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1951-07-28 第10回国会 参議院 在外同胞引揚問題に関する特別委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年七月二十八日(土曜日)    午前十一時一分開会   —————————————   委員の異動 七月二十六日委員岩傳一君辞任につ き、その補欠として細川嘉六君を議長 において指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件 ○引揚問題に関する件  (引揚促進に関する件)   —————————————
  2. 千田正

    委員長千田正君) 委員会を開きます。  非常に暑いところ皆様には御苦労でございますが、この休会中たびたび委員会を開きまして皆様の御出席願つて、熱心に引揚問題或いは戦争犠牲者に対する対策問題につきまして御審議願いまして誠に有難うございました。突如としてこの二十三、二十四、二十五の三日間、全国留守家族大会が開かれまして、その席上私も参つたのでありますが、この大会の目的につきましてはすでに新聞紙上でも皆様承知通りでありまするが、講和会議を開くに際して、その内容であるところの吉田総理大臣並びにダレス特使との間に取交わされた草案の中に、引揚問題については触れておらない。未復員の数は数十万に上つておるという政府のしばしばの発表にかかわらず、この問題には触れずに講和会議が進捗されるということは実に遺憾である。殊にポツダム宣言の第九條の問題が当時の戦勝国であるところの米、英、ソ連、中華民国、この四大強国の間に取結ばれたところの協約であつて、それを受諾した日本としては過去数年の間まじめにこのポツダム宣言を守つて来たのであります。戦敗国が守つて来て、これを作り上げたところの戦勝用人たちが、一部は勿論実行されたけれども、一部において実行されておらないということは、誠にこれは和解に基くところの講和という題目には甚だふさわしくない、飽くまでもこの問題は四大国のいわゆる共同責任の下にこの問題は解決してもらわなくちやならないものだから、今度の講和会議内容草案の中にもこの問題を当然日本政府としては要望すべきである。これは全然、この間の新聞その他に発表された草案内容にはこの未復員者或いは未帰還者に対する問題は触れておらない。これをどうしてくれるか、こういう問題で、飽くまでもこの講和会議で、未だ捕虜立場で残されておるところの同胞処置問題に対して、日本政府講和会議内容にこの問題を入れて要望すべきであるという結論のようであつたのであります。第一日共立講堂で開かれまして、私は参議院を、皆さんがお見えにならなかつたので、一応参議院立場から、参議院特別委員会は始終変らずこの問題については長い間政府を鞭韃して、あらゆる要望を掲げてやつて来たのだから、この問題についてもできるだけ皆さんに協力する旨を私のほうから申上げて置きました。甚だ僭越でございましたけれども、一つ御了承願いたいと思います。その第二日目は、この留守家族代表者たち国会並びに政府当局吉田総理大臣に対しましてその他の要望事項と共にこの問題を目標に面会を求めて申入れをしたのでありますが、国会にも参りまして、当委員会にも陳情があつたわけであります。更に三日目は鶴見総持寺におきまして、政府の、外務省としましては草葉外務政務次官、倭島外務省管理局長、それから厚生省援護局長、こういう人たちが出られましたし、それから衆議院の各厚生委員会のメンバー、或いは引揚に関する問題の特別委員かたがた見えておりましたが、この席上において各代表者から草葉政務次官に対しましていろいろな質問があつたのであります。ところが政府が突如としましてここに皆様にお配り申上げましたような、昭和二十六年七月の二十五日発行の外務省情報局から出ておりますところの、引揚問題に関する外務省発表情報部長談並びに国際連合議長宛外務大臣書簡というものが発表されて、新聞紙上にこれを一齊に発表したのであります。この発表を聞くと同時に、大会は騒然としてこの問題に対する数の問題、いわゆる死亡の問題、生存者の問題に対する問題を掲げまして、政府にいろいろ質問をしたのでありますが、とうとう将が明かずに三日目はそれで幕を閉じたわけであります。その後この大会代表者たち吉田総理大臣面会を申入れて、総理大臣並びに外務大臣としての御返答をお願いしたいというので、たびたび申入れているようでありますが、何らそれには遂に答えが出ておらない。最後に新聞発表するところによりますというと、いわゆる断食をしてこの問題の貫徹の行動に入つた。今日は新聞によりますと、英国大使館前の千鳥ケ渕公園の近くにおいて断食をやるということが出ております。  以上のような状況でありまして、この引揚に関する問題は非常に重大な問題としてここに現われて来ておるのでありまして、それで我々としまして考えますことは、政府がかような責任ある発表をした以上は、ただ二つの問題しかないと思うのであります。それは死亡されたとして発表された二十三万四千人の人たちの遺族のかたがたに対する今後の国内施策の面、生存されているとして発表されておりますところの七万七千六百三十七名の生存者に対して、今後関係国との間にどういうふうな折衝を進めて行くかという問題、行方不明として示されているところの二万八千七百九十七名の行方不明者に対するところの所在の追及、こういう問題をこれは国外問題として外交折衝、その他いろいろな面において政府が更に一層の努力をしなければならないと思いますが、この点について政府当局においてはどれだけの確信のあるところの施策発表できるかどうか、これが現段階におけるところの二大重点として皆さんに慎重に御審議願いたいし、又政府に対して御要望して頂きたい問題であると思うのであります。只今草葉外務省政務次官がお見えになつておりますので、一応今までのいきさつにつきまして御報告をお願いしまして、各委員から十分な御質疑を願いたいと思う次第であります。  草葉政務次官に申上げますが、先ほどからの当委員会としましては、これは新聞発表される前に御承知通り参議院が過去五カ年に亘つて引揚に関する特別委員会があり、懸命にこの問題に対しては特に重大なる関心を持つて我々がやつて来ておるのであつて、更にこの休会中といえども、委員長である私は一日も欠席することなく国会に来ておるのでありまして、若しこういう重大発表がおありになりますならば、一応我々としては国会のほうにお諮りを願いたかつたというのが各委員の非常に要望しておつたところであります。でありますから、政府立場としまして皆さんの御了解を得る点からしましても、一応外務当局としての今までの経過その他について御説明願いたいと存じます。
  3. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 引揚の問題につきましては、当参議院におきまして特に重大な関心施策とを従来とも講じられ、従つて特別に在外同胞引揚に関する特別委員会を設置されまして、第一回以来毎会期にこの特別委員会を設置されまして、特別委員会といたされましては熱心に引揚促進並びにその他の処置について御検討を頂き、又政府を鞭撻して頂きましたことを衷心より感謝いたしておる次第であります。その後ソ連地区から未引揚者の問題につきまして、関係各国は全部引揚を完了いたしましたが、ソ連地区並びにソ連勢力圏内におきまする在外帰還同胞が相当数残留いたしておる情勢から、引揚の問題の中心はそこに移されて参つたのであります。従いまして本委員会等におきましても、引揚の問題の焦点をその点に置いて御検討を願い、又政府をいろいろと鞭撻して頂いておつた状態であります。いよいよ対日講和の問題が、会議等の開催が決定いたすにつれまして、発表になりました條約草案の中に、捕虜処置に関する項目が載つておりません関係もあり、又いわゆるソ連圏内におきまする相当多数の未引揚者の現状がそのままの状態に相成つておりまする関係からと存じまするが、全国協議会の主催によりまする全国留守家族大会が二十三日以来開かれて参りましたが、二十五日でございましたかと記憶いたしまするが、二十五日には鶴見総持寺におきまする大会に私も出席いたしまして、いろいろ留守家族からの引揚の問題、その他の問題についての質疑に対しましてお答え申して参つたのあります。その翌日衆議院におきましても委員会が開かれて、この問題の検討をなされ、又同日未帰還留守家族代表かたがたがそれぞれ手分けをして政府機関を歴訪しておられたのでありまするが、私のほうにもお見えになりまして、それらのかたがたに対しましては十分従来の関係並びに今後の関係、條約草案というものと引揚との関係という点につきまして縷々御説明申上げ、今後の政府の強いこの問題に対する考え方等お話を申上げ、それらのかたがたに御了解相当願つたものと考えておるのであります。併し只今委員長からお話のありましたように、全体の大会の模様は、この問題の解決のために相当強固な態度をとつて進んで参る情勢に進んでおることを聞き及びまして、誠に留守家族の御心情は衷心よりお察しを申上げる次第でありまするが、この問題の解決のために、引揚促進のために慎重に今後施策を講じて来なければならない問題だと存じております。従いましてなお政府といたしましても、留守家族皆さん方十分誠意のあるところをいろいろお話申上げて御了解を頂きながら、留守家族国民国会皆さんは勿論のこと、政府共々に未帰還同胞引揚促進のために全力を尽して参りたいと存じております。どうぞこの上ともよろしくお願いいたしたいと思います。
  4. 内村清次

    内村清次君 只今草葉政務次官からの経過お話につきましては、その内容の点につきまして、本委員会においてなお今後継続的にこの問題については熱意を持つて協力をしてもらいたいというような答弁、御報告があつたように認められまするが、私たちはこれは政務次官言葉を待つまでもなくして、本委員会が、第一国会から特別委員会を設置して、この問題と真剣に取り組んで、今日まであらゆる努力を傾倒いたして来たことは、これは申すまでもないことでありまして、草葉外務次官もこの委員会委員としてこの委員会経過についてはよく御存じのはずであると思うのであります。ただ誠に私は今日この対日講和が切迫をいたしておりまする段階におきまして、只今のごとき経過報告をここ述にべられるところの外務省及び又その責任ある地位にあられるかたの言葉としては、誠に私たちは、これは委員の一人といたしましても、何と申しまするか、慚愧に堪えないと思うのであります。我我の今日までの経過を十分知り尽しておられるならば、なぜ今回発表せられたところのこの未帰還者状況についての公式発表を、なぜ委員会において当然御発表になつて、そうして真にこの状態を訴えつつも、我々と共に今後の対策を立てる、或いは又この公表というものが如何なる即ち真意が含まつておるかというこをも十分検討の上において、この関係官庁というものが国民に対して真相を訴える点の、即ち委員会審議要望しなかつたのであるか。こういうことをも外務当局はせずして、ただ今回これは留守家族かたがたが当然対日講和の問題と連関いたしまして、そうして非常な待望を持つておられるその人がた全国的な今回の集りに、痛烈に政府施策に対しまする批判をするということは当然なことでありまするが、そういうような直接的なる即ち大会の空気に支配されて、そうしてこれを御発表になつたのであるかどうか。又何か政府とこの留守家族者連繋をいたしておりまするところのそういう組織で、裏面的な連繋の上において、そうしてこういう政治的な重大なる段階の時期にこの政府の即ち発表をして、何かの政治的意図にせんとするがごとき状態において発表されたのであるかどうか。私はこの三つの点につきまして率直に一つ答弁してもらいたいと思う。  我々はこの引揚げ問題がこの委員会の重大なる生命の一つであります。又使命の一つでありますゆえんからいたしまて、相当な即ち国民といたしましての決意も私たちは持つておるわけであります。従いまして今日までとつて参りましたところのその処置というものは、勿論これは国際関係とも微妙な関係があるのでありまするからして、極めて政治的な動きに対しましては、この急迫した段階においてはお互い一つ戒め合つて、そうして真に我々の言動そのものが直ちに直結をいたしまして引揚げ促進になるように、或いは又他面戦争犠牲者の本当の国家的な補償の実現がなされるようにというような考え方で来ておつたのでありまするが、私たちは今回の政府の突如の発表によりまして、全く考えを新たにしなくてはならないような段階に立至つておるのであります。即ち今回の発表には、五月の十四日及び六月の十九日という日にちが明記されてあります。そうして公式的に或いは国連書簡を送つてつておる。相当地固めができておつて、結局今日までこれをそのままされておつたということは、何か政治的な機運を狙つて、そうしてこの問題を国内的な政治一環として発表する。或いは又は対外的な、国際的の即ち政治的な問題の一環としてこれを発表するというがごとき状態に、政府術策を持つたとしか私たち考えられないのであります。而も又この国際的な問題につきましては、これは常に私たちは、国連の即ち人権委員会においてもこれを取上げられた。而も国連人権委員会においては、人道と正義の立場からしてこれを正当の意味から相手国に訴えて行きますところの、即ち慎重な外交的な問題で処理されようとしているのであります。それにもかかわらず、我々の同胞を抱いておるところの即ち国、又は我々の同胞在外に即ちおられて、そうしてそれを一日も早く我々は帰還してもらいたいというその日本の国、その国みずからかくのごとき術策を弄するというがごとき問題だとしたならば、これは大きな問題である。この内容につきましても私は後刻、重大な即ち発表がなされております点について質問を申上げて、その真相を突詰めたいと思うのでありまするが、先ずこの三点につきまして、政府はどういう意図を以て今日まで対処せられておるのであるか。その点を明らかにして頂きたい。
  5. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 実は従来とも終戦当時にあります在外同胞の最も正確なる数というものをあらゆる方法でつかみまして、これが現在知り得る最大の正確な数字であるという数字と、従来から引揚げて参りました人たちの数とを引去りました数字が三十六万九千三百八十二名という数字であると発表しながら進んで参つたのであります。そうしてこの三十六万九千有余の未帰還者数字に対しまして、再三再四ソ連に対しましてその内容通報をそれぞれの手を経て要請いたして参りましたが、どうしてもその確報を知ることができない次第でありまして、従いまして政府といたしましては、国内に残つておられます留守家族についてその詳細を十分に知り得る方法をとつて参りたいと存じまして、従来とも一方それに主力を注ぎながら留守家族状態調査し、その報告を求めて参つたのであります。その報告は従来とも三回ほど政府発表いたしました通りで、昨年の八月三十一日現在におきまして、三十六万のうち三十一万六千余名の各家庭状態を知り得、その後昨年の国勢調査等を加えまして、十二月末日において三十二万三千有余をつかみ得ました。成るべくこれを詳細に知る方法をあらゆる努力をしながら参つたのであります。本年の五月一日現在におきまして、今回発表いたしました三十四万五百八十五名という数字に対する留守家族調査をつかむことができた次第であります。従いましてその都度これらの点につきまして国会、その他の方法によつて発表して参つたのでありまするが、今回の発表は、今度発表した内容にも詳しく申しておりますように、実は従来発表した調査並びに従来からの発表等を一連とした、一環のものとしてまとめたものであり、或いは国連に、或いは日本国会等におきまして発表いたしましたものをまとめまして、相当今まで発表いたしましたもののうち、最も内容を詳細に発表いたしたのであります。この発表の出るについて、全国大会があるから、その時期を狙つたのではないかということが御質問の一点のようでございましたが、これはこの全国大会内容等が今後どういうふうに進んで参りますか、まだそういう内容等を予知しない前に準備いたしまして用意をしておつたので、決して大会目当発表いたしたという意味のものではないのであります。  一方昨年、主として国会中心にいたしまして、その他の人も加えて、国連特別委員会に特別に取上げられて、総会の決議におきまして引揚の問題に関しまする国連審議によつて、三人の特別委員が六月末設置されまして、発表になりました。これに対しましては従来政府といたしましても、国民は勿論のこと、成るべく速かに日本国内にも調査に来て頂きまして、そうして現在の日本留守家族状態をつぶさに承知をして現在ソ連関係におきまして全部完了いたしたと申しておりまする状態と、日本の現実の状態との詳細な調査を懇請して参つたのでありまするが、その懇請を一層強くいたしまする内容におきましても、この機会に従来の関係国民皆様にも十分承知をして頂いて、こういう状態になつておるということを了解して頂いて、引揚促進の完璧を期して行きたいと、こういう考えにほかならんのであります。この点どうぞ意のありまするところをお汲み取りを願いたいと存じます。
  6. 内村清次

