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1951-02-27 第10回国会 参議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月二十七日(火曜日)    午後二時十五分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○講和に関連する諸問題並びに国際情  勢等に関する調査の件  (安全保障問題に関する件)  (軍事基地問題に関する件)  (領土問題に関する件)  (賠償問題に関する件)  (在外公館借入金の処理に関する  件)  (漁業協定に関する件)   —————————————
  2. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) これより委員会を開会いたします。  本日は前回に引続き講和に関連する諸問題並びに関際情勢に関する質疑を続けたいと思います。
  3. 曾禰益

    曾祢益君 先日の委員会におきまして完全保障の問題、領土問題等についていろいろ法律的の研究をやつたわけであります。なおその後外務省から公開的な資料として、いろいろ安全保障に関する資料として委員がもらつたわけであります。本日はこの研究の続きといたしまして若干の点についてお伺いいたします。  先ず安全保障の問題ですが、この前いわゆる地域的集団保障という問題についてのいろいろな先例、或いは法的見解等について研究したわけでありますが、本日は逆に国際連合による集団保障といいますか、国際連合による直接の、国際連合機関決定による並びに国際連合意思による安全保障について若干質問したいと思います。そこで先ず国連による安全保障と言つておりますが、現状において国連による完全保障という場合に如何なる実体的な保障があるか。例えて申しますならば国連軍或いは国際警察軍と通常言つておるようなものが現にあるかないか、この点について御説明願いたいと思います。
  4. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 国際連合による一般的安全保障と申しますのは、第一義的に、これは憲章の建前でありますが、安全保障理事会中心として運営せられる第六章第七章に規定されている手続、これによる安全保障を指しておる、こう解釈すればよろしいかと思います。それに、従として第十條第十一條第十四條に規定されております国際連合総会の、国際の平和及び安全に閲して有する権限、これがいわゆる地域的安全保障に対する一般的又普遍的安全保障、こう称せられておるのであります。ところがこの一般的安全保障の根幹をなす安全保障理事会中心とする第六章第七章の手続というものは、御承知の通り申すまでもなく常任理事国拒否権があるということ、又それが原因になりまして、第七章の第四十三條に規定してあります加盟国国際連合のために常時用意して置くべき、乃至提供すべき兵力、援助、便益などの内容決定いたします特別協定というものがまだ一つもでき上つておらない事態であります。従つて第六章第七章によるこの安全保障手続というものは俗に言う円滑なる運営を阻まれて麻痺状態にある、こういうふうに見てよろしかろうと存じます。
  5. 曾禰益

    曾祢益君 そこで常設的の本来の意味国際連合軍というようなものはまだできておらない。そこで日本の場合に考えましたときに、講和後におきまして日本が無防衛で、そして独立国として独立を回復して、外国軍隊が撤退するわけであります。占領軍が撤退するわけでありまするが、そこで日本国連にもまだ加盟しておらない。国連側安全保障に関しては、具体的な措置がとれていないというような状況を一つ想定いたしましたときに、地域的集団保障に行く前に、一つ考えることができるのではないかと思うのですが、かような日本のような非常に世界的に見て戦略要点であり、その産業施設は非常に重要なものである、かような地域が全然無防衛のままにあるということは、世界の安全平和に至大な関係がある。かような見地から、国連においてかような問題を取上げて、何らかの具体的な安全保障措置考えてもらうといつたようなことが、果して従来の国連憲章、或いは先例等から見てどうであるか。日本の場合と言いますると、或いはお答えが困難であるならば、抽象的にさような真空状態、力の真空状態がある、その真空状態国際的に非常に重要な平和、安全に関連する事項であるからというので、さような問題を国連において取上げてもらうというようなことについての法的見解、並びに先例等があれば、一つ伺いたいと思います。
  6. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 起ち上りましたが、なかなか考えがまとまらないのですが、御質問がなかなかむずかしい。問題は国際連合においてどうかということであります。そして又我々国際連合の外にあつて国際連合をエンジヨイしているだけであつて国際連合内部から国際連合憲章の運用その他を見たことがないものでありますから、御質問に対しては非常にお答えしにくい立場にあります。まあ大体こういうふうに考えております。国際連合そのものは、国際の平和と安全を維持するということが第一の目的になつておりますが、第一條、第二條、その他を御覧になれば、はつきりわかります。国際の平和と安全を維持する、そういうためには、単に連合国の間ばかりでなく、非連合国連合国との間、又非連合国間の紛争というものも解決して、平和と安全を維持しなければならんということは当然のことだろうと思います。こういうふうに国際連合国際の平和と安全の維持目的とし、任務としております以上、その平和と安全の維持を不可能ならしめるような紛争とか事態が、たとえ連合国に直接に関係かなくとも、国連としてはそれを解決しなければならない、乃至解決すべき立場にある、こう考えます。国際連盟の場合にはこの点について明文規定がございました。それは連盟規約一條であります。十一條は「戰争又ハ戦争脅威ハ連盟国ノ何レカニ直接ノ影響アルト否トヲ問ハズテ連盟全体の利害関係事項タルコトヲ茲ニ声明ス仍テ連盟ハ国際ノ平和ヲ擁護スルメ適当旦ツ有効ト認ムル措置を執ルベキモノトス」こういう規定があつたわけであります。これで戦争戦争脅威連合国のどれかに直接関係じていない場合でも、連盟全体の利害関係であつて連盟はそれを解決するために、必ず適切有効な措置をとらなければならん、こう書いてあるわけです。ところが国際連合になつて見ますと、国際連合憲章の中には明文で同じような規定はございません。けれども国際連合の本来の任務が冒頭申上げましたように、国際の平和と安全の維持にある以上は、当然国際連盟規約の下におけると同じ関係にあるであろうと私ども考えております。実際国際連合憲章規定を見ましても、平和と安全の維持に関する事項規定いたします場合には、一般的に国際の平和と安全という文字を使つております。そうして連合国が直接に関係し、又は直接に連合国影響を受けておる場合に限るという趣旨は全然出ておらないのであります。例えば憲章の前文で、国際の平和と安全を維持するために我らの力を合せて云々、こういうふうに言つております。又第一條で、国際連合の第一の目的としまして、国際の平和と安全を維持すること、このために平和に対する脅威の防止及び除去と、侵略行為又は他の平和破壊行為の制止とのために、有効な集団的措置をとることと言つております。更に又第三十九條で安全保障基本原則を定めておりますが、その條文にも、国際の平和と安全を維持し又は回復するために云々、こういうふうに言つておるのであります。こういうふうにどの場合でも、連合国だけの平和と安全を維持するというようなことは明言されておりません。そういう言葉は一度も使われておりません。どこまでも一般的に国際の平和と安全の維持ということになつております。その上又第六章の紛争平和的解決の章におきましても、国連が関與すべき対象としましては、単に紛争ばかりでなく、事態についても特に関與する、この事態が続けば、国際中和と安全を破壊するような場合には、その事態についても関與するということを言つております。こういうふうに国際連合憲章それ自体がなつておりますので、仮に日本国連に……、仮に日本というのではなくても、或る一国が国連に加盟していなくても、若しその国が攻撃を受けるとか、又攻撃を受ける危險にさらされるような場合には、国連集団保障利益を受け得ると、こういうふうに私ども考えております。こういうふうな従来の私ども国連憲章についての考え方が果してそうであつたということが、まあ朝鮮事変に対する国連の介入ということによつて裏書きされておると、こういうふうに私ども考えておるわけでございます。更に又国際紛争、又は紛争に至る虞れのある事態が発生しました場合に、その国連に加盟していない国が国連に提訴し得るであろうかどうかという問題、これに対しては憲章それ自体明文を以て、三十五條でございますが、非加盟国は本憲章規定せらるる平和的解決に関する義務を該国が当事国たる紛争に関し予め受諾するときは右紛争につき安全保障理事会又は総会の注意を喚起することができる、となつておりまして、いわゆる加盟国でない場合も、総会又は安全保障理事会に対して、国連による安全保障の発動を要請し得るということが明白になつておるわけであります。で以上申上げましたことは、いわゆる或る一つの国が、国際連合に加盟していなくとも、なお且つ国際連合憲章による一般的な安全保障利益を受け得るものであると考えてよかろうということを申上げたつもりでございます。曾祢委員の御質問はそれ以上に特殊の地位にある、国連に加入していない国の安全保障国連が重大税して、特に何かいわゆる憲章一般的安全保障以外に、更にそれに加えての安全保障的措置をとるということができるかどうかという、私こういうふうな御質問じやなかつたろうかと思うのですが、そうだつたですね。
  7. 曾禰益

