○
公述人(千葉千代世君) 私は現在の
日本の多くの婦人たち、特に農村婦人、貧しい婦人たちが
日本の
医療制度に非常に神秘性を持
つておる、封建性と申しましようか、そういう点の打破の点と、それから
医療費の
合理化と、こういう二つの点からこの
法案に
賛成いたします。婦人会でよく集まりますというと、家庭
生活の
合理化ということがいつも話合いになります。そうしてこれを阻むものは何であろうか、こういういろいろの問題が取上げられます。その中で封建性の問題とか、或いはいろいろ経済上の問題とか、たくさんございます。そうしてその中で最も困
つておる問題はと言いますと、皆申合せたように病気に
なつたときほど困ることはない。病人を治したいと思う気持と、一体どんなにたくさん金がかかるだろう、この二つの気持が矛盾してしまう、非常に困るという率直な
意見がある。私は現在家族の者が神田の病院に入院しておりますが、今の
医学ではできるだけのお手当は頂いておりますけれ
ども、丁度私の実家におります七十五歳の千葉県の年寄から手紙が参りまして、その中には余り病気が治らないから非常に占いの当る坊さんに見てもら
つたらば、四月の終りには大変よくなり、病院の方角も悪くない。こういうことがありまして、そうしましたら、嫁いだ先が秋田県の山の中で、又非常に心配しまして、もつと芸の細かい手紙が来まして、神降しとか市子に見てもら
つたらば、何代か前の祖先ですが、そのかたが非常に浮ばれないでいるから、その法事をすればすぐ治るというこういう手紙が来た。これは非常に愛情のある手紙でございますけれ
ども、私はこれを一笑に附せられないと思う。その前に身近の者に
中国とかビルマとかへ行
つて帰
つて来た宣撫工作の話を聞きますというと、現地に行
つて一番困るのは病人のあることだ。ああいう未開の人たちを治してやる
方法は歯磨きが
一つあればたくさんだ。歯が痛いと言えば歯磨きを歯に当てれば治る。おなかが痛いとか言えば歯磨きを飲ませれば治る。頭痛がすると歯磨きを付けてやればすぐ治るという話を聞いた。でこれは大変未開の人をごまかすやり方で悪いのではなかろうか。この歯磨きの効く限界、
精神療法と言われておるが、この限りがあるということを未開の人たちになぜ教えてやらなか
つたのであるか。こういう
考えを持
つておる。ところがこれは未開の土地ではなくて、
自分の住んでおる現在の二つの郷里からこういうことが来た。私は
考えるときに、これはやはり
一つの
日本の
精神医療というものが今まで発達してお
つて、神様におすがりするということに一連の繋りがあ
つたと思う。それで私が言いたいことはお
医者さんに対する信用、私も
医者を信用する一人ごでざいますが、この七十五歳の年寄も
医者を信頼して偉いと思
つている。而も現在手紙を私の所に持
つて来まして、坊さんの言
つたことが、お
医者さんに行くのは四月末まで待てということに非常に矛盾したことがある。これは過信ではなかろうか。医は仁術というものに対する過信から来たのではなかろうか。こういう点を
考えましたわけで、私はこれは何とか明るい
治療が行われて、そうして本当に安いお金で以て皆が安心して
医者にかかれる。
薬剤師に
調剤を頼む。こういうことから
考えて来まして、今までの
医者に対する気持、
薬剤師に対する気持、二つながら率直に批判を持つものでございます。例えば
薬剤師さんにしましても、私が薬を買いに行きますと、そばに子供を抱いたお母さんが、かつかつと熱が出ている。そういうときにこの薬はどうでしよう。これは正にこの薬で治りますと言うと、お
医者さんに行くことを抑えてしもう。どうしてこの
薬剤師は
医者の処方によ
つてやらないのだろうかと思う。お
医者さんに対しましては、病気について親切におつしやいますが、併し処方についてどういう薬を処方されたかということをちよつと今までの封建性と申しましようか、聞けないわけです。お
医者さんにしましても、そんなことは素人に言
つたところで何にもわからない。こういう
考えもございましよう。併しながら私
どもとしましては、最も納得の行く