    内村清次君 只今の御答弁では、ただ私の質問に対しましては、大会目当ではなかつた政府はあらゆる調査機関を通じての調査集録をしたと、こういうような御答弁でありますが、丁度第十国会が終りまする終末において、一回倭島局長もこの委員会出席されたはずであります。丁度今回の発表は六月の十九日になつておりまするから、この六月十九日は国会終了後になつております。併し第一回の発表は五月の十四日になつておる。そうしますると倭島局長は今日も出席されておりませんが、勿論出席は私たちは要求しておつたのでありまするが、局長の、当時私たち休会になります関係で、やはり特別委員会というものは継続審議をやる、而も又我々は地方に調査に出かけまして、そうして留守家族代表かたがたともお会いをして、国会動きについての報告もせなくてはなりませんからして、十分とこの問題につきましては当時出席の際に追及いたして、政府調査状態につきましても、又はこの三人委員会状況につきましても我々は聞いたのであるが、国連の問題については何らその後の状況は変化しておらないというような状況であるし、この数字の点についても一言の答弁もなかつた。五月の十四日に書簡を送つて、そうしてこの集録がすべて国連方面に出ておるという状態であるとしたならば、なぜその委員会のほうに率直に数字を明らかにしないか。勿論この数字の問題につきましては、各委員かたがたも、その調査科学的根拠についても相当質問がなされておつたのであつて、現在まで政府が一方的に発表いたしておりまするところのこの数字というものにつきましても、多大の疑念を持つたところの委員かたがたもおられるのであります。勿論この数字は相当調査の上につきましても困難性があることは我々は十分含みを持つておる。併しながら留守家族の身になつて見ると、正確なる在外の自分の肉親の動静を知りたいという切実な希望においては、これは我我といたしましてもよくその心底を察することに全く私たちは切なるものがあるのでありまするからして、早く最も正確な数字政府は一日も早く発表しつつ、その数字を基礎にして対外交渉を行わなければならない。こういうようなことは当然でありまするが、それを発表せずに、ただ今回大会のために発表したのではないというようなお言葉というものは、私たち委員会状況を無視し、又国会自体に対しましてのかかり合いを非常に軽視をしておられる点を率直に政府もこれは認めざるを得ないと思う。ただ一方的にこの問題を考えておられる。而もその道程においては何ら熱意のあるところの施策考えておられない。こういうようなことでありまするからして今回の、或いは政府は先ほど言われましたように大会目当ではないと言われまするけれどもが、その大会答弁に困つてこれを発表して見ると、死亡者が二十三万もあるというような状態において、恐らく全国から集つて来られたところの留守家族かたがたはなお且つ憂慮の念を深められておるのではないかと私たち考えるのです。こういうような、これはもう私たちも一様に驚いた数字でありますが、この死亡者数の二十三万四千百五十一名という数字というものは、どういう根拠においてこれは集約されたのであるか、この点について明らかにして頂きたい。  同時にその委員会に対しますところの発表を、なぜ今日まで差控えたのでありますか。この点に対していま少し一つ熱意のあるところの答弁をして頂きたい。
  7. 千田正

    委員長千田正君) なお只今政府側として出ておられるのは草葉外務政務次官のほかに、外務省からは吉田引揚課長厚生省関係からは田邊援護局長見えております。
  8. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 五月十四日の総理から国際連合総会議長宛書簡添附書類の中に載せた、日本政府ソ連代表の演説に対する見解の中には、これは実は大体私が三月八日に参議院で御答弁申上げました、それからその以前に申上げましたことを、殊に初めて三月八日にこの数字発表を申上げたことを中心にここに挙げております。六月十九日のときには五月一日のこの集計の全体を挙げて来ております。  そこでこの五月十四日のときでも、もうすでに五月一日の集計は現在では或る程度できておつたのではないか。又それができておらんにしても、六月十九日にこういう書簡添附を出すときには、五月のときに、倭島局長がこの委員会出席したときにも、もつと詳細に実は発表したほうがいいじやないか。これは御尤もだと思います。ただその発表する資料がよほど検討をしないと、後から訂正をしたり、いろいろまごついて、信を置きがたいものになりますので、発表内容発表の時期については、これはあらゆる観点から相当検討をしてかかるという、実は従来の外務省態度をとつてつたような次第であります。  そういう意味におきまして、今回六月十九日に添附書類発表いたしました内容を併せて七月になつてからまとめ上げて発表いたしたような次第でありまして、五月の国会の当時におきましても、勿論或る程度まではこの内容はつかみ得ておつたと存じまするが、発表をいたしまする際には、只今申し上げましたような意味十分検討して発表することが妥当であるとして今回一緒に発表いたしたような次第であります。  なお死亡者の率は、二十三万四千百五十一名という数字、誠に三十四万五百八十五名のうちでいわゆる比率の最も多い数になつております。これは実は私も大変最初のときには不可解に感じたのでありまするが、従来からの大体統計の取りようは、引揚て来た人と当然引揚ぐべくまだ残つておる人とこの二つ考えて、そうしてその数字を出しまして、そうして従来ともすでに公報その他によつて死亡を通知をし、本人の家族にはそれぞれの手続をとり、或いは戸籍的な処置も済ましたというような人たちも、正式にはまだソヴイエトと日本との関係における引揚の問題については、未引揚の中に入れて来ておつたのであります。この点が或いは御了解頂きにくい点であるかとも存じまするが、そうしてだんだんと十分御検討願いますと、その点が御了承願えると思います。ソ連はこれだけしかおらない、これだけ帰したと言うのであります。併しこちらはそうじやない、これだけあるのだ。そのこれだけある中には従来から死亡の取扱いもすでに済んだ、国内処置としては済んだものも当然ありますし、済んだものもあるということよりも、済んだものが大部分であります。殆んどそうであります。併しソ連はそういうものはないという断定を下して参りますからそういうことに相成るかと存じます。大体そういうことでございます。詳しい二十三万の内容につきましては、これはすでに一々家庭通報済のものが殆んどであります。
  9. 内村清次

    内村清次君 死亡者の数についてはまだ了解に苦しみますが、その前に今回の政府国連議長に対するところの書簡というのは、これは自発的に日本政府書簡として報告をしたのであるか、或いは又は国連のほうから政府にこういう資料の提出を求められたのであるかどうか、この点を明確にして頂きたい。  それと申しまするのは、この委員会では勿論、三代表国連委員会のほうへ出席をされた、而も又その代表報告によりますると、三人委員会が成立し、今後その調査のために日本へ来朝せられる機会があるであろうという報告が来ておる。その間において委員会といたしましても、正確なる数字を、政府がこれを是非調製してもらいたいということは、この委員会としての政府に対する要望の第一の事項であつたはずであります。恐らく政府もこの委員会要望に応えつつ調査をせられたことは、我々も感知せられるところでありまするが、ただ来朝の際にこれを整備しておく、而もこれの整備の過程においては、必ず要請した委員会発表しつつ、その根拠の正確さ、方法の正確さ、こういうような点をお互いが納得し合いつつここに立派な調査をし遂げるといいうことが政府の任務であつたはずでありますが、そういうような関係もありながらこれを出されたのは、これは先ほど言つたように自発的に出したのか、又向うからの要請で出されたのか、その点をはつきりして頂きたい。
  10. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 実は未帰還者調査につきましては、従来とも日本政府調査の判明し、確報を得まする状態に応じてそれぞれ関係方面等とは十分連絡をとつてつて来たのであります。殊に第五回の国際連合総会におきまする状態からは、関係国は四月三十日までにこの報告をするようにというので進んで参つてつたのでありますが、日本政府は従来とも十分調査状態につきましては関係方面とも連絡をとつてつてつたのであります。ここに今回御発表申上げました書簡は、全く日本政府の独自の立場におきまして、要請その他の内容を持ちました、その資料として一括して附けて出したのであります。これ以外には従来とも向うからの特別な要請によつてつたのではなく、日本政府日本の未帰還状態の詳細を訴えてそうして三人委員等の来朝を衷心より要請いたす趣旨を以ちまして出しております。
  11. 内村清次

    内村清次君 この死亡者数字につきましては、今の次官のお話では、すでに公報を以て各家庭通報済だという答弁でありまするが、これは非常に重大なことであろうと思います。そういたしますと、結局現在の留守家族かたがたという者は十万、生死不明の二万八千を加えまして十万の留守家族かたがたになるわけであります。この二十三万四千の死亡者かたがたに対しましては、これは全部公報を以てもうすでに通知済であるということは、これは事実でありますかどうですか、その点を伺います。
  12. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) これは先に申上げましたように実は全部がすでに発送済ではございません。大体九割までは発送済であります。あと約一割程度が正式な手続の発送済ではありませんが、この家族等に対しましてはその点よく連絡をし、少くともそういう意味においての了解はいたしておると、こう考えております。
  13. 曾禰益

    ○曾祢益君 只今の同僚内村君からの御質問に対しまする草葉政務次官の御答弁では、どうも私たち納得ができないのであります。即ち勿論国際連合との折衡はこれは内閣の問題ありまするから、一々その折衡につきまして国会のほうといたしまして、ああしろこうしろと申上げるつもりはございません。併しこの委員会がこの引揚げ問題に従来関心を持ち、常に政府と或る意味におきまして一緒になりましてこの人道問題の解決に力を尽して参つた経過から申上げるならば、やはりこの六月の幾日かにかような重大な内容を持つているところの文書を国際連合に出され、而もそのことが事前に、或いはすぐに事後にこの委員会報告されるという措置がとられていなかつた。これは極めて遺憾なことだと存ずるのであります。政府はかような重大な問題につきまして、成るほど国際連合に外交上の手段をとられることはこれは当然でありまするけれども、この問題が国際連合における取上げ方から見ましても、ただ單に政府の一方的な措置だけではなく、真に国民が全体としてこの問題に如何に重大な関心を持つているか、而して政府が一たび確定的な数字、即ち死亡者の極めて多いことは、成るほど心理的に申しますれば、我々から見ましても非常なシヨツクを受けるのでありまするが、併し数字全体につきまして、例えば生存者の数は如何に確認しているか、行方不明者は如何なる理由を以て行方不明者と取扱つたか、それからもとより死亡者の確認の方法、それの数字の信憑性につきまして、全日本国民がその信憑性について毫も疑いがない。又そのことは少くとも国会の当該委員会におきましての完全な支持の下において発表された。こういうことこそが真にこの外交をして効果あらしめるゆえんではないかと思うのであります。さような手続がとられないで政府発表された。そのことについて我々が十分な確信を持つて、直ちに政府の言つている通りだという力強い支持が与えられないという状態においてなされた外交は、これは余り有効でない。いな、却つて内におきましてさような立派な結束ができていないことは、この外交に対するマイナスですらあると私は考えるのであります。その意味において只今の御答弁では、全く委員会を軽視している。又委員会と緊密なる協力においてよりよき外交をやるべきであつたということに対する御説明には、甚だ失礼でありまするが、私はなつておらない、かように思うのであります。それは意見でありまするが、そこでこの際発表された事後といたしましては、政府はこの数字根拠を、只今死亡者の確認を如何にしてされたか、生存者の確認は如何にしてされたか、行方不明者の確認は如何にしてされたかという立派な根拠を中外に速かに発表されることが絶対に必要である。どうぞその意味におきまして、もつと心の籠つた、確信のある態度をこの際打ち出して頂きたい。通り一遍の返答で済む問題では断じてございません。どうぞその意味におきまして、幾ら時間がかかつてもよろしいから、例えば一つの特定の関係者の名前を挙げられまして、如何にしてこの人の関係はどういうふうにして確実にしたのだ。それから更にその集計といたしまして、全関係者の名前を全部公表される、具体的にそれだけの措置をとつて頂きたいと思いますが、それに関する政府のお考えを伺いたいと思います。
  14. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) お話のようにこの外交の最も強さと申しまするか、これは全く国会政府とが一体になりまして進んで行くことにある、こういう点は御同感であります。従いまして従来ともそうでございましたが、御意見の点に対しましては、今後一層委員会等とも、国会等とも密接な連絡をとつて進んで行きたいと考えております。  この死亡者調査につきましては、実は附記と申しますか、次の項目に詳しく載せておりまするが、実際この方面を担当いたしておりまする引揚課長、又厚生省関係者から一つ詳細に御説明申上げたいと思います。
  15. 吉岡俊夫

    説明員(吉岡俊夫君) この発表されました数字の基礎になりました調査方法につきまして御説明申上げたいと存じます。この発表にも書いてありますように、調査留守家族からの届出とか、或いは抑留者からの現地通行でありますとか、或いは引揚げて来たかたがたからの報告が基礎になつているわけでありまするが、一番基礎になつておりますのは、何と申しても留守家族からの届出によりまして、まだ誰々が帰つておらないということをつかむわけであります。留守家族と申しましても、親もありますし或いは兄さんもある。或いはそれよりもつと遠い親戚のかたもある。従つて届出が同一人についても二、三の人から届けられることがありますから、それをそのまま集計したのでは重複ということになりますので、すべてその届出は先ず本籍地に通報されまして、そこで以て重複が除かれるという方法がとられたわけでありますが、この点から重複という点は全然ないわけでございます。一応こういうふうにしまして留守家族からの届出によりましてまだ誰々が帰つておらないということがわかるわけであります。その後その人につきまして、昨年まではまだ引揚者が帰つて来ておられたわけでありまするが、上陸地においていろいろの情報を聞くわけであります、つまり帰つて来る前に向うでどういう人を知つてつたか、そうしてその人はどういう状態であつたか、つまり生きておられたかどうか、或いはどういう事情で亡くなられたかという調査をいたしまして、判明した限りにおきまして、だんだんAならAという人の情報が積重ねられて行くわけであります。例えば引揚げて来た人の話によりまして、或る人がどこそこで死んだということが確認されれば、その人は死亡者として確認されるわけであります。或いはどつかのキヤンプでどういう状態でおられたということがわかれば、その人の生存、その時期における生存資料として載せられるわけであります。こういうような方法によりましてだんだんすべての人々の情報が、資料と申しますか、生存資料なり或いは死亡資料なりが積重ねられて行つて調査が進められて行くわけであります。そしてその人その人について得られました資料は、それぞれ留守家族かたがた通報されております。従つて先ほど問題になりました二十三万四千百五十一名の死亡の人々につきましても、留守担当のかたがたにはそれぞれ死亡公報を出したものは勿論、そうでなくてもこういう情報によつて大体この人は死亡が確認されるというような状態であるということについては、それぞれ通報されているわけであります。生死不明者と申しますのは、只今のそういうふうな調査方法で幾ら情報を集めようとしても、終戦後全然情報のないかたがたがこの中に入つているわけであります。大体そのような次第であります。
  16. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 そうしますと、これは大体国内における留守家族の届出が主になつておりますから、留守家族としては自分の家族は生きているか死んでいるかということは、個別的にそれぞれもう了承して知つておるということが大体の現状でございますか、それをお聞きしたい。何となれば、生きておつたと思つていたところが、非常に多くの死亡者があつた、それでこれは自分のところの家族は死んでしまつたのかというようなことで非常に心配されているという向きもあつたり、最近の大会についても、この数字を見てびつくりして非常に泣かれたりいろいろされたということを聞いておりますが、そういうことで具体的に自分の留守家族かたがたは、自分のものはどうなつているのだということは、外務省等において知つたことをそれぞれ具体的に留守家族に通知して知つているかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  17. 吉岡俊夫

    説明員(吉岡俊夫君) 只今お尋ねの点は、外務省調査した結果につきまして、或いは生存者は、生存しておるという情報が例えば二十三年の一月にある、その後は全然通報がない、或いは或る人につきましては二人以上、或いは三人以上の死亡確認者があるので、大体死亡が確認されておるというふうな状態につきましては、それぞれ留守担当者のかたには通知がしてざいまして御承知であります。
  18. 曾禰益