    曾祢益君 そうです。
  8. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) この点になりますと、私どもは非常に問題はむずかしくなりますし、実は国際連合事務当局者あたりの御意見でも聞かなければなかなか判断はできないとこう思うのです。ただ一つ考えられることは、冒頭申上げました国際連合憲章から見て、安全保障については総会安全保障理事会二つの点が挙げられております、その安全保理事会に関する限り、どうもそれはいろいろな事情もございましてうまく動いていないのですから、そういう特殊な国がありました場合に、安全保障理事会中心としてそういう問題を取上げてもらうということは極めて困難じやなかろうかということが先ず第一であります。それじや総会、要するに残つておるもう一つ機関である総会を通じて何らかその特別の措置というものをとつてもらえるだろうか、こういうところに来ると、こう思うのです。問題は非常にまあだんだん理窟詰めに押して参りますと、結局そういうことになるだろうと、恐らく曾祢委員もそういうことを頭の中に考えていらつしやる、こう思います。そういうふうに実は問題を突き詰めて行けばそうなると思います。でそこに行く前にこの点を曾祢委員に申上げて置きたい、こう思うのですが、これは実はお尋ねしたい次第なんです。特定国安全保障の問題を総合で取上げて何かしてもらう、こういうことはできないだろうかという御質問でありますが、この曾祢委員はどういうことを頭に描いておられるかということをもう少し承知いたしたい、こう思います。それから今までの先例、これはまあすぐ返事できることでございまして、国際の平和及び安全に影響のあります紛争とか、そういう事態が何らない場合には、これを総会において問題としたという例は全然ございません。全然只今までございません。だから先例があるかどうかということに対しては、そういう先例はございませんと申上げますし、それからもう一つ質問の前段でございます総会において何か措置を、特定国安全保障についての問題を取上げてもらうということができるであろうかという、取上げてもらうその取上げ方ということについて、どういうことをしてもらいたいと  一体お考えになつておられるのかということをお伺いしてから、御返事申上げたい、こう思います。
  9. 曾禰益

