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法制局参事(
岡田武彦君) 第六章、損失の補償の御
説明を申上げます。第一節の
収用又は
使用に因る損失の補償の
規定でございます。第六十八条は損失を補償すべき者の
規定でございまして、当然これは起業者が補償しなければならない
規定でございます。
第六十九条におきましては、損失の補償というものは個別に、各人別にしなければならんという
規定でございます。これは
現行法通りでございます。
第七十条、これが違
つておりまして新らしい
規定でございまして、損失の補償は
現行法では金銭が原則でございましたけれども、この節におきましては、替地の提供その他補償の方法について
規定が載
つておるわけであります。それは
あとから八十二条以下について御
説明申上げます。
第七十一条、これは補償額算定の時期でございまして、これは新らしい
規定でございます。これが
現行法上いろいろ学説が違
つておりますので、
法律的にこの
規定によりまして、裁決のときの価格によ
つて算定して補償しなければならないという解釈的の
規定を設けたのであります。
第七十二条、
土地の
収用の損失補償、これにつきましては、
土地につきましては、近傍類地の取引価格等を
考慮して、相当な価格をも
つて補償しなければならないというふうな
規定であります。
第七十三条は
土地の
使用の損失補償、これも大体似た形でありまして、
使用する
土地に対しては、その
土地及び近傍類地の地代、借賃等を
考慮して相当な価格をも
つて補償しなければならない、という
規定でございます。
第七十四条は残地補償、これは同一の
土地所有者に属する一団の
土地の一部を
収用し、又は
使用することに因
つて残地の価格が減じ、その他残地に関して損失が生ずるときは、その損失を補償しなければならない。これは
現行法通りであります。
第七十五条、工事の
費用の補償、これも
現行法通りでございまして、
収用による工事についての
費用の補償であります。
第七十六条、残地
収用を請求する権利に関する
規定、これも
現行法通りでありまして、残地を従来
利用していた
目的に供することが著しく困難となるときは、全部の
収用を請求することができるという
規定であります。
第七十七条、これも
現行法と同じ規則でありまして、移転料の補償に関する
規定であります。
第七十八、これは
現行法にありまして、これも移転困難な場合の
収用請求権でありまして、その物件を移転することによ
つて従来
利用しておつた
目的に供することが著るしく困難となるときには、その所有者はその物件の
収用を請求することができるという
規定であります。
第七十九条、移転料多額の場合の
収用請求権、これも
現行法にございまして、移転料を払うよりも
収用してしまつたほうが早いというときは起業者はその物件の
収用を請求することができるという
規定でございます。
第八十条は物件の補償、前二条の
規定によりまして、物件を
収用する場合におきまして、それに対する価格についての基準を設けたわけでございます。
第八十一条、これも
現行法にございまして、
土地の
使用に代りますところの
収用の請求、これは条件がついてなければ
現行法通りでございますが、
土地を
使用する場合において
土地の
使用が三年以上に亘りますとき、
土地の
使用によ
つて土地の形質を変更するとき、又は
使用しようとする
土地に
土地所有者の所有する建物があるときという条件が付いておりまして、そのときには
土地所有者はその
土地の
収用を請求することができるという
規定でございます。以下
説明を省略いたします。
その次から七つこれが眼目の点でございまして、八十二条から八十六条までがいわゆる現物給与と申しますか、現物補償に関する
規定でございます。
第八十二条は
土地所有者が替地を要求できる、場合によりましては例えば地上権者が別の地上権を要求できるという
規定でございまして、これを
収用委員会に要求することができるのでございまして、この場合において場合を分けて、第二項においては
土地所有者又は
関係人が相手方の起業者の所有する特定の
土地を指定して要求して来た場合においては、その要求が相当であり且つ替地の譲渡が起業者の
事業又は
業務の
執行に支障を及ぼさないと認めるときは、替地による損失の補償の裁決をすることができるのであります。それから第三項は
土地所有者又は
関係人が
土地を指定しないで、又は起業者の所有に属しない
土地を指定して要求して来た場合において、
収用委員会はその要求が相当であると認めるときは起業者に対して替地の提供を勧告することができるのであります。そうしてこの勧告に基いて起業者が提供しようとする替地につきまして、
土地所有者又は
