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1951-08-02 第10回国会 参議院 在外同胞引揚問題に関する特別委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年八月二日(木曜日)    午前十時五十八分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○在外同胞引揚問題に関する調査の件  (在外資産に関する件)  (留守家族に関する件)   —————————————
  2. 千田正

    委員長千田正君) 只今より委員会を開きます。  本日の議題となります問題は、引揚問題に関する問題のうち、特に留守家族に対応する問題と、もう一つ在外公館借入金の問題は目下大蔵省において慎重に審議中でありますが、引続いて講和会議を前にいたしまして、在外資産の問題が非常な大きな問題として出て参つておるのであります。この点において一応大蔵省におけるところの所信を聞いておいて、今後の皆様の御審議参考にして頂きたいと思つております。今日は上田外債課長も見えておりますから、一応大蔵省としての見解を一通りお聞きしたいと思います。なお留守家族に対する問題といたしましては、只今絶食運動をやつておりますが、すでに本日で八日目でありまして、昨夕も私が当委員会代表して見舞いに行つて参りましたが、非常に衰弱し始めて来ております。精神的には非常に意気軒昂たるものがありますけれども、仮にこれが中止したとしましても、おのおのの県に帰るまでに相当の回復期間を要するものと見なければならんと思います。又或いは帰られても余病が併発するようなことが必ずしもないとは言えないよう状況に立ち至つております。この点は一応政府としても留守家族に対して何らかの所信を明らかにすべきである、かように考えますので、当委員会が七月三十日に皆様の御決議によりまして、総理大臣宛にお手許に配付しましたよう決議文を手交してありますが、まだ答えを得ておりません。が、所管大臣としての吉田外務大臣並びに橋本厚生大臣出席を本日促しておりますが、いずれはつきり出席の有無についてはわかると思いますが、その間誠に恐縮ではございますが、前後するかと思いますけれども、大蔵省外債課長から在外資産に対する大蔵省見解を一応お聞き願いまして、講和会議条文にこの問題がどうなつてくるか、その決定したあとにおいて国内対策として在外資産に対してはどういう方針を以て行くか、という点についてお聞き取り願いたいと思います。
  3. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 在外財産の問題につきまして、現在の取扱状況と申しますか、そういうものを申上げて御参考に供したいと思います。これは先日の委員会でも簡単に御説明申上げたところでございますが、在外財産の問題が今回の条約草案に出ておりますのは、第五章の第十四条にございます。第十四条では御承知よう原則として割譲地域を含まないところの在外財産がどうなるかということにつきまして、かなり技術的な規定がございまして、その詳細な解釈につきましては事務当局としてもまだはつきりいたさないという点もございますが、大体のことを申上げますと、連合国内にある日本財産は、特殊の例外を除いては原則としてその連合国差押え留置清算、なおその他の方法による処分というものに任されるという形になつておるのでございます。従いまして、これは連合国権利でありまして、そうした差押え留置清算又は処分というようなことが必らずなされるかということになりますと、必らずしもそうとは限らないのであります。恐らく返されることはないであろうというように読めるのであります。併しこれも先刻御承知ようイタリーの場合には条約でそう書きながら他の取きめで、例えばアメリカイギリス、フランスはそれぞれイタリーの国民に対してその財産を返しておりますので、条約上こうなつておりましても、或いは例えばアメリカとかイギリスとかいう所が日本に返すかも知れない、そういうことも全然予想できないことではないのであります。  それから先日申上げるのを忘れましたが、大体在外財産のいわゆる分布と申しますか、どこに一番あつたかと申しますと、何を言いましても割譲地域とそれから中国、それが一番多いのでございます。旧満洲国を含めました中国それだけで、朝鮮台湾を含めますと、大体全体の九四%乃至九五%がこれらの地域にあるというような概数が出ております。この数字につきましては先日申上げましたように、司令部調査いたしました数字が極秘扱いされておる数字があるのでありますが、それを発表いたします自由を持ちませんから、大体の割合を申上げますとそういうようなことになつております。それで連合国でこの条約に参加する国がこの十四条を適用して、財産の返還或いは向うでの没収ということを考えましたといたしましても、多くの在外財産についてはまだ未解決のままに残る、少くともその最終的な処分は未解決のままに残るというようなことが今後条約でできるのではなかろうか、さように心得ております。勿論中国につきましては、留置清算する、或いは処分する十四条の権利が特に認められておりますので、ただ誰がどうするかという主体が日本に対してはつきりしないだけで、他の連合国同様な扱いを受けますので、旧満洲国を含めました中国地区については、朝鮮台湾といつた将来の日本との交渉に任されております地区よりも連合国にある関係性質が似て来るということになると思うのであります。もう一つ申上げておきますのは、中立国にある財産でありますが、これも数量につきましては一応の調査はございますが、正確なものではございません。これもかなりの金額がございますが、これにつきましてはやはり特殊の規定がありまして、日本政府から国際赤十字に引渡すというような十六条の規定がございます。この十四条の規定と十六条の規定との関係では法律解釈から見まして、私は専門外に属しますが、その取扱をどうするかにつきまして、十六条という条文は従来の例にない条文でございます。これをどういうふうに扱うかということにつきまして、恐らく外務省当局としていろいろ御意見があるか思いますが、純技術的に申しますと、日本側といたしまして他の連合国にある財産中立国にある財産処置を同じ方法を使うのか、或いは特に国内法的に別個の方法を取らなければならんのかということは只今慎重に研究しております。まだ結論段階に達しておりません。御承知ようイタリー条約では在外財産を取られました場合に補償するということが一応条約上の義務になつておりますが、この草案にはそのことが規定されてないように私は読んでおります。そういたしますと、当然この補償の問題が日本政府の国内法的な問題としてどうするかという問題が起つて来るかと思いますが、これはこの大蔵省だけではなく、政府全体としての問題と存じますので、ここでどうなるかということは差控えたいと存じますが、ただいろいろの意見につきまして、いろいろなその影響につきまして、又法律的にも政治的にも大蔵大臣が十分に考慮なすつていらつしやるということだけは申上げられると思います。省内でもいろいろ研究いたしおりまして、まだ勿論結論は出ておりません。それから先日御質問があつた件で又繰返すことになりますが、従来在外財産の問題につきまして調査いたした方向といたしまして、先日申上げましたよう三つ調査した計数が出ております。それは昭和二十年に出しました大蔵省令の九十五号というもので引揚げられた方たちから報告を頂きまして、法人個人を問わず約四十八万通の報告書が参つております。それを集計した金額でございます。それからもう一つは主として法人につきましてこちらから質問状を提出いたしまして、それの回答によつて推定した金額、これは在外財産調査会というものが大蔵省の当時の特殊財務部及びその後の管理局というものでその下に調査会というものを設けまして、それで各地区について調査して来た、そういう資料が多くございます。それでもう一つ司令部で大体この在外財産計数につきましては最も関心を持つたものでありまして、先ほど申上げました政令九十五号というものも司令部のスキヤツピンによつて出されたような次第で、その計数司令部が直接もらうというようなことで、それを基礎にいたしましてその補助的な傍証固め意味在外財産調査会調査と突き合せて、そうして司令部係官大蔵省外務省、日銀の係官とで一応検討した結果、所、要のモデイフイケーシヨンを加えましてそうして出た数字、その三つが現在あるのでございますが、この三つ数字とも大体基礎がそのように九十五号でとりました資料と、法人資料と、そういう終戦後の混乱と申しますか、いろいろなこと異常な状態のときに調べました結果と、それから又引揚げられましたかたたちにも報告を提出しておられないかたなども相当ございまして、その資料そのものが一番獲得し得る最もいい資料でありながら不完全と言わざるを得ないよう状態にございます。従いまして将来その財産に応じた補償が各個になされるというような場合に、その資料が直ちにその基礎になり得るかと申しますと、残念ながらこれでは具体的な支払いにはちよつと無理ではないか、かように思われるのであります。従いまして将来大きな方針といたしまして、こうこういうよう補償をするというような場合がございましたら、改めて調査をやり直すということが恐らく考えられるだろうということを事務当局として考えております。従いまして、従来の報告書をお出しにならなかつたかたが若し万一補償の際に取り残されるのではないかというような御懸念は全然いらない、さように心得ております。  以上で大体かい摘みまして在外財産に関する問題点というようなものを申上げた次第であります。
  4. 千田正

    委員長千田正君) 只今上田外債課長の御説明に対して御質疑がございますか。
  5. 内村清次

    内村清次君 只今説明は大体この前の委員会のときの内容と大差ないようであります。私たちは今回の条約によりまして、先ほどの条約草案の十四条及び十六条の規定内容については、これはあと井口次官からでも条約草案そのものに対する諸規定について詳しく御質問申したいのでありますが、問題の要点はこの前も私たち各県に廻りまして、引揚者の口から真剣に吐露されておりまするこの外国留置したところの個人財産というものが、それが今回の草案によつて国家が国内的にこれを責任を以て該当者に対して支払うかどうか、又若し外国財産を全部その地域連合軍のためにとられるというようなことになつたとしたならば、当然その財産というものは政府が必ず責任を以てこれを引揚者に返してもらいたい、こういうような強い要望が今なされておるのであります。この点について外務省及び大蔵省というものはどのよう方針を樹立されておるのであるかということが私の聞かんとするところであります。そこでこの前の委員会から今日までの間、当時の委員会においても強く要望しておつたことでありまするからして、政府のほうではこの問題については相当慎重に、而も又急速に態度決定せなくてはならない必要に迫られておることだと思うのですが、そのよう態度決定がなされたのであるかどうか。これが第一点です。  そうしまして二、三日前の新聞でしたか、この外財問題に対しましての政府所信が発表されたのであるが、この所信というものは勿論大臣の口からというよう責任者立場は記載してなかつたわけですけれども、要するにそのよう記事が記載されておつて、なおその記事を見てみますると、相当現在刺戟されておるところの引揚者たちが非常な急激な不安にかられておることだと思う。そこでこの記事は一体どこから提出されたか、即ちその記事の載つてつたこと自体を大蔵省知つてつたかどうか、或いは又外務省知つてつたかどうか、これが第二点です。この二点について伺いたい。
  6. 千田正

