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1951-02-17 第10回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月十七日(土曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 橘  直治君 理事 西村 久之君    理事 橋本 龍伍君 理事 川崎 秀二君    理事 川島 金次君 理事 林  百郎君       麻生太賀吉君    天野 公義君       尾崎 末吉君   小野瀬忠兵衞君       上林山榮吉君    北澤 直吉君       島村 一郎君    庄司 一郎君       中村 幸八君    松浦 東介君       井出一太郎君    水谷長三郎君       井手 光治君    江花  靜君       甲木  保君    川端 佳夫君       坂田 道太君    塩田賀四郎君       玉置  實君    永井 英修君       松本 一郎君    南  好雄君       小林  進君  出席公述人         第一物産株式会         社副社長    水上 達三君         日本産業協議会         常務理事    堀越 禎三君         湯淺蓄電池株式         会社社長    湯淺 佑一君         日本学術会議会         長       亀山 直人君         国有鉄道労働組         会中央執行委員         長       齋藤 鉄郎君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 本日の公聽会意見を聞いた事件  昭和二十六年度総予算について     —————————————
  2. 小坂善太郎

    小坂委員長 これより会議を開きます。  最初にお諮りいたしたいことがあります。かねてより金融債に関しまして、大蔵当局質疑をいたしまする希望があり、その際参考人といたしまして、日本銀行政策委員会委員中山均君、勧業銀行頭取堀武芳君、東京銀行頭取濱口雄彦君、日本興業銀行頭取川北禎一君、地方銀行協会会長伊藤豊君の出席をお願いいたして意見を聽取いたしたいとの希望委員より出ておりまするが、これについてお諮りいたします。いかがいたしましようか。これら参考人出席希望することに御異議ありませんか。     〔「委員長におまかせいたします。」と呼ぶ者あり〕
  3. 小坂善太郎

    小坂委員長 この問題は本来予算案に直接の関係はないのでありまするが、特に強い御希望がありまするから、委員長におきましては、来る十九日これらの参考人の御出席を願いまして、質疑参考にしたいと考えます。  なおこの際申し上げて御了承を得ておきたいことがございまするが、予算総会におきまする質疑もだんだん終局に近づいて参りましたので、来る二十日火曜日の午前十時より分科会を開会いたしたいと存じまするが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小坂善太郎

    小坂委員長 御異議はないようでありまするから、さよう決定いたします。  これより公聽会に入るのでありまするが、この際さきに選定いたしました公述人のうち第一物産株式会社社長新開洲太郎君がやむを得ない所用のため出席いたしかねるとのことでありまして、同社の副社長水上達三君を代理人として意見を述べさせたいとの申出がありまするので、これをお諮りいたします。これに同意するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小坂善太郎

    小坂委員長 御異議がなければさよう決定いたします。  これより去る十四日の公聽会に引続きまして、昭和二十六年度総予算につきまして、公聽会を開きます。第一物産株式会社社長水上達三君より御意見の開陳を願います。水上公述人
  6. 水上達三

    水上公述人 ただいま御紹介にあずかりました水上でございます。御指名によりまして昭和二十六年度予算に関しまする批評あるいは希望を申し述べたいと思います。  朝鮮動乱の勃発による国際情勢の変化の結果、二十六年度の日本経済は、一に輸入がうまく行くかどうかにかかつているといつても過言ではないと思われるときに、この予算面緊要物資輸入基金特別会計の設置、保有外貨の活用、貿易協定による輸入増加、船腹の増強等の諸方策が講ぜられることになつておりますことは、私ども貿易に携わる者として、まことに力強く感ずる次第であります。二十六年度予算かくのごとく激動期に入つた国際情勢に対し、わが国財政経済政策の歩調をどう合せるかということが、骨子をなすものと思われます。朝鮮動乱勃発以後の、わが国生産及び輸出増加は著しく、日本経済回復の一途をたどつておるわけでありますが、この回復は、基本的にはアメリカの援助に負うところ少くないのみならず、さらに動乱その他の外的な要因によることが多大でありまして、そのままわが国経済の実力を示すものとは言えず、引続きわが国経済基盤の強化に一層の努力をする必要がありまして、均衡予算の堅持、インフレーシヨンの回避に重点が置かれておることは、まことにけつこうなことであると思います。インヴエントリー・フアイナンス緊要物資輸入基金特別会計の手が打たれるとともに、積極的に産業合理化、ひいては日本経済の復興をはか上る考慮が払われ、見返り資金から三百五十億円の私企業への投資、預金部資金より四百億円の金融債への投資など、財政資金より合計七百五十億円が産業資金につき込まれるということは、けつこうなことでありますけれども、なお一層これら資金長期産業資金への活用を要望するものであります。事態が困難になればなるほど、インフレ再燃危險を断固防止する態勢は、いよいよ堅持しなければならないのでありますけれども、要はそのわく内におきまして、国際情勢の変化に即応し得るような、彈力性のある予算を確保するかいなかにかかつておると思われます。  そこで問題となりますのは、外国為替資金特別会計へのインヴエントリー・フアイナンスであります。朝鮮動乱以後、わが国物価値上りは著しく、ことに生産財価格は相当に高くなつておりまして、これが順次消費者価格にまで及ぶ形勢にあります。これは特需をも含めた輸出の増進、世界的な物価の動き、世界的な軍拡、輸入不振などに関連して、日本経済にいろいろな影響が現われた結果でありまして、こういう要素は、広い意味インフレ的要素であります。この問題が集約してインヴエントリー・フアイナンスに出て来たものと思われます。国民の税金による財政資金で、外国為替資金特別会計へのインヴエントリー・フアイナンスを計上することにつきましては、インフレ懸念がなお去らず、何らかの形で財政クツシヨンを必要とするというドツジ氏の指摘によつて経済安定の措置として決定を見たものと思われますが、これにはいろいろと議論があると思います。すなわち明年度予算は約一億二千万ドルの出超を予想しておるとも言えるのであります。今日のような国際情勢下においては、予算そのものにゆとりを持たせるという考え方は、あながち無益とは言えないと思いますが、現在すでに五億ドル余りに上ると言われております外貨を擁しておる日本として、このような予算の組み方は、はたして妥当なりやいなやということは、愼重なる研究を要すると思われます。明年度においても輸出超過を続け、通貨量を現在の規模に押えて行くならば、勢いそのしわは輸出産業以外のその他産業に波及し、これら産業は窮地に陷り、社会政策上、治安維持上、ゆゆしき問題となるおそれがあります。従つて従来の輸出先行的な考え方を、輸入可能量に応じた輸出をして行かねばならぬという考え方に切りかえて多少その方法はまずくとも、原材料輸入増加するというように構想をかえていただきたいと思います。またこのインヴエントリー・フアイナンス海外から押し寄せるインフレの防波堤として手が打たれたものと思います。財政インフレを收束して行こうという努力はもちろん続けて行かなくてはなりませんが、日本経済全般が強力にならなければインフレの懸念は去りません。このような意味から、外国為替資金のごとき運転資金は、必要あれば日本銀行資金操作にてまかない、インヴエントリー・フアイナスの五百億円はほかの使途に振り向け、日本経済を強力にするような方向に向けるべきであるとも考えられます。しかしながらインヴエントリー・フアイナンスは、すでに最高政策として決定したものと思われますので、これに対する論議はしばらくおきまして、前述のごときインフレ的要素を除去して、外国為替資金特別会計へのインヴエントリー・フアイナンスの必要をなくし、これが一般会計資金を、ほかの経済再建のため積極的な使途に使えるように希望する次第であります。  インフレ的要素の除去のためには、輸入促進が欠くべからざる條件であるということはすでに常識となり、これが措置に関しては、すでに論議し盡されたと思われますので、これが具体化について、政府の強力なる施策を要望する次第第あります。輸入促進措置としましては、まず第一は船腹の増強など、貿易政策に関する面、すなわち講和條約以前の貿易における自主性回復国際協定への参加、貿易協定多角的決済協定方式への切りかえ、海外における活動力の増強、外資導入について長期資金と同時に短期外資の導入にも極力便宜を与えること、また南方地域鉄鉱石のごとく、その開発促進されなくては、輸入源維持確保が困難なものについては、海外投資によりその供給量を増大して、輸入促進をはかることというふうなことがあります。  第二は外貨予算編成運用改善というふうな面で、これには外資輸入予算飛躍的増大及び金繰り予算編成、第二は自動承認制拡大長期契約予算拡大ドル地域よりの買付の増大、外銀によるユーザンス制度の利用によるポンド資金の拡充、これは先日決定実施しております。それからオープン・アカウント協定運用改善による輸入資金の拡充、非協定地域よりの自由ドルによる買付範囲拡大輸入許可制度運用緩和輸入担保の軽減、無為替輸入制度運用拡大といつたようなことがあります。もちろんこの中にはすでに一部実施に移されておるものもあります。  第三は貿易金融の問題であります。緊要物資輸入基金特別会計基金は、わずか二十五億円が一般会計より繰入れらているにすぎず、年四回転としましても年間百億円で、重要物資輸入額の二%くらいの仕事しかなし得ないのみならず、さらにこれの基金はおもに特需用引当物資輸入に充てられると思われますし、ほかにわが国一般用原料の在庫は、現下の国際情勢下では非常に少な過ぎると思われますので、この基金に対して見返り資金の割当とか、借入金の道など、積極的な措置が考慮さるべきものと思います。なおこれが基金の運用に関しましては、十分民間の意向が反映するよう希望する次第であります。  次に輸出銀行の問題がありますが、これは起案後実施までに非常な時日を要したため、これまである程度のプラント輸出金融的な面において不成立に終つたものもあります。しかし世界情勢のかわつた現下の時局におきましては、これがおもな対象とするプラント輸出もさることでありますが、今後予想されます特需関係の、特に長期生産金融を要するものをこれが対象とするとともに、すみやかに輸出入銀行機構を改革拡充し、特に長期にわたり生産金融を必要とする輸入物資に対し十分なる金融的裏づけをなすべきだと思います。なお貿易によりまして日本経済の発展をはかるほかに、日本経済全体の力を強くするために、電力、地下資源などの国内資源開発開発銀行式のものの設立は緊要なることと考えております。またこれと同時に、わが国産業構成の特徴であります多くの中小工業は極度の資金不足に悩んでおる次第でありますゆえ、これらに対し今後ともなお一層の保護育成の手段を講じ、商品品質向上をはかり、かつて一部日本商品に課せられた粗製濫造というがごとき惡名をこうむり、中小工業の破滅を来すことのないように十分の助成的措置を切望する次第であります。  さらに日銀外貨貸出制度による貸付額は最近約二千五百億円に達しておるといわれておりますが、これは外貨貸出制度実施後日なお浅く、それまでに蔵入金融見通し難から輸入を手控えておつたものが短期間の間に殺倒しまして、そのうちまだ満期日にならぬものが相当あるため、一時的現象として金額が増大しておるものと考えます。しかし日を経るに従いまして、季節的の増減はありますけれども、必ず日本貿易規模に応じたある程度の線におちつくものと考えております。外貨貸出制度により輸入貿易金融は一応片づいておりますが、ここに問題となりますのは、それ以後の生産金融であります。民間資本蓄積力の脆弱なわが国経済界におきましては、企業自己資本の不足を市中貸出、ひいては日銀貸出に依存せざるを得ないのでありまして、すなわち企業規模拡大するためではなく、單にそれを維持するためのみでも信用造出に依存せざるを得ないのが現状であります。かかる状態におきまして、前に述べました通り輸入増加いたしましたので、三、四月にかけて必要とされる輸入物資引取資金は現在七、八百億と推定され、あたかもその時期は財政資金引揚げ超過となる時期なので、これが引取資金に対し工業手形の再割適格化等の万全の金融措置をすみやかに講ぜられ、円滑なる経済の運行ができるよう希望する次第であります。一方、日銀外貨貸出制度の期限が長過ぎるというようなこともいわれておりますけれども、一部商品買付先遠隔化、揚げ地港湾設備の不備、揚げ地運送機関特殊用途への使用などによる工場着までの所要日数増加などを考えてみますと、一概に長過ぎるとは言えませんが、商品の種類によつて外貨貸出の期間を区別することは考慮されてしかるべきだと思います。  最近の輸出の急激なる増加にもかかわらず、輸入がそれに伴わぬため、貿易インフレの声を聞きますけれども、輸入促進に対する種々の措置も漸次講ぜられておりますので、遠からず輸入成績の向上は期待でき、再びこれら原料を元として輸出拡大されて行くことと存じます。かくのごとく輸出入の循環を通じ世界経済に連繋しておる限りにおいては、わが国だけの極端な物価騰貴はあり得ないと思います。しかし重要原料の大部分を輸入に仰がねばならぬわが国特殊事情よりしまして、最近の海上運賃値上りは、輸入物資価格に影響するところ大なるものがありますが、これとてわれわれの努力により克服できると信じておる次第であります。こう考えて行きますと、日本経済規模の拡張に相応するある程度の通貨の膨脹は当然認容さるべきであると思います。またこの機会をかりて申し述べたいことは、終戰後日本経済は非常なる混乱と、はなはだしき規模の縮小を来しました。ためにこれらに対し一貫性ある金融政策を遂行することは、はなはだ困難であつたかとも思いますが漸次安定の軌道に乘りつつある日本経済に対し、政府としては今後ひとり貿易金融のみならず、一貫性ある金融政策を堅持し、たびたびの金融政策の変更によつて経済界を混乱に陷れぬように切に希望する次第であります。  第四に貿易組合の設置につきましてちよつと申し述べたいと思います。わが国産業は御承知のように中小企業が多く、戰前輸出品の六割は中小企業の製品が占めておりました。また大工業でも生産者自体貿易に従事できるほどの能力を持たなかつたのであります。これが欧米の先進資本主義諸国事情と異なる著しい点であります。そこで貿易業務を自己のリスクにおいて專門的に行う大規模貿易業者が生れ、海外の大資本と競争しつつ、多数の中小企業の製品を收集し、これを海外輸出し、あるいは変動のはげしい世界市場から原料を合理的に購入して参りました。さらに戰前貿易機構には多数の中小業者輸出組合がありました。中小企業貿易上の力も弱く、濫立して相互にはげしい競争を行つており、先進国の大資本と対抗して行くことはまつたく不可能でありまして、そこで輸出組合法の制定となりました。かように輸出組合先進資本主義諸国の大資本に伍して行くための防禦的性質のものでありまして、それは組織化によつてダンピングを積極的に行つたのではなく、むしろそれとは反対に、ダンピング不正競争を防止する機能を果したのであります。しかしこのような戰前貿易機構は大規模貿易業者の解体、独占禁止法及び事業者団体法によつて解体せられまして、貿易資本は小規模化し、かつ分散化したため、日本貿易業事業能力は弱体化し、国際的水準に遠く及ばない実情であります。しかもこのような弱小貿易業者独占禁止法事業者団体法によつて戰前輸出組合のような自己防衛的組織を持つことができずに、無秩序に競争濫立しておるのがわが国貿易機構の現状でありまして、貿易業者自体を苦境に陷らしめているばかりでなく、国内の生産者及び外国の業者をも困惑させておる次第であります。この意味で何らかの形態による組織化が緊急に必要と思いますが、この組織化民主的性格を持つべきことはもちろんですが、さらにあくまでも防禦的合理化的なものでなければならぬと思います。  次に輸入食糧価格調整費算出の基礎につきましては、これが算出の基礎となつております輸入CIFドル価格につき予定価格と現在価格とを比較いたしましても、すでにおもに海上運賃値上りのために、小麦につきましては四」五%、アルゼンチンにつきましては二〇%近く、米は約六%、大麦は約二〇%の値上りを来しておりまして、予定通り買付を行うとするならば、現在の価格でもすでに補給金所要額は三百四億三千四百万円となり、見積額を七十九億三千四百万円上まわり、今後の運賃の値上りを考慮すれば、これ母上の差額が起きて来ると思われますので、これが買付方法買付先の選定などにつきましては、彈力性ある措置希望する次第であります。  以上輸入促進につきまして述べたのでありますが、翻つて二十五年度の輸入実績を見ますと、中共地区よりの輸入停止により、一部商品買付先を米国その他の地域に振りかえたため、一時輸入成績が惡くなりましたが、漸次最近改善されつつありますので、以上述べましたような輸入措置の改善が早めに行わるならば、二十六年度の輸入計画は大体予想通り遂行されまして、経済再統制のようなことは必要ないものと思われます。但し将来国際割当を受けるような特殊の重要原材料につきましては、ある時期においては、使用制限程度統制措置はやむを得ぬようなはめになるかとも思います。  ここにわれわれとして一つ注意しなければならない点は、輸入促進にあまり気をとられまして輸出促進対策をおろそかにし、将来のために禍根を残さぬようにすべきであることであります。円滑なる輸入、適当なる輸出、これによりまして日本経済は発展し、八千数百万の人口もこれによつて養われ、貿易立国の実現もこれによつて達成されるものを信ずる次第であります。  次に貿易業者としまして税制上の意見を開陳したいと思います。二十六年度予算に盛られております法人税の改正は、われわれ貿易界にとりましても合理的かつ有利でありまして、これを機会にわれわれといたしましても、資本の蓄積に一層心がけて会社の内容の充実をはからねばならぬと思つております。しかし物価戰前に比しての驚くべき上昇は、貿易業者取扱い高資本に対する比率を、戰前の想像を越えさせ、資本金の十倍など珍しくなく、年間数百倍に達する事例が少くありません。かくのごとき状態で、貿易業者貿易に対し十分なる注意を払いつつありますが、もし何らかの理由にてクレームが成立いたしました場合には、会社の存立さえ危險に瀕するおそれを包蔵しております。従いまして、売掛金その他債権のある割合に対して貸倒れ準備金制度が認められていると同様に、クレームのための自家保險的社内留保は、これを課税の対象から除外し得る道を講ぜられたいものと切望する次第であります。また輸入におきましては、輸入品の引渡しに伴う受領手形は九月十日、百二十日の期限であり、決済完了に半年の長きを要する場合もあります。その間貸倒れ危險は増大し、低度の貸倒れ準備金では輸入業者として危險を感ずる次第でありますゆえ、貸倒れ準備金売掛金その他債権に対する割合を増加することを希望し、わが国貿易会社内容充実をはかり、外国商社と一日も早く対等の地位にて競争のでき得るようわが国貿易会社の育成に心がけていただくことを切に希望するものであります。  以上主として貿易業者の立場より昭和二十六年度予算編成並びにこれが実行に関して所感、希望等を申し述べたのでありますが、最後に、国民の一員として一言申し上げて結論といたしたいと思います。  日本の国情は、平たく言えば、賃仕事をして食つて行かなければやつて行けない本質的な事情にあるわけでありまして、仕事がなければあぶれる、すなわち餓死しなければならないのであります。そしてこの仕事の種の大半は歳入に仰がねばならぬ実情であります。そこで遠からず九千万になんなんとする人口を養うには、貿易立国以外に道はないのでありまして、この貿易立国政策が農、工、鉱、林、水、畜産業等と相互並行して発展して行くならば、必ず日本経済自立は達成し得るのであります。従つて輸出入の循環による貿易規模拡大国内資源開発により、農、工、鉱業、其他諸産業の増産をはかり、これに伴う金融財政その他の訓政策をこれに即応せしめ、日本経済を総合的に発展させて、わが国の余裕ある工場能力、豊富なる労力、優秀なる経営力を活用し、東亜の工場たらしめ、生活水準の向上をはかるとともに、世界平和の確立のために貢献せんことを切望するものであります。これがために、今後予算編成に際し、従来その骨子をなしていたところのドツジ・ラインに、現在並びに将来の国際情勢の実情に即応ずるように思い切つた飛躍的考え方をもつて臨むことが必要であると思います。  簡單でございますが、以上で終ります。
  7. 小坂善太郎

