○説明員(吉村又三郎君) 今
委員長の申されました、外地に抑留されております我がほうの戰犯者の内地服役の問題に関しましては、
政府としましては過去五年間、極めて愼重にねばり強く、根気よく努力して参りまして、その結果、中国関係の戰犯者は、当時の蒋介石国民
政府首班のイニシアテイブによりまして、先ず第一番に内地服役が実現したのであります。続きましてオランダ
政府が、インドネシア地域にある戦犯者を内地へ送還しまして、巣鴨に抑留せられ服役することになりました。その次に実現したしましたのは、仏印地域における戰犯者が又内地服役を命ぜられまして、今日に至
つたのであります。現在
残つておりますのは、外地にはフイリピン、イギリスのシンガポール、マレー、それからビルマのラングーンにいる者と、それから濠洲のマヌス島というアドミラリテイ諸島の中の
一つの小さな島にいるのとで、現在外地に戰犯者として抑留せられ、服役しております者は概数七百八十名前後であります。ソ連関係は、我々のほうと全然連絡も接触も持
つておりませんので、私
どものほうの事務の連絡外にな
つております。そこで戰犯者を内地に送還して、巣鴨拘置所でその刑期を服役する
ようにするということに関しまして、これは外地にある人々が内地へ帰れるという意味では、
一つの引揚ではありますが、通常引揚
委員会が本来の
建前、本来の任務として
考えられた引揚と、概念が異
つている点を
ちよつと申上げて置きたいと思うのであります。と申しますのは、
一般の在外邦人は、戰争終結と共に内地へ帰
つて、平和的に暮すということを約束せられ、
一つの権利として持
つていたのでありますが、これら戰犯者は、英国なり濠洲なり、フイリピン
政府の司法権の下に裁判せられ、有罪と宣告せられ、その刑務所に繋がれておるのでありまして、内地へ帰るという
希望は、我々も全く同感であり同情するのみならず、過去五年間、足掛け六年間鋭意努力して実現した国もあるのですが、まだ実現しない国としてフイリピン関係、英国関係、濠洲関係が
残つておるのであります。この関係におきます連合国総司令部の
立場というのは、マツカーサー元帥の権限は、外地の戦犯者に及ばないのであります。これらフイリピン、イギリス、濠洲の諸国が、その主権に基いて国家権力として行いました戦犯裁判及びその結果生じた戦犯者の身分に関しましては、連合国総司令部は管轄権を持
つていないのであります。
従つて総司令部の
立場は、これら戰犯の関係者及び日本
政府の
希望を伝達して、関係国にその意のあるところをよく伝えて頂くという点にありまして、この陳情及び嘆願等は、逐一関係各国の主管者に伝達されておるのであります。第二の点は、連合国総司令部としましては、それでは関係各国のほうが日本側の
希望を容れて、巣鴨へ移したいから、巣鴨を管理しておられるアメリカで引取
つてくれるかという要求に対しましては、総司令部のほうは、いつでも引取
つてよろしい、あなたのほうが異存がなければいつでも引取
つてよろしい、こういう態度でありまして、総司令部といたしましては、それ以上突き進むことは、むしろ越権になる危険がある
ようであります。そこで我がほうの
希望が、それではフイリピン
政府、英国
政府、濠洲
政府におきまして、どういうふうに受取られておりますかと申しますと、大体イギリスもフイリピン
政府も、日本側の
希望を容れて内地へ帰して、
家族にも会える
ようにして、而も裁判によ
つて下された刑期を服役するという日本側の
希望に応じてやろうということにおおむね内定しておるのであります。ただその時期の点は、機を見てやろう、こういうのであります。申すまでもなくこの戰犯関係の問題としましては、日本
政府としては單純に
希望を連絡し、伝達し得るのみでありまして、権利として要求し得る性質のものは何もないのであります。ここに本件の非常なむずかしさがあることを申上げたいと思うのであります。私の説明はこのくらいにしまして、御
質問のあるかたに
質問を頂きますなり、或いはよいサゼツシヨンがありましたらお教え願いたいと思います。