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1951-02-16 第10回国会 衆議院 予算委員会 第15号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
二十六年二月十六日(金曜日) 午前十一時五分
開議
出席委員
委員長
小坂善太郎
君
理事
橘 直治君
理事
西村
久之君
理事
橋本
龍伍
君
理事
川崎 秀二君
理事
川島 金次君
理事
林 百郎君
麻生太賀吉
君
天野
公義君 尾崎 末吉君
小野瀬忠兵衞
君
上林
山
榮吉
君 北澤 直吉君
塩田賀四郎
君 島村
一郎
君
田口長治郎
君 玉置 實君 南 好雄君
井出一太郎
君 松本
瀧藏
君
勝間田清一
君 井手 光治君 江花 靜君
甲木
保君 川端 佳夫君 久野 忠治君 坂田
道太
君 庄司
一郎
君 鈴木 正文君 永井
英修
君 中村 幸八君 今井 耕君
中曽根康弘
君
松澤
兼人
君
水谷長三郎
君 川上 貫一君
横田甚太郎
君 小平 忠君 黒田 寿男君
小林
進君
出席国務大臣
内閣総理大臣
吉田 茂君 法 務 総 裁 大橋 武夫君 大 蔵 大 臣 池田 勇人君 文 部 大 臣
天野
貞祐君 労 働 大 臣 保利 茂君
出席政府委員
内閣官房長官
岡崎 勝男君
外務政務次官
草葉
隆圓
君
外務事務官
(
政務局長
) 島津
久大君
大蔵事務官
(
主計局長
) 河野 一之君
委員外
の
出席者
参 考 人 (
京都大学教
授)
汐見
三郎
君 專 門 員
小林幾次郎
君 專 門 員 園山 芳造君 專 門 員 小竹 豊治君
—————————————
二月十四日
委員塚田十一郎
君及び稻村順三君辞任につき、 その補欠として
上林
山
榮吉
君及び
松澤兼人
君が 議長の指名で
委員
に選任された。
—————————————
本日の
会議
に付した事件
分科会設置
に関する件
昭和
二十六
年度
一般会計予算
昭和
二十六
年度
特別会計予算
昭和
二十六
年度
政府関係機関予算
—————————————
小坂善太郎
1
○
小坂委員長
これより
会議
を開きます。 本日は午後一時より、
内閣総理大臣
に対する
質疑
を行う予定に
なつ
ておりまするが、昨日はからずも十五年来の大雪でありましたために、
交通機関
の
関係
上、
公聽会
を開会することができなか
つた
のであります。
公述人
として
意見
を聞くことに
なつ
ておりました
京都大学教授汐見三郎
君が、今までこういう席にあまりおいでにならなか
つた
のでありますが、特に今回新たなる
税制
について
意見
を述べたいという
考え
で、
京都
から来ておられまするので、同君を
参考
人してこの際
意見
を聽取いたしたいと存じまするが、御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
小坂善太郎
2
○
小坂委員長
御
異議
がなければ、さよう決定いたします。なお
公聽会
の続きは、明十七日午前十時より開会いたそうと存じまするから、御
了承
を願いたいと存じます。 それでは
京都大学教授汐見三郎
君より御
意見
を聽取いたしたいと思います。
汐見三郎
3
○
汐見参考人
昭和
二十六
年度
予算
のうち、特に
税制
につきまして、
意見
を申し上げたいと思
つて
おります。はなはだか
つて
でございますが、きよう「はと」で立つことに
なつ
ておりますので、二十分ばかりお話申しまして、それからいろいろ御
意見
を承りたいと思
つて
おりますので、さよう御
了承
を願います。
昭和
二十六
年度
の
予算
でありますが、一昨年までは前年の
予算
よりも次の年の
予算
が必ずふえておるというふうなことに
なつ
ておりましたのが、昨年から前
年度
の
予算
より減額になりまして、今年も昨年ほどの幅ではありませんが、とにかく絶対額におきまして、前
年度
より今年の
予算
の方が減ずることに
なつ
ております。それと同時に、従来の
予算
におきましては、
公債
の
收入
の
部分
が
よけい
あ
つた
のが、
租税收入
の
部分
が
よけい
に
なつ
て参りまして、
一般会計
におきまして、
租税收入
と
專売益金
を合せまして八四・九%というふうなことに
なつ
ておりまして、
租税
が
財政
において重要な
意味
を持
つて
おることは、
数字
的にも明らかなわけであります。
地方財政
も同じことでありまして、
地方税
というものが
相当
の額に達しておりまして、量的に申しまして、ただいま申しましたようなことに
なつ
ております。同時にまた質的に申しまして、
シヤウプ博士
が一昨年、昨年二度
日本
を訪れ、それでいろいろな