    曾祢益君 大分私がお尋ねしたことのずつと先まで半分入つちやつたようなお答えつたのですが、要するに一般的な、普遍的な安全保障が非加盟国でも得られる、受けられるということは確実だというわけですが、それだけでは心許ない。そこで或る目が非常に戦略的な要地である、産業施設が重要である、而もそれが一時的にもせよ、ただその一般的な、普遍的な安全保障を受けられるという状態だけでは非常に不安だという前提に立ちまして、然らばこの問題は決してその国だけの安全保障の問題とも言えない、いわゆる国連憲章に言うところの国際的平和及び安全に関係ある一つ事態として、この問題を、恐らくは今局長も言われたように、理事会なり、総会なりにそれぞれの手続によつてどこかの国が提訴するということによつて始まるとは思いますが、取上げてもらうという意味は、一般的な安全保障のみならず、具体的な特定地の力の真空状態を、暫定的にもせよ、国連意思決定によつて埋めて行くといつたようなことができるかというような意味でお伺いしているわけです。軍事的な安全保障等について国連が何らかの具体的な措置をとる。例えばそれぞれ、もつと言えばですよ、軍隊が駐屯する、或いは軍事的な便益国連軍隊という資格を持つた軍隊がその土地において利用できるか、かような具体的な内容を持つた、具体的な裏付を持つたこの国連としての安全保障の途を考えてもらうということができるかどうか、これが質問要点でございます。
  10. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) ちよつとお答えいたしかねます。私の同僚も曾祢君が言われるような方式考えられるかも知れんのだ、それができるかできないかは何とも言えないという趣旨のことを言われておるのですが、私は曾祢君が言われるような方式が可能かどうか。可能と考うるということそれ自身に疑惑を持つのであります。現在の予見しておる安全保障というものは、六章七章による安全保障理事会中心と出るそのような強力な安全保障、それから十條、十一條、十四條に見られている総会による補足的な保障、この補足的な安全保障朝鮮動乱以来非常に六章、七章にかかつて、非常た広く運用できるような方向に持つて行かれておるということは事実であります。この二つ安全保障のほか、国連の予見しているのは、いわゆる地域的取りきめによる安全保障だ。これは国連憲章が積極的に加盟国に対して地域的取りきめを結んで、地域的な安全保障を図れということを勧めておるほどの積極的なものではございませんか、又国際連盟規約の下におけるほどこういつた地域的取りきめに対して消極的ではないのであつて、丁度その中間のもの……紛争があつた場合には、先ず第一に地方的安全保障の取りきめにかけて、それで解決をするように勧告されているわけですが、こういうふうな大体三つ方式と言いますか、三つ方式考えられるのでありまして、この三つ方式以外に或る特定の国が或る特殊の立場にあつて、それが放置して置けば極めて、何と言いましようか、国際の平和と安全の維持に対して危険な事態を醸すかも知れないという、その可能性があるが故に、すぐ国際連合総会なり安全保障理事会なりが取上げて、その特定の国のために特殊の安全保障方式国連としてとるというようなことは先ず考えられない、予見していないのじやないか、こう思う次第であります。恐らくその特定国について国際千和又は安全を覆すような事態が生じたときに、安全保障理事会であれげ自発的にそれを取上げる、総会ならば関係口の提訴によつてそれを取上げて、そうして国際連合憲章規定條項に基いてその具体的問題に対して如何なる安全保障措置をとるかというふうに動くものだと、こう見て置いてよかろうじやないかと、こう私は思うのです。
  11. 曾禰益

    曾祢益君 局長の御意見で、そういたしますると大体従来の国連先例等から見ても、又国連安全保障に関する考え方から見ても、さような特殊な事触に対しては地域的な集団保障で行くか、然らざればまだ国連軍というものはできておらない現状においては一般的の集団保障、即ち理事会が取上げる、或いは総会に訴える。紛争が起つてから、或いは殆んど侵略が始まつてから国連が助けに来る以外には従来の先例としてはこれがないと、こういうふうな解釈になりますか。
  12. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) そう思うのです。私のほうからその意味でお尋ねしたいのは、総会で取上げてもらつて何かできると仮にいたしまして、どういうふうな方式を作つてもらいたいと曾祢委員はお考えになつておりますかということなんです。それがはつきりすれば、そういう方式が現在の国連憲章の下において可能であろうか、むずかしいであろうか、乃至はそれに近い先例、かありましようかというようなことが、我々としては考え得るということになるわけです。
  13. 曾禰益

    曾祢益君 先ほども申しましたように、国連軍の指定する部隊日本に駐屯するなり、或いは日本軍事的便益を得て暫定的にさようなかつこうをと曲る、これは日本国連との話合いになりますか、或いは指定したとの話合いになりますか知りませんが、さようなことを一連の意思によつてきめる……言い換えるならば、国連軍がまだできてない、併し朝鮮侵略が始まつてからの事態では、理事会決定によつて国連軍部隊というものが公に設けられて侵略排除に当つている、かようなことを一つの継続的な状態としてさような措置をとる、国連意思としてそういう措置をとる、そういうことです。
  14. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) いま一点お聞きしたいのは、いわゆる国連との話合いによつてと、こうおつしやるけれども国連というのは国連総会を見ておられますか、安全保障理事会を見ておられますか、こういうことです。
  15. 曾禰益

