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1951-05-18 第10回国会 参議院 外務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十八日(金曜日)    午前十時十五分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○講和に関連する諸問題並びに国際情  勢等に関する調査の件(外交問題に  関する件)   —————————————
  2. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) これより外務委員会を開会いたします。  本日の案件は、講和に関連する諸問題並びに国際情勢等に関する調査というのが案件でありますが、特に外交問題について外務大臣に対する質疑を行いたいと存じます。曾祢君。
  3. 曾禰益

    曾祢益君 先ず最初に新憲法下における外交国会との関係について御質問申上げたいと存じます。総理国会におきまする質疑応答に当りまして、外交秘密本体であつて楽屋の裏のことは話せない、かようなことをしばしばおつしやつておりますが、これは我々の見るところでは、旧憲法の下における天皇大権の下に隠れた外交観念と混同されておるのではないかと存じます。外交には三つの段階があると存じます。第一は外交国策の樹立であると思います。第二は外交のいわゆる交渉と存じます。第三は外交に関しまする協定、外国との約束ができまして、これを承認する段階だと存じます。で、第一の段階、即ち外交政策を決定する、かような問題につきましては、これは民主主義原則から見まして、大いに世論を喚起いたしまして、なかんずく国会における論議を通じまして、そうして外交政策を打ち出して行かなければならないと存ずるのであります。この原則は新らしき憲法においては、私はその原則従つておるものと存ずるのであります。即ち、憲法七十三條によりまして、内閣外交関係を処理するということが定められておりますと共に、内閣が條約を締結することができる、「但し、事前に、時宜によつて事後に、国会承認を経ることを必要とする。」、かようの規定がございまするのも、やはりこの原則従つて国会承認の下に外交を行えることが定めてあると存ずるのであります。そこでこの憲法七十三條の規定精神でありますが、「事前に、時宜によつて事後に、」という意味でございますが、これは申すまでもなく、原則としては事前国会承認を経べし、但し場合によつては、やむを得ざる場合には事後でも承認を経なければならないかように解すべきものと存ずるのであります。以上の前提に立ちまして、二つの点を御質問申上げたいと存じます。  第一は、政府解釈では、條約は批准條項付の條約につきましては、調印、即ち案文確定後に国会承認を経る、それは事前承認である、従つて批准條項付の條約につきましては、この調印後に国会承認を経れば、それが事前承認である、かような御解釈であるかどうか、この点を明確におつしやつて頂きたいと存ずるのであります。第二にお伺いしたいのは、調印により直ちに効力を発生いたしまする條約、協定等につきましては、如何にして事前承認を求めるようにされるか、すべて調印後に承認を求める、こういうお考えであるかどうか、若しさようなお考えであるとするならば、かような條約については、すべて事後承認ということになるのではないか、果してさような御解釈であるか。先ずこの二点につきまして、総理の御見解を伺いたいと思います。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今外交に関する御講釈を承わりまして、外交祕密であるとか、公開とかいうことを極端に申せば、始めから終いまで公開というか、始めからしまいまで、祕密というか、これはいつまでたつて議論が尽きないことでありますから、憲法施行の以前、以後を問わず、暫らく理論を離れて、実際の問題を言えば、要するにこの外交にしても、條約が実行せられるについても、国民がよく納得の行くのでなければ條約は結局実行ができないということになるのでありますから、国民が或いは国会十分納得の行くような手段は、憲法規定如何にかかわらず、憲法規定に反してとは申さないが、併しながら條約の趣意がよく国民に徹底して、そしてその條約が、條約の精神がよく国民も守り、実施ができる、実行ができるというためには、理窟は別として、その條約の精神なり、経過なりをよく政府として国民納得の行くまで説明をするということが、條約実施のために必要であると考えますから、その線で参ります。而らば今の條約、批准付ですか、批准を必要とする、或いは必要としないという條約があるかどうか知りませんが、とにかく政府としては成るべく祕密祕密にいたします。祕密本体については、私の言う祕密本体は厳守いたしますけれどもが、併しながら條約の趣意精神等については十分国民に徹底いたすような取計らいをいたします。このことははつきり明言いたします。
  5. 曾禰益

    曾祢益君 どうも法律論に対して政治論を以てお答えになるので、その程度にして置きますが、次に同様な観点から今一つ伺いたいのでありまするが、大体国会における條約の承認の場合を考えますると、これはもとより普通の法律案なんかと違いまして、国会においてはもはやこれを修正するということは事実上不可能であります。一旦内閣即ち政府代表案文確定して来たものを、国会において修正するということはできない。そういたしますると、国会承認というものはイエスか、ノーしかない。言換えれば承認するか、これを否決するか以外にないと思うのであります。さようなわけでありまするので私は民主主義先進国におきましては、さような羽目にならん條約等を国会に出して、承認を求めるというのでは遅い、そこで事前に、事前にと申しまするのは、先ほど申しましたような法律論よりもつと離れまして、実際問題として、協定等草案確定する前から、すでに国会が事実上の審議関係に入つておるのが、私は民主主義の国の先例ではないかと存ずるのであります。現実の問題といたしましては、例えば対日平和條約の問題にいたしましても、アメリカではすでに御承知のように対日講和條約、平和條草案上院委員会に示して、事実上の審議関係を行なつておると伝えられております。これは現在におけるアメリカの議会のいろいろな勢力分野関係から、ただ単に野党をうまく使つて行くというような意味ではなく、やはり民主主義を尊重するという趣旨からやつておるのだと存ずるのであります。そういう考え方から言いまして、このたびの大切な平和條約の問題につきましても、総理はかような民主主義原則従つて、対日平和條約及びこれに関連いたします日米協定等が伝えられておるのであります。これらの問題につきまして、これらの法律論とは離れまして案文確定する前から、何らかの形によりまして、国会において審議ができるような措置を講ずるというお考えはないか。私はそれが望ましいと思うのでありますが、その点について御見解を伺いたいのであります。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 対日條約案は上院外交委員会に提出してあるかどうか私は知りませんが、ダレス氏の私に言われたところでは、この対日條約案は秘密にしているのだから、そう思つてもらいたいと言つた故に、今日まで祕密を守つているのであります。これは新聞に発表されたのは、ワシントンにおいて或る公使館か、大使館から出たという話があります。併し私に渡されたときに、日本政府に渡されたときは、これは当分祕密にして置いてもらいたい、こういう條件付でもらつたのでありますから、公開いたしません。又只今お話の成るべく国会に見せるようにというお話でありますが、これは條約進行の途中において、できるだけそういう計らいをいたしたいと思います。これは只今申したように、條約の趣意が徹底するように、或いはその精神国民に徹底し、或いは立法府においてよく了解することが條約実施のため有効であると考えますから、そうしますが、ただそのために條約が漏れて、そしていろいろな紛糾を来たす、或いは講和條協定協議が行われるということ、或いは日本立場を悪くするというようなことのない限りは成るべくそういたしたいと思います。但しアメリカ上院に行くか、行かないかは、先ず社会党超党派外交趣意納得して頂きたいと思います。(笑声
  7. 曾禰益

