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説明員(
秋山竜君) 最近の
海運事情について
説明をしろということでございましたので私からかいつまんで
お話をいたしてみたいと存じます。この
資料がお
手許に届いておらんそうでございます。誠に残念でございますが、多分印刷が
ちよつと間に合わなか
つたかと存じますので後ほどお
手許へお届けいたします。
先ず休会前の国会におきましては、
外航船腹の
増強に関しまして御
審議を頂き、我々
政府当局を御鞭撻下さいまして誠に感激いたした次第でございます。その後御
決議の線に沿いましていろいろと
努力をいたした次第でございます。先ずかいつまんで申上げて見ますと、これは
資料がありますと非常によくわかるのでございますが、私
ども船腹は
戦争が終りましたときに七百九十六隻、百三十四万総
トンの船と名のつくものは
残つたのでありますが、そのうち使用し得るものは僅かに四百五十二隻、七十四万総
トン、こういう姿であ
つたのであります。そこで我々といたしましては破損しております船の大修理をいたしましたり、或いは沈んでおります船を
引揚げたり、或いは
改造いたしましたり、或いは
戦争中から造りかけておりました
戦標船の
完成をいたしましたり、あらゆる
努力をいたしまして
船腹の
増加を
図つたのであります。一九四九年でございますから二十四
年度までは主として
国内船の
増加に
努力いたして参りまして、二十四
年度初頭には六百九十一隻百二十九万
トン、約百三十万総
トンの船を持つことができたのであります。その年から
外航船の
整備を始めましたものですから
外航船の
整備が甚だ遅れておる
現状でありまして、本年の四月一日には
外航船は百二十一隻、八十二万、今年の暮でございます。今年の四月一日には百八隻、六十三万総
トンでございます。これが本年の一九五一年の暮の現在の
計画が全部
完成いたしまするというと、二百四十一隻百五十四万総
トンになるような
テンポでや
つておるわけであります。この表はのちほど御
手許にお配りいたしたいと思
つております。そういうようなことでございまして、そのためには現在の御
決議を受けましてからのちには、
規定計画の中で例えば第五次船の
新造として
船台に載
つておりますものの
完成を急ぎましたり、或いは第六次船の
計画を進めましたり、或いは第七次をすぐにや
つたりいたしましてつまり非常に期間を詰めまして
計画を進めたわけであります。例えば第七次船の前半は
輸送船が三隻、二方四千
トン、
貨物船は二十六隻、十七万九千四百
トン、約十八万総
トン、合計二十八隻、二十万総
トンの
新造計画で、
資金総額は二百五十六億円、うち見返
資金百八億円ということで
只今進行いたしておるわけであります。そのほかになお
外航船として今まで
船級のないまま
外航に従事いたしておりました
輸送船が十二隻、
貨物船二十一隻、二十六万総
トンの
改造をも進めておるのでございます。なお
買船につきましては本年の春に
閣議決定をいたしまして、大体
年度中に二十杯くらいを入れてみたいと考えてお
つたのでありますが、このほか非常に成績が、
関係者が熱心でございまして二十六隻十五万
トンの買入れを許可いたしたのでございます。これが
円資金につきましていろいろと問題がございまして、
政府といたしましても一方ならん
苦心をいたしたのでございますが、皆さんの御
声援等もございましてようやく今日融資は全く解決をいたしまして今や
引渡時期の来るのを待
つておる次第でございます。すでに引渡を完了いたしましたものが六隻三万一千九百
トンあるのでございます。
只今最も困
つておりますりは鋼材の値上りの問題でございまして、七次船の
計画をいたしまする場合には大体四万九千
トン、一
トン四万九千円
程度の
価格を以ちまして一応の
目標価格として
計画を進めたのでございますが、最近は五万二、三千円どまりということでございまして、或いは又少しく上るのではないかという声もございまして、その点から
造船価格の
高騰従つて追加資金の需要ということが起りましていろいろと
苦心をいたしておるのでございます。併しながら見返
資金にはもはや変更の余地がありませんので、この分はどうしても各
会社におきまして
市中銀行から調達して頂かなければならないと思
つておる次第でございます。幸い
只今まで調達に非常に困難であるからというような声は一応聞いておらないのでございます。これが
船腹増強対策の
進行模様でございまして、
我が国の
造船の
能力からいたしますると恐らく本年の秋から冬の初めにかけまして、
只今船台に載
つております船が逐次進水いたしますると兵に、
能力の過剰を訴えまして次の
新造ができ得る
事態になる、その時期にはなんとかしてもう一度、七次の後半というふうな言葉で呼ばれておりまするが、そういうような