    小坂委員長 公述人に御質疑はありませんか。
  8. 林百郎

    ○林(百)委員 ちよつと公述人の御意見を伺いたい。為替決済関係でありますが、今は御存じ通り貿易によつて、ことに輸出によつて獲得したドル日本政府が自由にするわけに行かないで、外貨としてスキヤツプ名義外国銀行へ預金されているので、それとは別個に、外為で金のやりくりをするというようなことから、御存じ通りインヴエントリーというような方法まで講じられているわけでありますが、この為替決済関係について何か、御意見があるか。これは一日も早く正常な形にもどした方が、貿易業者としても都合がよいと思いますが、この決済関係で何かお困りになつていることだとか、希望だとか、そういうようなものがあつたらひとつ聞かしていただきたいと思います。  それが一つと、もう一つは、中共貿易が今度禁止になりまして、そのために粘結炭あるいは鉄鉱石あるいは大豆等輸入計画が蹉跌を来したのであります。これについて、政治的な考慮は別として、貿易業者としては、採算だとかそのほか経済的な立場からいうならば、中共貿易をやつた方がよいとお考えになりますかどうか、その二つの点に対して御意見を伺いたいと思います。
  9. 水上達三

    水上公述人 為替決済関係につきましては、限られた外貨を有効に使わなければならないという日本現状におきまして、現在のようなやり方でやむを得ないと思いますが、そのやり方につきましては、たとえば外為日銀外銀市中銀行、さらに大蔵省、そういうふうな機構がたくさんありますので、手続上の不便とかそういうことはありますけれども、現在の方法でそう大した不便を感じておりません。  次に中共貿易の問題でありますが、御承知のように、日本中共に依存しておるものは大体塩、開らんの粘結炭大豆、一部の鉄鉱石のようなものではないかと思います。もちろん日本中国との地図がかわらない限り、中国から大いに輸入もし、またそれに輸出もして行くのが相互経済のためによいと思いますが、政治的ないろいろな事情によつて現状ではできないのでありまして、われわれ経済人としましては、合理的な方法で、できるならばもちろん中国貿易希望するところであります。
  10. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどの外為の話ですが、たとえば外貨ドルなんであります。西ドイツあたりの例を見ますれば、手持ちの外貨を使い果して、昨年の暮れあたりからよそから借りて輸入をやつているわけなんで、むしろ外貨が僭越しくらいなんです。日本御存じ通り五億ドルくらいの金がありまして、積まれておるわけである。できるならばこれを使つて輸入促進する方が、日本経済のためによいと思います。また輸出促進きれて、昔のような為替銀行がありまして自由に決済ができるならば、税金でインヴエストしなければならないというような状態も出て来ないと思います。この点について、占領下においては今の機構でやむを得ないとお考えになつているが、できるならばそういう正常な形の方がよいというようにお考えになつているか、あるいはこの形でずつと続いても、かまわないというような御意見なんですか、ちよつとその点はつきりしなかつたのですが。
  11. 水上達三

    水上公述人 先ほども申上げました通り日本の自主権というものの回復が早くできますれば、自然にそういう問題も解消するものと思つております。それは非常に近い将来にあると期待しているわけであります。
  12. 上林山榮吉

    ○上林山委員 できるだけわれわれの意見を拔きにいたしまして、二、三の点について見解を伺いたいと思います。  第一点は、おつしやるように、日本経済の確立は貿易立国でなければならぬのでありますが、現在非常に障害が多い。先ほど船舶の問題が出ましたが、船舶はある程度緩和し得るような方向に向つておるのでありますが、そのうちで特に障害になるのは船賃の問題であると思います。あなたは実際家として、理論を拔きにして、船賃を具体的にいかに処置するならばこうなるというような、最近の見通しというようなものがあれば、まずそれを伺つておきたいと思います。
  13. 水上達三

    水上公述人 御承知のように、日本船腹日本の必要とする大量物資、いわゆるバルキー・カーゴーの約三分の一程度を運ぶくらいの量しかないわけであります。そこで過半数といいますと、少くとも百数十万トンになると思いますが、そのくらいの外航可能船を用意しなければ、日本向けの運賃に対してあるウエートを持つということはできないのであります。それで運賃の問題ですが、海上運賃というものは最も国際的の性格を持つたものでありまして、ある所だけ特殊の運賃をつくるということは、なかなか不可能であります。御承知のように昔からロンドンの運賃の市場が、大体世界の運賃市場を左右しておりました。御質問の要旨は、その船賃をどういうふうにきめればいいかという御趣旨と了解いたします。また運賃統制するとかなんとかいうふうなことも、その御質問の中にあるのではないかと思われまするが、運賃の本質上、日本だけが日本の持つている運賃統制いたしましても、なかなかむずかしいと思うのです。今申し上げた通り、約三分の一程度の船しか日本は持ちませんし、しかもそれを全部日本希望するような運賃にきめたとすると、非常に低能率になりますし、結局船腹をたくさん持つ、できれば二百数十万トン持つというふうに向うことが、最も日本に有利に運賃のとりきめをすることができるのではないかと思います。従つてその方向に一日も早く進むということ以外にはないのではないかと思います。
  14. 上林山榮吉

    ○上林山委員 運賃なども努力のいかんによつては善処できるはずであるという御説でありました。われわれ理論としては十分に承知しているのですが、実際を通じて非常に困難な障害があるということを知つておりますので、実際家のあなたから、何か近い将来にこういうふうにやつたら具体的に解決し得るのではないだろうかというようなことがあれば、聞きたいと思つてお尋ねしたわけであります。それがありますれば伺いたいと思いまするが、なければけつこうでございます。
  15. 水上達三

    水上公述人 最近私どもとしましても、また政府におかれましても、関係方面とも協力されまして、盡力されていることは、米国のリバテイ型の船の買用船、そのほか世界の各地から売物を探して買いつける、それからやはり同じように各地から用船の努力をしております。もちろん国内といたしましては、第六次船、第七次船の造船にかなり努力を傾注しておるわけであります。そのうちリバテイ型の方につきましては、大分具体的になつているように伺つております。これができますと、かりに五十隻であれば、リバテイ型は一隻が一万トンでありますから五十万トンになるわけであります。そのほかに最近買船の決定したものが約十隻、十万トン近くあると思います。こういうものをできるだけ早く手に入れて、早く使えるようにいたすことが、最もいいのではないかと思います。またそういう方向に今進んでいるのではないかと私は考えております。
  16. 上林山榮吉

    ○上林山委員 これはお互い議論しているのではないのですから、そのつもりでお願いいたしたいのですが、次にこれも非常に困難な問題であるし、また質問するのもどうかとも思いますけれども、一応貿易の障害になつておる一つだと思いますのでお伺いするのでありまするが、為替レートの問題であります。これはいろいろの材料を総合して考えまするに、何らかの処置をとるべき時期が近づきつつあるのではないか、こういうような懸念を持つのでありますが、これに対しては実際家としてお考えになつてどういう方向に行かなければならぬか、あるいは近くこういうふうになるであろうという見通しがありますならば、伺つてみたいと思います。
  17. 水上達三

    水上公述人 日本為替レートの変更問題につきましては、日本が自主的に考えるよりも、むしろイギリスとかアメリカとかの動きによつて考える方が実際的ではないかと考えます。最近イギリスは、ドルの手持ちが非常にふえて参りました。ドルの手持ちが非常に減つたときにポンドの切下げをしたと逆な立場に向いつつあります。一万ドルの価値はだんだん下つておる。そういうふうな外的な要素をよく見きわめて愼重にやるべき問題だと考えております。従つて近い将来、日本の円のレートをこうした方がいいということは今考えておりません。
  18. 島村一郎

    ○島村委員 私はお話の第三点に関係して、一、二お伺いしたいと思うのでありますが、輸出銀行活用がどうも民意に沿わない点があるようにお伺いいたしたのでありますが、はたしてそれでありますれば、どういう点にそういうことが現われておるのか、総括的な御意見であればそれでもけつこうでございますが、簡單にお話を願いたいと思います。  それからもう一点は、外貨の融資につきましてお話がございましたが、これはユーザンスの短縮を意味するのでございますか。この二点についてお伺いいたしたいのであります。
  19. 水上達三

    水上公述人 第一の輸出銀行の問題でありますが、輸出銀行は御承知のように、その構想された時代が、発足したときからおよそ一年くらい前ではないかと思います。従つて輸出促進日本に余つておるところのプラントを輸出しようというふうなこと——余つていない新しいものも輸出になりますが、そういう構想から出発したものなのであります。ところがその後朝鮮事件というふうなものが起りまして、経済情勢の根本がかわつて来た。そこで多少修正すべきではなかつたかと思いますが、そのまま発足したわけであります。それで私ども貿易を実際にやつておる者といたしますと、ポイント・フオアによつて、東亜の各地から日本あたりに注文が来るだろう。それに対してひとつ長期における生産の、六箇月以上のものについては、輸出銀行金融するように考えたらどうだろうかというので、できたものと承知しております。ところがその方の仕事はだんだん減つて——減つて来るというよりも、手近の仕事に追われて来ておる事情です。手近の仕事というのは、要するに朝鮮関係とか、あるいは全体から来る日本国内での特需、そういうものが非常にふえて来た。そこで今後の輸出銀行の運営方針としましては、積み出さなければやらない、つまり日本から現実に船で積み出さなければ、韓出銀行の金融対象にしないというプリンシプルをかえて、朝鮮へ行くものであつても、国内で進駐軍が使用するものであつても、その精神において輸出銀行金融対象になるものであるならば、これは輸出銀行金融対象にしたらどうか、こういうふうに考えておるのであります。もう一つは、結局輸入によつて輸出ができる日本の国情なのであります。それで輸入輸出とが伴つて輸出入銀行というふうなもので運営されるならば、もつと金融が円滑に、しかも能率的に行われるのではないか、こういうふうに考えております。  それから第二のユーザンスの問題でございますが、これはある軽工業品などにつきましては、原料外国から輸入しまして輸出するまでの期間が非常に短かく、中には一、二箇月でできるものもあります。一、二箇月で輸出為替になつて行くものもあります。しかしまた重工業原材料のように、非常に長くかかるものもある、そこでそれぞれの実情に応じて短縮あるいは延ばすということは、資金を最も能率的に使う、資金効率を上げるという意味からも必要じやないか、こういうことを申し上げたのであります。
  20. 北澤直吉

    ○北澤委員 一点だけお伺いしたいのですが、先ほど林委員の御質問に対しまして、公述人から、もし日本が自主権を回復すれば、中共との貿易は相当有望になるというふうに私は伺つたのでありますが、日本中国大陸を占領しておるときにも、日本側は中共地区に対して経済封鎖をしておつたのであります。ところがその後の情勢で、今のように共産主義陣営と民主主義陣営が火花を散らしておる時代におきまして、この中共地区と、民主主義諸国との間の経済の交流というものは、円満に行くはずはないと私は思うのであります。特に日本講和條約後、アメリカと一緒になつて共産主義の侵略に対して、共同防衛に当るという場合においては、私は経済の面においても、日本と米国と一緒になつて共産主義の侵略に対抗する、当然私はそうなると思うのであります。そうしますと、結局は日本講和條約を結んで自主権は回復しても、もし日米が共同して共産主義に対して防衛するということになりますれば、どうしても中共との貿易、敵に糧を与えるというようなことはできぬと思う。従いまして私は日本が自主権を回復しましても、中共との貿易は期待できない、またすべきでない、こう思うのでありますが、その点ひとつ御意見を承りたいと思います。
  21. 水上達三

    水上公述人 先ほど私が申し上げました、自主権が回復されたならばそういう問題はなくなるだろうといつたのは為替の問題であります。中国との貿易につきましては、将来そういう状態になりましたらば、当然隣邦のことですから、お互いに輸出入ができればけつこうじやないかと、一経済人として考えておるわけであります。しかし見通しとしましては、決してそういう考えは持つてはおりませんけれども、これは別の問題になると思います。
  22. 林百郎

    ○林(百)委員 まあ政治的な條件ですね。中共日本に侵略して来るとか、ソビエトが侵略して来るとか、あるいは——むしろアメリカの方が日本に軍事基地の提供を要求しておるから、どちらが日本の国を隷属化し侵略する危險があるかどうか、これは政治問題だと思うのです。経済人としてはやはり自分のほしいものが安く入つて来て、ことにこういう買手の市場の場合には、ほしいものが入つて来るということが大事だと思う。だから同じ資本主義の国のイギリスでも、中共貿易はどんどんしております。またアメリカも従前まではしていたわけです。だから私の聞くのは、経済人として、たとえば採算の点からいつても、遠い太平洋を横切つて高い船賃を出して、しかも非常に向うでも乏しいものを、政治的なひもやいろいろつけられて、アメリカからこちらに輸入するというような場合には、隣邦である中国から安く、たとえば石炭なら一トン十一ドルくらい。アメリカから買えば二十二、三ドルになるに思います。最近は船賃が上りましたから。こういうことからいいましても、また粘結炭なども、また鉄鉱石なども、アメリカではもう鉄鉱石が非常に不十分ですが、中国には相当の鉄鉱石もありますから、そういうそろばんの計算の点からいつたら、できるならやはり中共貿易をする方が好ましいというように経済人としてはお考えになるかどうかということを、私聞いていたわけなんです。その点はどうなんですか、ことに最近では、中国の方から、日本禁止があつた後も、なおオツフアーが参りまして、相当のオツフアーが向うから実は来ておるわけでありますが、鉄鉱石、粘結炭あるいはいろいろのオツフアーはその後も来ておるわけですから、こういうのもやはり経済人としては、採算の上からはむしろ中共貿易が好ましいというように、お考えになつておるかどうかということを聞いたわけなんです。もう一度その点を確かめておきたい。
  23. 水上達三

    水上公述人 中共との貿易は、われわれ商売人から見ますと、非常に不安が多いのです。今オツフアーが来ておられるようなお話がありましたけれども、おそらくそういうものを突き詰めて行きますと、信用のできないものが大部分じやないかと思うのです。経済人として安いものを有利に日本の国のために買いつけるということは、当然のことでありますけれども、また一面その危險というものをはつきり踏んで行かなければならない。この危險という点を考えますと、今までの例では、中共のものは大体において契約不履行になつたものが非常に多いのです。そういうわけで、ことにまた国際物価が上つておりますとき、その国際物価に応じた値段でオツフアーして来るのが例でありまして、そういう特別安いものを売つてくれるということもないようであります。従いまして確実な方法で、また日本のために有利なものであるならば、もちろん経済人としてはほしいわけでありますが、そういうふうな根本條件があるわけであります。それからまた、中国との問題につきましては、政治上の問題もありまして、ただ物をほしいから、すぐそれをどうというふうに簡單には行かないような実情にあるわけでありますことは、よく御承知通りだと思います。
  24. 小坂善太郎