    曾祢益君 最後社会党云々についてはちよつと異論があるのです。 (笑声)その前の、総理が成るべく国会に事実上速かにかようなことが審議できるというようにしたいという御意向については、私はこれを了とします。従つてくどく申しませんが、ダレス氏が政府にこれは当分発表するなと言つたことは、その通りだろうと思います。同時に野党代表に会いましたとき、あれを見たかということを言われたそうですが、それは或る程度国会を御信用なさつて、そうして国会委員会を御信用なさつて先方との話合を御努力願つて、成るべく速かに新聞に発表されて、某大使館から漏れたというのでなくて、正式に経たものを、但し機密は守り、国会において事実上の審議ができるような事態にならんことを私は強く希望して置きます。  次に今一つ同様の観点からお伺いしたいのでありますが、いわゆる平和條約に関連いたしまして、暫定的に日本防衛に関する日米協定というか、或いは米軍日本駐留に関する暫定的な日米協定というものがまだ草案になつておらないそうでありますが、そういうものが考えられておることは事実であると存ずるのであります。従つてかようなものの国会との関係につきまして質問申上げたいのであります。このような協定は、平和條約の調印と同時に調印を予想されておるのか、或いは平和條約の調印を施行して、平和條約の効力発生までの間に成立を予想されておるのか、その点を伺いたいのであります。次にこのような重大な性質協定は、たとえ暫定的なものでありましても、私は例えばブラツセル條約或いは北大西洋同盟條約等の趣旨から考えまして、先例から考えまして、これはやはり批准條項付の正式の條約になるべきではないか。少くともかようなものが事後に、いわゆる調印後に、批准條項なしで調印後に国会承認を求められるというようなことはあるべからざるものと考えますが、この二点につきまして総理の御見解を伺いたいのであります。
  8. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ダレス氏が草案を見たかということを聞かれたが、草案を見ないと答えられたために日本政府信用は高まつたろうと思います。又暫定協定平和條約と同時に発表するかというのですか、国会に出すかというのですか。
  9. 曾禰益

    曾祢益君 いや、性質平和條約の調印と同時に調印されるのか、それとも平和條約の効力発生のときまでに、調印後ですね。どつちかと、こういうことを聞きたいのです。
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは将来の協議成行によるのでありますが、只今申す通り防衛協定案文さえまだきまつておらないところで、単に話合をしたという程度でありますから、そこででき上つた協定がどういう協定になるか、どういう話合の下に協定ができるか、その経過を見ないと、ここにあらかじめこうするということは言えませんが、只今申した通り、條約の精神趣意が徹底するように、実施が完全に行われるようになるには、十分国民の理解なり、国会了解を必要とするという考えでありますから、同時になるか、ならないかは別として、できるだけ御相談をするという気持は変つておりません。
  11. 曾禰益

    曾祢益君 第二の点、批准條項付とお考えになるかどうか。
  12. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは今申したような、まだ内容がきまつておりませんから、それで批准條項付になるか、ならないか、或いは話合程度で済むか、済まないか、単に日本米国か或いは数国の間の話だけでなくて、他に影響を及ぼすところがあつて相手国から言つて公開してくれるなという話があるかも知れません。これは案文ができた上で以て、政府の意見もきめるのでなければならんと思います。
  13. 曾禰益

    曾祢益君 次に暫定的な防衛協定構想について若干御質問申上げたいと思います。これはすでに総理お話にもありました通り草案ができていないということは、私はその通りに受取つておるのでありますが、おのずとこの重大問題について構想がなければならないと思うのであります。そこで誰でも講和後の日本におきまして、当面の安全保障を図る上に、国連精神に基いたいわゆる集団保障観念を利用して行かなければならないということについては、私は異論のないところだと思うのでありまするが、さればとてダレス氏が言いましたように、講和後にアメリカ軍隊を置いてやる、それに対して、ただそれは結構であるというだけでは余りに私は問題が複雑で機微過ぎると思うのであります。そこで先ず伺いたいのは、朝鮮動乱の終結と、それから日本平和條約の締結とは時期的に関連があるのであるか、それとも平和條約の締結朝鮮動乱成行に一応無関係に一定のコースをとつてどんどん進んで行くものであるか、この点を伺いたいと思います。
  14. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは朝鮮事変関係がないとは言えないと思います。むしろ朝鮮動乱のためにあえて日本との関係を早く、確定と言いますか、或いは日本国民主主義国の側に早く立つように決定せしめるという気持から、対日講和條促進という気分になつたかと思います。が、朝鮮動乱がお終いにならなければ対日講和條約をしないという空気は今のところまだないと思います。むしろこのために促進はされても遅くなるという機運ではないと私は承知いたします。
  15. 曾禰益

    曾祢益君 そういたしますると、対日講和條約が平和條約ができました後に、不幸にして朝鮮動乱が続いているということも一応の可能性としては考えられるのではないかと存じます。又そういたしました場合に、仮に日米間だけで暫定的の米軍日本における駐留の話が條約上の根拠を得たといたしましても、実はそのほかに日本基地として国連軍部隊というものが、まだ朝鮮動乱のために残留しているという事態も想像されるのであります。そういたしますると、日米間だけの、米軍だけの日本駐留に関する協定では、この国連軍日本にまだいるということはカバーできない。一つの法律問題ではないかと存ずるのであります。そういたしますると、国連軍部隊日本において、日本基地として朝鮮動乱に当つておることについては、何らかこの日米間の協定以外に、国連日本との間の話合と申しまするか、了解と申しますような、外交上の措置が必要になるのではないか。この点を如何にお考えであるかをお伺いいたします。
  16. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは、一つ朝鮮動乱の様相、形によるでありましようし、又国連内における空気にもよるのでありますから、今日あらかじめこうするとか、こうしたいとかということは言いにくいと思います。けれども、国連はすでに世界の平和を維持するということを目的とし、我々も世界の平和を増進せしめたいという考えの点においては一致しておりますから、仮に国連との間に或る協約を持つか、或いは米国以外の国と極東における平和維持協定をするという場合には、政府としては、少くとも私としては喜んでこれに参加したいと思います。そのために日本が襲撃を受けるとか、何とかというような場合も想像せられるかも知れませんが、これは楽観に過ぎると始終言われますが、私は差当りのところ、朝鮮の戦が、或いは戦乱と言いますか、戦の禍が、戦禍が直ちに日本に及ぶというふうには私としてはどうも考えられないのであります。この点は何もこういう確証があるからというわけではないのでありますけれども、全体の形勢から見て、朝鮮動乱、そうして日本朝鮮動乱に対して、軍事基地と言いますか、国連軍基地を提供する、便宜を提供したからと言つて、決して日本をやつてしまう。あたかも満洲を襲撃しなければ朝鮮動乱が収まらないというような逆に国連を或いは米軍を抑えるためには、日本基地を爆撃しなければいかんという議論は聞きもいたしませんが、そういうことになつては大変でありますが、差当りのところそういう危険はないのではないか、ないと私は思います。これは想像に過ぎません。確証はありません。
  17. 曾禰益