    曾祢益君 これは先ほど来申上げているように、提訴の手続等から言いまして、私も実はよく知らないのですが、初めに理事会合に持つてつて、それから総会に移されるものやら、或いは総会に直接提訴できるものやら、いずれにいたしましても理事会においてはさようなことは非常に困難ではなかろうか。大国間の協調が円満でない場合を予想すれば困難であつて、結局拒否権に煩わされない総会において仮に国連において可能性ありとすれば、総会意思決定というかつこうをとらざるを得まいという一つ予測に立つているわけです。
  16. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 結局現在の安全保障理事会の実情を以てしては、そういう問題は安全保障理事会においまあ解決されないので、曾祢委員予測としては、もつと総会というものを相手として考えざるを得ないだろう、事実上そういう結果になるであろうという質問でありますが、大体我々としてもそういうふうに考えております。それじや総会がそういうふうなことができるかできないかということになつて来るわけなんですが、総会安全保障…出際の平和と安全に関するいろいろな……主として十一條、十二條、第一の問題になつ中心点は十一條、であります。総会国際の平和及び安全の維持についての協力に関する一般的原則を審議することができる、又これらの原則について加盟国若しくは安全保障理事会に対し、又は両者に対して勧告をすることができる。これが第一項です。第二項は、総会総会に付託された国際の平和及び安全の維持に関する如何なる問題をも討議することができる。又これらの問題について関係国若しくは安全保障理事会に対し又は両者に対し勧告をすることができるということです。ですから総会が持つておる権限は、国際の平和と安全の維持に関する問題について、加盟品又は安全保障理事会又は両者に対して勧告をするということです。国際連合それ自体は冒頭にも申上げましたように、憲章規定によりまして、加盟国と否とを問わず世界の平和及び安全を維持することをその主要任務とするものでございます。従つて、特に特定国のためにその安全を保障するというような国連自体に対する勧告総会決議するということは意味をなさんと、こう考えさるを得ないのであります。そういう勧告をするまでもなく、それは国連が当然の任務としておるところであるからです。飽くまでも安全保障理事会乃至国連加盟国又は関係員に対してこういうことをせられるように勧告するという勧告権限を持つているわけです。その勧告を受けた加盟国なり、或いは安全保障理来会が、それを受諾してそういう措置をするという仕組になつているわけでございます。この関係で最近、昨年の秋であります、昨年の総会で採択されました国際連合総会強化案というものかございますが、この強化案を見ましてもやはり安全保障理事会がその平和の維持について有効な行動をとることができない場合に、総会が平和を維持するためにいわゆる勧告受諾ですね、勧告受諾、この基礎の上において行動をとるような措置決議したものです。ですからこういう平和のための統一行動に関する決議というもの、ができたが故に、或る問題が起つた場合に総会中和と安全の維持又は回復のためにとり得る措置の手順というものはよほど整備されたと申上げていいと思うのですが、総会としてとり得る措置は飽くまでも、安全保障理事会暫らく問題外として、各加盟国乃至関係に対する勧告であるということを我々考えて置かなければならんと、こう思う次第であります。
  17. 曾禰益

    曾祢益君 その点はよくわかつたんですが、併しそれならば勧告にとどまるかと言つたならば、総会においても安全保障、少くとも平和に対する侵略が起つたような場合には、勧告という形かも知れないけれども、何らかの措置が、強制措置が実際上とれるのじやないか、その点はどうなんですか。
  18. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 強制措置がとり得る。朝鮮動乱においてまさに強制措置がとられましたが、あの場合も勧告に基いて加盟国がこれを受諾して、やつたという関係です。従つて勧告受諾という基礎の上において、基礎の上においてのみ強制措置というものは考えられる、こういうことになるわけです。それから又先刻申上げました平和統一決議の中には加盟国に対して国軍の一部を国連の軍として指定して置いて、いつでもそういつた要請があつた場合に、勧告があつた場合に、そうしてそれを受諾した場合に、提供して、用意して置くというふうな意向になつて来たわけです。非常にその点は進んで来ておる、こう考えております。
  19. 曾禰益

    曾祢益君 勧告受諾によつて第三者に対して強制措置をとつておるというのは、必ずしも総会に限らず、理事会においても朝鮮とつ措置は、あれは勧告であつて、強制したのではないと思います。ですから、その点は余り問題でなくて、飽くまで本質的には侵略に対する排除というのではなくて、安全及び平和に関する、平和の維持に重大なる関係のある事態に対してあらかじめ予防的な措置総会において勧告するというようなことは、前例としてはなかつた。併しそういうことは、或いは一つ考えとしては、少くとも総会において取上げさせる根拠であるように思うのですが、その点は御返答を求めなくても結構です。  そこでそれはその程度にとどめまして、今度は次に重要な問題ですが、国連安全保障理事会が或る一つ地域に対して、その安全について何らかの責任を負うておるという例は、例えばトリエストの場合にあつたように思うのですが、少くともそういう取極めがあつたように……現実には行われておるかどうか知れませんが、その点は如何ですか。
  20. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) イタリー平和條約のトリエスト地域に関する取極めでございますが、そこに同地域領土保全及び独立は、国際連合機構国際連合でございます、国際連合機構安全保障理事会によつて保障されるという條項があります。これはいわゆるイタリー平和條参加国トリエスト領土保全及び独立保障安全保障理事会にいわゆる委託した。外部から、外部からですね、国際連合内部機関がそうしたのではなくて、イタリー平和條締結国がお互いの間に締結しまして、平和條約の規定によつて地域保障責任安全保障理事会、に委託した。外部から、安全保障理事会にそういう任務を委託した。こういう関係になるわけです。それと同時に、我々又忘れてならないことは、トリエスト地域というものが、独立の国家ではなくて、特殊の国際的の性格を持つておるという地域ということであります。安全保障一つ方式として、俗にトリエスト方式と言われておりますが、この方式がいわゆる国際連合加盟国となるべき独立国に適用し得るや否やという問題については多大の疑問があるところであります。
  21. 曾禰益