    小坂委員長 御苦労さまでした。  次に日産協事務局長、堀越禎三氏にお願いしたいと思います。堀越公述人
  25. 堀越禎三

    ○堀越公述人 堀越であります。大分時間がたちましたので、簡潔に要点だけ申し上げます。  私、この予算に対する希望といたしましては、昨年度の予算は、国債償還費という一種のクツシヨンを持つてつたのでありますが、今年の予算には、見ますところ、そういうクツシヨンがない、従つて今年、ことに国際情勢変化あるいは国内的にもまた大きな変化の予想されるかもしれない来年度の予算については、何らかここにクツシヨンが必要ではあるまいかと考えるのでありますが、そのクツシヨンとして、先ほど水上さんが言われましたインヴエントリー・フアイナンスとして五百億円を外為委員会に振り当ててありますものを、これが性質から申して、クツシヨンになり得るものでないかと思うのであります。これは先ほど水上さんが言われたように、日本銀行外為の持つておるドルを買うごとによつて、何も予算によらずにやれるわけでありますから、これはインフレ助長というような懸念を、一部ではされておるようでありますが、金融面におけるインフレ防止は、私は今日のごとく各銀行が日本銀行から借り入れることによつてのみ貸出しができるといつた現状にある限り、日本銀行の方針いかんによつて金融の引締めは十分できると考えておるのであります。従つてこのインヴエントリーの五百億を他の用途に合わしても、インフレが招来するとは考えていないのであります。  もう一つ私の申し上げたいことは、この国際情勢に処して日本は今日ほど二層国民生活水準向上ということが、大切になつておる時期はないと思うのであります。その意味におきまして、先般財界からダレス特使に対しまして出しました意見書の中にも、講和の條件としては、国民生活の向上充実ということを満たされたものでなければ困るということをはつきり表明いたしておつたのであります。その点で、今度の予算におきまして、公共事業費が相当削減されておりますことを、まことに遺憾に存じております。その意味でインヴエントリーの分の幾分でも、公共事業の方にまわすという御考慮を願えるものであれば、まことに幸いではないかと思うのであります。  それから先ほど水上さんもお触れになりましたが、財界で今一番大きな問題としておりますことは、統制であります。最近盛んに統制復活論が出ておりますが、私の考えますところでは、統制復活論をなさる方は、ドツジ氏が来られて一等最初に日本政府に要求されたことをお忘れになつておるのではないかと思うのであります。と言いますのは、ドツジ氏が最初に日本政府に命ぜられたことは、価格補給金の撤廃と一本為替相場の確立であつたのであります。このことは当時行われておりました鎖国経済的な低物価政策、そうして傾斜生産方式、こういうものは、結局日本経済に向かないという日本経済の本質を見きわめて、自由経済に移行しろということを命ぜられたものだと私は解釈しておるのであります。と申しますのは、日本経済はアメリカの経済とは異なつてアメリカのごとく自国内の資源でもつて繁栄を来し得る国柄ではなく、日本経済原料輸入し、製品輸出するといういわゆる加工貿易に依存せざるを得ない宿命を持つておる経済であります。従いまして、貿易というものは、相手があるものであり、取引によつてできるものでありますので、当初から予定をして物を運んで行くということは、貿易では非常に困難であります。従つて貿易と計画経済というものとは、まことに相いれない性質を持つております。もう一つ輸出でありますが、輸出はこれは特に品質をよくする。そして国際競争場裡において、他国の商品に勝つて外国に出て行かなければならない。従つて品質をよくするということは、とかく量のみを重しとする統制とは、これまた相いれないのであります。これは皆様に釈迦に説法になりまして、恐縮でありますが、統制下においては、いかに量のみが重んぜられて、経済の面に非常な不経済なことを要求するかということは、国有鉄道の石炭の消費量を見ますと判然といたしております。昭和二十二年度——これは財政年度でありますが、昭和二十二年度におきまして、国鉄が使いました石炭は、六百三十七万トンに及んでおりますが、その同年度において国鉄が完遂いたしました輸送量は、九千七百万トンであります。昭和二十五年度はまだ上半期分しかはつきりわかつておりませんが、かりに上半期の分を二倍にいたしまして、これを二十五年度全年度のものと考えましてやりますると、二十五年度の石炭消費量は四百五十四万トンでありまして、先述いたしました輸送量は一億二千五百万トンであります。これは先述いたす予想の輸送量であります。従つてこれはおそらく下半期におきましてはもつと輸送量は上ると思いますので、この数字はさらにふえるとは思うのでありまするが、とにかくこの両年度——つまり統制下の二十二度と、統制がはずれておる自由経済における二十五年度とは、輸送量におきましては約三千万トンの輸送量の増加、つまり三割以上の輸送量の増加を来しておりまするにかかわらず、石炭の消費量は二百万トンも減つておるのであります。このことはつまりカロリーが、当時の五千四百カロリーから六千二百カロリーに上つた結果であります。ドツジ氏が自由経済に移行しろ、つまり統制に関連して起りまする価格補給金あるいは公団買入れ方式というようなものではインフレは防止できない。自由経済にもどれといつて為替相場を立てられた。この本質、その思い切つた英断、おそらくあのときドツジ氏がなお傾斜生産方式だとかあるいは低物価政策に未練を残して、その措置を是認されたならば、今日この経済の安定と復興とは来し得なかつたろうと私は想像するのであります。日本経済貿易で立つて行かなければならない経済である以上、私は統制というものは、この日本経済の生命線を脅かす危險があると存ずるのでありまして、その意味におきまして、今後の統制につきましては、よほどその面に考慮を払うべきであります。今日統制論の出ておりますのは、物価の上昇によるものでありまして、これは自由価格におきまして消費財の物価は、昨年の一月から六月の間に二割三分の下落を示しております。しかるに七月以降十二月にかけまして、下半期におきましては一割五分の騰貴を示しておるのであります。特に生産財は最もはなはだしく、前半期におきまして一割三分の下落を示しましたものが、七月から十二月の後半期におきましては三割一分の騰貴を示したのであります。これは何ゆえかと申しますれば、先ほど水上さんのおつしやいました通り輸入が立ち遅れたためでありまして、上半期におきまして輸入が月平均七千四百万ドルでありましたものが、下半期に入りまして七千万ドルなつた。さらにこれに対して、輸出は上半期において月平均五千四百万ドルでありましたものが、下年期におきましては七千八百万ドル増加しております。つまり輸入が減つて輸出が著しく増加したために国内の物資が不足を来し、特に生産財のストツクがなくなつたためのこの騰貴であります。しかし日本経済は、非常に国内経済というものは狭いのであります。従つてここに多少、少量の、つまりアメリカから見ればきわめて少量の物資を日本が入れることさえできれば、この物価の上昇はただちに食いとめ得るのであります。むしろ下落の方へ持つて行くことができるのであります。従つてこの物価の足取りを見ただけで、ただちに低物価政策とか、あるいは公団方式とかいうようなものの復活を考えられることは、私はすこぶる早計な考え方であつて、もつと根本的に申せば、少くとも朝鮮事件以後に起きました特需については、特にアメリカがその原料について手当をしてくれるというような面を考慮してもらうべきでありまして、こういう点につきまして議会の皆様におきまして、どうか御盡力をお願いいたしたいと思う次第であります。  なお国民の購買力が著しくアメリカとも違つておるという点から、大衆購買力から来る日本インフレ懸念というものも、私はそれほど懸念すべきものではないと思うのであります。かりに二十五年度の国民所得で換算いたしてみますると、一人当りの国民所得が九十ドルであります。税金を差引きますと、手取り七十三ドルになる。これを大体一家族五人として五倍にいたしますと三百六十五ドルちようど一箇月三十ドルの收入ということになる。ただいま民間給料は一万五千円のベースでありますが、大体三十ドルが常識的にも当つておるのであります。これに対しまして、アメリカの製造工業に従事いたしておりまする労働者の賃金、これは昨年の九月の統計で見ますると、一時間一ドル四十八セントであります。一週間四十九時間、約四十一時間働いておりますので、收入は一週間六十ドルであります。つまりアメリカの労働者の一週間の收入の半分で、一箇月をやり繰りしておるというのが、今の日本経済の姿であります。従つて大衆購買力によつて生じるインフレというものは、私はアメリカ人が考えるような——アメリカにおきましては、大衆購買力から生ずるインフレというものを最も懸念されておるのでありますが、日本においてはそれほど懸念する要なく、財政及び金融面そうして輸入、この三つの手段によりまして十分インフレは防ぎ得ると思うのであります。なお先ほど水上公述人からおつしやいました、外国から特にわけてもらつたもの、あるいは世界的な稀少物資、こういうようなものにつきましては、私は生産監督、特にこういう品物を入れて、これをつくるということについて、生産者に対する嚴重なる監督、あるいは生産者が非常に多い場合には、使用禁止品目をつくつて監督して行くというような措置で、十分目的は達し得るのではないかと思うのであります。それによつて割当ててくれた外国に対する道義と、また日本の責任も果し得るのではないかと考えておるのであります。要するに私は、統制というものはいろいろな弊害があるという点は、十分御認識願いたいと思います。ただいまここに当時の商工大臣の水谷さんもいらつしやいます場が、もう一つ、つけ加えて申しますと、石炭坑夫に当時衣料の特配をいたしております。私安本の副長官をしておりましたが、実は坑夫は原反を非常に望んだのであります。つまり作業衣よりも原反、女房の下着類がむしろ欲しかつたという現状であつたにもかかわらず作業衣が配給になつてつたのであります。私はその点で、原反を配給したいと非常に努力いたしましたが、なかなか思うように参りません、ということは加工業者の保護の名のもとに、作業衣がつくられておつたのであります。こういうふうな点に、統制の弊害がどうしても出て来るのでありますので、こういう点で特に御認識を願つて、現在輸入ということが最も大切であるという点は申すまでもないのでありまして、皆さん御承知と思いますが、その点で十分防げるのではないかと思います。  なお小さな点でありますが、二、三財界としての要望を申し上げまして打切りたいと思います。再評価の問題でありますが、今度大蔵省は資本蓄積ということが最も日本現状において大切だ、これはドツジ氏も十分認識されたようでありますが、この資本蓄積を標榜して今度再々評価をやらせる。昨年で打切つた再評価をもう一度今年やらせるということでありますが、資本蓄積を標榜してやる再々評価は、昨年の單なる貨幣価値の変更に合致させるための再評価、もちろん昨年度も資本蓄積を重しとしたための再評価ではありますが、昨年度とはまた違つて今年は特に資本蓄積ということを重く見た再々評価であるとするならば、少くとも再評価をする場合の障害になるといつた部分は、できるだけとつていただきたいのであります。従いまして再評価に対して再評価税が課せられる。これは理論的にも不合理であつて、單に租税の公平理論からのみ来ておることは、シヤウプ勧告案にも書いてある通りでありますが、すでに昨年再評価いたしました会社は三%の再評価税を払つているのでありますから、これをとりもどすとはあえて申さないのでありますが、今年の再々評価につきましては、昨年の分も合せて三%で打切る。今年新しく再々評価するものも三%、昨年再評価したものも三%、この三%で打切るということにしていただきたいのでありまして、この再評価税のために、再評価につきまして会社が相当躊躇し、再評価の限度を低くしている事実は、おおいがたい点であります。  さらに固定資産税等の問題がありますが、この固定資産税につきましても、いわゆる償却資産に対する固定資産税のごときは、非常な惡税といつていいのであります。むしろ率が非常に低ければ——アメリカのステートにおいては、やつておるところはあるようでありますが、それは問題にならないほど率が低いのでありまして、率を低くしてやつてもらいたいと思うのであります。  そうしてこの再評価と並んで申し上げたいことは、償却不足の繰越しということが現在認められていないのであります。昔は償却不足の繰越しを税法上認めておつたのでありまするが、今日はそれにかわりまして耐用年数の延長ということで認めているのであります。耐用年数の延長をするということは、たとえて申しますれば、十年で償却すべきものが、利益がないために三年間償却を怠らざるを得なかつた、そういう場合には、三年だけ繰延べを今税では認めておるのであります。というのは、十年で償却すべき商品を十三年で償却してもよろしいということを国税庁が認めるということでありまして、これは結局その残りの三年というものは、資本の食いつぶしをやることになるのであります。つまり十年で償却すべきものを十三年で償却してよろしいということは、十年目にすでに新しい商品ととりかえなければならないにもかかわらず、なお三年間これを使おうということは、それだけの資本の食いつぶしをやるわけであります。これは資本償却不足を繰延べることを認め、利益のあつたときにその繰延べた償却が一時にできるという、耐用年数はどこまでも十年とし、そうしてその期間においていつこれを償却してもよろしいというような態勢をぜひとつていただきたいと思うのであります。これは資本蓄積の真の意味ではないかと思うのであります。  さらに、先ほど船舶の問題が水上さんから出ましたので、私は船舶の問題も皆さんはよく御存じだと思いますので申し上げません。  鉄道の問題につきまして、朝鮮事変以後特需その他の関係上、鉄道の輸送は非常に円滑を欠きまして、約百六十万トンくらいの滯貨が、いわゆる駅頭滯貨というものが生じておるような現状であります。国鉄の廃車の補充は年五千輛を必要としておるということが言われておりまするが、この点について十分予算面における措置、もし国鉄の費用でまかない得ざるところは、予算面その他の措置で十分な御考慮をお願いいたしたいと思います。  さらに電話の問題でありますが、電話は朝鮮事変の前に、電話審議会におきまして、公営あるいは公共事業体等をやめて電話私営ということの方針を決定され、これは政府もまた関係筋もすべて認められたのでありまするが、朝鮮事変勃発のために、国際情勢変化から、一時これが実施が延びておるといつた現状であります。しかるに政府は、今度有線電気通信法案とか電気通信営業法案というようなものを国会に御提出になつておるようでありまするが、この内容を見ますると、当時の私営方面への移管とはまつたくその趣旨を異にして、むしろ電話国営の線を強化しておるような面が認められますので、これはぜひともその点におきましては、いろいろな面におきまして、民間の者が電話の施設、改善費を出すとかあるいはそういう民間の費用でも電話をやれる、政府は電話の管理権を握つておるということでいいのではないかと思うのでありますが、こういう面で電話をもう少し能率的なものにしていただかなければ、これは実業その他あらゆる面の能率に非常な影響を及ぼしております。大蔵大臣がワシントンに参りまして申しましたように、ワシントンから日本へかけるには四分でかかつたが、それから大蔵省を呼び出すのに三十分かかつたと言つておりましたが、こういう点で、実にその点は、今度の法案を御審議の場合に、十分御審議をお願いいたしたいと思うのであります。  先ほど上林山さんから運賃の点で、水上公述人に対して御質問がありましたが、私の考えをちよつと一応申し上げますと、なるほど現在世界的に運賃には、一種の契約があつて運賃日本だけ統制してもこれは問題にはならぬと思うのでありますが、そうでなくして私が見ておりまする点では、現在の日本外国の船を追つかけて、そして外国の船に頼んで乘せてもらつているというような形でありまするために、多少他国の場合に比較して高い運賃を払つておるのじやないかと私は思うのであります。それはつまり業者が個々に買付に向うに出かけておりまして、そしてそれは買付をして来るだけであります。つまりCIFのCだけをきめて帰つて来て、あとは向うまかせといつた形になつている。これはまことに遺憾でありますので、私は今後、これは政府がやる仕事ではなくして、むしろ財界みずからがやるべき仕事でありますが、ある駐在人——簡單な駐在人でけつこうでありますが、駐在人、もし事務所を置けばなおけつこうでありますが、海外にそういう輸送担当の民間人を駐在させまして、それがすべてのカーゴーを雇い入れる、船を雇い入れる仕事をそこに集中させる。従つて具体的に申しますれば、富士製鉄、八幡製鉄、日本鋼管も、向うで買いつけたならば、その買いつけた品物を日本へ運ぶことは、すべてその人にまかして来るということになりますと、その人がいろいろなカーゴーを持つておりますから、今度は船がその人を追つかけて来ることになる。従つてその人が運賃を相当安くせしめることができるのではないか。現在のように船を追つかけておりますと、どうしても高くなるのでありますが、船から追つかけさせるような措置を講ずべきじやないかと思うのであります。上林山さんの御意見も、そこに御趣意があつたのではないかと思うのでちよつと簡單に補足いたしておきます。
  26. 小坂善太郎

    小坂委員長 何か御質疑はありませんか。
  27. 上林山榮吉

    ○上林山委員 先ほどのお話によりますと、本年度の予算をこのまま遂行しても大したインフレーシヨンは起らないというようなふうに承つたのでありまするが、われわれも一応そういうふうに考えるのでありますけれども、部分的にあるいは国際情勢変化等を勘案して考えますると、ある程度インフレ傾向の徴候も見られておる。だからこれを生活水準向上という点と関連して考えまするに、あなたとしては、どの程度のパーセントを示すか、いわゆるインフレーシヨンと生活費との関係、それにおいてどのくらいのパーセントでインフレは高揚する、ここ半年なりあるいは一年なりの間にどの程度になると思われるか。この点はたとえば二十六年度の予算をこのまま遂行して、途中においてあるいは補正予算を組まなければならないのじやないかというようなところにも関係すると思います。これはいろいろ議論がありまして、私どもは先ほど申し上げるごとく、大したインフレーシヨンにはならない。だから緊急やむを得ない災害のごときものについては、補正予算を場合によつては組まなければならないけれども、大して補正予算を組まなくてもよろしい程度に終るのじやないか、こういうふうに考えるのでありまするが、これは予算遂行上非常に重要な要点だと思いますので、この点を一点だけ伺つておきたいと存じます。  それからつけ加えて申し上げますが、公共事業の費用が予算面から昨年に比して減つておるという御見解でありまするが、私どもの見解では、中央、地方の予算をひつくるめて考えますと、事業の分量と費用においても、公共事業の費用は増加しておる、こういうふうに見えるのでありまするが、この点はどういうふうにお考えになるか、この二点だけお伺いしておきたいと思います。
  28. 堀越禎三

    ○堀越公述人 ただいま御質問の前の部分でございますが、生活水準インフレーシヨンがどのくらい影響するか、そういう御質問かと存じます。私は皆さん御承知にもかかわらず日本の購買力の面を申し上げましたのは、これは実はアメリカ人に理解してもらうために、こういう数字をひねくつたのであります。従つて私は今の日本生活水準の問題から来るインフレとの関連から言えば、物資で申すならば、食糧と衣料とに盡きるのじやないかと思うのであります。問題はやはり食糧でありますが、小麦が外国から入ります場合に、非常に運賃が高くなつて小麦が高くなるという面があれば、これはどうしても価格補給金が必要になつて来るのじやないかと思います。しかし運賃の見通しが、現在ではなかなかいろいろ議論をする人がありますが、御承知だと存じますが、船舶が非常に逼迫しておりますのは、イギリスの石炭とインドの小麦、この二つが一度に昨年暮れから加わつて来たために船舶が非常に逼迫して来た、しかしこれは二月か三月ごろには終了するわけでありまして、四月以降は運賃は下るであろうという予想を立てておる人もある。これは私にはよく存じませんが、專門家はそういう予想を立てております。  それからもう一つは衣料でありますが、衣料の面におきましては、これは要するに向うから割当てられる綿花の問題、そして幾らを内需に向けるかという問題と、今度は人絹が問題になると思います。日本は幸いにしまして、人絹は今後昨年よりもさらに増加する予想であります。綿花につきましては、世界各国に先んじて日本が一番大きな割当をもらつておる現状であります。先般も追加割当があつて相当な割当をもらつておりますので、この内需の確保を政府においていたします限りにおいて、それほど日本生活水準に大きな影響をするほどの消費物資の高騰はないと見ております。ただこの間の思惑商人の取締りが必要であつて、これは金融面から相当引締め得るのではないかと考えております。
  29. 林百郎

    ○林(百)委員 貿易の点ですが、輸入が非常に重要だという先ほどの御説明だつたのですが、特に生活に必要な、たとえば塩、大豆、羊毛などを見ましても、塩は本年度計画のうち七一%どまり、大豆が五一%どまり、羊毛はおそらく二九%くらいにとどまるのではないかというような予測でありますが、そこでたとえば大豆、塩等の輸入が非常に窮迫して来たために、現にわれわれの生活に最も必要な、しようゆだとか、みその値が非常に上つて来た。衣料なども、羊毛の事情もありますが、たとえば洋服が昨年の中ごろには一万円くらいでできたのが、今は一万越さなければできない。あなたの言われるように、それほど輸入の困難性がわれわれの生活に響いて来ない、インフレーシヨンの危險はない、金融の引締めで何とかなるというふうな、そんななまやさしい事情でないようにわれわれ考えます。現にきようの新聞を見ましても、一つはパルプが不足して来て紙がどうなるか見込みが立たぬ、もう一つは塩の輸入が困難で、これに対する対策を急遽立てなければならぬという問題があります。こういう関係からいいまして、昭和二十六年度の輸入の見通しについては、大体政府の考えているようなものがそのまま行われるかどうか、あるいは專門家の立場からして、非常に困難な事情があるかどうか、まずその点をお伺いしておきたいと思います。
  30. 堀越禎三

    ○堀越公述人 ただいま生活水準インフレが影響しないという面を申し上げましたのは、今林さんからおつしやいました輸入が確保できるという前提であります。私は確保できると思つております。大豆の点も多少船舶の不足から逼迫しておるのですが、船舶の何が通ずれば大豆は入つて来る。塩はこれも問題でありますが、塩は結局專売局の会計に押えられておる点があるのではないかという感じがいたすのであります。つまりあまり高い塩は買えないという点があるのであります。しかし相当高い塩を買つても專売局の会計でまかなつて行けるように、政府において措置をとれば、塩も入るのではないかと思うのであります。要するにそういう面でまずもつて思い切つた措置をとつて輸入促進して行けば、これはおそらくそんなに上る面ではなかろうと思います。林さんの言われました羊毛の面は、昨年むしろ原料面を考慮しない点から値が下り過ぎた点が少しあるのであります。あの昨年の大月以降の羊毛の国際的な買付ぶりを見ておりましたならば、日本はもつと早く羊毛をもつと買いつけるべきだつたということが言えると思うのであります。今後、しかしだからといつてこれがどこまで逼迫して行くかということは、これは国際情勢いかんにかかる問題であると私は申し上げていいと思うのであります。現在のように一応各国の買付が一服しておるという現状から見ますと、今後の羊毛の輸入はそうむずかしいものではないのではないか。要するに濠州は羊毛を売らなければ食つて行けない国でありますから、案外私としては楽観いたしておるのでありますが、昨年の中共進入の当時のごとき緊迫した世界情勢がまた出て来ればこれは別であります。しかし現状なら私は楽観し得るのだと思います。
  31. 林百郎

    ○林(百)委員 私は安本のCPIの統計を見ましても、昨年の六月から今年の二月までに繊維品は七一%、食糧は一八%の騰貴をし、金属類は倍に騰貴しておる。これは政府の、あなたの元おいでになつた安本の統計であります。これが国民の生活に非常に甚大な影響を及ぼすことは明らかであります。それは一つは先ほど言いましたような輸入の困難性があります。輸入の困難の一つ要素として、先ほどからも問題になりました船賃、船舶事情が窮迫しているために船賃が急激に騰貴しておる。この事情ですが、最近アメリカの船賃の騰貴の数字をお持ちでしたら参考までにお聞きしておきたい。
  32. 堀越禎三

    ○堀越公述人 今はつきりした数字を持つておりません。
  33. 林百郎

    ○林(百)委員 そこでこれは私の考えですが、私が共産党の立場からというほかにも、やはりどうしてもそうした高い船賃で、しかもアメリカが軍事的にあらゆる経済を切りかえて物資が不足しておる際に、遠い太平洋の向うから物資を輸入するということのほかに、やはり中国貿易をするということは真剣に考えてみなければならない問題だと思う。たとえば塩の問題もすぐ沿海州にあるものを、わざわざメキシコやスペインから買わなければならぬというような問題も出て来るわけなんです。先ほどの水上さんの御意見ですと、中共貿易は非常に不安だというお話でしたが、しかし中共貿易御存じ通り国家が貿易を管理しておるのであります。エスクロー・バーターでむしろ指導権が中国に最近は移つておる。むしろ責任をもつて政府の管理のもとに行われている貿易が特に不安定だということは、われわれは考えられない。たとえばアメリカの貿易については先ほど話があつたようにクレームの問題もあるし、キヤンセルの問題もあるわけであります。あなた方專門の実業家の立場からいつて、そんなに中共貿易が不安定なのか、その実情をお聞きしたいと思います。
  34. 堀越禎三

    ○堀越公述人 私は中共と直接貿易したことがございませんので、実際としては申し上げかねるのであります。理論で申し上げてもしようがないのでありますけれども、私は貿易というものは、お互いがお互いの内情をよく知つて、初めてお互いが信頼して商売ができるのであります。まず林さんにお願いしたいことは、鉄のカーテンを上げていただきたいのであります。
  35. 小坂善太郎

    小坂委員長 この程度にしましよう。
  36. 林百郎

    ○林(百)委員 結論を申し上げます。共産党が政権をとりますと、中共事情がよくわかりますから、そうすると、貿易は幾らでもできます。そういうように御協力願います。
  37. 小坂善太郎

