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1951-03-20 第10回国会 参議院 人事委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月二十日(火曜日)    午前十時四十六分開会   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○国家公務員災害補償法案内閣提  出)   ―――――――――――――
  2. 千葉信

    理事千葉信君) それでは只今より人事委員会を開会いたします。  議題は国家公務員災害補償法案でございますが、只今登院数は七名でございますので定足数に達しておるわけでございます。先の委員会決定いたしましたように、本日はこの法案に関する国民の輿論の動向を把握したいということと、それから又実際のこの法案に利害の深いかたがた、或いは又学識経験を持つておられるかたがた等に御出席を願いまして、いろいろと御意見を承わることになつたのでございますが、いずれも御熱心な六名のかたがたの御出席を頂きましたことを最初に厚く御礼を申上げておく次第でございます。  議事の進めかたにつきましては、午前中だけ出席可能なかたがございますので、一括して最後に質疑を申上げるということはちよつと困難な情勢でありますので、一応午前中にできるだけ御発言願つて、そうして午前中に一回適当な時間に質疑を申上げ、それから残余の問題につきましては、午後に改めて質疑を申上げるという形で、委員会を取り運びたいと考えておる次第でございます。最初国警本部人事課種村一男さんから先ず承わりたいと思います。
  3. 種村一男

    参考人種村一男君) 御指名によりまして、最初に私から一、二の意見を申上げたいと存じます。  私は国家地方警察本部におりまして、警察職員についての公務災害補償の仕事を担当いたしておるものでございますが、すでに資料によつて十分御覧を願つておることと存じますが、非現業国家公務員の中におきまして警察職員はその職責公務災害を受けることが非常に多いのでございまして、恐らく非現業中では一番高率な公務災害を受けておるということが言えると思うのでございます。従いまして警察職員に対する公務災害補償の問題はかなり早くから取上げられた問題でございまして、現在その基礎をなしておりますものは、明治三十四年に制定せられました巡査看守療治料給助料及弔祭料給與令という勅令によつて実施をいたしておるのでございます。尤もとの勅令国家公務員法施事後法律に読み替えられまして、更に同年昭和二十二年法律第百六十七号によりまして、その規定給與労働基準法災害補償の線にまで達しない場合におきましては、その線まで増額して、支給するということになつております関係から、実際的に申上げますと労働基準法災害補償を受けておる、こういうことが言えると思うのでございます。只今審議を頂いておりまするところ国家公務員災害補償法は、すでに十分検討御了承の通りに、その実施期間におきまして、或いは異議中立審査期間におきまして、その他国家公務員特有事情につきまして特別の規定を持つておりまするけれども災害補償実態につきましては、殆んど労働基準法災害補償の線と一致をいたしておるのでございます。従いまして私どもはこの法律制定によりまして、公務員に対する災害補償について非常な変化が生ずる、かようには全然思つておりません。従つてそういう意味合におきまして、この法案に対して政府部内として御同意を申上げておる次第でございます。併しながら現在のようなつぎはぎな、或いは借りもの的なやりかたによつて災害補償するという線から一歩進展をしたしまして、国家公務員に対する独立した災害補償制度を持つということは、これは職員に対して非常な安全感と申しますか、安心感を與えるという点におきまして、私どもはこの法案の成立を希望するものでございます。  併しながら我々にはこの法案を以て十分満足すべきものであるかどうかということになりますと、これに対しては若干の意見を持つものでございます。その第一番の問題といたしましては、業務災害性質を大体二つに分けることができるのではないかと、かように思うのであります。その一つ職員業務遂行に当りまして、その安全上十分の注意を払いながらも、なお避けることができないで受けるところ災害というものが一つ。二番目のものといたしましては、その業務遂行伴なつて相当な危險の伴うことがあらかじめ予断せられるにもかかわらず、その業務遂行を必要とする、こういうことのために受けるところ災害、この二つ考えられるであろうと存じます。その後者のものの典型的なものといたしまして、決して警察のみと申すわけではありませんが、警察職員公務災害が挙げられると思うのであります。即ち警察職員はその職務執行に当りまして、例えば兇賊を逮捕する場合におきまして、その相手方が相当の兇器を以てこれに反撃して来るということが十分に予断せられる場合におきましても、決してその職務執行を躊躇逡巡することを許されないのであります。従つて危險を冒しましてもその逮捕に当る、こういうことが必要であり、又もう一つの例といたしまして、風水火災のような災害警備等の場合を考えてみますると、災害によりまするところ生命財産の被害をできるだけ少くいたしますためには、警察官はみずから危険なる第一線に立ちまして、或いは一般民衆の避難の指導であるとか、或いは交通遮断の確保であるとか、或いは危險な物件の除去であるとかいうような任務にみずから当り、又これを指導するというような職責を持つておるのであります。従いましてこれによる業務災害の率というものは相当高いものがあると同時に、その質的に見まして前者と著しく異なるものが考えられるのであります。従いまして我々といたしましてはこれら後者のような予断せられる危險を冒して、なお且つ職務に従事し、災害を受けたというような場合に対する補償に対しましては、又特別な考慮を払つて頂くことが望ましい、こういう考え方を持つておるものであります。この問題はこの法案立案責任が曾て大蔵省にございました当時におきましても要望をいたして参つたのでありまして、或る時代におけるこの案の中には殉職特別一時金であるとか、或いは特別見舞金であるとかいうような性質補償を盛られたことがあるのであります。併しながらこれらのものは極めて複雑微妙な客観的な要請によりまして、直ちにこれを成立させることが困難である、こういう事情のもとにそのままとなり、更に今回人事院の手によりまして本法案が立案されます場合におきましても、同じような希望を我々は持つて要望いたしたのでありまするが、同じ事情のもとに、やはり今回の法案の中には盛り入れられていないということになつておりまして、これは私ども誠に残念に思うところでございます。従いまして今後できるだけ速かな機会におきまして、これらの問題を盛り込んだ法案の実現を期待いたしたいと、かように思つておる次第でございます。  それからその次は少し細部に亘る問題でありますが、たまたま今資料を拜見いたしますと、ここに同席の城君からも恐らく後に御説明があることと思いますので、項目だけ挙げておくのでありますが、業務災害の中で負傷というものは比較的その業務との因果関係が認めやすいのであります。併し疾病になりますと、急性伝染病のようなものは別といたしまして、普通の疾病になりますと業務との因果関係の結び付きというものが極めてむずかしいということで、この点は始終悩んでおる問題であります。この点について何らか明確な基準が求められるならば非常に仕合せと存ずるのであります。  それから第三点といたしましてはこの法案附則第四項に関連する問題であります。附則四項の問題は、この災害補償恩給との調整の問題であります。恩給の中に業務災害補償と同性質給與がある、従つてその重複する部分については、これを然るべく調整しなければならないということは、これは原則的に異議のないところであります。而して現在の制度によりますと、これは恩給法臨時特例の中の規定でございますが、この災害補償を受けました場合には、恩給側において受けるところ増加恩給傷病年金或いは扶助料増加分というものを六年間支給を停止するということに相成つておるのであります。この調整方法は相当愼重に考慮を要する問題であると思うのでございますが、大体恩給制度そのものにつきまして、近く根本的な改正が施されるというように聞いておりますので、この際といたしまして、私どもはこの附則四項の規定を一応御同意申上げておる次第でございますが、新らしい恩給制度を作り上げられました曉において、公務災害補償によつて受けたところプラス分を、全額又は大部分恩給の面においてマイナスしてしまうということでありますならば、これは極めてこの法律の存在を意義なからしめるものではないかと、かように考えるのであります。現に警察職員のごときは、先刻申上げましたような古い規定におきまして、恩給と並行いたしまして災害補償制度を持つてつた。而も現恩給法ができました大正十二年以来は、現制度としてこれを並行して持つてつたのでありまして、いわば一つ既得の権利であるとも言えると思うのであります。従いましてこれは要望でございますが、近き将来に恩給制度改正が行われます際において、災害補償の実質を零にするかのような調整方法は、これは絶対に避けて頂きたいということを特に要望いたしたいと存じます。  時間も限られておりますし、他の同席参考人の各位からもいろいろお話が出ることと思いますので、私の発言はこの三点にとどめます。
  4. 千葉信