    曾祢益君 さような軍事的見通しにつきましては、私もやや同感の点がありますが、私が伺いたいのは次に関連しておりまして、さように何といたしましても、国連軍部隊日本にまだ駐留しているというような事態考えられるのであります。而も国連の全体の精神から言いまして、この無防衛的な日本状態は、これは国連といたしましても、国連目的である国際平和安全の見地から忽せにできない一つ事態だと考えます。さような関係から、例えば国連憲章の十一條にも、総会は国際的中和と安全を危くする虞れある事態について安保理事会注意を促すことができるというような規定もありますので、かような日本の安全に関する事態については、今からそれを予想いたしまして、講和の前から国連に対して、この事態に関する注意を喚起する、或いは提訴する。そして国連日本との間に、この日本乃至日本附近における安全の問題について何らかの協定を遂げると申しますか、継続的な、即ち侵略が起つてから国連の普遍的な集団保障が発揮されるというのではなくて、何らかの継続的な、スタンデイングな、而も具体的なこの取りきめができるのが望ましいのではないか。さような点についてアメリカからの提案はありましたけれども、さような国連と直接の話合いによる安全保障のあり方については如何にお考えであるかを伺いたいと思います。
  18. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御承知通り、まだ国連との直接の関係がない現在において、こういう問題について国連側協議したこともなし、又協議のできる立場になつておりませんが、併し結論から申すと、国連一員となつて、そして世界の平和の維持に貢献するという立場をとりたいとするならば、自然今お話のようなことになるでありましようが、併しこれには国連に入るいろいろ加入條件等もありまして、講和ができたらすぐ国連一員になるということができるか、できないか、趣意としては私もそうありたいと思いますけれども、然らばどうするかと言われても、只今具体的にはお答えができませんが、御趣意は私も賛成であります。
  19. 曾禰益

    曾祢益君 米軍駐屯に関する構想でありまするが、私は日米間の協定というものを想定いたしまして、その構想についてでありまするが、私はこの協定が仮にどういうかつこうできましても、アメリカから見ればヴアンデンバーグ決議というようなものがありまするので、いわゆる自衛力を持つておらない或いはないに等しいと申しまするか、日本アメリカとの間では講和もいきなりできる。かような暫定的協定は本格的な意味の、いわゆる継続的且つ効果的な自助及び共助というような基本條件がございませんから、これは国連憲章五十一條及び五十二條に基くような本格的な地域的集団保障ではないのではないか。そういたしますると、結局アメリカ軍日本の同意によつてつておる。その結果、日本に対する攻撃は即アメリカ軍隊に対する攻撃になりますので、それを排除する意味において、間接的に事実上日本防衛アメリカ軍が負担することになる。かような結果になりまして、日本は又逆に日本といたしましては、日本以外の地域においてアメリカに加えられた攻撃に対しては、別にアメリカを応援するような義務はない。間接的に日本防衛されるという片務的な、変態的な性格なものではないかと思いますが、この点に関する総理のお考えを伺いたい。
  20. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 先ほど申す通り話合いをした程度で、日本真空状態に置く、そのままにして置けば極東の平和が又自然脅やかされるということになるから、何かしなくてはならない。然らば日本は再軍備ができるか再軍備はできない。とするならば、差当り暫定の方法として米軍が一時日本駐留して、そうして日本の安全を保護するということにしようという程度話合いであつて、然らば日本義務はどうするか、或いはその他の国との間の関係はどうするかというような非常に細かい話合いまでしたわけでなし、又ダレス氏としても話合いはできないであろうと思います。国務省、国防省のその筋の権威が来られて、そうして日本の今日国防に関する主管が従来と違つて参謀本部もなければ、何にもない状態でありますから、我々のほうもこれに対してこれはこうしよう、ああしようと言つて、専門的にこれに応答するところの説明もないのである。ために安全保障條約はこういうようにしようと、今の義務権利はどうするかというようなところの細かい協定まで入つておりません。これは今後に属することと思います。只今のところは日本真空状態をどうして保護するか、安全を守るか、差当り措置としては、こうするより仕方がないのじやないかという程度話合いをいたしたのであります。そこで協定案ができたと言うならば、私は拝見いたしたいと申したわけで、事実さほど具体的に話は進み得なかつたのであります。又進むことができないはずであります。
  21. 曾禰益

