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1951-08-03 第10回国会 参議院 在外同胞引揚問題に関する特別委員会 閉会後第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年八月三日(金曜日)    午後二時五十二分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○引揚促進に関する件  (引揚促全国協議会断食隊の解散  迄の経過に関する件)   —————————————
  2. 千田正

    委員長千田正君) 只今から委員会を開会いたします。先般来引揚問題に関しまして留守家族断食等をやつていろいろ政府要望したようでありますが、当委員会といたしましても国会立場から非常に憂慮に堪えない状況に立至つたので本日に亘つて三回委員会を開くわけでありますが、その都度まあ断食人たちのお見舞もし、又できるだけ政府とこの人たちの間に立つてなるべくこういう問題を早急に解決したいと思つて努力して参つたわけであります。幸い昨晩夜中に至つて漸く妥協点が見出されて、どうやら解決事態なつたようでありますが、その間の事情も聴取したいと思いますし、それからポツダム宣言條項政府が考えておるような考え方もあるでしようし、又国際公法立場からも相当我我としても考えてもらわなければならない問題がありますので、この問題についても本日皆さんに一応今枝部長から国際公法立場からこのポツダム宣言が、このたびの英米等に対して日本講和を結んだ場合においてポツダム宣言がどうなるか、その場合において然らばソ連、中共との残つた問題は一体この国際法立場からどうなるか、こういう点も一応聞いて置きたいと思つて今枝部長にお願いしてあつたのであります。只今橋本厚生大臣がお見えになつております。先般来当委員会といたしましても、しばしば留守家族の問題を非常に心配いたしまして、政府立場を一応お伺いしたい。特に橋本厚生大臣吉田総理大臣から今度のこの留守家族の問題に対する解決方法を一任されておられるというふうに仄聞いたしますので、吉田総理大臣外務大臣出席をしばしば要望したのでありまするけれども御出席にならない。そこで我々としましては単に厚生大臣としての橋本厚生大臣を御出席をお願いしたのではなくて、吉田総理大臣代理としましてこの留守家族の問題を解決するという重大なる責任をお持ちになつておられるところの橋本厚生大臣から政府所信を十分伺いたいとこういうので、先般来御出席をお願いしたわけであります。御病気のようでもあつたのでありますが、本日お見えになりましたので、只今から橋本厚生大臣から留守家族の問題がどうやら解決がついておるわけでありますが、諸般事情につきまして一応御説明願いたいと思う次第であります。
  3. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 私委員長からお話のありました趣旨に関しましてお答えを申上げまする前に御挨拶を申上げます。当委員会も私の所管事項関係がございまするために、成るべく早く御挨拶を申上げる機会を持ちたいと思つてつたわけでありまするが、私今回厚生大臣の重任を拝しまして、不敏浅才の身でございまするが、今日の時局において私のある限りの誠意を尽して職責を全ういたしたいと思つておるものでございます。何分にも微力でもございまするし、このむずかしい事態のもとにおきまして皆様方の絶大な御支援御鞭撻を心よりお願いを申上げます。  さて本日お呼出しの趣旨についてでございますが、昨日もお呼びがございましたが、私ども連日徹夜をやりまして少しふらふらいたしましたものですから、昨日休みまして誠に失礼を申上げました。本日幸いに午前三時解決いたしました全体の経過について御報告申上げたいと思います。  今回の留守家族大会の件に関しましてもは、もともとの議題講和條約の問題でありまして、御承知のように在外日本人の保護でありまするとか、捕虜送還引揚といつたような問題は外務大臣所管事項でありまして、私もよく知りませんし、又事務当局もそういう点については條約交渉の内容等存じておるものもないものでありますので、大会の際に援護関係大臣として私は挨拶に参りましたけれども、その後の経緯に関しましては大会の主題の方面が主として外交関係でありまして、そういう観点で用があれば出るという態勢でおつたわけであります。主として外務省草葉政務次官が当つておられたのであります。そのうちいろいろな経緯があつたようでありまして遂に断食というようなことになりましたのは、誠に留守家族皆様方のお気持も非常に尤もな点があり、悩みのあるのは尤もでありまするが、これはもう誠に不幸なことであるので何とかいたしたいと思いまして、問題が私の所管するところでありませんので、正面からお目にかかつても如何なものであろうかと思いまして、先週の土曜日非公式に全協の代表かたがたとお目にかかつてどうも私も心配をいたしておる。併し議題議題なんだからあなたが出て来ても用はないのだと言われても、私のほうもこれから先の出端も悪くなるし、あなた方のほうも困るかも知らん。私に何か用があるのならばできるだけのことをしよう。援護処置についてはできるだけのことを考えたい。私は問題自体についてはどういつて解決をするということもできにくいけれども、條約をどうするこうするということは……。併しあなた方がどうしても断食をやらざるを得ん立場に立たされておるならば、この暑い時期でもあるし、何か病人が出たりするといけないから、できるだけの援護をして差上げましようということで、どうせやる決心をされるのならば土の上で、野天のもとでというのもいかんと思いましたから、東京都のほう、その他に手配をいたしまして、テントでありまするとか、毛布であるとかというものは、大体私のほうで指図をして用立てるように話しをしました。なお日本赤十字に連絡いたしまして、医者と看護婦を始終附けるようにということを言い置いたのであります。その後私は全協の幹部のかたがたに、何か私に用があるならば出ましよう。併し今日の段階においちやどうもあなたのほうも厚生大臣じやしようがないという段階にあるようだ、状況が……、ということを一応言うて土曜日に別れておつたのです。その後月曜日頃になりましてから、出てくれないか。で私がとにかく引揚そのものではないけれども、引揚援護についていろいろな密接な関連を持つておる、仕事をしておる厚生大臣であるし、そこで政府の意を体してまとめに出てくれるならばまとまるからという意見を述べられるかたもおりましたし、はた又放つて置くわけにいかない。今日外務大臣自身が動きにくい状態においては、私自身が出るより仕方がないだろうというので、閣議又は与党総務会等でもお話合をしまして、そこで私初めて正面に出た次第でございます。何分今回の大会の問題については、私がここで御報告申上げる必要もなく、皆さんももう御承知だと思いますが、なかなかむずかしい問題で、私も掘り下げてなかなかむずかしい問題であるということを感じました。そこで條約の交渉につきましては私も薄す薄す若干のことを存じておりまして、吉田総理大臣は私が過去数年間の接触の間においても海外に日本捕虜がなお、殊に軍人軍属でもないようなかたがたまでが抑留されておるということは、常日頃非常な惱みとし、そうして心配しながら努力して参つておるのであります。でソヴイエトロシヤというああいう強大な権力の下にまあ横車を押しておる。