関係人が同意したときは、
委員会は替地による損失の補償の裁決をすることができるのであります。で特に末項第七項にございますように、起業者が提供すべき替地につきましては、
土地の権利の
内容等を総合的に勘案して、従前の
土地又は
土地に関する権利に照応するものでなければならないというふうにこれを制限しておるのであります。
第八十三条は、耕地の造成でありまして、その
収用される
土地が耕地であります場合におきましては、その替地が耕地にな
つておらない場合においては、耕地に直してもらうということを要求することができることにな
つております。この場合にはやはり
委員会がその要求が相当なりと認めるときにおきましては、耕地の造成による損失の補償を替地による損失の補償に併せて裁決することができます。その場合に耕地の造成を確保するために、第三項にございますが、起業者が耕地の造成のための担保を提供しなければならない旨の裁決をすることができるという
規定もございまして、その被
収用者の権利を
保護しておるわけでございます。
それから第八十四条でございますが、これは工事の代行による補償でございまして、これもやはり
土地所有者又は
関係人は、これを金銭に代えまして、その工事を起業者に行な
つてもらいたいということを要求することができるのでございます。この場合におきましては、起業者側からいたしましてもこの要求ができるようにな
つております。
それから八十五条は、移転の代行による補償でございまして、これは移転料に代えまして、起業者が当該物件を移転してもらうということを要求する、これにつきましてもやはり起業者側も要求することができるようにな
つております。
それから八十六条でございますが、これは宅地の造成でございまして、これはやはり移転先の
土地が宅地以外の
土地であるときにおきまして、
土地所有者又は
関係人は宅地の造成を要求することができるのでございます。これにつきまして、裁決を行い得ることにな
つております。この八十六条までが新らしい現物補償の制度を謳つたわけでございます。
八十七条は、これに伴う
手続的な
規定に相成
つております。
それから八十八条、これも
現行法に不明瞭でございますけれどもあるのでございますが、特に詳細に通常受ける損失の補償の
内容を
規定しておるのでありまして、特にここにございますように離作料、営業上の損失、建物の移転による賃貸料の損失という例示をいたしまして、詳細に
規定をいたしておるのでございます。
八十九条、これは損失補償の制限の
規定でございまして、これは
現行法と同様の
規定に相成
つております。
それから九十条、これは新らしい
規定でございまして、起業利益との相殺の禁止に関する
規定でございまして、被
収用者の残地がこの起業を行
なつたために値上りになりましても、補償金についてそれとの相殺をしてはいけないという
規定に相成
つております。
第二節、測量、
事業の廃止等による損失の補償を
規定しております。九十一条測量、調査等による損失の補償、これは
先ほど御
説明いたしました立入り等によりまして損失を受けたものに対して補償しなければならないという
規定でございます。
それから九十三条は、
事業の廃止又は変更等によりまして損失を生ぜしめました場合におきまして、やはり
土地所有者又は
関係人に補償しなければならないという
規定でございます。
九十三条、これは新らしい
規定でございまして、
土地を
収用若しくは
使用したことによりまして、この問題にな
つておる
土地若しくはその残地以外の
土地につきまして
道路を造るとか、溝を作るとか、その他の工作物を新築し、改築し、増築する必要があると認められるときにおきましては、起業者はやはりその工事に要する
費用の全部又はその一部を補償しなければならないのであります。この場合におきまして、起業者のほうからも、又損失を受けたほうからも、金銭に代えまして起業者が当該工事を行うことを要求することができるようにな
つております。この要求は、
事業に係る工事の完了の日から一年を経過した後においては請求することができないというふうにな
つておりまして、これは原因
関係が一年以上たちますとはつきりいたしませんので、この
程度に打切
つて置こうという趣旨でございます。
第九十四条、これはこの前の三条にあります損失補償につきまして、両当事者におきまして
協議が整わない場合におきまして、やはり
収用委員会の裁決を申請することができるという
規定でございまして、これにつきましては、いろいろと
あとのほうに裁決に関する
手続を
規定してございまして、
先ほど御
説明いたしました
収用委員会の
会議及び審理に関する
規定、即ち第五章第二節の大
部分をこの場合に引用いたしておるのでございます。これが第六項でございます。
あと説明を省略さして頂きます。