造船計画を実現しなければならないと考えておるような次第でございます。
それからいずれ
資料で申上げますが、
海外の
運賃状況は去年の暮から今年の三月にかけまして異常な
高騰をみたのでございまするが、三月から四月、五月にかけましてはやや弱
含みの
横這い状況でございます。一部
上つたのもございますが概して弱
含みの
横這い状況でございまして、一応
世界の
船腹状況も安定しているかに見えるのでございます。今後の
状況に関しましてはいろいろの
見方がございますが、
アメリカの
予算が特に
軍事関係の
予算がどういうような規模にきまりますか、或いは又
欧洲方面の
イギリス等を主とします
欧洲諸国の
予算がどういうふうにきまりますかとい
つたようなことが
世界の
海運界に
相当大きな影響を持
つて来るように見られておるのであります。
従つて将来の
状況に対しましても高いという
見方が少し弱いという
見方よりは多いようでありますが、併し又マーケツトが硬くなりますれば、
アメリカにおきましてはこの前やりましたような
リバテイ船の解除とい
つたような問題もとられるのではないかというふうにも考えられるのでございまして先のことはなかなか予測しがたい、こういうのが正直なところであろうと思うのであります。
国内の
運賃でございますが、
国内の
運賃は昨年
朝鮮事変の勃発前後が一番底でございまして、例えば
北海道炭の
小樽京浜は
トン当り五百二十円というのが底値でございまして、その後多少の高下がございましたが現在ではこれが一千十円という
程度に相成
つております。それから
北海道の木材でございますが、これも一番悪い底は百七十円でございましたが現在四百三十五円という
程度でございます。それから
九州炭の若松、阪神は三百七十円でございましたが現在五百二十円
程度にな
つております。総じて
運賃は丁度統制を解除いたしました前後の4
運賃程度に復活しておる、こういうような状態でございまして、内航だけを営んでおる
会社もどうにかや
つて行けるという
程度ではないかと思うのであります。
それで
従つて輸送状況の方を見ましても
朝鮮動乱を契機といたしまして非常に荷
動きが活溌にな
つておりまして、内航で見ますると、六、七月頃約
内航貨物百万
トンと称されたのでございますが、その後逐次上昇をいたしまして十月頃から百五十万
トンを唱えるに至りまして、十二月百六十六万
トン、一月百六十八万
トン、三月百六十五万
トンというように大体百六十五万
トンから百七十万
トンの線を上下いたしておりまして、この
数字は内航の
輸送実績といたしましては
終戦後
最高のものでございます。
外航の方におきましてはこれも二十万
トンから三十万
トン前後を動いておりましたのですが、今年の三月には四十二万八千
トンという
数字で初めて四十万台の
数字をみておるのでございます。従いまして船の
遊び工合は非常に改善されまして、御制定を得ました低
性能船の買上の措置と相待ちまして、昨年の十月には
繋船行五十一隻、五十万
トン、こう申しておりましたのでありますが、現在ではた
つた十四隻、三万三千
トンが
繋船されておる、この三万三千
トンは修繕のための
繋船である、
従つて実際問題といたしましては働き得る船はすべて働いておる、こういうような
状況に組成
つておるのでございます。
遡りまして恐れ入りますが、
只今お
手許に
海外運賃に関する
調査、
用船料に関する
調査等の
資料をお届けしたと思うのでありますが、その
海外運賃のところを御覧下さいますると、大体一、二月あたりを
最高といたしまして逐次
横這いをいたしておる
状況が明らかにな
つておると存じます。
それから次に
日本船の入
出港許可の
状況でございますが、入
出港許可の
状況は非常に進捗をみまして、
世界の大多数の国々から無条件の
入港許可を得ておるのでございます。
特定物資の積取だけに入
出港を許可されておりますつまりブランケツト・クリアランスのない港は、マレーの諸港、ボンデイシェリー、これは
インドでございます、樺太、サンサルヴアドル、イラン、台湾、ボルネオ、イラク、ビンタン島、こういう所でございます。それから全然積荷のための
入港が認められませんで、単に燃料と水の補給だけが認められております港がケープタウン、ダーバン、香港、シンガポール、こういうことにな
つておるのでございます。たしか
イギリス本国はまだ来ておらんと思います。というような
状況でございましてまずまず
イギリス方面以外は比較的自由に船が出せるように
なつた、こういうような
事態でございます。
それから
定期航路につきましてもいろいろとGHQを通じてや
つて貰
つておるのでありまするが、
只今まで許可されておりまするのは先ず琉球の
定期航路、それから
パキスタン、
インドの
航路、それから