    委員長千田正君) 今の二点の質問内村委員からなされておりまするが、上田課長大蔵省のほうの立場一つ……。
  7. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 先日の委員会から大蔵省でどういうようなことをやつたかという御質疑に対してでありますが、先日も申上げましたように、この問題は極めて法律的であると同時に又政治的にも影響の大きな問題でございまして、その最高方針として先ず政府の、政府と申しますか、その提案者としての大蔵省態度をどういうふうにきめるかということにつきましては、省議などでよりよりやつておるようでございます。私の知つております限りでも大臣の所でその後一回ございました。でその際にも勿論財政状態財政現状というよう立場からの意見と、それからいわゆる憲法問題との関連というようなことからの意見、それから又公平と申しますか、道理と申しますか、そういうような点からの意見というようなものがいろいろ出ておりまして、なかなか結論に達しない。併しこの問題を急速に研究すべきであるということには皆意見一致しておりまして討議を進めている、そういうのが現状でございます。  それから第二の新聞記事の点につきましては、私残念ながら実は二、三日前というのにどういうものが載つておりましたか、実は承知してないのは大変残念でございますが、四、五日前と申しますか、一週間くらい前と申しますか、条約草案が発表されましたあと日本経済条約草案のそれぞれの条項につきまして解説をやつている、その中に、ここに持つて来ておりますのでちよつと読まして頂きます。これは七月二十日附の日本経済でございますが、その中に在外財産という所の最後のほうに、「そこでもし補償するにしても引揚者生活状況をみて一定限度まで補償するという妥協案も考えられるが、いまのところ補償は無理だとの見方が強いようだ。」そういうよう記事がございますが、まあこれなどは今おつしやいましたよう意味での影響を与えるというようなことになろうかと存じます。こういうよう記事につきましては、新聞記者のかたたちが役所へ始終来られるわけですが、それでいろいろまあフリー・トーキングをやつておる、そういうようなときにこういうよう印象を受けられたというようなことではなかろうかと思いまして、例えば誰れかが責任を以て語るとかいうようなことは全然ないはずでございます。少くとも私のところでそういうことを言つた覚えはございませんし、ただ考え方としてそういうことを新聞記者のかたが印象を受けられたといいますか、推定されたと申しますか、そういうことでの記事だと思うのですが、極く最近のものに、どういうふうに誰が言つたよう印象を与えるように書いてありますか、私大変残念ながら存じておりませんので、これだけに……。
  8. 内村清次

    内村清次君 そうしますと、この新聞記事というのは、在外財産が集計約二千四、五百億になる、でこれは現在としては支払わないと、こういうよう決定がなされたというよう新聞記事つたのです。只今の御答弁では、日本経済新聞がこれを解説的に述べたのであつて新聞社の推測であるというようなことは、その通りに明確に考えていいわけですね。それと只今省議でもよりよりこの問題を取上げつつあるというお話の中に、日本国憲法及び又は公平の原則というようなところで論議がされてあるというようお話でありまするが、これは根本的には政府責任を持つということも、或いは又はこれを持たないということもまだ決定しておらないということに承知していいわけですね。
  9. 千田正

    委員長千田正君) それで皆さん質疑がなければ留守家族の問題に移りますが、只今在外資産の問題は、なお当委員会としては非常に大事な問題でありますから、慎重に皆さんにおいて御研究になつて頂きまして、いずれ講和会議が済んでも、この問題は当然国内問題として相当重大な、且つ又慎重に取上げられる問題だと思います。当委員会の課題としては最も最終的に重大な問題だと思いますので、皆様の十分なる御研究を願いたい思といます。   —————————————
  10. 千田正