方法でお
医者さんからも聞いて、こういう薬をこういうふうにして
処方箋を
薬局へ持
つて行
つて薬をもろう。そこで問題になることは、非常にそれでは不便ではなかろうかということを
考える。お
医者さんの所で一遍ですむところを
薬剤師の所に行けば二遍になる。併しそうではなくて、私
ども聞きますと、このお
医者さんは大変いいと言われますから、行くといつも非常に混んでおります。そしてお薬をもらうと大抵一時間以上た
つてしまいます。又どこも一概にそうではございませんけれ
ども、こういう例もございますので、これはやはりお
医者に処方をもら
つてすぐ近くの
薬局に行
つたら便利ではなかろうか。こういう点も
考えます。併しこれは
薬剤師のない所ではできないことは当然であります。こういう気持はわかります。今度の
法案を見てもやはり距離のことが問題になります。何町以内に
薬剤師がない場合はこれこれということを書いてあります。原則として
医薬分業ということが
考えられておる以上は、法の解釈はお
医者さんも
薬剤師さんも知性の高い
かたがたばかりですから、この
法律の彈力性を生かして頂ければ、こういう点についてはそう大した問題はないだろうと思います。私は
患者の
立場としてやはり
自分の子供たち、夫、家族の健康を守るということについては主婦としての
立場といたしまして、やはりお金の問題がすぐ頭に来てしまう。今船橋から眼が悪くて東京へ入院しておられるかたがありますが、このかたは毎日二万五千円かかる、千葉県でかかれば只である、あいにく眼の
専門の病院がないので、東京がよいというのでここへ来た、そういたしますというと、この保険の
制度はなかなか適用されない。何とか行く
方法はないだろうかと再三千葉県に掛け合
つておる。病院のほうではこれは証明を書いてやるからいいとおつしやるけれ
ども、それは
現状ではなかなかお互いにできにくい。そのかたが言うには、子供の可愛いには替えられないし、逃げて行くわけにも行かないという悲痛なる叫びです。私たち集りますというと、病人の容態を話合うよりお金の状態を話合う、こういう
現状であります。そこで
医薬分業に
なつたら一体どんなにお金が安くなるだろうかということは、こういう点は先ほど述べられたし、私素人ですからわかりませんですが、この間何か私の知り合いでイギリスへ行
つて帰
つて来た或るかたの話を聞きましたら、イギリスで
自分が病気にな
つてお
医者さんにがか
つたらお金をとらない。これは
自分が
日本から来たから特別に優遇してもら
つたのだろうと思
つて喜んでお
つたらそうではない。向うでは
医療国営というのがあ
つてイギリスの
国民の払
つた税金によ
つてこうするのだ。それでは
日本でもや
つたらよかろうと
考えた。向うはお金があるからだろう。とんでもない。やはりお金はない。こういうことについてもいろいろとあなたたちも
考えなければならないと言われました。いろいろ私は婦人としての
立場から新らしい政治への参加という点で婦人会でよく問題になりますが、一番重視しているのは
厚生委員会であります。それに一番身近な問題が取上げられて行く。而もその中でこの
医薬分業の問題があるというので、何をおいても何とかして貧しい婦人の声が反映されるようにしなければならんというので、こういう
考えで参りましたのでありますが、明るい
治療という問題、例えば今までのように知らないほうが何か安心感が行くような、そうしてお
医者さんにゆ
つたり抱かれて安心して、心配ないからとこう言われたら万事がOK、解決するという婦人の無知な時代は去
つて、やはり私
どもとしてはよりよい
治療というもの、やはり科学的知識というものがなか
つたのでありますが、だんだん持合せるように婦人会の集まりなんかで話合
つて、そういう眼をだんだん覚まされて行くにつれまして、お
医者さんと
薬剤師というものについて我々の持
つてお
つた観念、例えば
薬局さんに行きますと、今は余りございませんが、家伝の秘薬というのがある。これに対して盲信しておる。あそこだけにある家伝の秘薬を飲んだら治るだろう。或るときにはそちらに比重がかか