南米航路、
バンコツク航路、これだけが一応
定期航路に認められておるのでありまして、次に問題にな
つておりまするのが
北米、
ニューヨーク航路であります。それからあとは
インドネシアとい
つたような
方面でございまして、その他も逐次許可されて来ると思うのでございます。
インドネシアの
航路につきましては、
インドネシア方面の
海運同盟が多少
イギリス方面の
海運同盟と違
つておる点がございまして、今までの
海上運送法ではどうしても
工合が悪いのでございまして先ほど
官房長が大臣に代りまして
提案の御
説明を申上げました新らしい
海上運送法の
改正が行われますれば非常にその
関係の矛盾が調整されると思
つておるのでごげいます。これが大体事務的な現在の
海運状況に関する御報告でございますが、これに附加えまして諸
外国の
日本海運に対する
考え方、感情とい
つたような問題があるかと思うのであります。
海運は
国際関係を持ちます
一つの第一線でございまして、これが復活或いは進出に伴いましていろいろと国際的な
関係が起
つて参るのでございます。先ず
講和条約の
草案におきましては、
ダレス草案につきましては
海運に関する
制限は全然謳われておらないのでございまして、
関係方面では大体そういうような方向で進まれるのじやないかというふうに見ておるわけでございますが、その間いろいろな
動きがございまして、特に
英国側からは
造船能力を
制限してはどうか、こういうような
提案が行われたようでございまして、我々も非常に関心を
払つてお
つたのでございまするが、最近の新聞紙の伝うるところによりますると、この要求は緩和されるか或いは撤回されるのではないかというようなことが伝えられておるのでありまして誠に喜ばしく存じておる次第でございます。なおそれと時を同じくいたしまして、
アメリカの内部におきましては
在郷軍人団、それから
プロペラクラブ、
ミシシツピイヴアレー協会或いは
米国海運全国連盟、
船主協会であります。
米国の
全国の
船主協会等九つの
団体でございますが、その他CIOもあ
つたと思いますが、その
団体が
大統領に手紙を送りまして、
日本海運の無
制限拡張に
反対だという陳情を行な
つたのでございます。この
反対の
要旨は、
日本海運を急速且つ無
制限に拡張せぬこと、即ち
日本の
産業及び
貿易の
現状に調和がとれた漸進的なものにすべきである、それから
日本海運の
増強が見返
資金でされておるということは
米国納税者の負担で行われておるのであ
つて、
日本海運が無
制限に拡張されるということになると
米国の
海運と全画的な
競争を起して来る、
従つて米国海運が犠牲になる虞れがあるというようなことが大体
反対論の
要旨でございます。こうい
つたような
動きを受けまして先般
上院議員の
マグナソン氏が
日本に来られたのでございます。
マグナソン氏は的確に如何なる
考え方を以てどうしようということを話されたわけではございませんが、大体いろいろ述べられた思想の根本はこの九
団体の述べておりまする
反対論が頭の底にあ
つたように考えられるのでございまして、私
どもといたしましては、お
手許に差上げました
日本海運に関する
明書と申します書類にございますような
資料を提出いたしてみたのでございます、この
日本海運に関する
説明書というものは、正直に今日まで
日本海運が歩みました足取を書いておるのでございまして、先ず
別表第一、それが私が先ほど御
説明申上げました表でございまして、
終戦直後の一九四五年の十二月に幾らの船があ
つたか、その内容においてどうであ
つたか、それからどういうような
方法で殖えて来たか、例えば
引揚修理であ
つたか、或いは
改造であ
つたかとい
つたような、どうい
つたような
方法でどれだけの
稼動船腹を
増加したか、それからいつから
外航を始めたか、こういうことを
説明いたしておるのでございます。いかに
我が国が無
制限拡張というような
考え方ではなくして、非常に秩序正しく、先ず
手許の必要を満たし、それから後に
我が国の
経済の
再建、大きな意味の
経済再建、つまり
国際海運に乗出したか、その
テンポはどうであ
つたかというような
事柄、
我が国海運回復の足取りを示したものでございまして、それに関する簡単なる
説明を附加えてあるのでございます。それで無
制限拡張であるかどうかという問題につきましては後の方に十、十一、十二というところの三つの表がございますが、これは
別表にコンバインして御覧頂かないといけないのでありますが、
鉱工業生産指数は、一九五〇年におきましては
基準年次一九三三年から一九三五年を一〇〇といたしまして九七でありますから、約百%に
回復いたしておるのであります。これは
年間平均でありますので、その年の末である一九五〇年の
年度末はすでに一〇〇を突破いたしておりまして、少くとも一一二くらいの