    委員長千田正君) では引続きまして、留守家族に対する対策の問題でございますが、開会劈頭申上げました通り只今留守家族全国代表者の諸君がハンガーストライキをやつておる、いわゆる飢餓闘争に入つておりますが、どうも余り炎天でもあるし、それから実際人道上放つておくわけにいかんので、当委員会としても各委員しばしば見舞つてはおりますが、私も昨日参りましたが、なかなか政府の考えておられるよう考え方と現在の留守家族がやつているところの目標との間に食い違いがあるのじやないかと我々は考えられるのであります。政府としての所信はつきり声明されておらんというところにあの人たちのまあ続行しておるような形跡があるのでありまして、この点から見るというと、誠に我我委員会としましても、何とかして政府のほうとも又留守家族のほうとも、その間に立つて十分国会の意思を反映したいと思いまして、先ほど申上げました、お手許に差上げてある吉田総理大臣宛の当委員会決議総理大臣には通達してありまするが、今だにその返答はありません。本日も只今外務大臣としての吉田総理大臣出席を要望しておりまするけれども、所労で病気のために出席できないという御返事であります。外務省からは草葉政務次官と、それから吉岡引揚課長が見えておりますが、条約関係としまして井口事務次官出席も要望しておりますけれども、まだ答えが来ておりません。更に厚生問題のほうに関係して、その留守家族を現在の段階にこのまま放つておくということも、どうも芳しくない社会問題となると思いますので、橋本厚生大臣出席を要望しておりますけれども、まだ返答がありません。引続いて出席方を慫慂しております。取りあえずこの問題につきまして、草葉政務次官及び吉岡引揚課長が見えておりますが、先般来いろいろここの委員会においても質疑応答が繰返されましたけれども、その後における政府考え方及びどういうふうな措置外務省立場からとるつもりかというような点につきまして、留守家族代表にも御会見なつたと思いますので、草葉政務次官からその後のいきさつについて一応御説明願いたいと思います。
  11. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 只今委員長お話にありました全国留守家族代表断食のその後の経過について申上げたいと思います。  先回の委員会の日から千鳥渕全国留守家族代表者断食が始り、その日委員皆さんが現場を御慰問になり、又委員会の人とお話なつたその後の状態について申上げますると、二十六日であつたかと存じますが、首相官邸全国留守家族代表の一部の代表者のかたが首相会見を求められましたが、総理は不在でありまして、面会ができなんだその途中におきまして、首相官邸の横で空腹のあまりそこで休まれて、そうして数人断食する恰好になりましたが、これは二十八日の夕方、手当のために処置をされるということで、その場所での断食は解消をいたしたのであります。そうして中心は千鳥渕のそばで断食が二十七日から開始されたと存じますが、その後七月三十日の午後、在外同胞帰還促進全国協議会委員長から文書を以て対日講和条約に関する法律的解釈についての質問書というのが提出されまして、この質問書に対する回答を求められたのであります。従つてその回答をいたす順序に相成つて参つたのでありまするが、政府におきましては、誠に事の重大に鑑みまして、内閣代表して厚生大臣代表者とお会いをし、又外務省代表しまして私が代表者とお会いをして、そうして政府所信並びに質問書に対する回答を申上げるという段取りにいたしたのであります。七月三十一日の夜十二時ちよつと前から総理大臣官邸におきまして代表者と懇談をし、面会をいたすことに相成つたのであります。政府側といたしましては、厚生大臣厚生次官援護局長総務課長援護課長外務省といたしましては私と引揚課長、それに全国協議会代表者数名のかたがたとお会いをいたしたのであります。この席上におきまして、厚生大臣から内閣代表し、総理大臣に代りまして引揚に関する政府態度総理の不断のこれに関しまする関心、特に今回の平和条約関連してこの問題について適当な処置を講ずることに十分な努力を払つております点を縷々述べまして、政府を信頼して断食を中止されるよう申述べたのであります。私から対日講和条約に関する法律解釈についての質問書に対しましてお答えを申上げ、文書といたしましてこれを手交いたしたのであります。これにつきまして、はつきりわかりまするために、一応ここで協議会からの質問要点と、これに対しまする回答とを申上げたいと存じます。対日講和条約に関する法律的解釈についての質問書我らは「昨年九月二十日」質問書を提出して政府見解を求めておきました。(別添「我らに異議あり」第四頁参照)  これは政府見解に基き我らの態度決定せんと欲したがためでありました。然るに政府から何らの回答もないうちにダレス氏が大統領の特使として来日されたので、取りあえず前記質問書の中に一応開示してありました我らの見解に基き本年二月七日、四月十日及び六月二十一日の三回に亘り政府に陳情したのでありますが、今日に至るまで政府は我らの質問書に対して何らのお答えもないのであります。然るに最近に至り政府関係要人の間に個人的意見を漏らすものがありますが、甲の意見は乙の意見と一致せず、ために少なからず混乱を惹起しておる実情であります。よつて我らはここに昨年九月二十日の質問書に対する文書回答を督促すると同時にポツダム宣言第九項についての署名責任性質及び署名各国との間に、捕虜につき何ら規定のない講和条約が締結せられた場合署名国ポ宣言第九項との関係はどうなるのであるかの点については特に詳細且つ親切に御開示あるようお願いします。次に最近発表された対日講和条約案第二十六条については去る七月二十三日付請願書のうちに我らの解釈を開陳し、これに基き同条の修正をお願いしたのでありますが、同条の解釈について政府見解を正式に知るを得ざるうちに政府関係要人個人的意見が開陳せられ、而も我らの解釈と異なるものがありますので本問題の論議に困難を来しております。よつてこの点に関し至急政府の御解釈を承わりたいのであります。  以上の二点に対する解釈如何は我らの陳情の根本に関係がある重大な事柄であるのみならず草案確定期日の切迫せる今日一日の猶予もできない現在の状勢に顧み至急且つ親切な御回答をお願いします。三十日付で只今申上げたよう委員長名を以ちまして外務大臣宛質問書が提出されたのであります。これに対しまして私からこういうことを申上げ、同時にこれを文書に認めまして、委員長宛回答いたしました。これもこの際御了承願つておきますために、このまま申上げたいと思います。  貴方から吉田外務大臣にあてられた昭和二十六年七月三十日付「対日講和条約に関する法律的解釈についての質問書」に対し、大臣に代つて、  次の通り答えします。  一、政府は、従来とも、未帰還邦人の引揚促進については、非常な関心をもつてあらゆる努力をして来ました。   連合国に対する懇請の結果、昨年末国際連合総会で本問題が採り上げられ、十二月十四日に採択された「捕虜問題の平和的解決のための措置に関する国際連合総会決議」は、「国際連合主要目的一つ人道上放置し得ないような国際問題を解決するに当り、国際協力を達成し、すべての人に対する人権及び基本的自由の尊重を助長奨励するにあることに留意し、総会が原因の如何を問わず、一般的福祉又は諸国間の親善関係を害するおそれがあると考えるすべての事態の平和的調整のため措置を勧告することができることを考慮し」と述べて、本問題が国際連合において採り上げるべき問題であることをはつきり示しております。   その後、今年の六月には、捕虜問題に関する国連の特別委員会が任命せられ、いよいよその活動を開始したわけでありますが、その間政府としても、国際連合に対し積極的に協力をして来ましたことは、七月二十五日の引揚問題に関する外務省の発表で了解されたことと思います。二、平和条約問題との関連においても、政府は、決してこの引揚問題を閑却していないのみならず、適当な措置が講じられるよう大いに努力中であります。  (一) 平和条約が成立すれば、国際法上、平和条約参加国の間では捕虜としての身分は解消し、解放せねばならないものであります。さらに、平和条約を結んだ国との間では外交、領事関係が復活し、何時でも交渉ができるようになります。  (二) 平和条約に参加しない国と日本との間では法律上は今日の状態が続きます。故に、平和条約に参加しない国に対しては、若しその国に未帰還邦人が存在するときは、ポツダム宣言九項に基いて早く帰還せしむべきであるということがいえます。  (三) 政府としてはポツダム宣言の第九項で、捕虜を帰してやるという約束をもらつていると考えております。  (四) 一番問題になるのは、日本政府調査によれば未引揚邦人がまだ相当多数あると信ぜざるを得ない現状においてソ連では全部帰したといつている点にあります。未帰還捕虜は日本だけのものではなくて、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ等についてもあります。この引揚問題は、法律の埓外の問題となつておりまして、法律上の権利義務の主張よりも、大きな世界の人道問題、政治問題として世界各国がその解決のために協力してくれて初めて解決されるものであります。従来米国を初め、その他の連合国が積極的に努力をしているのもこういう考え方に基くものと了解します。平和条約実施後においても米、英等の連合諸国は従来同様関心を持ち、誠意ある努力を続けてもらえることを確信しており、又これがため政府としても折角努力中であります。  (五) 平和条約草案第二十六条には、日本は、将来この条約と同一の、又は実質的に同一の条件で二国間の平和条約を締結すべきことが規定されておりますが、これは将来結ばれる二国間平和条約で、日本がまだ未帰還邦人のいる国と将来平和条約を結ぶにあたつて、これらの邦人を早く帰すべきことを主張することを妨げるものではありません。」  七月三十一日附で委員長宛文書回答いたしましたものであります。これについてその晩、三十日の晩いわゆる三十一日の午前二時までいろいろ代表と懇談をいたしました。代表のほうではこの回答文について十分検討をして更に懇談をしたいから時間の猶予を求められましたので、翌朝再会を約してその晩お別れをいたしました。八月一日の午前九時から再び全協、全国協議会代表のかたと会談を再開いたしまして、開会間もなしに代表者のほうから外務事務次官の出席を求められたのでありまするが、これは条約条文についての解釈であるならば、十分いろいろお答えも申上げるというので、この点は私並びに厚生大臣が代つて答えをするというので先方に申上げたのであります。更に厚生大臣から今回の平和条約草案の成立過程におきます種々の困難さを、更に将来批准に至りまするまでの間の状態等についての考え方等について捕虜条項の挿入を要求することが誠に困難であつて政府としてはむしろ他に適当な方法平和条約関連して捕虜問題に関する措置を十分とるよう熱心に現在努力しておる旨を縷々説明申上げ、了解を得ることに努めたのであります。全協側からその最小限の希望といたしまして、第一には講和条約草案第二十六条の最終条項としてでも、日本が将来締結する二国間条約に未帰還邦人に関する規定を挿入することを妨げるものではないという趣旨の条項を入れたいものである。  第二はポツダム宣言に基いて米英ソ中四国は連帯責任を負うものと解釈するが、講和条約の発効後引揚問題について米英両国がソ連、中国に対して最後まで責任を負う旨の確約を欲する。  第三は最近の外務省の発表によるとシベリア、中共には相当多数の未帰還邦人が存在すると発表しているから、これらの邦人を至急帰すために、政府としても飽くまでこれを主張しながら帰還促進に努力をするという点についての、この三点について希望を申述べられたのであります。政府としましては、この三点について御希望の点は十分承つておきますことを申上げまして、更に断食の中止について、幹部として断食人たちが十分了解されるように、そうして断食の終了することを幹部が努力されるよう懇請をして、幹部としても十分努力をして御期待に副いまするという意味の意思表示をされまして、午前十一時にこの会見を終つたのであります。私どもは幹部がこの会見におきまして政府の所見並びに所信を十分了承されたことと存じておつたのであります。八月一日としてはその説得のことを後刻報告するということで、そのとき十一時にお別れをしたのであります。午後になりまして、昨日でございまするが、回答が参りませんので、代表面会を求めることを連絡いたしましたところ、一両日殆んど徹夜で政府と連絡をしておりましたよう関係代表も随分疲れておられて、現在少し休養しているというので、昨晩八時過ぎからであつたと存じまするが、代表総理官邸で厚生大臣と私とがお会いをいたしたのであります。その結果幹部としては断食人たちに十分政府所信を伝えて了解に努めるつもりであるが、これには相当時間もかかることであるからというお話でありました。従いまして余り速急に、了解のならんままには行かないから十分御説得を願つてお進めを願いたい。本日は大分疲れておられるようだから、いずれ明日その結果を伺うことにしようというので、昨晩約十時頃実は一応お別れをしたようなわけであります。以上かいつまんでではございまするが、今のような経過をとつております。
  12. 千田正

    委員長千田正君) 只今草葉政務次官からの留守家族に対しまするところのその後の経過の御報告がございましたが、これに対しまして各委員の御質疑がございましたら……。
  13. 内村清次

    内村清次君 現在留守家族代表のかたがたが日本国の平和条約草案に対しまして、みずからの肉親及び又日本同胞といたしましての切実な要望からいたしまして、断食をやりつつ政府にその希望の努力方を要請しておられる状態は、すでに先ほど委員長からも御報告がありましたように、八日間を経過した今日に至りまして、誠にその事態というものは窮極的に容易ならない事態に差迫つておることを、私たちは現場を見つつ特にその印象を深めておるものでありまして、一日もこの事態を解消せなくてはならないということが私たちの務めであることをも自覚いたしておるのでありますが、実はこの代表の気持を察しつつ、七月の二十八日の当委員会におきまして決議をいたしましたこの引揚促進に関する決議というものは、これは当然この表紙にも書いてありまするが、委員長から吉田外務大臣、吉田内閣総理大臣、この責任者に対しますところの書面として提出されてあるのでありまするが、当時この委員会に列席をされておりました草葉次官は、よくその各委員のかたがたの熱意の点を察しられておることであると私は思います。同時に又その後におきましての現地においての引揚者代表の切実なるその気持をもよく把握しておられることであろうと思うのでありまするが、私がここに先ず次官のお気持を明確にして頂きたいことは、現地におきまして私たちが考えられましたことは、これはすでにあの状態なつたときにおいては、吉田総理大臣がみずから一つこの問題の解決の衝に当つて頂かなくては、到底その誠意の程を披瀝しないと解決しないというような考えを持つたのでありまするが、次官はどう考えておられるか。同時に又この書類というものは国会を通じて政府のほうに渡されてありまするが、直接その席上におられました次官としましては、当然これは吉田総理大臣吉田外務大臣に対しましてその真意の伝達をされる義務が私は当然ある、かように存じまするが、そのような手続をおとりになつたかどうか、総理に直接お会いになつてそうして状態お話なつたかどうか、この先ず二点をお伺いいたします。
  14. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 只今の御質問の第一点でありまするが、お話通り総理みずからが事態の解決に当るということに最善の努力をいたして参らねばならないと申しますことは、お説の通りであります。ただいろいろな関係で時間的、体力的にも考えまして、それを内閣代表して総理大臣が当然みずから飛び出して当るべきものでありまするが、今申上げたよう立場から閣議でもそれを一応或いは直々に総理とも話しまして、厚生大臣が代つてこの点の解決に全力を尽すという態勢をとつて参つたのであります。この点は多分面談いたしました代表のかたがたも了承して、この点は了承して頂いておることと存じております。  第二の点は結局問題の解決はこの委員会決議されました点が解決の根本だろうと思つて考えております。この点十分総理と連絡をいたしまして、現にこの決議の線であらゆる努力を進めて参つたのであります。従つてこの線に沿いながら進んで行くということがいわゆる全体の引揚問題解決の中心である、こういう考えを政府は持ちまして、従つてそのように進めて参つておる次第でございます。
  15. 内村清次