    理事千葉信君) それでは次に日本官公庁労働組合協議会代表西孝雄さんにお願いします。
  5. 西孝雄

    参考人西孝雄君) 全官公を代表いたしまして、私は専門家ではないので、労働組合の感覚からこの法案について意見を申上げたいと思います。  この法案は、提案理由から見ましても、公務員法の九十三條から九十五條に基いてなされたものである、こういうふうに言われております。併しながら公務員法ができたのは二十二年十月だつたと思います。その間今日まで三年余りも経過しているのに、あの内容では成るべく速かにこういうふうに書かれているにかかわらず、この三年間も何ら提案されることなく来たということは誠に遺憾であると思います。これは法律を無視するも甚だしいものであると考えます。又政府がおおむね妥当であると考えられたということでありますが、これは過去においてはいろいろこの法案が出るような段階にあつたことは認められますが、それが完成しなかつたわけで、それらの以前の法案と比べると非常に内容が低下しておるということであります。又他の労働者災害補償保險法との均衡を保つ、こういうふうに言われております。併しながら公務員或いは公共企業体、こうした職員については、一般民間企業違つて公務員においては団体交渉権すら剥奪されて、公共企業体職員にあつて罷業権が剥奪されておる。一般民間企業においてはそれらは自由である。こうした立場において一般民間企業労災保險均衡を保つということならば、公務員或いは企業体職員というものは、それらの一般組合活動において制限を受けておる。こうした意味において罷業権のない労働運動というものは、非常に軟弱なものである。これが罷業権があるとするならば、相当強くこうした災害補償の面についても主張できるでしよう。併しながらこれらができない。一般民間企業では自由にそれらの思う活動ができる。こうした点においてこれらが同じようにされるということであつてはならない。而も最近マイヤース氏の勧告によりましても、公務員一般民間企業職員よりも更に上廻つた補償がなされるべきだ、こうした問題すら提起されておるのであります。又公務員法によりまして、九十四條によるところ経済的困窮に対する職員の保護であるとか、更にこれらが永久に又は長期所得能力を害せられた場合における補償であるとか、こうした場合に永久に又は長期に亘るもの、これはこの法案では一時金となつておりますけれども、永久的に長期に亘る補償をするものは一時金であつてはならない。こうした意味におきましても、これらは長期補償をするとするならばやはり年金制が妥当である。而もマイヤース氏の勧告内容にも、現在の退職金の一時金制度も包含したところ恩給制度の構想が勧告されている。これについてもやはり年金が主張され、又その額においても、現在の例えば共済組合或いは恩給法によるところ恩給が十七年で三三・三%に対して、新勧告は四〇%になつている。或いは最高が六〇%にも満たない恩給に対して、勧告は八〇%にもなつている。このように恩給そのもの内容も相当増額されているのであります。又社会保障制度審議会勧告したところ内容によりましても、公務災害についてはやはり年金制度を採用している。これらについて審議会或いは勧告内容を見るときに、GHQからめこうした勧告がやはり年金を主張されて出されている。これをこの法案は一時金になつている。これらが国会に提案されるときに、恐らくやGHQ承認を得られたものとは思いますけれども、こうした同じGHQ意見マイヤース氏の勧告はやはり年金を主張している。而もこれらに関連するところのこの制度が、一時金で妥当であると向うの承認を得たとするならば誠に矛盾な点が多いように思われる。又審議会がこの法案審議した模様についてはよく聞いてはおりませんけれども、若しこれを審議して妥当と認めたならば、先における社会保障制度勧告年金である、これが公務員を含んでいるにもかかわらず、今一時金を承認したとするならば、審議会としての意見もまちまちである。こうした点においても非常に矛盾が多いと思われるのであります。更にこの法案は過去の経緯をよく知らなければならないと思います。二十三年の七月に国家公務員共済組合法制定によります、共済組合の私傷に対するものは共済組合法制定され、公務によるものが災害補償として制定される予定になつておる。ところがこれが出なかつた、或いは現在の勧告恩給制度一般については年金を使用する。ところ災害補償については一時金を使う。こうした点、これらが余りにも矛盾の点が多い。而も具体的な内容に入るならば、労働基準法内容をちつとも上廻つてはいない、全く同じものである。これが公務員を公正に有利に補償するものとされておりますけれども、このような基準法という趣旨は、労働者最低補償したものである。現在ではこれが最高のごとく基準として使用されている。この制度によりましてむしろ公務員補償内容は低下されるということであつて、決して上廻るものではないということが言えるのであります。  次に人事院が審査することでありますが、いろいろ決定に対して不満異議申請をする場合には、人事院になされるというふうになつておりますが、これは少くとも査定するという機関が、人事院が一方的にやるべきものであつてはいかん。やはり民主的に運営されなければならない。これは過去における人事院の案にも出ておつたように思われますけれども公務員災害補償法審議会というものを別に制度を設けるべきである。そうして労使並びに公益、学識経験者、これらを入れたところ委員によつて民主的に決定されなければならない。これが單に人事院決定されるということになつてはならない、こういう点があると思います。  更に六カ年間給付を停止するということでありますが、これは前からの問題で今始つたわけではありませんけれども、例えば殉職に対して千日分が支給される、こうした場合に、これが六カ年分とするならば、六、六、三十六日で、三十日を掛けて千八十日分、これを千日分というのは六カ年を補償するとするならば、千八十日分でなければならない、こういうふうな点も数学的に矛盾があると思うのであります。これを單に基準法には六カ年ということがない。基準法の漠然として千日分というのを持つて来ておる。ここに六カ年との矛盾があるということであります。  更に公共企業体の面からこの法案に対して意見を申上げますならば、公共企業体は現在国鉄においては別に災害補償協約を持つております。これが過去において公共企業体は別に公共企業体災害補償法制定すべきである、こうした法案を提出さるべく努力いたしましたが、遂にGHQ承認が得られず、労働協約とするならばよろしいという意見で以て労働協約で以て獲得いたしました。この内容についてはおおむね過去における共済組合既得権をそのまま認めさしたという形であります。これにつきまして数字を申上げますならば、現在の例えば一級について一時金にいたしましても、基準法が千三百四十日分、つまりこの法案も千三百四十日分でありますが、これを千四百四十日分としておる。或いは二級について千百九十日分を十二百九十日分にしておる。三級の千五十日分を千百七十日分にしておる。四級の九百二十日分を千八十日分に、五級の七百九十日分を九百九十日に、六級の六百七十日分を九百日にしております。このように一時金にいたしましても相当上廻つたものを獲得いたしております。これは大体船員保險法基準におおむねよく似たものであります。更にこれらの六年後における基準につきましても相当有利な、一級が十三カ月、二級が十カ月、三級が八カ月、四級が七カ月、五級が六カ月、六級が五カ月と、こういうふうに年金についても相当有利な協約を結んでおります。そうした関係から、この法案が、日本国有鉄道法の六十條によりますと、公務員災害補償法制定された場合には、これを準用するということになつております。併しながら若しこれが準用されるとするならば非常に不利になる関係から、これらは自主的に公共企業体或いは国鉄において自由に協約によつて結ばれる、こういう制度を認めるために現在の国鉄法あたり改正が必要であると思います。或いはこれに附則として追加する必要があると思われます。更に一般官公庁におきましてもこれは一つ基準であつて、各官庁におきまして話合がつくならばこれを基礎として上廻つた附加給付的な補償がなされるという意味のものはこれらに追加されるべきであるというふうに考えます。  時間が参りましたので、要するに結論といたしまして私はこの法案内容であつては、ただ形式公務員法に基いて災害補償法制定せなければならんという、そうした形においてこの法案ができたものであつて、実際に公務員災害補償するという意味ではなく、單なる形式に過ぎないと言わざるを得ない。こうした意味においてこの内容がそのままにされるとするならば、全官公として誠に不満であると言わざるを得ないのであります。願くば質問応答におきまして私たち意見を十分に御理解頂きまして、是非この法案給付内容、更には委員会の民主的な運営、これらに或いは各省に対して自主性を持たせる、こうした点について相当この法案が変更されるように是非諸先生がたにお願いいたしまして、私の説明を終りたいと思います。
  6. 千葉信