    小坂委員長 午前中はこの程度にいたしまして、午後一時半から再開いたします。  これにて暫時休憩いたします。     午後零時十分休憩      ————◇—————     午後一時四十二分開議
  38. 小坂善太郎

    小坂委員長 休憩前に引続きまして、公聽会を開会いたします。  これより湯淺蓄電池株式会社社長湯淺佑一君より御意見の開陳を願います。湯淺公述人
  39. 湯淺佑一

    湯淺公述人 僭越でございますが、昭和二十六年度の財政予算に対してまして、私の若干の意見を申し述べさしていただきたいと存じます。  日本経済自立は、今日焦眉の急務であると存ずるのでございますが、この自立経済達成の方策といたしまして最も重要なことは、資本蓄積と国際経済との提携である、こう信ずるのでございます。この資本蓄積のためには、強力なる産業経済政策の遂行が必要でございまして、貧弱な日本経済力を増強するため、労使が協力いたしまして、何をおいてもまず産業の振興、生産増強ということに專心すべきは言うまでもないところでございまして、昭和二十六年度予算の特色の第四点に示されたように、産業関係投資に約九百七十億円も計上されておりますのは当然の帰結でありまして、むしろそれだけでは、六千五百億円の総歳出予算に対しましてなお少額過ぎるほどでございます。従いまして資本蓄積を阻害するような配当金、利子あるいは積立金あるいは事業所得に対する課税の大幅な軽減の必要であることは、申すまでもないのでございましてその結果、ある程度インフレーシヨンが起りましても、別段さしつかえはないと信じておるのでございます。ことに日本経済の自立のためには、国際経済と結びつかなくてはならないのでありまして、これがため貿易の振興あるいはクレジツトの設定ということは、絶対不可欠の要件と存ずるのでございまして、現下世界情勢とにらみ合せまして、西欧民主主義国たる英、米の経済と協力提携することが、最も妥当であることまた論をまたないところでございます。以上関連して申し上げましたところの資本蓄積を容易ならしめ、あるいは強力なる産業経済政策を推進して参りまする裏づけとして、社会不安あるいは労働不安を除去し、あるいは緩和し、あるいはこれを防止いたしますところの社会政策措置を講ずることが、反面において必要となつて来るのでございまして、本日私の公述しようといたします要点も、またこの一点に帰着するのでございます。  予算を見まして、私の最も注目いたしましたのは、この社会政策的経費と治安の費用とでございました。社会不安と労働不安というものは、資本蓄積を妨げ、産業経済政策の遂行にブレーキをかけるものでございますから、これを除去し、これを緩和し、あるいはこれを防止するための社会政策、嚴密に申せば、労働対策なりあるいは社会保障の実行が必要と相なるのでございます。治安もまた生活安定によつて確保されるのでございまするし、健全なる国民の判断力もまた生活の安定によつてもたらされると思うのでございます。国民の健全なる判断力こそ、防共の基盤であると言えると存ずるのでございます。また貿易外資導入による国際経済との結合提携は、治安が確保されなくてはとうてい望み得ないと存ずるのでございます。こういう意味で、防衛態勢の強化は、日本経済の自立のため必要であると思うのでございます。特に警察予備隊あるいは海上保安隊の経費が約三百億円計上されておるのでございまするが、それはあまりに少額過ぎるというふうに考えておる次第でございます。  さて社会保障の方は、この表で見ますと社会政策的経費ということになつておりまするが、これが約五百億円計上されておるのでございますが、そのうち同胞引揚費の三十七億円というものをそれに加えるのはちよつと変でございますので、それを差引いて、結局四百七十億円計上いたしますると、前年度よりも百二十億円の増加に相なるのでございます。総合的な社会保障計画を実施するためには、現在の財政力というものとマツチさせるといたしましても、少くとも総額において七百億円以上を要すると存ずるのでございます。今回の予算はこの総合計画に基いて編成されておりませんので、はなはだその点は遺憾であると存じまするが、これはぜひ次年度からは実行せられたい、かように考えております。もしその総合計画がかわりに実行されないというのでありまするならば、この予算表にございますところの社会政策の経費を少くとも七百億円までは増額すること、それからたとえばそれ以外には、勤労者の生活安定と密接な関係を持つております退職金あるいは退職積立金に対する免税といつた措置が当然とられなければならないと存じておる次第でございます。社会保障の総合計画は、御承知通り社会保障制度審議会の勧告案として昨年の十月十四日の総会で決定されたものでありまして、審議会の委員には財界、学界、国会議員、官吏、労働界の各界を代表する者を網羅しておつたのでございます。私は財界代表といたしまして、経営者の立場から次のような点を明らかにして、その勧告案に賛成をいたしたものでございますが、これはこの予算に関連いたしますので、特に申し添えておきたいと存じます。  すなわち第一の前提は、この勧告案は資本主義経済の基盤に立つものであるということを條件とすべきであるという点でございます。憲法第二十五條は、国民の健康にして文化的な最低限度の生活を保障しておるのであります。また労働基準法には、人たるに値する最低生活と申しておるのでございますが、保障するということは、何も国民の一人々々に具体的なそういう生活を享受するための請求権を与えたものではなくて、国家の政策の指導方針なり指導精神というものを示したにすぎない、かように解するのでありまして、なまけても働いても同じことであるというように、国民の勤労意欲を減殺いたしまして、結局なまけることを奨励するような意味は毫末もないと存じております。大いに働き大いに努力する者の能力や能率を認めて行くという、個人や企業の能率を上げるのには最も適切な制度であるところの資本主義経済を否定するものでは断じてないという点でございます。第二の点は、社会保險が根幹であつて、一方的な国家の扶助というものが主軸ではないという前提でございます。各人ができるだけ努力して、みずからの生活を自立してやつて行けるように、全力を盡してなお足らないところを国家が補つて行くという補完的な意味において、あるいは不具廃疾者のごとき社会の脱落者や、真にやむを得ない理由から生活に困窮する者を、いわゆる公的扶助によつて国家がこれを助けて行くべきものであつて、決して国民をしていたずらに依存心を起させるような制度であつてはならないということであります。従つてたとえば国家と企業の経営者と労働者とが、おのおのその職分に応じて、おのおのの責任と義務を分担して行くといつた社会保險の性格なり形が、この制度の根幹になるべきものであるという点でございます。さらにこの勧告案を実施に移す場合の注意といたしまして、次の二つを條件として強調いたしたのでございます。  その第一点は国民の社会的訓練と道義心の高揚ということでございまして、遵法精神とか社会連帶観念といつたことが徹底しなくては、いかに制度が設けられましても実効がないと存ずるのでございます。それから第二の点は、この制度のため国民経済生産費を高めない、コストを高めないという点でございます。社会保障制度に伴うところの費用は、個人、法人ともに相当の負担を加重すると考えるのでございますが、事業等におきましては、諸種の厚生福利費用がかかる上に、なお新たにこうした社会保障の経費が加わつて来るといたしますれば、企業のコストが直接高くなつて参りまして、そのために輸出力を減退する、従つて経済力に惡影響を及ぼすと考えられるのでございます。こういう観点から、日本の社会保障制度はあくまでも財政の可能なる範囲において、財政にマツチするものでなくはならないと一般に主張されておりますことは、まことに当然であると存ずる次第であります。よく反対意見がございまして、たとえば社会保障の費用負担がふえても、事業は健康な労働者を雇い得るから、結局は利益になるではないかというふうに、間接的な効果を言われるのでありまするが、企業といたしましては、直接コストを高くいたしまして、これが現実の問題として切実な影響を与えて参りますと、せつかくの理想も実現することのできないほどに経済的な基盤をくずしてしまうのでございます。従いまして企業としては、社会保障費が不当に高くかかるということは、絶対避けらるべきであると信じておる次第でございます。  以上で大体申し述べたのでありまするが、これを要するに、将来この予算表に見らるるごとく、ばらばらに計上されている社会政策的経費というものではなくて、これらを重点的に一括総合した社会保障費として、しかも従来各企業及び各個人の負担して来たものよりも多くならない限度において、これを社会保障税として個人及び法人から適正なる税率をもつて徴收さるることが最も望ましいと考えられるのでございます。特にこの社会保障なる名称を用うることによつて、全国民が啓蒙され、あるいは資本主義経済発展のためには、その裏づけとして必要な存在であることを経営者もはつきり自覚することができまして、良心的な事業送行に專心することが期待されるのでございます。  最後に結論といたしまして、この六千五百億円の予算に対しまして、五百億円という社会政策的経費は、考えようによつては決して少くないでありましようが、社会政策的経費こそ再軍備にかわるべき費用であると考えますならば、はなはだ少額であるといわなくてはなりません。社会保障によつて国民生活の安定が確保され、治安の維持ができれば、共産党の侵略を毫末も恐れる必要はないと信ずるのであります。願わくは次の予算案には、社会保障制度勧告案の線に沿う実効的の数字が、画然と表示されんことを衷心より希望いたしまして、以上の公述を終了いたすことにいたします。ありがとうございました。
  40. 小坂善太郎

    小坂委員長 何か御質疑はありませんか。
  41. 林百郎

    ○林(百)委員 経営者の立場からいろいろお述べになつておるために、われわれといろいろの点で非常に考えが違つている点がございましたが、先ほどお聞きしましたところでは、国民は健康で文化的な最低限度の生活を営むというのは権利ではないのだというお話ですが、これは憲法で見ますと、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあります。あなたはこれをどういうように解釈なさつたのですか。
  42. 湯淺佑一

    湯淺公述人 これは私の考えでは、もちろん国家全体の指導方針なり指導精神として、この憲法によつてそうした権利が与えられるということは、私ども十分理解を持つべきである。しかしながら具体的にそれならばそういう生活をわれわれはしていないということに対して、裁判所的な、請求権、そういう生活を国家に対して請求し得るところの権利というものは、法律的にはないという大審院の判決例がございまして、そういうような大審院の判決例等によつて、一応私どもは具体的にはそういう権利はない、しかし国家の政策なりあらゆる点において、そういう指導精神で理解して行かなければならぬということを一応常識として考えておる、こういうふうに私は現在は考えております。
  43. 林百郎

    ○林(百)委員 それは逆であつて、こういうことじやないですか。憲法に対する請求権は、憲法にこうあるから最高裁判所に請求するということではなく、具体的な問題で地方裁判所へ請求しろ、具体的な場合にむしろ請求権があるということじやないですか。従つて憲法で保障されている国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利があるということは、当然権利として保障される。ただその権利の請求する形は、具体的な要求の形で出すべきだというのが、大審院の判例じやないですか。
  44. 湯淺佑一

    湯淺公述人 私は非常に寡聞でございまして、專門家でございませんので、そういう具体的なことにつきましてはよく存じませんけれども、大体いろいろ経営者協会その他についての資料に関する限りは、大審院の判決例においてはそうした具体的な請求権はこれを認めない、こういうふうに私は記憶しております。
  45. 林百郎

    ○林(百)委員 それから先ほどまた警察予備隊や海上保安庁の費用も足りないというようなお話もあつたようですが、今の憲法で保障されている勤労の権利とも関連して来るのですが、あなたの先ほどの話では、仕事があつてもなまけている者に対して何も政府は生活を保障してやる必要がないと言われますが、むしろ今の国民実情から言いますと、仕事がほしくても働けない、その人たちをどうするかということが切実であつて仕事があるにもかかわらずなまけておる人が、国家に自分の生活の保障の請求をするということはむしろ少いのであります。その点予算の説明書の失業対策費でありますが、それで見ますと、大体本年度は七十七億でありますが、これで一日の收容人員が十五万六千人、これを政府の統計から言いますと、公称失業者が五十万、潜在も入れますと、三百万と言われております。この五十万の失業者が毎日職安へ行つて仕事をとりたいのでありますが、これが一日十五万しか收容できないと言うのです。むしろこういう問題をどうするかということの方が切実な問題だと思いますが、あなたのお考えになつておる、そのなまけても生活の保障の要求をする者に対しては、政府はかまわぬでいいと言われますが、こういう働きたくても仕事の持てない人たちをどうしたらいいか、その点をお聞きしておきたいと思います。
  46. 湯淺佑一

    湯淺公述人 私の考えを率直に申しますと、結局は国家がもつと思い切つた産業経済政策というものを強行すべきである。その産業経済政策によつて自然に失業者は吸收される。失業対策にもそれがなる。そうしていわゆるやむを得ない理由によつて、たとえば不具廃疾といつたような社会的な脱落者に対しては、国家は進んで法的な補助の手を差延べるべきである。しかしそうでないあらゆる点において機会均等であり、自由な立場においては、おのおのの個人の能力と誠意というものによつて思う存分私は働くべきである、そういうことを国家は奨励すべきである、こういうことを申した次第であります。
  47. 林百郎

    ○林(百)委員 私はあなたと同じ意見を持つている。なるべく財政的な余裕があるならば、それを産業の面に投資してそれによつて業者を救済するという道は非常にいいのであります。そうなりますとむしろ不生産的な、先ほどふやさなければならないと言われた警察予備隊あるいは海上保安庁とか、あるいは刑務所の費用、あるいは百二十六億の徴税の費用、終戰処理費千二十七億がありますが、こういう再生産の面にまわらない国家の財政というものは、むしろ緊縮してなるべく産業の面に投資して産業を起す。失業者を救済し、労働者の生活を保障して、むしろこうした労働者を押えて行くという費用は節減すべきである。そうするとあなたの先ほど言われたのは逆になる。こういう不生産的な面は、できるならばなるべく節減して生産の面に投資するということは、やはり国家財政の根本的な方策としてわれわれは考えなければならない問題だと思います。その点はどうでありますか。
  48. 湯淺佑一

    湯淺公述人 先ほど私が申し上げましたのは、日本産業経済政策とそれから治安と、社会保障制度とこの三つの観点に私は非常に重点を置いて今回の予算というものを見たということを実は言つたのでございまするが、この治安の維持ということは、もちろん国民生活の安定というものがその裏づけになつておればいいのではございまするけれども、しかし国際経済との関連において、あるいは外資導入、あるいはクレジツトの設定とかいうような場合には、この国内の治安が維持されていなければ決してそう安全に外資も入つて参りませんし、またクレジツトの設定というものも行われない。そういう意味において治安の維持というような点については、これは大きな意味においてはこの産業経済政策を遂行して行く場合の裏づけになるべきものであるという意味において私は強調したのであります。従いまして警察予備隊あるいは海上保安庁というものに対する予算が、少額過ぎると申したのは、そういう意味において申した次第でございます。
  49. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたの言う治安維持というのは、資本主義的な治安維持で労働者を非常に低賃金の状態に置いて、それに対する不満を押えるために警察予備隊、あるいは刑務所の費用、あるいは税金を徴收する費用をふやす資本主義的社会の見地から言うている。治安の確保の第一は、やはり人民の生活を安定させて、失業者を町になくし、農民の生活を、再生産を保障するようにしてやる。これは治安の第一の目標じやないでしようか。そうすれば治安の維持の必要というようなことはなくなる。むしろ警察とか税務署とか、こういう費用があるならば、少しでも失業対策の面に、農業再生産の、肥料の補助なら補助の面にまわすことを考えることが、われわれの考えるべきことじやないかと思うが、これが一つ。これはあなたと私は立場が違うのでありますが、あなたはあくまで経営者の立場から、資本主義的な秩序を保とうという意味から、警察予備隊とかいろいろの費用を出すということであります。われわれはそこは逆に考える立場である。むしろ人民の生活の安定の面に一文でも多く金をまわすことが根本的治安対策と考える。先ほどのもう一つの点ですが、共産主義の侵略と言われましたが、これはどういう意味なのですか。
  50. 湯淺佑一

    湯淺公述人 私はできるだけ誠心誠意をもつて私の考えておりますことを申し上げたいと思います。私は昨年欧米に参りまして、あまりにも日本経済力が貧弱であるということを痛切に感じて帰つて参りました。それは單に資本家のみが貧弱であるということではなく、あまりにも労働者が貧弱である。外国の労働者はゴルフをやつているし、自家用の自動車で通つている。そういうような状態になつているということを考えて私は帰りまして、これは何をおいても日本は労使ともに経済力を増強しなければならない、これは先決問題であるということを私は信じたのであります。私は資本主義、共産主義ということを超越して、真に日本経済力を増進するためには、労使が一緒になつて、どうしてもこの際まず産業経済政策に向つて一緒に協力して行かなければいかぬということを痛切に感じた次第なのであります。従いましてそういう観点から申したのでございますが、その点を御了承願いたい。それから共産主義の侵略ということをおつしやいましたが、私は別にこの機会に答弁をする必要はないと思います。
  51. 小坂善太郎

    小坂委員長 それではどうも御苦労さまでした。  それでは次は日本学術会議会長亀山直人君にお願いいたします。特に科学技術振興の見地から、亀山教授の公述をお願いしたいと思います。亀山公述人
  52. 亀山直人

