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専門員(
古谷善亮君) この
法律案は新規な
制定法案の形をと
つておりますが、実は
現行道路運送法の
全面的改正でございます。この
法律案は全部で十章百三十八条及び
附則からなる極めて大部のものでございますが、
省令等による
現行制度を
法律化し整理いたしたものもございまするし、又最近の
民主的立法側によりまして、従来の
行政方針を
立法化いたした点もございます。全体が
立法として新しい
思想の下に構成されたというものでもございません。従いまして御
審議なさいますに当りまして若干御
参考になる点を申上げておきたいと思います。
第一は先ず第一条でございますが、第一条はこの
法律の
趣旨原則を闡明しておるのでありますので、非常に重要なものでありまするが、このうちで「公正な競歩を確保する」という
言葉が出ております。これはすでに
委員の
皆様のお
手許へも、いろいろ
意見の
開陳等を要する向もあろうかと思いますので、御
審議の御
参考に一言申上げますが、最近の
通運事業法におきましてもやはり同様な
言葉を
使つておるのでございます。この結果
如何にも一
路線に数
営業者、即ち
複数業者を
免許いたすかの印象を與えまして、
業界を刺戟しておる点もあろうと思うのであります。そこで私
どもこの
法案を下調べいたしますに当りまして、特に
政府の御
関係の向に御質問いたしましたその結果を申上げますと、
政府の
関係官の
お話では、およそ
自動車の
免許は
免許基準によ
つて與えられておるのである、
従つてその
申請箇所の状況によりまして、或いは
交通の
需給関係を見まして、
免許いたしました結果がたまたま一
路線一
業者のみ許せば足りるという場所も起
つて参りましようし、或いは
需給関係におきまして
複数業者になるような結果を見るようなこともあろうと思われるという御回答でありまして、こういう
言葉が出ておりますために、必らず数
営業者を併立させて、そこに
競争を惹起させて公正な
競争を確保するという御意図を持
つているという正面からの
お答えではなか
つたのでありますが、どこまでも
免許は
免許基準によるという
政府の
お答えであります。
次に問題になる点だけを申上げます。第二章の
自動車の
種類でございますが、これがこの新らしい
改正案によりまするというと、大きな
改正の
一つの眼目にな
つております。従来四
種類ございましたものを今度六
種類に分類されたのでございます。この中で
一般貸切旅客自動車運送事業というのがございますが、これは簡單に申上げますと、結局
大型観光バスでございまして、皆さんすでに毎日殆んど御覽にならない日はないと思われるくらいこの国会の周辺に参
つておりまする
大型貸切自動車又は
観光自動車とも呼ばれておるものであります。これが独立の
事業形態をこの
法律に持たしたという点であります。この観光
バスなるものにつきましては、従来いろいろその効用又は他の
交通機関との
統制等につきまして論議された問題でございますので、これの
免許方針その他につきましては十分御
検討を煩したい点と
考えております。
次に大きな問題を申上げますと、
運賃でございますが、
運賃といたしましてこの
法律が新らしい
思想といたしております点は、
運賃の
定額制と現
拂い制の確立という点でございます。これにつきましてはこの
法律が新らしく認めました
一つの新
思想が盛られておるとも言えるのでございまして、この点も十分御
検討を煩したい点と存じます。由来この
バスに限らず
自動車運送事業というものにつきまして、私
ども学説といたしましては、本質的に
独占企業形態には弱いものだと
考えております。従いまして
独占企業形態の下において
独占価格を成立いたしまするよりな点は、野放しにしておきますれば崩れがちのものであるというふうに見ておりまするのでありまするが、それをこの
法律を以ちまして
運賃の額並びに
支拂方法を定めましてこれを統制するということになりまするので、実際問題といたしまして、いろいろ論議が出て参る
余地があろうと思います。
業界の意向といたしまして、一番直接
関係があると思われました