    理事千葉信君) それでは次に全基準労働組合代表城千尋君にお願いいたします。
  7. 城千尋

    参考人城千尋君) 私全基準執行委員長をやつております城でございます。先ず今回は非現業組合を代表いたしまして今日参りました。私のいる職場労働基準法を司つておる官庁でございまして、基準法につきましては十分実際行政面の上からタツチし又資料も持つております。いろいろその説明に当りまして一応グラフを貼らして頂きたいと思います。  それでは私の意見を申上げたいと思います。各委員その他のかたがたに、非現業共済組合代表協議会とそれから官公庁労働組合給與共同闘争委員会という名前で以て、国家公務員災害補償法案に対する意見書、これは未決定のものでありますがこれを配付いたしたいと思います。大体これに従いまして話を進めて行きたいと思います。  先ずこの災害補償法の根本的な理念というものを考えなければならないと思います。それでこの法案趣旨というものが労働基準法精神に則つておるということが言われておりますが、その均衡を保つということを言われております。そうしたならば、当然この法律使用者労働者に対するところの無過失賠償責任であるということがはつきりここに現れておることと存じます。そうするならば、即ち国家公務員に対して支払うべきところ賠償責任であると、かように考えます。  先ず、根本的な考えかたに立ちますと意見はつきり出て来るのではないかと考えます。それは先ほど種村さんが言われましたように恩給法との相殺はけしからんと言うのも又そこに立つて来るものと思われます。それで先ほど国鉄諸君が言いましたように、民間労働者団体交渉権罷業権も持つているということを言われております。それと同時に民間労働者は自由に労働市場へ賃金の高低を辿つて自己能力従つて働き得るという條件もあるわけでございます。ここに公務員というものと民間労働者との相違もはつきり現われている、かように考えるものでございます。そうしたならば国家が我々公務員に対するところ賠償責任というものは、單に労働基準法最低基準を我々に押付けるということは果して妥当であるかどうかということは大きな疑問と言わざるを得ないと思います。これはもはや民間労働者労働基準法均衡を保つという根拠を戎々は絶対に発見できないということでございます。即ち民間労働者実態を申上げますと、我々基準局において取つているところ民間労働者最低基準労働基準法災害補償法以上に、例えば給與の点におきましては一〇〇%も取つている。又その他の災害につきましても基準法労災で以て受けるところ保險給付額以上に又組合で以てかち取つているという現状でございます。それでこの労働基準法の第一條を皆さんに読んで頂きたいと思いますが、この労働基準法の第一條、これは労働條件の原則でございます。この二項に「この法律で定める労働條件基準最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準理由として労働條件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」これが労働基準法根本精神でございます。ここに立ちまして各使用者も、労働者もこの最低基準をより向上せしめようとして努力しているのが現状でございます。そうしてそのためにその基準法以上の規定以上の金額を支払つているというのが現状でございます。にもかかわらず、今回の法律はその最低基準は絶対の基準である、我々の労働條件である、かような考えを押付ける、これは均衡を保つという意味から見ましても、絶対に相容れないものでございます。これは全く政府労働基準法を知らざるも甚だしいものであると言わなければならないと思います。この労働基準法との均衡というような厚かましいことをおつしやるならば基準法一條をもう一度よく読んで頂きたい、かようにお願いするものであります。又本法案作成に当りましては、常に国家公務員災害度数率というものを考えなければ予算も組めないし、実際にどの職場に一番災害が起きるかという資料も出て来ないだろうと思います。それで先ほど人事院で聞きましたところが、現業、非現業併せて合計が二十四年度は一%であるということを人事院が発表しております。今回この資料に基きまして我々東京労働基準局昭和二十五年十月現在の調べがここに載つております。このグラフがそうでございます。これを見ますると先ず第一号関係、この業態別労働者死傷調べというのがございます。それから業態別度数率というのがございます。それで一号関係は物の製造でございます。大体国鉄諸君たちには物の製造もあると思います。又四号関係鉄道船舶の運送、それから五号の貨物取扱というような形が出ております。それからこつちの如何なる原因によつてそのような死傷が起きるかということを考えますと、実際にここにありますのは物の運搬取扱機械準備調整とか、それから飛来落下というような、このような資料はつきり出ております。それから又業種別死傷者の調査によりますと、ここにありまする機械工業、土木、建築、貨物取扱運輸業、化学工業というような、このような資料に基きまして、はつきり如何なる業態にその事故が実際に発生しておるかということ、それからどのような人々に実際の災害が起きておるかということがはつきりわかると思います。これで人事院調べの一%というものを拾つてみますというと、そのうちの非現業というものはこの調べによりましても殆んど出ておらないのであります。非現業公務員で以て実際に怪我をしたとかこの労災法の適用を受けるというような人々は殆んど少いのでございます。大体このパーセンテージから行きますと、先ず我々のパーセンテージというものを殆んど零にひとしいと言つても過言ではないのでございます。  かかる意味におきまして我々はこの本法案が実際に我々非現業に適用されるや否やにつきましては非常に疑問と思うのでございます。むしろ我々といたしましては一番大きな問題は疾病の問首題でございます。結核の問題でございます。人事院調べの二十五年度三月現在におきましては職員が九十二万、それで調査をいたしますと調査の対象は七十九万人、長期欠勤者はそのうちの一・七三%でございます。そしてそのうちの結核患者というのはそのうちの七五・八%というように非常に大きな比率になつております。このようにこの比率は人事院の三月調べてありまして、その後各省によりましては各組合が積極的に健康診断を追及いたしまして、今日これ以上の上廻つたところの実際の疾病率が出ております。これは如何なる理由に基づいてこのような疾病が起きておるかどういうことは、やはり二十四年度の行政整理以降急激に我我の職場は非常に忙しくなつておるということ、そのために我々は労働強化が強いられて疾病が加えられておる。併しながら我々は休むにも休まれず、実際に床に倒れるまで労働を続けて行かなければならないというのが現状でございます。  この参議院におきましても恐らく閉会中に病人が出るということはないと思います。必ずやこの国会の開かれておるときに病人が出ておると思います。この点近くでございますので調べて頂けば必ずわかると思います。実際休憩時間、休息時間というものが與えられておりましても、実際にそれを使用することができないのが事実でございます。  かかる点に立ちまして我々はこのような災害というようなものは、非現業につきましては絶対にといつていいまでも必要なく、むしろこれに疾病の問題を加えてやるべきが当然ではないかとかように考えておるものでございます。それからたとえてこの法案が通過いたしましたといたしましても、單にこの法案災害に対するところ補償にとどまつております、單なる打切補償にとどまつております。併しながら我々は幾ら高額な金銭を以て我々の災害に代えて頂いても、絶対に我々は満足できないのでございます。やはり五体健全であつて毎日健康にして文化的な生活を営むということが我々の最も望ましいところでございます。然るに政府はこれに対してかくのごとき貧困なる法律を以て、賠償を以て報いんとすることは果して妥当でありや、国民輿論の前に批判を請うべきではないかと我々は考えておるのでございます。そこで政府は我々公務員の労働環境の完備ということに努めるだけの当然の道徳的な道義的な責任と義務を持つておると私どもは主張せざるを得ないのでございます。  米国社会の合言葉にセーフテイ・フアーストという言葉がございます。これは安全第一ということでございます。この語義はどういうことかというと安全の投機に優る投機はないということであります。その災害に払う金銭よりも災害を防止しようとする設備の完備なりあらゆる環境に金をかけたほうがよつぽど儲かるということでございます。かかる点からいたしますれば政府国家経済、国民経済の立場からいたしましても、單にこの金を我々に注ぎ込んだところで以て災害は撲滅できないのでございます。單にむしろ国民経済がより多く破壊せざるを得ないことだと思います。この意味におきまして先ず安全衞生設備の完備こそ望ましいのでありまして、予防対策なしに單に災害が起きたら金をやるということでは真にこの国家のことを考えておるかどうかは非常に疑問だと思うのでございます。それでこの安全の衞生立法なくしてこの災害法律考えられるところの意図につきまして我々は非常に疑問に思うのでございます。この意味におきまして我々は全くこの法案だけでは無意味であるということを言わざるを得ないのであります。  それから特に今日非現業の我々につきましては共済組合というものが非常に利用度が高いのであります。この利用度の高い共済組合は毎年十何億の赤字に苦しんでおります。而して各地方では診療拒否の状態が起つております。それから医師の査定につきましても平均五〇点以上は医師は査定されないので、單に頓服薬を以て診療はこと足れりというのが共済組合実態であります。これは健康保險によりましてもそうであります。このような形におきまして実際に共済組合にかかつておる、又かかりたくてもかかれないというのが今日の現状であります。このような問題を拔きにいたしまして單に労働基準法以下の基準を以て我々に報いんとするような態度というものは我々は了解に苦しむのであります。速かに当然この人事院がこの共済組合につきまして、我々職員の福利厚生に責任を負うべき人事院は、この共済組合の問題につきまして徹底的に赤字を究明して合理的な共済組合の運営を図るということが最も緊要なことだと思うのであります。我々公務員は家庭生活の円満なる運営がなされない限りは公務も円満に行かないことは火を見るより明らかであります。ここにおきましてこの法案作成以前に速かにこの共済組合の問題を解決すべきであると我々は考えます。それからこのような見地に立ちまして我々は厚生福利の、先ず共済組合の確立ということを要求いたします。それから健康擁護、能率増進のために安全、衛生法規の確立を又願わなければならんと思います。それから勿論本法案を作らなければならない、それから死亡退職の補償としての恩給法の問題、このような法律がやつぱり絶対的に確立されない限り意味がないとかように考えるものであります。  それで先ほど恩給法の問題につきましてちよつと種村さんのほうでも触れられましたが、飽くまでも災害補償というものは損害賠償でございます。恩給を受ける権利と損害賠償を受ける権利というものはおのずから別個であります。これを相殺するというような形は全く言語道断と言わざるを得ないと思うのであります。厚生年金その他の問題につきましてもこの損害賠償の問題と、その他当然受ける権利というものを相殺するというような意図は全くこまかしに過ぎないとかように考えておるのであります。  それから予算の問題につきましても実際今日組んでありますところの一億幾らの予算は果して妥当であるやは先ほど述べましたように災害度数率を調査されておらないという点におきまして、全くこれは机上プランに過ぎない問題だと思います。この点につきまして私どもはつきりしたところ資料を持つて来ております。即ち東京基準局昭和二十五年一月から本年の二月末日までに支払つた金額を申上げます。それは給付件数が三千九百八十一件、金額は二千五百四十万一千三十四円、労働者数は五万一千四百八十一人であります。労働者数と申しますのは加入しておるものでございます。このような数字から言いましても、今日の組まれましたところの予算というものは、現業の国鉄職を賄つてもまだ足りないわけでございます。かくのごとき予算を以てこの公務員全般の予算であるというようなことは絶対に言い得ないということでございます。それで全然人事院が科学的な上に立つてやるとか言つておりますけれども、この法案につきましては、全く非科学的と言わざるを得ないのでございます。かかる非科学的な基礎の上に立つたところ法律というものが、基準法を知らずして、基準法と均一であるというような理論の上に立つたところの、この現われましたところの具体的な問題というようなものを見まするときに、このような法律が実際に今日制定されますと、人事院責任はそれで済んだかも知れない。善良なる国民については、又公務員には災害補償といういい法律ができた、又公務員は保護されたという輿論の中に、実際には利益を受けない公務員が一層苦しまざるを得ないということでございます。それで先ほど国鉄諸君も言いましたように、この法律が飽くまでも基準法通り最低基準であつて、それ以上のものを要求することができるということになつているというのは別の問題ですが、これは全く我々の、又善良なる国民の目を蔽う以外の何ものでもないということは申上げなければならんと思います。それで非現業組合につきましては、この法律は全然意味はない。あつてもなくてもよろしい。同じであつたならば現在の労働基準法で準用されておりますれば、こういうものを今更作つて我々に示す必要はない。現在の労働基準法が準用されておれば結構だと言わざるを得ないと思います。却つて我々は迷惑いたします。かような観点に立ちまして、我々は我々非現業災害補償というものは飽くまでも疾病の問題、結核の問題、この対策を早急に立てて頂く、それから安全衞生立法をして頂いて強力にこの各官庁の安全衞生設備を監督して頂く、これは労働基準法でも、二千名の監督官が日本国中を歩き廻つて安全衞生設備の完備に日夜奮鬪しておるのであります。併しながらこのような数字が上つておる。国鉄職員を賄うような、それ以上の数字が東京都内に上つておる。このような現状であります。ただ人事院が厚生福利安全、衞生局に努めねばならんというような抽象的な文句でもつて、実際は公務員の労働環境が救われるかどうか、災害が撲滅せられるかどうかということを考えて頂きたい。例えば労働基準局の監督署は全国に三百三十六ありますが、基準法が施行されて三年間、監督署に一個のストーブの予算も配付されておらないような現状でございます。その他の官庁もそうでございます。そのようにして何ら暖房設備もないその他のものも何もないというのが今日の官庁現状でございます。勿論中央官庁というものは一応目に止まりますのでそういう設備もされておりますけれども、恐らく地方官庁、出先機関へ行つたならば、暖房設備すらないというのが現状でございます。かような中に公務員は日夜奮鬪しておるのでございます。こういう現状を無視してこのような法律を作成されるということは非常に我々にとつても慙愧に堪えないのでございます。どうか賢明なる各委員におかれましても、ここにこの法律を破棄して頂きまして、新らしい公務員の更熊に即した科学的資料に基いたところ資料の上の基礎に立つて我々公務員のための法律を是非とも作つて頂きたいということを特に要望して話を終りたいと思います。なお質問があれば後で受けたいと思います。
  8. 千葉信

    理事千葉信君) それでは次に林野庁労務担当、農林事務官深谷清君にお願いいたします。
  9. 深谷清

    参考人(深谷清君) 林野庁の労務厚生課に勤務しております深谷でございます。  林野庁は農林省の外局でございまして、一般林政の外に大体八百万町歩の国有林の管理経営をいたしております。そのために労務者といたしまして、季節によつて異なりますが、大体十五万から二十万の間を前後いたす数の労務者とそれから二万二千の職員、これが事業に従事いたしておるわけでございます。この災害の発生件数も、他の官庁に比較いたしまして非常に多いのでございまして、お手許にございます人事院資料によりましても、二十四年度に約八十件、それからその支給総額が七千六百万に達しておるわけであります。二十五年度におきましては、まだ決算がはつきり出ておりませんが、一億を突破するような情勢にあるわけであります。で、何故そのように非常にこの発生件数が多いかと申しますと、御承知のようにこの林業は原始産業でございまして、機械化にもおのずから限度がございますので、殆んど山で木を伐り倒しまして、それを適当な大きさに輪切りにいたしまして冬は雪を利用するとか、夏はその他の方法によりましてこれを一定の場所に搬出いたしまして、これを又限られた非常に狭いいろんな場所で、これを非常に簡單な軽便鉄道に積込みましてこれを駅の近くまで持つて参りまして売払う、こういう過程をふんでおりますので、機械化にもおのずから限度がございまして、従つて殆んど人力に待つという状態でありますので、季節の変動とか、例えば急に雨が降つて来るとか或いは雪が降つたとかいうたんびにその発生度数が非常に殖えて来るわけであります。そういう関係から非常に発生件数が多くなる、今後も、恐らくこの点につきましては十分の努力をいたしておるのでありまするが、恐らくこの程度の数字は避けられないのじやないか、恐らく恒久的な発生の件数ではないかと考えられる次第であります。而もなお発生いたしますると、これも又すでに皆様御承知のように労務者も、それから職員も全く同様の基準によりまして災害補償ということを実施いたしておりますので、その間基準法その他の関係からいろいろな具体的な問題も起き勝ちでありますが、今回新しく法律制定されることになりましてその点につきましては非常に筋道が一貫いたしますので、我々実際上の運用といたしましては非常に明確化して来るのじやないかと、この点を林野庁といたしましては持つておるわけであります。  併しながら根本はこの法律の運用上我々といたしまして一番お願いいたさなくてはならないことはどういうことかと申しますと、簡單に申しますれば予算の裏付けでございます。これが最も大きな問題でございまして、例えば二十二條の福祉施設にいたしましてもこれが現在のような予算では誠にどうにもならない、只今林野庁におきまする結核の患者の收容ベツト数というものはその三分の一にも足らないような状態でございまして、その他この事業の性質が非常にこの山の中で僻遠の地でいたしておりますので医療施設につきましても相当の拡充をしなくちやならない。こういう問題がございますのでそういう点からも予算の裏付けということが最も大きな問題ではないかと、こういうふうに林野庁といたしては考えておる次第であります。  それからもう一つの点はこれは国警の種村さんから申上げましたように全くこれと同様でございまして附則四項のこの恩給との関係でございます。この点につきましては繰返し申上げませんが、新らしい今後の問題といたしまして林野庁といたしましても十分御考慮を願うように一つお願いいたしたい。こう思う次第でございます。  で只今申上げましたように林野庁といたしましては若しこの法案実施いたすといたしますれば、予算の点とそれからなおこの実務の解釈上については一応理論が一貫するという建前から、できますれば一刻も早く実施をいたして頂きたい。但し実施の上におきましていろいろと又この具体的な問題新らしい問題が発生すると思うのでありますが、そのときには一つ率直に逐次改正実施して頂くように御考慮願いたい、こういうふうに考えておる次第であります。大体非常に簡單でございますが、一応この程度のことを申上げまして発言を終りたいと思います。
  10. 千葉信