つて家伝の秘薬に没頭してしまう。又或るときには神様にすがる。或るときにはお
医者さんが親切に
言つて下さるときにはそれに行こう。こういうように右往左往して行く
現状というものはやはり身近にたくさんあるということは、殊に知性の高い男の皆様がたにはおわかり頂けないと思いますが、中谷先生が盲点をお突きに
なつたそのお
言葉の中には、
患者が薬を、処方ですか、
医師から薬をもらう権限まで剥奪するのは憲法違反だということをおつしやいましたが、私は先ほどこれをお借りして、
薬剤師のかたからこれを借りて見ましたが、そういう点はなくて憲法違反は毛頭ございません。というのは、原則として云々というのがございますし、それから距離にによ
つて云々、
薬剤師さんのない所においては
現状のままでいいとこういうふうに、非常に彈力性のある
法律の内容を今見せて頂いたのです。そうするというと農村において、
薬剤師のない所においては
現状のままで成るべくこれは
医者も早くや
つて薬局を開いたほうがいいと村会に進言するのもよかろうし、村の婦人会或いは社会事業
関係でお話して、そういう
方法をとると、こういうふうに
医者と
薬剤師と女の人も男の人も一体にな
つて全部そういう社会的
責任によ
つて医療制度を解決して行く、そうして衝いてもらうところは、多くの婦人が未だに迷信の中に眠
つてお
つてそうして大事な
医者とそうして
薬剤師を両方信用しています。私はお
医者さんばかり加勢するわけでも、
薬剤師ばかり贔貭するわけでもありません。両方とも同じように信用します。そうしてもう
一つ言いたいことは、今までの
医療制度の中で、非常に
医者が一番偉くて、最も大事な
看護婦さんがその奴隷の、隷属的な
立場に追いやられておる
感じが、
医者も
薬剤師もそうでありますけれ
ども、まあそうでなくて
日本の
医療制度、全体的にして、
医薬分業ばかりを改正するのではなく、
看護婦さんというものの今までの隷属の
立場から本当に看護の独立ということが叫ばれて
日本の
現状に合せてや
つて行くようにと、ついこの間もこの
厚生委員会で取上げて私も関心を持
つておりました。そういう点を、これが徐々に解決をされておるであろうかということです。而もその改正のやり方が現実を全く忘れてしま
つた改正の仕方をするのではなくて、現実を満たしながら行くようにとこういう努力がなされて
法律が施行されて、いけない点があればどんどん改正する、や
つて行
つていけなければ又いいほうに改正する、一遍きめてしま
つたらそれの波に落込んでしま
つて先ほどどなたか御
発言に
なつたように、これができてしま
つたら我々は
遵法精神で云々とそうい
つたような特攻隊的な
考えをお互いに止めまして、そうして率直に見てそうしてこれはよかろうと、これはいけないと、妥当な観点から判断しましてお互いにいいところをやり合う、こういう意味で
公聴会も開かれておると思うのです。ですから私は、まだ三分間ありますね、そういう意味でやはりこれは裸にな
つて、大変
薬剤師さんにもお
医者さんにも失礼なことを言
つたのですが、言う場所もございませんので申上げたので、どうか悪く思わないで頂きます。それから夜中に云々ということが大分あ
つたのですが、そうしたら
薬剤師さんも
アメリカのようにいつでも明るく提灯だか、電気をつけて夜それをや
つておる、これは不当な話で、
人間であれば眠らなければならない、そういう点は最も素直に
考え併せて行かなければならない。氷屋さんだ
つて熱の高いときには起さなければならない、やはりあるのです。そういうふうにお互いの
職業というものを尊重し合
つて、
薬剤師さんだけは夜起きなければならない、悲壮な気持で向う鉢巻的な
精神でなくて、もつと平易な気持にな
つてお互いの
立場を守り合うと、こういうふうに思
つて頂いたらなあと、こういうふうに思
つたわけです。それから現実面から、先ほど理想はそうであろうけれ
ども、現実面からこうであるというような御
意見も頂いたのです。私