勧告
をされまして、
シヤウプ博士
の
勧告
の全部ではありませんが、大
部分
が
日本
に取入れられておるようなわけでございます。何分にも
シヤウプ博士
の
勧告
というものは、
日本
の
国税
、
地方税
全体にわた
つて
の
大改革
でありまして、いろいろな点に
摩擦
が
よけい
あ
つた
わけでありまするけれども、こういうふうな大きい
改革
の後には、
地震
の
ゆり直し
がやはりあるわけでございます。昨年は
根本的改革
をいたしましてことしの
税制
におきましては、昨年の
地震
の
大改革
によ
つて
いろいろな
摩擦
のあ
つた
ところをば勘案いたしまして、
日本
の実情に適切になるような
ぐあいにいろいろ苦心
が払われているようであります。
シヤウプ税制
というものに対しましては、いろいろな
考え方
があるだろうと思
つて
おりますが、私の
考え方
によりますると、
シヤウプ税制
というものは、
文字
でいえば
楷書
のようなもので、
日本
の
租税制度
というものは、従来は
草書
のようなもので、勘というものが非常に働いてお
つた
が、今度は理詰めの
税制
によ
つて
、
草書
をば
楷書
に書きかえた形に
なつ
ておるのであります。
草書
になれた
わが国
におきましては、
楷書
についていろいろふなれな点もあるわけで、ございまして、
摩擦
も起
つた
わけでございますけれども、今度の
税制改革
におきましては、
シヤウプ
の第二次の
勧告
を
相当
取入れまして、よほど緩和したものになり、
草書
と
楷書
の間のようなところに来ておるものでございます。それで基本の線は
シヤウプ
の線、これは近代的の
租税立法
でありまして、理論的でもあり、民主的でもあり、建設的でもある線でありまするから、これを推し進めて行く。しかし同時にどうもぎこちない点がある。今まで
草書
でなれていたところへ、
楷書
のかたい
文字
が出て来てどうもぎこちないところがある。それを
楷書
と
草書
との間のところで除いて行くというところに、いろいろ
苦心
が払われているようであります。私はそういう
あり方——
去年の
シヤウプ原案
というものは少しかた過ぎた、しかし
朝鮮事変
が起り、いろいろな
情勢
からいたしまして少しゆるやかにした方がいいじやないかと思
つて
おります。 それから
減税
でありまするが、
税法
上七百億円ばかりの
減税
ができております。それは実質上
減税
に
なつ
ておらぬじやないか、
税法
上の
減税
にす
ぎないじやないかという議論
もありまするが、
税法
上の
減税
をやらないで、ただいまの
税法
そのままをや
つて
おりますると、七百億円が
増收
に
なつ
て来る。
税制改革
で
税率
の引下げだとか、
基礎控除
の
引上げ
だとか、いろいろなことで緩和いたしましたので、それで七百億円の
増收
が大体元と同じようなぐあいに
なつ
て来たというところが、今度の
減税
の特色であろうと思
つて
おります。従来
租税
を
よけい
とろうと思うと、
税率
を
引上げ
るに限るというふうな
考え方
が行われておりました。これは
太陽
と
風の神
とが旅人の衣を腕がす
イソツプ物語
のように、
風の神式
にきつくやれば、
税金
が
よけい
とれるという
考え方
であ
つた
わけですが、このたび酒の
税率
を引下げましたところが、かえ
つて
相当増收
に
なつ
て来た。それで
法人税
の
税率
をば下げて、
超過所得税
をよしたり、
法人
の
負担
を軽減いたしますると、
法人税
が
——
もちろんこれは景気の影響もあるわけでありまするけれども、
法人
の申告が正確になりまして、かえ
つて
税收
が増しておるというように、従来は
風の神式
にや
つて
お
つた租税
の
立法
が、今度は
太陽式
に
なつ
て来て、納める方も、また徴收する方も、幾分気持が従来より楽に
なつ
て来たのであります。ことしもどうぞその方針をば持続して、
税務行政
が円滑に行くことを望んでおるわけであります。 今度の
税制改革
に現われております
二つ
の線といたしまして、
資本蓄積
の線とそれから
生活
安定の線との
二つ
が強く現われておるのであります。
資本蓄積
の線といたしましては、
戰前
に比べますと、
わが国
の
資本
の
蓄積
は二割五分に減
つて
いるし、また内容的に見て、ただいまでは
他人資本
が大
部分
を占めて、
自己資本
というものはわずかに
なつ
ております。これは
近代国家
として
自立経済
を営み、多数の
国民
を養
つて
行くためには、どうしても
資本
の
蓄積
ということがないと、
国際経済
に伍して行くことができないという
意味
からいたしまして、
相当
必要なことだと思
つて
おります。
資本蓄積