    理事千葉信君) 以上で大体午前中に御発言を願う予定のかたがたが終つたわけですが、これに対して質疑のございますかたは順次御発言を願います。
  11. 西孝雄

    参考人西孝雄君) 更に御質問を頂いて、それに対して私たち意見をお答えしますが、そのほかにまだ具体的に意見がある者については一つほかの公述人がまだ来られていないのだし、時間もあることだし、或る程度の発言もお認め願いたい、こういうふうにお願いします。
  12. 千葉信

    理事千葉信君) 差支えございませんでしようね。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 千葉信

    理事千葉信君) どうぞ。
  14. 城千尋

    参考人城千尋君) もう一つ細かいことになりますけれども、十三條の傷害補償の問題です。この問題について一つ、これは打切り補償になつているわけでございまして、一つ例を挙げて説明すれば納得行くのじやないかと思うのですが、それは甲という人は年齢五十歳で以て子供が一応成人している。それで乙はまあ結婚して一年か二年で以て乳呑兒が一人いる、こういう者がございまして、これが別表の第一の第一級の第四号「胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」というような号に該当したといたしますと、この別表第一の第一級の第四号、年齢が五十歳で子供が一応大きくなつているものと、それからこれは二十六、七歳で以て乳呑兒が生まれたばかりのが一人いる、こういうような者が、このような身体障害を受けたような場合、これは打切り補償ですから千三百四十円もらうわけです。併しながら五十歳になつた成年の人は、子供も働くようになるしまあまあということになると思います。併しながら乳呑兒を抱えて、若い奥さんを抱えて、このように毎日奥さんに介抱してもらうというような人は実際悲劇この上ないと思います。果して生活ができるか、これで以て国家が本当に損害賠償できるかどうかということは疑問だと思います。それで我々は先ずこのような給付の問題につきましてもすべてこのような不合理があるわけです。この点について当然我々といたしましては提案の一つとして年齢の若年に向つて逓増制にする、若い者は永く生きるのですから、苦労もするのですから、そのような形で給付が行われなければ本当の給付にならないから、このような点を十分お考えにならなければ実際にこの法律基準法の模範になるとか、又はそのようなことも言い得ないと思います。  それから根本的な給付ですが、要するにこれは打切り補償でございますが、これはそもそもおかしいのでありまして、やはり永い万本当は公務のために怪我をしたのですから見てやるべきが当然であつて、一時金で追払つたりするということはどうしても我々には考えられない、人道上許されないということを特にお考え願わなければならんと思います。それでそのために平均賃金にいたしましても、基本金額の計算にいたしましても、やはりベース・アツプすればベース・アツプしただけの平均賃金の基礎に立つてやるような形でやらなければならない。例えば入つたばかりの労働者は三カ月の平均賃金を当然にやるようになつておりますけれども、類例がない場合は他の労働者が幾らぐらいもらつているかということを基礎としてその人間には幾らやるということになつておる。ですからそのような観点からいたしまして当然べース・アツプいたした場合にはその同僚と同程度の金額を基礎としたところの平均賃金を以て給付をするというようなことを考えて頂かなければならないということです。  それからこの監督機関も、やはり監督署は三百三十六ありますが、実際の保險給付につきましてはなかなか困難でございます。これを拡充して頂かなければ、今日のような人事院の手で以て單に地方官庁に委しておつたのでは、実際に監督はできないということになります。  そういうことと、それから予防の問題は先ほど言いましたが、これも本当に考えて頂かなければならないということですね、そのような問題。それから要するに審査の問題ですね、労働者は我々監督署に来るわけです。指が落ちたりいろいろ怪我をしたり、これを何級である、何級であると認めるわけです。この認め方につきましても、やはり公正な機関を以てやらなければ、いろいろな問題が起きて来ることがあります。  それからこの支払です。現在労災法におきましては、一週間以内に支払わなければならんというようなことが謳われておりますけれども、実際問題といたしましては三カ月も四カ月も、長ければ半年も経つて漸く支払われるというのが現状でございます。このような形に又公務員にすぐ金が支払われなければ実際意味をなさないわけであります。ですからこのためにも当然何らかの形でプールにしたところの金を、各所属官庁で、その官庁が持つているという形で、一応立替えて出してやるというような機関も当然考えられなければならないということが言われます。  それからやはりこの管理者につきましても当然怪我をしたらすぐ報告する、それですぐ審査をする、すぐ給付をするというような強行規定を出さない限り、要するに罰則ですね、その線ではつきりしておかない限り、やはり管理者の情実因縁等によつて延びることもありますし、やはり本当に保護されないということも考えられます。こういう点も十分にお考えになつてつて頂きたいと考えます。  その他細かい点は、実際に我々は常に労災法を扱つておるのでありまして、細かい点につきましてはたくさんあると思いますが、質問に応じたいと思います。  それから労災補償の細則は五百條近く出ております。基準法につきましても、單に総論的なものでもつて、ほかの法律が全部改正になつたように吸收されてしまつた、このようなことが載つておりますけれども、このようなことは、一旦通過してしまえばほかの法律との関係は絶対つかない。やはりはつきりしたところの施行規則が出ない限り、そういうことは絶対そぐわないと思います。こういうような附則の問題は非常に大きな問題だと思います。今委員会におきまして簡單に通してしまつたのではあとに問題が出て参ります。それで、十分このような問題に関しましても御討議を願いたいと思います。
  15. 紅露みつ

    ○紅露みつ君 参考人の城さんに伺いたいのですが、これまでの労災法、今度改正になるのですが、それとの共済組合とのことを強調されましたが、これとの関係についてもう少し伺いたいのですが、現在どういうふうな状態に共済組合のほうは運営されておりましようか、これについて。
  16. 城千尋

    参考人城千尋君) 共済組合は我々公務員の、要するに私の病気ですね、それから家族の病気、こういうものを共済組合でやつているわけです。ところが、基準法が我々の公務災害には準用されておりますけれども手続が面倒であり金がなかなか出ないというような形で、実際の公務災害疾病も、従つて共済組合にかかつておるような現状でございます。この共済組合の根本的な問題でございますが、共済組合は大蔵省で管理しておりまして、それで各省は單独の予算を使つておるわけでございます。それで我々は千分の六十六、八十とか九十とか、各省によつて掛金が違うわけです。それで我々は掛金をみんなで出し合つて、それで我々は診療を受けているわけです。ところが我々の出す金額と同等の額を政府が出すのですけれども、実際にその予算というものは、我々に病人が非常に出ておる、そのために予算が足りなくなつて赤字になれば、我々が医者に行つても、保險証を持つてつても、実は金が来ないので受付けられないというのが実際の現状なんです。それから予算があつても金が来ても共済組合の保險関係は五〇%以上、大体医者の平均で五〇%以上オーバーするとみんな大蔵省の査定で切られてしまう。それから医者の税金の單価というものは、何人その医者に保險患者がかかつておるかという資料に基いてちやんとカードが出ているのですからそれに基いて医者が税務署から税金をかけられる。その関係で五〇%以内でもつて、当然注射を打たなければならない注射をやめて、注射を打つとすぐに六十点七十点になるのですから、ですから五十点以内で安い頓服でもつてすますような現状なんです。我々は実際現在共済組合によつて病気は救われない現状なんです。ですからこの問題はやはり当然公務員はベースですべて一本になつているわけです。にもかかわらず共済組合というのは各省バラバラになつていて、参議院は参議院だけの共済組合があり、労働省は労働省の共済組合、厚生省は厚生省の共済組合がある。ですから保險の原則的な理論の上に立つて言えば、参議院なら参議院で小さい団体でもつてお互い金を出し合つても始まらないので、公務員全体をプールされてとにかく百万人近い公務員が同じ率の金を出し合つてお互いに診療を受けるということは、保險の理論から当然なんです。そういうことをしないで個々別々になされているところに欠陷がある、こういう福利厚生施設の欠陷があるわけです。そのような形で現在共済組合は赤字になつているわけです。そのために実際に我々は診療を受けられない。併しながら公務災害についても基準法が適用されておつて、結局手続が面倒で金が出ないという形からかからざるを得ないということで、それで今我々共済組合の問題をやつておるわけなので、この共済組合の問題は、これは基本的な我々の生活の基礎になつている問題ですから、その問題を今後解決しよう。又我々非現業の者にとつて余り価値のないこういう法律を作つて共済組合の問題を生殺しにしている。こんな災害補償のはんぱな法律を作つても、こんなものがなくても基準法で適用されているから必要のないものです。これだけの予算があれば、共済組合のほうをもつと何とか考えて頂きたい。  それから共済組合の問題は当然人事院でやるべきだと考えている。そこでこの間聞いたら、大蔵省の主管である、大蔵省が予算関係を扱つている。このような役所関係の繩張り争いがある。こういうような点でうまく行かないわけです。やはり共済組合というものを大蔵省のほうから人事院のほうに移す、当然やらなければならない人事院のほうに移して、総合的にこのような法律考えて頂かなければ意味がないということを私ども申上げているわけであります
  17. 紅露みつ