    内村清次君 この問題の発生をいたしまする前におきまして、いわゆる引揚者代表が大会を持たれてからその決議を吉田総理に出されるときにおいて、相当仲介者を通じて斡旋の労を頼みつつ、常道的に、又は平穏に陳情をなされておる。その経緯が今回の断食をせざるを得ないというよう一つの事態にもなつようなその原因を作つておるようでありまするが、とかくこの吉田総理大臣はこの問題につきましてあのような切実な要求自体、又はその状態を把握しておられるかどうかということが、私たち委員といたしまして、この問題と密接に立ち働いておりまする一人といたしまして心配しておるところであります。どうもこの斡旋をしておられるかたがたが個人意思を以て、そうしてみずからの職責によつてこれを解決ようとなされておると思います。代表のかたがたは総理の、先ほどもあなたが肯定されましたように、総理一つ来て親切な、或いは又は誠意のあるところの努力を誓つてさへ頂いたならば、この事態というものは直ちに解消する、かように御判断なされておるように、私たちも同様でありまするが、こういう事態をどうも中間のかたがたが遮つておられる。今の御答弁によりますると、まだ外務大臣に対しましては政務次官はこの書類は直接手渡しも、又は説明もなさつておらないようである。今後そういうよう委員会の誠意を一つ報告しましようというような御態度でありまするが、吉田総理はこれは一日の日にも外務省に、外相官邸においでになつておるらしい。私たちはもう箱根に行きつきりかと、頭から箱根の山から政治をやつておられるか、かように思つてつたのですが、真実は官邸のほうにも来ておられるという話である。そうしますると、問題の重要性におきましては、敢えて今政府が政治的になさんとするところの代表問題とこの問題と比べましても、決してこれは甲乙を論ずべき問題ではなくして、代表といたしましてはより深刻な問題であるのであります。いわゆる講和条約草案というものはより深刻な問題であります。代表決定より以上に私たちは深刻であろうと思うのであります。こういう問題を、そういう事態にありながらなぜ総理大臣に真相を御報告にならないのであるか、そうしてみずから進んでその衝に当るというような義務を喚び起さするような行動をお取りにならないのであるか。私はこれがどうも国民の一人といたしまして残念で堪らない。どうしてそういうふうに一貫した御態度でこの民主国家の政治を担当しておられるのであるかと私たちは慨歎に堪えないところであります。厚生大臣にして然りです。これも又先ほどの委員会におきましてもまた出席しない。今日の委員会においてもまだ出席しない。その理由は那辺にあるか、私はあと委員長をして一つこの委員会で発表して頂きたいのでありまするが、このよう態度でどうしてあの切実な要求の解決ができ得ると考えられるのか、ただ文書の取合いだけで、而も又疲れ果てたところの代表者が根気をですね、根気を尽して、そうして出掛けて来ることを希望して交渉の即ち相手にしておられるということは、全く人道上残酷ですよ。実に残酷な行為です。それよりも私たちはみずから進んで政府が誠意を示すべきである。而も私は先ほどの外務次官の即ち回答書に対しましても、また不審な点があります。これはあと質問いたしますといたしましても、そういうような中で遮るような行為というものがなされておることを、実に私たちはここから見ましてもはつきりわかつておるのですが、どういうわけでそういうような御態度をとられるのであるか。ここを何かこう大臣の、即ち御機嫌を損うというようなことの恐しさのために、あなたがたがやつておられるのであるかどうか、その真相を一つ率直に披瀝して頂きたい。
  16. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) これは私先ほど答弁にそうは申上げなんだつもりであります。言葉が足りなんだので、更に補足をさして頂きたいと思います。参議院の決議につきましては、よくその趣意を外務大臣に連絡をし、又これがこの引揚解決の問題の中心である点をよく連絡をし、又総理自身もこれをよく趣意を了承いたし、従つてその線に沿つて外務省は全力を尽して、これが解決に当る準備を今進めておるというような次第であります。ただ実は引揚げの代表のかたがたが外務大臣総理大臣である吉田総理面会を求められて、再度箱根に行かれた。その際井口君のほうから連絡をとつて進んで参つたのでありまするから、私先に申上げました事務次官を出していろいろ条約の中の……併し条約文の解釈ということよりも、実はそのいきさつについて強くその態度を詰問するという意味であつたという、これは実際のところ率直に申上げて、あとで聞いたのであります。そこで実は井口君のほうでも連絡をして、そういう状態にあつたようでありますが、この日丁度差支えがあつて、外相、総理大臣はすでに他出をいたしたあとようであつたと記憶いたしまするが、そういうことで、結局結論においてお目にかかることができなんだ、こういうので、誠に行かれました代表には、私ども事の如何を問わずその辺は誠に恐縮に存じます。従いましてそういうふうな派生的ないろいろ問題で大変不愉快な思いをさしたという点については、万々恐縮に存じますが、引揚の問題全体といたしまして考えますると、本委員会決議をされました線によつて進むということが最も大事である。この点に関し、政府も現在只今申上げましたよう方針をとりながら進んでおりますと同時に、この断食をしておられまする代表のかたがたにもこの点をよく実は申上げて、御了解を得るように努めて参つておるのであります。併し今日までなお断食が続けられておりますことは誠に恐縮に存じます。
  17. 内村清次

    内村清次君 そこでこの断食の問題は、もうこれ以上続けさせるということはこれは大きな悲劇が起るものであるということを私は政府に警告したいのでありますが、これを如何にして御解決になさろうとしておられるか、いわゆる先ほど申しましたように、吉田総理がみずから進んでこの誠意を披瀝されるような方策を、ただ一つつた方策をとられるように最善の努力をされる気持であるか、この点が第一。それから先ほども外務次官の回答書の中には要約いたしまして次官はポツダム宣言が、これが今回の草案によつて解決しても、即ち調印をしないところの国というものもやはりこれは守るべきところの義務があるのだ。勿論条約を締結したところの当事国は、即ち連合国軍のその一部の国は当然又義務としてこの問題を、日本の即ち各生産なり家庭に復帰させるという義務も当然これは負うべきであるとこういうような御解釈でありますが、ポツダム宣言の即ち宣言を発しましたときにおける連合国の国際的な又道義的な公約の中には日本と単独講和をしない、又進んで単独講和、連合国一つの国が単独講和をするようなことはしないというような、こういう即ち約束がされておると私たちは考えております。そういたしますると、この約束がこれが日本の国に対しましてどのよう関係を持つかは、これは私たち無条件降伏をいたしました国民といたしましては、これを明確に政府にその所信を聞こうとは考えません。おのずからその点につきまするところの私たち国民としての考え方は持つておりまするが、併しそういたしますると、あなたの回答にあられますような、即ち調印をしない国というものは、やはりポツダム宣言というものは存続するものだ、勿論調印をした国はすでにポツダム宣言というものはこの条約草案によつて条約によつて解消するのだ。而も又そういうような国際的な道義上の公約を破つたところの、こういう即ちポツダム宣言というものは調印をしない国も即ちあなたがたは存続されると、こうおつしやるのであるが、その相手国というものはこれは存続はしない。こういう解釈の上に立つて、結局この私は第九項の義務規定というものが解消になるのだということが、これが一様に留守家族のかたがたが考えておられる即ち根拠であると思うのであります。私たちも又そのような懸念を持つておるのです。そこで結局私たちがこの委員会によつて考えておりますることは、この草案の、即ちどつかの一項に是非この義務規定を設けてもらいたい。然らずんば即ち連合国の共同宣言によつて、この道義的な制約をして頂きたい。こういうのが即ち私たち委員会考え方であります。併し又その前提といたしましては、どこまでも一つ日本の平和の確立のためには、連合国全部が一つ調印をするような御努力政府は強力にやつてほしいというのが、決議をなす前提としての私の提案の趣意であつたとかように私は思いまするが、そのようなことはないのであるかどうか。あなたの御回答自体によつて、即ち調印をしない国というものはこのポツダム宣言の義務規定というものは残る。ポツダム宣言全体というものが残るものであるという御解釈であるかどうか、この点を一つ明確にして頂きたい。
  18. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 私が先に申上げました回答内容只今の御質問と少し違つておると存じます。実は第一の条約に参加した、署名をし比准をして講和条約の成立と一緒に加わる国は、これは当然第一に申上げましたように捕虜としての身分は解消してそれぞれの処置がとられる。それから第二の点は、平和条約に参加しないところの国と日本との間では法律上は今日の関係が続いて参る。若しその国に未帰還邦人が存在するときは、ポツダム宣言第九項に基いて早く帰還せしむべきであるということが我々は言えると思います。こういう主張を以て回答いたしたのであります。従いまして今後若しやこの平和条約に参加いたしません国の中に捕虜のある国があるといたしましたら、これはポツダム宣言の趣旨によつて私どもはそれを強く要請をすることは従来以上に続け得ると思います。
  19. 内村清次