解決方法が非常にむずかしいということで、殊に心配しておつたのであります。そで昨年の秋以来の條約交渉の間においても抑留者送還の問題というものは初めから非常に大きなポイントとして議題上つてつたもののようであります。そこでいろいろな話し合いのあつた末に、どうも講和條約の草案の第一條項に表からは取上げておりませんけれども、何らか別途の方策が講ぜられておるようであります。今日の今回の抑留者家族のあの問題につきましても、政府の側では今日の敗戦下政府として、自分のいろいろなその交渉経緯とか、その他をそうあらわに発表しにくい状態にある。それに対して留守家族かたがたは是非こうこうこういうはつきりした形でやれという問題で、十分な意思の疎通を欠いたようなことが間にあつたのではないかということを、私は側面から感じておつたのであります。  でそういう点もはつきりさして行きたいと考えまして、火曜日に吉田総理大臣に私は面談をいたしましたが、私の考えた通りで大体問題は、(「もう少し高い声で」と呼ぶ者あり)問題は講和條約の交渉過程においてむしろ重大な大きな項目として前々から論ぜられておつたもののようであります。総理に話したときに、私に対しましても、もう君の知つておる通り抑留者送還の問題についてはまあ実に苦心を払つて来て、実にいたましい問題であるだけにこの問題に触れるだけで、その日一目胸がつぶれて気がふさがるくらいでやつて来た。で條約交渉過程でもいろいろ苦心をやつて来たんだし、今もやつておるのだということを言われました。そこで総理気持を私が要旨を書取りまして、これを伝えてくれということで、総理メッセージを頂きました。  なお又留守家族団体のほうからは、講和條約の草案に対する異議と申しますか、要望と申しまするか、そういう質問書のようなものが出ておりましたが、この質問書に対する回答としては、日本政府としてなし得る最大限の範囲での回答外務省事務当局、それから吉田総理十分検討の上練つて、そうして然るべき連絡方法をとつた上で、これは草葉政務次官吉田総理兼外相の命令を受けたという形式にして出したのであります。そこで火曜日の日の夜帰つて参りまして、午後の十一時から午前二時くらいまでお目にかかりました。そうして総理の意のあるところを伝え、それから且つ條約交渉過程においてずつと問題にして続けて参つている、そうしてこれに対しては何らかの適当な措置がとられつつあるということをお話申上げたのであります。草葉政務次官回答書の朗読をされて、それに説明もされました。そうしたところが、しばらく引下つて相談をするということでありまして、水曜日の午前になりまして向うは出て来られて、一応はこういうお話でありました。どうも必ずしもこの回答だけでは自分らの気持はつきり、ぴつたり来ないけれども、併しいろいろな事情もあるのだろうから、こつちの要望はこつちの要望で言う、それをはつきり聞いて善処してもらいたいということで、私もよろしいそうしましようということでおまとめ願う方向になつたものと思つた。ところがその日の午後になつて、一向問題が解決いたしませんでした。主眼点はやはりポツダム宣言の第九項米英ソ支四カ国は日本捕虜を速かに送還するのだと書いてあるのは、これはアメリカなりイギリスなりがそれぞれの国の中にある捕虜を還えしさえすればいいという意味でないのだ、これは全体に法律的連帯責任を負つておるのであつてアメリカ及びイギリスは今日なおソ連及び中国捕虜が残つている、これを早く還えさなければならないということについて法的な連帯責任があるという法律的見解日本政府は表明をして、それを明らかにするような條項を條約の草案の中に入れて欲しい、入れられないならば、そういう趣旨の何か條約関係の文書を作成してほしいということでありました。  それから第二点は、草案の十六條の文句は、これは何もソ連乃至中国と将来條約を結ぶ際において、捕虜送還に関する特別規定を設けるのを妨げる趣旨でないという説明であるけれども、まあひよつとしたら心配がある。捕虜送還に関する規定を入れて差支えないという追つて書をつけてくれ、こういうお話でありましたのです。殊に第一点の問題は大変デリケートでありまして、それがなにしろ日本だけではできるものではありません。いろいろデリケートな問題がありますので、これが自分の満足の行くようにされないと断食をやめないというふうなことは、これはなかなか大変なことであると思つて苦心をいたしました。あらわにいろいろな経緯説明等できないのは残念でありますが、種々苦心して抑留者家族団体かたがたに御理解を願う努力を続けましたところが、幸いにして我々の誠意が通じまして、本日午前三時に断食をやめるということになつたのは誠に御同慶の至りであります。  最後の結論をかいつまんで申上げればこういうことであります。捕虜送還の問題に関しましては、従来もあたう限りの最善方法でここに痛ましい問題の解消を図るために努力を続けて参りましたし、今日もなお努力を続けておるのですが、その誠意抑留者家族皆さん理解をして頂いて、そうして今後なお抑留者家族かたがたが最も希望される線にできるだけ近い線になるように更に努力を続けるという話をいたしまして、これをお互いに了解し合うことにいたしたのであります。  私は最後に今暁あの断食隊皆さんのおられるところでこういう話を申上げたのであります。今日、九月上旬に講和会議を控えまして、何となく少くともあの條約草案ならばもうすぐまとまつて、批准もすぐできそうな空気になつておりまするし、そしてあの條約草案よりもつといいものができそうなものではないかというふうな感じすら日本国内にはないと限らないようでありまするが、実際の世界情勢を見ましたときに、今日なお招請状を発せられた国の中で参加しないのではないかと思われている国もあり、又参加はするけれども、あの講和條草案には反対であるという意向をはつきりと表明しておる有力な国々がある。こういつたような状態におきましては、日本政府が非常に日本立場を力強くいろいろな面で工作はして参りましたけれども、諸般の従来の経緯なり、又先に対する準備なんというものについてあらわに発表のできない立場にあるということが誠に残念であるが、これを御理解願わなければならないということと、それから今日なおあの講和條約の草案すらなかなか以て連合各国の間には論議があつて日本のなかなか注文というものがどういうふうな影響を持つかということについても余程考えなければならん立場にある。そういう苦心の間におきながら、我々が日本国民の将来というものを護り、そうして当面の問題であるところの抑留者方々最善の方途を講ずるためには、まあ政府誠意を以て努力をすると同時に、やはり政府国民との間に、お互いに力強い理解が必要なんだということを、この問題の解決過程にしみじみと痛感をしたということを私は私の心からの言葉としてお話を申上げた次第であります。私から申すのも口はばつたい話でありまするが、私の申上げたことを十分に理解して頂けたと私は確信をいたしております。その後大分断食をせられた方々の中に、身体の弱つておられる方々もありますので、別途直ちに日本赤十字に粥その他の用意をいたさせて置きましたのをその場で差上げました。その用意の乗物で日本赤十字社のほうに引取つておるのであります。今朝方見舞をいたして置きましたが、格別心配なこともないようでありました。無事にお引取りを願うことができそうなのを私非常に喜んでおります。今日までの経過はさような状況にあります。これだけを御報告申上げて置きます。
  4. 千田正