    ○紅露みつ君 そのバラバラな状態を大同団結するというような運動は何らなされなかつたのですか。
  18. 城千尋

    参考人城千尋君) いや組合としてはやりました。
  19. 西孝雄

    参考人西孝雄君) 具体的の内容の前に、今共済組合の点について述べられましたけれども、私はもうちよつと違つた意味共済組合のありかたを申上げたいと思います。  それは先ほどちよつと申上げましたが、共済組合は今まで共済組合恩給制度二つつたわけです。そうしてこの恩給法については任官している者の公務による災害補償されている。そうして共済については公務によるものと私傷のものと二つともやられておつた共済組合では公務と私傷と二つやられた。ところがこれが二十三年の七月に国家公務員共済組合法制定されて、各省で持つてつた共済組合が統合された。統合されたときに共済組合にあつた性格を二つに分けたわけです。それで共済組合というものは私傷に関する問題だけして公務は別にした。そのときに同時に公務災害補償法というものを出す予定で大蔵省が立案したわけです。共済組合二つに分けて、大蔵省が私傷であり、そうして公傷については災害補償法というものを別に出そう、こういう二つ法案が出たわけでありますが、その時に共済組合法については国会がこれを通した。ところ公務災害補償法についてはこれは出て来なかつた、ということは労働省等にもいろいろ意見があつてこれが握りつぶされた、こういう状態であつた。そのために結局共済組合というものは私傷の問題だけであつて公務のものは死んでしまつた、そうして基準法によつてなされておつた、こういう現状が今日まで続いているわけであります。そういう関係共済組合で受けておつたところの雇用人の公務災害というものは非常に低下されて基準法によつてやられている、こういうために非常に問題が起つたわけなのです。ところが官吏については恩給法でなされた、こういうわけでやられたわけでありますが、そういう関係国鉄において災害補償法協約を結んだという理由は、それらの既得権を戻せ、基準法ができたことによつて基準法精神からい言つても、基準法一つ基準であつてこれよりも低下することがあつてはいかん、こういう精神からこれができたことによつても、この給付が低下されたということはいけない、従つて前の既得権を戻しなさい、こういう交渉を続けて今国鉄災害補償法を殆んど元に戻した形を協約で結んだ、こういうことになつておるのであります。それらの内容は先ほど障害補償について例えば一級が千三百四十日分が千四百四十日分である、こういうふうに申上げたわけで、これらの大体の内容を申上げて見ますと、先ず療養補償というものは社会保障制度審議会から答申された内容によりましても、やはりこれは完全に治るという意味が含まれておるわけです。従つて国鉄においても完全に治癒するまでこれは療養を補償する、こういう原則に立つているわけです。これは社会保障制度審議会勧告もその通り。ところがこれはただ補償すると書いて、そうしてその中で休業補償ところで三年たつた場合にはこれは自然的にこれを打切つてしまう、こういうことを書いてある。そうするとこれは療養補償というものは三年間の補償であると言うことができるわけです。三年以上は打切つてしまうのだ。ところがこの内容というものは社会保障制度審議会趣旨にも反している、過去における既得権を無視している。こういう関係国鉄においてはやはり治癒するまで療養させる、こういうふうに私どもは獲得しております。更にこの打切補償の問題ですが、打切補償については一応場合によつてはやめるときに金をまとまつて欲しいというふうな人も場合によつてはないでもない。こういう関係で現在の基準法では千二百日分でありますけれども、私たちはこれを千三百日分として、その本人の意向を聞いて希望した場合には打切ることができる、一方的に打切つてはいかんというふうな内容で打切補償を見てくれとこういうわけであります。この点も非常に自主性があるのであります。更にこの休業補償給與の算定の基礎でありますが、これについては基準法と同じように平均賃金の百分の六十、これは当然出勤して公務のためにやられたのであるから当然出勤とみなされるものである、従つてこれはやはり勤めたものとやはり同等にみなすべきだ、そのためにはやはり平均賃金の一〇〇%を支給されることが当然であります。従つてこれは私どものほうも一〇〇%ということになつております。障害補償については先ほど申上げました通り、その次には「休業補償及び障害補償の例外」というこの十四條は基準法の七十八條をそのまま持つて来ているわけでありますけれども、これらの場合にも重大な過失があつた、こういう認定でありますけれども、少くとも職員公務上において自分の体を怪我した、或いは死んだ、こういうために自分の故意にやつたとかいうことなら別問題です。併しながら過失というものはもう止むを得なくそういうふうになつたのであるから、故意による負傷、疾病、自分の体を打つて故意に怪我したり、或いは死ぬというような人はない。そうした意味からこれはやはり過失ということで止むを得なかつた、これに対して而も補償を行わない場合がある、全然零というような意味にさえ解釈される。こういうことであつては、私傷においては、当然故意に自殺した場合、或いは故意に線路に飛び込んで怪我した、こうした問題についても、現在のやはり共済組合補償しております、これは一般の私傷のところで。こうした内容を更に低下して全然零だ、こういうことは全くあり得ないということであります。これ又やはり或る程度の限度というものは、正当な当局の責任による施設の不備だとか、或いは安全衞生の不備であるとか、こうした点において怪我した場合には当然のことでありますけれども、それらと程度は違うから少しくらいの調整はしてもいいけれども一つの限度というものをはつきり基準を作つておかなくちやならんという点が非常に欠陷がある、こういうふうに思われます。  更に十五條の千日分でありますけれども、これは單に基準法の千日分を取つて来たのであつて、これはやはり私のほうも六年間という意味で、六、六、三十六カ月の千八十日分を獲得しております。これらもそういうように修正されなければならないと思います。  次に葬祭補償でありますけれども、葬祭補償というのは六十日分、この六十日分という趣旨は、これは單に労働基準法ができるときに、何らの根拠もなくただ二カ月くらいでいいであろう、こういうような漠然たる意味で葬祭料を二カ月と見た、こういうことであります。そのためにこれが依然として一つの慣例かできて、もう基準法に二カ月が示されておるのだからどれでも二カ月、こういう点については、実際に公務上の死亡であるから、葬祭についてもやはりそれらの企業体責任を持つて葬式をやらなくちやならん。こうした意味におきまして、実際に今の葬式料はどれだけ要るか。或る程度のそれらのものは公務によつて死んだためにその葬式料を自分が負担しなくちやならない。二カ月では当然足りない。現在平均して八千円べースと仮定いたしまして、実際は八千円もらつていませんが仮定いたしまして、一万六千円で実際に皆大勢から殉職されたと言われて、皆から参つてもらつて、これが一万六千円くらいで実際葬式が済ませるかどうか。こういう点について、公務で死んだために葬式料を自分で出さなくちやならない、そうすると結局千日分もらつたところの殉職の遺族補償は半分くらい食われてしまう。実際に葬式を済ましたあとでもらうものは、半分くらいにしかならない、こういう実情であります。これは公務員ばかりに限るものではありませんけれども、これは民間企業の労災保險基準によりましても同様であります。こういう点も或る程度のことは考えなくちやならん、こういうふうに思われます。  これらが主だつたところであつて、次に是非とも諸先生がたに、政府当局に対して御質問を願いたいと思う点は、先ず恩給法年金という点であります。つまり共済組合二つに切り離したと同様に、現在の恩給法二つに切り離したという形である。そういう場合に恩給法年金でやりなさいと勧告を受けておる。それが公務員においては、現在の年金制度を無視して、一時金にした、こういう点の矛盾をなぜ政府が、こういう勧告を受けておるにかかわらず、あえてこういうことをやつたかという問題であります。  次には、先ほど触れましたが、三年間も、公務員法の九十三條に基いてなされなければならん問題を、なぜ今日までこれがそのまま延び延びになつてつたか、こういう点です。  次に三点といたしましては、この社会保障制度審議会業務災害に関する保險というところで、第一條にはやはり公務員についても同じように包含して行きたいということを書いております。具体的な給付内容について四條に謳つておりますけれども傷病年金つまり障害についてもやはり年金制度はつきり報酬の八カ月から四カ月の障害年金を出せ、こういうふうに明確に規定しております。或いは障害の遺族年金にいたしましても、五カ月分を遺族年金として支給する、こういうふうにはつきり年金が具体的に示されておるわけでありますが、こういう点、恐らく社会保障制度審議会設置法に基いて、これはやはり社会保險に対する企画、立法については、当然これに諮問をしなくちやならないことになつておりますので、これにかけられたことと思いますけれども、こうした点について、どうして矛盾がそのままなされておるか、こういう点強く御指摘を願いたいと思います。  要するにこの補償制度というものは、どこまでも年金制度であるべきだ、これは最近アメリカにおいても、クライスラー或いはゼネラル・モータース等においても、退職金年金制度として獲得された。こういうものはやはり一時的な補償というものはあり得ない。やはりこれは恒久的に補償されなくちやならない。つまり怪我をせずにやめた者もやはり年金制度でやるというのが、勧告内容であります。そうした場合に怪我をして不具になつたり、或いは死んだ遺族が一時的な補償でいいということは、絶対にあり得ないということであります。こうした点についても是非とも年金制度は必要である、こういう点もとくと御主張を願つて是非とも御修正を願いたい。これはもう衆議院に行つて、何といつても私たちは衆議院も参議院も誠に信頼いたしておりますが、その点は参議院先議になつたことを心強く思つておりますので、是非とも参議院において修正をして頂く、そうして衆議院に廻して頂く、そうしてこの内容を是非とも修正して頂きたい。先ほど林野庁御当局の意見として、これが早く制定されるということがありましたが、早く制定されてもらつてもちつとも効果はない、制度はできても実質的の給付内容は何にも変らない、従つてこの内容だけは是非とも御修正を願つて、そうしてどうか向うに廻して頂かないと、全く公務員補償制度が低下されることになると思いますので、是非ともこの点を強くお願いしたいと思います。
  20. 千葉信

    理事千葉信君) 御質問なければ私からちよつと御質問申上げます。最初西さんにお尋ねしたい点は、先ほど二十四條、二十五條に関連する審査機関の問題について御意見がありましたが、この法案では一応人事院がその審査をすることになつておりますが、何かあなたのほうで特に審査機関としてこういう構想で考えてほしい、その他御希望があるならば、この際承わつておきたいと思います。
  21. 西孝雄