どもとしましては、やはり現実面の上に立
つてそう
考えなければならないので、併しその理想というものはやはり我々の現実面から
考えて行い得る段階の足段であればいいのです。そうして一歩々々近付いて行く、こういう
考えから見ますときに、私は婦人会なんかでの一番問題は社会保障
制度の完備ということを言つで、未亡人会なんかで
言つております。そういう観点から、先ほど朝日のかたが述べられたように、大内兵衛さんが社会保障
制度審議会の会長で
答申案というものを見せてもら
つたら、政府のほうではこれは大変いい
意見であるけれ
ども、予算の裏付を持
つた社会保障
制度はなかなかできにくい云々ということを
新聞で拝見したのです。そこで婦人会で話合
つて、これじや全く意味がなくて、この予算を裏付けるために一体どんなふうに国家で予算を持
つて頂いたのだろう、こういうお話があ
つたのです。私
どもとしては何が何でもむちやくちやに全部予算を引き詰めて社会保障だけ完備しろと、そういうやぼな横車を押しませんが、現在の
範囲において、そして最も困
つておる者、台所の隅で泣いておる婦人の
立場から、そういう点から
考えますときに、やはりこの
医療制度というものが社会保障
制度の完備の一段階として
考えられる、そうした場合には、これは
医療国営にまでや
つて行けたらなあという、これは非常に純真な気持でございます。私の家族も今入院しておる。これが
医療国営でもきま
つたら率直の話が、もつとお金が少くて済むだろうし、そうして皆が同じように高い注射を打
つて頂けるのじやないかとそういうふうに
考えるわけです。そういう観点から
国民の
医療能力の負担という点から、そうしてまあ各自の経済をあずかる者につきましては、限られた一家の経済の中で一人病人ができますと直ちに参
つてしまう。そうして健康保険のお
医者さんと、健康保険でないお
医者さんがあるわけです。そうしますというと、健康保険のお
医者さんですというと先にそれを提示すれば、これは何とか玄関に貼
つてありますから、一遍は失敗しますが二回目には持
つて行く、ところが大変いいお
医者さんに行きますというと、
自分のところは健康保険に加入してないからというのです、そうしますというと、例えば注射を一本打
つてもら
つても現実に値段がうんと違うのです。博士という看板があるとこれ又違
つて来る。非常に私
どもとしましてはどこにどういう差があるのだかということにつきまして非常に不明なんです。率直に失礼なんですが、そういう点から
考えて来ました場合に、一体これは何にも知らないで今まで払
つて来たけれ
ども、一体お薬と、それからお
医者さんの往診と
診察に対する比率というものはどんなものだろうかということをお話したのです。それで
医薬分業ということにな
つて行きますと、やはり科学的な合理的な検討が加えられて行くのです。而もお
医者さんが、先ほど井上参議院
議員から言われたように、過重なる負担を背負
つて一人お苦しみになる、これは非常にお気の毒だと思うのです。病院の経営もしなければならない、いろいろの面でお互いが社会の
責任を分ち合うという
立場におきまして
薬剤師制度がはつきり確立されて、而も
薬剤師は
専門学校、
看護婦も今度は
大学を出なければなかなか
看護婦の
資格がもらえないと、こういうことにな
つて、そうした場合には
医療制度において一人の
患者をめぐ
つて、
患者のために
医者があるのか、
医者のために
患者があるのかというようなときに、概してそういうときにお
医者さんのために
患者がいるのではないか、そういう
意見も出て来る、そうではなくして、一人の
患者を中心としてお
医者さんはお
医者さんの
立場からいい
診察を下して、そうして
薬剤師は
薬剤師の
立場から最も知性のある薬剤の調合を行うし、
看護婦は
看護婦の
立場で最もいい看護を行うし、家庭の者は安心して明るい
治療を受けると、こういう観点から私の最も望むのは社会保障
制度の完備でございます。その一段階として先ずその途を開く、段階を開く、こういう意味でこの
法案に
賛成でございます。