    委員長千田正君) 只今橋本厚生大臣から今までの留守家族との交渉経過につきまして詳しく御説明されましたが、これに対しまして各委員の何か御質疑がございましたならば質問して頂きます。
  5. 内村清次

    内村清次君 終戦後六カ年間の長い間でありますが、その間におきまして留守家族方々は勿論でありまするが、又日本国民全体といたしましても、一日々々が抑留されたかたがたの帰還の促進に対しましては、心を寄せ来たつたことは私がここに申上げるまでもないことであります。委員会も、即ち民主国会になりましてから引続いての特別委員会が設置せられまして、その促進努力しておることも、恐らく橋本厚生大臣がよく御存じのはずと思うのであります。或いは又自由党のほうにおきましての政調会にも大臣携つてつて、この引揚問題もやはり一つの大きなスローガンとして、或いは政策としてのことであつたと思いますし、衆議院におきましても特別委員会はこの問題に集中して今日までなおその引揚に対して御努力をなさつておることも大臣はよく御存じであつたと私は考えるのであります。その願望が今回の対日講和條約の草案に対しまして熱望いたしておつたその気持と同時に、その気持から発しました、即ち條約草案の中に連合国義務規定が挿入されておらないからして、その願望が、果して今後如何なる形によつて達成せられるかということに対しての留守家族かたがたの一段の思いをいたされることは、これは当然のことであろうと思うのでありますが、不幸にいたしまして、今回の断食という人道的におきましても誠に悲しむべき事態を引起したことにつきましては、只今厚生大臣経過を聞きましたときからいたしましても、その中の御報告要点を聞くにいたしましても、私は本当に責任は挙げて政府にある、私はこういうふうに感じておるものでありまして、勿論委員会といたしましても、この大会が開催せられました直後から、この大会願望政府を通じて如何にして強力に連合国に反映して行けるかという努力要望いたしておつたことは、それは御承知通りでありまするが、残念ながら大臣は再度の委員会にも御出席がなかつた。それと同時にそれの経過の中に私は丁度今回の即ち事態に対しまして、ややともすれば政府態度というというものは労資関係にあるがごとき御態度ではなかつたか。幸いにしてその経過最後の点につきまして、大臣のお言葉の中において今後は一体となつてこ促進問題に当つて行くということをつくづく感じたというような言葉が出ておりまするが、私はこの言葉こそすでにこの六カ年間におけるところの日本人全体の気持であつたはずであるし、先ほども申しましたように、自由党の、而も政策を担当せられておつたところの大臣であるとしたならば、今回の交渉の全権を委任さたましたその直後におきましてでもなぜあのテントの前に立つて、そうしてあの断食をしておられるかたがたに対してその努力の点を訴えて頂けなかつたか。代表者を官邸に呼んでそこで相対してその話合いをするという態度というものは、これは私は労資対立態度の即ち問題ではなかろうと思う。私はそれを一歩即ち踏み越えて直接ぶつかつて頂く、そうしたならば私はこの七日乃至八日というような断食というものは、或いは不幸にいたしまして、初日断食に入られたあのかたがたをして二日か或いは又三日で過し得たのではないか。又遡つて考えましたならば、大会の即ち当日におきましてでも、総理みずからあの大会においでになつて、そうして今までの政府努力経緯、これを誠意以つて報告に相成つたとしたならば、私は満足して、そうして又お互い政府とそれから留守家族かたがたと、勿論バツクには国民全体がバツクとしてこの問題に一丸となつて行くところの気がまえがそこでできて来はしなかつたかと思うのでありますが、誠に私はこの点につきましての、今回の政府の諸責任者かたがたの我々が接しました限度におきまして誠に冷淡なものがあつたことを実に残念に思つております。併し幸いにいたしまして一昨々日頃からの好転によりまして今回この問題が解決をいたしましたことにつきましては国民と共に喜びを感ずるものでありまするが、併し私はこの喜びというものが恐らく留守家族かたがたもやはり内地に帰還された我が子を抱いて、父を抱いて、兄弟を抱いての喜びに早く変つて来ることを期待して、なお且つ政府にその熱意あるところの今後の努力をお任せになつてこの問題が解決したものであろうと考えます。  そこで私が質問いたしたいことは、大臣の今回の御行動というものは、勿論経過の中にもあつておるようでありまするが、これも明確にして置きたいことは、総理大臣厚生大臣とお会いになつたときの先ほどの述懐と申しまするか、メッセージと申しまするか、そのことは総理みずから本当にあなたにお任せになつたのか、そうして今後の交渉はあなたに是非一つつて頂きたいというような、即ち正式の委託があつたことを確言できますかどうか。この点を一つ私はお聞きいたして置きます。  それから第二点は、今後この努力というものがただ言葉の上の努力ではいけないのでありますが、今後の、即ち條約の草案の中に入れましたそのこと自体が直ちに現在の占領国連合国全体の、即ち占領国義務として法的に必ず残るものであるかというような確信の下にそういう努力をして頂くかどうか。  第三点といたしましては、この政府の即ち手続上の問題でありますが、回答をなれましたその回答要点でありまする、この條約挿入の問題は、なおダレス特使との間におきましてその交渉の余地というものが今後に残されておるかどうか。残されておるとしたならば即ち政府においてはどのような方法を以てこれを條約草案の中に入れようとする御努力をなさろうとするのであるか。この三点をお尋ねいたしてきたいと思います。
  6. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 只今内村委員の御質問お答えを申上げたいと思いますけれども、前段にいろいろ御所見の御開陳がございまして、私必ずしも意見を同じうしない点がございます。これは見解の相違でございます。ただ今回のような問題を起したのは政府責任であるというお言葉がありましたが、私は所信を述べるのに勇敢でありたいと思うものでありますが、私は今回のような問題の起るのは、全く国際法規に反し、今日のような未曾有の事態を惹起しているのは、ソヴィエト・ロシヤが日本抑留者を帰さないという国際法違反の原因に基くものであつて、我々は全世界と共にこの不当である責任を大いに追求しなければならないし、この現実の事態解決に努めなければならないということを私は考えておりますことを申述べます。なおいろいろな経緯の問題につきましては、これは人々によりましていろいろニユアンスを持つたお答えをする人もございましようし、手違い等があり、或いは又なお親切な感じを与えることができたんじやないかという点については、これは率直に申上げてあるかも知れないと思います。政府部内におきましても今後とも益々この問題のみならずほかのものについても、常に国政百般の問題を全身全靈を挙げて努力しなければならない問題であります。殊に今日のような、こういうややもすれば抑留者引揚げの問題といつたような実にむずかしい問題、法的にそれが解決ができても、実力の面においてもなかなか問題の解決がむずかしいといつたような問題、それだけにこれの被害者であられたかたがたは、本当に真剣に悩んでおられるというような気持を汲みまして、なおなお十二分に心して対処すべきものであるということは考えております。これは今後も十分に心して事の処理に当りたいと考えている次第であります。  なお、何か私が総理大臣から委託を確かに、正式に受けたかというようなお話でありましたが、これはまあ閣僚が仕事をするときにはいつでもそうでありますが、私は内閣総理大臣代理でもなんでもない。私は政府代表していたしました。そういう場合には何もこういつたふうな問題を解決するというときに、誰が表に立つて話をするかというふうなときに格別決裁を受けるわけでもございませんし、又総理大臣から君、やつてくれということを言われるまで、動かないわけのものでもなし、私は普通の行き方によりまして、大体厚生省所管の直接の関係ではないが、一つ何とかこの辺で解決の衝に厚生大臣が当つたらどうだという意見が閣内でもありまして、諸般情勢検討の上、私はそうしよう、こういう決意をしまして、別途与党のほうからもそういう要望がございまして、私そうしようと決意をしたわけでございます。そこで総理のほうへ申しまして、こういう情勢で私はこれから解決の衝に当りたいと思うが……当るつもりですということを申しまして、それについてこれこれのことを確めて置かなければならんというので話をいたした次第でございます。さよう御了承願いたいと思います。  なお條約の解釋の問題についていろいろございましたが、私は本来が外交交渉の面、條約の問題というものも私の所管の問題でもございませんし、それは承知の上で初めから手を控えておりましたが、一つのまとめ役として出て、私が政府として表明し得る最大限の表現を以て、抑留者家族かたがた誠意を以て特にその御了解を得たというのが経緯でありまして、今日国会において私が更に掘下げた問題についての答弁を申上げるだけの職責もございませんし、私、それだけの知識も持つておりません。この点につきましては、掘下げた御答弁が必要でありまするならば、どの程度に答弁できるものか存じませんが、草葉政務次官のほうから答弁願いたいと思います。
  7. 内村清次

