○團伊能君 このたび二月二十八日から三月五日に亘りまして、
外務委員会といたしまして下関、山口県及び宮崎県に出張いたしました御
報告を申上げますが、下関に出張いたしました分は、先日水産
委員会との合同
委員会におきまして少しく申上げましたので、委細は文書に譲りまして、今日は簡単に御
報告することをお許し頂きたいと思います。
第一に、下関におきまして、漁業
関係者その他宮崎県県庁の当事者等約六十人と会談をいたしまして、その間、このたびの漁船拿捕問題につきまして懇談いたしました。そのときの要点を申上げますが、第一に、現在存在いたしまするマッカーサー・ライン、殊に百三十度以西の以西底曳漁業の漁場につきましての
陳情がございます。それは現在ございます支那海及び黄海の漁場の中で、マツカーサー・ラインが引かれました東側、即ち
日本の出漁できる範囲は約三分の一、七万平方メートルであります。参全漁場が二十一万平方メートルのところに七分メートルの漁場が許されておりますが、実はその七戸メートルも大部分深海でございまして、底曳漁業に役に立たず、漁獲量から申しますと、全海域の約一五%、一割五分ぐらいのものしか漁がございません。その点で、今日この以西底曳漁業の海域は、甚だ漁場といたしまして狭く、収益はないものでございますので、この点から御考慮頂きたいということが第一点でございます。次は、この支那海、及び黄海におきます漁業は、専ら「さば」、「いわし」などの漁業でございまして、中国、朝鮮人等の食料にはならないものでございまして、專ら
日本人の食料のために役立つものでございます。そこで支那及び朝鮮は、この方面において余り漁業に出漁いたしておりません所でございますので、できるならばマッカーサー・ラインをもつと西に延ばして頂きたいという切なる
陳情が参りました。なおこの漁場の、若しマッカーサー・ラインを以西に延ばして頂くならば、その場合黄海、支那海の広範囲が許されないとすれば、せめて今日監視船が歩くことが許されておる場面、これは今日のマッカーサー・ラインよりも約十二マイル以上先まで監視船が、農林省の監視船が航行範囲までマッカーサー・ラインを延ばして頂くことはできないかという
陳情が参りました。
次に拿捕問題でございますが、拿捕問題は、先日の
委員会にもございましたように、極めて困難な問題とな
つておりますが、下関におきまして拿捕せられました船長、或いは甲板長など三名その他
関係者と懇談をいたしました。その事情は先日の
委員会で大体御承知に
なつた通りでございますが、現に中共の国旗を上げて正規の軍隊を乗せて
日本船を拿捕に参り、而もその言うところによりますと、マッカーサー・ラインはもとより認めず、又連れて行かれました船長等の言によ
つても、領海さえも認めない、或いはいわゆる公海の観念すら不明瞭でございまして、支那海は支那の海であるから、
日本人の出漁したときは拿捕するとかいうような、甚だ考えられない
説明を聞いて、これらの人々、船員も帰
つて来ております。そのために非常な恐怖に打たれまして、今日マッカーサー・ラインの中に在
つても同様に拿捕せられ、更に遠く
日本近海においても拿捕せられるという可能性があるというために、出漁が非常な今日不安の中に入れられておる、不安に襲われておるような次第でございまして、これについては何とか速急な御処置を願いたいという非常に熱心な
陳情を受けたのであります。なおこれらの拿捕船は漁業保険におきましても、拿捕船は保険項目に入
つておりませんために、何らの補償、保険金を受けることもできません。やはり国家としての補償もございませんから捕えられた船は、捕えられたなりの損失にな
つております。大体以西底曳漁業等に出漁いたします船は、大体二艘で組んで参りますが、中共側では、船は資本家のものでありますから、これは没收する。船で働いておる者は労働者だからこれは船で還えすというようなことを言
つておりますが、実は多くの船主は、二艘とか四艘を持
つておる極めて小さな九州の船主でございまして、長崎県、福岡県、山口県に