    ○亀山公述人 私亀山でありまして、日本学術会議の会長をしております。きようここでもつて公述人としまして、希望やら意見を述べられるという機会を与えてくださいましたことは、非常にありがたいと思つております。今までこういう機会は一度もなかつたかと思つておりまして、科学者といたしたしましてはたいへん喜んでおる次第であります。できますならば、こういうふうに予算の案がきまらないもう少しプラステイツクなときに聞いていただければ、なおさらいいんじやないかと思います。  私科学者といたしまして、まあこれは釈迦に説法でありますけれども、日本の国はどうしても科学や技術の学問の興隆をしなければ、なかなか復興はできないと思うのでありますが、それには二つの考え方を私は持つておるのであります。その一つは、たとえば平和條約にしましても、これはやはり世界から日本人は相当文化的な国民であり、日本国も世界の平和的な国家の一つの仲間だと認められることが、非常に大事だと思うのであります。それで日本の科学者の務めの一つは、やはり日本にはりつぱな学術もあり、世界の文化を進歩するだけのりつぱな科学があるということを、世界の人に見せるというのが科学の一つの役割かと思うのであります。そういう意味におきまして、私は湯川博士がコロンビア大学でもつて、世界のひのき舞台で研究しておるというのは、非常に大事だと思うのでありますが、これが日本の学術の施設の不足とか、あるいは研究費の不足とかいうこととは全然別に、日本で研究費が足りないから、それだからコロンビア大学で勉強した方がいいとは、私はちつとも思つておらないのでありまして、日本の学者がりつぱに世界のひのき舞台で、日本にも科学があることを示すというその意味におきまして、私は湯川さんがコロンビアで勉強するというのはいいと思います。これは一般を通じまして、日本の科学者のとるべき態度の一つだと思つております。もう一つはやはりわれわれの生活が楽になり、日本の復興が楽になり、飯がよく食えるという物質的な面から科学が非常に大事だ、こう二つの意味で、私はどうしても日本に科学技術がりつばに振興さるべきだと思うのであります。  ところで日本では、民間は非常に参りまして、どうしても国にたよらなけければならない、国費でいろいろ費用を出していただかなければならぬという時勢になつておるということを、痛感するのであります。明治の初年におきましては万事政府がいたしましたが、その後民間が非常に発達いたしまして、科学の振興なり発達なりは、民間の力が非常に大きくなりましたけれども、敗戰によりまして再び昔にもどりまして、どうしても国の力を借りなければならないという時代になつたと思うのであります。しかしながらこれは日本の国で特に大きいのでありますが、しかしほかの世界の国々を見ましても、近年は非常に国の力が研究文教などに入つて来ておるのであります。これは国柄にもよらない。資本主義のアメリカでもそうでありますし、イギリスでもたとえば大学などは、みな国からタツクス・べーヤーの金をとらないで学問の独立をしようと叫んでおりましたし、今でもおるのでありますが、しかし国の補助が非常に多くなりまして、このごろでは約五%以上、四七年、八年におきましては大学の費用の約五八%くらいは、国からの補助をもらつているような次第でありまして、やはり国が研究とか高等の教育に国費を使うというのは、世界の大勢になつて来ております。日本はその上になお民間が非常に苦しいというところで、ぜひひとつ国にたよらなければならぬ、こう思うのであります。  ところで、ここにいただきました案によりますと、七十九億というものが科学研究の方に出ているのであります。国立大学等の文部省関係のもの、それから各省関係のものが含まれまして、総額七十九億というものが出ているのであります。これは今までよりもよほど増しまして、私どもたいへん喜んでいるのであります。しかしながら、もつと増していただきたいということを切に思うのです。こういう研究とか、あるいは大学教育とかいうような高級な教育は、つまり子孫のために、われわれのあとに来る者のために残す費用でありまして、即座にはリターンがないのでありますけれども、どうしても長い目でもつて蓄積しつつしていただきたいのであります。ですから経常的に、国民所得に対して幾ら幾らという割合で、出して行つていただきたいと思うのであります。ことしの予算七十九億を見ますと、国民所得に対しまして千分の二くらいに当ります。〇・二%くらいになるのであります。国民が千円とつて、そのうち二円くらいを日本の将来のために払うというのでは少し少な過ぎる。私は一%と言いたいのでありますけれども、一%までは行かなくても、その半分の千分の五くらいにでもしていただいたらば、非常にいいのだろうと思つている。今のところは、この二十六年度予算で初めて〇・二%に達するようになりました。それ以前はそれよりはるかに少い〇・一幾らというようなわけであります。全体的に言いまして、私はどうかひとつもつとよけいにしていただきたいということをぜひお願いします。その程度は、先ほど言いましたような、せめてナシヨナル・インカムの〇・五%くらいというのが目標に思うのであります。  もう少し具体的なことに入りますと、研究と言いましても非常に種類が多いのでありまして、第一に研究者の研究の種類ということと、それから非常に地味な話でありますけれども、研究機関にはどんなものがあるか、その組合せなんであります。日本では研究ということが十分に認識されておりませんので、一概にただ研究という言葉で一括してはおりますけれども、これには幾つかの種類がありまして、第一に基礎研究、たとえば原子核がどうできているとか、あるいは物理学、化学というような基礎研究と、もう一つは応用研究、それからもう一つは応用した研究をさらに工業化する。アメリカ人やイギリス人のデイヴエロツプメント。一番初めのがフアンダメンタル、応用がアプライド、もう一つはデイヴエロツプメント。こういうような三つはそれぞれ性格も違いますので、わけて考えたいと思うのであります。一方に研究機関の方はこれはどこの国でも三本足でありまして、三本足の上に立つている。その一つは大学、それは国立大学であれ、私立大学であれ、大学というもの、それからもう一つは官庁、各省に属するところの研究機関、それからもう一つは民間の研究機関、こう三本足に立つておりまして、一方の研究には三種類のものがあるのであります。どこの国でも大学は主として基本的な研究、あるいは進みまして応用研究でも比較的ベーシツクなものをやることにどこの国でもなるし、それがまた当然であります。各省の研究はどうしても応用研究からデイヴエロツプメントという程度であります。民間研究はどうしてもデイヴエロツプメント、工業化とか応用研究という方が主になるのであります。ところで日本の欠陷は、基礎研究には相当りつぱな学者もおりますけれども、応用から工業化ということが非常に発達しておらないということが、概括して申されるのであります。ところが敗戰後になりますと、戰前とはたいへんに違いまして、各大学その他の基礎的な研究機関というものは非常に破壞せられまして、復興がまだ十分でないどころじやない、まだ非常に復興に至つておらないのでありまして、どうしても国立大学を主といたしまして、民間の大学をもつと復興することが非常に必要であるのであります。たいへん地味な話でありますけれども、大学に研究費が大体二種類あつて一つは、講座がありますと、それに経営的な研究費、私はこれを二合五勺と称しておる。もう一つはそれに特配、特別な研究、そういう二種類があります。この講座研究費というのは、二十四年度、二十五年度とだんだんに増されまして、二十六年度に行きましたならば、昨年の倍額になるような案と承知しております。今までは二合五勺どころではない。一合五、六勺、二合にも及ばなかつたのが、だんだん二合に近くなつて参りましたので、私は非常に喜んでおるのであります。その努力はたいへんありがたく感謝しておるのでありますが、まだまだどう考えても二合五勺には足りないのであります。もう少し奮発して、二合五勺までしていただきと思うのであります。実情ちよつと申しますと、国立大学におきましては、東京大学が一番大きいと思うのでありますが、二十五年度に十二億の金を使つております。そのうち一億が建築費等の臨時のものでありますから、あと残り十一億、その五億五千万円というものが人件費、あとの五億五千万円が物件費であります。つまり半分は人が月給をもらつてつておる。あとの半分で仕事をすることになつておるのであります。これは大分よくなつたのであります。人件費が五〇%以上でありましたのが、だんだんによくなつて来たのであります。昭和二十四年度においては、この給与が六五%で、物件費が三五%しかなかつたのであります。二十五年度はそれが五割五割、二十六年度になりましたならば、おそらく四〇%給与、六〇%物件費になるだろうと思つておりまして、これはたいへんな進歩だと思つております。しかし戰前は  戰前も非常に大学は研究費不足ではありましたが、しかし人件費が三〇%で、物件費が七〇%くらいの割合つた。大学の研究所などは、ただ人に月給をくれてそれを生活させるだけでは何もプラスになりません。それでできますならば、人件費が三〇%で、物件費が七〇%くらいになるように御配慮願いたい。これは全体を通じてどの研究機関でも、ただ研究員が月給をもらつて生活しているというんじや、何も役に立たないのであります。ほかの研究機関につきましても同じことが言えると思う。これは東京大学の例について申したのでありますが、ほかの大学などにつきましても、大分講座研究費が増したためによくはなりました。しかしながらもう少しさらに物件費を増していただきまして、大体理想といたしまして給与三〇%、物件費七〇%くらいまでに行くようにお願いしたい、こういうふうに思つております。  もう一つ別の方は、特別給与なんでありますが、これは科学研究費という文部省の特殊な研究費の中から出ておりまして、これは今年はわれわれ方々を説いてまわりましたのですけれども、昨年と同じように五億円ということにきまつておるのであります。これをどうしてももつとたくさんにしていただきたい。これが具体的なお願いのもう一つの点であります。学術会議でいろいろ検討いたしまして、十八億四千万円にしてくださいということを申したのでありますけれども、なかなかそうは行かないで、五億にとどめられたのであります。  特配の方でありますが、これは二つの大きな意味があります。その一つは総合的な特殊な研究をするというのがそれでありますが、もう一つは、これは国立大学に限らず、いかなる人にも出せるという研究費でありまして、その研究者がりつぱであり、研究題目がりつぱであると認められるならば、私立大学などの研究者にもこれはもちろん行くのであります。ところが私立大学の研究者あるいはそれの研究所、あるいは民間の研究所などにおきましては、非常に経営に困難しておるばかりでなく、研究費がないため非常に困つておるのであります。それで日本におきましては大学は、主として国立でありますけれども、民間におきましても相当りつぱな大学がありますし、また研究者もおりますので、これらの研究者を激励する意味と、もう一つは先ほど言いました特配的な、特殊な研究問題につきまして十分な研究ができるように、特別な研究費を、五億という少額でなしに、ぜひこれをもつと増していただきたいと思うのであります。先ほどちよつと申しましたように、自由をたつとんで国からタツクス・ペーヤーの金をもらわないことを主義としておりますイギリスでさえも、一九四七年から四八年あたり、大学の経費五八%くらいが国の費用でまかなわれておるというようなことを考えてみますと、日本現状におきまして、国の金から若干の研究費が私立大学に行くということは、ちつとも無理からぬことだと思いますので、これを特にお願いしたいと思うのであります。  それから研究者には若い研究生がぜひ必要なのであります。これはどこの国におきましても、大学院、ポストグラデユエートに学生がたくさんおります。それらの学生の優秀な者を選びまして国から奨学金を出す。フエローシツプあるいはスカラーシツプというものはどこの国にもある。ところが日本の国におきましては、大学における特別研究生というものが廃止になりました。制度はあるかもしれませんけれども、ほとんど金が出ません。これは非常に遺憾なことでありまして、ぜひもう一度考え直して特別研究生というものを復活していただきたい。若い研究者が始終養成されて、そして新しい学問の前線へ出て来るということが必要なんでありまして、これはそれらの個人々々の研究者を激励するだけではなく、国全体の政策としてそういう若い研究者がどしどし出て来ることが、非常に必要かと思うのであります。今度の予算の中に育英事業費というのがありまして、これが非常に増額されたことはたいへんけつこうだと思うのであります。十五億であつたのが二十四億になりまして、これは非常に喜ぶのであります。しかしこれは育英でありまして、金を貸してくれるのであります。返さねばならぬ。そしてまたそれは非常に広い範囲の高等学校、大学生などでありますが、私の申しますのは、金を貸すのじやない。学問の研究に若い人を奨励するために、返さないでもよい研究生養成の費用をぜひ出していただきたい。在来の特別研究生を復活するのみならず、もつとこれを大きくしていただきたいわけであります。  それからもう一つお願いいたしたいことは、今研究の成果がなかなか発表できない。それは学会におきまして費用が足りなくて発表できない。これを国から援助する。これもおかしな話でありまして、学会があつて会員があり、会費をみな払つている。自分たちで始末したらいいと一応思うのでありますけれども、物価の騰貴とサラリーマンの收入との割合が、非常な開きになりますので、なかなか会費ではおつつかない。ところがこれまた日本だけに限つたことではありません。アメリカでもイギリスでも、どこの国でも研究が非常に盛んになりまして、その発表をするのに費用がかかつて困る。どうしたら簡單で要領を得ている報告が出せて、その研究の成果を世界中、あるいはその国、あるいは研究者同士に発表できるかということが、いろいろ論議せられまして、これも日本だけでなく、世界的な共通の問題であります。そうしてその行き方は、どうしてもやむを得ない、幾らかずつ国から援助を得たいというところに来ておりますし、また世界的にいろいろ会議を開きまして、報告を簡明にみなにわからせるには、どういう方法がよいかというようなことも論じておるのであります。研究発表の補助費がありますけれども、これをもう少し十分にしていただきたいというようなこともあります。もう一つこの資料に出ておりませんけれども、在来あつた海外へ留学生を出すという制度を、ぜひ復活していただきたいと思うのであります。最近アメリカあたりの金で、月に七十五ドルを九十ドルに値上げしたという苦しい費用で、留学しておる者がありますけれども、日本の国の将来を思いますと、われわれ学ぶべきところは、欧州の方が多い。たとえばイギリスなどの方が、アメリカなどよりもはるかに範とするに足ることが多いのであります。そういうことだけでなく、人の国のお情によらないで、日本の国でもつて留学生を出して、しかも半年とか一年とかいうのでなく、私は二年を單位とする留学生を復活していただきたいと思うのであります。半年ぐらいでは、ことに誤つたところだけを見て来たり、一年でも不十分でありまして、二年もおちついて、数は多少少くとも、よく国情がわかり、もちろん日本国をよく理解している人が外国へ参りまして、外から日本をながめつつ世界の大勢を目の前に見まして勉強する、こういう制度が非常に必要と思うのであります。生の大学生をアメリカなどで教育しましても、それが日本の国を十分に理解できないと、それは非常によろしくないと思うのであります。どうか十分に日本国を理解したような人が、世界をひとつ見て来る。しかもそれはなまはんかでなしに、二年ぐらい勉強して来る、そういう留学生をつくつていただきたい。  それから各省の予算について、いろいろよくなかつた点がありまして、喜んでおるのでありますが、各省から外へ出します研究費の補助があります。従来は文部省だけであります。通産省が三千五百万円ぐらいのわずかな金でありましたが、今年度は各省から数億の金が出ておりまして、こういう応用研究費が出たことは、私ども非常に喜んでおるのであります。しかしまだ、必要があるとは思われますけれども、出しておられない省もあるのでありまして、外務省とか経済安定本部なども、やはりそういう必要があるのだろうと思います。自分の省だけでなく、各省が、日本国のいろいろな方面の学者に研究を依頼したり、あるいは補加したりする、そういう費用を出していただきたい。これは日本では特に必要でありますが、どこの国でもこういうのがありまして、その形はコントラクト・リサーチ、研究を依託するというような方式で、非常に盛んに行われております。ことしは大分よくなりましたが、一層なおこれを発達さしていただきたいということを希望するのであります。それらの研究は物理とか化学とか機械とか艦船とかいうようなものばかりでなしに、経済的な研究、人文科学的な研究も非常に必要でありまして、通産省なんか外部にも御依頼になる研究には、相当経済的な研究を御依頼にならんことを切に希望するのであります。なお各省それ自身の研究について見ますと、先ほど私が申しました物件費と人件費との関係でありますが、大体人件費五〇、物件費五〇というのは、人の生活で言えばポヴアテイ・ラインでありまして、ただ食つている、月給を払つているという程度でありますから、どうにかして人の割合に研究費をたくさんにしていただきたい。これはもちろん研究所の性格、取扱う研究問題によつて違いますけれども、大体物件費が七〇%、人件費が三〇%くらい、少くとも人件費が四〇%以下になるような御趣旨で、ものを考えていただきたいと思うのであります。この点二十五年度よりはよほどよくなりましたけれども、もつと物件費をよけいに出すようにしていただきたい。  それからもう一つ、これは予算には現われておりませんけれども、私どもがいろいろ研究しまして、日本で研究室の成果が工業化されない原因をいろいろ調べましたあげく、産業技術開発金庫というものを考えたのでありますが、それは日本で研究が工業化されない一つの原因は金がない。それで適当に金を借りまして工業化して、しかる後に借りた金を返して行く。技術的に非常に確実なものならこれができる。こういう考えで産業技術開発金庫というものを考えたのであります。これはこの予算とは別でありますが、これはどうかほんとうに成立していただくようにしていただきたいと切に思うものであります。これとまつたく同じ考えが一九四八年にイギリスで起りまして、ナシヨナル・リサーチ・デイヴエロツプメント・コーポレーシヨンと申しまして、大学とか官庁とかにおきますりつぱな研究をとり上げまして、金を貸して工業化して、その金庫がライセンスをとつたりなんかしまして、また金をもどしてもらつて新たなものをやる、こういう制度であります。どうかひとつこれを成立さしていただきたい。  なお私ども切にお願いしますのは、大体国際條約ができまして、各国と対等の対抗ができるようになりましたならば、各地の大使館なり公使館なりにサイエンス・アタツシエを設けていただきたい。科学官が駐在いたしましていろいろの情報を交換する、こういう仕事を始めていただきたい、こういうふうに思うのであります。そのインフオーメーシヨンをやりとりするということは、英米では行われておりますし、イギリスの各属領といいますか、そういう国の中のいろいろの国同士もみなやつているのでありまして、世界大戰中からやりまして、世界大戰後現在に至るまでアングロサクソン系統は、世界的なサイエンス・アタツシエを設けて科学的な情報を交換し、そうしてお互いに利益を得ている。ユネスコの初まりなどはこれらのことから来たのでありますので、どうかその仲間に日本も入れるようにとりはからつていただいて、それらにつきましては学術会議がやがていろいろな形で申し出ますが、インフオーメーシヨン・センター、学術の情報機関、問合せがありましたら、その国民なり外国なりと自由に早く学問の蓄積せられた知識を交換し得るような機関をつくりたいと思うのであります。これはいずれそのうち申し出ますから、どうかひとつ御考慮を願いたいと思つております。  最後に一番大事なことをお願いしたいのは、科学者の生活の問題であります。これは決して研究費と科学者の生活費とを混合しているのではないのでありまして、これをしばしば混合されますので、混合せずに聞いていただきたいのであります。研究費は研究をする費用、私のお願いしますのは、われわれ科学者の生活の費用であります。いろいろ学術会議で調査いたしますと、われわれの称する科学者の仲間では、食費が收入の五〇%よりも少いという人は非常にわずかなのであります。四〇%以下の人が六%、四〇から五〇以下の人が一一%、要するに五〇%以下の人は一七%しかない。クエスチヨンを出しましたその答えによりますと、收入の半分以下を食費に使つておるという人は約二〇%というような次第でありまして、一般に科学者は非常に苦しんでおるのであります。本を買えるような人はきわめてわずかでありまして、收入の一割でも本を買えるという人は非常にわずかであります。どうかひとついろいろな方法が考えられますけれども、研究者の生活を楽にしていただきたい。これは言葉をわずかしか費しませんけれども、しかしお願いの強さは決してその言葉数に比例するものではありませんので、どうかひとつこれだけは切にお願いいたします。  私の申したいことはそれだけでありますが、お尋ねがありましたら喜んで御返答いたしますし、またいいお考え等がありましたら教えていただきたいと思います。
  53. 小坂善太郎

    小坂委員長 何か亀山教授に御質疑ありませんか。
  54. 川島金次

    ○川島委員 いろいろお話を承りまして、たいへん参考になりました。この機会ちよつと奇妙なお尋ねのようですが、参考までにお尋ねしておきたい。化学技術の振興ということは、きわめて重要な事柄であります。一国の人文の消長は科学技術にありと言わるるほどであります。そこで今日本は御承知通り占領下にありまして政治的にも経済的にもいろいろ制約がありまして自主権がない。それで科学技術の研究の方面にも、何か今日制約を受けておる向きがあるかどうか。たとえば世界は今原子力時代ですが、そういう原子力の研究などについて、占領下における日本が——そういう方面だけに限るわけではないのですが、何かそういつた科学技術の研究に関して制約を受けておる面があるかどうか。たいへん奇異なお尋ねですが、これをひとつ参考のためにお聞かせおき願いたいと思います。
  55. 亀山直人

    ○亀山公述人 一言に申しますと何もありませんということです。ただ例外は、飛行機を製作してはならない。飛行機を飛ばす技術、ネヴイゲーシヨンの技術はいけない、こういうことだけでありまして、ほかに何もありません。原子核の構造を研究することなどはちつとも禁止せられておりませんし、おそらくそういう原子核の構造の研究は今でもせられておりますし、りつぱな研究がありましたら、喜んで世界に発表し得るという状態であります。ただ飛行機、武器、そういうものをつくることとか研究することは禁止せられております。飛行機だけです。
  56. 川島金次

    ○川島委員 そこで重ねてお尋ねするのですか、たいへん愉快な話なんですが、日本で今原子力の研究も何らの制約を受けていないということになりますれば、定めしその方面の研究が相当進んでおるのではないかと思うのです。そこでこれが具体的にお答え願えますればけつこうなんですが、われわれは戰争のための原子力を考えていないのです。しろうとでわかりませんが、原子力というものが真に人類の幸福と産業発展のために積極的に使われれば、世界文明の発展に寄与するところがかなり大きいものではないかと思うのです。そういう意味で私はお尋ねするのですが、しからば今の日本の科学技術の社会において、原子力の研究というものがどの程度まで進んでおるか。そういつたことについて、おわかりであり、かつお答えができる範囲でございますれば、それを伺わしてもらいたい、こういうふうに思います。
  57. 亀山直人