    内村清次君 これは実際私も今のあなたの最後言葉を聞いてびつくりしたわけですが、まあ引揚者のかたがたも、又ああやつて断食をされたかたがたたも、中からだんだんと落下して行かれ、赤痢患者も数名出た。或いは又婦人のかたがたも、私、直接見たときでさえもあの状態では、一人倒れ、二人倒れ、勿論息を引取るというようなことはなかつたけれども、とにかく気候が暑くて落伍して行かれるようなかたがたを見受けたのでありますが、そういうような悲しい事態というものを抱えての代表者気持は、私たちも経験もあることでありまして、察することができるのであります。ただ代表者かたがたが、あなた自身誠意と今後の努力を認めて中止をしたというお話でございますけれども、本質的にはやはりこの條約草案の今後の挿入、即ち要求の第一点の大きなこの問題の解決というものの見通しを、政府努力を全幅的に考えて、そうして見通しがあるか、或いは又は見通し関係におきましても、そういう大体の、即ち大ずかみのことを考えて、この問題というものは一応中止になつたと、かように考えておるのでありますが、只今お話で外交問題、條約の問題というのは自分の專門外であると、こういうお話のようであつたのですが、これは代表と何か会見の第二回目か第三回目であつたかに、代表のほうから私は経緯を昨日実は聞いたわけですが、條約問題は本質であるからして、是非一つそのほうに明るい井口外務事務次官あたりを一つ呼んで頂けないか。こう言つた大臣は、いや事務次官以上に、即ち自分大臣をしておる以上は、何でそういう人たちを呼ぶ必要があるか。こういうようなことであの会見のときにおいて、代表者の非常に何と申しますか、失望し、且つ政府交渉において一頓挫した、こういうようなことも私は聞いておつたわけでありますが、そういうような事態の起つておる事態とすれば、大臣の今言われた自分が専門外であるとするならば、なぜそういうときに又専門のかたがた意見も聞かせるというようなことをされなかつたのであるか、私はどうもその点が腑に落ちないわけです。問題の本質といたしましては、私たちこの委員会の者といたしましても、やはりこの見通しの点と、今後政府がどういうふうな交渉を以てこの問題を解決して行くかということは、これは我々の使命でもありますし、又政府が明解な所信を披瀝して頂かないと、この本質というものは、決してこれは解決しないと私は思うのであります。ただ一時のそういうようなたくさんの断食者を抱えておつたところの代表者の心理状態をつかんで交渉解決したのだという自負を持つて、あなたがたが今後の努力を怠るとしたならば、私は今後の見通しもないのに努力をするというような言葉で濁したとすれば、これは大きな又問題になつて来やしないかと思うのですが、その点を私は憂慮しますからして、決して大臣に我々は何と申しましても抗議をするのだとか、或いは又やりこめるのだとか、こういうような考え方でなくして、この委員会は共に超党派的に、どうかしてこの一日も早い帰還を願いたいという問題で発しておりますところの委員会の空気でありまするからしてそういう点をお考えになりまして、大臣の即ち、井口君あたりは来なくていい、自分所管である、自分が即ち大臣であるからというお気持であつたならば、昨日の解決までには、或いは草葉政務次官意見も聞き、或いは外務省あたりの意見も聞いての、総括的な見通しの問題を考えての御態度であつたろうと思うからして、殊に今日聞いておるわけですが、その点の御連絡はなかつたのでありますか、どうですか。
  8. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 誤解があるようでございますから、私重ねて私の所信を述べたいと思います。私も今日もなお、現在もなお先ほど私が申しましたように、今後の日本の推移についてこれはお互いに公表しにくい問題もあり、いろいろな問題もあり、本当に皆が一体になつて肚を合せてやらないと、なかなかむつかしい問題があるというつもりで、私も答弁を申上げ、又御支援御鞭撻を願いたいと思つておる気持も、全然変つておりません。私が先ほど申上げた答弁に誤解があるようでありますから繰返して申上げますが、内村委員の御質問趣旨、私はこう承わつたのであります。つまりポツダム宣言第九條の捕虜送還関係については、英米に法的共同責任があるという、解決が必ずできるという方向の見通しがあるという御趣旨お話が一点、それからダレス氏がそれを呑んでれる見込みがはつきりしておるか。こういうふうなお尋ねでありましたから、私先ほどのお話を申上げたわけです。つまり私がこの解決政府代表して留守家族団体かたがたと会いましたからの結論は、要するに今日の段階について私及び草葉政務次官は公式に発表し得る限り、あたう限りの発表をいたしました。それからなお私率直に言つて今日そうあらわに何もかも御追究願わないことを希望するのでありますが、あらゆる方途で了解を仰ぐべく私のほうも努力をいたしましたし、及び留守家族団体のほうでもまあ、あらゆる方途を以てこれをめぐるいろんな諸般事情を知るべく努力されました。で、その結果私が代表いたしまして政府としては今日までもいろんな努力をして来たし、今後においても抑留者家族かたがた要望の線に最も副うような解決をするために最善努力をしつつあるし、今後も続けるという決意について相互に疑いない了解に達したわけです。今日もなお、お尋ねがございますれば、あたう限り御要望の筋に副うべく努力をなおいろいろな面で続けつつあり、今後も続けるつもりであるということを私は繰返して申します。その点につきましては、それが外部に対して政府代表して申すべき私の重大な職責でありまして、私も閣内にあつてそれを実現すべく今後も努力をいたします。ただ先ほどの内村さんの御意見のように、若し、その努力がどの程度に成功するか、完全に成功するのか或いはどの程度であるのか、相手が認めるのか認めないのか。一部認めて、まあ五十一ヵ国が全部認めて来るのか、或いはダレス氏がどの程度に、どうする見通しであるかというような点につきましては、要するに今後できるだけ実現するように我我努力いたしてみまするが、その努力の奏功の見通し等のお尋ねにつきましては、これはどうか一つ私どもが決意をして努力をするという誠意を披瀝し、今後もやりつつあるわけですから、その努力の奏功の見通しなり手段なりという今後の問題については、外務当局のほうにお尋ねを願わなきやならんということを申上げたわけです。
  9. 千田正

    委員長千田正君) ほかに御質疑はございませんか。それでは委員長から橋本厚生大臣に二つの点をお伺いしたいのであります。一つは、この前の前の委員会を開きまして厚生大臣の御出席要望したのでありますが、その節厚生大臣からの御回答だというので、政府委員室からの回答によりますというと、遺家族の問題であれば出て説明するが、今日はほかの所用があるから出られない。こう言つて出かけられたという回答であります。これは甚だ我我委員会としましては、厚生大臣が遺家族に限つてだけそういう問題を考えておられるというふうには我々も考えておりません。或いは連絡に当つた政府委員室の事務官の聞き洩らしかも知れないと思つてこの一点を質して置きたい。自由党内において、殊に政調会等の重責を担つておられた橋本厚生大臣が、まさか国会法を御存知ないわけじやないのであつて委員会が開かれて委員長からの要請があつた場合には当然所管事項についての御説明を願えるわけであるということは御承知のことであろうと私は考えておりますので、その点は今後もいろいろ橋本厚生大臣所管の厚生省との間の問題につきまして我々としましても国民要望なり、又政府に後協力を申上げるというような、この委員会の建前からしばしば厚生大臣に御出席を促さなければならない。そういう場合におきまして特定のことに限つてのみということになるというと、甚だ私は厚生大臣言葉とするならば誠にその点は遺憾に存じますので、この点を一点質して置きたい。  もう一点は先般外務省から発表になりましたところの、いわゆる数の問題のうち、二十三萬四千名というのはすでに死亡しておるという通知があります。これが将来重大な問題でありまするが、二十三萬四千名が死亡しておるとするならば、もうすでに亡骸になつてつたこの人たちのいわゆる今までは留守家族であつた人たち、これからは遺家族になる人たちに対するところのいわゆる厚生省としての今後の援護措置をどうとられるか。従来の遺族と称せられるかたがたに更にプラスして、二十三万四千名の遺族が又プラスされる。こうなるというと、当然従来の財政措置の面から言いましても、いわゆる留守家族に対する従来の未帰還者給与法或いは特別未帰還者給与法というような法律は適用できなくなつて来る。然らば遺族に対するところのいわゆる対策を以てやるとするならば、現在のところにおいては遺族に対しては御承知通り遺骨引取料と埋葬料の僅か五千二百円しか上げておらない。これでは遺族の人たちがやつて行けないだろうと思うし、当然この問題についても勿論厚生省としてもいわゆる政府としても十分対策の方針を整えられておると思いますが、今留守家族の悲歎にくれておられるのは、この遺族になつた場合の今後の問題、これが早急にどういうふうに政府によつて処置をとつてもらえるかいうことも一つの重大な問題として、今後残された問題でありまするが、この点につきましては所管大臣としての橋本厚生大臣は十分に御自信があると思います。ただ我々の心配するのは、次の補正予算の国会において、そういう面も大巾に取上げて実施できるかどうか。こういう早急の場合の一体処置をどういうふうにお考えになつておられるか。この二点の問題につきまして、一は当委員会に対する厚生大臣所信と、一は国内のこの度の発表によるところの二十三万四千の遺族に対する今後の処置に対する御所信と、この二点についてお尋ねいたしたいと思います。
  10. 内村清次