亘つてあるいわゆる自己資金で、資本家それ自身が乗り組んで行くような漁業企業形態でございます。そのために一たび拿捕せられましたものは企業的に完全に成立たなく、非常な負債の中に陷りまして、
操業不能にな
つております。又拿捕せられたもので帰還いたしました者は働く船がなくなりまして、今日全部失業いたしております。なおその拿捕されました者の家族は、その帰還する時もわからず、生死もわかりませず、非常に心配いたしておりまして、これらも
只今何らかの救済を要求いたしております。実はこれらの拿捕の際に中共の船より発砲いたされて、死傷者も出しておりますので、その留守家族の不安は非常に大きなものがございます。これらによりまして、この拿捕に関しましては、大体要約いたしますと、現在拿捕されました船員を早く還えしてもらいたい。第二には、中共政権に賠償責任あることを明らかにせられたい。第三には、国内的補償の
措置を講ぜられたい。いわゆる漁船保険等も今後機構を改革して拿捕の場合にも保険金
支拂を受けることにしてほしい。次は、今日農林省の監視船或いは海上保安庁等の船の装備、或いは速力、或いは航行範囲を拡げて
日本漁船に対する監視をするばかりでなく、国籍不明の外国船等に接したときにはいち早く漁船に連絡して、或いは発火信号なり無電を通じまして逃げる用意をさせてくれ。こういうようなところがその
陳情の要点でございました。
次に、宮崎県に参りましては、これは專ら南洋遠洋漁業、殊に沖繩列島、大島方面の事情を聴取いたしましたが、この南の漁区はいわゆる、浮釣の方面でありまして、底曳ではございませんが、專ら沖繩におきましては「かつお」、「まぐろ」の漁業といたして、冬来ておる魚群を追
つて参ります
関係で、
只今二十四度線でとどま
つておりますが、更に南二十度線まで漁区を南に下げて頂きたいということは一致した
陳情でございまして、なお沖繩列島は專らこの磯についておる磯つきの魚の漁業をいたしておりまして、或る場合には網を張りまして、その中を叩いたり、人が魚を追出して網に取るというような特殊な漁法が琉球で従来行われておりますが、磯についた漁業でございますので、今日は領海三マイル以内に入れませんために、琉球の沿岸漁業というものは全く
日本人はこれに触れることはできない状態にな
つております。いろいろ
陳情の結果、島から十二マイル以内には
日本の漁船は入
つてはいけないという話でございましたが、
只今それが縮小されまして、三マイルになりましたけれども、三マイルでもなお磯つき漁業の
操業ができないということで、これも何とか琉球の従来のような磯つき漁業をさしてくれないか。次に、遠洋漁業がしばしばこれらの島に寄らなければならない
関係がある。勿論暴風の場合薪炭を得よう、或いは避難港を得ようとするときには許されると存じますが、その他いろいろなそれに類したことでこれらの島に寄港して行きたい。いろいろな必要品をそこで得なければならないということがございますが、これも現在許されておりませんので、本土を出まして、本土までどこにも寄港しないで帰らなければならないというために航行が非常に困難でございますので、この点も特別な御考慮を頂きたいということでございました。更に南に下りまして、委任統治、赤道附近にまでは、
只今司令部の特別の
許可で三、四隻
母船を連れました「かつお」、「まぐろ」漁業が出ております。然るに最近米国の信託統治局等の
意見では、南洋の旧
日本委任統治諸海域に
日本船の入ることに非常に不賛成でありまして、殊に絶対にその寄港地のごときを與えないという議論が出ておりますのを非常に皆心配いたしまりまして、将来の漁業とといたし、南洋の信託統治辺に行くことが絶対できないとなる場合において、少し大型の漁船を出し、或いは
母船を持
つて行くことができないという点に非常な不安を持
つておりました。これらも外務省におかれましても、又水産庁におかれまして十分に御調査を願いたい
事項と存じます。
その他不法入国事情等も多少参りましたが、このたびは専ら漁業
関係を調査いたしましたので、これを以て御
報告といたします。