    曾祢益君 それでは今度はこの間こちらに下さつた米比間の軍事共、地に関する協オですが、実は非常に浩瀚なあれで、我々もなかなか読んでもわからないのですが、一体あそこに言つている軍事基地というのは、非常に広汎な地域じやなくて、例えば飛行場或いは海軍の要港とか、それも街なんか含んでいないので、そういつたような軍事施設或いは兵営、そういつたようなものを限つて、何と言いますか、そういう施設を留保して、一つの行政地域という広いものを取つているのじやないというふうに見ているんですが、そういう点はどうなつておるのか。  それから例えば港湾施設なんかを使う。これは占領軍が自由に使うということになるのでしようが、そういうことが非常に一般の、フイリピンの場合、フイリピン…及びフイリピン国人がその港湾を使うのは非常に支障を来たすような、排他的な、独占権的なものであるかどうか。  それから裁判権に関連いたしまして、例えば軍人、軍属というようなものを非常に範囲を広くして、少くとも加害者の場合には、その裁判権を全部占領軍のほうが握つてしまうといつたようなことになつているか。それらの点について若しおわかりでしたら御説明願いたい。私の申上げるのは、要するに例えば米比條約及びその実例から見て、米比間の軍事基地協定というものが、非常にフイリピン国に対する、主権に対する、まあ何と言いますか、制限……或いは経済上等に対する制限が非常に大きなものではないかというような観点から伺つているわけです。
  22. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) お手許に差上げました協定の附属書のAとBに列挙されてあります場所が、結局九十九カ年の租借の目的になつておるわけです。地域的に極めて狭いところであります。海軍基地とか、航空基地とか、荷置場所とか、そういうふうな、非常に広い地域というよりも、むしろ場所という観念で、その点は英米間の協定と非常に違つておるのです。むしろ英米間の協定は、地域的に割合広くて、普通の租借地、租借契約という形態をとつております。
  23. 曾禰益

    曾祢益君 英米間というのは何でしよう、英本国じやないでしよう。
  24. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) そうです。米比間の地域は、或る特定地域に限定された基地を九十九カ年間租借する、但し無償だと私は了解いたしておりますが、それから主権との関係では、基地は沿岸貿易のため、米国領土の一部とされないというふうに條文ではなつております。それから第四條でございますが、いわゆる領土主権は当然フイリピンにあつて領土主権それ自身はこの基地協定によつて失われていないということが條文に明示してあります。それから租借でありますが、いわゆる租借権国がその基地又は基地の附近に持つております各種の権利ということについては詳細な規定があります。一々御説明するのは省略いたしましよう。それから一番問題を起しやすいいわゆる裁判管轄権、これにつきましては平時の場合と戰争状態発生の場合とに分けまして、大体刑事裁判権については詳細明確な規定がございます。この規定内容は我々が学生時代に平時国際法で、平時外国に駐在する軍隊の有する治外法権の内容として教わつたところに完全に合致いたしております。その刑事裁判権に関連しまして、いわゆる犯罪者の逮捕についても規定いたしております。それから民事裁判権については或る特殊のいわゆる裁判の執行とか、そういうような点から規定してありまして、民事裁判権を直接対象とする規定はありません。それは恐らく平時国際法の原則従つて十分に処理し得る事柄であつて、面倒な問題を起すことが少いから、そうなつておるのであろうと解釈いたします。それから又米比協定では、アメリカがフイリピンに居住しておる自国民を募兵し、訓練することができるという規定がありますが、これにはフイリピン人も同時に寡兵し、訓練することができるということになつております。これは、フイリピンが軍隊を持つておる国であつて日本と全然性格が違いますから、そういう條項が入つてもよいわけでありましよう。それから今度は貸しておる国として、借りておる国にいろいろ協力する義務がありますが、これも詳細に記載してあります。と同時に、今度は協定の中にいろいろアメリカ側としてフイリピンに対してサービスをしてもらう、そのサービスに対して有償の場合は有償、無償の場合は無償と、そういうふうに規定いたしておりまして、補償義務というものについての規定がございます。  その次は、この軍事基地協定に基きアメリカが得た基地を、アメリカが第三国に転貸することができないという規定、それからフィリピンも同様に事前の承諾なくして、第三国にその軍事基地に介入するという協定を結んではならないという規定が入つております。  以上が米比軍事基地協定の大あらましです。
  25. 曾禰益

    曾祢益君 大体軍事関係はそれくらいにしまして、領土問題について一点だけ伺いたいのですが、或いは少し機微なことになるかも知れませんから、御検討の上御回答を願いたいと思います。  ポツダム宣言を受諾した日本としては、領土の処分に関してカイロ宣言が適用される以外に、いわゆる四大国がきめるところの、まあ本州、四国、九州、北海道以外については四大国がきめる、その他の島嶼に限られるというふうに書いてあるわけです。これは日本がポツダム宣言を受諾した以上は講和会議の際にも、これに拘束力があるというふうに見るべきでなかろうか。併し他面連合国としては連合国の共同宣言という一つの文書によりましてみずからが領土の拡張を求めない、又領土の変更については住民の自由意思によるものと、かような原則を認めておるというふうに思うわけであります。従つて私の解釈では連合国が、否四大国がこれらの諸島嶼をきめるという決定権が四大国にあることは、我々の義務であり、我々の承認したところであります。併し今度は連合国側としてはそこに連合国共同宣言による一種の日本に対する義務ではないでありましよう、日本がこれを運用するということは或いはできないかも知れませんが、そこに一つの自制と申しますか制約と申しますか、そういうものがあるのではないか、こういうふうに考えるわけですが、それは一体どういうふうに解釈するのが正しいかということについてお考えを承わることができれば伺いたいと思います。
  26. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 領土問題につきましては事の性質上極めて機微の事柄でございますので、お答え申上げることを勘弁さして頂きたいと思います。曾祢委員のお言葉はよくわかるのでありますが、私どもとしては差控えたほうが一番いいと思いますので、御了承願います。
  27. 曾禰益