    内村清次君 それから第一の問題を。
  20. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 第一の問題、今後最善の努力を以てこれが解決に当るかどうかという点は十分御趣旨の通りに私どもも考えております。これはあらゆる方法を以て解決するように、むしろあの断食をやつていらつしやる方々は留守家族というよりも日本国民の総意を汲んだ心持と私どもは考えております。従つて私自身と同じでありまするから、日本政府に対する御要望であると同時に世界人道に対する強い日本国民の訴えであると、かように私どもは考えております。
  21. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 これが誰が見てもですね、たくさんの人が断食をやつておる。内村君の言うように誠に残虐な結果をこのままではもたらすことになることは明らかであります。解決の途は簡単ではありませんか。誰が見たつてこれは総理大臣が出て行つて所信をみんなの前で披瀝すれば今日の今でも解決できます。草葉君はこの問題について何か言葉の上でうまいことを言つて結局は責任逃れ、現に草葉君は本当に断食をやつておる人の思いがわかれば人を通してじやない、吉田君に直接会つて、どうしてもいかん、これはやがて国民の信望を失う大問題だから何とかしなさいとあなたが言つてやるのが当り前じやありませんか。そこまで行かんのは、言葉でごまかして従来の官僚諸君がやつたような手でこの問題をぬたくつて行くような不忠実の態度と言わなければならん。そこでですね、今さつきからの話によりますと、総理大臣を引つばつてきて話すことはできんということになつておるらしい。そうだとすればですね、第一あなたはここへ来て責任のある言葉を述べておられるはずだが、幾日間かかつてこの問題を解決するのか、その見通しはどうなんですか。あなたがその見通しを立ててないとすると、これはたくさんの人間がどうなるということでありますか、非常な責任があるはずです。それでこれを幾日間で片付けなさる確信があるのか、それをはつきり聞かして貰いたい。今死ぬ者を抱えておる、全国民はえらい問題を前にして、憂欝なる思いで心配しておる。それだからはつきりそこを一つ幾日間で解決するつもりか言つて欲しいですね。
  22. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 只今細川君の御質問でございますが、事は至つて簡単ではないか、そうしてお前自身も行つて誠意を披瀝したら解決するのだがと、私も実は二十七日には一緒に参りましていろいろ御意見も現場で拝聴いたしました。その後は只今報告申上げた通りであります。私はこれは大変大きい問題だと心得て、先ほど内村君からお話がありましたように誠に重大な問題と考えておる。それは結局この行為は日本国民の総意を汲んだ心持を以て、なお未帰還邦人が先般外務省で発表いたしましたように多数あります。これを何とか帰すということが根本です。従つて政府が実は単に一、二の小手先でいろいろするというような問題でなしに、現にある捕虜があらゆる方法を尽して帰つて来られる、その心情があの行為に現われて来ておる。誠にその行為たるや、その心情たるや、私どもの衷心より実は心を同じくする心持を私自身が持つておる。そういう意味におきまして、この講和を前にいたしまして、一層日本国民の痛切なる叫びがあの行為になつて現われて来ておると私は考えておる。従いまして日本政府はその心情を汲んで、今後捕虜の引揚問題についてあらゆる努力をしながら、目的を達するための最善の進み方をすることが、今断食をしておられる人ばかりでなしに、日本国民の総意に応えるゆえんである、こういう誠に大きいそうして重大なる意味として考えておる次第であります。従いましてこの解決には前回のこの委員会で議決されました決議の線に沿つて進むということが、この心持を現在行なつておられる方々に最もよく徹底をさせ、そうしてその行為そのものはなるべく早く一つ終結さして頂いて、この問題の解決のことは今後に残る大きな問題でありますから、この今後に残る大きい問題の解決として、あの最も貴重なる現在の断食の行為を私どもは衷心よりありのまま受け込んで、そうして将来の捕虜引揚のために尽してもらいたい、かように考えておる次第であります。
  23. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 私のさつき問うたのは、およそ幾日間でこの問題を責任をもつて解決することができるか、いわゆる断食をやめさせることができるかというあなたの確信のほどを聞きたいと申上げたのでありますが、それは何ら答えておりません。のみならず問題を外らして自分の従来の立場を弁護しておる。この断食はね、今まで政府がやつて来たことの責任を負うべき者は総理大臣吉田君である。その結果が今ここに見とれないよう断食の事件まで起きておる。先ほど内村君の言われたのはここで黙つて見ておるというのは、政府が誠に残虐な行為をやつておるということになります。この引揚の問題は初めつからこの全面講和を抑えて単独講和をやる、そのてこに使われておる、これは明らかであります。そうして今政府の発表がですね、ソ連領にあれだけの人がおらんということになつて来たということが国民に非常なシヨツクを与えて来ておる。今までソ連領、ソ連地区、占領地区とか何とかかとか言つてつても、結局ソ連領に三十七万おると思い込ませておる。これの考え違いが非常な失望をひき起しておるのであります。でそういうようにしてね、おまけに今日はこの間の白書の中にいろいろ言わておつたが、ソ連というものはとんでもないものだ、残虐行為をやつておる国で、民主主義も何もない、調べ方はこうだというようなことをいろいろと述べられたがこういうことをやることは、私は誠に心外だと思う。こういうことをやるほどの人だつたから、今度目の前に見ておる、そういう政策によつて引ずられて来た国民が結局断食まで来ておる、こういうものをただで見ておる。国民を心配してどうとか言つておるがてこに使つておる。てこに使われた者が断食の行動まで出ておる。これを責任を持つてつたつて総理大臣が行けない。行く真情がないということは今までこの問題を扱つて来た性根をさらけ出しておることです。草葉君にしましても外務次官を放擲してまでやりなさい。本当の私は引揚問題の性根については何も追求しません。あなたと今議論したつてようがないから目の前に出ておるこれを片付けなさい。本当にかかつてやるならば次官の地位を捨てるほどの努力をしなさい。そうしてこそ本当にこの問題に取組んでおるということを示すものです。あなたの所信を聞きたい。幾日間でこれを解決できるのか。そうでなければ総理大臣を今日引張つて行けばもう今日にも片付く。それを聞きたがつておる、断食しておる人たちは。どうか一つあなたの見込みを確信を持つて言うて頂きたい。
  24. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 細川さんの御質問は何日でこれを解決するか、解決させるかという御質問、誠にこれは奇異な御質問だと私は思う。実はこれは先ほど来内村議員からも縷々お話がありました、真剣に考えてなされておりまする問題で、従つて単に何日間でどうするというような問題というのとは根本的にもつと奥深い問題である。帰してさえもらうたらいつでもこういう問題は解決されておる。問題の中心は捕虜がある現状において帰して貰えないという問題、従つてこれは説得してあの行為をやめただけでそれで済む、こういう問題とはおのずからこれは違つておる、もつと重大な問題である。こういう点に対しましてむしろ只今の御質問の中に現われておりまする考え方とは私は全然逆な考え方を持つておる次第であります。従いまして、政府がこれを何日間で解決するというようなこういう問題じやないと考えております。
  25. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 どうも問題がすり替えられておる。現在こういうふうに差迫つておる断食人たちをどうするかということを私は第一にお聞きしておる、それには答えられない。そうすると、これはのびのびしておるとしまいには死人もできたわ、そして国民も騒ぎを起すわ、そうなる危険がある。それでいて、それじや責任を持たれるのですね、更に断食しておる問題よりももつと奥深いということを言われる段になると私はあなたとここに大議論をしなければならない。引揚問題についての私の見解、そして今日の講和の問題をやらなければならん。私は今その時期じやないから捨てておるわけです。何が深刻な問題だ。そこに逃げてはいけませんよ、断食の問題に区切りなさい。私はそんなことならば幾らでも議論します。併しながらここはそうする席でもないから差当りこれをどうする、問題についてどうするか。それを聞いておるのでお答えないのならばこれは何です、この断食の結果起きる責任というものは政府責任である。又あなたは政府代表して来ておる、あなたの責任ですから、そこらあたりあなたは答えられなければそういうものであると責任を負うのだというあなたの覚悟だ、政府の覚悟だと私は了解してこの質問をやめます。
  26. 紅露みつ

