○参考人(鈴木清秀君) それではお答えいたします。
委員長から只今御説明のありました点について御説明申上げます。
第一は、条文の法文上のことでありますが、これは私がお答えするよりは、
政府当局のほうでお答えするのが然るべきかと思いますが、この
法律の条文を作成しましたときに、たまたま私
関係の者でありましたから、よく過去の経過を知
つておりますので御説明申しますが、地下
高速度鉄道を整備拡充するためと書いてありますが、これは地下を主とする帝都の高速度
交通網の
完成であります。
従つて法案そのものの題名も
帝都高速度交通営団法と書いてあるのであります。地下を主体とするものであるが、高速度
完成であります。そもそも地下鉄というものは世界の各国を見ましても、地下だけでや
つておる国は殆んど少くて地上と地下と並列しております。殊に終戦後や
つておりますカナダのプロントにおいてもやはりあるのであります。殊に
東京のごとく地形の高低の甚だしいところにおきましては、地下のみにおいてこれをやるということは殆んど技術的に困難であるばかりでなく、経済的にも甚だむずかしい、至難であろうと思うのであります。
従つて私は地下を主体とすればいいものだと解釈しておるのであります。然らば只今御
質問の神田、池袋間において、たまたま地上に出ますところのものは茗荷谷のところから、春日町からあそこの真砂町の坂に入るまでの二キロばかりの区間でありまするが、我々は沿道の
かたがこれを地下にして頂きたいという切実な希望を以て申されておるのでありまして、その御事情は私のほうといたしましても十分わかるのでありますが、併しながらこの全線を地下に仮にいたしますると、本郷三丁目のあたりは百段階くらいの深い地下になります。それと共に全線を地下にするために受けまする工費といものは甚だしくなるのであります。これは結局本郷の台と小石川の台との間に実地があるためだと思いますが、仮に春日町のところのあの本郷の坂を途中で抜けまして春日町へ高架で入
つて来ますれば、本郷の台地、後楽園の台地をやはり堀割で一部分は行く、そうして車庫の用地を仮に今予定しておるところにとりますると、どうしても地上線で行くほか技術的に見ましても、又経済的に見ても、これはやむを得ないのかと思うのであります。ただやむを得ないからと申しましても、それがためにこうむられる沿道のお
かたがたに対しましては、私たちも非常に何と申しますか、お気の毒だと存じますので、これがために土地所有者、家屋の立退きをせられる者の補償はもとより、沿道のお
かたに対しても何らか適宜の筋の通つた
方法はないかと今苦慮いたしておる次第であります。然らば何故に一体これを地下にすることが技術的に困難であるか、或いは収支的に困難であるかということを詳細に御説明申上げたいと思いまするが、時間が差支えなければ申上げます。それは
一つは、先ほど申上げましたごとく、春日町のところを地下にすれば問題は別といたしまして、そのあとでありますると安藤坂のところを地下にしますると、片一方は後楽園、片一方は茗荷谷のはずれ、土地の名前は何と言いますか、そこまで殆んど地下で響くのであります。そうして而も安藤坂の後楽園寄りのところが非常に深くなりますると共に、安藤坂の前後において三十三分の勾配を前後に作らなければなりません。そうしてそれが安藤坂の中が一番低くなりますので水が集中するのであります。
従つて技術的に困難であるばかりでなく、保守的に困難である。その後の運転においても非常に困難なのであります。次に、収支の
資金の面におきますると、四十八億三千万円かかりまするが、そのうち工事費は四十一億六千万円であります。そうしてこの金の中で見返
資金が二億五千万円、
増資が二億二千五百万円ですが、これを出したあとの残りのものというものは、四十三億何がしの金というものは、いわゆる預金部の運用
資金と民間の
交通債券の引受とによらなければならないのであります。こういう大きな
資金を今の現況において獲得するということは、私たちとしては手一ぱいであろうと
考えるのであります。かてて加えてもう
一つ大きな問題は、この四十三億それがしの
資金を得るために債券を発行するのでありまするが、この債券の
法律上の枠というものが手一ぱいなのであります。これは私たちはその債券発行の枠を拡張するために十六倍余の再評価をいたしました。ここにおられるお
かたは
交通事業において
専門のお
かたが多いのでありますから、すぐおわかり下さることと思いますが、私鉄、電鉄
事業において再評価いたしました会社は少いのであります。大体会社においてもいたさないのであります。
東京近郊において再評価をしましたのも五、六倍のところがとまりであります。それを十六倍にいたしまして犠牲を払つたゆえんのものは、この地下鉄
建設に対する債券発行の限度を拡張したいためであります。この四十三億で手一ぱいでございます。ただ手一ぱいだと申しましたのは、二十六
年度、二十七
年度において、手一ぱいであります。二十八
年度でありますると、再評価した積立金を下して
資本に入れますから発行限度が変る、仮に今こうした地域を地下にいたしますると、約五億円の金がかかりますが、これに対する債券は二十八年まで延ばさなければならないのであります。二十八
年度にしなければならない、そうしますと、工事
関係において非常な延びを来たすのであります。ずらさなければなりませんから延びる。仮にこの四十八億それがしの
資金を一年延ばすと、
建設費の金利において三億円の増を来たす。一年延びるかどうかは工事の
方法でありますから言えませんが、大体においてそういうことになります。そういうふうにして
資金の枠において非常にいわゆる
法律上債券を発行するのに困る。第二において収支
関係であります。これは収支
関係をお
考え下さると一番わかるのでありまするが、この
新線において大体二十九
年度の我々が収入予想をしておりますものは、五億七千万円でありますが、その大半の三億四千万円くらいの金というものは、この
建設費の利子に支払い、税金を払うと四億二千万円であります。仮に三億四千万円の利子を収入に比べると五七、八%になろうと思います。ところが現在の地下
鉄道におきまして、地下
鉄道は今払込千七百九十万円でありますが、殆んど
交通債券でや
つておるとお
考え下さい。それで見ますると、僅かに収入の五分か、六分が利子に払われておるだけであります。今度の線はその利子に五八%も払うのであります。これを営業費で持
つて来れば一億三千万円でやらなければならない。現在の線路と
新線と比べれば、旧線は
新線の倍でありますが、これに対応する経費を見ますると、八億くらいにな
つております。キロが半分であるから四億であります。ところが四億のその二分の一以下でこれを賄わなければ収支が合わないのであります。それに新らしい五億の金が地下にするために殖えたとすれば、その利子が年間四千万円超えます。とても収支というものが合わないのであります。私は収支が合わないでもやれと言えば……収支が合わないでは預金部の金も借りられませんし、いわんや十五億円以上の民間の債券というものは募集できないのであります。併しながらこの沿線に対する人々の御陳情の趣きは非常に御尤もで、お気の毒に存ずるのでありますが、さような次第でありまして、全線を地下線をやるかやらないかということを
考えますると、誠にお気毒だが我慢して頂くほかないのであります。併しながら先ほど申しました
通り、何らかの適宜の
方法を講じたいと
考えておるのであります。