○有馬英二君 それではできるだけ簡單に
要点だけを申上げます。私は第二班の一員といたしまして、社会保險経済及び結核
施設の実情について、福岡県と長崎県、熊本県に二月二十四日に東京を出発いたしまして、三月三日に帰京いたしますまで、この三県の現地を調査いたしたのであります。他の議員諸君の御事情で私一人が多田専門員と同行いたしまして、視察に出かけたというようなわけであります。以下この三県の
現状について御
報告いたします。
最初に福岡県の結核の
現状から申上げます。福岡県は全国においても特に結核蔓延の著るしい県に属するところのものでありまして、
昭和十七年には全国第十四位にあ
つたものが、戰後は
昭和二十二年には全国第二位に飛躍したという
関係、二十三年は第五位、昨年即ち二十四年は第六位を占めておるというような
状態であります。死亡数も全国の約二十分の一に相当して、九州
地方の結核死亡の三分の一を占めておるというような
現状であります。でありまするからして、福岡県の結核死亡の動向は、九州は勿論全国の結核死亡にも大きな影響を有するものであるということが大体了解できると思います。これは近年、
昭和六、七年以後の戰時
状態から、特に本県の産業が非常な特有な戦時産業の
発達、これに伴うところの動員、人口の移動というようないろいろの因子が作用いたしまして、かような
状態に
なつたのであろうと
考えるのであります。一々の死亡数、死亡率等は省略いたします。結核死亡の分布はやはり地域的に市部のほうが郡部よりも非常に多いし、高率を占めているのであります。それから御
承知のように福岡県は非常な大きい県でありまして、県の中に市が十一もあるというようなところであります。その十一市の死亡率が十九以上を占めておりまして、結核予防特別市に指定されているという実情であります。それからこの市部に県民の約四割以上が居住しているのでありまして、ここに結核が非常に猖獗をしているということは、結局この人口の密集というようなことがやはり大きな原因にな
つているようなわけであります。県では
昭和二十四年から結核撲滅対策というものを作りまして、県政の重大施策として、
昭和二十八年まで死亡率半減を目標として闘
つているようなわけで、この点は行
つて見て、県当局が相当有力に働いているということがうなずかれたようなわけであります。それから各保健所は結核の予防の中心機関として活躍しているのでありますが、これは大体において
施設がほぼ完備しているようなふうに見受けられました。なかんずく検診、健康診断、それからBCGの接種等も毎月励行しているようでありました。ただ療養
施設が不足なために、患者の九五%が自宅において療養をしなければならんというようなことは、これは感染源を市井に有しているというようなことで、本当の結核撲滅にはまだまだ甚だ遠いという観念を抱かしめたのであります。二十四年度において保健婦の家庭訪問というようなものは前年度より三倍も多くや
つている。それから人工気胸も二倍以上に増加をしているというように、相当
努力をしているようであります。ただ結核の病床がやはり少い、本年の一月現在で療養所が三千四百十三床、一般病院が千八百七十二床、計五千二百八十五床にな
つております。でありまするからして、死亡者の七割五分にしか相当しない。結核病床を急激に増床いたさなければならない。こういう方面においてはまだ遺憾な点が多々あるように思われるのであります。
それから社会保険のほうでありますが、細かい数字はたくさん出ておりますけれ
ども、省略いたします。医療のほうでは保險医の指定、それから療術業者との診療契約の締結、改廃というようなこと、講習会を開催して保險医の
指導に万全を期しておるようなわけであります。それからただここでもやはり県当局に聞いて見まするというと、保險の面において大学が余り協力しないということをやはり訴えておりました。この点は大学当局が未だに保險料についての理解がないようであるというようなことを言われておりました。それから国民健康保險のほうは一般にこの県はいいのであります。但し御
承知のように市町村で以てまだ国民健康保險をや
つていないものが非常に多い、実施率が四一%に過ぎない。それから国民健康保險の経済
状態は收納歩合が五四・五%ぐらいにしか過ぎない。但し今年度末までには七五%になる見込であるというようなことを言
つておられました。ここで県当局の保險課の人から、非常に熱心に当局が特別な誠意を以て保險を遂行するにおいては、なかなかいい成績を挙げることができるものであるというような
報告がありました。この点は他の県よりもこの県の保險経済におけるところの方面の
努力が、いささか優
つておるというように思われたようなわけであります。ただ県当局の意見といたしましては、保險課長以下保險課員は
地方事務官の身分を持
つておる、ところが職務に関しては知事の指揮
監督を受けるというようなことで、身分については知事は何らの権限も持
つていない、而も俸給は県吏員よりも非常に低い、約五号俸も低いというようなことで、民生部長及び保險課長等の希望としましては、是非ともこれを県吏員に身分を切替えられたい、そのほうが