    ○紅露みつ君 その後草葉政務次官も大分お骨折になつておられるので私もその点は多といたします。それから各委員からも相当御意見が述べられまして質問がありまして、私どもまた大同小異でございますからほぼ尽されておると思うのでございますが、今の御質問関連してですが、草葉政務次官の御答弁を私もちよつとおかしいと思うことは、法的には留守家族講和条約の中に引揚の問題を織込んで欲しいということがあるもんですから、それが果してできるかどうかということは、これはむずかしい問題でありましよう。確かにむずかしい問題でありましようがほかから考えますると、これは附則に持つて行くとか何かその附属書類に現わすというよう考え方もなされるのではなかろうかと考えておりますが、いずれにしましてもこの問題はその法的に解決がついて、そうしてその要望が入れられるとか、入れられないとかいうことでこの断食問題も解決するのだというよう考え方はこれはどうかと思うのです。勿論この問題はいまいま片付く問題でないという御答弁はそれは御尤もだと思いますけれども、当面のこの状態をこのままに放置することはこれはできないのです。今日八日というようお話がありましたが、私ども七日かと思つておりましたがいずれにしましても一週間も八日もこんな状態に、この帝都のまん中でこういうことをさらしておいて、国会議員も政府もこれはどういうふうに、これは責任をとりますか。第一そういう基本的な要求は留守家族は持つて出ておりますけれども、この断食に入る前には政務次官も言つておられますように、総理に会いたいということを言うてそうして箱根へまで再三行つておるというような工合で、人数も聞いてみますと二、三人の代表者で、決して騒がしてまでそんな行動をとつたわけではない。それがたまたま今の御答弁で都合が悪くてお会いになれなかつたというようなことであるならば、それは止むを得なかつたことであつたといたしましても、こちらには首相は山を下られたという情報が入つておりますが、果してこちらに下つておられるならば、それは留守家族の所へ行つて話せば今にも解決されるという御意見が出でおりますが、それはそうだと私も思います。併しそれが所用のためにこの委員会にも出席されないくらいですから、若しそういうことでありましたらその代表を呼んで納得の行くよう説明がされるべきだと思う。留守家族といえども、どうしてもこれは法的にこれからどういう解釈になつて行くかわからないものを何でもかんでもここへ入れなければ承知しないということではなかろうと思います。その理窟が納得が行きまして、努力をして附則になり何になりこれを謳いたいという努力を払うというような意思表示がされたならば、それは納得行くであろうと思う。政務次官は外務省代表して出ておられるのですから、何としてもこれは総理に出てもらうように、総理に話して頂くようにひとつ御努力願いたいと思います。  それから昨日私は健青会、あの引揚げた方たちのこれは青年団といいますか、まあ青年の人たちが健青会を組織してこれにいろいろ参加しておるというようなこと、これはもう御承知と思いますが、こういう人たちに会いましたところがこういうことを言うておられました。私どもは決して不能なことを政府に要求して政府と対抗しようと思つているのではありません。こういうふうな留守家族の切実な気持がこれを背景にして、そうしてこのむずかしい引揚の問題を解決して欲しいと思いますということを言うております。そういうことは多分政府にも通じておるのではなかろうかと思う、必ずしも政府に反対をするとか対抗するとかいうよう意味ではなく、これだけ切実に世論が起つておるし、留守家族もこうした必死な運動をしているのだからどうかこの問題を有利に解決するように導いてほしいということを、今度の講和条約に出ても条約に盛り込まれるか、或いはどういう形にしろ、それを背景にして有利に導いてほしいというような素直な、何とも言えない私は気持に打たれたわけですが、そういうことは政府もわかつておられると思う。だから何とかして理窟の上で押付ける、又政務次官はそういうお気持ではないと思いますが、そいうよう考え方ではなく、ずつと政府が大きく抱き込んで、そうして留守家族のその心情をよく、言葉の上では駄目です、本当にわかつてもらえば、そうした運動があるということは、確かにこの健青会が言う通り私は一つの背景になつて、大きなこれはこれからの引揚問題の途を開くプラスになると思う。そういう意味でも是非総理大臣草葉政務次官は斡旋をして留守家族代表に会わせるということですね、それだけの政務次官誠意をお見せにならなければ私どもあなたを信じません。それがあなたのお立場ならばできるはずです。当然そういう労はとらなければならん。そうして一応こういう捨てておけない問題を解決して、その上で静養する期間もありましようし、その間にでも法的な解釈はまあ一応できようというものです。こんなことを押したり突いたりして法理論なんかをやつておりまするが、今日どんどんこれは断食人たちは弱つて行く、全国から参加しつつあります。それも御存じだろうと思います。私の選挙区の徳島は今朝着きました。これは全国から参加します。早く、一刻も早くこの問題が解決するように、最善の方法としては今申上げる通り大臣が直接何とか言われること、それは決して政務次官が代表として不足だというわけでは、ございませんけれども、併し外務大臣があるのですから、総理大臣であり外務大臣である吉田さんが、而も山を下つて来ておられるのでしよう、ですからどうかしてその努力をされたいということを私は切望しますが、それに対してどうお考えなさいますか、一つ返答を頂きたいと思います。
  27. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 先の細川君の御質問でございますが、それは私は細川君と見解を実は異にいたしております。本質的の問題についてはここでは議論をしないというお話でございましたので、従いまして御見解を異にしておるということを申上げます。  それから只今の紅露委員の御質問、誠に御尤もと存じます。私も先に内村君の御質問に衷心より御同感申上げてお答え申上げましたが、この現実の問題は、誠意を尽して政府所信を十分御了解願つてあの行動が一日も早く解決するようにいたしたい。それから本質はあれは留守家族だけのものではない、国民全部の熱望の現われである。従つて私自身も又許されるならば加わつて行きたい大きい問題である、かように申上げる。又今の御質問の中にもありましたように、政府は今後この行動を通じて有利に解決して行きたいという点御尤もと存じます。私からそこまで申上げると却つていろいろ微妙に響いて参りますから、それは申上げずに、あのようにして申上げたのでありまするが、国民全体の心情の現われである、かように考えております。従いまして、実は現在は問題がだんだん縮まつて来て、幸いに総理との面会も大体了解して頂いて、今後又いずれはそういう機会もありましようけれども、厚生大臣と私が中に立つて一生懸命に御了解を願うように努めておるわけであります。従いまして、問題はさつき申上げた三つの点に要約されて参ります。この点の取扱い方を十分納得できるように御説明申上げ、これは従つて国民全体に対して納得が行かないといけないわけでありましようが、この決議にあります点が、私はこれが根本の問題だと実は考えております。従つてそういう点はまだ我々の力が不十分であつて納得が行かないから継続されておると思つております。今後もあらゆる方法を以て納得の行く方法を取つて参りたい、かように考えております。どうぞ皆さんたちもそのお心持を御了承願つて協力をお願い申上げたいと思います。
  28. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 先ほど連盟会長に対する御答弁として読まれた中に法律上の問題がありましたのですが、それについて内村君から質問されてまだはつきりしない点があるので伺いますが、今度の講和条約に調印をして批准をした国は講和になるのだから、捕虜とか抑留とかいう問題は無くなつてしまうのだ、だから普通の国際法律といいますか、慣例に従つて若しやればどんどん帰つて来るのが当り前です。領事や大使も送るのだからそんなことは問題ないのだ、それから不幸にして調印をしない、或いは批准をしない国が若しできたとすれば、その国とはポツダム宣言によるところの降服条件というものがまだ継続するのだから、そうすればポツダム宣言の九項によつて抑留者は帰すということがきまつているのだからその線で帰して呉れと言い得るし、又向うも帰すのだ、こういうことでいいでございましようか。
  29. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 御質問の点大体その通りだと思います。第一項は平和条約が成立いたしますと、成立いたしました国との間には捕虜としての身分は解消して、当然万国の捕虜に対する待遇条約、四十九年の条約等から申しましても、日本が入つてつても入つておらなくても、国際条約の精神から考えて従来とも又今後も変らない。これは国際常識として一応そういう考を持つております。  第二の問題につきましても、法律的解釈といたしましては、これは国際連合国が実は解釈すべき問題だと存じまするが、私どもはポツダム宣言を信じてそうして降伏調印をいたしました関係から、そうして降伏文書には日本もこれを守ると同時に連合国も守るということを謳つております。あの第九項の捕虜の問題は、若しや今回調印しなんだ国があつたならば当然これを守つてくれるものだ、こう強く信じながら進んで来るのには何ら非合法的なものはないと考えております。さよう解釈いたしております。
  30. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 今の続きですが、そういたしますと、結局ポツダム宣言九項がなくなるのだから、未帰還捕虜の問題を講和条約の中に入れてくれろという必要はなくなるのだ、こんなことはなくつたつて条約を結んだ国は今の通りだし、結ばない国はポツダム宣言が生きておるのだからそんな必要がないのだというような御意見になるのですが、さつきからしばしば政務官のお話では、今後の引揚問題については、先般の参議院の決議の線を中心としてやることは問題で、あの決議の中心は、条約の一条項にそういうことを挿入してくれろ、そういうことが中心条項なんです。それが条約に挿入されなければあれでもいい、これでもいいというふうになつておるのですが、そうしますと、今のお話でそれは必要ないのだ、なくてもできるのだ。一方そういうふうな解釈をとつておられながら、そのことを是非やつてもらいたいという決議で、これが今後の捕虜問題の解決の中心になるので、そこに食い違いのあるような気がいたしますが。
  31. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 私はこの決議は二つの点からなつていると思います。第一にはポツダム宣言の第九項の未帰還邦人の捕虜問題で、抑留者を速かに帰還せしめるということを条約に入れるということ。もう一つ講和条約の調印の際に連合国では引揚の問題について明確な意思表示をなすという、この二つのことがこの決議の中心でどちらかの最も適当な方法をとれ、こういうのがこの決議の御趣旨であつたと実は考えます。従つてこのポツダム宣言第九項の精神を条約草案の中に入れるということも、一つでございます。それがいろいろな事情で解釈が、或いは実際上或いは取扱上困難な場合には、むしろそれよりももつと有効な方法があるならば他の方法により、ここには或いはというので具体的に明示されております形をとつて行くことがむしろ妥当だとこう考えまして、努力を進めて参りたいと思います。
  32. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 今の問題はわれわれとしては実は条約の一項に挿入するということを是非願いたい。それができない場合には止むを得ずということなんでそこに主眼を入れたわけでありますけれども、実際上できなければ止むを得ない。今のようお話で御努力願うことは結構でありますが、別にポツダム宣言というものがあるんだ、こういう法律解釈をとりますと、捕虜を帰して下さいということを、仮にソビエトに捕虜がいるとしてそのソビエトに捕虜を帰して下さいということは、ポツダム宣言が生きているんだ、こう言つて、ソビエトがポツダム宣言が生きているんだから、降伏文書が生きているのだから占領軍を出すと言つたときに一体どうするか。自分の都合のいいときにポツダム宣言が生きているんだというよう解釈をする。要するにむしろポツダム宣言或いは降伏文書というものは実際的には日本の方が無条件降伏の問題ですから条件が悪いのです。その悪いようなものをまだ生きているんだと言つていい方ばかりやつたときに、こつちに不都合なやつを向うでたくさん要求される虞れもあるということを必配しなければならん。そうすると実際問題としては、ポツダム宣言九項によつて捕虜を帰してくれと言つても、それが言われますからやりにくくなる。引揚問題を促進するのに非常に遠慮しなければならんという問題が実際問題として起きやしないか、そこらについて。
  33. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) これは実は御尤もだと思います。従いましてこれは単なる法理論の解釈ではなくむしろ政治的な解釈だという方が適当だと思います。日本もそうでありますが国際連合自身においても当然だと存じます。従いまして日本自体といたしましても、連合国側の解釈というものには、これは日本政府がいくらいたしましても連合国解釈でなければ本当のものになりません。成るべく慎重に慎んで参つておる次第であります。併しお話ような点は誠に従来から考えられておると思いますので、ただ問題は降伏文書処置につきましては、それぞれ又連合国側の中に申合せ規定等が日本に寄せられましてそれぞれの組織によつてアメリカ代表し、アメリカの最高司令官がこれをやつて行く、これが条約によりましてその機構組織とも全部解消いたしますと、只今お話よう状態は起り得ないという解釈が、当然いわゆる国際通念として起つて来るという解釈を取つて行けるものだと考えております。従つてこのポツダム宣言解釈につきましても厳密な法的な解釈という立場からいたしますると、いろいろ問題があろうと思いますが、先回もお答え申上げたと思いまするが、学問的解釈、いわゆる純法律的な解釈、それから政治的な国際連合自体がこれを解決する解釈いろいろあろうと思います。実際の問題になりますと、国際連合がこれを解釈する解釈の下に従つて連合国がやるということが当然だと思います。捕虜の問題につきましては、従つてこの答弁の中には政府としてはポツダム宣言の第九項で捕虜を還してやるということを守つて行くと考えております。こういうことが正式の立場についてのことになつて来るのじやないか。
  34. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 草葉君が今取交わされた問答の中で、サンフランシスコで調印される条約、あれは単独条約であるが、その中でそういう今引揚団体の代表のほうから出ておるそういう意向については、講和が成立する以上捕虜というものはなくなる、それだからこつちの方の心配がないのだから、申出ておるいわゆるこの条項についてはそう深く言う必要はないように言つておるのであります。ともかく捕虜がなくなるのだから問題は事実上大したことはないのだ、解決されるのだと言つておりますけれども、実際はこの引揚についての政府の発表は捕虜がおらんということになつておる、おるとしても戦犯で刑務所か裁判所におるという程度のものであつて、捕虜がない、問題がないといつておられるのだから、言われることと実際とは、捕虜がないという問題だから単独講和をやる英米諸国には、そこで又意外なことにはもう一つは単独講和をやつてポツダム宣言は生きておるという解釈です。それは私はここで初めて政府当局の言葉として聞くのでありますが、単独講和というものはポツダム宣言を蹂躪した全くポツダム宣言及びそれ以前の国際協定を無視した、そうしてできておるものである。それで都合のいいときにはここで引用してポツダム宣言は生きておると言つておられる、単独講和ができたつてポツダム宣言は生きておることは確かです。不法なこと柄が生きるとすれば、これは大したことになつて世界中ひつくりかえつてしまう。連合国が厳粛に取りきめた条約というものはできなくなる。ただ捕虜の問題に関して政府は今度は勝手に現に政治的にポツダム宣言を蹂躪する方へ加担しておる。アメリカ政府の世界政策に便乗してこれを支持して行く、この講和条約の政策に乗込んで来ておる政府が、今度は捕虜の問題になつたらポツダム宣言の九項を引つばり出して来てこれは生きておるということは、こういうようなことはこれは全く謀略に終始しておる政府の主張でしかありません。今そういうふうにしてポツダム宣言を持出したわけです。それから従来の引揚問題について発表した数字では、内容その他にも捕虜はおらんというようなことになつておる。問題にならんところをさもありがたいよう解決されるように言つておる。これは一体どうしたことですか。政府代表した草葉君と私とは意見が違うので、それについては意見を闘わす場合ではないので差控えておるが、問題はこういうように裏腹のことを言われては困りますよ。
  35. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 細川君の御質問要点を私甚だつかめずに恐縮でございますが、御質問の点は捕虜がない国に対する解釈でこれは国交が回復しても問題にならんのではないか。実はこの全体としての回答文を先に説明いたしたのでありまするから、これを分類するとこういうことになる、こう申上げてその回答いたしましたことをそのまま言つたのである。何も今更ポツダム宣言を持出して来たのではなしに、その一項がありましたのでそれに対する回答をいたし、それについての御質問がありましたからお答えをしただけでございます。捕虜というのは、この考え方も大分細川君は誤解されておるのではないか。捕虜条約その他戦闘場における捕虜というものはそれぞれきちんと一つの定義がきまつておる。むしろ捕虜をするということはその人の危険のないように守つて行くというやり方から出ております。併しソビエトが抑留しておりますようなものは誠に従来の国際観念から離脱した最非人道的な行き方だと私どもは考えております。甚だ遺憾に思う。而もそれは条約上の問題というよりも、すでに或るものはないという、我々日本はある、現にあるためにこのよう断食行為が起つておる、然るにソ連はないという、こういう主張が基本になつておるのであります。従つて只今の御質問に対しましてはそういう点を明確に持ち出して頂いて御協力を頂きたいと思つております。
  36. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 引続いて……。
  37. 千田正

