○亀山
公述人 私亀山でありまして、
日本学術
会議の会長をしております。きようここでも
つて公述人としまして、
希望やら
意見を述べられるという
機会を与えてくださいましたことは、非常にありがたいと思
つております。今までこういう
機会は一度もなか
つたかと思
つておりまして、科学者といたしたしましてはたいへん喜んでおる次第であります。できますならば、こういうふうに
予算の案がきまらないもう少しプラステイツクなときに聞いていただければ、なおさらいいんじやないかと思います。
私科学者といたしまして、まあこれは釈迦に説法でありますけれども、
日本の国はどうしても科学や技術の学問の興隆をしなければ、なかなか復興はできないと思うのでありますが、それには二つの
考え方を私は持
つておるのであります。その
一つは、たとえば平和條約にしましても、これはやはり世界から
日本人は相当文化的な
国民であり、
日本国も世界の平和的な国家の
一つの仲間だと認められることが、非常に大事だと思うのであります。それで
日本の科学者の務めの
一つは、やはり
日本にはりつぱな学術もあり、世界の文化を進歩するだけのりつぱな科学があるということを、世界の人に見せるというのが科学の
一つの役割かと思うのであります。そういう
意味におきまして、私は湯川博士がコロンビア大学でも
つて、世界のひのき舞台で研究しておるというのは、非常に大事だと思うのでありますが、これが
日本の学術の施設の
不足とか、あるいは研究費の
不足とかいうこととは全然別に、
日本で研究費が足りないから、それだからコロンビア大学で勉強した方がいいとは、私はちつとも思
つておらないのでありまして、
日本の学者がりつぱに世界のひのき舞台で、
日本にも科学があることを示すというその
意味におきまして、私は湯川さんがコロンビアで勉強するというのはいいと思います。これは一般を通じまして、
日本の科学者のとるべき態度の
一つだと思
つております。もう
一つはやはりわれわれの生活が楽になり、
日本の復興が楽になり、飯がよく食えるという物質的な面から科学が非常に大事だ、こう二つの
意味で、私はどうしても
日本に科学技術がりつばに振興さるべきだと思うのであります。
ところで
日本では、民間は非常に参りまして、どうしても国にたよらなけければならない、国費でいろいろ費用を出していただかなければならぬという時勢にな
つておるということを、痛感するのであります。明治の初年におきましては万事
政府がいたしましたが、その後民間が非常に発達いたしまして、科学の振興なり発達なりは、民間の力が非常に大きくなりましたけれども、敗戰によりまして再び昔にもどりまして、どうしても国の力を借りなければならないという時代に
なつたと思うのであります。しかしながらこれは
日本の国で特に大きいのでありますが、しかしほかの世界の国々を見ましても、近年は非常に国の力が研究文教などに入
つて来ておるのであります。これは国柄にもよらない。
資本主義のアメリカでもそうでありますし、イギリスでもたとえば大学などは、みな国からタツクス・べーヤーの金をとらないで学問の独立をしようと叫んでおりましたし、今でもおるのでありますが、しかし国の補助が非常に多くなりまして、このごろでは約五%以上、四七年、八年におきましては大学の費用の約五八%くらいは、国からの補助をもら
つているような次第でありまして、やはり国が研究とか高等の教育に国費を使うというのは、世界の大勢にな
つて来ております。
日本はその上になお民間が非常に苦しいというところで、ぜひひとつ国にたよらなければならぬ、こう思うのであります。
ところで、ここにいただきました案によりますと、七十九億というものが科学研究の方に出ているのであります。国立大学等の文部省
関係のもの、それから各省
関係のものが含まれまして、総額七十九億というものが出ているのであります。これは今までよりもよほど増しまして、私どもたいへん喜んでいるのであります。しかしながら、もつと増していただきたいということを切に思うのです。こういう研究とか、あるいは大学教育とかいうような高級な教育は、つまり子孫のために、われわれのあとに来る者のために残す費用でありまして、即座にはリターンがないのでありますけれども、どうしても長い目でも
つて蓄積しつつしていただきたいのであります。ですから経常的に、
国民所得に対して幾ら幾らという
割合で、出して行