に関連いたしましては、
資産
の
再々評価
を行うということと、それからまたそれで
自己資本
の
培養
をはかる。それから
他人資本
の
培養
として、
銀行預金
の
源泉選択
をやるということは、これは非常に大きい問題でありまして、
シヤウプ
の線から見ますと、
銀行預金
の
源泉選択
はよくないということであります。
総合課税
を徹底する上から申しますと、たとえば無
記名定期
というようなものは、これはけしからぬというような
考え方
に
なつ
て行くわけでありますが、それでは
換物運動
が起き出したり、
たんす預金
が現われたりするのであります。
従つて租税
の
公平観念
というものは、大
乘的見地
に立つ必要がある。無
記名定期
の復活は、これはよくないというふうに
考え
ますが、
源泉選択
の
程度
が、
ちようど楷書
と
草書
との間を行くもので、いいものだというふうに思
つて
おります。直接
投資
の問題といたしましては、さきに申し上げました
資産
の
再々評価
、それから
積立金
の
課税
をやめる、それから
同族会社
の
解釈
というものが
へんぱな解釈
に
なつ
ておりましたので、これを合理的の
解釈
にする。それから
間接投資
の方におきましては、
銀行預金
の利子の
源泉選択
を許す、そういう方面をいろいろ
考え
、また設備の
近代化
のために
耐用年数
に
特別償却
を認める、
耐用年数
に特別の
考慮
を払うというふうなことが行われているわけであります。 それから
生活
安定の線でありますが、
税率
は、
世界各国
に比べますと、
日本
の
租税
の
税率
は決して高いものではない。しかしこの
刻み
が、
所得階段
の
刻み
と
相続税
の
階段
の
刻み
というふうなものが、インフレーシヨンを織り込んではいるけれども、織り込み方が少いのであります。それで
基礎控除
をもつとうんと
引上げ
るとか、それから
扶養親族控除
をうんと
引上げ
るとか、あるいはまた
勤労者
の
控除
を
よけい
にするとか、いろいろなことが
考え
られるわけでございますけれども、ただいま
日本
の
所得
のほとんど大
部分
は
勤労所得
であります。
資産所得
は
戰前
に全
所得
の二割を占めてお
つた
のでありますが、ただいまはその五%というぐあいに下
つて
来ておりまして、結局
国家收入
というものは、
勤労所得
でまかなうしかしかたない
情勢
に
なつ
ております。それで十分のことはまだできておらないようでありますけれども、
租税收入
との関連におきまして
基礎控除
を
引上げ
たり、それから
未亡人控除
を新たに設けたり、
老年控除
を設けたり、
生命保險料
の
控除
を認めたり、いろいろな点で
生活
安定の面を努力してあるのは、私は十分とは申せませんけれども、現状においては満足すべき
改革
でないかというふうに
考え
ておるものであります。 それから問題は、
国税
と
地方税
と
両方
から
国民
の
負担
を
考え
てみなければならないのでありまして、
国税
と
地方税
の分野がそれぞれありまして、
国税
の支配する
原則
と、
地方税
の支配する
原則
とが共通のものがあり、また違
つた
ものもありまするが、
片一方
で行
つて
いることを
片一方
で裏切るというふうなことがないように、
国税
と
地方税
とを合せて
——地方税
につきましてはまたそれぞれ專門の方から御
意見
の開陳があるだろうと思
つて
おりますが、
国税
、
地方税
は出す方からいたしますと、同じポケツトから出すわけでありますから、
両方
総合して
考え
てみなければならないというふうに思うのであります。 それから第三番目に、これは一つの問題として取上げてみたいと思
つて
おりますが、ド
ツジ予算
の線を貫きまして、
終戰前
の
日本
の
赤字公債中心主義
をやめて、
租税中心主義
に移り、それがド
ツジ予算
によ
つて
非常に強く現われておりまして、その精神が
財政法
第四條、それから
地方財政法
第
五條
に現われておるわけでありますが、この線はやはり堅持しなれけばならないというふうに私は
考え
ておるのでございますけれども、この線もあまり
行き過ぎ
るとよくないというふうに
考え
ております。たとえば
地方財政法
第
五條
第一項の五のところに、
普通税
の
税率
がいずれも
標準税率
以上である
地方公共団体
において、戰災復旧
事業費
及び学校、河川、道路、
港湾等
の
公共施設
の
建設事業費
の
財源
とする場合には、
地方債
を起してもよい。しかし
標準税率未満
であるとその
地方債
が起せぬ、こういうふうの
規定
ができております。たとえば大都市のごとき
市民税
の
税率
をば一五%に引下げたいと思うけれども、