    委員長千田正君) 細川委員、一応簡単に次の機会にその問題は論じて頂きたい。実はそのほかに、申しますが厚生大臣にしばしば出席を要求しておつたのですが、未だにはつきりした御返事が頂けませんが、平澤厚生政務次官が見えておられますので引続いてやつて頂こうと思うのですが。
  38. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 では次の機会に私が草葉君と……、今草葉君が投げ出した問題はこれは討論しなければいけなくなりますから。
  39. 千田正

    委員長千田正君) これは相当重要な問題で、共産党の意見政府当局の意見はおのおの食い違いがあるのでありまして、そこを論議をされているとなかなか、容易ではないのですが、問題は今留守家族の絶食問題を早急に解決して行くという委員会でありますので、次の根本問題については次の機会に一つ論議願いたいと思います。
  40. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 それでは委員長にお任せします。
  41. 内村清次

    内村清次君 ちよつと厚生政務次官にお尋ねします。今留守家族の方々がこのよう断食をされておる。これに対しまして、留守家族代表の方々の要求がどの辺になつておるか。又次官はどのような折衝にあなた自体が当つておられるか、それが第二。第三はこの解決はどのようなことをなされたならば解決がつくというようにお考えになつておるか、この三点をひとつ。
  42. 平澤長吉

    説明員(平澤長吉君) 今度の現に現われておりまする事態に対して当日大臣出席するようというお話でありましたが、大臣は丁度体の加減が悪いから私代つて出て参つたような次第でございます。厚生省といたしましては、留守家族諸君の援護の面について最善の努力をしなければならないということは私から申上げるまでもございません。従つて昨日一昨日にかけまして又本日も政府といたしましても、又同時に厚生大臣の出場からいたしましても、総理に連絡をいたしましてこの現に断食をせられておりまする諸君の要望せられておりまする基本的な問題を解決をすることによつて、これらの事態というものが円満に解決せられるのであろうという観点から、それらの留守家族代表の諸君と昨日、一昨日とかかつて徹夜でそれぞれ折衝しておるような次第であります。従つて我々は厚生省といたしましては、現実に現われておりまするところの事態に対する援護の面から、でき得る限りの方法手段を講じたいと具体的に我々はそれにタツチいたしておるので、今私のところにお話ありましたのは厚生省の処置についてであろうかと存じますが、この厚生省の関係して参ります留守家族の問題その他の問題に対して、厚生省といたしますればそれぞれの機関と連絡を取つて解決をいたしまするよう努力しおると私は解しておるのであります。
  43. 千田正

    委員長千田正君) 内村委員が御質問する前に一応……。
  44. 内村清次

    内村清次君 ちよつと、今の御答弁を聞きますと、基本的な問題については諸官庁と連絡を取つてつておるものと解しますと、こういう。そうするとあなた自体はこの状態には接触しておられないと、代表とも接触しておられない、又現地も見ておられない、大臣はそれには昨日一昨日接触しておられる、あなた自体はしておられないとこういうことですね。
  45. 平澤長吉

    説明員(平澤長吉君) お答えいたします。私は厚生政務次官といたしまして協議もいたし、相談もいたし、私どもそれに参画をいたして大臣もそれぞれ処置をし、同時に私東京で厚生省の中にある公務員諸君もやつておるのであります。さように御承知願いたいと思います。
  46. 内村清次

    内村清次君 そうすると千鳥カ渕の現地に行かれましたか。
  47. 平澤長吉

    説明員(平澤長吉君) 私は私の要務がありまして昨日東京へ入りましたので未だ千鳥カ渕には参つておりません。
  48. 内村清次

    内村清次君 あなたの先ほどからの御答弁を聞いておりますと、公務員の方で、或いはあなた自体も基本的な問題については話合をしつつあるというお話でありますがそれは当然であります。併し事実を突止めてみると昨日帰られて現地にも行つておられない。それでこのような私たちのこの真剣な委員会における答弁の席に当られるというのはおかしい。私たちが要求しておるのは厚生大臣、而もこの前のときにも現に国会に来ておられながら委員会に出て来られない。厚生大臣は今回の内閣改造に当つて自分は相当引揚問題には自信を持つて今後これに努力するということを言つておられるそうであります。だからこの委員会はこの逼迫したところの痛切な遺家族の要求、これを前国会から我々は真剣に政府に要望しておるのであります。かよう大臣所信があるならばなぜこの委員会に出て来てその所信を発表して頂けんだろうかということで委員長を通じて出席方を今日まで要望しておる。それに今回の切迫したところのこの問題の解決に当りましても、一昨日から折衝しておる理解ある大臣ならば本当にどうにかしてこの問題を一日も早く解消しなくちやいけない。こういうような即ち私たち態度からして全委員の方方も御出席になつたのである。こういうふうにしてこの参議院の特別委員会というものは真剣に取組んでいるのであるからして、是非この厚生大臣を出して貰いたい。私はそのためにひとつ委員長におきましては時間も一時になつておりまするからして暫く休憩を、これは議事進行として提案いたしたい。と同時に私は要求したいことは、先ほどから外務政務次官も言つておられまするように、できればひとつ次官からこの委員会にいまひとつ吉田総理出席を要求して頂けまするように、この点も特段の御努力をお願いしたい。休憩を暫くして頂きまして、この再開と同時にひとつ是非ともこれは今日解決しないとこの問題というものは非常に悲しい事態が起つて来る。私たちはこう直感いたしまするからして、どうかひとつそのような手続を御承認頂きますよう委員長にお願いいたします。
  49. 千田正

    委員長千田正君) 内村委員のお言葉、動議が出ておりますが、平澤政務次官に特にお願して置きたいのは、何故厚生大臣を我々は要求しておりますかというのは、昨日もこの留守家族代表者会見した場合において、留守家族代表の要望というものは吉田総理大臣に会いたいんだ、外務大臣に会いたいんだ、ところが再三箱根まで足を運んでいつたけれども会われない。はつきりした所信も聞かれない。それで絶食運動に入つた。ところが橋本厚生大臣は、総理大臣から一切この問題の解決は私は一任されて来ている、だから君らが吉田総理大臣に会うという気持があるならば俺に会えば一切解決できる、こういう強気な返答をしておられる。而も外務大臣に対しての、いわゆる講和条約条約文に対する要求を井口次官に要求しておつたところが、井口君は次官であつて、私は飽くまでも総理大臣から一括してこの問題の解決を委任されておるのだから井口君など呼ぶ必要はない。俺によつて返答すればそれが総理大臣の意向なんだから、こういう強気な橋本厚生大臣返答をした。あなたは昨日お帰りになつたのだからおわかりにならないと思う。私たちが要求するのは、吉田総理大臣がそれほどこの重大な問題を橋本厚生大臣に一括して総理大臣の意向を伝えているとするならば、国会を通じて橋本大臣が当然我々の質疑答えなければならない。そのために我々は要求を出しているのでありまして、その点は厚生政務次官の御苦労はまことに多といたしますが、橋本大臣が再びここに出席しない以上は、我々はこの会を一応休憩の動議がありましたから休憩いたしまして、午後から出席を改めてお願いいたします。どうぞお願いいたします。
  50. 平澤長吉