    ○亀山公述人 原子力の研究がどの程度まで行つているかということにつきましては、その方面の專門の学者にお尋ね願いたいと思うのであります。私は残念ながらその方の專門でありませんので、仁科君でも生きていて、そしてこの席に来られたならば、お答えできるかと思います。しかし原子力の研究で——つまり原子力の研究というのは一つの宇宙の真理を研究するものですが、その宇宙の真理を研究することにつきましては、われわれは何ら制限を受けておりませんし、また日本の原子力研究につきましての、設備を要しないところの研究、頭と数字などでできます研究は、世界的のレベルに進んでおると思つております。世界のトツプ・トウエンテイ、つまり上から二十人数えれば、その中に日本人で相当の人数が入る。また現に日本人で湯川君などもそういう点は研究しておりますから……。しかし原子力の研究は、ただ数学とか考えだけではできないのでありまして、設備がいる研究になりますと、これは日本で禁ぜられておるのではないけれども、金がないために設備ができない。日本では紙と鉛筆でできると思つておられるが、原子力の研究はアメリカなどに行きますと、とてもたいへんな設備をもつてつておりまして、原子力の研究というものは非常にエキスペンシーヴな、金がかかるものだと外国では承知しておる。日本では紙と鉛筆でできると思つておる。その差は設備がない、金がないということであります。国技館くらいの大きな裝置の中で、素粒子に非常に加速度を加えまして、物にぶつつけて何ができるか、そういう研究になりますと、非常に大きな設備を要します。
  58. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどから教育の問題をいろいろお聞きして、非常にその道の皆さんが御苦労なさつていることはよくわかりました。われわれとしても、一国の民族的な興隆がその国の文化や教育にかかつていることは、非常に重大だと思いますから、教育や文化の興隆の点については、財政的にも十分な保護をしなければならないというふうに、われわれは考えているわけです。従つて予算の中においても、できるだけそういう部門へたくさんの国家財政の補助を出すべきだというように、われわれ考えるわけなんですが、もし平和国家として立つ場合に、いろいろ不必要な費用があるならば、そつちへまわすべきだというふうにわれわれは考える。そこで参考までにお聞きしたいのですが、若い前途有為な諸君が、大学へ残つて研究をしたい、もつと学問の道を精進したいというように思いましても、つい大学へ残つても生活が不安になつて、その研究を途中で放棄し、あるいは大学を去つて新しく就職しなければならないというような問題も、いろいろ聞いておるのであります。これはたいへん失礼に当るかもしれませんが、大学の教授、助教授、助手、副手といいますか、この人たちが手取でどのくらい月に收入があるものか。もしさしつかえなかつたらば参考までに聞かしていただきたい。
  59. 小坂善太郎

    小坂委員長 どうですか、文部省の政府委員から答えさしてもいいような問題ですが、あなたお答えになりますか。
  60. 亀山直人

    ○亀山公述人 それは文部省にお開きくだすつてけつこうであります。私が助手、助教授はどれだけということは今お答えできません。数字をこまかく知りません。私自身のことはよく知つております。実は私はこの間——私はこの三月で停年になりますが、つい一、二箇月前に月給が上りました。これは非常にふしぎなことに思いまして——私は月給が上らなくてもけつこうなんでありますが、今ごろになつて月給が上るので、まだ上にはつかえてなかつたのかということを知りまして、非常に奇異の感に打たれました。ですから私は大学教授としましてはほとんどトツプだが、まだ上に一つくらいあるかもしれません。そういうものでありまして、手取りが二万円くらい来ます。それはついこの間初めて一度だけもらいました。その前は一万八千円くらい、そういう状態であります。あとは推して……。
  61. 林百郎

    ○林(百)委員 よくわかりました。あと助教授、助手、副手は推して知るべきだと思いますから、大体わかりました。そこでこの一国の国家経済の中で、文化や教育に占めておる費用のパーセントによつて、その国の文化の一つのバロメーターになるというようなことを言われておるのでありますが、博識な亀山さんにお聞きしたいと思うのです。先ほどお聞きしますと、先ほどは文部省の費用のことですか、学術研究費のことですか、全国家予算の二・何パーセントということを聞きましたが、日本昭和二十六年度予算の中で、文化、教育に使つておるこの費用が全予算に占めておる。パーセンテージと、それから各国——アメリカ、イギリスあるいはソ同盟あたりも、もしわかつたら(「ソ同盟はわからぬよ」と呼ぶ者あり)わからなければ、けつこうですが、各国の比率が、もし数字がお手元にありましたら、聞かしていただきたいと思います。
  62. 亀山直人

    ○亀山公述人 私それはお答えできません。一向博識ではないのです。物を考えることはいたしますが、どうもあまり博識ではありませんので、どうも……。そこで幾らかの御参考になるのは、先ほど申しましたのは、日本のことは日本のナシヨナル・インカムに対しましては、今年は七十九億が約〇・二%になる。しかしこれはアメリカのことをちよつと申しますと、こういうことなんであります。合衆国でありまして連邦政府、フエデラル・ガヴアメントの払うもりと、ステーツの政府が払うものとありますから、日本政府から、国の費用から出るというものに対しまして、アメリカの何がそれに相当するかということが、まあ第一に問題になつて来るわけであります。その点でこれは多少怪しいところがありますけれども、ここまでは確かで、ここからは怪しいというところを区別して申しますと、一九四七年で、アメリカ合衆国政府の払いました研究費が六百二十五ミリオン・ドルであります。それから工業が払いましたのが四百五十、大学が四十五、その他は四十、合せてアメリカ全体が払いました研究費は千百六十ミリオン・ドル。それに相当いたしますものは、一九五一年が二千四百ミリオン・ドル。そのうち国が一千四百ミリオン・ドル、その一千四百ミリオン・ドルは——どうもそれから先が怪しいところなんでありますが、アメリカの一九五一年の国の予算が約六十ビリオン・ドルだと人に聞いたのです。これは怪しいのです。六十ビリオン・ドル、もしそうだといたしますと、千四百ミリオン・ドル——一・四ビリオン・ドルというものは二%に当る。けれどもこれは私の常識では少し大き過ぎる。アメリカ合衆国政府の総支出の二%が研究費に使われておるというのは、非常に大きな額であります。日本で言いますと、一般会計に対しまして、研究費というものは〇・九%くらいに当つておると私は思うのであります。ちよつとお待ちください。それは国民所得に対しましては〇・二%でありますけれども、日本では一般行政費に対しまして研究費は昨年度は〇・九%、二十六年度は私まだこの七十九億という金につきまして計算していません。二十六年度の行政費全体が幾らでしようか。こちらから伺いたいのですが、この予算で割つていただきますとわかりますけれども、昨年度、二十五年度は、一般会計の研究費が約五十億、それに予算一般会計全体が六千六百億、それにいたしますと約〇・九%、アメリカ合衆国政府、フエデラル・ガヴアメントがその予算の二%を研究費に払うということは、非常に大きなことだと思います。ただ私はそのフエデラル・ガヴアメントの一般の費用が、さつき申しました通り六十ビリオン・ドルというところは、私自分自身で調べていないのですが、人さまから聞いたので、少し怪しいと思いますが、しかしとにかく大きい額です。
  63. 林百郎

    ○林(百)委員 今年の予算は六千五百七十四億円になつておりますから、そうすると一・一%くらいになるのじやないかと思います。
  64. 亀山直人

    ○亀山公述人 そうすると一%余になります。
  65. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするといずれにしても、アメリカあたりのパーセンテージから行くと去年は半分だつた。よその国の例はおわかりにならないでしようか。あまり詳しいことは必要ないのですが、パーセントくらいわかつたら……。
  66. 亀山直人

    ○亀山公述人 わかりません。しかしただこういうことだけ……。イギリスは、今のアトリー内閣は、サイエンテイフイカル・マインデツド・ガヴアメントと言つていばつております。それでよほど科学研究に力を入れておりますし、いろいろの方法を用いまして、さつき言われましたナシヨナル・リサーチ・デイヴエロツプメント・コーポレーシヨン、産業技術開発金庫とそつくり同じ——日本でもいろいろ苦労したのですが、向うでも同じような結論に達してそれらのものをつくり、その他いろいろな方法で化学研究費を助成しております。その助成の仕方は、世界大戰前と世界大戰後を比較しますと約十倍くらい、民間も十倍くらい、今まで売上げの〇・何%というものを民間は研究費に出しておつた。それが戰後には売上げの一%とか二%とか、十倍くらいです。アトリー内閣も非常に科学に力を盡しておりますから、今数字は覚えておりませんが、話は戰前と戰後と十倍くらい違つたと思います。
  67. 林百郎

    ○林(百)委員 それで最後に聞きたいのですが、実は私の近所に東大の農業化学の教授の方がおいでになりまして、その方からよく聞くのですが、今の東京大学の農業化学の面では、ほとんど実験の費用が来ないために、大学で実験が不可能で、やむを得ないから民間の研究所へ委託したり、そこへ行つて研究をしたりして、ほとんど不可能な状態にあるというようなことを聞いておるのですが、大学のサイエンスの実験だとか、そういうようなことは、今そんな半身不随の状態にあるわけなんでしようか。その点も参考までに最後にお聞きしておきたいのです。
  68. 亀山直人

    ○亀山公述人 今の御質問には大学中全部が、そつくりそのままそうだということはお答えしがたいと思います。一定の予算が与えられまして、そうしてそれで研究しなければならないのですけれども、いろいろその主任の教授にアンビシヤスな人もありますし、またつつましやかな人もありまして、それに適当な、適度というところがあると思うのですが、あまりアンビシヤスな先生になりますと、いかに考えても可能と思う範囲以上に研究室などをとりますと、いろいろそこに苦しいところが出て来ます。しかし相当つつましやかな人でも、二合五勺とさつき申しましたが、実は一合七一八勺しかないと思いますが、そのノーマルの費用だけでは、大学のいかにつつましやかな研究でもやれませんので、それでさつきの特配などが来まして、特配が遂に二合五勺近くになりますが、そういう二つの、要するに文部省から来る金だけではやり切れないので、外へ頼むのはまつたく主任教授の持つ哲学によるのでありまして、もつとよそへ無理なことを頼んでもやる方がいいか、あるいは自分はこの辺でとどまつておるかというのは、まつたくその人のフイロソフイーによる。が、とにかく先ほど言いましたようなわけで、教室の研究をやつて行きます費用の文部省から来ます費用は二口あります。二合五勺と特配とありますが、寄せましてまだ五〇%ぐらいしかありません。ほかは何かいろいろごたごたしております。それは昭和二十四年度であります。二十五年度は大分よくなつております。二十六年度はもつとよくなりますから、非常に楽しみにしておりますが、しかし今度は特配を非常に減らしますと、やはり苦しいことは苦しいが、今おつしやいました程度のは幾らかアンビシヤス過ぎる方かもしれません。
  69. 小林進

    小林(進)委員 一言でよろしいのでございますが、研究費の増額の要求の御趣旨はよくわかつたのでございますが、さつきも林君が申し上げました生活の不足の問題でございます。大学側と各省の研究機関、民間の機関と三つにおわけになりました。おそらく先生は大学側のお話が多かつたと思うのでありますが、その大学側の立場で生活給の問題をるるお訴えになりました。しからばどんな形にしてほしいかというその具体案であります。今この生活給の問題はあらゆる各層から生れて来るのでありまするが、国会で扱つておるのは一般給と特別給、まずわずかに格差をつけて特別給などというものを支給しておる官公吏もあるのであります。そういう意味の特別給を御要求になつておるのか。そういうものとは別個に科学者だけ、特に生活給のめんどうをみろとおつしやるならば、それに対する何か具体案があるかどうか。それがありましたら、ひとつお示しを願いたいと思います。
  70. 亀山直人

    ○亀山公述人 具体案は大学の教授連合その他でもつていろいろ研究しておりまして、提案もされておりますし、学術会議でもまたもつと考えておりますが、要点はこういうことにあります。普通の官吏、国家公務員の普通のやり方で行きますと、責任と仕事の困難さとか、そういうものをいろいろにわけまして、それからまた一方に勤続しておる年数というようなものをわけまして、そうして月給がきまつておるらしい。職階制というものがきまつております。ところが大学の教授などの任務は、たとえばある一つの講座というような職務につきますと、それは困難さはみな同じでありまして、そこに十年いても二十年いましても研究努力する。そうして教授もし研究もするという仕事は、困難さがだんだんふえるわけではなくて、それはみずから研究をし、みずから教える努力のいかんによるのでありますが、職務について係長とか課長とか局長とか、そういうようなものではない。責任は教授になつたときから去るときまで、やはり渾身の力を研究に費し、またあとから来る人に教えるということは同じなのであります。そういうふうに係長とか課長とかいつたような職務はありませんのです。一方のスケールはそういう係長とか課長とか、責任が大きくなつたからとか、仕事が多くなつたというようなスケールでつくり出しておる。しかし一方教授というものは、なつたときから十年、二十年もかわらざる精神的の自覚の上に立つてできている。その食い違いを適当にしていただきたい、こういうわけであります。まあ簡單に申しますと、年数が立つに従つて、行政官並にだんだん月給を増してもらうというようなことにしていただきたい。職務に係長とか課長とかいうものはありません。講座を受持ちましたら全責任はそこにあるし、十年たつても十五年たつても、なりたてと同じだけの責任を要するのであります。
  71. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいまこの科学の面におきまして、日本外国との文化の交流の必要性につきましてるるお話がありました。特にサイエンス・アタツシエあるいはインフオーメーシヨン、センターとかいうような具体案までお示し願いまして、非常に興味深くお聞きしたのでありますが、御承知のように国際連合の教育、科学、文化機関、いわゆるユネスコですか、こういう機関があつて、世界各国の間の文化科学の交流をつかさどつているわけでありますが、幸いにしまして日本がこの機関に参加する申入れが受理せられまして、この大月ごろには日本がこれに参加できるという状態なつたと私は思うのでありますが、そういう場合に、一体日本がそういうものに入るだけの日本側の受入れ態勢ができているかどうか。ただいまおつしやつた予算の面で貧弱な感があるのでありますが、予算以外の点におきましても、せつかくユネスコに参加しましても、これを十分に日本活用するだけのごつちの準備態勢と申しますか、受入態勢があるかどうかという点を、私はお聞きしたいのであります。特にせつかく文化科学の交流をいたすとしましても、あるいは研究発表を交換するにいたしましても、語学の点においては非常にハンデイキヤツプがあるのではないか。こういう点をどういうふうにお考えになつておりますか、そういう点をあわせて伺いたいと思います。
  72. 亀山直人

    ○亀山公述人 六月ごろユネスコに入れるようになつておるというお話を聞きまして、非常に喜ぶのであります。その受入れ態勢のことにつきまして、私詳しいことは存じません。しかし入れる時期も間際になつたというので、日本学術会議におきましても政府に建議をいたしまして、すみやかに入り得る準備態勢を整えてもらいたいということを勧告いたしまして、そしてその準備といたしましては、学術会議にユネスコ委員会をつくりまして、その準備の案をつくることを今しております。私はそういう方につきましては、それだけのことを申し上げておきます。  第二の点は語学の点ですが、日本語と外国語とは非常に違いますから、その点はたいへんに苦しいのでありますけれども、しかしその点は二つの面で私は可能だと思う。一つは、日本には相当話のできる、そうしてしかも学問のゆたかな方もおられます。もう一つは、そういう人文科学的な面でない、数学とか物理学とかに行きますと、世界的な言葉——数学というのは日本国の数学もありませんし、イギリスの数学もありません。あるいは物理学などは世界共通でありますので、言葉を要することはきわめてわずかな点だけでありまして、学問の内容さえりつばに持つておれば、あとはわずかな言葉で通ずるというのが、これは数学、物理学に限らず科学一般の通則でありまして、数学、天文学、物理学などは、最もユニバーサルな言葉を持つております。人文科学の方では語学の人もおりますし、また一方では万国に通ずる言葉がありますので、それでやつて行けると思います。
  73. 小坂善太郎