    曾祢益君 最後に一点だけ伺いたいと思います。賠償問題と占領軍費との関係ですが、一般的には占領軍費が賠償に優先するというのが一つ国際的の慣例といいますか、国際法といいますかさようになつておると思うのですが、そこで日本に対する賠償問題がございまするが、実は占領軍費が先取りだ、これすらも終息されないのに、賠償を拂うということは、これは到底拂えない。これが私は現状じやないかと思うのです。そこで占領軍費として如何なるものが日本に終息的な負担となるかということは極めて機微な問題だと思いますが、従来の先例、一般の国際法の解釈から見て、例えば終戰処理費、これが日本の負担であるということがはつきりきめられることは、これは止むを得ないと思います。それ以外に占領費としてどういうものがあるか、例えばガリオア、イロア資金というものは占領軍費なんだ。更に又終戦処理費についてもこれは非常に日本から……連合国軍から見れば少し身勝手な言い分と見られるかも知れませんが、この終戰直後の占領と、その後五カ年ばかりに亘る占領とは随分関係が違つておる。ああいつたような実質的な平和的な関係に立つたときにすべての日本が支拂つたものはすべて日本の占領のために使つたと見られる。かかる終戦処理壷や、或いはガリオア、イロア等が全部が日本の当然の負担となるというふうに考えるべきであるか。これらの点についても先例上からどういうふうに考えておるか。つまり言い換えるならば占領費として日本が支拂うべきものの範囲、程度等は先例から見てどの程度であつたらよいかという問題についての御見解を伺いたいと思います。
  28. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 占領費と賠償との関係については曾祢委員のおつ上やる通り、占領費が賠償費に優先すると、こういうふうに考えております。先例によりましても、対独平和條約の第四百何條でございましたかに「第一順位は休戰條約に基く占領費、第二順位は平和條約後における占領費、第三順位として本條約又はその附則の條約に基く賠償債務」とありますように、従前とも占領費というものは、先ず第一に敗戰国が拂わなくちやいかん、そのあとに賠償を拂うというのが大体先例となるように、日本でもそういうふうに進むべきものと考えております。  次に第二の問題の占領費というもののそれでは範囲如何という点になりますと、全く、いわゆる先例と申すものもございませんし、又具体的内容は現実に日本に対して占領軍を派遣しておる国の予算の内容の問題でございますので、そういう資料を一切持つておりません我々としては如何なる範囲のものが占領費として考えられておるかということについて判断を下だす資料を持つていないのであります。  それからイロア、ガリオア資金というものが占領費の中に入るのか、占領費とは別の、いわゆる戦後債務というものであるかということについても、連合軍のほうにおいて、殊にアメリカのほうにおいてどういうふうな見解を持つておられるかということについても私ども承知いたしておりません、ただ私どもとしては、総理や大蔵大臣が数回言明されておりますように、イロア、ガリオア資金に基くものが、これは債務であつて、これは必ず支拂うという意思があるのだということはしばしば言明されておる通りであります。その具体的條件如何ということになりますと、それは先日も大蔵大臣が予算委員会においておつしやつた通り、講和條約が結ばれて初めて具体的にわかることであります。
  29. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) ほかに御質疑  はございませんか。
  30. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 一つ二つお尋ねしたいと思うのですが、第一番は今度のアメリカの案の七項目の中にあります琉球、小笠原を信託統治に付するという案、あの中にはそれが果して戦略基地とするのかどうかという点は明示してないわけでありますが、ダレス氏がおいでになつた際に、そういう点について向うからなりこの説明があり、或いはこちらの質問によつてそのいずれにするかということがわかつておるかどうか、その辺のところを……。
  31. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 今度の会談の内容につきましては、一切口外することは差控えねばならない立場にございますので、イエスともノーとも申上げない引込むことをお許し頂きたいと思います。
  32. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それではこの信託統治区域にするというのを前提にして、日本側の或る方面では一つの希望として、これに一定の期限を附して、その後の日本領土にするということを希望として述べた向きがあつたように思うのでありますが、信託統治制度そのものの趣旨からするというと、そういうことはちよつと私には考えられんように思うのですが、その辺のところを一般の信託統治制度の解釈論としてはどういうふうにお考えになりますか。
  33. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 正面から御答弁を申上げるのは差控えたいと思います。ただ先例だけを御説明申上げたいと思います。信託統治協定は十一ございまして、第十一番目はまだ発効しておりませんが、十はすでに発効している。十については期限の規定は全然入つておりません。近く発効するはずの第十一番目にだけ初めて十年という期限があります。十年が過ぎれば直ちに独立をするという規定が入つております。
  34. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 その意味の期限はわかるのです。併し又元の国の何に復帰するという点が私にはわからない。信託統治制度のその辺のことを……。
  35. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) その辺のことになりますと、私は答弁できない立場にございますので、ただ先例だけを御紹介申上げました。惡しからず……。
  36. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 もう一つ日本の南洋委任統治区域はすでに戰略地区として信託統治の下に置かれておるわけでありまするが、日本側から見た場合に、これがいつ如何なる法的原因によつて信託統治区域に対する日本の権利は消滅したと解釈しておられるのですか。
  37. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 恐らく将来でき上る講和條約がそれに対して解答を與えてくれるかと思つております。
  38. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 これも今まで南洋委任統治区域に対して、実際上の施設関係だけでなく、法律的にも一つの法律制度というものがそこに設定せられておつたわけですが、それに対する日本の国内法というものはまだ整備されていない、形式的にはまだ現存しておりまするが……。
  39. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) その関係は台湾、朝鮮、関東州、樺太、その他外地関係のものは現存いたしております。
  40. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 これは一般原則、抽象論、法理論として言うのですが、南洋委任統治区域に対して日本が何らかの権限を持つていたということは疑問の余地はないのですが、そういう権利の処分については事柄の性質上これらの処分をするという場合には、国会の権限との関係、これはどういうふうに考えておられるか。
  41. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) ですから、その御質問に対する御答えも将来で身得る講和條約が回答を與えましようというところに含まれておると思います。
  42. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それでは、もう一つ、ダレス氏の会談の後に発表されたものの中にもあつたのですが、個別的及び集団的の自衛権ということがあつたと思いますが、個別的の自衛権のほうけ従来確立された国際法上の原則としても認められることと思いますが、いわゆる集団的自衛権というものは必ずしも一般国際法上からすると、明確には確立されていなかつたように私は解釈しているのですが、国連憲章によると、それを、固有の、ということで特別の條約に基かずして、それが一般国際法上は当然に存在しているというふうに、明らかに解釈される條文もあるわけですが、今度仮に講和條約などで個別的及び集団的自衛権を日本にも認めるといいますか、そういう趣旨規定が置かれるとして、それは集団自衛権のほうはそういう規定が置かれて、初めてそれが認められるということでは……、つまり講和條約によつて創設されるというふうに解釈されるのでありますか。
  43. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) その点は前回曾祢委員の御質問に対してお答えしたときにちよつと触れたのでありますが、やはり憲章の提案者は国家固有の権利としての集団的自衛権という観念を以て作つたというふうに私ども考えるわけであります。無論杉原委員のおつしやる通り、個別的自衛権ならば国家固有の権利として従来どの学者も承認しておりましたが、集団的自衛権というものはいわゆるそれに言及した学者もなくて、サンフランシスコ会議でできましたこの国連憲章の五十一條の中に初めて現われた、術語になつた、これはもう現実の事実であると思います。従つてその憲章ができたあとの国際法学者は、この集団的自衛権というものを如何にして理論付けるかということについていろいろ研究をしておられるようであります。日本でも横田先生が一つの論文を発表されたことはございます。又最近入つて参りますいろいろな国際連合憲章の註釈書だとか、或いは新らしい国際法学者の著書を見ましても、直接集団的自衛権というものの本質如何というような問題に触れている文献がないので、実は非常にがつかりいたしておるような次第であります。
  44. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 もう一つ、これは全然別個のことをお尋ねしたいのですが、例の在外公館の借入金の支拂のために必要とする具体的の措置、法律とか予算措置、これはこの間の国会でも希望の決議もあつたわけですが、それがどういうように進んでいるのかどうか、ちよつとお伺いしたいと思います。
  45. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 在外公館の借入金は終戰後相当期間が長くなりまして、従つて借上げた、約二十一万件くらいあると思いますが、一昨年の国会で御承認を願つた審議会設置法によりまして、昨年の春までにその貸したほう、提供したほうは申請をするということになつて、それを整理いたしまして昨年の暮に大体二万件余りの確認書を出したわけであります。それが主体別にいたしますと約七百主体ありました中で九十三主体だけは約二万件の範囲で一応確認書を発行済であります。来月の終り頃に大体又二三万は確認書が出せる程度の準備を進めております。大体十四万件くらいが一応全体の整理をいたしました中では該当するのではないか、あとは非該当と思われるものが大分ありまして、その一部分は最も愼重に資料等を調査しないと判断に苦しむというようなものであります。従つて残りのものに対しましても確認書だけは成るべく早く出すというので現在進んでおります。大体二カ月日目くらいには、今申上げた程度の数を確認書として出したい。そこで問題は、確認書の整理はそういうふうに着着と進んでおります。これは早く確認書だけでなく、支拂か何かの形で開始したい。そこで前回も実は政府の方針といたしまして、今国会に支拂に関する一つの新らしい法律を出して、二十犬年中に支拂のできるような方法を講じたい。こういう一つの方針をきめまして、今案はその法律案の作成に熱中しているような次第であります。できますならば今回の会期に、近い機会に案がまとまれば出したいというので進んでいるのであります。併し或いは委員会等を設置しまして、一体幾らの換算率で行くか、随分いろいろ地域によつて種類が違つておりますから、それのレートの設定というようなものが大変困難を感じております。従つてあの審査会設置法の趣旨が、これだけは別な取扱でやつて行こうというので、ほかとは別にああいう設置法を作つて、そうして借上げ金の措置をして行こうという方針をとつたのであります。いろいろ在外資産等の問題もからむとは存じますけれども、これだけは別にして行きたいというので、今急いでいるような次第であります。
  46. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今ので大変よくわかりましたが、法律案のほうはそういうふうに折角進んでいるが、それに伴う予算のほうはどういうふうになつておりますか。
  47. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) それで実は法律案によりまする何かの方法で換算率をきめてかかりませんと、予算がそのまますつととりますと、或いは二百万円とか、或いは切りようによつては百万円とか五十万円とかいうふうなことで、予算の措置がちよつと現在では困難であります。先ずそれによつて換算率をきめて、そうすればすぐ予算ができまして、それによつて予算的措置を講じて行こう、こういう順序で行きたいと思つております。
  48. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そうしてその法律案のほうも、予算措置のほうも、政府側の努力目標としては、その時期はこの国会中に国会のほうにかけるというようなところまでを見ておられますか。
  49. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) できるだけ第十国会に一応提案して二十六年度中に支拂を開始したいという目標です。
  50. 團伊能