    参考人西孝雄君) これは現在の二十四條によりますと、人事院が審査される。各省においていろいろなされた問題について不満があれば、人事院にそれを異議申請をして人事院決定する。ただ人事院事務当局が決定するものであつてはいかん。やはりこうしたものはどこまでも、現在の労災保險の審査会にいたしましても、やはり或いは労働者、資本家、或いは公益代表、こうした者が出るのが通常であります。或いは社会保障制度審議会委員にしても、皆これらの者でできておる。こうした審査する一つの機関というものはどこまでも労働者代表、その当局代表、更に公益代表、或いは学識経験者、こうした少くとも構成が必要である。これが先に大蔵省でも出されましたし、人事院といたしましても、前法案のときにはやはり国家公務員災害補償審査会、こういうものが一応立案されかかつてつた。こうした意味合において、今度は人事院が一方的に事務当局で決定して、どうして労使間の民主的な意見によつて決定しつないか。こうした点が甚だ不満である。そうした点について是非とも、人事院の中で結構ですから、人事院の中にやりは民主的運営機関として、労使、公益代表、学識経験者、これらの構政委員会を是非設置願いたい、こういうふうに思うのであります。
  22. 千葉信

    理事千葉信君) それから種村さんにお伺いしますが、おなたのほうの場合は、非常に補償法に該当する事項がこれからも今までも随分多いと思うのですが、あなたのほうの場合に、特に実例として当然これは災害補償法に適用されるような問題について、何かの事情から予算上、或いは又認定その他の事情から共済の負担になつているような事実はございませんか。
  23. 種村一男

    参考人種村一男君) 幸いに私どもところでは予算がないために業務災害補償として取扱えなかつたという実例は実は余りないように考えております。ただ如何にも現在でも手続がうるさいのです。もう一つは手取り早く行かないのです。僅かばかりの業務災害を受けましても三月も四月も六カ月もかかると、もうしようがないから共済組合でやつてもらえということで、共済組合に持ちこまれるという例が多いのです。而も今後業務災害であるかどうかということについて非常にやかましいことを言われ出しますと、どうしても元来まるまる国でみてもらわなければならんものが、共済組合でお互い半分々々持ちのところへ持込れるという虞れは十分に考えられるのです。これは遅くなるという責任は、部内にもあるかも知れませんが、とにかくそういう結果になることは事実です。
  24. 千葉信

    理事千葉信君) それから深谷さんにお尋ねしますが、今も西さんがちよつと触れましたようですが、審査機関等の問題について、当初は人事院としてもいろいろ別な角度からの構想があつたようですが、今度はこの法案を提出する場合には、御承知のような二十四條、二十五條という形で以て国会に提出されておりますが、こういう問題に限らずに、大体において災害補償法の立案について、林野庁当局もこの問題をあなたがたが担当しておられるのですが、事前に人事院その他からこの法律の二、三について意見を聴取されたという事実は全然なかつたか、それともあつたか、そういう点についてお尋ねいたします。
  25. 深谷清

    参考人(深谷清君) 実はその点につきましては、私といたしましては、資料の作製その他はいたしましたが、角張つて意見の開陳の要求がありましたかどうか、実は只今記憶いたしておりませんので、ちよつとお答えしにくいのでありますが、これは又後日よろしうございましたら御連絡申したいと思います。  なお審査会の民主的な考えかたという点につきましては、我々としましても、でき得べくんばそういうような考えかたでして頂きたい希望はございますが、当面先ほどちよつと触れましたように、先ほど私たちのほうの営林事業といたしましては、二十二條に謳つてありますところのいろんな福神施設でございます。これが最も大きな問題でございまして先ほどちよつと申上げましたように、非常に山の中に事業所を作つて事業をいたしておりますので、殆んど民間の医者もいない、無医村の本当に山の中のことでございますから、施設主で担ぎこむまでには非常に時間を要すということで、非常に痛感いたしております。私どもといたしましては、先ず当面一番必要なことは、福祉施設を拡充いたしましてもらいたい。これは当面の本当に大きな問題でございます。いろいろの細かい点につきましても、組合側からいろいろおつしやつて頂きましたように、いろんな意見も同感する点もございますが、何よりもかによりも福祉施設の予算を十分頂戴するためには、こういうような角張つた法律が必要じやないか、これを実は今まで永い間待ちもうけておつたのであります。それは幸いに今度は国会に上程されるということになりましたので、とにかくこの法律にかじりつきまして、我々として現実的に福祉その他の面から解決して行きたい、そのためにはどうしでもこれにかじりついて予算を十分頂戴したい、こういうふうに考えておる次第であります。
  26. 千葉信

    理事千葉信君) それでは大体……。
  27. 種村一男

    参考人種村一男君) ちよつと一言御参考に申上げたいと思うのですが、第十一條規定はこの療養の範囲というものが規定されてあるわけなんです。一号から六号まで療養の範囲がきめてありまして、これで公務傷病を受ければ完全に療養ができるという感じを一応持つのであります。ところが実はよく見ますと、これはいずれも直接の費用ばかりでございまして、我々が傷病を受けました場合には、これだけの項目では決して足りないということはこれはもうどなたも御了解の行くところであろうと思います。そこへ参りますと、非常に古い勅令でございますが明治三十四年に作られました、この参考資料の六十六頁にあるのでございますが、巡査看守療治料、給助料及び弔祭料給與令というものの第二條におきましては、この治療が二十日以上に亘つてそうして引続き在職し治療を要せざるに区至つたときには一カ月分、それから職に堪えず退職したものには三カ月分というものを給助料として支給しています。これはどういうものかといいますと、療養中の諸雑費及び余後の保養費という意味でこういう適度がおるのであります。これは誠によく考えられた制度だと思つております。合日そういうゆとりのある温かみのあるものを全部切られまして、形式的には一応これで十分だという感じを受けますが、卵も果物も買つてやる金は決してこの十一條には入つていないわけでありまして、そういう点なども一つ考えて頂きたいと私ども考えております。
  28. 城千尋

    参考人城千尋君) 最後に、予算関係の点で林野庁のかたが二十二條のことを言われ、又、国警のかたがこの十一條ですか、この点を言われたんですが、先ほど予算関係で私は言いましたのに、とにかく東京都内で以て労働者が五万一千四百八十一人保險に加入しておるものがあつて、これもその單なる傷害を受けたといつて給付だけは二千五百四十万一千三十四円、その今度の組まれますところの予算を見ても絶対にこの福利施設の予算とか、それからこの十一條の予算まで入らないと思うんです。国鉄職員すらもこの予算が足りなくて、傷害だけですよ、怪我しただけの予算も足りなくてなお且つこの福利施設、療養の予算まで絶対廻りつこないということです。それでこのような予算も林野庁のかたもその他のかたも眩惑されることはないと思うんです。その点やはりはつきりした科学的な資料に立つてこの予算が妥当であるか、福利施設、医薬は完備されるか、予算がなければ空文なんですから、そういう科学的な数字の上に立つて実際そこまで林野庁のかたがおつしやるような福利施設まで絶対に行かないということ、国警のかたが言われたように十一條の問題、看護料の問題、診療、医薬料、そこまで絶対に行かない、傷害だけでもいかないということをはつきりお認め願いたいと思いますが、その点その予算を組まれましたところの根拠というものを各先生方におかれましては、政府にそれを衝いて頂きたいと思います。そうしない限りこれは空文でございますから、折角お願いしたいと思います。
  29. 千葉信

    理事千葉信君) では大体以上を以て休憩に入りたいと思います。    午後零時二十八分休憩    ―――――・―――――    午後一時五十五分開会
  30. 木下源吾