つていただきたいと思うのであります。ことしの
予算七十九億を見ますと、
国民所得に対しまして千分の二くらいに当ります。〇・二%くらいになるのであります。
国民が千円と
つて、そのうち二円くらいを
日本の将来のために払うというのでは少し少な過ぎる。私は一%と言いたいのでありますけれども、一%までは行かなくても、その半分の千分の五くらいにでもしていただいたらば、非常にいいのだろうと思
つている。今のところは、この二十六年度
予算で初めて〇・二%に達するようになりました。それ以前はそれよりはる
かに少い〇・一幾らというようなわけであります。全体的に言いまして、私はどうかひとつもつとよけいにしていただきたいということをぜひお願いします。その
程度は、先ほど言いましたような、せめてナシヨナル・インカムの〇・五%くらいというのが目標に思うのであります。
もう少し具体的なことに入りますと、研究と言いましても非常に種類が多いのでありまして、第一に研究者の研究の種類ということと、それから非常に地味な話でありますけれども、研究機関にはどんなものがあるか、その組合せなんであります。
日本では研究ということが十分に認識されておりませんので、一概にただ研究という言葉で一括してはおりますけれども、これには幾つかの種類がありまして、第一に
基礎研究、たとえば原子核がどうできているとか、あるいは物理学、化学というような
基礎研究と、もう
一つは応用研究、それからもう
一つは応用した研究をさらに
工業化する。アメリカ人やイギリス人のデイヴエロツプメント。一番初めのがフアンダメンタル、応用がアプライド、もう
一つはデイヴエロツプメント。こういうような三つはそれぞれ性格も違いますので、わけて考えたいと思うのであります。一方に研究機関の方はこれはどこの国でも三本足でありまして、三本足の上に立
つている。その
一つは大学、それは国立大学であれ、私立大学であれ、大学というもの、それからもう
一つは官庁、各省に属するところの研究機関、それからもう
一つは民間の研究機関、こう三本足に立
つておりまして、一方の研究には三種類のものがあるのであります。どこの国でも大学は主として基本的な研究、あるいは進みまして応用研究でも比較的ベーシツクなものをやることにどこの国でもなるし、それがまた当然であります。各省の研究はどうしても応用研究からデイヴエロツプメントという
程度であります。民間研究はどうしてもデイヴエロツプメント、
工業化とか応用研究という方が主になるのであります。ところで
日本の欠陷は、
基礎研究には相当りつぱな学者もおりますけれども、応用から
工業化ということが非常に発達しておらないということが、概括して申されるのであります。ところが敗戰後になりますと、
戰前とはたいへんに違いまして、各大学その他の
基礎的な研究機関というものは非常に破壞せられまして、復興がまだ十分でないどころじやない、まだ非常に復興に至
つておらないのでありまして、どうしても国立大学を主といたしまして、民間の大学をもつと復興することが非常に必要であるのであります。たいへん地味な話でありますけれども、大学に研究費が大体二種類あ
つて、
一つは、講座がありますと、それに経営的な研究費、私はこれを二合五勺と称しておる。もう
一つはそれに特配、特別な研究、そういう二種類があります。この講座研究費というのは、二十四年度、二十五年度とだんだんに増されまして、二十六年度に行きましたならば、昨年の倍額になるような案と
承知しております。今までは二合五勺どころではない。一合五、六勺、二合にも及ばなか
つたのが、だんだん二合に近くな
つて参りましたので、私は非常に喜んでおるのであります。その
努力はたいへんありがたく感謝しておるのでありますが、まだまだどう考えても二合五勺には足りないのであります。もう少し奮発して、二合五勺までしていただきと思うのであります。
実情を
ちよつと申しますと、国立大学におきましては、東京大学が一番大きいと思うのでありますが、二十五年度に十二億の金を使
つております。そのうち一億が建築費等の臨時のものでありますから、あと残り十一億、その五億五千万円というものが人件費、あとの五億五千万円が物件費であります。つまり半分は人が月給をもら
つて食
つておる。あとの半分で
仕事をすることにな
つておるのであります。これは大分よく
なつたのであります。人件費が五〇%以上でありましたのが、だんだんによくな
つて来たのであります。