    ○團伊能君 先日、ダレス特使と吉田総理の間に、アメリカ、カナダ及びコスタリカ間にある五つの條約につきまして、その條約に語われた範囲に対して、大体日本の漁船を入れないというような、御両所の書簡が取交されておりますことは、この書簡が取交されたことは我々も開いておりますが、これは将来漁業條約というものに無論参加するのでございましようが、又新らしく條約が作られるでございましようが、これらのことは首相とダレス特使との間に取交された私的の書簡とは考えますが、健際上におきまして将来の條約に対しまして相当重いコミットが行われたものと考えましてこれらを又改変することができず、又将来の條約の一つの見本が提供した約束という形になつて参りますが、これにつきましてこの書簡について外務省は書簡の性質につきましてどういう工合にお考えになつておられるか、伺いたいと思います。
  51. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 今度の会談の性質それ自身が又ネゴシエーシヨンではなく、コンサルテーシヨンだというようなことを聞いておりますが、併しそのコンサルテーシヨンの中でお互いに取交された意見などは全くプライベート、團委員のおつしやる私的のものではないと私たちは考えますので、その一環としてダレス大使と吉田総理との間に取交されたあの書簡は発表されました原文にもございます通り、総理大臣吉田茂からダレス大使宛の書簡になるのであります。従つてどもは何と申しましようか、オフィシャルな文書であると考えております。プライべートのものではなく、プライベートに対するオフィシャルという言葉がありますが、オフィシャルなものだと思います。その内容はあの文書その中にもありますが、平和條約ができてあと日米の間には漁業協定をできるだけ早く結びたい、併しそれまでの間、言い換えればその協定ができるまでの間国際的権利を放棄しないで云々、一方的にこういうことを自制的に取上げて行こうということが言つておる事柄でありまして、お読みになりますればおわかりになりますように、いわゆる約束という性質のものではなく、日本政府が全く自発的に暫定的にアメリカとして関心を持つ漁場に日本船が出ないように自制いたしますという全く紳士的約束と申しますか、普通紳士協定と言いますが、従前まで移民問題についてアメリカとの間にございましたいわゆる紳士協定というものに当ると思います。尤も紳士協定というと、約束のように思われますが、決して約束ではございませんで、飽くまでも一方的に自制するという趣旨のものでございまして、そうして書簡の中にありますように国際的権利は全然放棄しないで、そうして條約のできるまでは自制いたしたいということでございますので、いわゆる将来平和條約ができたあとの日米間の漁業協定締結のときの話合いに対して非常な大きな、何と申しましようか、コミットという字をお使いになりましたが、それになるものとは決して存じませんので、むしろ将来における両国間の漁業に対する話合いが友好的に国際協力の精神を以て行われやすいような雰囲気があの書簡によつて醸し出されるであろうし、又醸し出されなければならないと、こういうふうに考えます。
  52. 團伊能