    内村清次君 ちよつと済みませんが簡単に……、只今委員長から二十三万四千のすでに発表にになりました、この死亡者の援護対策に関しましての質問がなされております。私もそれと関連いたしまして、去る七月の三十一日の新聞に出ておりまする、遺家族、傷痍者の援護という見出しで出ておりまする厚生省の法案の現在立案中の内容、この内容に対しまして大臣は今回の改造によつて新任されました、その新任の御挨拶の中にも、遺家族及び傷痍者の今後の対策に対しましての所信を発表せられておるようであります。私たちはどの程度にこの問題、而もこの委員会といたしましては、最近におきましてもこの問題には重点を入れて早急に実現をしたいというために、先国会あたりでは法律を作つて、そうして衆議院に回したいというような経緯もあるようなわけで、各院ともに、熱心な国民要望に応えるべく努力いたしておる委員会状況でもありますので、すでに大臣が、新任に当つて立場において一つこの問題にどの程度の熱意があるということを私たちは聞かんと今まで待ちかまえておつたときでもありますからして、この新聞発表がこれが眞実であるか否や、同時に又どういう熱意を持つておられるか、この点も併せて一つ御発表して頂きたいと思います。
  11. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 委員長の御注意誠に恐縮であります。手違いがあつたようでありまして、私実は先般来私の就任早々で、二つの地位を兼ねておりますものですから、いろいろ忙しくやつて参りました。実は先般この委員会が開かれておるという話を聞きまして、何かポツダム宣言の項目であるとか、二十六條といつたような純條約上のことについて御質問があり、その私の所管しておりまする方面については格別御質問がないんだけれども、まあ関連者として出ておれというようなお話のように私実は伺つたのであります。勿論そういう場合においても何かの控えとして出るべきであるのでありましようけれども、極めて純粋な條約問題でありまするとなると、私経緯も実は存じておりませんし、十分には……、御答弁を申上げる責任の地位にないものですから、そういうことであるならば私は草葉政務次官が出ておられるというので、草葉政務次官以上に御答弁申上げる能力がないというわけで、出ても役に立たんのではないかと吾つたら、もう一度調べて見ますというようなことで、やはり議題にそれ以上に出ないから、そういう趣旨ならば出てもしようがなかろうというふうな話があつたのでありますが、私待機しておつた次第であります。それは只今委員長から伺うと、私の所管の面についても、これは勿論遺家族だけでございませんので、引揚げ援護関係の問題等いろいろな仕事がございまするが、それについてのお尋ねの御趣旨がございましたならば、これは誠に申訳けございませんでした。今後十分連絡をよくするようにいたしたいと思います。  それから抑留者の人々の死歿の数字、生死不明の数字のことでありますが、これに関しましては、厚生省といたしましてもいろいろな資料を集める上での手配の仕事はずつとやつてつたようであります。外務省で今回発表されたのであります。私も就任早々でありましたが、心配をいたしまして、何かこれは今まで生きておると考えられた人が死んだことになつている、そのことをどうするかということで調べましたところが、これは総体の数字として公表されたのが、今回まあ初めてである。今日までの間死亡確認の人々に対しましては、ずつと通知を公報で出しております。最近の手続上の問題で、極く僅かまだ公報が出ておらないのがあるという状態だそうでありまして、今回公報で通知された死歿者、その残りはこの間公表された数字のように相成つておるようであります。従つて委員長が今御心配になりましたような部分の問題、つまり未復員者給与がなくなつて、而も何にも手当がないという状態にはならないようであります。残つておられる未帰還者の留守家族につきましては、只今のところ未復員者給与法、特別未復員者給与法の運用によつてつて参りたいと思います。なお委員長からのお話がありましたし、又内村委員からもお尋ねがございましたが、私傷痍軍人や遺族の援護については、吉田総理大臣も又前任者の黒川厚生大臣からも言明いたしました通り、これは我々が極めて強い熱意を以て将来成るべく早く御面倒を見たいと思つておる問題でございます。先般新聞に記事が出ておつたようでありますが、これは或いは事務当局の一部で研究しておる部分はあると思いまするが、それがどうこうというような運びではございません。もつとこの問題につきましては、愼重にいろいろ考えて参らなければならないことでありまして、将来できるだけ早い機会に傷痍軍人遺族援護の徹底を期したいと考えておる次第でございます。勿論この傷痍軍人や遺族の援護という問題は、我々は同胞愛の見地からして、本当に捨ておけない問題なので、熱意を以て検討いたして参りたいと考えております。
  12. 千田正

    委員長千田正君) 重ねてお伺いしますが、そうしますというと二十三万四千の大部分の死亡者に対しては、死亡通知を出して確認してあるのだから、すでに承知しておるということで、この点に対する財政処置に対してはそう大した問題ではないというように伺つたのでありまするが、そうしまするというと今まで厚生省がいわゆる援護関係の予算として政府において承認しましたことも、或いは国会において承認いたしましたところの未帰還同胞が二十数万あるという見込みによつて立てたところの予算というものはミステイクであつた。間違いであつたということを承知してよろしうございますか。
  13. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 詳しい問題について、私十分の知識を持つておりませんので、事務当局から答弁をいたします。
  14. 田辺繁雄

    説明員(田辺繁雄君) 昭和二十六年度の引揚関係予算を編成いたしまする場合のその引揚人員の算定について申上げます。一応政府の未帰還者数は三十七万と見積つてございまするが、その中で何人が生きて帰つて来て何人が死んでいるかということにつきましては、その当時においてはつきりつかむことができなかつたのであります。そこで一応大体十五万と見当をつけまして、二十六年度の予算を組んであります。勿論その当時におきましては、今回発表になりました二十三万何がしという、正確な数字については当局といたしましてもまだ承知できないことでありまして、それで一応十五万、これは根拠は別にございませんが、大体十五万という見当で計上いたした次第であります。
  15. 千田正

    委員長千田正君) これは大臣でもよろしいし、田辺援護局長でもよろしいが、そうすると今後この予算としては、現段階の法律のままであつたならば、あと残つておるところの七万如何ほどの生存者と、二万幾らという行方不明者、この約十万に対するだけの予算措置をするというつもりでおられますか。
  16. 田辺繁雄