仕事も都合がいいし、それから待遇も非常によくなるというようなことで、その方面の要望が非常に切なるものがあ
つたようであります。それからなお県当局の要望といたしましては、結核については結核病床の増加ということが、御
承知のように、今年から非常に
厚生省がこれについて意気込んで大々的に今度はやられるということであるが、どうも国庫
補助が非常に少い、これくらいの国庫
補助では到底我々が望んでおるところの増設がむずかしい、
厚生省は国庫
補助をもつともつと殖やして、そうし
て十分に国費で以て結核病床の増設を図
つてもらいたい、こういうようなことを言
つておりました。従いまして県当局から言いまするというと、今回の即ち二十六年以後の結核対策、
厚生省の結核対策ということについては、なかなか末梢における実施が非常に困難であるということを県当局は申しておるわけであります。
私
どもは国立屋形原病院、屋形原結核療養所を参観いたしました。それから社会保險協会
経営の仲原診療所という診療所を視察をいたして来ました。屋形原病院は非常に古い建設でありまして、これはたしか大正十四年頃の建設であ
つたかと思います。現在二百三病床しかないのでありますが、非常に古くて、もう改造しなければならんような域に達しておるような病院であります。医師がた
つた二名しかいない、それからして看護婦も非常に少ないようでありまして、ここらも非常に困難を感じておるようでありました。それから社会保險協会の
経営しておる仲原診療所という所を見て参りましたが、これはもと産業復興公団が復興金融公庫の融資を受けまして、県内二病院八診療所の
一つとして、この診療所が起
つたものであるのだそうであります。ところが公団が解散いたしますと、県の社会保險協会がこの
経営を
委託されまして、県費五百五十万円で修築されたのであります。然るところ公団の資金が凍結せられているので、大蔵省はそれを復金の償還費に充てるというよう
なつもりであるらしい。それで幾ら交渉をしても、この金を大蔵省が凍結してお
つて解除してくれない。それがために地元としてはどうしてもこの診療所を完備できない、建物はできておるのでありますが、
内容が全く充実されておらないのであります。こういうことからして、是非とも速かに凍結の資金を解除してもら
つて、そうして県の充実費六百万円と、それから未払金が六百六十万円あるそうでありますが、両方合せて一千二百六十万円の資金を以て直ちに二病院と八診療所の完備をしたいということを非常に要望されておりました。これは誠に私
どもも同情に値するのであります。これにつきましては、自由党の政調会長な
ども中に入られて奔走されているんだそうでありますが、今日まだ解決されておらないということで、これは私
ども厚生省にも、大蔵省にも十分了解を得まして、速かにこの資金の凍結を解除されて、正しい運行に導くようにしなければならんかと思
つた次第であります。
それから次は長崎県でありますが、長崎県は結核死亡が相当の数であ
つたのでありますが、
昭和二十二年に死亡数が三千八十四人、人口一万当り二〇・三であります。それから
昭和二十三年には二千八百二十八人、一万当り一八・一、それから
昭和二十四年にはやはり一七・一、二十五年には九・四というように、死亡率が年々急速に減りつつあるようであります。集団検診、それからツベルクリンの実施、BCGの接種というものも次第に県民の理解ある協力によりまして進んでおるようであります。ただこの県は、御
承知のように、島が非常にたくさんある、そういうところへこの検診或いはBCGの接種というものを行うことが非常に困難である。出張費が非常にかかるというようなことから、他の県から比べるというと、そういうような方面の実施に極めて困難を伴うものがあるということを県当局は言
つております。その点は土地の事情上非常に同情に値するところがある。併しながら県当局の多大の
努力によりまして、今日
かくのごとく死亡率が減少したということは、これは誠に注目に値するところがあると思います。この県は他の県から比べますというと、国立の療養所というものが
一つもないのであります。このことは非常に結核対策上県が遅れているということをつくづく感じたようなわけでありまして、それがために県当局の要望としましては、国庫が思い切
つて補助する、そうしてこういう方面にもつと
施設を増してもらいたいということを言
つておりました。それから長崎県の保險の
状態、これは一々の数字は省略いたします。他県に比して保險の利用件数が非常に多い。それがために支給総額が相当多いが、これは
趣旨の普及が徹底しているのと、それから炭鉱地帯における
事業主の
経営する医局が多い、そういうために起
つておるようである。一件当り点数がむしろ下廻
つておるような
状態である。なお最近の健康保險財政の危機に対しましては、主として左記の対策を樹立して給付の適正を期しているということであります。即ち保險医の
指導については医師会、基金
事務所との共催によりまし七、
地区別に