    曾祢益君 その点は総理のおつしやる通りで、従つてまだはつきりしていないから、総理構想を伺つておるわけであります。大体引続いて一括お答え下すつても結構であります。そこでアメリカ軍駐屯が一体誰の希望によつてやるか、日本だけの希望によつてやるというのか、或いは双方希望によつてこれを行うということになるのか、これらの点も非常に重要な点ではないかと思います。それからこれらのアメリカ軍駐屯というものは、はつきり協定全体は期限付のものと心得て差支えないか、無期限のものであつてはならないのではないか、更に又アメリカ軍駐屯する場合に、勿論いろいろな軍事的な便宜供与日本からも与えなければならないわけでありましようが、その場合にいわゆるアメリカフイリツピンがた基地については、九十九カ年の租借というような形は、当然に避けられることと思うが如何であるか、更に又かような協定を作つた結果、将来日本がいやでも応でも自主的な地域的な集団保障條約に入らなければならない、これは恐らく日本自衛力を持つたことを予想してのことと思います。さような義務付のものであるのか、そういうものでなくして、将来の行動は自由であるかというふうな性格のものであるべきではなかろうか、かような点に対する総理構想を伺いたいと存じます。
  22. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 米軍駐屯はどちらの希望だと言われますが、これは双方希望言つてもよいでありましよう。どちらが先に言い出したかということも、どこか衆議院の委員会で尋ねられましたが、どちらが先といつてはつきり今日においてはアメリカ言つたとか、日本言つたとかというのではなくて、行がかりから申すと日本真空状態にある、これをどうするか、再軍備しない、再軍備しなければどうするかという話合いから、自然の間に、それでは米軍の従来駐屯しておるその駐屯をそのまま暫らく置いてはどうか、それは結構なことではないかということになつたので、雙手の声でどつちが先であるかということは言えない。これは事実言えないことと思いますが、申せば両方の考えなり、希望なりが偶然に相一致した、一致点を見出したということは確かでありましよう。そうしたいのであります。期限付きのものであつてはならないと言われますが、暫定的であり、九十九カ年というような考えまで具体的に申したわけではありません。暫らくの間、真空状態にある間という自然了解であります。それから便宜供与等についても、駐屯軍がある場合に、従来日本におけるアメリカ兵が持つておる地位が継続せられるか、せられないかというような話もないことはなかつたのでありますが、然らばどうするかという具体案については、税はどうするかとか、或いは裁判はどうするかというようなことについては、こうしたらよかろうというようなことは、只今申すように具体的に話の進む程度まで参つておりません。いずれいよいよ協約ができる場合には先方希望もあり、我々の希望も述べて、或る一致点を見出すことになるであろうと思います。集団保障に入ることを、これは例えば太平洋條約……。
  23. 曾禰益

    曾祢益君 そういう意味です。
  24. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それは、太平洋條約の話が全然話になつて出ておりません。いたしませんでした。
  25. 曾禰益

    曾祢益君 最後一つ領土問題について伺いますが、非公式に発表されたアメリカ案によりますと、小笠原、沖繩等は朝鮮、台湾、澎湖島なんかと違いまして、日本の領土権を放棄するという條項の中に入らないで、更に又アメリカ合衆国はこれらの土地を信託統治の下に置くことを国連に提案することができる、メイというようなふうにかなりそこに含みがあるように考えられるのでありますが、これはどういうふうに解釈すべきであるか、恐らくここに総理がしばしば国会を通じて言われておるように、国民希望が盛上つて来れば、これらの点についても更にもつと講和條約そのものにおいて改善し得るのではなかろうか、かように考えまするが、それらに関する総理の見通しを伺つて私の質問を終りたいと思います。
  26. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 連合国と言いますか、アメリカ立場としては、領土の帰属についてはすでにポツダム協定で以て、日本は受諾しておるではないかという建前です。この建前から出発いたしておるのが一つと、もう一つは小笠原、琉球というような所が若し……、これは速記を……。
  27. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  28. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 速記を始めて……。
  29. 金子洋文

    ○金子洋文君 領土の問題については、外務大臣がしばしばポツダム宣言を守らなければならんと申されておりますが、これはその通りと思いますが、ポツダム宣言によると、「日本国ノ主権ハ、本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島二局限」される、こう規定してございますが、若しソ連や中共、中共は別として、ソ連が講和に参加しない場合は、我々の決定は決定されないことになるのじやないか、そういう決定されない決定を受諾する自由の選択が日本にあるのではないか、かように考えますが、この点外務大臣の所見を伺いたいというのが一点。第二点は、これは新聞の伝えるところでありますが、米国の対日講和の條約の草案中に、領土に関しまして北緯二十九度線より南の琉球列島、西之島を、小笠原諸島、火山列島、沖ノ鳥島及び南鳥島を信託制度の下に置き、米国がその管理権を持つことを提案すると新聞に伝えられておりますが、北緯二十九度線の南というと、奄美大島や沖繩も入つておるように思いますが、これは若しそういうことが事実としますと、国民がなかなか納得しないのじやないかということが心配されるのでありますが、大体総理のお考えは今御答弁でよくわかりましたが、この点折衝においていろいろ屈折があると思いますが、全部丸呑みするようなお気持でいないと思いますが、その点をお伺いしたいと思います。  更にもう一つのことは、国連の信託統治の趣旨によりますと、民族の平等と自決の原則が基本的な原則になつておりまして、独立するところの能力と希望を持つている国には大いに力を貸して独立させる、併し経済的にも社会的にもまだそういう能力のないものに対しては、将来それができるように力を貸すために信託制度の下に置く、こういうふうになつておりますが、そうしますと、前に挙げました北緯二十九度線より南の諸島というものは、日本の領土に前から属しておるのでありますが、十分独立し得るものと、かように考えるのでありますが、その点民族の平等と自決の原則に反するように思うのでありますが、外務大臣の所見をお伺いしたい。
  30. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今御質問は、万一ソヴイエトが講和に入らなかつた場合どうするか、こういうことですね。
  31. 金子洋文

    ○金子洋文君 我々の決定というのが我々の決定でなくなるということなんです。
  32. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今のところは米国政府も、ソヴイエトもどうかして入れたい、或いは中共も入れたい、入らなければ勝手にしろという態度もありますが、希望としては世界の平和樹立にあるのですから、でき得べくんばソヴイエトも中共も入れたいという考えであろうと思います。その前に我我がソヴイエト、中共は駄目なものだと考えて立論するのは、国際関係上どうであろうかと思いますから、ソヴイエトが入らない場合にということの前提の下に我々は議論いたしたくないと思います。これはいよいよ入らなかつたときまでお待ち願いたいと思います。それから北緯二十九度線以南の島を信託統治にするとして云々というお話でありますが、今申す通り信託制度において決定するまでには多少の余裕がありはしないか、余裕のあることを希望いたします。で丸呑みにするかしないか、丸呑みには無論いたしたくないのであります。でありますから、今日までまあ丸呑みにしないようにと思つていろいろな資料なり、何なりは提供いたしております。そこでこれは希望を加えた原則論になりますが、この間もダレス氏はヴエルサイユ條約締結講和條約の場合には、ドイツに対して連合国が勝利者として、対独講和草案を突きつけて、二十四時間内にイエスが、ノーか言えといつて迫つた。遂にドイツの全権は非常な周章狼狽して混雑を極めて逃げ出した、逃げ出したというのは何だけども退却したというようなことの場面があつたために、ヴエルサイユ條約は行われなかつた、完全にその目的を達しなかつたのみならず、これによつてドイツにおいてナチが起り、ヒツトラーが起つて来て第二の世界戦争になつたのであるから、戦勝者として戦敗者に或る講和條約を押付けようということは、世界の平和、永遠の平和のためにならんのである。故に日本関係においても対等の地位においてという話であります。即ち日本の民意を尊重しなければ、條約によつて確保された平和は永久的にならない。そのためには国民を尊重するということの言外に考えを持つておる。これはミスター・ダレスばかりではないと思います。そういう気持が、そういう空気が今日の空気であろうと思います。故に只今申したように、琉球その他二十九度以南の島国は永久に日本の国土を離れては怪しからん話だ、そんなものは丸呑みにするなといつて喧嘩をふつかけるということはよくない。むしろ感情的にならずに穏やかな話をすることが大事であると思います。殊に領土問題はとかく感情的になるものでありますから、殊に議会等における議論においては成るべく穏やかな、感情を捨てた気持で以てお考えを願いたいと思います。まあ私の感じはそうであります。
  33. 金子洋文