    ○曾祢益君 大体今のお話で、先ず三十四万人というものが個々に留守家族について与えられた数字であるということ、それから死亡者生存者が大体いろいろな方面からの引揚者帰還者の情報等を集積したあげく、大体間違いないという確認のもとに個々になされておる、こういうお話でありましたが、例えば死亡の確認にいたしましても、生存の確認にいたしましても、なかなか引揚げてきた人の話なんかでは確認の確度が十分に信憑が置けるかどうか、そういう点については十分に、例えば二人も三人もはつきりと生存なり死亡の確認者があつた場合に大体こちらのグループに入れる、そうでなければ生死不明者に入れるというような細則があると思うのですが、その点はもう少し御説明を願いたい。つまり我々がこの数字について十分な客観的な対外的な確信がどの程度持てるか、確度の問題についていま少し御説明を願いたい。
  19. 小酒井義男

    ○小酒井義男君 只今質問とやはり同じような質問なんですが、御回答を願いたいのですが、例えばこういう例があるのです。一つの情報では、貨車でソ連領へ送られた中に乗つてつただろうというような情報が入つておる。又一つは、どこどこの戦闘に確かに一緒におつたから戦死をしておるだろうという二つの異つた情報が、どちらも今確認されないという形のままで、現在はやはり未帰還者の中に入つておるという例が往々にあるわけです。こういうのは今度発表された中ではどちらに入れられておるのか、こういう点も一つ今の曾祢さんの御回答と一緒に回答して頂きたい。
  20. 吉岡俊夫

    説明員(吉岡俊夫君) お答え申上げます。このたびの死亡者の中に入つておりまするのは、公報が出たものでありますとか、或いは公報が出ておりませんにしましても、非常に確度の高い者だけが入つております。そうして確度の非常に何と申しますか、情報についてもそれぞれ矛盾したような情報もあり得まするし、そういうふうな場合にはむしろ生死不明のほうに入つております。そうして一人の人につきまして或る情報によりますといついつシベリヤ行きのほうの貨車に乗つていたらしい、或る情報によるとどこかの戦闘で死んだらしいというふうな矛盾した情報がありまする場合には、いろいろ検討をしまして、例えば個人個人について究明するばかりじやなしに、例えば満洲にソ連軍が入つて来たときに、どういうふうな状態日本人が避難して、その途中でどういう目に遭つて、どういう人たちが脱落したか、私たちはこれを一般資料と申しておりまするが、個人資料に対しましてそういうふうな一般状況もそれぞれ詳しく調査しております。そういうような一般資料とも睨み合せまして、確度の高いほう、そうして又情報の新らしいほうとかいうふうにしまして、種々究明をしまして、信憑性の高いほうをとつておる次第であります。
  21. 千田正

    委員長千田正君) 私からちよつとお伺いしますが、今の草葉政務次官の御発表によると、すでに二十三万四千の人たちの大部分は死亡が確認されておる、留守家族も知つておるのだということになると、これは厚生省の重大なる問題になると思うのであります。この点を私は田邊局長にお伺いしたいのですが、厚生省の予算のうち三十数万が未復員者としての当初予算を組んでおるわけです。而もそれが且つ又未復員者給与法、特別未帰還者給与法第によつて留守家族に対する予算がすでに組まれておる。組まれておれば、同じ政府部内において、片方はすでに死亡の通知を出しておるからわかつておるとするならば、これは遺族のほうもそれによつてなされておらなければならないにかかわらず、一方においては厚生省の予算といたしましてはこの三十数万の者が帰らないものとして当初の予算を組んでおられたとするならば、非常にそこに矛盾が出て来る。厚生省としての立場は、あなたがたはそれを知つてつて三十四万の未復員者というものの引揚態勢に対する予算を組んだとするならば、これは厚生省として重大な失態だと思う。この点は事前において外務省からすでにそういう死亡通知がなされておつて、二十三万四千のうちの大部分は死亡者であつた場合には、令まであなたがたがやつてつたところの予算の要求というものは空虚なるところの予算であつたということに認定せざるを得なくなつて来るのであつて、これは厚生省立場から明らかにしてもらわなければならん。この点においては田邊局長から一応の事情を説明してもらいたいと思います。
  22. 田邊繁雄

    説明員(田邊繁雄君) お答えいたします。厚生省におきまして毎年度引揚げて来ます者の援護に要する経費を計上いたしております。例えば舞鶴なら舞鶴、函館なら函館に引揚げまして、家へお届けするまでの予算というものを組んでおります。これはそのときどきにおいておおむね引揚げて来るだろうという数を推定いたしまして計上いたしておるのであります。本年度におきましてはその数をおおむね十五万人と推定いたしまして明確な数は忘れましたが、十五万と推定いたしまして計上いたしておるような次第であります。なお未復員者給与法におきましても、特別未帰還者給与法におきましても、十五万という数字を一応の基礎といたしまして措置をしておるような次第であります。ただ先ほどのように死亡者が二十三万あつたという事実は、この予算を組む当時においては我々は詳細を知らなかつた外務省から正式の通知がなかつた。最近これが公表になる直前において我々のほうにそれが通知になつたという事情でございます。
  23. 千田正

    委員長千田正君) ほかにございませんか。
  24. 細川嘉六

    細川嘉六君 千田委員長からこの数字発表について、千田君が毎日国会に出ておられるのに、外務省当局から何の知らせもなかつたと、これはまあとんでもない話です。これほど委員会が何日かに亘つてつておる。殊に生死問題は重大問題であります。それがために非常に努力して来ておるものが、それにもかかわらず、委員長にまでも知らせない、委員は勿論そうだ。国民は勿論のこと、何も生死の問題についての、今日発表があるまでは何も知らなかつた。これはまあここにたくさんかれこれ申すことはないのだ。政府委員会国民もみんな眼中に置いてないということを端的に現わしておる。こんなことはあろうはずがない。大部分がこの調子でやられておるわけで、何の政治があると言えますか。さつき草葉次官が誠意を持つて何とかと言われましたが、これは言葉だけであつて、従来からも、又今日においても、本当に誠意を示してこの一大問題に対処しておられるか。これは言語道断である。今そんなことを私は取上げて言うたつてしようがないことでありますが、従来三十七万の人間がソ連領におると、或いはソ連地区という言葉で言われていますが、これは三十七万についての事柄については、生死の問題については、草葉君は先ほどいろいろ発表して来ておると言われるが、何も生死の旧聞について数字の上に立つてのことは発表しておらん。ただ三十七万とかということを固執して来られておるだけです。そこで三十七万もソ連におるとすれば、これは生きておるだろうとみんな思つた。それにもかかわらず、政府発表によると二十三万四千百五十一人が死んだと、而も死んだということが突如として発表されて、又大部分が満州、関東州であるとか……。大抵の者はこれはソ連で死んだ、死んでおればソ連だろうと思つたら、とんでもないことを聞かされたことになります。まあ断食したり、最近騒いでおるということは尤もな話で、とんでもないことを一遍に聞かされた。こういう国民に非常な打撃を与えて、あなたがたどう責任を持たれるか。先ほどから生存者死亡者、不明者、これを三十四万五百八十五人というこの数字がどうしてできたのか。これについても先ほどから質問もありましたけれども、どうも確信を持つた結論がなければいけない。これはどうなされる、これを一つ。例えば手取り早いことは、東京の生存者死亡者、不明の者を発表なさるわけに行かないか。そうすると統計数の信憑性もはつきりとする。今まで未帰還者の数については非常にごたごたしたことを述べられて来ておるが、私はこの間に立至つて数字のから繰りが如何に濫用されて来たかということは申しませんけれども、とにかくそういうことをずつと見ますと、今日の発表数字というものは本当にどうなのかということは誰も疑いを持ちます。ですからこれは全国についてこれらのそれぞれの生存者死亡者、生死不明者、これを皆発表してしまう。手取り早い話が、先ほど申しましたように、東京のでこれを発表してもらいたい。これができますかどうか。これは資料があるというのだから、すぐできるはずじやありませんか、これが一つ。  先ほどから政務次官自身の言葉でも、ソ連領とかソ連と、全くこの問題をソ連に持つてつているが、これはどうするか。前からそうだ。数字を見ると……、あなたがたの発表した数字によつて見ればわかるんじやないか。六万人、これは一体どうなのですか。国民を非常な錯誤に……、二階から下に突き落されたような感じであります。こういうようなことで、実際はどうなのかはつきりしない。現に見て御覧なさい。アナタハンの島から二十何人帰つて来ている。あれなんかは、死んだものとして墓場も作つた、こういうことになつている。更に南洋のほうを見て御覧なさい。英米の戦地の跡を見て御覧なさい。スマトラはどうだ、ボルネオはどうだ、こういうようなものは死んだのか生きているのか。新聞にぽつりぽつり出ているので、ああ生きておつたかということになる。何千人どこにいるのか、何百人どこにいるのか、こういうものが残されている。そうして今申したように発表されて、ソ連にいるのだソ連にいるのだと、すべてソ連だ、ソ連領だというやつがこんなことになつておる。引揚の問題はソ連だけを対象になさつているが、今申したこの点からしても、ソ連政府発表した数字をここにかれこれ申さなくとも、問題は中国から南洋その他においても問題があるのです。それじやあなたがたは、今後もあなたがた自身が発表した数字によつても間違いであるということがはつきりして来る。この引揚の対象となるべき生死不明の人たちの問題は、南洋にかけて起きている問題、これをどうなさる。イギリス、アメリカの支配下にあるところの地域の人たちの問題、これは本当にあなたがたはイギリスから或いはアメリカから、終戦当時幾らの人間がおつて、幾ら帰した、それに対して請求なさつたかどうだろうか、これを一つ承わりたい。  そうして生死不明の者はないことに今までして来ておられるようだが、事実はそうじやない。何かそこにあるということはわかつている。で、そういうこともイギリスだとかアメリカ政府に対して当然要求すべきことである。ソ連に対して要求すると同時に英米の政府に対して要求すべきことである。それが実際なされておつたのかどうか。これについては我が党の議員は、引揚委員会その他予算委員会のほうで政府質問しているのですが、未だに回答がないのです。そういう英米に対してのこと、それから先ほどの数字についての発表ができないか、この先ず二つをお聞きしたいのであります。
  25. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 先ず只今の細川委員の御質問の要点は漏らすかも知れませんが、従来三十六万というのはソ連と言うておつたじやないか、或いはソ連領と言うておつたが、政府発表した内容を見ると、むしろソ連領が一部分で、あとの大多数がソ連領以外じやないか、こういう御質問であつたと思います。これは実は従来ともこの用語は慎重に使つて来たと存じまするが、三十六万有余の未帰還者の全部は、ソ連軍の支配下にあつた地域、ソ連勢力圏内というのであります。ソ連領とばかりは申しておらなんだはずであろうと存じます。従いましで今回発表いたしました地区についての、シベリヤ及びその他のソ連領、南樺太及び千島、北鮮、満洲及び関東洲、これは終戦時におきましてソ連軍の占領下にあつた地区であります。従つて従来これを概括してそういうふうな用語を通俗用いられておつたと存じます。現在未帰還の問題につきましては、米英その他に請求したかどうかという問題でございますが、ソ連以外におきましては、国の力によつてと申しまするか、この抑留者を、捕虜その他を抑留して、そしてその消息その他を知らさずに、そして帰さないという状態にあつた国はないのであります。全くソ連並びにソ連占領軍下にある地域がそういう状態になつてつておりますから、この問題が起つて来た次第でございます。アナタハン島等において現に生存者があつて、そしてすでにこれらは死亡しておると処置をいたして来たのではないか、そういう関係から。未帰還者の問題はソ連領、或いはソ連占領下ということよりも、むしろ南方方面が主ではないかという御意見のように承わつたのでありまするが、従来もかような意見の発表がときどき一部においてなされておつたことも承知いたしております。併しそれは決してそういうことではなくて、南方地区の問題につきましては、全部いわゆる抑留者の引揚の問題としては解決いたしておるのであります。たまたま一部の人が或いは逃亡し、或いは行方不明になり、或いはその情勢がわからずにありまする場合は、これはアナタハン島のような問題が今後も起らないとは確信することが困難でございまするけれども、併し或る一定の数があつて、それを一つの勢力によつて抑えて、そうしてその情勢を知らせられないというような状態のところはないのであります。英米等につきましては、引揚当時から十分連絡を保ち、その情報を知り得まして、こちらからも十分な手配がなされて、引揚完了、いわゆる引揚というものは完了した情勢にあるのであります。そこで従来からソ連関係におきましての問題が未解決のまま残つておる次第であります。  それからもう一つ、公表を東京都で先ず試みに発表したらどうか、こういう御意見、これは先ほど来縷々申上げるように個人の家庭にありましては、個人はよく承知しております。ただこれを全体にまとめる場合に、全体の死亡を公報その他の適当な方法によつて発表することが適当かどうかという点につきましては、発表の形式の問題になります。第一には個人の家庭によく承知さしておくことが何よりも大事でございますから、これは終戦直後からこの方法をずつととつて今日まで参つております。その集積、その他の集積が二十三万四千百五十一人になつたのであります。一般の国民にどこの何の誰がしは死亡したという公表の方式というものは、よほどこれは慎重に考うべき筋合である。本人の家庭にとりまして、いわゆる遺族にとりましては、さような方法はあつてもなくても、別に個人としてはすでに十分連絡があつて承知しておりますから、存じておられるはずでございます。私どもはこの全体としての発表はよほど慎重に取扱うほうがいいというので、全体としての一般的な発表は現在差控えておる次第であります。
  26. 細川嘉六

    細川嘉六君 数字の問題ですが、それは数字のできたその新情勢について疑いがあるから、それを一挙に解決する途は、全国に亘つて、最初に手取り早く東京において発表する、そういうことによつてすべての新情勢の問題が解決すると思う。なぜこういうことを申上げるかというと、従来在外残留者の数というものはいろいろなものを使われて、そしてそれの確実性というものが問題になつてきたわけである。それであるからどうしても今発表されておる数字はどうも信憑性について疑問が多い。その点において私は全部発表をなさるべきだと思います。一般の人もそういうことを、死んだか生きたかわからないような、本当にどのくらい死んでおるかということについてははつきりしたい。家族つてこの問題ははつきりしてもらいたい。それは一時生きておつたと思つてつた者が死んだというようなことでがつかりすることがあるにしましても、一体に早くきめてもらいたいというのが一般の関係者の願いであります。この点については、更に他の委員のほうから問題になさるでありましようが、これはいい加減に数だけを当てがつてつておくわけにはいかん。それから私はソ連ばかりじやなく、英米のほうに対してもどうかという問題を申しましたが、それは英米に特にというのではないが、一方に対してするがごとく他に対しても平等にということを申したのであります。本当に残留者が南にもおるだろうという場合に、その生死は関係者の身になつて考えて御覧なさい。それはその地域に対してこれは十分に懇請なさるべきである。それをそういうことをなさらないで、それは逃げたんだから、戦争も終つたのも知らず立籠つておるのだからそれでいいというものではない。それはやはり一つ條件が違う場合であるから、それに対しての懇請というものはなさるべきである。それを今後この点について努力なさるか、なさらないか承わりたい。  それからソ連についての問題、それはよほど外務当局は得手勝手なことを申しておられる、大体ソ連領内におるということを国民に思い込ませるようにソ連領或いはソ連軍支配地が何とかというようなことが盛んに使われている。ここにおられるかた、又国民全体としてもソ連領に三十七万いるのだと思い込ませてしまつている。そういうようにしてずるい言葉の使い方をやつて来ている。現に、ついでだから申しましようが、あなたがたも御存じだろうと思うが、対日理事事会の議長シーボルト君が、このシベリア地区で死亡した者は三十七万四千四十三人いる、こういうようなことを述べている。今日区分してソ連領及びソ連軍のおつた、一時占領した朝鮮、満洲、関東とこれを区分けになつて来ているのですが、ずつと見て御覧なさい、この数字の中味にはありませんけれども、もう見ろと、捕虜なり在外残留者なりというものはソ連領にいるのだ、ソ連は唯一の責任者だ、こういうように思込ませている。それは責任は大きいですよ。現に又今日の発表でもこういうことを言つている。ソ連領内の捕虜の待遇が、裁判、それから或いは刑に処せられた場合の待遇は残虐非道なことをしたと思い込ませるようにしている。草葉君も私も引揚委員会では随分前からやつて来た。証人も呼んでいろいろやりました。あのときにもはつきりしている。私、これは時間を取らないために簡單に申しますが、あの当時の何は、反動者とか何か意を含んだものだとかで、事実を曲げようという少数者を除いては、ソ連領のあの問題というものは、今、あの当時から述べられて来たようなああいうものではないということははつきりしておつたわけなんです。今日ソ連領から何十万の帰還者があつて今地方で御覧なさい。あのソ連領内において残虐な行為を受けたとか、待遇されたとかいうようなことを宣伝しても、これはもう聞かなくなつている。少数者がかれこれ自分の立場からデマ宣伝をしても通じなくなりました。それにもかかわらず、私はもう重例は、事実を挙げろといえば幾らでも挙げますが、終戦直後の一、二年とは違いますので、皆今まで政府が音頭をとつてつてつた宣伝というものは根拠がないということがはつきりして来たにもかかわらず、今日あの国連に出した総理大臣吉田君の書面、あの中に言つたもの、これは全く国民の常識から離れた、従来の、初めの通りの残虐性だとか何とかいうようなことを盛んに述べている、これは恥さらしと思う。これらについては政府はどういう今度は責任をとるのですか。現に今日講和を何とか実現しなければならないと、先ほど内村君は何か含みがあるかと、世界情勢に含みがあつて発表かと言われましたが、どうも従来の政府が未帰還者の問題を扱つているときに、政治的に動いたことは明らかなんだ。大体單独講和をやるためにずつと用意して来たのだから、(「簡單々々」と呼ぶ者あり)今日單独講和を強行するための含みです。それで反ソ宣伝をやるための含みだ、それが逆に来ておる。国民は笑いますよ。
  27. 千田正