    委員長(木下源吾君) それでは午前に引続いて開会いたします。参考人の御意見を承わりたいと思いますが、先ず山内さん一つお願いします。
  31. 山内公猷

    参考人(山内公猷君) 私がこれから申上げようといたしますことは、或いは午前中の参考人かたがたと重複することもあると思いますが、要点を選びまして申上げたいと思います。  今回の国家公務員災害補償法が今議会に提案されまして、御審議になるわけでありますが、我々といたしましては非常に結構なことであると考えております。というよりはすでに遅きに失しておるのではないかという気持を持つております。と申しますのはこの問題につきましては、先ず昭和二十三年六月に国家公務員共済組合法制定されたときに遡つて我々は考えなければならないのでありまして、当時国有鉄道その他の現業官庁においては、それぞれの勅令に基きまして共済組合を運営していたわけであります。この法律の施行によりまして、そういう共済組合の個別の運営というものは、この一本の法律において統一されることになつたわけであります。そこでこの際共済組合規則の中の公務災害補償の諸規定が削除されまして、当時我々といたしましては、早急にそういう国家災害補償というものが制定されるという見込でそういう措置がとられたものであると了解しておつたわけでありますが、その後のびのびになつて今日に至つておるという状態であります。そうして従前の共済組合公務災害補償は、労働基準法規定するところとは違つておりまして、身体障害の程度によつて年金を支給することになつておりました。この年金にするか、一時金にするかということは、非常に問題の多い点でありまして、議論がいろいろあるわけでありますが、我々の見るところでは、若い人間が負傷した場合に長期に亘つて死活の安定を得させるということが、そういう公務災害を受けた人には国の責任として最もよろしいのではないかということを考えますと、年金制というものが一時金制に比較いたしまして遥かによいということが言えると思います。又一時金を主張するかたがたは、結局経済の変動しているときに、そういう年金制度ではその該当者のかたは全うしないというような考えかたもございますが、現在の恩給制度におきましても、共済の長期給付におきましても、その波動によりましてやはりスライトをいたしておりますから、その点もそう心配がないのではないかということを思つておるわけであります。それで、それでは一体これはどうしたらいいかという問題になりまして、皆様がたの前においてここで立法論を展開することは甚だ恐縮でございますが、それをお許しを願いますと、我々の見るところでは恩給法も早晩改正の気運になつております。現在我々官庁におきまして、昔の官吏雇用人、現在では事務員、雇用人という名称で呼んでありますが、その差がどこにあるのかと申しますと、一にかかつて恩給法の適用を受けるかどうかという点にあるわけであります。公務員法の下におきましては、こういう身分的な差が当然なくなるべきであるということを考えると、恩給法改正された場合には現在雇用人であるかた恩給の適用者になるということになります。その結果はどうなるか、現在まあ官吏のかたにつきましては、労働基準法のどの一時金と、この六カ月据置いた以後の年金と両方もらつておるわけであります。雇用人についてのみそれができないということになりまして、若しもこの恩給においても年金個が考慮されるのだということになると、恩給が支給されたあとの雇用人である人と、二十三年の六月以降恩給法が施行されるまでに公務災害を受けた人との間に非常にギヤツプができはしないか。一体このギヤツプをどういうふうに埋めるのかという問題になるわけでありますが、私は現在の制度をそのまま考えますと、千二百日の打切り補償を受けた人は六年間ストツプして、六年すれば年金が付くということでありますから、恩給法のできるときに、その二十三年の六月以降のかたにもそれが適用になるというふうに立法措置を講じて頂ければ、その間のギヤツプがなくなるのではないか。それで願わくば、この本法が成立するときに附帯決議でもして頂いて、恩給法のときにはそういう人間も将来年金がもらえるようになるのだということを明らかにしてもらえば、現在そういう立場にある人も非常に安心感を得るのではないかということを考えまして、甚だ僣越でありますが、若しもこの法案がそのまま成立するときには是非恩給法においてその点を解決する予備的な手段を講じて置いて頂きたいということを衷心よりお願いいたしたいと思います。  次に問題になりますのは、これも皆様がたから申されたことでありますが、労働基準法最低保障であるというのに対して、今回の人事院の提案されました給付内容はそれが定額支給になるということに大きな問題が含んでおります。国家というものは最もよき使用者であるという意味から言いましても、又国の行うことを一般民間がそれになろうという意味からをきましても、この最低を定額にするということは單に公務員だけのものでなくて、一般民間にも與える影響は非常に強いものがあるのではないかということを感ずるわけであります。と申しまするのは先ほど国鉄関係かたがたからも、国鉄においては二十五年十月一日の協約によつて現在の労働基準法以上の給付を受けるようになつておると申されております。又我々浅い知識でありますが、各会社におきましても見舞金というような制度によりまして、労働基準法に定める内容以上のものを出しておるところが相当あるように考えております。それを国が公けの公務のために傷病を受けた人に対して、最低でいいんだという建て方は如何にも我々は腑に落ちないところでありまして、非常に重複すると思いますが、この点も市を大きくして力説して見たい点であります。  もう一つ我々が考えなければならないことは、公務員の俸給がどうなつておるかという問題であります。この法案によりましても、すべてこういうものはそうですが、俸給というものがそういう打切補償にしろその他の補償にしろ、算出する基礎になりますその公務員の俸給というものが、建前としては民間の賃金と均衡をとるということになつておるにかかわらず、どうしても民間の賃金よりも低いところに常に置かれておることを余儀なくされておるということは、これも又万人の認むるところであります。その意味から申しましても公務員一般の賃金よりも低いところに置き、而も労働基準法で言うところ最低のもので満足しなければならないものかどうか、ここに問題が大事く取上げられるのではないかと我々考えておりましてこの点御一考を煩わしたいと思うわけであります。次にこれは専門技術的な問題になるわけでありますが、法体系の問題が一つありまして、この法律を読んで見ますと一般職の職員に妥当するだけでありまして、特別職の職員公共企業体職員というようなものには全然触れておりません。結局この解釈から言いますと、そういうかたがたには適用がないと解釈されるわけでありますが、公務性質上そういう傷害を受けたときに特別職をどうして排除する必要があるのか私にはわからないのでありましてそれでは特別職を排除した結果はどうなるかと申しますと、昭和二十二年法律第百六十七号が従来通り適用せられるようになると思うのであります。そうするとその結果は又労働基準法にもとつてそういうかたがた補償をしなければならないということになりますと、非常に我々の公務員関係の法規が複雑になり、何ら利益するところはないのではないか。  もう一つおかしいのは、この法律を読みますと、従来と違いまして課税の免除ということがはつきりしております。  もう一つ苦情処理というような問題も取上げておりますが、そういう点は一体どう解決されるつもりか、或いは單行法を出される必要があろうかとも思いますが、非常に立法技術としてはおかしいのではないかと考えております。又法律第百六十七号が生きます関係上、結局特別職の人間については権利として見られるんじやないか。あれで見ております雇用人の扶助令のような関係で、恩恵的な考え方、そういうものがこの法律には出ておるのでありますが、それが除かれるということはどうも法観念、或いは法体系として、当を得ない措置じやなかろうか、この点一つ審議を頂く必要があろうかと思つております。  私特に共済組合の代表といたしまして、その関係で問題がないかという中心的なお話でありますが、御存じのように共済組合というものは保險的な性質を持つておるものでありまして、公務或いは公けであるとか、私であるとかということを問わず給付をやつております。その意味で本法との関係においては両々ダブる面が共済組合にでて来ておる。そのときに公傷病の場合にこの法律によるんだということで明らかになつております。ですから法そのものとしては深い関連性はないと思いまして、今後の各庁の仕事は共済組合でやるのが便宜であるということで、こちらに今までよつておるのがあるのでありますが、そういうことを除けば大して問題はなかろうかと思つております。ただ人事委員会という性質で、我々は共済組合で特に困つておることで、御考慮を願いということを申上げたいのは、結核療養患者の問題であります。結核療養患者を今どう取扱つておるかと申しますと、官において療養命令を出しますと一年間は俸給の全額を支給いたしまして休養をいたします。その後は各省のやり方は俸給を半減いたしまして、何年置いても現在の法律ではよろしいということになります。ところがそれを休職或いは免職ということにいたしますと共済組合給付が始まるわけでありますが、それは本俸の八割を勤務をしなくなつた日から三日以後、三年間支給するというのが現在の建前であります。これの結果非常に共済組合が大きな赤字を背負う結果になつておるのでありまして、と申しますのは、その休職或いは免職になつかたは共済の本人負担がありません。従つて国の負担もない、共済としてはまるまるそれは持出しであるという恰好になります。その結果各省の共済組合、特に短期の組合でありますが、よほど赤字を出しておりまして、この問題は非常に困つておる問題であります。結核というようなものは、これは職場病であるか或いは私の病気であるかということは非常に常に問題になるわけでありますが、我々の見るところ、例えば徹夜勤務をする職場とか、そういうところかたつてやはりこういう結核療養患者が出ておるということになりますと、全然これは公務傷害でないとも言い切れない面も相当あるんじやないか。そのために一般職員が保険的観念から金を出し合つておる共済組合だけが大きな負担を受けておるということは、共済組合全体としてはいつも問題にしておる点であります。それでこれは何とか国がそういう人を見ることはできなかろうか、現在業務命令で出しておりまして、病気の性質上一年というようなことでは治らないということは明らかであるにもかかわらず、一年であとは半額であるということ、而も定員というものが非常に詰つておりまして、療養命令が出ておる人は定員がそれだけ喰われるということになりますために、私のほうの官庁もそうですが、どうしても管庁においては早くこれを共済のほうに廻す率が多いわけであります。それでこれは人事委員会全般としてお考え願いたいのでありますが、只今私の私見を申上げて申訳ないのですが、そういう肺結核というようなものは一体何年国が面倒を見なければならんのかという期間の問題、もう一つはこういう人は定員外として取扱うべきではないかということが解決されると、共済の負担も相当軽くなろうかと思つております。或いは現在結核予防法というものが提案されておりまして、厚生省においては都道府県の財政の範囲内、厚生省令の定める範囲内において半額負担ができるんだということになつておりますが、これらの條件ではなかなか公務員にまで都道府県の恩恵が及んで来るとは考えられない。  その意味において対共済と縁が薄いかとも思いますが、この法案で是非解決を願うということではなくて、広く人事委員会として、この問題をどういう取扱われるかということを御解決して頂きますと、我々共済を担当しておる者としまして、非常に赤字が消えて共済制度も健全に発達するのであります。この点篤とお願いをいたして置きたいと思います。簡単でございますが、思い付いたことを申上げた次第でございます。
  32. 木下源吾