    小坂委員長 どうもありがとうございました。  次は国鉄労働組合中央執行委員長の齋藤鉄郎君にお願いいたします。齋藤公述人
  74. 齋藤鉄郎

    ○齋藤公述人 私国鉄労働組合の中央執行委員長の齋藤であります。御指名によりまして国鉄労働組合の立場から、昭和二十六年度予算中主として日本国有鉄道の予算について公述いたしたいと思います。国鉄関係について申上げる前に、一般予算について特に要望申し上げたい点をお話申し上げたいと思います。  まずその第一は、物価政策についてであります。物価が朝鮮事変を転機に特に最近急激な上昇をしておりますことは、すでに御承知通りであります。しかも世界の市場の情勢から判断すれば、日本もその影響を受けることは必至でありまして、日本ひとりエデンの園たることはおそらく不可能と思われます。そのためか、一部の間ではすでに買いだめあるいは売惜しみが行われておるとのことでありますけれども、労働者は買いだめも売惜しみもできず、物価の高騰にあえいでおります。政府を初め関係の各位はこの点を考慮せられまして、外国為替資金特別会計を新設して五百億の資金を計上せられておりますが、輸入について適切な手を打たれることが当面特に必要ではないかと考えられます。先般の大蔵大臣の発表によりますと、外国為替の手持は五億二千万ドルもあるということでございますが、この資金によつて国民の生活に必要な物資を輸入していただき、物価の安定と国民生活水準向上をはかつていただきたいと思います。輸出のみに力を入れるのあまり、国内の物資が洞渇いたしますと、物価の高騰に拍車をかけるということは、私から申し上げるまでもないと思います。私は外国為替資金特別会計を設けるということよりも、輸入輸出の、バランスを適切にして、手持ちの外貨で早急に輸入促進し、国内物価安定の策を講ずることが特に必要であると思います。そこで五百億のこの予算は減税にまわすとか、あるいは国内物価の調整費に充てるとか、あるいは給与改善に充てるとかしていただきたいと思うのであります。  もう一つ、伝え聞くところによりますと、米を除いて麦類は統制から解除になるのではないかということを聞いておりますが、従来統制からはずされましたものはほとんど統制時代よりも割高になつて、また一方世界の市場の関係から考えてみますと、麦類の統制撤廃については非常な不安を感ずるものであります。私もきゆうくつな統制を本位とするものではありませんけれども、諸般の情勢から麦類の統制撤廃については愼重を期していただき、むしろ当分は統制を継続しておくということにお願いをいたしたいと思います。  第二の点は、賃金問題についてであります、米の値段はことしの一月から一五・七三%値上りをいたしました。また物価については、昨年十月に比べて現在までわずか五箇月間に、二割の上昇率を示しておるということを、私ども聞いております。私ども労働者の台所はすでに重大な脅威を受けております。大蔵省主計局のこの発表の説明書によりますと、公務員及び政府関係機関の給与の改善ということを力説しておりますけれども、これらはいずれも現在の給与ベースをそのまま並べたのでありまして、大蔵省が宣伝するような趣旨の給与改善費というものは少しも計上されておりません。物価値上り傾向については政府も御承知と思います。それに対して給与は、国鉄について申上げますと、昨年四月分の給与の、仲裁裁定でありましたところの八千二百円ベースをそのままとして何ら改善の数字は計上されておりません。しかも国有鉄道関係については、今回国会へ提案の予算総則第十二條によりますと、給与総額を五百二十四億四千九百三十五万円余りと限定する、このようにうたつておるのでありますけれども、このようなやり方はまことに耳をおおつて鈴を盗むという部類と申さなければならぬと存じます。労働者は、炭鉱の労働組合の賃金要求闘争を初めとして、国鉄労働組合及び公務員等も、最近の物価に対応して、近く現在の給与の最低三割程度の給与改善をそれぞれ要求することに予定しておりますけれども、この国会においては、物価変動に対応する給与の改憲について、積極的な審議をお願い申し上げたいと思います。私今朝の新聞で拜見しますと、アメリカの賃金安定委員会は、賃金の一〇%値上げをすでに決定しておりますが、これらの点も、どうぞ皆さんは御参考に願いたいと思うのであります。  第三点として申し上げたいことは、税制の問題であります。政府の方針によつて源泉徴收の関係は、今年の一月から再び減税のあつたことは、私どもの深く感謝しておるところであります。しかし物価値上りをし、あるいは高額の地方税のために、実質的には減税も疑わしい結果になつております。税金の負担が非常に高額にすぎ、限界を過ぎておるということは、皆さんも御承知通りで、一部の人々が税金闘争というものをやりますと、国民が共感を寄せておる姿は見のがしてはならないと思います。私減税の要点を率直に申し上げますと、まず源泉徴收の勤労所得税についでありますが、その一は、勤労控除、基礎控除、扶養控除をさらに大幅に引上げていただきたい。二は、諸手当、超過勤務手当、これには課税しない。第三点として、退職金には課税をしない。但し重役級のものは課税してよろしい。第四点として、朝鮮事変に関連して出動しております船員の特別手当等については課税をしないようにしてほしい。なお地方税の軽減をはかつていただきたい。以上のことを税金関係について特にお願いいたしたいと思います。  その四は、社会保障制度についてであります。昭和二十三年の七月に、アメリカの社会保障制度調査団が参りましてから、日本でも昭和二十四年の五月から社会保障制度審議会が発足し、その審議の結論が昨年十月十六日政府に答申せられたのであります。今回の予算によりますと、生活保護費、社会保險費、結核対策費等は二十五年度に比べて増額になつておりますけれども、せつかくの審議会の答申が無視せられて、総合的社会保障制度の発足を見なかつたということは、はなはだ遺憾に存ずるものであります。御承知のように、すでにイギリス等においては、社会保障制度によつて家族手当が支給され、あるいは一切の病気の治療は無料になつておる。日本でこの社会保障制度が延び延びになつておるということは、おそらく財源によるということが理由ではないかと思いますけれども、国民経済、国の経済が興隆した将来よりも、むしろ窮乏しておる今日こそ、これが必要なのであつて、答案通りの社会保障制度が早急に実施されるよう、特に要望してやまない次第であります。  その五番目は、完全雇用の点についてであります。私思うに、現在日本の社会不安をかもしているは、特称のものを除けば、失業者が多いということだと思います。二十六年度予算案では、失業対策費及び応急事業費等において増額を見ておりますけれども、これらは第二次的な対策でありまして、失業問題の根本的な解決にはならないと思います。一方電力資源の開発等も企てられ、将来に対する計画もあるようでありますけれども、完全雇用の計画は打立てられていないのであります。さらに年々激増する人口問題をどうして解決するか、将来の日本の雇用限界は一体幾らなのか、あるいは移民の政策、食糧事情、そうした各般にわたつて御検討いただき、人口問題について積極的な政治的な手を打ち、完全雇用に向つて計画的な政策を行われるよう、要望してやまないのであります。私ども人口問題解決のために、世界の労働者に訴え、移民問題等をも相談を持ちかけておるのでありますが、先般の世界自由労連の会議においても、日本人口問題についてはこのような決定になつております。完全雇用の方策がとられ、なお人口問題が解決しなければ、初めて日本人の移民について考える。つまり日本が完全雇用、そういう政策で努力をして、なおかつ解決しなければ、初めて移民ということを考えようということが、世界自由労連の会議で決定せられておるのであります。どうぞこれらの点も皆さんにとくとお考えをいただいて、完全雇用の政策を打立てていただきたいということをお願い申し上げる次第であります。  次に、日本国有鉄道関係予算について、二、三点申し上げたいと思います。  第一は、予算総額が少きにすぎるということであります。数字については、皆さん予算書で御承知と思いますから申し上げませんけれども、例を人件費と物件費について申し上げますれば、人件費は昭和二十五年度に対してわずかに一%増し、物件費はこれまたわずかに二%増しであります。二%の物件費の増額で、今年の物価高に対応できるかできないかということは、一目で明らかであります。二十五年度においても、仲裁裁定はその半ば実施せられたにすぎず、石炭代の裁定はいまだ解決しておりません。あるいは特需輸送の関係から、従業員に超過勤務をさせながら、増務給も支払わないために、当局と組合との間に紛争を起しておる状態であるのに、来年度の予算がこのように少額では、まことに思い半ばにすぎるものがあります。二十六年度の予算については、国鉄の当局すらこれは八箇月の暫定予算であるということを漏らしておる点から、当然増額されてしかるべきものと断定することができるのであります。  そうしますと、運輸收入が少いからいたし方がないというふうに思われる方があるかと思いますので、ここで少しく運輸状況と運賃等について申し上げて、御審議の御参考に供したいと思います。輸送量でありますが、輸送量は昭和十一年を基準として、昭和二十五年度の状況をおおむね申し上げますと、お書様の輸送、いわゆる旅客輸送においては、昭和十一年に比べて約三倍であります。それから貨物においては約一・四八、切上げまして一・五倍ということになつております。これを今度は收入の面から見ますと、旅客関係でありますが、これはよく御承知ないかもしれませんが、まず定期券の問題であります。定期券の輸送は、一キロ一人のお客さんを運ぶのに、輸送原価は五十七銭二厘であります。それに対して運賃を幾らとつているかといいますと、運賃は三十一銭三厘でありますから、原価の約五五%、結局国鉄は四五%の損をしておるということであります。これに対して定期券以外の、切符を買つて鉄道を利用なさるお客さんでありますが、この原価は六十銭四厘であります。それに対して運賃が一円三十九銭八厘でございますから、原価に対しては二三二%、こういう高い率の運賃を払つておるということになるのであります。また貨物運賃についてもほぼ同様でありまして、小口の扱いでは原価を割る運賃で鉄道が損をし、一軍、二車というあの車扱いでありますが、車扱いの輸送で償い、結局原価に対してわずか八%の利益を上げているのにすぎないのであります。  さらに運賃の倍率でありますが、旅客の運賃昭和十一年当時に比べまして九三倍であります。それから貨物の運賃は約百三十倍であります。運賃倍率がこのように低いのに対して、一般の物価昭和十一年に対して現在は二百八十五ぐらいではないかというふうにいわれております。ついでに申し上げますと、職員の給与水準は、昭和十一年の当時平均六十五円でございました。ただいまは八千二百円ベースでありますので、これは約百二十六倍であります。この点は物価指数と均衡せしむるという点は御承知通りであります。しかし国鉄は業務上必要な物資は買い求めなければなりません。その結果人件費を不当に圧迫することとなつて昭和十一年の当時は人件費と物件費の割合は、人件費が五十六、物件費が四十四、そういう割合でありましたけれども、二十六年度の予算を調べてみますと、これがまつたく反対になつて、人件費が四四%、物件費五六%となつております。従つて国鉄の予算は不合理な低賃金という、労働者の犠牲の上に組み立てられておると断言できるのであります。  以上申し上げましたように、原価を割るような運賃制度では国鉄の経営が成り立たないことは、小学校の生徒にもわかるのであります。しかし運賃問題は国家経済上きわめて重要な公共の利益に関しますので、これをどうしたらよろしいか。適正な運賃に改正して国鉄の経営を健全化するか、あるいはまた補給金等によつて一時をしのぐか、とにかく現在示されておりますところの数字は、八箇月の暫定予算たることが明らかでありますので、皆さんにおいて、国会の権威において国鉄経営の根本的な解決方策を打ち立てていただきたいということを、くれぐれもお願い申し上げる次第であります。予算があまり少いために、こんなことも予想されておるのであります。すなわち運転の安全上車輌の修練をしなければなりません。修繕関係の働く人手はある、修繕の仕事もある、しかし予算がないために、修繕しなければならない車輌も修繕することができないというようなことで、はなはだ遺憾でありまして、特に皆さん方の御考慮をわずらわしたいと思うのであります。  国鉄予算についての第二の点は、鉄道当局に経理の自主性を与えてほしいということであります。昭和二十三年七月の連合軍最高司令官の書簡によつて、昔の国鉄は、日本国有鉄道法によつて公共企業体となりました。企業体になつたにつきまして、大きな鉄道部内の機構改革もありましたけれども、国鉄は依然として官庁的色彩濃厚で、企業的な本質を発揮しないのはどうしたことか。国鉄のわれわれ職員も、大いに能率を上げてやりたいという勤労意欲を持ちながら、これを冷却しているのは一体何であるか。それは国鉄がどんなに能率を上げて、どんなに運輸收入の増加をはかりましても、運輸大臣、大蔵大臣あるいは国会の承認がなければ、一切の支出負担行為が国鉄当局には認められていないというところにあるのであります。たとえば仲裁裁定に基く賞与金制度について、国鉄の当局と労働組合との間で妥協点に達しました。そこで国鉄の総裁から政府に申入れをしたということでありますけれども、それを今回の予算総則でよく拝見しますと、これを発見することができないというようなことはよい例だと思います。このような状態では、国鉄の企業性を失わせるだけではなくて、職員の勤労意欲を冷却し、また労使間の紛争を通すだけであります。この点を潰憾として、昨年も公共企業体の仲裁委員長、国鉄中央調停委員長、專売公社中央調停委員長の三者連名で、次のような意見書が政府と国会に出されておるのであります。その書面というのは、「政府関係予算予算総則について。今般、昭和二十五年度政府関係機関予算案予算総則中に、日本国有鉄道及び日本專売公社の役職員に対して支給する「給与総額」に関する規定が設けられ、これを越える場合は原則として一々国会の承認を要する建前となつております。このような制限は、官業時代にも見られなかつたところでありまして、企業体の自主性を著しく阻害し、公共企業設置の趣旨をそこなうものと考えられます。またこのことは公共企業関係法の意図する団体交渉による労使関係問題の平和的解決に多大の支障を及ぼすものと認められます。よつて事情御賢察の上御考慮相わずらわしたく、」云々、こういう書面が三者連名一で出ておるわけでございます。申し上げるまでもなく公共企業体は、その公共性についてはある程度の制約を受けることは当然でありますけれども、経理について、あるいは人事について全然自主性が与えられていないというようなことは、企業の本質を失わしめるものと言わなければならないのであります。どうか以上の見地から、国有鉄道法を改正して経理の自主性を与え、国鉄職員が喜んで働けるところの企業性を与えられるよう切望してやまないのであります。この観点から昭和二十六年度政府関係機関予算予算総則第十一條、第十二條のごときは、これを削除願いたいということをくれぐれもお願い申し上げる次第であります。  第三の点は、予算総則第十三條を削除願いたいことであります。すなわち第十三條にはこのように書いてあります。十三條「日本国有鉄道の役員及び職員に対しては年末手当は支給しない。」同じ公共企業体でありますところの專売公社を初め、政府関係の各機関、あるいは国会議員、公務員とも、すべて年末手当の予算が計上されておりますけれども、書し落したならばとにかく、十三條で特に「支給しない。」というふうに規定しようとすることは、どういう意図に基くものか、国鉄の者は非常に憤慨しておる次第であります。国鉄職員の給与のあり方については、国有鉄道法の第二十八條でこのようにきめられております。「職員の給与は、生計費並びに国家公務員及び民間事業の従事員における給与その他の條件考慮して崇めなければならない。」このように法律に規定しておりますので、今回の予算総則第十三條のごとき決定をいたしますれば、国鉄職員の給与がきわめて不利になるばかりではなくて、国有鉄道法と相矛盾した結果を来し、また公共企業体労働関係法で保障された労働組合と当局との団体交渉を実質的に否認する、そのような結果ともなりますので、法律の権威のために、予算総則第十三條の削除をお願い申し上げると同時に、私はこの点を政府にも警告をいたしたいと思うのであります。     〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕  最後に申し上げたいことは、職員の定数についてであります。一昨年の七月まで国鉄の職員数は六十万余りでありましたが、国会の横車審議の結果、いわゆる革命的な定員法によりまして、国鉄職員の定数は五十万三千名と決定を見たのでありますが、今回の予算を見ますと、さらに減じて四十六万余りという驚くべき予算定員が計上されておるのであります。一体国鉄のような企業体ではいろいろな事態に備えて、多少彈力性のある備えをしておかなければなりません。朝鮮事変のごときを初め、一旦事あるときに備えておかなければ、非常の場合にその情勢にこたえることができないのであります。現在においても朝鮮事変等の影響によつて、従業員は多くの超過勤務をし、あるいは有給休暇がとれない。国鉄当局は窮余の策として、鉄道の保安度を下げて無理に定員を減らし、あるいは明治時代からやつておりました技能者養成を中止する等、まことに憂うべきことのみをやつておるのであります。一昨日の事ではなはだ申訳ありませんでしたが、国鉄の電車、列車がほとんど一日とまつて混乱をしたというのも、あまり人員を減らし過ぎて、非常の場合の動員力がなくなつたということに主たる原因があつたのであります。われわれはいろいろな観点から検討の結果、国会でさきに決定されました定員法の線、すなわち五十万三千名を一応安当のものとして算出しているのでありますが、どうか国有鉄道の職員数については、五十万三千名を確保されるようお願い申し上げる次第であります。  以上をもちまして公述を終ります。
  75. 西村久之

    ○西村(久)委員長代理 何か御質疑はありませんか。
  76. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 たいへん参考なつたのでありますが、四点ばかりを簡單にお伺いいたします。  最初にお述べになつ輸出入の問題でありますが、輸出だけに重点を置かないで輸入の方に大いに力を入れてもらいたい、こういうことでありました。もとより政府も、われわれ政党といたしましても、御説明のような輸入に力を入れることに大いに努力をいたしておるのでありますが、ただ伺いたいのは、お述べになつた言葉の中で、国民生活に必要な品物の輸入をというお言葉をお使いになつたようですが、それには何か特殊のこういうものとかああいうものとかいうものがありますか、「国民生活に必要な」ということをちよつと御説明願えませんか。
  77. 齋藤鉄郎

    ○齋藤公述人 一つ一つ品物を具体的にあげるほど私準備をいたしておりませんが、よく衣食住ということを言われますけれども、国民の衣食住に必要な品物をできるだけ輸入するようにお願いいたしたい、そういう考え方であります。
  78. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 そうしますと、大まかにわれわれが考えておりますのは、結局必要なる資材や原料輸入をいたして、これを加工をして輸出する、こういう考え方ですが、こういうこと以外に何か特に国民生活に必要なものというお考えであるのか。たとえば先ほど麦の統制撤廃は反対だ、従つてある期間統制を置いてもらいたい、こういうことでありましたが、こういう問題と関連をするものであるかどうか、「必要な」というお考え方ちよつと伺います。
  79. 齋藤鉄郎

    ○齋藤公述人 私ども日本経済からいつて、何年か前にストライク報告等もありましたが、日本経済昭和二十八年ですか、その当時になつて十五億ドルくらいの輸出をしなければならぬ、ことしの政府の計画によりますと、来年度はたしか十一億ドル輸出をする。輸出の必要であるということは私どもも認めております。輸出はしなければならぬ、従つてそれに必要な資材も買わなければならぬけれども、それのみに片寄つた結果、国民生活に必要なものが薄らぐようなことがあつてはいかぬし、最近私ども雑誌、新聞その他で見ておりますと、国民生活に必要な物資の輸入がおろそかにされておるというようなことを聞いて非常に心配しておるのでありますが、そういうようなことのないようにぜひお願いしたいということであります。
  80. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 この問題はもう一点でしまいますが、こういうことがあるのです。私どもが直接タツチしておる問題で、たとえば農民などの方から供出を計画的に強制せられたりすると困るということや、追加供出なんか非常に困る、こういう声は盛んに聞くし、よく事情は私どもわかつておる。ところがそこで大体供出量というものを計算に入れておいて、足りないと思われる血を政府の方で外国から輸入の計画を立てる、これは御承知通りです。そうしますと、今度は農村地方から何と言つて来るかというと、三百四十万トンとか二百八十万トンだのというたくさんのものを輸入せられては日本の農業圧迫だ、これは非常に困る、こういう反対が来る。結局出すものは出せない。出せない分を輸入しようとすると、そんなものを輸入するとごつちが困る。こういう事態が、農村だけの問題ではなくていろいろ出て来る。そこでさつきお話しましたのは、輸入の品目について何か特殊のものを考えておられるか、こういうことを聞いたのです。ところが、これはあれこれという具体的なことではない、こういう意見ですね——わかりました。  その次の点ですが、これは近く給与について三割ほどの改善の要求をしたい、こういうことでありましたが、この要求につきましては、結局財源はどういう点をお考えになつてこういう計画を立てられるのであるか。財源などのことは政治家が知つているだろうから、われわれは必要なものだけを要求するのだ、こういう考えで御計画になるのであるか、それを第二点として伺いたい。
  81. 齋藤鉄郎

    ○齋藤公述人 私先ほども申し上げましたように、遺憾ながら物価の変動もはげしいものですから、目標としては、ただいま私も計数の整理をしておりますので、はつきりした数字は申し上げかねますけれども、大体三割程度現在の給与を改善してもらわなければならない。そこで財源があるかというお話でございますが、私は先ほど申し上げたように、国鉄については運賃その他からいつて財政の組立て方が健全財政であるということにはなつておりませんので、根本的な解決、たとえば運賃を値上げするのか、あるいはまた補給金式のもので一時糊塗して行くのか、これは高い政治的な立場からお考えをいただかなければなりませんが、現在出ておる予算面からいつても、当然借入金等をやらなくてはならないと思われるような資産関係のことを、営業上の收益金によつてつておる。こういうようなやり方を改めれば、私どもが予定しておる三割程度の給与の改善は可能ではないか。同時に国家公務員等についても、先ほど私申し上げましたように、外国為替関係の五百億をもつとなくするか、小さくするかすれば、給与の改善にまわすこともできるのではないかというふうに考えておるわけでありますが、この点は皆さんの高い政治的な観点からよろしくひとつ御検討をいただきたいのであります。
  82. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 国有鉄道の問題に関してですが、この国有鉄道の性格に関しましては、法律をつくつた私ども自身がいまだに現在のままでいいとは思つていない。そこであなた方の御見解を聞いておきたいのですが、要するに国有鉄道は独立採算制とはいうものの、一面において掘り下げて考えますと、国有であつて国民が株主みたいなことになつておる。そこで国民が株主みたいなことになつておるのだから、大いに公共性を現わしてこれを運営して行かなければいかぬという観点から、おつしやるような他の物価並に貨物並びに旅客の運賃等を上げない、こういうような建前が一応とられておるようなんですが、それが一方独立採算制といつておるのですから、その間の国有鉄道というものの性格をどういうふうに持つてつたらいいかということについてあなたはどう考えていられるか。これは私どもの考えるべきことですが、参考にひとつ伺つておきたいと思います。
  83. 齋藤鉄郎

    ○齋藤公述人 一私もそうした專門家ではありませんので、ただ私どもがいろいろ話合いをし、あるいはいろいろ権威者から聞いたことから判断して申上げると、日本の国有鉄道のような公共企業体は、アメリカのTVAのような性格が好ましいというふうに伝えられております。アメリカのそのままを直輸入してまねろとは私は申し上げませんけれども、やはり国鉄という企業は公共性と企業性とをよく調節した性格のものであるべきではないかというふうに考えておるわけであります。  それから運賃についても今お話ございましたけれども、物価が二百八十五倍であるから即運賃もそうしなければならぬというようなことは私は申し上げておりません。ただ原価を割るような運賃ということがはたしてよろしいかどうか。それでもいろいろな政策上やむを得ないとするならば、損をしておる分は国家として何か補償してやるということを考えませんと、いたずらに国鉄のマイナスの收入でまかなおうとするものですから、一番弱い労働者のところへ持つてつて給与の引下げをやるというようなやり方について、とくと御考慮願いたい。運賃についてのきめ方は運賃法という法律のたしか第一條だつたと思うのでありますが、四つの條件が並べられております。運賃をきめる方法としてのその一つは、まず公正妥当なものであること、それから原価を償うものであること、それから産業の発達に資すること、それから賃金及び物価安定に寄与するものでなければならない、たしかこの四つの観点から運賃というものがきめられる。そして運賃問題は国会で審議して決定せられることに現在はなつておりますので、こうした観点から皆さんに再検討をお願いしたい、そういう趣旨で私は申し上げたのであります。
  84. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 そこで関連して簡單ですが……。さつき年末手当の問題をお話があつたようでしたが、他の官庁と違つて国有鉄道に年末手当をやつておかないというのは、私は国有鉄道の性格から判断をしてこういうふうに考える。それは結局公共企業体という特殊の性格なのだから、規定をしておかなくても、うんと黒字になつて来ればそこに妙味を発揮する、例をあげて言うと、昨年の年末なんか、一般公務員には半月分の手当、賞与しかやらなかつたのに、国鉄の方には一箇月ということを私どもまつ先に提唱して大いに努力したのだが、そういつた国有鉄道の性格をうまくやつて行こうという考え方からこういう規定ができておるのだろう、こういうふうに私ども解釈いたしておるのですが、あなた方はどういうふうにどれを解釈しておられるか。これでしまいです。
  85. 齋藤鉄郎