トラツク協会につきましてこの点を調査いたしましたところ、
トラツク協会におきましては
賛成の意を表しておりましたことを一言附加えておきます。
次は
自動車道でございますが、
自動車道と申しますものはこれは
現行法規にもございますが、将来におきましては従来の
賃取り道路の観念を離れまして、
日本の
道路が現在の
日本の
政府の予算におきまして、管理が遅々として進んでおりません現状におきましては、或いは将来こうした
民間企業によりまするところの
道路事業というものも予想されるのではないかというような点、殊に
観光地帶におきましてそういう点が予想せられるのではないかというようなこと、又は
地方鉄道等が
自動車運送に切替えまするような気運が或いは出て来るのではないかというような点、いろいろ
考え併せますというと、従来あつた
規定をただそのまま入れたということのほかに、そういう新らしい面におきましてやはり一応御
検討を願う必要があろうと
考えられます。
その他細かい点並びに
字句の用語上の表現の
方法等につきましては若干調べた点もあるのでございますが、これはまあどちらかといえば細かい
事項に亘りますので、ここで申上げる必要もなかろうと
考えております。ただ折角
全面改正をなさいますならば、もつとこういう点を入れたかつたと思われます点は、大きな問題として二、三
考えられるのでありまして、その点を
政府当局にお伺いいたしましたところ、それらは別の
規定にありますか、或いはこの
法規の
関係法令の
省令で以て
規定すべきものであるというようなものがあるのでございまして、
自動車運送の
総合法規たる
精神を持ちたいこの
法規におきましては、
只今の
自動車に対しまする
行政官庁の権限の
分野等から見まして、そういう点が十分にこの
法規の中に表現できない憾みがあるのでございます。まあその
一つだけを申上げますと、要するに
自動車の事故に対しまするところのいろいろの
規定を整備したいという気持があるのでありまして、その一例は、例えば
運転手の資格とか試験とかいう問題であります。これは海のほうの
関係では過般御
審議願いました
船舶職員法に詳細な
規定が盛られておりますと同じように、この
自動車のほうにもあ
つて欲しいように思
つたのございますが、これは
道路取締法及びこれに基く
道路取締令に詳細な
規定がございまして、この方面が欠けております。ただ二十七条に年齢の制限が書かれておるに過ぎないのであります。それからなお
運転保安に対しまする面から見まして、極く卑近なことを申上げますならば、踏切りの前で一旦停車しろとか、或いはドアエンヂンを整備するとか、ブレーキの点でありますとかとい
つたような事柄は、何か私たちに
自動車法を作ります際にはあ
つて欲しいような感じを持つ
事項なのでございます。これらはいずれも先ほど申上げましたように、この
法律の
附属命令若しくは他の
法令によりまして整備された
事項であるということであります。
なお最後に現在どのくらいの
運送事業者があり、どの
程度の人を運んでおるかというような現況につきましては、恐らく
資料を整えなければならんと思いましたので、
政府に
お話いたしましたところ、お
手許に差上げました
説明資料でございますが、それの末尾に全部出ておりますからしてどうぞそれを御覽願いたいと思います。又特に
政府にお願いいたしまして、いやしくも
全面改正でありますから、
新法と
旧法というものがあるわけでありますが、そこで
新法と
旧法の細かい点は省略いたすにいたしましても、大きな狙いどころの新旧の対照になるようなものが用意されなければならないと
考えまして、それを揃えてございますので、
只今御配付申上げますので、どうぞ御覽を願いたいと思います。なお細かい点につきまして御
審議の途中で、お許しを得まして申上げるほうが御
審議の御
参考になると思いましたならば、機会を得まして申上げますが、この
程度にいたしておきます。この前も申上げましたように
政府との間の問答につきましては、極めて非公式に極く懇談的にやりましたので、或いは私が
政府の
言つておられましたことを誤解しておる点もあろうかと思いますが、そういうような点につきましては或いは
政府で適当に補正いたして頂きたいと思います。