昭和二十四年度においては、この給与が六五%で、物件費が三五%しかなか
つたのであります。二十五年度はそれが五割五割、二十六年度になりましたならば、おそらく四〇%給与、六〇%物件費になるだろうと思
つておりまして、これはたいへんな進歩だと思
つております。しかし
戰前は
戰前も非常に大学は研究費
不足ではありましたが、しかし人件費が三〇%で、物件費が七〇%くらいの
割合だ
つた。大学の研究所などは、ただ人に月給をくれてそれを生活させるだけでは何もプラスになりません。それでできますならば、人件費が三〇%で、物件費が七〇%くらいになるように御配慮願いたい。これは全体を通じてどの研究機関でも、ただ研究員が月給をもら
つて生活しているというんじや、何も役に立たないのであります。ほかの研究機関につきましても同じことが言えると思う。これは東京大学の例について申したのでありますが、ほかの大学などにつきましても、大分講座研究費が増したためによくはなりました。しかしながらもう少しさらに物件費を増していただきまして、大体理想といたしまして給与三〇%、物件費七〇%くらいまでに行くようにお願いしたい、こういうふうに思
つております。
もう
一つ別の方は、特別給与なんでありますが、これは科学研究費という文部省の特殊な研究費の中から出ておりまして、これは今年はわれわれ方々を説いてまわりましたのですけれども、昨年と同じように五億円ということにきま
つておるのであります。これをどうしてももつとたくさんにしていただきたい。これが具体的なお願いのもう
一つの点であります。学術
会議でいろいろ検討いたしまして、十八億四千万円にしてくださいということを申したのでありますけれども、なかなかそうは行かないで、五億にとどめられたのであります。
特配の方でありますが、これは二つの大きな
意味があります。その
一つは総合的な特殊な研究をするというのがそれでありますが、もう
一つは、これは国立大学に限らず、いかなる人にも出せるという研究費でありまして、その研究者がりつぱであり、研究題目がりつぱであると認められるならば、私立大学などの研究者にもこれはもちろん行くのであります。ところが私立大学の研究者あるいはそれの研究所、あるいは民間の研究所などにおきましては、非常に経営に困難しておるばかりでなく、研究費がないため非常に困
つておるのであります。それで
日本におきましては大学は、主として国立でありますけれども、民間におきましても相当りつぱな大学がありますし、また研究者もおりますので、これらの研究者を激励する
意味と、もう
一つは先ほど言いました特配的な、特殊な研究問題につきまして十分な研究ができるように、特別な研究費を、五億という少額でなしに、ぜひこれをもつと増していただきたいと思うのであります。先ほど
ちよつと申しましたように、自由をたつとんで国からタツクス・ペーヤーの金をもらわないことを主義としておりますイギリスでさえも、一九四七年から四八年あたり、大学の経費五八%くらいが国の費用でまかなわれておるというようなことを考えてみますと、
日本の
現状におきまして、国の金から若干の研究費が私立大学に行くということは、ちつとも無理からぬことだと思いますので、これを特にお願いしたいと思うのであります。
それから研究者には若い研究生がぜひ必要なのであります。これはどこの国におきましても、大学院、ポストグラデユエートに学生がたくさんおります。それらの学生の優秀な者を選びまして国から奨学金を出す。フエローシツプあるいはスカラーシツプというものはどこの国にもある。ところが
日本の国におきましては、大学における特別研究生というものが廃止になりました。制度はあるかもしれませんけれども、ほとんど金が出ません。これは非常に遺憾なことでありまして、ぜひもう一度考え直して特別研究生というものを復活していただきたい。若い研究者が始終養成されて、そして新しい学問の前線へ出て来るということが必要なんでありまして、これはそれらの個人々々の研究者を激励するだけではなく、国全体の政策としてそういう若い研究者がどしどし出て来ることが、非常に必要かと思うのであります。今度の
予算の中に育英事業費というのがありまして、これが非常に増額されたことはたいへん
けつこうだと思うのであります。十五億であ