    説明員(田辺繁雄君) 大体その方針であります。
  17. 安井謙

    ○安井謙君 私一言、今度の問題は、ありていに申しまして、どうもあの大会よりもそのあとの政府とのやりとりにおいて、大会幹部が、非常に政府に冷淡に扱われたと言いますか、不親切に扱われた、こういつた感じが発端になつたように思つておるのでありますが、幸いにしまして厚生大臣初め、外務省政務次官或いは引揚委員長努力で格別の不詳事がなくて済みましたことは非常に結構と思います。今後にいろいろ問題もあるかと思いますが、折角政府の御努力を要請する次第であります。  それから一点だけお伺いしたのは、ポツダム宣言というやつが今度講和條約ができますとどういう法的な取扱になりますか。若し政府のほうで御見解でもありましたらちよつとお話願いたいと思います。
  18. 草葉隆圓

    説明員(草葉隆圓君) これは実は昨日でございましたか御質問がございまして、政府見解お答え申上げておいたのであります。でこの全協の方からの質問書の一項になつておる、従つてそれを文書で御回答申したことを更にここでお答えを申上げておきます。ポツダム宣言は、今後、平和條約に加入をした国の問題、それから加入をしない国との場合というようなことが今後取扱の問題の中心になつて来ると思う。加入をした国は、これは当然平和條約に肩替りをして来るだろうというような意味のことであります。加入をしない国は今後日本としては残るものと思われるという意味のことを昨日お答え申上げたのであります。
  19. 安井謙

    ○安井謙君 そうしますと、加入しないとは飽くまでポツダム宣言が有数国であるという解釋でありますか。
  20. 草葉隆圓

    説明員(草葉隆圓君) 大体そういうふうな見当でございます。
  21. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 厚生大臣の橋本君の内村委員に対する御答弁、それから委員長に対する答弁については、丁度総理大臣吉田君のワン・マン、そのお弟子、そういう態度でやつておられることは誠に遺憾であります。第一にこの引揚白書に盛られた数字ですね、こういうものなんかは外国へ出すのが先で、こうして特別委員会で一生懸命にやつている、委員会を全く無視している。外国に出すなら、国連に出すなら、それと同時にこの委員会に連絡されて承知していなくちやならん。委員長も述べておつたように、毎日出ておるのに何の連絡もない。仕事もないということである。委員会なんかというものを無視した態度である。参議院の委員会も無視されているが、国会が第一ワン・マンに無視されているのは周知の通りなんです。先ほどの内村君の質問ですね、大体総理大臣の承諾を得て実際約束の下にやられたのか。確約の下に引揚代表者と話されたのかどうか。この点について、或いは今後の交渉について成功の望みがどの程度にあると思われるかどうか。その他の点について一切これをおつかぶせている。内村君は満足したらしく引下つておられるから私は更に追及いたしませんけれども、(内村清次君「引下つてはおらんよ」と述ぶ、笑声)それから委員長質問に対しても、委員長出席を求める場合の規則がある。出席される義務の規則がある。それについての答弁もここでうやむやに答えておられる。それは委員長はそれほど追及なさらんからよろしいが、ワン・マンが、ここに又一人ワン・マンが現れたということである。国会を無視し委員会を無視する、この政治は何とする。私はこれらの点についてもう述べません。先ほど橋本君が、国際條約を無視したのはソ連である、引揚を遲らしたのはソ連である、人道違反者である、こういうことを言つておられる。私はこれを黙つてここに放置するわけに行きません。道理の眞実はどこにあるかをはつきりさせなければ承知しません。それは草葉君もこの間の会議で述べておつたが、草葉君の私との討論がまだ終結しておらん。そこに又一人ワン・マンが現われて来て同じ主張をなさろうとする、二人の、当局に対して事実は何であるかをはつきりしないと、私は委員としての責任が果たされんことになる。それでお伺いしますが、如何なる根拠があつてそういうことを述べられるのかということでありまして、私は一言にして言うならば、全く根拠のないあやふやなものを以て国際信義を無視した発言をなさる、こう私は断言します。なぜか、少し具体的に申しましよう。死亡者だとか未帰還者とか行方不明とか、生存者とか、とにかくこのいろいろ述べておられますけれども、根本になる基礎数字というものは一体何であるか、あなたは御存じでしようか。この昭和二十二年の発表によりますと、海軍省では未帰還者七百七万六千百七十四人、厚生省では六百三十七万四千九百八十一人というふうになつて、この二つの数字を見ますと、七十万近くの食違いを来たしている。今日は更に他の数字を以て根拠にしておられる六百六十一万五千八十三人、こういう数字であります。一体こういう数字はどうしてでき上つたものであるかということであります。これからすべて出て来ている。これを土台としていろいろ今日の発表のような数字が出たわけであります。如何なる根拠のあるあなたがたの数字であるかということの、私のあなたがたに対する質問である。この、第一に、経済安定本部の太平洋戦争被害報告というのが載つておりますが、一九四九年四月、それには陸海軍人軍属の被害は当時も調査の実際上の困難から資料は十分整理されておらず、一応作成された基礎統計を終戦の混乱で多く失つたと述べております。それから一九四七年に、連合軍の最高司令部はこう言つている。日本軍隊復員の最終結果なる文書において、対日戦勝利当時の満洲における兵力実数を判定することは極めて困難で、正確を期し難いと言い、更に正確な数字を出すことは決してできないだろうということを言つておるのであります。この終戦当時、殊に現地において、責任者、将官、その他外交官、皆逃げちやつて、あとは野となれ山となれと、こういうような状態であつたのであります。でありますから、そうして、又関係書類がなくなつておるという現状において、どうして基本数字が出て来たかということであります。それから確信のないことはこういう点にあるわけです。一九四六年九月政府引揚予定邦人といものを約六百万人と発表しておる。それから一月もたたない十月には、六百六十万数千人と訂正しておる。更に一九四八年九月には、六百六十一万千八人と発表しておる。一九四九年五月には、六百六十一万五千八十三人と四千も殖やしておる。こういうふうになつて数字がだんだんと変つて来ておるのであります。それは基本数というものがはつきりしない土台に立つておるものだから、いろいろと変つて来るのも無理はないのです。そこで今日発表なさつた三十四万五百八十五人、これが生存者、死亡者、行方不明、その他を合した数字でありますが、政府はこれをどうして調べられたか。書類は政府の発表によると、留守家族からの届出だとか、抑留者の現地通信だとか、帰還者の情報だとか、昨年十月の国勢調査などによつてできたものであると言つておる。併しながら我々はずつと引揚問題について関係して来たときから見ますというと、この政府が調べておる、調べておるというが一体どういうことをやつておるかということについての疑問が非常に多かつた。そういう又疑問を裏付するような事実が現われて来たわけでありま了。例えば一、二を申しましよう。ソ連残留者数は今後とも四十万を正式に再確認し、対内的にも対外的にもこれ一本で押し通せという、これは一九四九年六月、当時の秘密通牒が出ておるのであります。それは群馬県でこれが……
  22. 千田正

    委員長千田正君) 細川委員に伺いますが、それは外務省側の政府責任者質問するのですか、それとも厚生大臣ですか。
  23. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 両方です。さつきからの話は両方にかかつているのです。そういう秘密通牒が出ております。それから引揚者は幾ら、未帰還者数は幾ら、この問題について民主主義擁護同盟だとか、その他の文化団体でみずから各地域で調べようとしますとこの調べようとしたいろいろの全国に亘つてのこの動きは、皆とめられまして、抑えられました、官憲が抑えておる。何がために抑えたか。真実をはつきりさせるために調べることがなぜ悪いか、これを抑えておる。こういうことが頻々として行われます。こういうような次第で、こういうことが具体的に実際の状態はつきりさせることについて、政府は消極的態度をなぜとつたのか、こういうことがずつと積み重つて来ております。そうしてそれが今日三十四万と発表になつておるのである。政府は前に申したように、こういう手続をやつて調べたと言われても、従来の行懸りからしますと、これは本当にそうなのかということは疑いを持たずにはいられなくなつて来ている。現に主要な各種新聞がこれを指摘しております。
  24. 千田正