    説明員(平澤長吉君) 今委員長からのお話がありましたが、私は卒直に申上げますと、この委員会出席する前に橋本大臣に会いまして、併し体が悪いというのでございまするから、私は出かけて行きまして留守をいたしておりましたのでございますから、経過も承わりまして、一応今の委員長が仰せられるような経過を、多少の違いが或いは取急ぎでありましたからあるかも存じませんけれども、大体お聞きいたしたのであります。従つて大臣が出られることが妥当でなかろうかと私だけの考えをもちましたので申上げましたけれども、私が見ましてもちよつと加減が悪いようでございますので、それじや私が出て自分の関知する面だけでも、又自分の考えておるところも申上げようというので出て参つたような次第でございますが、今委員長からお話もありまするし動議もございまするから、私からどういうことになりますかわかりませんけれども御趣旨のあるところを伝えることは私いたします。
  51. 千田正

    委員長千田正君) 厚生次官から特にお伝え願いたいのは、その点だけであります。我々は吉田総理大臣出席を要望しているのですが、それがお疲れのようで、且つ又御病気で来られず、一括してその責任を委任されているという橋本厚生大臣から、はつきりとした吉田総理大臣の実際の所信のほどをお聞きしたいというのが今日この委員会を開いたゆえんでありますので、誠に恐縮でありますが午後の委員会再開には是非曲げて御出席願うようにお願いいたします。  只今の内村君の動議は、一旦休憩いたしまして午後厚生大臣出席を要望いたして再開することの動議でありますが、これは如何いたしますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 厚生大臣がいつ出るか、出なければやつてもしようがない。
  53. 千田正

    委員長千田正君) 只今から約三十分休憩いたしますが、厚生省から次官のほかにお見えになつているのはどなたですか。総務課長であれば尚更のことですが、私は政務次官がお帰りになるということがわからなかつたものですから宮崎事務次官の出席を促したのですが、二人とも見えないというのは誠に我々委員会としては不満なんです。はつきり態度を示して貰いたい。委員長から強く要望いたします。三十分休憩いたします。    午後一時六分休憩    —————・—————    午後二時四十四分開会
  54. 千田正

    委員長千田正君) 午前に引続きまして開会いたしますが、各委員の御要望としまして橋本厚生大臣出席を要求しておつたのを、橋本厚生大臣が二日間の留守家族との折衝のために疲労が過ぎてどうしても出席できないよう状態なつた、こういう答弁であります。そこでお諮りいたしますが、皆さんのおつしやつていることは、要するに厚生大臣としての橋本大臣出席を要望しておるのではなくて、吉田総理大臣橋本厚生大臣留守家族との折衝は一任してあると、吉田総理大臣の代りに留守家族の問題を解決せよという、その点に皆さん所信を聞きたいという要望があつたのであります。ところが御本人がそのようなわけでどうしても本日は勘弁して頂きたいということを厚生省のほうから言つて参りましたので、如何取計らいましようか。
  55. 内村清次

    内村清次君 この問題は非常に差迫つた問題でありまするからして、特に委員長も言われたよう吉田総理大臣の代理者としての厚生大臣、こういう意味出席を要望したのでありますが、只今お話を聞きますと、まあ二日間の過労で委員会出席ができない、これはですね、私たちは実際二日間で過労のために委員会出席もできないという健康状態、而も又一方におきましては、もう八日間絶食をしてそうして自分たちの希望の一端を是非一つ貫徹したいというあの悲壮な留守家族代表の方々それの中間にあつてやはりその労を共にしつつ斡旋解決努力しておられるところの指導者のこういう方々の労苦を考えたならば、二日間でのびてしまうというようなことで一体この問題の解決の誠意というものはどこにあるかと私たちは言いたいのです。で、これはやはり過労としたならば何も重労働に当つてもらうというような仕事の割振もありやしません。自動車に乗つて来てここに出席して来られれば、官邸の中で或いは公務員の諸君たちと話合をし合う、その言葉で我々の質疑に対する答弁もできるはずだと思うのです。一つも誠意がない。これはこのままやはり私たちは放置しているということは、今まで吉田総理態度をかくのごとく国会忌避的なワン・マン政治にしました動機というものを、幕僚が真似をするというような民主政治の逆行に対するところの一つの流れにもこれは副うものであつて、この点から考えてもこれは委員会出席要求としては断じて許すことのできない問題です。但し私は並行的な問題をも考えますが、その基本的な問題はこの問題をそれでは政府は放置しておく気持であるか。吉田総理は出て来ない、吉田総理も即ち千鳥カ渕のあの代表者の方々と御面会するという気持もない。その代理を受けたところの厚生大臣もみずから進んで解決の衝に当ろうという気持もないとするならば、一体この問題というものがどういうふうになつて行くか、全くそれは雲をつかむ状態でありやしないかと思うのです。私たち委員会は或いは新聞を見てみますと、特別委員会が何か鋒先を留守家族代表の気持をふさぐような、即ちそれらを解散させるような方向にのみ努力しているというようなことを代表者の一人が言つているようでありますが、これは私たちには以てのほかの考え方である。ややもすればそういうように考えられているかも知れん。これは併し重大な将来残る過誤であると私は思うのでありますが、私たちはどこまでもこの問題を是非強く要望して、政府の誠意を認めつつ、又国民的希望において関係諸国に対してこの日本留守家族の問題、即ち未帰還者の問題、民族的問題解決ようと、こういうふうに私たち努力しておるのであつて、決して留守家族のほうにのみ解散を求めるというようなことの努力ではないのであります。そういう見地からいたしましても、委員長はやはり強硬に一つこの問題の取扱につきましては、時期がある問題でありまするからして、厚生大臣出席を是非ひとつ要望して頂きたい。私も断じてここは退かないつもりです、今日は。
  56. 千田正

    委員長千田正君) それでは内村委員からも非常に御尤もな御提案でありますので、我々も今の問題はどうかして解決してやらなければ当委員会としての使命も甚だ申訳ないわけでありますが、勿論政府としては今明日中に解決するというようなことを言うておりますけれども、どうも諸般の情勢から察するというと、必ずしも直ちに解決できるとも予想できません。それで重ねて明日皆さんがお差支えなかつたならば委員会を開くことにいたしまして、今こつちへ来ております厚生省の代理者に申込みますから、明日必ず出席するよう方法をとつて、明日又委員会を開いて飽くまで吉田首相の代理として、今度の問題の解決の衝に当る橋本厚生大臣所信を聞くということにして、明日開くことにいたしましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 これは病気々々と言つているが何の病気ですか。
  58. 千田正

    委員長千田正君) 今日の今の説明では二日間の留守家族との間の折衝によつて過労でどうしても身体が動けん、こういう厚生大臣の方の答弁です。
  59. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 医者をやつて一つ公正に判断をさせたらどうですか。
  60. 千田正

    委員長千田正君) 重ねてこちらから申込んでおきましよう
  61. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 医者で科学的に判断できる、出れるのか出れないのか。ただ病気だといつて出て来ないことは悪い癖だ。
  62. 千田正

    委員長千田正君) 国会法に基いても、国民の審議機関である国会の委員長からの要請に応じては国務大臣が必ず出席しなければならないことになつている。理由なくして単にただ病気だからといつて断わるということは、我我から見ると甚だ誠意がないというようないのであつて、重ねて申込むつもりで今厚生省の当該官を呼んでおりますから、ちよつと速記のほうはとめて懇談して頂きたい。    〔速記中止〕
  63. 千田正

    委員長千田正君) 速記を始めて下さい。  当委員会といたしまして、先ほど厚生省に対して大臣出席を何しているのでありますが、二日間の留守家族との折衝その他によつて、過労のために出席ができない、こういう断わりなんですが、甚だ誠意がない。片方は一週間を過ぎるまでの絶食までもしてやつておる、二日間くらいの折衝で出席できないなんということは、国務大臣としての執務がとれるかどうかと、我々は甚だ疑問に思う、而も憲法において、国会において要求された場合、当然国務大臣出席しなければならない。理由のない欠席を我々はそのまま納得行きませんので、病気であるなら病気であると、医師の診断をつけてなぜ我々に対してはつきり返事をしないか。重ねて明日又我々委員会を開きますから明日は出席できるかどうか即答して下さい。今速記を中止して大臣の折衝の過程をはつきり、明日出席するかどうか本省に問合せて下さい。  ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  64. 千田正

    委員長千田正君) 速記を始めて下さい。  只今厚生省のほうの連絡事務官のほうから回答がありまして、明日午後ならば必ず出席します、午後一時半頃まではどうしても或いは閣議があるのでその頃までは出られないかも知れませんから、午後二時から開いて頂きますれば必ず出席します。こういう答えであります。では明日午後二時から開きます。  なお今日も先ほど草葉政務次官からはまだ政府側として誠意を尽して留守家族とも交渉しておられるようでありますが、我々の見当から見ると、なかなか今日一日で解決できないのではないかというようなふうにも考えられます。或いはうまい工合に話合がお互いにつきますれば又結構だと思いますが。これを以て閉会いたしまして、明日午後二時から委員会を開きたいと思います。本日はこれを以て閉会いたします。    午後三時十一分散会  出席者は左の通り。    委員長     千田  正君    理事            紅露 みつ君    委員            長島 銀藏君            安井  謙君            鈴木 直人君            杉山 昌作君            内村 清次君            堀  眞琴君            細川 嘉六君   説明員    外務政務次官  草葉 隆圓君    大蔵省理財局外    債課長     上田 克郎君    厚生政務次官  平澤 長吉君