    ○金子洋文君 この前の私の質問に対して、外務大臣は特定の国に軍事基地を提供するということは声明をしたこともないし、約束したこともない。いずれの国に約束したことはない、かようにお答えでございましたが、仮に講和ができて或いは同時にか、後にか暫定的な協定ができて米軍駐留する、こうした場合を考えますと、結局兵隊さんがいるということは、軍事基地がそこに伴うことになるのではないかと思うのですが、この点はどういうものか、そういう場合、先ほど外務大臣の心配はない、外国等の侵略とか、間接侵略とか、そういう心配はないとおつしやいまとたが、私もそう思いますが、又心配もある場合も考えなければならない。そうすると、結局戦争に介入するということになりますので、やはりさつき曾祢君が心配して、国連と何とか話合の上でアメリカ軍駐留できないものか、この心配がよくわかるんです。その点一つお伺いしたいことと、それから日本安全保障国連集団保障によるということは何人も希望しておりますが、同時に又一部の意見としては、日本はみずからの力を以て守らなければならない。それがまあ再軍備論等になつて現われているのでありますが、私の考えではやはり自衛の道というのは国民が一丸となつて、国内の暴動や間接侵略に備えなければならない、こう思う。例えば例で申しますと、一九二〇年の三月と思いますが、ドイツに革命が起つた場合、第一次大戦後革命が起つた場合に反革命のカツプ・プツチヒが五日間ベルリンを占拠したことがございます。そのときにベルリンの労働者が一致団結してゼネストを以て闘つた。五日天下になつてつているのでありますが、日本においても、やはり国民が一致団結して暴動や侵略に対してボイコツトをする、ゼネストで以て闘う、こういう態勢を整える必要があるのではないか、かように考えるのであります。その点総理大臣はどういう考えを持つておられますか。私の考えに賛成して頂けますかどうか、この点の御所見を伺いたいと思います。
  34. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 米国軍が駐在することになつた結果、そこが軍事基地になるということは、具体的に申せば共産主義国の侵撃を招くことになるのではないかというような御質問で、ところでいわゆる米国軍がどこに駐留するということもまだ具体的に話がきまつているわけではありません。併しながら駐留する以上はどつかに駐留することになつて、そこが軍事基地ということになるかも知れませんが、話の筋は日本の国内の治安は日本政府自身が、日本国自身が守る。併しながら軍備のない日本、即ちこの真空状態日本に外国、外から侵撃するものがあつたらいかん、どうする。即ち米国軍が駐留して日本と共に防衛に当る、或いは日本の近海にアメリカの軍鑑、或いは空軍があつて、そうして日本と共同防衞に当る、即ち共同的侵害に対して共同的防衞に当る、この趣意にほかならないのであります。即ち防衞に当るので、或るところに米国軍が駐留してそこを基地として日本を守る、これは集団的防禦の場合を予想したものであつて、集団的防禦ができないと外国侵入軍のほうが勢力が強くつて日本における集団的防禦が成り立たない、不成果に終る、のみならず侵撃を受けるということになれば、今のその集団的防禦ということの考えそれ自身が失敗になる話である、併しそれ以外に今日は日本を守る方法はないと私は思いますから、集団的防衞と、仕合せにしてそれではそうしてやろうかという米国の好意がありますので、それじや一つ考えようじやないかということになつたいきさつであります。で、そのために外国の侵入軍を招いて、それでその原因で以て日本全体が空爆を受ける、又は侵撃を受けるということになりますと、集団防衞ということの考えそれ自身が誤まりということになるのでありますが、仮に誤まりとしても、今日はそれ以外に方法がないのではないかと私は思います。併し具体的の問題については、更に今後の協定に待つよりほか仕方がありませんが、成るべくそういう危険は無論避けたいと思います。国民一致してこの国を守る、これは勿論その通りであります。そういたしたいと思います。但し共産党の諸君はこれに反対であるかも知れませんが、(笑声)併し日本国民としてはこういう考えに当然なり、又いたしたいと考えることは勿論であります。然らばどうするかということになりますと、これはいよいよということになつて、自然に日本国民のほうでありますから、自然に団結ができるということを私は信じて疑いませんが、けれども、平生においてこういういざという場合に、一致協力、勢力を結集して置くがいいかというまあ話もあります。ありますが、そういうことをすることのいいか悪いかについては多少まだ考うべきことがあるのではないか、例えば軍国主義復活というようなことを言われないとも限らない、ややともすれば、現内閣は保守反動と言われておるのでありますので、そういう汚名を、内閣はとにかくとして日本国において、軍国主義の復活というようなことにならんとも限らないのであります、これはよほど愼重に考うべきではないかと思います。
  35. 伊達源一郎