    委員長千田正君) 今橋本厚生大臣はあと細川委員お答えして、今急用ができて帰られるそうでありますから、重点的に一つ……。
  25. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 重点的にやつておるのです。併し事柄は重大です。あなたも相当なことを政府当局者として言いなさつたのだから、はつきりした答弁を、具体的な私がこれから更に述べることについて答弁して頂きたい。簡単に申します。もうそうかかりません。事柄が明瞭だから……。更に政府が発表しておる数子というものは、誠に情ない根拠しか持たないということの例に入りましよう。引揚対象基本数字ではシベリアの分だけで七十万人おる、こういうことになつておるのであります。七十万人シベリアだけで……。元関東軍が一九四一年六月、独ソ開戦直後、関東軍特別演習という名目で増強した兵力は、十四個師団、七十万人となつております。関東軍の特別演習のために召集したやつと、ソ連にそつくりいる数字とは、七十万人というでその後満洲におつた軍人軍属が南方移動をやつておる、こういうことが少しも勘定に入つていないと見なければならん。例えば一九四五年七月十六日、満洲から南方に向つて出発して朝鮮沖合で魚雷の攻撃で八千名が全滅した、それがやはりソヴイエト未帰還者にされておるわけであります。更に一九三四年八月、関東軍わ号演習で孫呉第一師団がレイテへ行つておる。トウ安第二十二師団はバンコツクヘ行つておる。トウ安第二十四師団は沖縄へ行つておる。チヤムスの第十師団はルソンへ行つておる。そのうちトウ安第八十八部隊約一万人は沖繩沖で魚雷攻撃を受け全滅した。これも当局のお言葉に従つて遺族の人たちは皆ソ連におるというようにされておる数であります。こういうような事実を見ますと、およそシベリヤ又はソ連領下、或いは又今までよく使われたソ連軍占領地域というものに残つてつたという数字が何ものであるか、誠に当てにならんものであるということははつきりするわけであります。それから在外同胞というか、広い意味でのそれらの人が何人、誰がどこで死んだかということについては、死亡の点においてはつきりしないものかできて来ております。終戦当時の死亡公報取扱数は二十三万であつた。それからその年の九月五日には五十万八千七百五十一人となつておる。その翌年、一九四六年の六月の発表では百十七万千百五十六となつておる。それから一九四九年四月六日では百五十五万五千となつております。こういうようにしてあとからわかつたから殖えるのでありましようが、数字というものは実際に当れば当るだけ食違いが起きて来ておる。変化して来ておる。ですから幾らの人がおつて幾ら死んで、幾ら行方不明になつて幾ら生きておる、そういうことがぴたつとわかるようなものであれば問題はないわけです。初めから基本数字のできるような條件がなくて、その下でいろいろとできておるわけであります。そうして大事なことを、今申した関東軍が満洲から出て行つたとか何とかという大きな問題なんかというものは全く考慮されていないということになります。
  26. 千田正

    委員長千田正君) どうですか、その辺で一遍……。
  27. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 私は数字のことについては、やはりはつきりしておかなければいかんと思います。
  28. 千田正

    委員長千田正君) 時間がないと言われて来ておりますから。
  29. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 なければ又明日やりましようか。
  30. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) その辺で答弁さしてくれませんか。
  31. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 いい加減な答弁をされては困ります。まだ残つています。
  32. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 物は相談ですが、ちよつとやはりいろいろ関係で、私も問題がまだあとを引いている問題もあるので、できるだけ抑留者家族かたがたにもなおなおサービスしなくちやならんので、その辺で答弁をさして下さいませんか。
  33. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 ではあと二十分。
  34. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 二十分はいいですから、私の答弁をやらして下さいませんか。
  35. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 二十分待つてそれから答弁して下さい。
  36. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 五分くらいに願えませんか。
  37. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 そんなことを言つているうちに時間が経つて来ますがね、二十分は駄目ですか。
  38. 千田正

    委員長千田正君) 十分ほどでどうでしよう。
  39. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 それでは十分ぐらいでやりましよう。大筋のところからいえばまだあるのですが、外務省から発表なさつた白書、これについて二、三の点を……。
  40. 千田正

    委員長千田正君) 外務省のは、外務省の次官が来られておりますので、厚生大臣は急ぐから厚生大臣に対する質問をして下さい。
  41. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 これを厚生大臣に言わんと、ああいうようなとんでもない日本の国際信用に関することがありますから、誤つた考えを述べるというような点にもあるのであります。
  42. 千田正

    委員長千田正君) それでは十分で一つつて下さい。
  43. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 二つの文書があるのだが、この白書では一九四九年五月二十日、及び一九五〇年四月二十二日のタス発表によれば、七万八百八十名の日本将兵が一九四五年直接戦闘地域で釋放されたという点を挙げ、日本政府は、その白書はこれに対して裏書するものはないということを述べております。大体裏書するものがないという政府は、政府のその時の責任者というものは皆逃げているのだから、兵隊はそつちのほうに放たらかしておつて日本人は外交官であろうと、軍人であろと逃げた。そういう様でおつてこういうことは言えるものでありましようか。現地で釋放されたということは、たしかこの委員会でも北條秀一君がそういうことはあつたように述べていると思つております。現地におつた者はこの点は見ている者もあるわけであります。裏書がないということではこれは何にもならない。こういうことまでも取上げて自分のことを棚に上げて、そうして事実を、一方が、ソ連政府が挙げている事実を否認している。これはどういうこでありますか。それから一九四五年五月十二日のプラウダで、日本軍戦死者が八万名以上と発表しているという点をこの白書は挙げて、こういつている。戦闘が極めて短期且つ限られた範囲でのみ行われたことを考えると、この数字は余り大き過ぎる、こういう断定が下されているのであります。それで日本政府の確認した戦死者というものは二万七千名であるということを主張して、ソ連政府の主張との間には五万三千名の差があると、こういうことを述べておるのでありますがこれは如何なる根拠によつてなされたものであるか。関東軍戦死者についての一つの証拠があります。旧関東軍参謀松村少将、瀬島中佐が降服軍使として、赤軍の第百軍司令官マリノフスキー氏と会つたときの報告では、戦死者は八万七千人おると推定する旨を述べております、こういう事柄についても、政府はどういう……、これを知つておるのか知らないのか、知つてつてこれを否認しておるのか。それからムーリン陣地第五軍、(「議事進行、ちよつと」と呼ぶ者あり)それから百二十四師団のうち歩兵部隊、それから特別独立砲兵隊は殆んど全滅しておる。それから又すでに当委員会でも明らかになつたことであるが、この軍司令官が、日本の軍司令官が兵隊をみずから殺しておる。或いはその間には又玉砕と称してお互いに果仕合いをやつて、集団自爆した者もあります。それから又匪賊となつて脅迫団その他に逃げ込んだ者もある。こういうような状態でありますので、この戦死者が少いとか多いとかいう根拠は、どこからこういうことを断言されるようになつておるのか。
  44. 千田正