数字が出ておるはずでございます。
貿易量の方を見ますると、その
指数は一九五〇年におきましては三八・二、五一年が五六・八でございましてこれも五〇年のしまいの
数字は四二・三に止
つておるわけでございます。これに対しまして
別表十二というところに、
外国に大
いばりで出られます船、つまり
船級を取得いたしております船がどのくらい
回復したかということ及び将来どの
程度になるかという
数字が出ておりますが、一九五一年二月という
数字を見ますると、九十八隻五十五万七千
トン、それから一九五二年の三月三十一日の予定を見ますと、二百二十九隻、百四十五万
トンでございまして、今年の二月におきましては一七%五六、来年の三月に至りましては四六%七七でございまして先ほどの
鉱工業生産指数の
回復或いは
貿易の
回復に比べますと、まだまだ劣
つておるのでございまして、到底現在の
造船能力だけでは、他の
産業活動或いは
貿易活動に
アンバランスに大きくなるということはあり得ないのだということが示してあるのでございます。なお
別表の九でございますが最近、最近といいましてももう大分になりますが一本年の末から今年の初に行われました
中共方面に依存いたしておりました
重要物資を
北米に切替えましたがために、足が長くなりまして、そのために船が非常に余計要るようにな
つたのでございます。その
状況は
鉄鉱石と粘
結炭と塩と大豆だけにと
つてみましても、切替以前は九万七千
トンの船で二百九十万
トン約三百万
トンの
貨物を運び得たのでありますが、これを
北米方面に切替えますと三十五万
トンの船が要る、差引どうしても二十五万
トン程度はこの
計画よりも船を余計にしなければ我々の考えているようなせめて半分までという
目標も達成し得ないのだ、こうい
つたような
事柄を
説明いたしたのでございます。そのほかなぜ
日本が
商船隊を持たなければならないのかということを
貿易収支の面から掲げてございます。例えば
別表五のごときは、主要な
基本資材につきまして
我が国の
経済における
自給度がどの
程度であるかということを示しておりますが、例えば米は九一%の
自給度で
主要食糧の米におきましても一〇%はこれを国外に仰がなければならない、小麦におきましては
自給率が四四%でありまして五六%は
外国に仰ぐ、その他ゴムとか原綿とかいうものはゼロでございまして、原油におきましてはた
つた一二%、そこにありますようなこういうような
日本は
経済の国であるのだ、
従つて別表の六の一にありますように、
需給計算によりましていろいろと
外貨収支の
バランスを考えてみたところが、
輸出、
輸入、
貿易外収支でこういうふうな
状況になる、漸次改善して行くけれ
ども一九五三年にな
つてやつと二百七十万ドル
程度の
アンバランスが残る、併し一九五三年に対しては現在の
造船計画をそのまま進めなければいけないのだ、こういうようなことがあるわけでございます。そうしてその次に六の二におきましては
貿易外収支の内訳を
説明いたしまして、
船舶関係の
収支がどういうふうにな
つておるかということを示してございまして、
船舶関係の
収支と、それから
国際観光関係の
つまり外国人の本邦における消費、これがいかに
貿易外収支の大きなアイテムであるかということを示してあるわけでございます。例えばこの
貿易の表によりますると、
輸出は全部
FOBでできております、
輸入はCIFでできております、
従つてこれだけの
輸出輸入の
外貨があるならば船は
一つもなくても
差支ないというベースでできておるわけでございますが、その中に
運賃がどれだけ含まれておるかということを、これは
推計でございますが
別表七にございますように、一九五一年の
計画によりますると、
商品貿易における
バランスが一億八千三百万ドルのマイナスでございますが、その中に
運賃は四億五千九百ドルあるように思う。それで一九五二
年度におきましては、約三億五千万ドルの
貿易アンバランスでありますが、
運賃は三億七千二百万ドル入
つてある、こういうような
推計をいたしております。これは毎年末非常な差がございますがそれは
需給計画から来ておる
数字でございまして、
従つてこの
運賃の半分だけを少くとも
日本の船で運ぶということになりますというと、他は
観光収入その他によりましてどうにか
バランスを得るのだ、こうい
つたようなことがわかるように
説明をいたしたわけでございます。これによりまして大体先ほど申述べました九
団体、
アメリカにおける九
団体その他から
大統領に提出されておりまする
日本海運に対する
批判は、
相当に
批判の根底が違
つておるのだということが証明し得たと信じておるのでございます。
それで最後に最も新らしい問題は昨日の
マーカツト少将の声明でございましてその中に、
ちよつとこれは
速記をとめて頂きたい。