    ○伊達源一郎君 大分時間が長くなりましたから、私は簡単に一つ、二つのことを総理大臣にお尋ねしたいと思います。  第一は、講和会議の問題及び講和條約のことでありますが、講和会議は今度の場合は世界各国が集まつて互いに議論を闘わすというような会議でなく、すべてのことはダレス氏の尽力によつて前以てまとまつて、このまとまつた点について調印の会議、調印会ということになるのではないかと思いますが、果してそうであるかないかということをお聞きすると同時に、この今度の條約の進行しておる模様を見ますと成るべく急いで各種の利害関係の複雑しておるのを簡単化して、一致し得る点だけの條約にして持つて行くという努力が払われておるように見えます。そうしますと、この條約は仮に早く各国一致した点にまとめられ得るかも知れませんが、そうなりますと、非常に利害の衝突するような難問題がかなりたくさん條約締結後に残される心配がないかというふうに感ずるのであります。例えば賠償の問題にいたしましても、すべての国が賠償をきれいに放棄してもらえば條約は簡単に行きますが、條約を簡単にするためにその賠償の問題を一部残される、或いは商売上の利害関係のたくさんあることも一致した点が見出されないうちに、大体においてまとまりを付けて條約を締結しなければならんというようなことになつて、通商関係に一部難問題が残されて行くというようなことがあつて、相当あとで問題が起るようなことになりはしないか、そういう点、総理も随分御苦心のことも多いと思いますが、大体の御見解を伺いたいと思います。
  36. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 講和会議が調印の会議になりはしないか、これはそうなるかも知れませんが、併しこの前の講和條約、ヴェルサイユ條約のときと違つてダレス氏その他が今日まで、マツカーサー元帥もそうでありますけれども、今日まで対日講和という問題は五年間の問題になつてつて随分いきさつ、交渉もあり、それから何年でありましたか、第一次吉田内閣が総辞職をするときに、マツカーサー元帥はその年の、四十七年と思いますが、その年の秋頃には多分講和ができるだろうという見通しを言つておられたのであります。然るに国際関係から今日まで延びて、日本のみならずオーストリア、ドイツにおいても同じことでありますが、この五年の間に随分交渉、いきさつがあり、彼我の事情についても互いに議論もし来たつたのであります。でありますから、又最近においてはダレス氏もイギリまでも出かけて行き、日本に来られて後、濠洲、ニユージーランドまでも行き、更にイギリスまで行かれるということで、難問題としておる問題について、かなりその解決に尽力されておられるのでありますから、相当難問題は解決しつつあると、又解決したものもあります。そこで講和條約の場合にはその講和会議において論談するというようなことは先ずないでありましようが、多少の問題はあるかも知れませんが、調印というまでには内交渉と言いますか、会議において論談するというのでなくて、内交渉することは日本も多少続けられると思います。実質においては調印ということになりましようが、併し調印の会議になるということでありましようが、主催国においても講和條約会議で以て互いに論談をして、そうして物分かれになるということになれば、その国の面目にも関係するでありましようから、相当の見込が付いたところで講和会議の開催となり、調印ということになり、実質においては調印の会議になるだろうと思いますけれども、それまでの間の経緯は相当あると思います。それから利害の一致しない点が條約締結後まで残るだろう、これは私残るものはたくさんあるだろうと思います。例えば日本関係だけにおいても、日本人の在外資産はどうなるか、これに対して処分済みのものもあるでありましようし、又処分未了のものもある、それに対する処置等の問題もあるでありましようし、しますからして、又日本における外国人の所有財産というものの始末もあるでしよう。そういう問題は残ると思いますが、併しそのために再び戦争になるというような問題は一応片付いて講和條約になるだろうと思います。講和條約がすべての問題を解決して、あとさつぱりするということは、これはどうしてもあれだけの大きな戦争をしたあとでありますからして、多少、多少以上のものが残ることは覚悟いたさなければならないと思います。それから賠償等の問題についても、これは御承知通りヴエルサイユ條約以後一九三一年頃でありますが、ドーズ・プランになり、ヤング・プランになり、三一年頃にはローザンヌの会議になり、それでもまだ解決できなかつたことなどもあつて、賠償問題のごときは殊にそうであります。併し日本に巨額な賠償を払えと、いつたところが、賠償能力は我々はないと言つておるので……、実際ないのでありますから、ないものを払えといつたところが、これは議論になるばかりであつて、解決はなかなかむずかしいと思う。これも残るでありましようが、日本としては、我々としては成るべく負担能力のある限り正常なる賠償の要求に応じますけれども、現在において賠償の余力があるか、御覧の通りのような状態であつて、回復したとか、或いは景気がいいとか申しても、昨年以来のことで、それまでは食うや食わずの有様で、アメリカの援助によつてつて来た国に賠償能力のあるはずがないと見るのが正当なる解釈と思いますが、にもかかわらず、相手方としては要求をいたします。この要求拒否の問題は相当に今後も続くと思います。一応お答えします。
  37. 伊達源一郎