    委員長千田正君) 大体いいじやないですか。
  45. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 これは又あとで附加えることにして……、それから次にこの英米との戦争のときですね、あそこで幾らの者がおつて、幾らの者が死んで、幾らの者が傷付いたか、全くこれははつきりしていない。これも何百万人の者が行つて、それがどうなつて来たか、これについてはいろいろと新聞にも出たりしておりますが、こういうようなわけで、在外残留者生死、それから行方不明その他の数字というものは、誠にこれはつつけばつつくほど、誠に頼りないものが出て来ておるのであるから、そういう根拠に立つて先ほどのようなことを主張される。いま一つ私例を挙げて……これなんかお読みになつたらいいと思いますが、外交白書に私は急ぎますから、飛んで、(「時間は過ぎた」と呼ぶ者あり)このソ連における日本人捕虜の待遇というものは、これはでたらめです。これは先日も申しましたが、私もこの特別委員会関係しておつて、証人を呼んでいろいろとやつたところによりますと、又速記録を御覧になれば、ちやんとどうしても争われんものが出て来ておる。というのは、こういう点も先だつてとは違つたものが出て来ておるのである。こういう考え方で押付けて行こう行こうとしても、どうしても押付け得られないものが出て来ておる。当委員会においては落選されたかたがたや何か、(笑声)今盛んにこれをあなたがたがこう述べられるような、こういう反動的なこれの立場で押付けよう押付けようとした者がたくさんある。のにもかかわらず、速記録は正直である。私は一言申しますが、殊に橋本君なんか読んでなかろうと思うが、哲学者ですね、捕虜になつてシベリアのカラカンダに行つておりました菅末治という若い人がおります。これが証人に呼ばれて来て、そうして盛んに反動的な、そうして含みのある質問で抑えられられ自分がそういうことではないと答えようようとしたが、結局こういうことに耐え切れなくて自殺した。それほどにものは曲げられておるのです。いま……(「委員長議事進行」「議事進行委員長」と呼ぶ者あり)曉部隊、吉村隊長は七年の刑を受けております。そういうような事実が出ておる。
  46. 千田正

    委員長千田正君) 細川委員、もうこの程度にしてあとで質問して下さい。又残つたら次の機会がありますから……。(時間が過ぎております。」と呼ぶ者あり)
  47. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 それから舞鶴から東京に着いたこれを調べたが、その様子なんか新聞に出ていないのだ。併しこの公報の中には、速記録の中には出ておる場面かありますから見て下さい……。(「委員長、打切つて打切つて」と呼ぶ者あり)日本の警察がやりましたようなことを……(「これは意見だ」と呼ぶ者あり)これは事実です。
  48. 千田正

    委員長千田正君) 質問はこの程度にして……
  49. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 こういう扱いを受けて調べ上げられております。内容はひどいものですよ。あなたもお急ぎだろうから私はこれでやめます。(笑声)……これがソ連での細菌戦術をやつてつた日本軍の部隊のこれを調べてこれを翻訳された、(「答弁々々」と呼ぶ者あり)この中を見ると全然反対の……(「いい加減にしておきなさいよ、時間がもう……」と呼ぶ者あり)
  50. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) お答え申上げます。細川委員から数々の御質問のありましたことをよく承わりまして、この先般発表の問題につきましては外務省のほうに総括的な御答弁を願いたいと思つております。数字の問題については或いはいろいろの御意見がおありだろうと思います。何分ソヴエィト・ロシアは鉄のカーテンに閉ざされておりまして、経済社会理事会等におきましても、ソ連のいろいろ問題について内情を調査させてもらいたいといつたような要望があつたときにも大体お断りのようでありましたし、ソヴエイト・ロシアが今日のほかのアメリカイギリス日本と比べまして、いろいろ国内事情について御報告を頂戴したり、又調べさせて頂いたりするのもむずかしい、非常にむずかしいのは細川さん御承知通りで、今日発表されました数字に関しましては、この鉄のカーテンに非常に大きな権力を以て閉ざされておる国の中のことではあるけれども、いやしくも我々の同胞で帰らない人があり、向うから抑留されておるといつて手紙を寄越しておる人もある。そういう事実の下において、これは調べないでいられないという意味におきまして、能う限りの根拠を以て調べ上げたものであります。厚生省におきましてもその部分を受持つて調べたものもございます。まああの数字自身の中にも生死不明と断つております者が残念ながら何万にも及んでおります通り、不明の部分がある。不明とちやんと断つてあるものがある。そこで死亡というふうな数字は公報に挙げられたものの集録でありまするが、これは能う限りの資料において正確を期したものでありますという総括的な問題を申上げたいと思います。なお具体的にはいろいろな問題があるかも知れませんが、細かい御答弁に関しましてはこの在外日本人の問題、捕虜の問題という点は外務省において統轄しておりますので、この上の答弁は草葉外務政務次官のほうからやつてもらつて、私は、括的にそれだけ御答弁申上げておきます。
  51. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 私はこの答弁には満足いたしません。
  52. 千田正

    委員長千田正君) 又厚生大臣にお願いしたいのでありますが、私から申上げておきますが、今日はいろいろ有難うございます。これからの当委員会といたしましては、殊に厚生関係は密接に関接がありますので、万難を排して我々が要望したときには御出席を願いたいと思います。
  53. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) どうぞよろしくお願いいたします。
  54. 千田正

    委員長千田正君) 細川委員の問題は、厚生大臣に対しては又次の機会に改めてお願いすることにいたします。
  55. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 時間は何時までおやりになる御予定ですか。
  56. 千田正

    委員長千田正君) 大体皆さんが御納得が行けば五時で切上げたいと思いますが、如何でございますか。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  57. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 これは草葉委員との私の対決になるのだが、これは相当時間がかかります。殊に今の厚生大臣の述べたところは、誠にこれは大膽不敵な事柄であつて、もう一度厚生大臣の列席の上にやらなければならん。私は何も論を好むのではなく、これは日本講和、今後の、将来に対して大問題が含まれておるから、実際我々が続けてやつて来た問題の重大な点に達しておりますから、これはまとめて明日なりあなたの裁定で都合のいいところでやらして頂きたいと思います。
  58. 千田正

    委員長千田正君) 細川委員にお願いしたいのですが、私どもはさつきから細川委員の御質問を聞いておつて、大分いろいろな数字があつて我々も非常に参考にすることがあると思うのです。でき得ますればあの細川委員の申される数字と、それから政府の食違いの点ですね、そういう点もできれば共産党のほうでがり版のようなものに刷つてでもいいのですから、我々委員にも配付して頂いて、一応御質問の内容について再検討さしてもらいたいと思いますが……。
  59. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 それは出しますよ。
  60. 千田正

    委員長千田正君) それでは御質問がなければ、実は今日は今枝法制部長からポツダム條項に対する問題の解釈について伺うつもりでおつたのでございますが、時間もありませんので、次の機会にしたほうがいいと思いますが、如何いたしましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 千田正

    委員長千田正君) それでは次の機会に更に又厚生大臣外務省からの関係者を呼んで、一応今までのいきさつから、なお且つこのポツダム條項に関する法制的な立場における参考的な御意見も法制当局から聞きたいと思いますので、極く最近にこの機会を持ちたいと思います。  本日はこれを以て散会いたします。    午後四時四十四分散会  出席者は左の通り。    委員長     千田  正君    理事            紅露 みつ君    委員            安井  謙君            内村 清次君            曾根  益君            飯島連次郎君            杉山 昌作君            鈴木 直人君            細川 嘉六君   国務大臣    厚 生 大 臣 橋本 龍伍君   説明員    外務政務次官  草葉 隆圓君    引揚援護援護    局長      田辺 繁雄君