    委員長千田正君) 質問の要点を……。
  28. 細川嘉六

    細川嘉六君 それだから、この発表については政府は非常な責任がある。国民のための全面講和に持つて行かないで、そういうふうに努力しないで、單独講和を長年準備して来たやつを一挙に押しつけるために、そうしてここに反ソ宣伝、反中国宣伝というものをここにやろうという肚です。これは従来の歴史において明らかである。それですから、これについてはあなたがたどういう責任をとられるか。この單独講和によつて日本は孤立する、大陸から孤立してとんでもないことになる。それの挺子に使われておる、我々はそう見なくちやならない、それについての責任を問いたい。
  29. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) これは御手許に、細川君のほうに差上げてあります資料をよく御覧願いますと御了解行くと存じますが、この表は「軍人に関しては終戦時生存し、一般邦人については一九四五年八月九日まで生存し、」それからその前の行になりまして、「日本人が満洲、関東州、北鮮、南樺太及び千島から、シベリヤ及びその他のソ連領に移されているので、本表の地域別生存者数がその儘現在の地域別生存者数とみることはできない。」当時はその状態でありましたが、その後シベリヤ及びソ連領に移されておるという状態です。これはよく一つ御熟読を願いたいと思います。従いましてこれらの状態において終戦時乃至は一九四五年八月九日の状態における区分はこうだというので、日本政府は最も真面目に発表したつもりでございます。その後の移動、ここにありますようにシベリヤ及びその他のソ連領内に移されておるという状態であります。  それから南方方面、英米の領域についてその後判明したときにはどういうことをするかという意味のことでございましたが、これはその後判明いたしまするような情勢、先ほど申上げたように必ずしもこの全部の状態が劃然とわかつておるわけではありませんから、或いは逃亡或いは先般のアナタハン島の問題等という場合がありまする際には、速かにそれぞれの国々と十分連絡をとりまして、従つてそれぞれの国は従来の関係からは誠意を持つて引揚に協力してくれております。現に近くタイの国からは濱田弘由君、福田良雄君、鈴木虎雄君の五名が生存が判明いたしまして、近く便船を以ちまして引揚げて来る予定であります。又ジャカルタからは加藤一定君が生存が判明しましたので、再三の折衝の結果、多分八月二十日頃には内地に引揚げて来る情勢になつて来るこ思います。これは單に一例に過ぎませんが、さような情勢においてそういう情勢が判明すると、その都度連絡をして、当該関係国は大変な協力を以てこの輸送その他引揚に多大の便宜を与えてくれておる次第であります。
  30. 高良とみ

    ○高良とみ君 今回の御発表は一に私ども委員会一同にとつて青天の霹靂のようなものであつたことは、諸委員からの御発表のあつた通りであります。  併し政府が誠意を以てこの数字を鋭意努力の上発表されたことを我々は信じたいと思います。その時期及び方法等については幾多疑問を持つものでありますが、二、三の点について外務省及び厚生省にお伺いして、この善後処置をすぐにして行くことが日本のためになると思うのであります。  一つは昨年国連に倭島局長その他が行かれたときに発表された数字と、今度の数字との間における開きについて外務省はどういうふうに考えておられるか、お伺いしたいのであります。  その当時の発表調査の途中であつたでありましようが、国民としてはその当時の概括的な数字と今日示されたものとは大分開きがあるやうに存じまするが、第一講和を前にして日本として一番大切なのは、世界各国における日本についての信用だと思うのでありまするが、日本政府の言うことは常に信憑性が高いということの印象を持たせないと、今後の外交関係、商取引等においても幾多の国難があることは申すまでもないことであります。それが一つでありまして、今日倭島氏が現われれば、なお伺うことができて明らかになると思うのであります。併し外務次官から、あの当時の発表と今日までの調査の結果とに対する過程をはつきりと国連及び世界に対して発表されたかどうか。  第二には、これらの死亡者及び生死不明者等が一どきにこれだけ現われたものではないのでありまするから、できるならばこれらの死亡者、生死不明者及び生存者の数が明らかになつて来た過程を一応国民の前に示されるならば、国民も成るほどあそこにあれだけたくさんいたらしいのがこつちに動かされ、又その中で第一年目、第二年目、第三年目に死んだのだということが家族に通知された以上は、これを国民の前に示されることが、そのほうが誤解を解いていいと思うのであります。先ほど草葉次官から、個々の家庭には知らせてあるが、これを総括して国民の前に知らせることは非常に慎重な考慮を要するという御説明があつたのでありまするが、その点が私には少々理解しがたいのであります。どういう考慮の下にそういうことをお考えになるか。いよいよ講和を前にして過去の惡夢を清算すべきときでありまするから、これだけ働き、これだけ死亡し、かくのごとき実情であるということを国民が善し惡しにつれはつきり認識するほうが、はつきりしてさつぱりするというふうに思うのであります。若し国民に対して非常な親心といいまするか、その悲劇を知らせたくないというお心がおありになつたとしても、事実こうやつて数字が出ておることでありまするから、国民に徒らに希望を持たせるよりも、却つて事実ここまで調査したということをお示しされることが、世話課、その他外務省引揚課等も辛いでありましようが、事実信頼度が高いと思うのであります。  第三に伺いたいのは厚生省でありまして、先ほど田辺援護局長から、すでに当初予算を作られるときには、未復員者、特別未復員者としての数字を挙げたけれども、そのときにこの数字はなかつたから、これらは未帰還者家族手当を与えている予定であるということでありましたが、もうすでにこれだけ発表されましたならば、これを躊躇なく死亡者として取扱われることだと思うのであります。併しそれによつて家族が俄然崖から突き落されたように国との繋がりが切れて、もうお前の家族は死んでしまつたのだから、埋葬料その他慰藉料を与えてこれで打切りだとされることは、誠に長い間の苦難に対しても、又今度の戦争犠牲に対する保護としても遺憾な点が多いと思うのであります。従来は未帰還者引揚の費用等が取上げてあつたのが、まだ帰つて来ないからと言つて、年末にほかの方面に、一般会計に繰入れられたことを我々は遺憾と思つてつたのでありますが、今度の予算編成に対しまして、どういうふうにこの明らかになつた死亡者家族に対する未復員者、特別未復員者給与を切換えて行かれる予定であるか。次年度の予算を前にしての援護局長の御意見を伺いたいと思うのであります。我々は今後ともこの問題の処理に当りましては、委員会としても内外に対しまして、こういう突然の発表に対しましては非常に責任を感ずるものでありまするが、この善後処置はなお一朝にしてはできないというようなことを考えるのであります。精神的、物質的、又国内外の信用に対して、我々としても十分な努力をしなければならんと思つておるのであります。その三つの点を御返事頂きたいのであります。
  31. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 御質問の第一点につきましては、実は従来からの発表調査の過程に りましたために、数が随時殖えておる点が異つておると思います。引揚総数におきましては三十六万九千三百八十二名というのは、これは従来通り現在も私どもは確信いたしておりまするが、併しこれは先ほど申し上げました終戦時におきまする一般邦人並びに軍人の数と、それから現実に引揚げた数との差でございます。この数は従来ともそのままずつと発表して参つておるのであります。その中でどうしても相手国からその内容についていわゆる通報がありませんので、最後の手として国内においての調査を始めたわけであります。その調査を始めました結果、昨年の八月三十一日におきましての状態が三十一万六千三百三十九名と相成つております。これが国連報告してある数であります。  それから昨年の十二月末日締切の私が本年三月八日に参議院発表いたしました過程の調査が三十二万三千九百七十三名であります。そして五月一日の調査の締切の発表が三十四万五百八十五名、今回発表いたしました数字であります。従いまして、今後とも三十六万九千三百八十二名というのが少くとも知り得る最大の能力を挙げた全体の数を考えておりますから、そこまで行きまするまでにはまだ二万八千七百九十七名不足をいたしております。今後の努力によりましてこの数字がだんだんと減つて来ることと存じます。併し全体がなくなつてしまうことはあり得ないのではないかと考えております。実は御承知のように、現在のいわゆる日本政府の行政範囲内におきまする土地に永らく住まずに、従来満洲、朝鮮或いは樺太、千島のほうにいわゆる永住をしておられたようなかたは、現在の内地には殆んど身寄のないようなかたも多数あると思います。そういうかたに対しましては、一般邦人或いは現在召集者等につきましてはなかなか調査方法が困難ではないか、身寄のない場合におきましてはなかなか困難ではないか、その数字が今の二万八千の数字がだんだん減るかどうかというのに影響して来る数字だと存じております。併し全然内地に何ら身寄りのないような状態で永らく数代永住しておられたようなかたも随分あると思いまするので、現在の内地において知り得ることは困難ではないかと考えておるのであります。併し二万八千九百七十二という数字は、今後とも努力をいたしまして、努めて縮めて参りたいと考えております。  それから発表を、いつそ全部発表するほうが却つて誤解を一掃してよいではないか。これは従来とも国会方面におきましては、当委員会を初め、或いは陸軍の残務処理、或いは外務省引揚課等の実際の調査状態を御視察願いまして、そうして一々の事情その他についてのことを十分御検討願つてお進めを願つたと思います。ただこれを全部発表いたしまする時期と方法とがありはしないかと存ずるのであります。我々はそのうちに全部発表すべきものだと考えております。その発表は慎重に発表いたしますることがむしろ適当ではないかと、こう考えまして、全体に対する一般的な発表を今回は差控えた次第であります。勿論個人の一人一人につきましては、先ほど申上げましたように、十分御納得の行くようにいたしたいと考えております。
  32. 田邊繁雄

    説明員(田邊繁雄君) 高良委員の御質問にお答えいたします。この死歿者の取扱につきましては、先ほど外務当局から御答弁があつた通りでございまして、この発表を機会に厚生省において一挙に死歿着の処理をしてしまつて、未復員者給与法の打切りをするということは考えておりません。従来通り逐次死亡のはつきり確認できるものから処理して行きたいと、こういうことになつております。  なお、これに関連してお答え申上げたいと思いますが、死亡処理をした者の処分をどうするか、この問題は御承知通り今問題になつておりまする軍人遺族或いは戦傷病軍人の処遇改善、こういう問題に関連するわけであります。この点につきましては政府は目下できるだけ早い機会に実現を期したいということで一生懸命に勉強し、又準備をいたしております。従いまして今度発表になりました在外死歿者の遺族ということにつきましては軍人もありましようし一般邦人もあろうと存じます。少くとも軍人につきましてはその一環として考えて行きたいと、かように考えております。  なお、一般邦人につきましてはこれはなかなかむずかしい問題でございますので、死亡状況等もいろいろあろうと思います。内地における戦災者、それとの関係考えなければなりませんのでよく考えたいと思います。又国家財政との関係もありましようが、国会等における御意見も多々あろうと思います。よく研究いたしたいとかように考えております。
  33. 高良とみ

    ○高良とみ君 もう一点だけそれに関連して……、先ほど草葉次官から御発表になつた昨年国連に訴えた数というものは我々も承知いたしたいのでありますが、その中に今日発表された二十三万の死歿者というものがあつて、いわばその在外同胞という形で国連に訴えたときには、その死歿者、だんだんこう現われて来た死歿の証拠が出て来た者に対しても国連調査とその明らかに死んだという証拠を御要求になつたのでありますか、その点が一つです。  そしてその当時わかつていた死歿者の数というものは国連に訴えた全体の枠の中でその当時、昨年の八月一日にはどれだけわかつていたのでありますか、つまり我々として少々了解に苦しむことは、死んだという証拠が相当に出ていたのにもかかわらずこれはこちらでは死んだんだけれどもその死んだ理由、場所等をその外国に向つて生きているかも知れないから調査してくれということを御要求になつたのでありましようか。その当時の死残と大体数が同胞同士でわかつたものはどのくらいの数であつたのでありましようか。
  34. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) お話通りにその当時におきましてはそういう発表を資料を出しましてその内訳は今回御発表申上げましたような内訳をいたしまして発表いたしております。従いまして報告資料を提出いたしております。総体としては今回はこの三十一万が三十四万に膨れて参りました。自然と膨れて参りました。今私のこのメモに当時の発表がありますが、或いは少し違つておるかも知れませんが、大体間違つておらないと存じておりまするが、当時は死亡は二十二万八千二百八十八名であつたと記憶いたします。或いはこれ間違つておりましたら後刻一つ訂正した数字を、確報を差上げます。そういうように具体的に分類いたしております。今回と同じように分類いたしおります。おのおのにつきましてずつと数字が上りましたので殖えて参つているのであります。  それからこの情報の蒐集についての要求は、これは勿論国連の場合もそうでありますしそれの前後数回に亘つてそれぞれの機関を通じて、これはいわゆる御承知のように国際法規からも当然当該国は通報してくれることになつておりまするが、ありませんので再三再四この要請をして参つたのであります。併し今日まで何らその報告は、通報はないのであります。
  35. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ちよつとお伺いいたしますが、抑留者の還えらないということは人道上の大きな問題であつて政府もそういうふうに非常に強調されて来たと思います。ところがその発表の時期の問題でございますが、六月十九日に国連報告されたということは、私は相当政府においては責任を持つて確認をされた数字だと思います。それをやはり早く国民に知らせるということは、非常に私は重大問題だと思います。それについて七月二十五日まで放つたらかしておいたと言つては非常に言い過ぎかも知れませんが、少くとも在外同胞委員会はこの七月中には、私は前に持たれておると思う。たから政府としてもやろうと思えばやる機会があつたと思う。それに対してそういうことを何ら出さずに置いて七月二十五日にやつたという点については私は非常に遺憾だと思います。それについて政府は何ら遺憾の意を表せず今後も御協力を願いますということをおつしやいますが、こうしたことについてもう少しこういう態度でなくて、政府はこういう数字を或る程度つかんだならば、正確な数字としてつかんだならば、今後は今までの態度を一擲されて、少くともこういうふうなのだといつて国民に訴えて、そうして国会なり或いは輿論の協力の下に引揚者促進なら促進という問題についてやつて行こうという意見があるかどうか、その点一つお聞かせ願いたいと存じます。
  36. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 御質問のように最も速かな機会に持ち得る資料を御提出申上げることは、これは最も適当なことと存じます。併し発表をいたしまする形式なり方法なりにつきましては、実は少くともこの引揚の問題につきます。発表は慎重にいたして参つた、いろいろな関係を以ちまして慎重に取扱つて参つたのであります。従来特別委員会等におきましてもこの点はよく御了承と存じます。従いまして一応持つておりましても、発表してあとで軽卒のそしりを受けることのないような方法をとつて参りまして、従いまして今回も実は本当は六月十九日に確定しておるから、その後でございますと方法がとれるはずでございましたが、これもいろいろ国内情勢検討いたしまして、資料を作つたりなんかしましてつい延びたようなわけでございます。これは先ほど来この引揚の問題につきましては、殊に参議院委員会は最も推進力となつて従来からやつて頂きましたので、むしろそういう意味におきましては一般国民発表以前に皆さんにお打合せ申上げるのが或いは順序であつたかと存じますが、これはいろいろな関係がありまして、正式に情報部が発表という形を実はとつてつたような次第でございます。どうぞ御了承願います。今後におきましても成るべく発表し得る最大の短かさを以て一つ発表申上げたいと思います。
  37. 小酒井義男