    ○伊達源一郎君 もう一つお伺いいたしますが、先刻来お話通り、領土に関する問題でありまするが、この領土の問題は私どもダレス氏に会いまして、いろいろ話したのであります。大体において領土のことは、日本から余りやかましく言わんほうがよろしい。これについては大いに考えておるというお話でありました。私ども領土問題については、大体ポツダムの宣言によつてもきまつておることでありますから、それについて要求がましく考えるわけではありません。ただ総理大臣のお考えを聞いて置きたいことは、領土問題は全くアメリカにお任せして置けばいいかどうか、私どもはこれについて議論することを避けて、できるだけアメリカの計らいに任せて置いほうがいいと考えておるものでありますが、総理大臣のお考えがどうであるかということを承わりたいのであります。私の考えではアメリカは正当に日本に属すべきものを取上げるというような考えは毛頭ないように思われます。のみならず、この問題に対する考え方は非常にデリケートであつて、だんだん時が移るに従つて日本のほうから言いますと、好転しつつあるのではないか、他日いい機会があればその好転の度合もよほど又よくなるのではないかというふうに考えられるのであります。無論日本は四つの大きな島に領土を限られてしまわれたのでありますけれども、その周囲のたくさんの領土が直ちに処分されてしまうべきはずのが、だんだん曖昧になり、だんだん不確実になつて来ておるように思われます。沖繩、琉球及び小笠原のごときも、国際連合に所属させてアメリカの信託統治にするというようなことも、ダレスさんと話をして見ますと、必ずしもそうでない。国際連合に所属させるということも多大の疑問があるから、これから先の進展を見なくてはならないというようなお話もありましたし、我々は、ソ連に行つてしまう、はつきりとソ連に行つてしまうであろうと考えておつた千島も、樺太も、それは不確定のまま行くのであるということでありますし、台湾、澎湖島のごときも、国民中国に属するのか、共産中国に属するのか、甚だわからない事態になつて参つたように思います。これは余り要求がましいことを日本が言わないでも、まさしく日本の守るべき立場を守つて行く間にいろいろな変化があるのではないか。條約の上にはただ日本が四大国及びいわゆる我らの決定する諸島を除くほかのものは何ら條約には書かれないかも知れないという事態になるのではないか、或いは国際連合の所属というようなことははつきり出るかも知れませんが、條約そのものと領土の関係というものは大体どういうふうに考えたらいいものであるか、総理の御見解を大筋でよろしうございますが、承わつて置きたいと思います。
  38. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本の領土に関する考え方は、ポツダム宣言の当時と今日とは大分違つておると私は思います。終戦直後におきましては、敵国という感情がありましたろうが、日本という国は平和を害する国、平和を破壊する国である、危険な国であるという考えから、最も深刻な考え方の下に日本に対する領土を大きな四つの島に限るという考えになつて日本国を再び世界の平和を脅かすような国にしたくないというような考えから、非常な厳酷な規定を設けんとしたと思うのでありますが、そのときの空気とは今日は非常に変つておると思います。ちよつと速記をとめて下さい。
  39. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 速記をとめて………。    〔速記中止〕
  40. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 速記を始めて……。
  41. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 又過日もマーカツト少将が言われたのでありますが、日本の経済復興、日本アメリカと一致してそうして世界の繁栄を増す、或いはアメリカの対極東政策の片棒をかつぐというくらいに考え極東の向上に資すべきではないかというような話をしておつたのでありますが、私はまさにそうだと思います。そこで過去の領土、これは無論大切なことで、国民の感情から言つて見ても、地理的、歴史的な関係から言つて見ても、いわゆる率土の浜ことごとく王土であつたのであります。この国民的感情は尊重すべきものでありますが、併しながら一寸の土地といえども離さないということになつて、感情的になれば大なる損害を生ずるものである。私は領土問題は特に平靜に考えたいと思います。それで又先ほども申す通り、琉球その他の統治と言いますか、軍事施設のごときも、これはアメリカの領土的野心に出でたるものではなくて、極東における共同防衞と言いますか、共産主義に対する防衞、逆にあの線が占領せられた場合には日本はどうするのだ。日本のみならず、アメリカ極東政策がどうなるか、或いは自由国家の将来はどうなるかということに関する大事な生命線であるというような考え方である。あの土地が欲しいのではない、あそこが逆にとられたら大変ではないかという……、琉球或いは小笠原島に、敵国と言いますか、共産主義国が軍事基地でもこしらえるということになつたら、いわゆる太平洋の防衞計画は破壊せられるのじやないかという考えから来たものと私は想像いたします。そこで世界或いは極東の平和全体から我々は考えて見て、それに寸土といえども離さないという気持よりは、極東平和維持或いは増進という見地からも考えて、領土問題は日本としては考えるべきものではないか、まあこういうふうに考えておりますが、そこで琉球は離していい、小笠原は要らない、こう申すのではありません。けれども米国考え方は、まさにそういう観点から来たので、領土が欲しいという、小笠原島が欲しいというのではなくて、アメリカとしてはむしろあり余るくらいな領土を持つているのでありますから、成るべく少くしたほうが安上りであろう、こういう計算をするのでありましよう。故にあの小さな島が欲しいというのではなくて、太平洋全体の防衞という線から考えての話だろうと思います。将来どうなるかということは将来の幾多の曲折がありましようから、我々の希望するところは、お話のように領土問題は平靜に考えたいと思います。
  42. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) ちよつと総理に急用があるというお申出でありますから、二分間休憩いたします。    午前十一時三十九分休憩    —————・—————    午前十一時四十一分開会
  43. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 休憩前に引続き再開いたします。團君。
  44. 團伊能