    委員長(木下源吾君) 次に松岡さんにお願いいたします。
  33. 松岡三郎

    参考人(松岡三郎君) 私ちよつと個人的な用事がありましで深く研究して参りませんでした。條文をざつと読んだ單なる思付きの点ですが、お話して見たいと思います。私今お話しましたように深く勉強しておりませんが、むしろ法技術的な面からこの問題を考えて見たいと思ます。  先ずこの法律を作る必要があるかどうか、作る場合にどういう理想で作るかという問題について感じたことを述べて見ますと、元来国家公務員一般労働者と建つた面があるから国家公務員法ができたわけです。ところ国家公務員がどういう点で違うかといいますと、これは何としても公務に従事しているという点が一番大きな違つた理由だと思いますが、この違つた面が労災関係でどう反映するかという問題です。私は率直に考えますと、労災関係については公務員の特殊性は何ら考えられないのではないか。労働時間そのほかいろいろな実態的な労働條件については確かに公務員の特殊性があります。併し怪我をした、その怪我を補償するという点はついて一般労働者とどう違うか。例えば各省の次官とか局長が怪我をされた、その怪我をどう取扱うかという場合に、一般労働者よりも低く取扱う必要は全くない、できれば公務に従事しておられるのですから、税金が許す限り多く、よりよく取扱いたいという気持が我々国民にあるわけです。もつと極端な例を挙げますと、公勝負力中で一番上は吉田総理大臣ですが、吉田総理大臣が週末旋行に行かれます。あれで一週間に四十八時間でありまして、規定から外されるゆえんは吉田首相の特殊な公務に基くものだと思うのであります。基準法から言えば、労働基準法四十一條の管理監督の地位に当るものですから、労働時間や普通の休日の適用がない、ただ割増賃金をもらえないだけのことであります。併し吉田首相が閣議の最中の怪我をされた。その怪我をされた場合にそれをどういうふうな取扱をするかという点になりますと、全く特殊な考慮をする必要はなつい、労働者より一般的によりよく取扱つて上げたいという気持だけです。こういう点から見ますと、今度の国家公務員災害補償法案一つの理想というものが、そういう見地から見ますと理想が全くないのです。この法律を作つた目的は第一條に書いてありますが、この目的の第一條をそういう見地から一つ読んで見ますと、この法律を作つたのは、国家公務員法第九十三條から九十五條までなのです。一体国家公務員法九十三條と九十五條というのは非常に悪い規定で、非常に杜撰だと言いましようか、今の資本を全く知らないものだと思うのです。なぜかと言いますと、例えば非常に技術的なものを取上げますと、九十三條、九十四條からは、これを読んで見ますと九十三條で公務員補償される理想というものは、公務員が怪我をしたという場合の損害の担保だけであります。これは労働基準法よりも低い、労働基準法の理想というのは損害の担保ではなくて生活の補償です。なぜ公務員たけが損害の担保に過ぎないかどうか、その理由は今申上げましたように全くない。それから九十三條九十四條からの考え方から見ますると、葬祭料というような考え方は全くないのです。葬祭料が出て来る余地はない。この九十四條は「前條の補償制度には、左の事項が定められなければならない。」という中で、この中には葬祭料という考えは全くないのです。又公務員の福祉に必要な施設という考え方も九十三條、九十四條からは出て来そうにない。そうすると、この第一條はもうすでに嘘をついておるのです、嘘をつかない法律にしようと思うなら九十三條、九十四條に基く法律でない法律を作るべきである、そういう九十三條、九十四條は吹つ飛んで、今言いましたように公務員一般労働者よりもよりよく取扱うようにしなければならないということが出て来ると思うのです。そういう観点から言いますと、ここで一般職の職員と特別職と区別する必要も全く認められないのです。この九十三條、九十二條に基くからこそ一般職ということが出て来るのですが、九十二條、九十三條のことを全部考えから除きますと、一般職に限らず特別職をもできれば労働基準法よりも上の取扱をすることになるのではないかと思うのです。  それからここの第一條考え方を見ますと、「迅速且つ公正に行い」というように書いております。この中には十分な補償ということは少しもない、迅速と公正だけなんです。それでその迅速というのは一体あとの條文の中にどこへ出て来るかといいますと、これはどこにも出て来ないのです。どこへ出て来るかといいますと、あえて言えば第二十四條に審査権請求があつたときに、「人事院は、すみやかにこれを審査して判定を行い」というそこの「すみやかに」という言葉の中に出て来るだけであります。今これを読みました一番の感想から言いますと、怪我をして或いは死んだというときに、各省に補償してくれと言います。それで各省が補償しなかつたらどうなるか、補償しなかつたら全く審査の請求もできないのです。これは読んで見ますと、「公務上の災害の認定、療養の方法補償金額の決定」つまりそういう決定をしなければ何も救いようがない、今までの官庁のやり方を見ると、要求しても一年も二年も放つて置く。放つて置かれたときにどういう訴えができるかというと、つまり金額の決定をやらないのならやらないという処分、或いは幾ら幾らという処分、そういう処分がなけれ一審査ということの請求はできない。放つて置いてもこの審査はできるのだというおつもりでしたら、これはそういうように直して頂かなければならないのじやないかと思うのです。今のこれは結局は行政訴訟という形になるのだと思いますが、今の行政訴訟では、処分がなければ行政事件訴訟特例法で救済を求めることはできないのです。これはだから処分がない場合には不許可処分というような解釈で行けるかどうかというと、今の学界ではそういう解釈ではいけないとすると、このように生存権に一番関係のあることを、そのように今の自由主義の法律のほうに任しておいてよいかというと、私はどうしても任しておけないように思うのです。ですから若しこの場合に、速かにというこの第一條の根本的な目的が嘘でないというためには、二十四條をむしろ改正すべきだ、どういうように改正すべきかというと、怪我をしたとかいうときに療養補償、或いは金を全くくれないというときにも、異議の申立ができる、或いはくれないというときに、例えば二週間ぐらいに何ら各省が面倒を見てくれなかつたというときには、この面倒を見なかつたのだとみなすという一項目を入れて、それで人事院に、異議の申立ができるという形にしなければ迅速ということに空念仏、そういう法的な保障がないのだと思う。私今言いましたように、元来労災に関しては公務員について特別な規定を設ける必要がないと思う。設けるとすれば一般公務員よりよりよい迅速な補償、ですから私は第一條で迅速という言葉を使われたと思うのですが、この迅速ということについて何ら法的な保障をしていないのです。又ここで異議の申立の期限のことですが、これが二十四條について、異議の申立について、明治時代に作られた訴願法というものが適用されるおつもりであるかどうか。若し訴願法を適用されるつもりであるとすると私は非常に反対なのです。この面について明治時代に作られた訴願法を検討し直されて、この規定に入れるべきではないかというように思います。  それからその次に、第一條の目的は公正ということが書かれてありますが、この公正な自的、公正に災害補償をする、その公正の法的な担保がどの條文に現われているかという問題なのですが、この点について私は必ずしも公正な法的な損保があとに出て来ないような気がするのです。今言いましたように、この労災については、一般労働者と特に違つた理由は殆んど見出せないとすると、この面についてむしろ公正なやり方をしようと思うなら、労働基準局の協力を求めるような法的な構造のほうがむしろ望ましいのではないかと思うのです。と言いますのは、今の人事院の機構で勿論専門家はたくさんおられますが数が少い、数が少いということにサービスの公正に欠ける懸念があるような気がいたいします。これについて何か基準局の協力を求めなくても公正にやつて行けるのだというおつもりだつたら、そういう何かの法的な保障をどこかの條文に附加えるべきじやないかというように思うのです。ただ公正をいう点を見ますと、基準局の協力を求めているという点は二十五條に見ようとすれば見ることができるのですが、ここで、人事院は「従前の労働者災害補償保険審査官若しくは労働者災害補償保険審査会の決定又は裁判所の判決に矛盾しないようにしなければならない。」ということです。このときに矛盾しないようにしなければならんといつた場合に、矛盾したらどうか、その法的な跡始末はどうするかと言いますと、この点がはつきりわからないのです。裁判所の判決に矛盾しないようにしなければならないということは、これは行政事件訴訟特例法に書いてありますから、この点も問題ない。そうすると残つたのは、審査官の決定矛盾しないようにしなければならない。矛盾した場合に、例えば人事院矛盾したことをやりますと、これは二十五條違反であるから違法な処分だ、違法な処分だとすると、行政事件訴訟特例法によつて人事院決定を取消すという訴えができるかどうかという点が、問題になるわけです。この点ができるようにも思うしできないようにも思う。この点立案者のお気持がはつきりするならそこに書いて頂きたいと思います。  それからもう一つ私は感想なんですが、人事院というのは非常にえらい役所だと思つていたら、これを見ますと、一介の審査官の決定に屈服するというので、非常に人事院の地位が転落したような印象が起るのです。この点がどうもいろいろな感想を抱かれるので、この点もあとに誤解の起らないようにはつきりして頂きたい。どちらでもいいと思うのですが、はつきりして頂きたいと思います。  それからあと多少思いつきで、小さい字句の両を伺いますと、六條の「国は、補償の原因である災害が第三者の行為によつて生じた場合に補償を行つたときは、その価額の限度につおいて、補償を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。」という場合に、損害賠償の請求権というような問題ですが、この請求権を公務員が放棄したらどうか。つまりどうせ国からもらえるのだから、第三者と話合つてこの請求権を放棄したというような場合の跡始末が、基準法を運用して見ると、この問題があちらこちらで問題になつておる。とするとここで一つその基準法の経験を活かして、何かはつきりした法律的な措置が必要だというような気がいたします。  それから又小さい問題を言いますと、十四條ですが、「職員が重大過失によつて公務上負傷し、又は疾病にかかつたときは、国は、休業補償又は障害補償を行わないことができる。」この場合に「重大な過失」ですが、故意の場合はどうか。故意に自分が怪我したという場合には、休業補償がもらえるのかという疑問が当然出て参ります。重大な過失の場合にもらえないのだが、故意の場合にもらえるということはおかしい。重大な過失の場合にもらえないとすると、故意の場合ももらえないのは当然だというように解釈を恐らく立てられるかも知れませんが、頭の固い裁判官は反対解釈をやる、重大な過失によつては休業補償はできないのだけれども、故意による場合は書いてないから、故意の場合にはもらえるのだというように裁判するのが、概念法学をやつている裁判官の中にいますからつ、こういう点もはつきりして頂きたいと思うのです。  それからその次の十六條のほうは、前條に規定する職員の遺族補償の問題ですが、その場合に第一号として配偶者というのがあります。その配偶者の中に括弧して「婚姻の届出をしないが、職員の死亡当時事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」ということについてですが、ここで、配偶者というのは結婚届出をしたものです。ところが結婚届をしながら、その奧さんを面白くないというので、届出だけはそのままにしてほかの女性と事実上の婚姻関係を長い間しているという場合は、その人が死んでしまつたという場合に、一体もらえるのは何年も一緒におらない名義上の配偶者なのか、或いは事実上何年も一緒にいる配偶者なのか、この点がはつきりいたしません。それから又事実上の婚姻の関係でも、中に非常に浮気な著がいる、公務員が皆道徳家であるというわけでもない。そうすると事実上の婚姻関係をたくさんやつているというときに、誰が一体もらえるのかということもはつきりいたしません。それから又事実上の婚姻関係というのは、一体何であるかという問題で、私この場合には事実上の婚姻関係というのは、やはり單なるいわゆる肉体関係ではなくて、夫の収入によつて生活を維持している者、つまり第二号、あの思想がこの中に入るのじやないかと思うのです。そうするとこの点も、はつきりそうでないとすれば、そうでないということも書いて頂きたいのですが、いずれにしても法律はつきりしないのです。この点が気にかかつております。  ほかに細かい点がまだ多少残つておりますが、一応私の思いつきはその程度でございます。
  34. 木下源吾

    委員長(木下源吾君) じや委員諸君で御質問がありましたらば、一つお願いします。  それではお諮りしますが、川島専門員の発言を許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 木下源吾

    委員長(木下源吾君) 川島君。
  36. 川島孝彦

    ○専門員(川島孝彦君) 山内さんにちよつと伺いたいと思いますが、大分実際の御状況に通じておられるようでありますが、この公務災害の場合に、医師の認定によつてその等級をきめることが多いと思いますが、そういう場合に、その医師がいろいろな観察からして、随分同一程度の災害とか疾病とかに対して、かなり違つた認定をするというようなことは、事実上ありますでしようか。余りそういう点はないのですか。
  37. 山内公猷

    参考人(山内公猷君) 余りそういう点を聞いたことはございませんのですが、私主として今までの経歴は鉄道関係におつたものですから、その点から鉄道病院のお医者さんですから、余り私のほうではそういう問題はないのですが、ほかのほうはどうか知りません。
  38. 木下源吾

    委員長(木下源吾君) ほかにございませんか。
  39. 西孝雄

    参考人西孝雄君) 今の点について国鉄では今度人事協約を結ぶことになつております。そうした場合の認定を、直接直営医療機関の医師は信頼できるにいたしましても、労使間においてはやはり使用者に立つ医者である、こういう見解から一方的な、今先生の言われたところの認定をされる虞れがある、そういう懸念があるので、直営医療機関の医師だけでなく、一般職員が頼んで来たところの医者、部外の医者、この両方の立会の下に認定する、こういうふうなことによつて、人事のそういう身体陣雲の認定をすると、こういうふうに私たち考えて今協約実施しつつある、こういう状態であります。
  40. 木下源吾

    委員長(木下源吾君) では参考人諸君は、本日は誠に有難うございました。大変どうもいろいろ有益な御意見を聞かして頂きまして、これで本日は終りたいと思います。どうも有難うございました。  それでは本日はこれで散会いたします。    午後二時三十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     木下 源吾君    理事            加藤 武徳君            千葉  信君    委員            西川甚五郎君            森崎  隆君            紅露 みつ君   政府委員    人事院事務総局    給與局長    瀧本 忠男君    人事院事務総局    給與局次長   慶徳 庄意君   事務局側    常任委員会專門    員       川島 孝彦君    常任委員会專門    員       熊野御堂定君   参考人    国家地方警察本    部人事課国方地    方警察警視   種村 一男君    日本官公庁労働   組合協議会代表  西  孝雄君    全基準労働組合   代表執行委員長  城  千尋君    林野庁労務厚生    課農林事務官  深谷  清君    共済組合代表運    輸省人事課長  山内 公猷君    明治大学教授  松岡 三郎君