    ○小酒井義男君 今の次官の御返答に私もこの発表方法についてはいろいろ意見があつたのですが、皆さんがおつしやておるから繰返して申上げることは差控えようと思つてつたのですが、御承知のように七月二十四日に委員会を開いておるんです。そのときに発表することなしにあくる日にああいう形で発表して置いて、そうして慎重にやらなければいけないからああいうふうにやつたのだというような御回答のようなんですが、そういうことは私は慎重にやるということになるのかどうかということについて、非常に疑義を持つのです。ここで慎重にやることであれば、二十四日の委員会報告して置いて、そうして発表するのが慎重じやないかと、こういう気がするんですが、その点もう少し私らにわかりいいように御説明を願いたい。
  38. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 誠に恐縮に存じます。丁度二十四日はこちらでも委員会をやつておりますし、衆議院でも委員会をやつてつて、私はずつと衆議院で引張られましたので、こちらの委員会へつい伺いかねたのでありますが、実は二十五日の夕方発表するという日にちを前々から決定して参つたのでございます。二十四日に委員会があるということを実は承知しておりますると前々からの手続を二十四日の午後でも決定して置きましたら実はよかつたかとも存じまするが、以前に二十五日の午後という方法を決定いたしておつたものですから、その日私も衆議院出席いたしましてそういう話もいろいろあつたのであります。あつたのでありまするがその点は御了承を願つたような次第でございます。どうかこの点、一方から申しますると、すでに準備しておつて前日委員会があるから報告したらいいじやないかという御意見御尤もと存じまするが、そういう形をとつて参りましたので御了承をお願いいたします。
  39. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 この問題は私も各位と同じ感じを持つておりますが、二十五日に発表されるということが決定されたというのですが、その際にはこういうパンフレツトを出して、新聞か何かに出して発表するというような、極めて何といいますか、事務的なといいますか、考え方であつたのだろうと思うのですが、二十五日に発表されるならば両委員長とあらかじめ相談でもされて、そうして委員会を召集して頂いて、そうしてその委員会の席上で発表して頂くというような形式をなぜとらなかつたのか、その理由をお聞きしたいと思います。
  40. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) これは実は特別にかれこれの意味があつたわけではない、実は従来とも外務省の情報部が発表いたしまするのは、外務省の記者クラブに正式に発表するという方法を従来ともとつて参つたのでありまして、ただその間に私もおりまして委員会関係についての連絡がもう一つ足らざる点があつたことは誠に恐縮いたしておりまするが、その方法は従来の方法をとつて来たにとどまつた次第でございます。
  41. 千田正

    委員長千田正君) 委員長からこれは簡單に大分時間をとりましたから申し入れて置きますが、いやしくも当参議院特別委員会国民代表として集まつておるのであつて新聞記者に、発表するたけの余裕があるならば、新聞社は勿論それは新聞の使命を通じて全国民にお伝えするでしようが、国会国民代表として、而もこれだけの審議機関を持つでおるのですから、政府に誠意があるならば前以て国民代表にこれを諮つて、然る後に協力を求めて国民にお知らせするのが当然のあれじやないかと思うのです。今後かような落度のないように特に私は申し上げて置きます。
  42. 内村清次

    内村清次君 私はこの添附書類の二のソ連における日本捕虜の待遇、この問題につきまして実はこれは聞いて置かないと、先ほどもただ事務的な、而も発表の手続を、万全な手続をせずに発表したというようなただこれだけの問題ではこれは済まされない。それと申しまするのも、やはり日本の国がようやく独立をしようとする、せつぱ詰つておるところの段階におきまするところの大きな又政治的刺戟の一段階にもなる問題でありまするからして、私はあえて一つ政府の正確な基礎の上に立つて発表であるかということを問い質しますために質問をしますが、勿論この捕虜の待遇に対しましては国際法規にこれは明記してある。即ちソ連邦におきましても中共におきましても、勿論中共は当時の條約について調印はしておらないとしてもソ連邦はこれには調印しておる。こういうような重大な人道上の問題が伴いまするところの大きな国際條約の問題につきましてこのような残虐な即ち方法が、ソ連邦によつてとられておるという実態があるといたしましたならば、たとえこれは少数の人数にいたしましても、私たちといたしましても国際法規上今後又独立な立場になりました日本立場といたしましても、これは相当世界に向いましても即ち我々公約すると同時に、正しくない点については公正な立場からこれを追求して行くところの権利も附与されて行かなければならないと思うのでありますが、ただ今回の政府が我々の熱意を持つたこの引揚促進に対しまするところの諸方策、即ち国会においてはこれを毎国会において決議して、そうして政府を鞭撻する、或いは各国に対して要請をする、こういうような態度をとつて来ておりますときにおいて、今回の発表が二十三万四千というような厖大な死亡者が出ておる。そういたしますと、二十三万の即ち死亡者というものが殆んどこういうような措置によつて異国の空において死亡されたのではないかというようなことを條約関係におきましても非常に未知であるところの留守家族の人は勿論といたしまして、或いは又国民の即ち大多数のかたがたは直接そういうような人道的な立場から残虐な行為をソ連がとつているというような感情を受けたがる問題である。そこで私たちはこの事実が事実とすれば、勿論公正な立場から世界に訴えることは当然でありますが、政府熱意を示さずして、いわゆる引揚の問題に対しては熱意を示さずしてその結末において一度に国民感情をこのほうに向けて行こうとするようなやり方については、どうも公正な立場からこれには納得し得ないのであります。そこで今回のこの発表の、又調査の基礎となつているものは先ず一九五〇年の四月までに帰つて来られた多数の引揚者、そういう人たちの中からそういう事実を聴取をしたというようなこともこれには報告してあるのでありますが、勿論聴取したところのそういう陳述をした人の姓名ははつきりと政府のほうでは確証を握つておられるのであるか。それがそういうような確証に基いて、而も全般的問題といたしまして、こういう大胆なる勿論真相であれば、私たちはどこまでも大胆公明というものが必要と思いますが、そういう事実に基いた証言によつて、そうして全体を即するようなこの発表をせられたのであるか。これには必ず根拠があるのであるかどうか。而も又こういうような待遇を受けておられるところの人々たちは一体どれくらいの数に上つているというような考え政府自体持つているか。こういう点の確証が上つているかということを私は質問しますのが第一点。  それからこれは委員長にも聞いて頂かなければなりませんが、今日の引揚特別委員会の通知には、厚生大臣も来られるというような通知であつた。先ほどから厚生大臣の出席を私たちは何回も要望しているのですが、厚生大臣は来ておられるが、ところが遺家族の問題のときに出席をされる……。私は以てのほかだと思う。これはやはり遺家族かたがたの問題も、引揚者の問題も連関がある。而も今回発表されたところの数字というものは、各委員かたがたが一様に数字根拠については驚いておられる。その真実を突きとめようとしておられる。而もこうやつた死亡者の数が二十三万に上つたというような発表は今回が初めてです。今までは三十七万で、勿論私たちといたしましても、あの満洲の地において、或いはソ連地区において相当の死傷者があるであろうというようなことは考えておつた考えておつたが、こんなはつきりした数字を、厖大な数字を見たことは初めてです。そうしてみますと、これは関連いたしまして、遺家族の問題とも切実な関係がある。予算の問題とも切実な関係がある。我々が又定着援護の面におきまして、そうして新任の厚生大臣がどういう熱意を以て数学的にも今後の予算獲得に対してどんな処置をとられるかということも聞きたいのです。こういうような関連性のあるところの今日の重大な委員会に姿を見せずに、もう帰つてしまつたという状態では、これは全く私は内閣の連帯的な責任の観点というものが非常に薄弱であるという証拠であると私は思います。而も今回の発表がこれは外務次官に対して聞きたいということは、閣議に諮つて内閣の連帯的責任においてやられたのであるか。吉田総理の名前が出ておるのだから、外務大臣の名前が出ておる。ワンマン的に、いわゆる外務大臣総理大臣だというところで、ほかの大臣には知らさずに、独自の立場外務省はこれを発表したのであるか。この点も私は外務次官から御意見を聞いて置きたいと思います。  又第三の問題は、これはどうしても委員会としては、私たちはこの数字につきまして、今日の外務次官のお話だけでは納得できない。先ほども高良委員から言われましたように、現に上つておるところの死亡者の数にしても、その留守家族人たちはびつくりしておられる。なお且つ又想いを外地に寄せて、そうして自分の息子に一目会つて死にたいというようなこと。自分の夫をなんとか一つ呼び戻してもらいたいということも叫んでおられる。こういうような状態から考えてみますと、いわゆるこれは年次的に発表をするだけの、なんと申しますか、同情という言葉は使いたくないが、責任があつて然るべきであるこういうような年次的に死亡者があつて、而もどの県に、どういうふうに通知済みである。あとの通知未了の人たちはこのくらいの数があるということを県別でも発表して、そうしてこの委員会に資料として提出するだけの政府は責任を感じていいはずである。その点も私たちは今後死亡者の真実な調査の上に立つて、どのような調査の上に立つて、どのような確信によつてこれを死亡者と断定したというよいなことをも、私たちは即ちいろいろな方面からでも、これは少し調べ上げて、的確な数字をつかみたいような考え方もまだ残つておる問題であります。この問題もまた今後の委員会の仕事の一つとして残るはずである。同時に又その問題は……、
  43. 千田正

    委員長千田正君) 内村委員に申上げます。さつきから動議が出ているのですが、午後継続するかどうかという問題もありますので……。
  44. 内村清次

    内村清次君 大きな問題は、條約に、今回の草案の中にも含まれておらないということは、非常に引揚者留守家族かたがたが心配しておられるのは当然のことであります。この問題に対する委員会としての考え方もここでまとめる必要があろうと思います。これに対しましては私はあとで一つ動議を提出したいと存じますが、これを一つこの委員会で是非片付けてもらいたい。これも一つ委員長考えて頂きたいと思います。先ず二つの点を御答弁願いたい。
  45. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 実はソ連における日本捕虜の待遇の問題につきましては、政府におきましても最初からあらゆる資料と方法とを以てこれが調査をなし、又心配をしながらこれが措置をなして参つたのであります。この特別委員会でも第一回以来問題の中心は待遇の問題、帰還の数の問題、帰還の促進の問題が、本委員会中心の問題で今まで実は来ておつたわけであります。従いまして証人喚問等の場合にお富ましても、待遇の問題が大変に問題になつて来て、従来の速記録等にも相当問題になつており、お互い同様に心配しながら……、その一例を実はここに挙げたのであります。その他にも恐らく従来たくさんのいろいろな帰還者によつての待遇の問題についてのことは論じられて参つたわけであります。ことに数項を出して来ておると存じまするが、おのおの発表に当りましては、その根拠を最も正確なものとして取上げて参つております。あやふやなものは全部省いたつもりで来ております。又この引揚特別委員会でも従来この問題については大変な心配をされまして、証人喚問その他の方法によつて相当詳細に御検討を進め、政府等にも強い鞭撻がその都度参つてつた承知をいたしております。従いましてこの捕虜の待遇の問題につきましては、それぞれの方法を以て待遇改善という点につきましては、重大なる喚起をいたして参つて来たのであります。  それからもう一つ発表についてはどういう方法で来たかという点でございました。閣議第によつてつて来たかどうか、これは関係官庁とよく連絡をとつて参つたのでありまして、この発表につきましては、相当慎重な態度をとつて参つたのであります。
  46. 曾禰益

    ○曾祢益君 この問題は非常に重要でありますと共に、只今承わるところによれば、留守家族かたがたが非常な尤もな心配をいたしておられるために、相当厄介なハンストの状態に入つておるとも聞いておりまするので、どうしても今日は更に重要な質問を続けて頂くと共に、今内村同僚委員からも言われました何らかこの問題と講和條約との関連において取りあえず委員会として何らかの措置をとらなければならないかというような問題もございますので、一抵休憩されまして午後継続して一つ委員会を開いて頂きたいと思いますので、動議を提出いたします。
  47. 千田正

    委員長千田正君) 只今の曾祢委員の議事進行に関する動議でございますが、如何取計いましようか。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  48. 千田正

    委員長千田正君) それでは一旦休憩いたしまして三十分休憩して一時五十分開会といたして置きます。  なお休憩に入る前に、先ほどの内村委員からの御質問でありますが、外務大臣吉田氏は、今のところまだ東京に出て見えておられないという外務省からの答えであります。それから倭島援護局長は急に眼が非常に惡くなりまして、出席できない。厚生大臣は、これは何ら拒否する理由がないのにかかわらず、先ほど内村委員の御質問にありましたように、遺家族の問題ならば出席する。かようなことはおよそ国務大臣としての答弁でないと思うのであります。申すまでもなく国会法によるというと、委員長からの要求は、特に病気の場合は医師の診断若しくはその他のことがなければ出席を拒否する理由にならないのでありまして、これは飽くまではつきりした回答を得るまで厚生大臣の出席を要求いたします。以上お答えしまして、約三十分休憩に入ります。    午後一時二十一分休憩    —————・—————    午後二時三十四分開会
  49. 千田正

    委員長千田正君) それでは午前に引続きまして開会をいたします。  先ほど内村委員からの厚生大臣に対する出席要求がございましたが、厚生大臣が午後は外国の歯科医師、或いは歯科関係の問題について、主催者として只今会議を開いておりますので、出席いたしかねるからというので、大臣の代りに然らば次官というふうに今要求しておりますので、暫時回答をお待ち願いたいと思います。  私から特に腑に落ちない点がありますので、草葉政務次官にお伺いするのでありますが、先ほど死亡者発表の中に、大部分の死亡の通知は各個人のほうにはよく通知して納得しておる。但し一割程度……、これは甚だはつきりした御答弁を得られなかつたので残念でありまするが、仮に二十三万四千というあの死亡数字発表した以上は、やはり確信があつての御発表と思いますので、その点については不明な点をもう一度私はお伺いしたいと思いますので、この点の御回答を頂きたいと思います。
  50. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 午前中御質問ありました二十三万四千百五十一名という死亡者の数を政府発表いたしたのでありますが、その大部分はすでにこれは死亡通知済み、処理済のものであり、その大体一割強が、一割程度がいわゆる未発表、未処理、その過程は承知しておられるが、手続的にはまだでありますと申上げたのでありますのに、今重ねて御質問でありまするから、この数字をはつきり申上げて御了解を頂いて置きたいと思います。すでにそれぞれ手続を済ましまして、死亡通知その他の処理が済まされました数が二十万八千三百二十七件であります。まだ発給未済の分が二万五千八百二十四名ございます。発給と申しまするのは、公報によりまして、それぞれ御家庭通報し、御家庭はそれぞれの処置をなしましたのが二十万八千三百二十七名であります。ほかでは承知しておられるが、なおその手続が確定的になされておりません分が二万五千八百二十四件あります。
  51. 千田正