    ○團伊能君 極めて簡単なことを二つほど伺いたいと思います。先ほどから総理に御質問のありました問題で、直接侵略を受けた場合、国民は一致団結してこれに当るということの総理のお考え、よくわかつております。実はこの前もこの問題につきまして少し質問いたしまして、甚だ繰返すようでございまするが、この点につきましては、もう少し詳しく総理のお考えを承わりたいと思います。直接侵略を受けたる場合、米国がこの日本の防衞に当り、日本駐屯軍に対して便宜供与するという形の條約が結ばれつつあることは御承知通りでございますが、この点につきまして、国民としてはまだどうもはつきりいたさないところがありますので、その点もう少し詳しく承わりたいと思います。実は簡単な例をとつて見ますけれども、この日本便宜供与し、直接の戦闘には米国が当ると、これはその持つている戦闘可能ないろいろな設備、武器の点から考えても全くそうでございますが、併しながら国民感情といたしましては、米国が国土の防衛に当り、日本がただあとから便宜供与という点で何かのお世話をするというだけでは、どうもそこが納得しないようなところがあると思います。この直接侵略を受けますのは日本でありまして、ほかの国でないのでございます。そこでこの日本に住んでおる日本民族というものが、自分の国土を侵略されて、外国の軍隊によつてこれを守つてもらうというだけで、ここにとどまつているということができないような感情があるかと思います。と申しまして、日本が再軍備して軍隊を作つて、みずから闘うということは、総理もしばしば御説明通り、これは今日の状態から不可能でございますが、その協力の関係がどういうふうになりますか、簡単な例で申しますと、要するに火事が起つておるのは自分の家でありますが、これが消防署にかけて行つて知らせるだけが日本の任務である、蒸気ポンプが来なければ、そのまま自分の家は焼けていても見ているという状態か、或いはバケツを持つて自分が消していいのか、その辺のところがはつきりいたしませんが、一般に持たれている不安は、何か自分の国の防衞をアメリカ任せということで、このような感じを持つておりますので、そこの点がどうももつとはつきりとさして頂きたいと存じます。勿論国民は一致協力いたしてこれに当るでございましようが、当るといたして、一致団結して傍観しておるようなことでは甚だ頼りないと思いますが、その点甚だ漠然たる質問でございますが、御説明願いたいと思います。
  45. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の申しておりますことは、国内の治安は飽くまでも日本の手で守る。共同的、集団的攻撃に対しては、集団的に防衞をする、集団的と申すのであります。故に日本が侵略された場合に、日本国民は手をつかねてアメリカ任せで以て侵入軍を防ぐ、日本国民は傍観の義務ありと申すのではないのであります。共に共に防衛をする、決して他人任せではないのであります。他人任せということは、始終私の申すことでありますが、日本国民の自負心がこれを許さない。日本国民の愛国心なり、プライドがこれを許さない。もう日本の国防なり、安全保障日本国民がやるのである。併しながら今のところやれと言つたところが力がない。であるから、或いは武器を借用するとか、何とかいうことをせざるを得ない。けれども借りたものは返す、返すことが我々の自負心がこれを返さざるを得ないのである。故にアメリカの対日援助といえども日本政府は、日本国民はこれを返還、完全に支払うことに努めるであろうと私は思うというぐらいに考えるので、共同防衞と申すのであつて、決して傍観するというのではないのであります。共同防衞、飽くまでも共同防衞であり、国が海軍、陸軍を持つだけの資力も持ち、又国民感情がこれを許すということになれば、これは日本国民として独立する以上は、みずから守るだけの力を具えるべきでありますが、何分今日においてはこれを許さないと思います。故にやむを得ざる暫定措置として共同防衞に当り、これは共同防衞に当つておるのはひとり日本ばかりではない、御承知通りイギリスといえどもアメリカの空軍が入つて共同防衞に当つておるのであります。その他ヨーロツパ、ことごとく共同防衞の線に沿うて、アイゼンハワーなどが行つて欧洲軍を作るというような状態で、今日は集団防衞のほか集団攻撃に対する方法がないのでありますから、日本がこれに倣つて日本国民の自負心を、日本のみが共同防衞によつてみずから守ろうというわけではございませんから、日本国民の自負心もこれを受け入れるであろうと私は想像いたすのであります。それから日本便宜供与とはどういうことを意味するかという御質問でありますが、便宜供与という問題については、先ほど申した通り具体的にどれだけどういうことをするかということはきまつておりません。併しながら現在標準を申せば、現在占領軍に対して与えたような便宜供与をする、サービスをするとか、或いは必要な家屋を提供するとかいうようなことは、共同防衞の考えからいたすことになるでありましようと思いますが、然らば具体的にと言えば、非常に突き進んで話はまだいたしておりません。今後のいずれ交渉になると思います。
  46. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 極く簡単に二つの点についてお尋ねしたいと思います。  第一点は、今日国民一般の希望講和が一日も早くあつて欲しいという点にあることは申すまでもないところだと思うのでありまするが、それがためには、具体的には講和條約が集団條約、多辺條約になります場合を考えて見まするというと、その講和條約が実施力を発生するためには、一定数の批准完了を要するというようなことにも相なるわけでありますが、そういう観点からお尋ねするわけでありますが、中共を承認しております国々、殊にインドだとか、或いはビルマだとか、ソ連圏のほうは今問題にしませんが、そういう国々の対日講和に対する態度、これはダレス氏などが相当その点についての内情等も承知しておられることかと思うのであります。総理はいろいろダレス氏とお話合の際、或いはそういう点についても相当御承知になつておられるところがあるかと存じまするが、又ダレス氏とのお話は別にしましても、こういうつまり中共を承認している国々の対日講和に対する態度なり、或いはそれに対する御観測の大体でもお知らせ願いたい。これが第一点。それから第二点は、先ほど曾祢君が心配しておりました講和国連との関係でございまするが、ダレス氏などの演説等によりまするというと、今度の講和條約の案はまだできていないと思いまするが、その構想の中に国連目的及び原則に関する條項を日本は遵守して行く、そうして又これに対応して、この講和條約に入る国連の諸国も、国連加盟の諸国も同様に遵守して行くというふうな條項を入れるというような構想があつたように思います。これは私実際上、日本国連加盟というのがなかなか実現がむずかしいと観測される状況の下において、非常にこれは私は実はよく考えられた案だと感心しておるわけでありまするが、若しそういうことでありまするならば、特に日本国連に加盟せずとも、又講和條約とは別個に特別の国連との間に取りきめをしないでも、曾祢君のさつき心配しておられた点は殆んどカバーされるのではないかと私は思うのですが、その辺のところを総理ダレス氏とのお話合の筋合等を、若しお伺いできれば伺いたいと思います。
  47. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ダレス氏との話のうち、インド、ビルマ等の対日講和に対する態度如何ということは、私は承知いたしませんでした。又ダレス氏はこれらの国との間において、ワシントンにおいて相当話を、殊にインド代表とは話をしておるようでありますけれども、特に避けられたかどうか知りませんが、話のうちには載つておりません。出ておりませんでした。然らば私はどうするか。インド、ビルマ、殊にインドは御承知通り日本市場として日本の貿易関係から言つて見て、非常に重要に考えざるを得ないのでありますから、中共承認は別として、特にインドとの間においての関係は最もよくいたしたいと考えますし、すでに在外事務所等も設置することになつておりますから、対インド、ビルマの関係には十分尽力はするつもりでありまするが、一つ申さなければならんのは、ビルマにおける対日感情は相当悪いそうであります。又悪いと考うべき過去における経過もあるのであつて、このビルマ関係は、たとえ日本がその好転に努力いたしても、相当むずかしいものがあると思いまするが、然らば日本との間において講和関係に入らないかと言えば、すでに在外事務所も設置を許すくらいでありまするから、相当な話はできようと思いまするが、決して関係はよくないことは事実であります。国連との関係については直接に話はいたしておりません。又ダレス氏もこの点については云々ということはなかつたのでありますが、先ほど申す通り、その目的とするところは世界の平和ということであり、我々も世界の平和の増進に努めたいと考えますから、何かの講和ができ、日本が独立を回復した後において、国際団体の一員として、而も民主主義国家の一員として、これに加入することは考えたいと思いますが、お話通り加入についてはいろいろ條件があり、現在日本において、例えば軍備を持つというようなことが不可能な事態にあるとすれば、何か特別に考えなければならん、こつちで考えても、向うで考えてくれなければいたしかたないのでありますが、国連としても相当の考えをしてくれるであろうと想像いたします。然らばどういう考え、どういう構想を持つかとお尋ねになつても、今日のところは私はこういう構想まで行きたいという、その具体的の構想お話するだけの国連との間に話の交渉をいたしたこともないのでありますから、希望以外に構想の基礎はございません。従つてお答えはできませんが、併しでき得るだけ国連との関係及びその一員になる方途を講じたいという希望は持つております。一応のお答えといたします。
  48. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 御質疑はまだ残つておると存じますが、総理の時間の御都合もありますので、本日はこの程度質疑を打切つて頂きたいと、こう存じます。それから第二、請願陳情がありますけれども、これは次回に讓ることにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十八分散会  出席者は左の通り。    委員長     櫻内 辰郎君    理事            徳川 頼貞君            曾祢  益君    委員            杉原 荒太君            團  伊能君            加藤シヅエ君            金子 洋文君            伊達源一郎君            野田 俊作君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 吉田  茂君   政府委員    外務政務次官  草葉 隆圓君    外務省政務局長 島津 久大君    外務省條約局長 西村 熊雄君   事務局側    常任委員会專門    員       坂西 志保君    常任委員会專門    員      久保田貫一郎君