    ○齋藤公述人 年末手当の問題で、昨年はたいへんお骨折りいただきまして、この席から厚く御乳申し上げます。(「こつちだ」と呼ぶ者あり、笑声)いや、国会に御礼申上げます。それで今の点でございますが、今尾崎委員からおつしやられた通りに私ども考えております。考えておりますので、黒字が出たらやつてもよろしいじやないか。ところが総則の十三條に「支給しない。」とあつても、黒字になつた場合にやれるのかどうか。私どもは今の解釈で、黒字になつたらやれるのだということであれば、そのように了承して帰りまして、報告いたします。
  86. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいまお話の中で世界自由労連の会議日本の移民問題について話があつて日本が完全雇用に努力すれば、移民問題を考えてもいい、こういうふうに私聞いたのでありますが、その通りでございますかどうか。  もう一つは、世界自由労連には、日本の移民の対象になる北米とか、南米とか、濠州とか、ニユーギニアとか、あるいはインドネシアとか、そういうところの労連も入つているのかどうか。結局移民の問題の大きな問題はそういうところなんですが、現に濠州なんかでは、こういう問題については非常に鋭敏になつておるわけですが、そういうところの労働組合も、この自由労連に入つているかどうか、これをお伺いします。
  87. 齋藤鉄郎

    ○齋藤公述人 第一点につきましては、お説の通りでありまして、日本人自身がもつと人口問題について努力の実績をわれわれ示してくれ、しかも完全雇用という政策でもつて積極的に努力をして、なおかつどうにもならぬから片腕を貸してくれというならば、相談に応じようという意味を言つているわけであります。  それから第二点の、どういう国が入つているか、詳細について私今記憶しておりませんが、世界自由労連というのは、共産主義圏と反対の立場にある民主的国家の圏にあるものが加盟しておる。具体的に何々かということは、今私十分に記憶していませんので、何でしたらあとで御連絡申し上げたいと思います。
  88. 川島金次

    ○川島委員 齋藤さんに一言重要なことだと思いましたのでお尋ねをいたしておきたいと思います。先般の予算委員会におきましても、もつぱら野党側からは、一般会計予算につきましての政府予算の組立て方について、朝鮮事変以来の、ことに物価事情というものをほとんど無視して予算編成をしておる、そういう事柄の批判的な質問を展開されておつた。これに対して大蔵大臣は、一般会計はもとよりであるけれども、そういう政府機関関係等の予算についても、著しい情勢の激変がない限りは、補正予算を出す心組みもなければ必要もない、こういうふうに明確に強く答弁をいたしておるのです。     〔西村(久)委員長代理退席、委員長著席〕  ところが、ただいまあなたにお伺いをいたしますると、国有鉄道の予算のごときは、建設勘定は別でありましようが、一般の勘定において物件費のごときが大分少いことに一方においてはお説のように單価が最小に見積つても、すでに予算編成したときに比較いたしまして二〇%も上昇を見ておる、さらに今後も上昇を見るであろうということが、若干予想されておるというような情勢であります。そういう観点に立たれて、委員長は、この国鉄の予算は当局でさえも八箇月暫定予算だ、しかも、従つて八箇月予算であるから、車輌の修繕、あるいは新造などという問題については、ほとんど手が出ない形になる月が出て来るであろう、こういうふうに言われましたので、これは重大な事柄だと実は聞いておつた。かりに国鉄当局の言明されておりますように、この国有鉄道の一般予算が、わずかに八箇月予算にすぎないということになりますれば、残る四箇月間は、一体どういう形で国鉄を運営するのかという問題になります。ことに最小限度の人件費はあるけれど、物件費がないというと、たとえば一例をあげれば、各国有鉄道の関係工磯部等において、八箇月間だけは新造、修繕等に要する物件購入費があつて、その仕事は続けられる。ところが八箇月日になると、予定通り行けば残る四箇月間は物件購入費さえなくて、いたずらに人間はおるけれども材料が入らない。従つて車輌の新造はおろか、修繕さえも不可能だ、こういうことになつて参りますと、それでなくとも、政府経済自立三箇年計画というものを立てて、御承知通り今年は第一年目に入つておる。しかも輸送力の増強ということを強調しておるのです。そういうときに、国鉄予算が八箇月しかない、四箇月は不足だということが明らかな以上は、この経済自立三箇年計画というものは画餅にひとしいことになるのはもちろん、日本経済運営の上において、最も重大な役割を果すべき輸送力という問題について、重大な結果を招来するおそれがあるということに私どもは聞き及んだわけです。従つて国鉄の五十万の労働組合として、こういう予算であるということが判明した以上は、はたしてこの予算で、この国鉄の目標とする輸送増強の達成ができるかどうか、そういうことで一体組合の人たちが自信を持つて行かれるかどうか、それからまた、その輸送の上において、この予算で、はたして安全輸送が達成できるかどうか、これは一般旅客はもちろん、物資の輸送にとつても重大な影響を与えるものでございます。そういつた事柄について、組合の最高責任者として、この予算を通じて、組合として立ち向うべき心構え、見通し等をひとつ率直にお聞かせを願いたい。
  89. 齋藤鉄郎

    ○齋藤公述人 組合の意向をお尋ねがあつたわけですが、私先ほども申し上げましたように、專門な立場にある当局が八箇月暫定予算であるというふうに漏らしておる点から、どうしてもこの予算は改定されなければならぬ、不幸にして今国会で改定を見ないにしても、臨時国会等においてはどうしても改定される、これは私断言できると思うのであります。このような少い予算で、これを一箇月々々々十二分の一ずつでやりますと、仕事が十分にできない。従つて必要な仕事はやらなければなりませんので、年度のおしまいの方へ行つて、金が足りなくなるのではないか、一部ではこういうことが今問題になつております。先ほども申し上げたのでありますが、それでは車輌の保守の点、安全に運転するためには必要な規定上の検査なり修繕をしなければなりませんが、その程度を落して、手を省いて、材料を少く使つて今年をしのいで行くか、あるいはまた、いやそれはいかぬ、やはり必要なやつはその規定通りつてつて、あとで追加予算なり何なりでもらうように努力をしなくちやならぬということも言われておるわけでありますが、私どもの考えとしては、やはり車輌の安全度を落したり、そういうことをしてはならない、規定できめられておる必要な安全度は保持して、やるべき仕事はやろうではないか、やるべき仕事はやりたい、やりたいのですが、先ほど申し上げたように、張合いのある目標を与えてもらいませんと、かりに臨時列車を運転して、非常に増收になつたとか、黒字になつたといつても、そのときに十三條で、いや年末手当は支給しないときまつておるのだから、君らにやることはできないのだということでは、努力する張合いを失つてしまいますので、努力の張合いがあるように、十三條等は削除し、さらに国鉄に大きな権限を与えるということは困難かと思われますけれども、多少の項目の変更とか、要するに労働組合が当局と団体交渉をしてまとまつた点については、わざわざ最終的に国会まで持つて行かなくとも、軽く運輸大臣に相談したら、実施してよろしいとか、その程度自主性を与えるように、特にお願いをしたいということを申しておるわけであります。
  90. 林百郎

    ○林(百)委員 各労働組合が、それぞれ賃金ベースの改訂について問題にしておることは、御存じ通りでありますが、日教組を中心として——官公労もそうでありますが、国鉄の八千二百円ベースよりベースの低い大体八千円ベースの日教組が、今一万二千円ペースのベース改訂を出している。これに官公労も歩調を合せているのであります。先ほど齋藤氏のお話を聞きますと、大体国鉄としては八千二百円ベースをもう三割上げたいというのでありますが、そうすると、一万六百大十円くらいになりますが、この官公労の一万二千円ベースに歩調を合せられる意思があるのかないのか。またべースの上げ方が、国鉄は日教組よりもむしろ下まわつておる要求をされておる理由をお聞きしたい。
  91. 齋藤鉄郎

    ○齋藤公述人 官公労の関係で一万二千円に決定をしたということの詳細については、私実はここへ参りますまでによく聞いておりませんけれども、私ども国鉄労働組合としては、最近の物価指数なり、あるいはCPSなりいろいろなケースから、ただいま数字を整理中であります。その結果一万二千円になるか、あるいはさらにそれよりも多くなるか、少い方の基準で申し上げると、三割以上の要求をするということになるであろうというのが、ただいまわれわれの專門部で研究されておるところであります。そしてただいまのほかの労組あるいは日教組等と歩調を合せる意思はないかというお話のようでございましたが、そうした点については、労働組合は労働組合としての信義の上から、できるだけ歩調を合せて行きたいというふうに私どもは考えております。
  92. 林百郎

    ○林(百)委員 重大な点は大体お聞きいたしましたから、そのほかこまかい点をあまりお聞きしても御迷惑かと思いますが、実は地域給の問題が、公務員の地域給の切りかえよりも、国鉄の方がもつとひどい切りかえになつております。公務員が三〇%が二〇%に切りかえられておるときに、国鉄は二五%が一五%に切りかえられたと思います。これは甲地の地域給になつております。地域給の切下げが一般公務員より切下げ方がひどい。これが一つと、第二は昇給率とか昇給の期限が、一般の公務員の方は一〇〇%になつていますが、国鉄の方は有資格者が昇給しなくて、それが五〇%くらいでとまつておるという事実です。その報告が私の方にあるのですが、この点と、それから号俸給が一級上つたが、現場の労働時間の四十四時間が四十八時間になつて、実際は労働強化の面でそれが相殺されてしまつて、むしろ号俸の実質的な引下げを行つておるというような職場も方々にあるということを聞いておりますが、この点が事実そうであるかどうか。それからもう一つは、超過勤務手当が今まで出たのが切下げられておつて、実際は国鉄は普通の公務員よりべースは上にあるにもかかわらず、最近の国鉄の労働者諸君の状況というものは、むしろ一般の公務員よりも、実質的には苦しいのではないかというようにわれわれは考えておるのでありますが、今の四つの点について、実際に当られている委員長の持つておられる認識をひとつ発表願いたいと思います。
  93. 齋藤鉄郎

    ○齋藤公述人 地域給についてのお話でございますが、国鉄は国鉄独自の立場で、昨年の年末に皆さんのお骨りで決定をいたしました八千二百円べースを実施するにあたつて、国鉄労組と鉄道当局と団体交渉をして、その結果決定を見たのが現在の地域給でございます。従いまして一般公務員の地域給と比較をいたしますと、相違がございますけれども、国鉄労働組合としては、そのような経過から決定をいたしましたので、組合の意向によつて決定しましたというために、これをもつてよろしい。ただ内部において、たとえば少し調整をしなくちやならぬというような点については、今後十分に研究してやるということになつているわけであります。  それから昇給の率については、私も国鉄はよろしいとは思つておりません。国鉄の昇給率が惡いというのは、先ほど申し上げたように人件費を不当に圧迫して来た、その結果国鉄の昇給率というのは惡くなつているので、この点は改善して行かなければならぬというふうに、組合としての努力の目標に申しているわけであります。  それから四十八時間になつて実質的に切下げられたのではないかという点については、お話の通りに私どもも考えております。  それから超過勤務手当の問題でございますが、特需輸送等の関係で超過勤務が多い。しかるに金の面で制約を受けるというようなことで、末端の方では残業をしたけれどもその手当はもらえなかつたというようなことで、労働組合が取上げて、あるいは調停委員会に持ち込み、紛争がありましたけれども、現在のところでは残業した、超過勤務をした分についての支払いは、一応済んでいるようであります。
  94. 林百郎

    ○林(百)委員 今のいろいろの点で、実は国鉄労働者諸君が、給与の面で非常に生活切下げをしておられるということがよくわかつた次第であります。実は先ほど齋藤委員長も言うように、予算の中に方々に実はクツシヨンがあります。インヴエントリーの五百億だとか、あるいは終戰処理費の中だとか、警察予備隊だとか、こういうクツシヨンの点が十分ありますから、国鉄の諸君も自分の生活の改善のために——国鉄従業員の生活が安定されるということが、一番鉄道の公共性を守る根本的な條件だと思いますから、その点はひとつ遠慮なく勇敢に闘つていただきたいと思います。われわれもできるだけの応援をするつもりであります。
  95. 小林進

    小林(進)委員 私一つだけお伺いしたいのでありますが、先ほど言われた定員法に基く五十万三千人に対しまして、二十六年度の予算定員が四十六万人と言われているのであります。この四十六万人は、一体自然減をはかつた現在の実際の数字であるのか。実際の数字が一体幾らであつて、それを下まわつて四十六万人にしたのか。あるいは実際人員は四十犬万人しかいないのかどうか、この点を一つかにしていただくことと、それがもし四十六万人ないし四十七、八方であつて、定員を下まわつているものとすれば、これに対して国鉄労組が今日まで何ら手を打たかつたのか、その問題が第二。それからこれは予算全般の組み方でありますが、この組み方に対しまして、国鉄労組として何ら関与されなかつたのかどうか。今公聽会で申されたようなことを、この予算の原案を組む国鉄当局の経理者に対して、何らか関与しあるいは組むごとに堂々と作業をやれるような立場が、一体労組の方々に与えられなかつたのかどうか。あるいは与えられていたけれども、それを政府みずからがけつて、こんな矛盾せるものにつくり上げたのかどうか。以上三点を私はお聞きしたいと思うのであります。
  96. 齋藤鉄郎

    ○齋藤公述人 定員の問題でありますが、私ノートではつきりした数字を持つて来ておるのでありますが、二十六年度予算上にあげられておる予算定員というものは、現在昭和二十六年の一月なら一月現在の実数よりも、さらに一万人以上下まわつているものであります。それに対してわれわれは反対であるということで、今日までいろいろ運動をやつて参りましたけれども、国鉄当局が頑として聞かぬということで今日まで参りました。そこで一方余りを来年の二十七年三月末までに減らすのだということが、予算上から推察できるのでありますが、一応首切り的なことはやらぬ、自然減耗によるのであるということを非公式には聞いております。それから国会にただいま提出されております予算について、組合の意向が聽取されたかどうかというような点でありますが、遺憾ながらそうしたいきさつがなく、一方的に組み立てられて提出されたのがただいまの予算でございます。
  97. 川島金次

    ○川島委員 今の小林君の質問に対して、今度の二十六年度の予算定員が一万幾らと言いましたが、それは誤りじやないかと私は思うのです。この二十六年度の政府関係機関予算日本国有鉄道の分を見ますと、二十五年度は四十九万二千七百五十人、今度は四十六万八千八百六十五人になつてしまう。そうすると、実に驚くなかれ、ことし国鉄は二万三千八百八十五人を首切ることになつておる。そうじやないですか。これは明確に書いてある。これは非常に重要な問題ですから、よくごらんになつてお答え願いたい。
  98. 齋藤鉄郎

    ○齋藤公述人 これに書いてありますこと、これは正しいと思います。もし私の数字上に食い違いがあれば、それは誤りでございますので、御訂正を願いたいと思います。
  99. 小野瀬忠兵衞

    ○小野瀬委員 ただいま地域給の問題が出ましたのでちよつとお伺いします。私ども地方の駅員からよく聞くところでございますが、この地域給は非常に不公平な取扱いをされております。と申しますのは、東鉄管内あたりで近県から通つておる従業員は、地方におりながら中央に籍があるということで、地域給を受けておる。しかるに地方の者はその恩典に浴することができないということで、非常に不平を申しておりますが、この点は事実そういうことがあるのですか。
  100. 齋藤鉄郎

    ○齋藤公述人 ただいまの点は、東京なら東京に勤めておる人は特甲地としての地域給の支給を受けるわけであります。ところがその人の住居が——割合から言つたらもちろん東京都内に住んでいる人が非常に多いと思います。が、都合によつてはいわゆるいなかと申しますか、甲地あるいは乙地のところから通つておる方もあるかもしれません。それだからといつて特甲地の者がけしからぬとはならない。これは支給する基準を、勤務箇所を基準にして支給するか、あるいは住んでおる住居を基準にして支給するか、いろいろな観点から御研究の結果、勤務箇所を基準として支給するという結果でありまして、多少ここに、都内に住んでないで、いなかから通つておるけれどもという人があつても、支給する方法の上からきめられたことで、かりにこれを全然逆にしても、また非常な矛盾が生じて来る。従つて多少矛盾した点はありましても、やむを得ないのではないかというふうに考えておるわけであります。
  101. 小野瀬忠兵衞

    ○小野瀬委員 齋藤さんの御答弁は、勤務地主義ということでありまして、とにかく現在の支給方法がまず妥当であろうというふうに了解できるのでありますが、私は地域給というものは、やはり住居地を原則として重く考えて行かなくてはならぬと思います。その点に関しまして、なぜそれならば不平を言う者が、それを組合の幹部に申出ないかといいますと、やはり東鉄とか中央に勤務している者の勢力が、組合内において非常に強い、そのために地方の声は全然通らないのだ、こういうようなことを言つておりますので、この点はあなた方としても十分お考えにならなければならぬと思いますが、どういうふうにお考えになつておりますか。
  102. 齋藤鉄郎

    ○齋藤公述人 何か組合の役員が、都市出身者が多いために、都市に片寄り過ぎたような地域給のきめ方をしているのではないかというような発言のようでございますけれども、御承知かもしれませんが、これを国鉄なら国鉄に例をとつてみますと、南は鹿兒島から北は北海道、全国から比例的な割合で代表が出ておりますので、結果として数字面にはいろいろなものが現われるかもしれませんが、全国の意向の最小公倍数として出た答えでありますので、私どもは都市を有利に、あるいは地方を不利にというような考え方は全然やつておりませんし、またそのような人員の構成でございますので、そういうことはあり得ないと思います。誤解のないようにお願いいたします。
  103. 林百郎

    ○林(百)委員 ちよつと齋藤さん、そこに書いてみてくれませんか。公務員は八千円ベースに切りかえられて、三千六百六十七円のものが、新ベースで四千六百円、九百三十三円の増です。国鉄の方は、八千二百円ベースに切りかえられて、三千六百円のものが新ベースで四千四百円になつて、八百円しか増加していない。それから公務員の四千四百六十八円だつたものが、新べースで五千七百円になつて、千二百三十二円ふえておる。ところが国鉄の方は、四千五百円が五千五百円にしかならなくて、千円しかふえていない。それから公務員は五千二百九十二円が新ベースで六千九百円、千六百八円の増です。国鉄の方は、五千二百円のものが新ベースで六千五百円、千三百円しかふえぬということで、名目ベースは国鉄の方が上ですが、この新ぺースは、三千円から六千円までの人は、名目八千二百円ペースの国鉄の方が、むしろ公務員の八千円ベースより下つておる、増加額もむしろ八千円ベースより下だ、こういう数字が出て来ておりますが国鉄にはいろいろ階級がありますから、上の方は別として、この級はこの数字になりますか。
  104. 齋藤鉄郎

    ○齋藤公述人 数字のことはよく調べませんと、それが正しいかどうかということは、ちよつとこの場ですぐはつきりと申し上げることは困難だと思います。ただうわさとして私ども聞いておるのは、国鉄は八千二百円ベースである、国家公務員は八千五十八円がちよつとくずれて八千円べースですが、公務員の方が比較的実質的にはよろしかつたようだということを聞いております。こうした点も今後解決をはからなくちやならぬと思うのですが、ただいま御指示の数字、これはおそらく正しいだろうと思いますけれども、私しつかり調べてみませんと、はつきりしたことを申し上げられません。
  105. 小坂善太郎

    小坂委員長 これをもちまして、公述人の公述は全部終了いたしました。  公述人の各位には長時間にわたりまして腹蔵ない意見を述べられまして、御苦労様でございました。  本日はこの程度にとどめまして、明後十九日は、午前十時より委員会を開会いたしまして、質疑を続行することといたします。本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十二分散会