    委員長千田正君) 只今の御発表は今までにない、ほかには発表されておらなかつた数字だと思いまするので、これは相当重大なる発表と思いますが、この点について苦し御質疑がございましたなら、各委員からの御質疑を願います。  じや重ねてお伺いいたしまするが、それはいずれ近いうちにはその手続をとるという確信はおありになるのでございますか。
  52. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) これはそれぞれ近い機会に、成るべく近い機会にそれぞれ順を追いまして進めて参りたいと思います。
  53. 千田正

    委員長千田正君) ほかに御質疑はございませんか。
  54. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ちよつと席を外しまして……ダブるといけないから、ダブつたら御注意願います。
  55. 千田正

    委員長千田正君) 只今午前中に死亡者のうちで各家庭に通知した分と、まだ通知しない分の詳しい数字発表があつただけであります。
  56. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ちよつとお伺いしたいのですが、死亡者の二十三万余りのうちの九〇%が大体家族への通知が済んでいる、そうしてそれは公報が出ているか、或いは他の方法でと、こういうふうに聞きました。他の方法というのは、どういうような形式を用いて知らしておられるか。
  57. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) これは死亡状態がいろいろあると存じます。或いは軍人でありますると、これに対する手続をいたします。一般邦人でありますると、シベリア、満洲へ長くに住んでおる、そうして肉身がすでに死亡して、骨を持つて帰られたということもございましようし、その場合におきましては、先ほど家庭調査によつて発見したということもありましようし、戸籍その他はすでに処理されておると存じます。それでいろいろそういう死亡状態によりまして違つて参りまするから、軍人の場合と一般邦人の場合とは、おのずから少し違いがあると思います。
  58. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 それから次に続いてお尋ねしたいのは、二十三万余りの死亡者政府として確認されたというのは、五月一日の国勢調査以後になつておると思うわけです。それで、なお予算関係で先ほど田邊援後局長から聞きましても、二十三万の中の或る数は帰つておるとも思われるし、推定として書いてあると思うが、予算措置が全然してないと思う。そこで二十三万余りの死亡通知というものは、少くとも今年度になつてからというよりも、五月一日以降において、六月十五日ですか、いつですか、確認されたのはわからないが、それ以後に各家庭に大体九〇%通知されておるというふうに了解していいのか。その辺ちよつと……。
  59. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) これはもう五月一日現在を以て総括して発表いたしましたから、これは今のような御疑念を生じたと存じまするが、終戦後御承知のように、元軍人でありますると、それぞれ遺骨伝達その他の方法を以てずつといたしております。その総計でございます。終戦後の死亡の総計ということになる。終戦後に取扱つた死亡の総計、こう申上げたほうがいいですか、終戦後逐次各府県におきまして、或いは遺骨の伝達をやる、その他の方法をずつといたしておりましたので、従つて早いかたは終戦直後すでに遺骨を受取つて十分承知をいたし、又その方法をとつていられる。それをずつと今まで発表せずに来ておつた次第であります。御本人は勿論御承知であつたはずであります。それを集計した発表がこのように五月一日現在までにおける状態只今集計して、三十四万という発表をいたしております。
  60. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると通知はしてあつた、通知はしてあつたの集計した、それはそうすると、遺族としてその家族を取扱わずに、今まではどういうふうな形で取扱つて来たのですか。
  61. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 通知と申しますか、遺骨伝達と申しますか、それぞれの処置を申上げて来たのであります。処置等を確実にしたものに対しては厚生省においてそれぞれの処置をいたしております。先ほど予算関係がありましたが、最初全体のこちらの状態においてまとめましたのは昨年の八月三十一日でありまして、本年度予算においては先に援護局長お話のように十四、五万程度の予算が組まれておる。当時においてはこれは当然の数字だと思います。その後ずつと詳しくなつて参りまして、先ほど来申上げましたような状態になつております。従いまして通知も或いは戸籍の処理も或いは遺骨伝達もそれぞれ軍人に関しましては全部取られて来ておるものが、先に申上げました発給済の二十万八千という状態が五月一日の状態であります。
  62. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 この点について援護の問題にからんでは厚生大臣にお聞きしますが、生死不明のかた、或いは生存者のかたに対しまして何か家族に対して何らかこれを知らせるような方途をとつておいでになるかどうか。
  63. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 通告はしております。
  64. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 生死不明の生存者に大体通知はしておるのですか。
  65. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 大体生死不明の場合は少くとも家族の届出と申しますか、一般邦人についてはそれが主のようであります。従つて家族はむしろよく承知しておるという場合が多いようであります。
  66. 千田正

    委員長千田正君) 他に御質疑はございませんか。
  67. 曾禰益

    ○曾祢益君 先ほど同僚の内村委員から御発言があつた点に関連するのですが、留守家族かたがたが非常に今度は講和條約の草案に関連いたしまして、引揚げの問題がどうなるかということを深刻に心配しておられることは我々も承知いたしておるのでありますが、この際にどうしても政府当局において、新聞に伝えるような岡崎官房長官がこの問題に関しまして、非常に簡單に法理的な解釈かも知れませんが、この講和條約の草案の中に引揚問題の條項を挿入するというようなことは敗戦国の日本として、無條件降伏の日本として、到底そんなことはできないと言われたような解釈をされた。さようなことから只今ハンストが起つておる、かように承知しておるのであります。併しこの問題は我々の考え方といたしましては、如何に無條件の降伏国でありましても、日本国民の公正な希望といたしましては、当然に引揚げ促進並びに引揚げの完了に関しまするポツダム宣言に基いた連合国側としての当然の義務履行を要請するのは私どもちつとも差支えないことではないか。政府がそれらの点につきまして、何ら確固たる民論の基礎に立ちました外交をやつておらない、或いはやつておられるかも知れませんが、少くとも引揚げ関係留守家族に対する答弁において、さようなけんもほろろの挨拶をされたということは甚だ遺憾であると存ずるのであります。従いまして私はこの問題につきまして、本日ここに来ておられる外務次官からはつきりした御答弁を頂きたいと存ずるのであります。そこで私は実は私の会派のほうといたしましては、すでにこの問題につきまして、早速党といたしまして、問題を取り上げまして、一つ在外抑留同胞引揚げ促進に関する條項を講和條約の中に挿入して欲しいということが一つ、いま一つ日本が戦時中に連合国の捕虜を虐待いたしました誠に悲しい記録があるのであります。その関係から、或る種の補償を今度の講和條約の草案の中でなさなければならんことになるのでありますが、その義務は我々は当然に負うて行くベべきであろうが、同様に日本捕虜並びに抑留者が海外におきまして不当な待遇を受けたことに対しては、日本国民の側からも、同様な或る種の公正な補償を要求すべきじやないか。かような意見を持つておりまして、この問題につきましては、我々といたしましては、連合軍総司令官、外交局長或いは英国、インド及びソビエツト各国の在京代表同のほうに書面を以て申入れをしておるのであります。その応待振りにつきましては、この際申上げることはできませんが、併しこの希望は我々といたしましてどうしても推進して行かなければならない、かように考えておるのであります。従いまして、我々は先ず第一の希望としては、引揚完了に関する連合国側としてのやるべきことを、先ず講和條約の草案の中に條項として挿入してもらい、これによりまして連合国が全部この條約にサインしてくれれば誠に理想でありまするから、我々はどうしても先ずその理想を追究して行かなければならないと思います。若しそういうことが諸般の関係でできないというような場合におきましても、少くとも講和條約の締結に際しましては、連合国側がこのポツダム宣言に関する義務実施に関しまする明確な意思表示を外交的にはつきりとして頂くことを要請すべきではないかと存ずるのであります。いずれかような問題につきまして内村委員から動議が出されると存じまするが、その前に大体におきまして外務次官のお考えを承わつて置きたいと思います。
  68. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 実は私ども国民といたしましても、殊に留守家族皆さんとしても講和條約草案の中に引揚問題が一項目も入つておらないから、従つて講和締結によつて引揚の問題、未帰還の問題はこれで根拠を失う状態になりはしないかという大変な不安と心配とが強く生じて参つているのではないかと思います。又これに関連しまして、一般国民といたしましても願くは講和條約の草案の中にかような一項目がとられることを熱望している主張が多いと存じております。この点に対しましては、私どももその立場並びに心境、同感に感ずる次第でございます。併し今度のソヴイエトの勢力圏にありまする未帰還者の帰還促進につきましては、いわゆる一方は全部完了したと申します。日本におきましては完了しておらない、現にこれだけ残つておると申しております。従いましてイタリア等の條約の場合とは趣きを相当異にしているのではないかと見ております。イタリアはよく、曾祢委員承知のように昭和二十二年の状態におきましては終戦直後であり、相当まだ多数の抑留者、捕虜もありました関係上、七十一條に一項目載つてつたと記憶いたしております。日本の場合におきましては全部の捕虜処置は済みまして、従つてソヴイエト自身も済んでいると申しておるのでありまするが、日本立場から申しますると全部は済んではいるが、ソヴイエトだけが残つているという問題になつているような状態であります。従つてポツダム宣言の第九項によりますると速かに平和な家庭に帰つて平和な産業につくということを日本国民は信じて降服をいたした次第でありまするから、現実におきましてソヴイエトは何と申しましても現実における状態は、あるのでありまするから、私どもといたしましては従来とも連合国に強く要請をしてこの真相を認識してもらつて、そうして未帰還同胞の帰還促進に資して参つた次第であります。従いましてこの條約草案に出て参りませんでも、その未帰還同胞の帰還促進という点につきましては何ら支障なしに今後とも進み得ると存じまするが、併しこれは更に戦争終了後未解決の問題の解決としての講和には最も大きな問題と存じますので、お話のように来る九月上旬サンフランシスコで開かれまする日本に対しまする平和会議の際には連合国の主だつた多くの国々が参加する状態でありまするので、十分この際に連合国に訴えて日本の実情を了承してもらつて強くともどもに未帰還同胞引揚促進が期せられる方法をとつて参るのがむしろ最も妥当な方法ではないかと考えておるような次第であります。
  69. 細川嘉六

    細川嘉六君 私は社会党のほうの提案に入る前に確かめて置かねばならんことが残つておると思いますが、先ほど草葉君が、捕虜に関する請求をしておるが通報は来ておらんと、どうも話はソ連らしいのですが、そう理解してよろしいですか。
  70. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) これはソ連以外にはないのでありまして、ソ連でございます。
  71. 細川嘉六

    細川嘉六君 そこでその問題に入る前に、今度の発表に、関東州、満州とか或いは北鮮とか、そういうふうに地域分けになつて出ておるが、それはソ連領ではないことは、あなたはもう言うまでもなく御承知だろうと思います。そうかと言つてソ連の属国でもないことも御承知かどうか、満州、関東州というものは中華人民共和国のものである。対等の国としてソ連がそれと同盟條約を結んでおる国であるから、それでソ連領のソ連地域というような扱い方をするのは、中華人民共和国という立場を全く認めないということになりはしないかと思うが、事実に反しておると思うがどうか。北鮮といつても或いはアメリカ軍が南鮮におる間に、それ以前にソ連軍が引揚げてしまつた。そうして朝鮮人民共和国ができたわけである。それであるからソ連軍との関係においては独立国であつて、主権国であつてそれをやはりソ連の領域のように支配権内のように、先ほどからお説があつたが、これは全く事実に反すると思う。他国の民族の独立したその国を侮辱しておると思つておるが、その点はどうお考えになつておるか。ソ連領というものと、それらの国とは全然これは違つたものである。それでその点をお伺いしたい。全くこの事実に反すると同時に、他民族を侮辱したものと思うがそれをあなたはどうお考えになつておるか。  それからソ連政府から引揚について引揚げるべき人数等について尋ねてもらつて通報がないという言葉があつたと思うが、ソ連政府は御存じの通りにすでに最終的且つ唯一の回答として発表しておるじやないか。それを無視して、これは何回も繰返されておる。この七月二十五日ソ連代表部の発表したところによると、ソ連領に抑留されておるものは千四百八十七名、内訳病気療養中でなおつたものが九人、中国政府へ引渡すべきものが九百七十一人と、こういうようなことは去年の六月プラウダ紙上でソ連政府発表したものである。そうしてこれは最終的且つ唯一のものであると代表部は先日発表したわけであります。それでこういう事柄ですね、この事実、これはまあ数の問題について多少の意見の相違があるにしましても、先ずこういう発表をやつておるものを認めないというか、一方は最終的である、そして唯一のものであると、こう言つておるのであります。それで現に、病気療養中の者九人とありますが、私の身近の例をとります。九人のうち一人は元改造社の編集長で、満洲のほうに行つて協和会か何かに関係しておつて、それから、捕虜になつてつて来たと言われておりますが、それなんか長く病気をして病院生活をやつておる。そうして呼吸器が惡くて、去年帰つて来ております。九人のうちの一人だが、今残つておる者は、その病気療養中の者九人、中国へ渡すべき者としての九百六十二人というものは中国に渡され、現に残つておるのは五百十六人というのがソ連政府発表である。これを日本の現政府が認めない。これは嘘、偽りであるというようにとつていると言わなければなりませんが、このソ連発表数字についての疑いと、それから更にそれを理由ずけるためにあらゆるデマ宣伝で真実を皆隠しているのは現政府の政策です。私はこの引揚委員会関係して以来ずつと見て来ておる。真実を知らせないで曲げて行くということがこの委員会においていろいろと策動されて来たのであります。そこでこういうふうにしてあなたの関係している外務省の外交白書なんか見ますと、赤い国と我我とは一線を画して不倶戴天の敵である、何を言つたつてこれは通じないものであるという極端なことを述べておりますが、そういうふうになつて来ると、どうにも事実が何もわからんというのならこれは又別の話でありますが、そういうようにしてソ連という一国、而も世界の平和及び戦争についての重大な関係を持つほどの力を持つておるその一国に対して、無茶苦茶に今この白書を見るとえらいことを書いてある。さつき内村君もこれは事実に即して調べたかどうかということをお問いなさつたが、これは当然の質問であります。これは私は草葉君も関係しておられるから、一緒にやつたことであるから究明したいのです。私簡單なことを申します。御存じの通り、菅という人がおつたでしよう。証人に呼ばれて結局自殺をした。その遺書の中に、日本において真実を守ることは誠に困難だということを言つて引揚委員会の証人に立つて懊悩した結果自殺をしております。これ一つを見ても、この委員会において我々が問題を調べたときに真実は何であるかを追求するよりも、政府の今申したような方針のほうにずつと引つ張つて行くことに努力なさつたことは相当たくさんある。併しながら速記録がまあ証拠だ。その中に真実は何かということは曲げられながら出ておるのであります。吉村事件を見て御覧なさい。私ら証人を呼んでやつた。池田隊長は七年間の懲役を食つたということを私は聞いております。これは日本の従来の軍国主義に毒せられた裁判所でさえ、今日ではどうしても否定できないからこれをやつた。これなんかソ連領において日本の兵隊が無茶苦茶の目にあつているというデマ宣伝を反対に表明して来た。というのは、吉村隊長及びその周囲の小数者が同胞の兵隊を酷使した。そうして自分らの地位を守り生活を楽しむためにすべてをそうしたふうにして来たということは、あの証言の中でもはつきり出ておるではありませんか。ソ連領においては、多く抑留将兵は日本従来の上級下級の階級制度のあるところでこういうことが行われて来たのであつて、これは日本の抑留されておる人たちの間の問題であつて、それは軍人の階級制度がとれない場合に起きたいろいろの不幸なことがないではなかつたのです。併しながら反対にこの吉村事件を調べたときにもはつきりしたことは、少佐であるとか、大尉であるとかいう階級の人が素つ裸になつて兵隊と一緒になつてつているのは、これは如何にも互いによく困難な中にも生活をやつて来たということは表明されます。それで更に誤解の、一つのデマの材料になつたのは、民主主義運動といつて、上から酷い目にあわされておつた兵隊が終戦と共に自分らの権利を主張し出して来た民主主義運動、これは当然起きなくちやならんすなおな運動である。同時に又それが日本に帰つて建設に加わろうという若い人たちの意気込みであつた。それに便乗して民主主義運動のような顏をして仲間の上に坐り込んだ者がある。そういう事柄も起きております。併しながら事柄は、全体を見ますと、参議院引揚委員会での調べだけから見ましても、全体として今ここに述べられておるようなことは出ないのです。私は長くなるからそういうことについては深くタツチしませんけれども、これはとんでもないことが書いてある。これは事実に即して調べたとありますが、どこでどういうふうにしてお調べになつたか。引揚問題に関する外務省発表情報部長談並びに国際連合議長宛外務大臣書簡、十七頁に亘るものが、これは新聞にも出ておつたわけでありますが、こういうようなものがもうきまつた一つの目的があつて作られておるものであります。本当にソ連においての捕虜待遇の問題の真相をまるでおつかぶして自分らで勝手に塗り潰しておる。ソ連領における人数幾らということも、先ほど申したように、これは全く得手勝手な数字を出しておつたわけであります。言葉の綾でそれを塗りたくつておる。実際ソ連領に幾らということになると、今発表したような数字しか出ないのです。数において、それから捕虜の取扱い、裁判所その他においてやられていることは、全く反対のことにとられてしまつておる。こういうものを以てして、一体これは何をするつもりであるのか、それを伺いたい。今度の講和は、ポツダム宣言にも、それから宣言以前の国際協定にも全く違反した、これを無視し蹂躙した單独講和を作つておるわけです。これをサンフランシスコに持つてつて調印するというわけです。これは單独講和です。全くポツダム宣言からその他の国際協定に対してはこれは無効である。不法ですよ。こういうものを作り上げるために、日本国民の目をくらまして、当然加わるべきソ連をも拒否する。その圏内に入れんように日本政府が一生懸命にやつておる。これは証拠です。
  72. 千田正