つたのが二十四億になりまして、これは非常に喜ぶのであります。しかしこれは育英でありまして、金を貸してくれるのであります。返さねばならぬ。そしてまたそれは非常に広い範囲の高等学校、大学生などでありますが、私の申しますのは、金を貸すのじやない。学問の研究に若い人を奨励するために、返さないでもよい研究生養成の費用をぜひ出していただきたい。在来の特別研究生を復活するのみならず、もつとこれを大きくしていただきたいわけであります。
それからもう
一つお願いいたしたいことは、今研究の成果がなかなか発表できない。それは学会におきまして費用が足りなくて発表できない。これを国から援助する。これもおかしな話でありまして、学会があ
つて会員があり、会費をみな払
つている。自分たちで始末したらいいと一応思うのでありますけれども、
物価の騰貴とサラリーマンの收入との
割合が、非常な開きになりますので、なかなか会費ではおつつかない。ところがこれまた
日本だけに限
つたことではありません。アメリカでもイギリスでも、どこの国でも研究が非常に盛んになりまして、その発表をするのに費用がかか
つて困る。どうしたら簡單で要領を得ている報告が出せて、その研究の成果を世界中、あるいはその国、あるいは研究者同士に発表できるかということが、いろいろ論議せられまして、これも
日本だけでなく、世界的な共通の問題であります。そうしてその行き方は、どうしてもやむを得ない、幾らかずつ国から援助を得たいというところに来ておりますし、また世界的にいろいろ
会議を開きまして、報告を簡明にみなにわからせるには、どういう
方法がよいかというようなことも論じておるのであります。研究発表の補助費がありますけれども、これをもう少し十分にしていただきたいというようなこともあります。もう
一つこの資料に出ておりませんけれども、在来あ
つた海外へ留学生を出すという制度を、ぜひ復活していただきたいと思うのであります。最近アメリカあたりの金で、月に七十五
ドルを九十
ドルに値上げしたという苦しい費用で、留学しておる者がありますけれども、
日本の国の将来を思いますと、われわれ学ぶべきところは、欧州の方が多い。たとえばイギリスなどの方が、アメリカなどよりもはる
かに範とするに足ることが多いのであります。そういうことだけでなく、人の国のお情によらないで、
日本の国でも
つて留学生を出して、しかも半年とか一年とかいうのでなく、私は二年を單位とする留学生を復活していただきたいと思うのであります。半年ぐらいでは、ことに誤
つたところだけを見て来たり、一年でも不十分でありまして、二年もおちついて、数は多少少くとも、よく国情がわかり、もちろん
日本国をよく理解している人が
外国へ参りまして、外から
日本をながめつつ世界の大勢を目の前に見まして勉強する、こういう制度が非常に必要と思うのであります。生の大学生をアメリカなどで教育しましても、それが
日本の国を十分に理解できないと、それは非常によろしくないと思うのであります。どうか十分に
日本国を理解したような人が、世界をひとつ見て来る。しかもそれはなまはんかでなしに、二年ぐらい勉強して来る、そういう留学生をつく
つていただきたい。
それから各省の
予算について、いろいろよくなか
つた点がありまして、喜んでおるのでありますが、各省から外へ出します研究費の補助があります。従来は文部省だけであります。通産省が三千五百万円ぐらいのわずかな金でありましたが、今年度は各省から数億の金が出ておりまして、こういう応用研究費が出たことは、私ども非常に喜んでおるのであります。しかしまだ、必要があるとは思われますけれども、出しておられない省もあるのでありまして、外務省とか
経済安定本部なども、やはりそういう必要があるのだろうと思います。自分の省だけでなく、各省が、
日本国のいろいろな方面の学者に研究を依頼したり、あるいは補加したりする、そういう費用を出していただきたい。これは
日本では特に必要でありますが、どこの国でもこういうのがありまして、その形はコントラクト・リサーチ、研究を依託するというような方式で、非常に盛んに行われております。ことしは大分よくなりましたが、一層なおこれを発達さしていただきたいということを
希望するのであります。それらの研究は物理とか化学とか機械とか艦船とかいうようなものばかりでなしに、
経済的な研究、人文科学的な研究も非常に必要でありまして、通産省なんか外部にも御依頼になる研究には、相当
経済的な研究を御依頼にならんことを切に
希望するのであります。なお各省それ自身の研究について見ますと、先ほど私が申しました物件費と人件費との
