
監視船も殖える、又
監視船に一つの施設をして通報して頂くということを以て止むを得ざる一つの
対策と考えられているようでございます。
なおこの問題につきまして共通的に我々が聞きましたところは、このたびの
中共による
拿捕は特に重大視し、特に恐れておりますのは、従来の
拿捕した
相手国が
韓国或いは中央
政府であり、ましたために、何らかそこに話が付くという希望的な観測もあり、又事実
マッカーサー司令官の注意によりまして、
韓国から
拿捕された船も
帰つて参りましたが、このたびの
相手国に関してはその方法が立ちませんために、これは一層大きな衝撃を與えておりますわけであります。又これらの各方面から聞きましたところでは、殆んど一様に
マツカーサー・ラインというものを認めない、マツカーサー
マツカーサー・ラインを出たか出ないかという、
マツカーサー・ライン侵犯の問題ではなく、根本的に
マツカーサー・ラインというものを認めない行為である、それならば
マツカーサー・ラインのうちのどこにあ
つてもこの被害を逃れることができないというところに非常な大きな不安が
存在いたしておりました。
なお先ほど申しました
船員の
拿捕と同時に、
漁船に関する保険のことも先ほど寸話がちよつとありましたが、これにつきましては
漁船保険組合の特殊保險というものがございまして、さつきのお話の最高五百万円を限りまして百円につき一月八銭五厘の保険金を支拂
つておりますが、特に
拿捕については除外するとな
つておりまして、一切
拿捕に付ける保険は保証されておりませんために、
拿捕された船には何らの今日賠償の途がないということにな
つております。そのためにここで最後の結論といたしまして陳情されましたものは、第一に
拿捕されている
船員を帰してもらいたい、これは理窟を抜きにいたしまして、又今日国際法上の地位はどうあろうとも、とにかくも
拿捕されている我が同胞を一日も早く帰して参もらいたいという要求が最も強い第一の要求でございました。
その次はこの
拿捕されました船に対する賠償の問題でありまして、船を失
つた場合百にこれも方法は
政府その他におかれてお考えにな
つて頂くとして、一事実上これでは船を操作することはできない
状態になりますので、何らかの、形におきまして賠償をして頂きたい。この底曳
漁業は決して大会社ばかりでは、ございませんで、極めて自己資本の小さい
漁業会社その他によ
つてできておりますので、
拿捕されましたときに、もはやその企業は全く中止しなければならないというのが非常に多いように見受けました。
次にこれにつきまして若しも
拿捕した
中共政府なりその他からの賠償が取れればよいけれども、若しもそうでないときは国内的に何かこの
拿捕に対する特別な補償の道を講じて頂きたいということでございます。
なお最後には従来の農林省の
監視船は、甲に
日本の
漁船が
マツカーサー・ラインを越境したり或いは産物を擾乱、したりする特別の行為に付ける
監視でございましたが、これをやはり国籍不明の外国船に対する保護の意味を
監視船にも持たして頂いて、そうして何らかの通報機関等によりましてこの危険の発生を未然に防止するという方法を講じて頂きたいということが大体陳情の主眼でございました。
簡単でございますが御報告をいたします。