    委員長千田正君) 細川委員質問の重点……。
  73. 細川嘉六

    細川嘉六君 それだから、こういうような曲げたものを作り出すということの意図は、全面講和を抑えつけて單独講和を結ぶための意図でないとあなたは言いますが、それをはつきりして下さい。單独講和のためにこれをやつておる、そればかりでなく、この事実を曲げるということは、終戦前でも我々ひどい目にあつた、軍部内閣で。これは事実を曲げてどこまでも国民を引きずつて行くという責任は重いですよ。今在留者の問題についても事実を歪曲しておる。現にこれはそれで以ていつて單独講和をやる、そうして国民に目隠してこれをやつてしもう、この責任は政府は何とするのか、私は草葉君に單独講和の問題とか、全面講和の問題は問わない。併しこういう間違つたものをぬけぬけ出して来て、これを国民にさも道理に合うように言つている外務省の責任を問いたい。これは事実に反しておる。それでありまするからこの点ははつきりして下さい。何で調べたのか、これは一体……。
  74. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 細川君はずつと今回外務省発表いたしましたことをよく御覧願つたと存じまするが、只今の御質問を伺つておりますると、私自身が腑に落ちない点があります。実は御承知のように終戦直後の一九四五年九月十日にモスクワにおいて、ソ連発表し、更に四九年五月二十日にタス通信を以て発表いたしましたソ連数字は五十九万四千人が日本捕虜であつた発表いたしたのであります。ところがその後の状態を調べますと、御承知のように終戦時から翌年の五月にかけまして日本人の軍人或いは一般邦人が満洲におきまして相当大量に常に逮捕されてソ連領内に送られた事実もたくさんありまして、これは本院のこの委員会におきまする従来からの証言等にも現われて来た事実であります。これらの点を考えますると、仮に五十九万四千人という数字は、常にソ連はこの数字に実在的な意味を持たしたのではなかつたかと私どもはむしろ疑つておるくらいです。その人たちが、或いは病気になり或いは死亡した場合に、その数字を埋めるために、その後でも相当の数を送つたのではないかという状態はこの委員会等におきましての証言から私どもは従来とも相当関心を持つて来ておつたのであります。ところが更にその後におきまして御承知のように四九年の五月二十日になりまして、ソ連はタス通信を通じて突如としてここにもありまするように七万八百八十名のものを一九四五年戦地において現地で釈放したと発表いたしたのであります。ところが今まで帰つて参りました引揚者のすべてにつきまして御承知のように調査をいたしておりまするが、このような事実を供述したことはないのであります。従いまして七万八百八十名という現地釈放についてはその後におきましてもどういう人であつてどこでいつ釈放したかということを強く要請いたして参りましたが、今日までその実情を知ることができない状態でありまして、若しも現にこれらのものが現地において釈放されましたならば、釈放された場所、氏名、日時というものは明瞭になつておるはずであると存じます。又その後におきましても当時これと同じく最初のときでありますが、二万の負傷者を釈放したと申しておりまするが、二万の負傷者につきましてもその内容発表をいたしておらないのであります。従いまして負傷者が直つてから再び抑留される状態になつたのか、七万八百八十名のうちに加えられておるのか、それは明瞭を欠く次第であります。更にタス通信によりまする四十九年五月現在におきまするタス通信の従来のものを総合しまして、俘虜の総数が五十九万四千である、これは全く向うの発表だけを申上げる。そうして終戦時現地釈放が七万八百八十名であり、四九年五月までの引揚総数が四十一万八千百六十六名であり、更にその後引揚ぐべきもの九万五千である。これは事実は九万四千九百九十四客引揚げて参りましたがタス通信のように九万五千であるといたしましても、これを総合しまして九千九百五十四名及びその後の数を加え一万二百四十四名合計において不足をいたします。これは細川君よく一つ今までのソ連発表を御調査になりまするとおわかりと存じます。このような従来の発表におきましても、誠に私ども不可解な数字ソ連発表では持つておるのであります。只今重ねての御質問でありましたから申上げるのであります。そうして最後に戦犯関係が一千四百八十七名であり、そうして現地においての病気回復中にて回復次第送還すべき者が九名であります。中共に引渡すべき者が九百七十一名であるという発表がなされて、これ以外には一人もいないという発表に終つたのであります。これが従来の、実はソ連のいわゆる正式発表として三回発表せられたのであります。併し日本といたしましては関係国を通じまして、若しもそれであるならばその内容、その状態、収容所の状態等を一つ通報をして欲しい、これには死亡者は一名も発表されておりません。又一般邦人については一カ所ここに出しておりまするように、旅費の問題のときに一般邦人というこれだけが言われただけで、あとは何にも一言半句も言われておらないのであります。而も死亡者につきましては、今申上げましたように一言半句も触れていないのであります。併しこれは細川君も御承知のように国際法関係から申しましても当然その氏名を通知をし、そうしてこれをよくそのあとを標識を立てるということは国際法の通念になつており、ソ連もこれは承知しておる点であります。併し死亡者に対しましては今まで曾てその数字発表いたしておりません。従つてソ連発表から申しますると、死亡者は一人もないということさへ言える状態であります。誠に私ども不可解だと存ずる次第であります。今日本発表いたしました数字は、一方ソ連の従来からの数字は、私が只今申上げました通りであります。ソ連の申しまする通りにいたしましても、一万二百四十四名は全然そろばんの合わない数字になつております。よくこれは従来の三回のソ連の正式発表をそろばんに置いて一つよく御検討を願います。今度はそれと離れて現実の問題として日本状態を調べますと、ここにありまする今度の政府発表した通りであります。これは先ほど細川君は成るほど樺太なり千島なり、或いは北鮮なり満洲なりはソ連領内ではない、これは御尤もであります。御承知通り三十八度線以北はソ連極東軍最高司令官において日本軍隊の武装解除をするということになつて、そうしていわゆるソ連極東軍最高司令官の権限内にあつた所であります。従いましてこれらの抑留者一般邦人並びに当時の軍人というものは、ソ連極東軍最高司令官の勢力下におきまして、自由になされた状態でありますることは私が今更申上げるまでもなく十分委員会で従来から検討して参りましたので、細川君も御承知通りであります。従いまして当時におきましては、これらの地区にありましたが、これらの人たちは殆んど多くシベリア、又ソ連地区の収容所に収容された事実は否定できない事実であります。これらを総合いたしまして今回発表したのがこれであります。
  75. 内村清次

    内村清次君 私動議を提出したいと思います。  日本が一九四五年の八月十五日に無條件降伏を、即ちポツダム宣言を受諾いたしまして、終戦と相成りましてから以来、外国におられました軍人軍属及び一般邦人の引続いての引揚げが大体において進行いたしまして、国内の生活の安定と生産の復興に、ポツダム宣言の條項を忠実に履行いたしまして、今日まで来ました過程におきまして、なお外地に三十数万の軍人軍属及び又一般邦人の抑留者がおられますることにつきまして、日本国民といたしましては、又直接の関係者でありまする留守家族といたしましては、このポツダム宣言の第九項にありまする、即ち、「日本国軍隊ハ完全二武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭二復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ」という、この項目を期待しつつ今日までその一日も早く引揚の完了を期待いたしておりましたのでありますが、すでに六カ年を経過しました今日におきまして、対内的な問題ではなくして、対外的な、国際的な問題から日本講和というものが今日まで遅れておつた。その事態が漸くに平和條約の締結を目前に控えました今日におきまして、なお且つたくさんの軍人軍属及び一般邦人の抑留者があることを誠に我々といたしまして痛惜に堪えないところでございます。政府の今回発表いたしましたこの抑留者の数につきましては、なお本委員会といたしましても検討する必要があると存じますが、この問題はこの委員会の今後の調査に待つといたしまして、最も急を要しなくてならないのは、今回の平和條約の発表が外国の通信を通して我々は知つたのでありまして、政府の正式なる発表ではなかつたのでありまするが、この締結までの経緯につきましては、今日御出席になつている草葉政務次官にお尋ねいたしましても、到底我我委員といたしましては満足する御答弁ができないことと思います。それは吉田総理大臣の秘密外交によつてこの講和條約が進行されているというような点を勘案いたして見ますると、これは又この問題も当然これは講和條約調印前の臨時国会において十分と討議され、或いは又は批准時におけるところの国会において十分と国民の納得の行くところの討論がなさるべき問題であろうと存じます。検討さるべき問題であろうと思うのでありまするが、我々特別委員会は各委員の熱心なるこの問題に対する而も又切実なる関係者の要望に応えて真剣に取組んでおります。即ち委員会といたしましてはこの講和條約におきまして、果して我々国民が今後平和を持続するためにこの交戦国全般の連合国と完全なる調印がなされることをこれは希望することは当然でありまして、この点はまだ残されておりまする事実とはいえ、私たちはこの関係各国の進んで日本の今後の平和的の独立につきましての調印をなされるように希望して止まないものでありますが、併しこの残されました短時日の間におきまして、どうしても一つ解決してもらわねばならないのは同胞がなお且つ外地におられる問題でございまして、この問題につきましては過般各留守家族代表者が東京の地に集まつて切実なる希望を政府、又関係当局を通じて訴えておることは私が申すまでもないことありまして、一つにはその強い要望のためにハンストもやつておる。百人余りの人たちがハンストもやつておるというこの現実の人道的な問題も、第一段階には解決すると共に、全般的に民族的に我々の要望を各連合国にその情思をはつきりと伝えまする意味からいたしましても、この委員会といたしまして何らかの要望をここに政府に対し、或いは又政府をして各国に対し又委員会みずから連合国に対してでもその措置といたしましては、各委員かたがたの御協議に委せるといたしましても、ここに一つ委員会の意思表示をすることが必要であろうと存じまして、私は本委員会におきまして是非各委員かたがたの満場の御賛成を得まして決議をしたい、かように考えまして、次のごとき決議案文を提出する次第でございます。決議案文を朗読いたします。   参議院在外同胞引揚特別委員会は来たるべき講和会議に関連して連合国側がポツダム宣言第九項に従つて未帰還日本捕虜及び抑留者を速かに帰還せしめることを條約の一條項に挿入するか或いは講和條約調印の際に連合国が右送還に関し明確な意思表示をなすことを必要と認める。よつて政府に対し善処方を強く要望する。   なお吉田総理大臣は来たるべ講和会議に対処する臨時国会においてこの問題に関する所信を国会を通じ国民に明らかにすべきことを重ねて要望する。   右決議する。  この決議をなして残されました大きな問題の完全なる解決に本委員会は今後熱意を以て進んで行きたいと、かように存ずる次第でございます。この趣旨の上に立ちまして、右の決議案を委員長において御採択頂きまするように処置をとられまするように要望する次第であります。
  76. 千田正

    委員長千田正君) 只今内村委員から当委員会の決議として政府要望する案文を提出されて動議を出されましたが、この動議に対しまして御賛成のかたがたの御挙手を願いたいと思います。
  77. 細川嘉六

    細川嘉六君 ちよつとお伺いいたしたいのですが、この案文そのものは私どもも賛成します。併しながらこれを今度の條約案の中に入れるということは、條約案というものは先ほども申しましたように、不法なもの且つ無効な案でありまして、なぜかというと、ポツダム宣言その他の協定に違反したものがある。これを無視したものがあるから、これには賛成いたしますが、それの中に挿入するということは、そういう條約、それを肯定することになりますので、私は挿入には反対です。これはどうしても先ほどから問題になつておる在留邦人の問題を解決するためには、これはそういう單独講和の形では解決できないものが残ります。実際は先ほど草葉君に申しましたように、ソ連発表は最終的にはもうここまで来ておるのだというので、それは問題ないことであるが、併しながら今日政府の言うがごとき問題がなお残つておるとすれば、全面講和によつてソ連にも参加してもらう、中華人民共和国にも参加してもらう。そういう形でなければ解決できないと思うのです。そこでこれを挿入して、この案文を挿入することが仮にできましても、これは結果において目的を達しないのみならず、とんでもない單独講和の條約を認めることになりますので、挿入することには賛成できないのです。案文そのものは日本の今日のたくさんの人が不安に、又悲しみの中におることから見まして、当然こうあるべきことであります。更にこの案文と関連しまして、先ほどこの案文が提出される前に残つてつた問題について一言して置きたいと思います。というのは、草葉君は北鮮、満川において云々と申されて、数字の上にどうとかこうとか申されましたが、これは私たちが外におつての推量であり、計算であるわけです。ということは、ソ連当局の真実性を認めるか認めないかということにかかつておるのです。全然認めないのだから、いろいろの、今草葉君が言われるようなことまでが述べられるわけでありまして、それよりも三十七万シベリアにおるというのが六万になつておる。あなたがたの発表なさるところだけでも六万になつておる。三十七万が六万になつておる。これほど大きな食い違いがあるのです。それをそつちのけにして、今我々が実際自由にわからない事柄の点を問題にしたつてしようがない。はつきりしたことはとんでもないことを今まで言いふらして、結局六万になつたということの責任は大きい。そういうようなわけで、そのソ連領における在留者の問題にしてからがこのていたらくです。そういうことをやつてつては、実際の目的は達しません。そうでありますから私は今の提案に対してはそのものには賛成だが、併しながらそういう意図で作られておる、アメリカと一緒になつてつておる、この單独講和には挿入するわけにはいかない、反対します。
  78. 千田正

    委員長千田正君) 只今内村君の動議に対しまして、一応細川委員からの反対がありましたが、内村委員の趣旨としましては、恐らく日本講和会議に際しては、如何なる相手国に対しても日本国民の意思表示をすべきであるという意味で、講和会議の俎上に上つておる問題に対しての提案だろうと思うのでありますが、只今の内村君の動議に御賛成のかたの御挙手を重ねてお願いいたします。
  79. 大谷瑩潤

