○説明員(山下興家君)
千葉さんの御
質問に対しまして、この際少し根本的に
人事院の
立場を申上げたほうがいいだろうと思います。
それは成るほど今回この
国会で
人事院は、
政府案に反対をしているところが相当多いので、その点よそからは閣内野党とかいろいろな批評を受けていることも聞いております。併し我々は決して
政府の案に反対しようという気持は毛頭ないのでありますからして、この際我々の
立場をここにはつきりして置くほうがいいと思うのであります。恐らく不思議に思われたであろうと思うことは、同じく
政府の
機関であるならば、反対意見を持
つておるとか、それから又事ごとは反対するような
立場をとるということは、これはよくないと私も思うのであります。ただ
人事院は
給与をきめます場合に、
大蔵省なんかの
考え方と全然違
つた考え方をと
つておるのであります。それは
大蔵省では御
承知のように
予算をきめて、それからそれをどう配分するかということをや
つてお
つて、これは元の公務員、即ち官吏が天皇に仕えてお
つて、そうして天皇から給料をもら
つていた時代にはそうであ
つたのでありますが、今度新憲法の下ではそういう
考え方から離れまして、
人事院というものは、公務員全部が国民全体のサーヴイスをするのだ、それだから国民からお金を公務員にもらうのだ、即ちサーヴイス料として給料をもら
つておるのだという
立場で我々は
考えておるのであります。それで
予算ということからきれいに離れまして、我々の目標とするところは、国民全体にサーヴイスをするのだから、少くとも公務員の生活水準を国民の平均に合わすことは、国民も許してくれるだろう。納税者は許してくれるだらう。それから一番下と一番高いところとの比率は、今の民間の企業の
体系に合わして行く、この二つをと
つて来ておるのであります。それでありますから、これのベースを出すときには、即ち国民と同じ生活水準でベースは幾らでやるべきか、それからこの低いところと高いとろとの比率は、これは国民の現在の姿に倣
つたのだということになるのであります。それでそれを発表いたしますときに、
政府の
機関と打合わせなか
つたとか何とかという非難もありますけれ
ども、そういう
立場に立
つて国民にこれを訴えて、そうして国民の批判を仰ぐのだ、国民からそれだけのお金をもらえるかどうか、公務員がそれをもらえるかどうかという批判を仰ぐのだからして、これはどこと相談する必要もないと思うのであります。若しも相談をしたら、
人事院は何とか理窟を言うけれ
ども、それは政策を加味しているのじやないかという疑いを受ける虞れがありますから、これはそうでなしに発表しておるのであります。そこでこれは内閣がこれを受取られたときに、私
どもが
考えるというと、国民の平均水準だから、これは何をおいても採用してもらえるはずだとは思いますけれ
ども、やはり国全体の
予算の上から
考えてそうは行かない。その平均の水準から一割引きしなければならぬとか、五分引きしなければならぬということはあるだろうと思います。それは認めるのであります。そのときにはその
体系から一割引なら一割引にして、そうして
国会へこれをお出しになれば、
国会でそれだけのものを出すべきか出すべきじやないかということは、
国会で御審議になるはずであろうと思うのであります。
只今給与の低いところと高いところとの比率とい
つたようなものは、御
承知のように今は生活給であるのであります。その証拠には扶養手当があ
つたり
地域給があ
つたりする。これはサーヴイスをする量と交換でありますから、場所によ
つて変るはずがないし、家族があるとかないとかいうことで変るはずはないのであります。それで本当の
給与体系を完成するときは、そんなものがなく
なつたときでなければならない。そのときにこそ初めて能率給なりの考を入れるべきものと思うのであります。併し今は生活給でありますから、生活給とは何かというと、上の者と下の者とが同じに耐乏生活をしなければならない。国がこういう状態であるから耐乏生活をしなければならないというわけであります。そうすると上と下との比率というものは何から出て来るかというと、年を取るとだんだん家族の数も殖えて来たり、その他いろいろ止むを得ない出費がありますから、多少は上
つて来ます。大体は家族数に比例をするというような恰好にな
つているのであります。それで私
どもがストライキを禁止せられた公務員にも満足をしてもらうように、それから又国民全体からも、納税者にも満足してもらうようにというのには、非常な苦心を要しているのであります。それであのカーブ
一つでも、ただ簡單に研究するわけではなくて、今の生活給はかくあるべきものだということを深く
考えて、そしてその高いところと低いところとの比率がきめてあるのであります。そのほか調整
号俸にしても何にしても、全部が非常な細かな研究の結果、私
どもはこしらえておるのであります。それだからどうかこれから先は、全体の比率を幾らでということでお出し下さるなら、これは我我は決して
政府の、案に対して小ごとを言うことはない、全部協力して行きたいと思
つておるのでありますが、それを新らたに、権力があるから全部ひつくり返すと、こうや
つて来られると、我々の
立場は、やはり公務員にも満足してもらわなければならん、即ち下のほうで食うか食わんかというときには、やはり上のほうでなくて、下のほうにやはり
給与を相当増さなければならんという生活給という
立場に立ちまして、止むを得ずこの案にいろいろな反対を唱えて行かなければならんようになるのであります。決してそれは我々の本意でありませんから、その
立場をよく
考えてもら
つて、それで
政府機関の中に同じ仕事をするものが二つあるというようなことは、これはあるべからざることと思うのであります。国費を濫費するものである。それだから国にはおのおの專門を持
つて、互いにそれが協力して行くというところで初めてうまく行くのだと
考えております。それですからそういう
立場に立
つておるから、止むを得ずそういうことだということを今ここで申上げまして、決して
人事院は閣内野党でもなければ何でもないのだ、本当に手を握
つて仕事をしたいと思
つているのだという誠意だけを
一つ聞いて頂くと大変結構だと思うのであります。