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細川嘉六君 そこでその問題に入る前に、今度の
発表に、関東州、満州とか或いは北鮮とか、そういうふうに地域分けにな
つて出ておるが、それは
ソ連領ではないことは、あなたはもう言うまでもなく御
承知だろうと思います。そうかと言
つてソ連の属国でもないことも御
承知かどうか、満州、関東州というものは中華人民共和国のものである。対等の国として
ソ連がそれと同盟條約を結んでおる国であるから、それで
ソ連領の
ソ連地域というような扱い方をするのは、中華人民共和国という
立場を全く認めないということになりはしないかと思うが、事実に反しておると思うがどうか。北鮮とい
つても或いはアメリカ軍が南鮮におる間に、それ以前に
ソ連軍が
引揚げてしま
つた。そうして朝鮮人民共和国ができたわけである。それであるから
ソ連軍との
関係においては独立国であ
つて、主権国であ
つてそれをやはり
ソ連の領域のように支配権内のように、先ほどからお説があ
つたが、これは全く事実に反すると思う。他国の民族の独立したその国を侮辱しておると思
つておるが、その点はどうお
考えにな
つておるか。
ソ連領というものと、それらの国とは全然これは違
つたものである。それでその点をお伺いしたい。全くこの事実に反すると同時に、他民族を侮辱したものと思うがそれをあなたはどうお
考えにな
つておるか。
それから
ソ連政府から
引揚について
引揚げるべき人数等について尋ねてもら
つても
通報がないという
言葉があ
つたと思うが、
ソ連政府は御存じの
通りにすでに最終的且つ唯一の回答として
発表しておるじやないか。それを無視して、これは何回も繰返されておる。この七月二十五日
ソ連代表部の
発表したところによると、
ソ連領に抑留されておるものは千四百八十七名、内訳病気療養中でなお
つたものが九人、中国
政府へ引渡すべきものが九百七十一人と、こういうようなことは去年の六月プラウダ紙上で
ソ連政府が
発表したものである。そうしてこれは最終的且つ唯一のものであると
代表部は先日
発表したわけであります。それでこういう事柄ですね、この事実、これはまあ数の問題について多少の意見の相違があるにしましても、先ずこういう
発表をや
つておるものを認めないというか、一方は最終的である、そして唯一のものであると、こう言
つておるのであります。それで現に、病気療養中の者九人とありますが、私の身近の例をとります。九人のうち一人は元改造社の編集長で、満洲のほうに行
つて協和会か何かに
関係してお
つて、それから、
捕虜にな
つて入
つて来たと言われておりますが、それなんか長く病気をして病院生活をや
つておる。そうして呼吸器が惡くて、去年帰
つて来ております。九人のうちの一人だが、今残
つておる者は、その病気療養中の者九人、中国へ渡すべき者としての九百六十二人というものは中国に渡され、現に残
つておるのは五百十六人というのが
ソ連政府の
発表である。これを
日本の現
政府が認めない。これは嘘、偽りであるというようにと
つていると言わなければなりませんが、この
ソ連発表の
数字についての疑いと、それから更にそれを理由ずけるためにあらゆるデマ宣伝で真実を皆隠しているのは現
政府の政策です。私はこの
引揚委員会に
関係して以来ずつと見て来ておる。真実を知らせないで曲げて行くということがこの
委員会においていろいろと策動されて来たのであります。そこでこういうふうにしてあなたの
関係している
外務省の外交白書なんか見ますと、赤い国と
我我とは一線を画して不倶戴天の敵である、何を言
つたつてこれは通じないものであるという極端なことを述べておりますが、そういうふうにな
つて来ると、どうにも事実が何もわからんというのならこれは又別の話でありますが、そういうようにして
ソ連という一国、而も世界の平和及び
戦争についての重大な
関係を持つほどの力を持
つておるその一国に対して、無茶苦茶に今この白書を見るとえらいことを書いてある。さつき内村君もこれは事実に即して調べたかどうかということをお問いなさ
つたが、これは当然の
質問であります。これは私は草葉君も