関係でありますが、大体人件費五〇、物件費五〇というのは、人の生活で言えばポヴアテイ・ラインでありまして、ただ食
つている、月給を払
つているという
程度でありますから、どうにかして人の
割合に研究費をたくさんにしていただきたい。これはもちろん研究所の性格、取扱う研究問題によ
つて違いますけれども、大体物件費が七〇%、人件費が三〇%くらい、少くとも人件費が四〇%以下になるような御趣旨で、ものを考えていただきたいと思うのであります。この点二十五年度よりはよほどよくなりましたけれども、もつと物件費をよけいに出すようにしていただきたい。
それからもう
一つ、これは
予算には現われておりませんけれども、私どもがいろいろ研究しまして、
日本で研究室の成果が
工業化されない原因をいろいろ調べましたあげく、
産業技術
開発金庫というものを考えたのでありますが、それは
日本で研究が
工業化されない
一つの原因は金がない。それで適当に金を借りまして
工業化して、しかる後に借りた金を返して行く。技術的に非常に確実なものならこれができる。こういう考えで
産業技術
開発金庫というものを考えたのであります。これはこの
予算とは別でありますが、これはどうかほんとうに成立していただくようにしていただきたいと切に思うものであります。これとま
つたく同じ考えが一九四八年にイギリスで起りまして、ナシヨナル・リサーチ・デイヴエロツプメント・コーポレーシヨンと申しまして、大学とか官庁と
かにおきますりつぱな研究をとり上げまして、金を貸して
工業化して、その金庫がライセンスをと
つたりなんかしまして、また金をもどしてもら
つて新たなものをやる、こういう制度であります。どうかひとつこれを成立さしていただきたい。
なお私ども切にお願いしますのは、大体国際條約ができまして、各国と対等の対抗ができるようになりましたならば、各地の大使館なり公使館なりにサイエンス・アタツシエを設けていただきたい。科学官が駐在いたしましていろいろの情報を交換する、こういう
仕事を始めていただきたい、こういうふうに思うのであります。そのインフオーメーシヨンをやりとりするということは、英米では行われておりますし、イギリスの各属領といいますか、そういう国の中のいろいろの国同士もみなや
つているのでありまして、世界大戰中からやりまして、世界大戰後現在に至るまでアングロサクソン系統は、世界的なサイエンス・アタツシエを設けて科学的な情報を交換し、そうしてお互いに利益を得ている。ユネスコの初まりなどはこれらのことから来たのでありますので、どうかその仲間に
日本も入れるようにとりはから
つていただいて、それらにつきましては学術
会議がやがていろいろな形で申し出ますが、インフオーメーシヨン・センター、学術の情報機関、問合せがありましたら、その
国民なり
外国なりと自由に早く学問の
蓄積せられた知識を交換し得るような機関をつくりたいと思うのであります。これはいずれそのうち申し出ますから、どうかひとつ御
考慮を願いたいと思
つております。
最後に一番大事なことをお願いしたいのは、科学者の生活の問題であります。これは決して研究費と科学者の生活費とを混合しているのではないのでありまして、これをしばしば混合されますので、混合せずに聞いていただきたいのであります。研究費は研究をする費用、私のお願いしますのは、われわれ科学者の生活の費用であります。いろいろ学術
会議で調査いたしますと、われわれの称する科学者の仲間では、食費が收入の五〇%よりも少いという人は非常にわずかなのであります。四〇%以下の人が六%、四〇から五〇以下の人が一一%、要するに五〇%以下の人は一七%しかない。クエスチヨンを出しましたその答えによりますと、收入の半分以下を食費に使
つておるという人は約二〇%というような次第でありまして、一般に科学者は非常に苦しんでおるのであります。本を買えるような人はきわめてわずかでありまして、收入の一割でも本を買えるという人は非常にわずかであります。どうかひとついろいろな
方法が考えられますけれども、研究者の生活を楽にしていただきたい。これは言葉をわずかしか費しませんけれども、しかしお願いの強さは決してその言葉数に比例するものではありませんので、どうかひとつこれだけは切にお願いいたします。
私の申したいことはそれだけでありますが、お尋ねがありましたら喜んで御返答いたしますし、またいいお考え等がありましたら教えていただきたいと思います。