    ○團伊能君 よくわかりましたが、全体にこの間の吉田総理とダレス氏との会談は只今條約局長の御説明のごとくネゴシエーシヨンではなく、コンサルテーシヨンで彫るというその線によつての一部と思いますが、併しながら実質的におきましてこの漁業協定の、取交された書簡のごときは一つ日本の政府としての大きな意思の現わしであるという点から考えまして、これから講和会議に向いまして、いろいろ重なつてつて参るでしようと思われる、そういう條約の一つについてのいろいろな日本意思を表現し、又これを行なつて行くような、起つて参りますことにつきまして国会との間の関係をもう少し御説明願いたいと思います。
  53. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) それではあの漁業に関しまするダレス、吉田両方の往復文書と申しますか、まあ俗に申しましたら紳士協定、往復文書は今條約局長が申上げましたように、私ども條約とか、或いはそういう意味じやたしに、或いは憲法に書いてある條約乃至協定というような意味でなしに、只今の説明にありましたような意味考えておるわけでございます。従つて今後條約とか協定とかという問題は、当然国会の、それぞれの憲法によります規定によつての処置をとる、そうして進んで参る。これは十分国会に、或いは事前事後にそれぞれ御協賛を願つて進んで行くという方向をとつております。あの往復文書も出ましたし、それから最近国会に国際捕鯨條約等もお願いを申上げるという順序にいたしておるのであります。
  54. 團伊能

    ○團伊能君 只今政務次官の御説明はよくわかりました。條約或いは協定のごとき公的に国会の審議を終るという問題は、勿論そういう手続はあると思いますが、実際上にそれに等しいような形、或いは実際の効力を持つもので、條約或いは協定にならずして起つて来る多数の問題があり、それが結局におきまして條約となり、そのときはそういう約束によりまして條約それ自身が動かし得ない形になつて、結局それは形式的な條約になるということと存じますが、その條約及び協定を作る過程にあるものにして、而もこれが国会として考えなければならない問題もあろうかと存じますが、そういう問題に対して将来のお取扱につきまして、成るべく国会に一応の御説明を承わる機会を作つて頂きたいと思いますが、その点について伺いたいと思います。
  55. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 殊に新憲法下におきましては国会を十分、国会の意思によつて行動するということは当然でありますので、方法のとられる限り、又当然とるべきものはお説のように進めて参りたいと存じております。
  56. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) ほかに御質疑は、ございませんか。……ほかに御質疑がなければ本日はこの程度で散会いたしたいと存じます。散会いたします。    午後三時四十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     櫻内 辰郎君    理事            曾祢  益君    委員            杉原 荒太君            團  伊能君            加藤シヅエ君            伊達源一郎君            西園寺公一君   政府委員    外務政務次官  草葉 隆圓君    外務省政務局長 島津 久大君    外務省條約局長 西村 熊雄君   事務局側    常任委員会專門    員       坂西 志保君