    ○大谷瑩潤君 もう一度読んで下さい。
  80. 内村清次

    内村清次君 決議案。   参議院在外同胞引揚特別委員会は、来るべき講和会議に関連して連合国側がポツダム宣言第九項に従つて未帰還日本捕虜及び抑留者を速やかに帰還せしめることを條約の一條項に挿入するか、或いは講和條約調印の際に連合国が右送還に関し明確な意思表示をなすことを必要と認める。よつて政府に対し善処かたを強く要望する。   なお吉田総理大臣は来るべき講和会議に対処する臨時国会において、この問題に関する所信を国会を通じ国民に明らかにすべきことを重ねて要望する。   右決議する。
  81. 長島銀藏

    ○長島銀藏君 ちよつとその件で伺つて見たいのでありますが、講和の全権委員を各派に要請しておりまするが、これが各派が御了承せられるというと、国会法に基きまして国会の承認を得なければなりませんので、臨時国会を開くという段取りになるように聞いております。ところがこれは非常にいろいろな事情がありまして、單に承認を頂くだけの国会ということで、その他の質問なり何なりというものはなされないように聞いておるわけでありますが、今の決議は、その国会のなかで総理に、決議に基いて説明を求める、こういうことになるのでございましようか、如何でございましようか。ちよつとお尋ねしたいと思います。
  82. 内村清次

    内村清次君 これはむしろ私は政府国会に対する即ち手続、それから又国会におけるところの政府講和條約に対する所信の訴え方という点に関係するものでございまして、むしろその内容の点につきましては、政府答弁をお聞き下さつたほうがいいと思いますが、ただ私たち考えといたしますれば、これは新聞にも載つておりましたように、とにかく国会において一応の経緯は話すというようなことも載つておりました。これは又当然のことだろうと思いますが、その際に、今取上げておりまする未帰還者の問題と條約との関連性につきましても、或いは又未帰還者の今後の保障の問題につきましても、これは当然、国の政治を扱つておられる政府といたしましては御発表頂くことが当然のことでないかと、かように存じまするから、その機会はどこでもよろしうございますが、それに政府考え方にお任せ申上げますが、そういう機会を作つて、この委員会の決議の要望に応えて頂きたいと、こういうふうな考え方で出したのでございます。
  83. 大谷瑩潤

    ○大谷瑩潤君 今内村委員の言われたことも御尤もだと思いまするが、それならばむしろ総理云々のあの最後の言葉をとつて頂いて、当然決議が政府に送られれば、それを考慮して、今度の講和の問題は臨時国会には御説明があると思いますが、その具体的な、出て来て御説明をせよというようなことだけをとつて頂きたいと思います。
  84. 千田正

    委員長千田正君) それはどうでしよう。お諮りいたしますが、当然政府代表吉田総理大臣でありまして、当然一応の御説明はなさると思います。又そうであつてほしいと国民要望しておるのですから、仮に吉田総理大臣が出られないといたしましても、代るべきかたが当然これは講和の問題について御説明があつて、これに対する国会の賛意を受けて全権を選出するだろうと思います。ですから吉田首相の出る出ないにかかわらないじやないかと思います。
  85. 大谷瑩潤

    ○大谷瑩潤君 それは一つ全部に諮つて頂いたらどうですか。
  86. 千田正

    委員長千田正君) 私はそういうふうに考えますがお諮りいたします。
  87. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は今内村委員から御提案になりました動議に賛成するものでありますが、理由はくだくだしく申上げるまでもないと思うのですが、今二つ問題がそれぞれ自由党並びに共産党のかたから御提案になつておるのでありますが、先ず自由党のかたの御心配の点は、只今委員長からも御説明があり、内村君からも御説明があつたと思うのでありまするが、これはどうせ近く臨時国会が開かれることは事実だろうと思うのです。そこでその際に総理が当然に講和條約の問題についての説明をするということも我々は承知しております。従つてその際に、この問題に関連した発言がなされることを委員会として希望するのは、これは又当然のことではないかと思うのであります。  いま一つ実際問題といたしまして、特に自由党の同僚委員にお考え願いたいことは、私たち委員会といたしまして、ここで大体今の趣旨の委員会としての政府に対する要望、この中から総理のことを除いたものだけをいたしましても、現に留守家族かたがたがハンストに入つておられる。これに対しまする何らかの緊張緩和の材料といたしましては、やはり国会側だけの行為では必ずしも十分でないのではないか、かような心配が持たれるわけであります。従いましてできればこの際、委員会の意思というよりも、吉田総理或いはその代理としての草葉政務次官から、むしろ進んでさような御発言があるならば、初めて我々としても留守家族かたがたの現在のせつぱ詰つた気持に対する有効適切な緩和剤になるのではないかと、かように思うわけでありますが、どうぞその点もお考えの上、決して方法論について無理なことを委員会として注文するつもりはない。私は提案者の御趣旨もそういうところにあるんじやないか。私がそう申上げるゆえんのものも、只今委員長の御説明の通りでありまするから、是非ともやはりそういう條項を入れて頂きたい、かように考えるのであります。  それからもう一つ、細川君の指摘された問題でありまするが、結論的には御賛成下すつているようでありますから、余り深く触れる必要はないのでありますが、ただ私たちはこの際ここで、講和條約の全体に対する可否、検討をやつておるのではないのであります。我々はさような見地からこの問題を取上げておらない。そこで我々は、この我々に与えられんとするところの條約がいい條約であるか、不公平な條約であるか、不公正な條約であるか、さようなことを論議しておるのではないのでありましてさようなことは適当な場所において、改めて大いに論議したいと思つております。我々は元来ならば当然にこの條約の中にこの引揚に関する明確なる連合国のある義務條項が入るべである。而してその條項が入つた上で、而もソ連邦にもこれに加わつてくれることを強く期待するのであります。併しながらそれ一本槍で行きまするならば、いろいろの問題があると思いまするので、そこで内村君において考えられた点がそこから出て来まして、必ずしも講和條約草案そのものの中に引揚條項がなくても、連合国の明確なる宣言等の意思表示があれば、それでもう我慢したらどうかという非常に外交的にもよく考えられた点があると思うのであります。従いまして政府におかれても又全然逆の立場に立たれる共産党のかたにおかれても、全体の條約に対するメリツト、デメリツトの論議でないのでありますから、どうぞこの点に関しては一つ党派を超越して原案に御賛成賜わらんことを切にお願いする次第であります。
  88. 紅露みつ

    ○紅露みつ君 私も内村委員の動議に賛成するものでございます。そこで只今自由党の長島委員からお話のございました臨時国会でございますが、今回は議員が全権になるということの承認を得る国会だというようなお話がございましたが、私ども国民民主党としてはさように考えておらないのでございます。過日来全権を出せということの交渉がありまして、それは臨時国会においてその草案内容経緯等について納得ができた場合に考慮しよう。こういう経過を辿つておりまして、今その経過中でございますが、与党が、政府がこれを打切つて、ただ承認を得るというよな臨時国会にするということで押し通すならば別でございまするし、この野党への国民民主党としての立場から申しますと、野党への呼びかけを打切るということであれば別でございますが、そうでない限りにおきましては、今度の国会では十分この草案検討されるという建前に立つております。従いましてこの問題が当面の責任者である総理であり外務大臣である吉田さんから説明されるということは、これは当然と考えておる次第でございますが、なお全権の問題を離れましても、一応の説明は今度なければならないと存じておりますので、今その案文については全面的に私は賛成するものでございます。併しまだ党にも諮つておりませんが、党の建前としてはこれに反対のないことを信じております。又曾祢委員からも草葉政務次官お話があつたようでございますが、今日取上げられました議題については、委員つて遺憾の意を表明しておられまするが、私も誠にこの発表は遺憾と思うのでございます。発表そのものよりも、経過につきまして、私どもは第一国会からこの委員会が全力を挙げて本問題の解決努力して来ましたことは、これは国会におきましても、国民一般におきましても、十分に知り尽したことでございます。ところが突如としてこういうものが出まして、今度の閉会中にそれぞれ委員は選挙区に帰りまして、そうしてこの問題に触れております。而も何にも知らないというような……何にも知らないというのは少し言葉が違うかも知れませんが、殆んどこうした重大な問題が近く発表されるというようなことにつきましては、何ら関知しておらない。こういうような行き方は、全くこれは政府が秘密外交を建前とする、その性格の一つの大きな現われである。国会無視、それはもう蔽うべからざる事実たと思うのです。(「ヒャヒヤ」と呼ぶ者あり)これは衣の下から鎧が覗いたようなものであろうと思うのであります。ところで草葉委員委員と申上げたいのでございます。(笑声)今日は政府委員として御出席でございますけれども、曾つては本委員会委員長でもあられ、現在でも委員でおられるのでありまして、記者団に発表されるときの御心境が実はどうあつたかということを伺いたいのであります。(笑声)而も留守家族大会におきましては、これまでの草葉委員としての経験から申しましても、もつと熱意を持つて、今は政府の要路におられるのでありまするから、先ほどもお話があつたように、けんもほろろの挨拶を官房長官にさせるようなことでは私はならないと思う。あなたの熱意でもつと留守家族に納得せしめる方法が講ぜられなければならないと思う。現在この決議案におきましてもあなたは与党に対して熱意ある御発言をなさらないということがここに分裂を来たしている。(笑声)非常にけしからないと思うのでございます。委員であり或いは委員長であつた人が政府の要路に立つて政府委員となるとかようにも弱くなるものかと思いまして、(笑声)それでは国民代表としての一面が立たないのではなかろうかと、かように考えまするので、そのお心がまえも伺いたいのですが、差当つてこの決議案の採決に当りまして御発言を願いたいと思います。
  89. 大谷瑩潤

    ○大谷瑩潤君 先ほど申上げましたが、私の考えは、ただ総理が出て説明するとかせんとかいうことの具体的なことを今ここで今日かれこれ申しましてこの中に書いておりましても、若しそのときになつて又我々社会通念でどうしても割切れないような事柄が折々起つて来ることは皆さん承知通りですから、(笑声)そのときに我々として皆さんがたに申訳のないというようなことが起つたらと思つたものですからああいうことを申上げたのですが、併しその内容におきましては我々自由党の委員といたしましても皆さんがたのお心持ちは十分にわかるのですし、我々もその気持なんであります。私の前に申しましたそれを白紙に戻しますからどうぞ御採決下さい。
  90. 千田正

    委員長千田正君) 大谷委員も長島委員も自由党に所属してはおられますけれども、委員としての立場から一つ御賛成願いたいと思います。なお今の紅露委員からの質問に対しまして草葉……。
  91. 紅露みつ

    ○紅露みつ君 御答弁がなさりにくいようでしたら、もう一遍申上げたい(笑声)草葉委員と申上げるのが癖になつているくらい、草葉委員はこの委員会における存在がはつきりしておられるのでございまして、あなたの心がまえが伺いたいと存じます。
  92. 千田正

    委員長千田正君) 紅露委員に申上げますが、ここで採決をいたしまして幸いに多数決で採決されましたその採決に対しまして……。
  93. 紅露みつ

    ○紅露みつ君 結構でございます。
  94. 千田正

    委員長千田正君) 政府吉田総理大臣の代りに参つておりますから、心がまえを伺いたいと思いますから、(「異議なし」と呼ぶ者あり)それでお願いしたいと思います。
  95. 細川嘉六

    細川嘉六君 採決に入る前に今曾祢君から私に御意見がありましたが、成るほどここでは全面講和か單独講和かの問題を議論しておるわけではない。これは私としてもわかる。併し結局は單独講和の中へ入り込むということになりますから、折角の御意見であるけれども私は前言を取り消しません。
  96. 長島銀藏

    ○長島銀藏君 我々は決して戦争で勝つた国ではないのでありまして、戦敗国といたしましてあらゆる方面に精神的にデリケートに動いて行かなければならないという点がございます。従いましてこの速記録の中にも差障りのある字句が若しあつたらいけませんから、その点は委員長において適当に取捨選択をなさつて頂くように同時にお願いしたいと、かように考える次第であります。
  97. 千田正

    委員長千田正君) では採決に入りたいと思います。先ほど内村委員より提案されましたところの、当委員会におきまして講和問題を前にしまして未復員者いわゆる海外に抑留されておるところの我々同胞の問題に対するところの当委員会としての結論としまして決議案が出ましたが、この内村委員の提案の決議案に御賛成のかたの御挙手を願いたいと思います。    〔挙手者多数〕
  98. 千田正

    委員長千田正君) 多数と認めまして採択いたします。なお只今この決議案が可決されましたので、これに対しまして草葉政務次官、先ほどから各委員からの御要望もありましたが、一応一つ政府としての所信を、簡單でよろしうございますから、お述べ願いたいと思います。
  99. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 政府国会の意思を十分尊重して行動をとりますことは、これは当然であります。従いまして皆さんの御決議に対しましては十分その意思を汲みまして進んで参りたいと思つております。(「積極的にね」と呼ぶ者あり)
  100. 千田正

    委員長千田正君) なお、お諮り申上げますが、只今総理大臣官邸の前に留守家族の一部の幹部の人たちがいわゆるハンストをやつておりますそうです。千鳥ケ淵のいわゆる英国大使館前、宮城の裏門の所でこれ又留守家族のこれは相当数の人たち断食、ハンストをやつておるそうでありまするが、我々委員会としては只今皆さんの多数できめられましたこの気持を伝えて、できるならば国会において吉田首相の所信を述べられるまで静粛にしてお待ちを願つたほうがいいじやないかという申入れをしたいと思いますが、この点をお諮りいたします。    (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  101. 千田正

    委員長千田正君) お差支えなければさよう取計いたいと思いますが、自動車は二台用意しまして、若し皆様のうちで私と御一緒に願えるかたは一つ手を分けましてここの空気をお伝えしたいと思いますから、一つ皆様には誠に御足労ではございますが、ちよつとの時間を一つ拝借したいと思います。  更にお諮りいたしますのは、政府側の発表によると八月の四日、五日の二日間臨時国会を開くそうでありますが、臨時国会ごとに或いは国会ごとに委員長は代るのでありまするので、この点も前以てお諮り申上げて置きます。
  102. 高良とみ

    ○高良とみ君 委員長の件につきましては、あと臨時国会は僅か二日の予定のように聞いておりますので、その二日間だけ新らしい委員長を選んでその次のときに又選ぶということは、問題の研究継続上好ましくあるかどうか疑問であると思いますので、今回の臨時国会に当りましては、従来の経過及び事務の引継ぎ等の煩を省きまして、現在の委員長が継続されんことを希望し、これを委員会にお諮り願いたいと思います。
  103. 千田正

    委員長千田正君) 只今高良委員から動議が出ております。如何いたしましようか。
  104. 長島銀藏

    ○長島銀藏君 只今の高良委員の御意見に賛成いたします。
  105. 千田正

    委員長千田正君) それではさようお取計いいたしましてよろしゆうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 千田正

    委員長千田正君) それではこの次の臨時国会の二日間だけは皆さんの御協力を得まして委員長を勤めさして頂きまして、次の国会が間もなく八月か九月の末に開かれると思いますが、その節改めて次の委員長をお選び願いたいと思います。  本日はこれを以て閉会いたします。    午後三時五十九分散会  出席者は左の通り。    委員長     千田  正君    理事            大谷 瑩潤君            高良 とみ君            紅露 みつ君    委員            長島 銀藏君            内村 清次君            小酒井義男君            曾祢  益君            成瀬 幡治君            杉山 昌作君            鈴木 直人君            堀  眞琴君            細川 嘉六君   説明員    外務省外務政務    次官      草葉 隆圓君    外務省管理局引    揚課長     吉岡 俊夫君    厚生省引揚援護    庁援護局長   田邊 繁雄君