関係しておられるから、一緒にや
つたことであるから究明したいのです。私簡單なことを申します。御存じの
通り、菅という人がお
つたでしよう。証人に呼ばれて結局自殺をした。その遺書の中に、
日本において真実を守ることは誠に困難だということを言
つて、
引揚委員会の証人に立
つて懊悩した結果自殺をしております。これ
一つを見ても、この
委員会において我々が問題を調べたときに真実は何であるかを追求するよりも、
政府の今申したような方針のほうにずつと引つ張
つて行くことに
努力なさ
つたことは相当たくさんある。併しながら速記録がまあ証拠だ。その中に真実は何かということは曲げられながら出ておるのであります。吉村事件を見て御覧なさい。私ら証人を呼んでや
つた。池田隊長は七年間の懲役を食
つたということを私は聞いております。これは
日本の従来の軍国主義に毒せられた裁判所でさえ、今日ではどうしても否定できないからこれをや
つた。これなんか
ソ連領において
日本の兵隊が無茶苦茶の目にあ
つているというデマ宣伝を反対に表明して来た。というのは、吉村隊長及びその周囲の小数者が
同胞の兵隊を酷使した。そうして自分らの地位を守り生活を楽しむためにすべてをそうしたふうにして来たということは、あの証言の中でもはつきり出ておるではありませんか。
ソ連領においては、多く抑留将兵は
日本従来の上級下級の階級制度のあるところでこういうことが行われて来たのであ
つて、これは
日本の抑留されておる
人たちの間の問題であ
つて、それは軍人の階級制度がとれない場合に起きたいろいろの不幸なことがないではなか
つたのです。併しながら反対にこの吉村事件を調べたときにもはつきりしたことは、少佐であるとか、大尉であるとかいう階級の人が素つ裸にな
つて兵隊と一緒にな
つてや
つているのは、これは如何にも互いによく困難な中にも生活をや
つて来たということは表明されます。それで更に誤解の、
一つのデマの材料にな
つたのは、民主主義運動とい
つて、上から酷い目にあわされてお
つた兵隊が終戦と共に自分らの権利を主張し出して来た民主主義運動、これは当然起きなくちやならんすなおな運動である。同時に又それが
日本に帰
つて建設に加わろうという若い
人たちの意気込みであ
つた。それに便乗して民主主義運動のような顏をして仲間の上に坐り込んだ者がある。そういう事柄も起きております。併しながら事柄は、全体を見ますと、
参議院の
引揚委員会での調べだけから見ましても、全体として今ここに述べられておるようなことは出ないのです。私は長くなるからそういうことについては深くタツチしませんけれども、これはとんでもないことが書いてある。これは事実に即して調べたとありますが、どこでどういうふうにしてお調べにな
つたか。
引揚問題に関する
外務省発表、
情報部長談並びに
国際連合議長宛外務大臣書簡、十七頁に亘るものが、これは
新聞にも出てお
つたわけでありますが、こういうようなものがもうきま
つた一つの目的があ
つて作られておるものであります。本当に
ソ連においての
捕虜待遇の問題の
真相をまるでおつかぶして自分らで勝手に塗り潰しておる。
ソ連領における人数幾らということも、先ほど申したように、これは全く得手勝手な
数字を出してお
つたわけであります。
言葉の綾でそれを塗りたく
つておる。実際
ソ連領に幾らということになると、今
発表したような
数字しか出ないのです。数において、それから
捕虜の取扱い、裁判所その他においてやられていることは、全く反対のことにとられてしま
つておる。こういうものを以てして、一体これは何をするつもりであるのか、それを伺いたい。今度の
講和は、
ポツダム宣言にも、それから宣言以前の国際協定にも全く違反した、これを無視し蹂躙した單独
講和を作
つておるわけです。これをサンフランシスコに持
つて行
つて調印するというわけです。これは單独
講和です。全く
ポツダム宣言からその他の国際協定に対してはこれは無効である。不法ですよ。こういうものを作り上げるために、
日本国民の目をくらまして、当然加わるべき
ソ連をも拒否する。その圏内に入れんように
日本政府が一生懸命にや
つておる。これは証拠です。