指導講習会を開催するほか、毎月一回保險医指定前の医師に対して講習会を開催いたしておる。なお不当請求というような点についても増加の傾向にあるけれ
ども、今日においては、だんだんその方面の理解が進んで来て、不正請求の件数がだんだん減りつつあるというようなことであります。それから国民健康保險のほうの現況は、市町村数は百六十でありますが、そのうち六十六が行な
つておる。でありますからして、割合に実施数がこの県はいいと言
つても差支えがない。直営の診療所を
設置しておる市町村が四十一であるそうであります。それから私
どもは長崎市立病院、それから市立稻佐養老院、それから聖フランシスコ病院、これはカトリックの病院であります。それから養護
施設としての向陽療、教護院の開成学園、それから大学病院というようなところを視察をして参りました。そのうち長崎市立病院というのは、もと伝染病院であ
つたのを半分だけ結核病棟に当てて結核患者を收容しております。大体において
施設は如何にも長崎県は不完全であるという感を抱かせられるのであります。ただ外国人の
経営している聖フランシスコ病院、これはカトリックの病院でありますが、病床はた
つた七十しかありませんが、非常に清潔な整頓された病院であるということを見て参りました。
次は、熊本県でありますが、この県も結核死亡率から言うと漸次減少の一途を辿
つておるようであります。終戰の当時は人口一万当り二二・五七であ
つたのが、二十五年には一三・三三に低下しておる。でありまするから、全国各府県と比較いたしまするというと非常に低い、約三十五位でありまするから、尻のほうから勘定するのが早いほうであります。言換えて見まするというと、結核の蔓延状況は他の府県から比べると少いということが言えるようであります。どういうわけで
かくのごとく一時低下を来たしたかということにつきましては、県当局もはつきりした解釈はできかねておるようでありますが、一般の結核予防に対する理解ということと、県当局の撓まざる
努力によるものであろうと私
どもは見て参
つたようなわけであります。それからこの県もやはり結核病床の増設については国庫の
補助がどうも足りない、もつと大幅に国庫
補助を要望するというように言われております。それから国立療養所の再春莊というのが、これは七百名以上も收容しておる非常に大きい国立療養所であります。これもいわゆる軍事保護院の遺物として、あの当時の傷痍軍人療養所が今国立に
なつたのでありますが、患者が非常にたくさん入
つておるのでありますけれ
ども、医者が非常に少い。例えば医者は二十二名の定員のうち十六名しか入
つていない、それから看護婦も定員が百三十二名に対して欠員が二十八名もあるというようなことであります。又雑役婦が足りない。それから病院が非常に古くな
つて腐朽しておる。このほかいろいろな
施設に甚だ不完全なところが多いようであります。例えば排水が非常に不完全であ
つて、水が廊下の横の庭にもうたくさん池をなしておるというような
状態であ
つて、誠に不潔極まるものである、こういう点はもつと厚生方面が改善整備されなければならんというように私
どもは見て参りました。なお視察して来たところでは国立療養所と菊池恵楓園癩療養所を見て参りました。それからなお兒童收容
施設の肥後学園、それからカトリツクの
経営の癩療養所も視察をして参りました。詳しいことはなお一応ここで読上げますと余り時間がかかりますから、速記のほうにこれを廻して記録をしてもらおうと
考えております。
社会保險のほうは、昨年四月から本年一月までに一億二千七百二十七万幾らの給付
状態であります。又診療費の支払はやはり一億百数十万円を要しておるようであります。健康保險の直営の病院は八代、人吉、天草等にそれぞれ総合病院があります。病床が二百四十七あるそうであります。昨年四月から本年一月までに社会保險
関係の患者二万三千人、一般患者一万三千人の診療をしておる、
経営は誠によく行
つておるらしい、收支相償
つて若干の黒字を出しておるというような
状態であります。国民健康保險のほうでは、市町村数が三百十でありますが、全体としましては、現在では百五十四の町村が
事業を休止しておるというような
状態であります。こういうようなことも今回の国民健康保險の改正というようなことによりまして、漸次これがいいほうに向
つて行くのではなかろうかというような感じを持
つて参りました。ただ県当局の要望としては、国民健康保險に対しましては、給付費の少くとも二割を国庫負担としてもらいたい。それから結核については五割の国庫負担をお願いしたい。なお国民健康保險の
運営については長期の貸付金の実施をしてもらいたいというようなことを言
つておりました。なお大学病院の保險についての協力は他府県よりもやや良好のように思われますが、併しまだ点数制をと
つていない。併し請求の
内容の審査は割合可能のようにな
つて来ておる。これは例えば福岡ではやはり審査が殆んどできないような
内容の請求書を出しておるというようなことを言
つておりました。この点においては熊本県は福岡県よりはやや当局の理解があるというようなことでありました。
以上簡單でありますが、御
報告を終ります。