公債
を起すためにはやはり一八%までと
つて
おかないと、
公債
が起せぬというような、ある
意味
ではこれは
健全財政
を維持するいい
規定
とは思いますけれども、少しこれは
行き過ぎ
ではないか。この辺のところは
納税者
の
負担関係
、また
生活
安定ということと関連して
考え
てみなければならぬ問題ではないかというふうに私
考え
ております。 それから
地方税
の問題は、なるべく略すことにいたしておきまするが、多少関連するところを申し上げておきたいと思
つて
おります。
地方財政平衡交付金
を国から出して、
地方税
を
地方団体
でと
つて
行く、自力でと
つて
行く
地方税
と、
国民
全体が出すところの
地方財政平衡交付金
と、一体どのくらいの
バランス
にしていいものか。これは今度の
予算
にすぐにどうということはできないかもしれませんが、今度の
予算
及び
日本財政
の将来に課せられた大きい問題であります。
地方自治
を非常にやかましく言う。ところがある
府県
のごときは、そこでとれたところの
税金
が二億円だ、ところが
平衡交付金
が八億円だ、
国民
全体の出した
国家予算
からさいたものとの
バランス
がそれではたしてよいのかどうか。しかし一方から申しますと、そのくらいの
平衡交付金
をもらわぬととてもや
つて
行けぬから、むしろ
平衡交付金
を増額したいという
考え方
も出ております。それで
地方自治
というものの
考え方
、
国家生活
と
地方生活
との調和をばどの点に求めるか。この
地方税
の見積りが、二十六
年度
におきましては二千八十七億円に
なつ
ている。ところが
平衡交付金
の額がこれはその半分以上を占めている。
地方税
の半分以上が調整的なものだというところに
財源
の
配分
について、ここにただいま申し上げました
議論
から行けば、
平衡交付金削減論
になります。しかし
現実
におきましては
平衡交付金
を増額して行かなければや
つて
行けぬというような声も高い。それでその
両方
をどういうふうに調整して
考え
て行くか。
シヤウプ税制
におきまして非常にすつきりした
税制
ができまして、
地方税制
は非常によく行
つて
おるのでありますが、こういうところに
シヤウプ税制
についてあるいは見落しの点があれば、改めなければならぬ点がありはしないかというぐあいに
考え
ておるのであります。
地方税
の問題は非常に
国家財政
と
関係
が深いのじやないか。ことに
事務
再
配分
の
勧告
も出ているわけであります。
事務
再
配分
の
勧告
も、
平衡交付金
、
地方税
、
国税
、そういうものの全体を有機的に
考え
てみる必要がありやしないかというふうに私は思うのであります。 最後に、この国会で
税法
を早くきめていただいて、
国税
及び
地方税
をなるべく早くきめるということが、
国民負担
の上に非常にいいじやないかと思
つて
おります。昨年
国税
が
減税
されて喜んでお
つた
ところが、
地方税
が増税されて裏切られたということがありました。
国税
を扱う役所が大蔵省であり、
地方税
を扱うところは各
地方団体
でありまするけれども、出す方は同じさいふから出ておるのでありますから、
両方
をよく
考え
てみる必要がありはせぬか。ことに
地方税
の方は、これは
地方議会
におきまして、
地方税法
に基いて
條例
をつくられることに
なつ
ております。それで
條例
できまるわけでありますが、昨年のごときは
地方税法
がきまりましたのが遅くなりましたために、半年の間に一年の
地方税
を納めるということに
なつ
た。それで
税制改革
に対する
非難
の声が高か
つた
のは、第一は、一年の
租税負担
が半年の間にしわ寄せに
なつ
たというところに、大きい原因があるんじやないかと思います。
国民
といたしましては、国の必要の
経費
、
地方団体
の必要の
経費
は、
税金
で納めなければならぬということは、よく覚悟しておるところでございますけれども、未確定の間が長いということが非常に問題だと思
つて
おります。それから国の
予算
の
審議
のときに、
地方財政平衡交付金
を通じて
地方税
と
関係
が深いのでありまして、
地方財政平衡交付金
の問題がその間のチヤンネルをつく
つて
おるわけでありますから、
国家予算
の
審議
のときに、あわせて
地方予算
の方にも
考慮
を払
つて
いただくことが、
国民
の
租税負担
を公平にするゆえんではないかというふうに私
考え
ております。 はなはだ簡單でありますが、一応これで終ることといたしまして、御
質問
がありましたらお答えいたしたいと思います。
小坂善太郎
4
○
小坂委員長
何か御
質疑
はありませんか。
橋本龍伍
5
○
橋本
(龍)
委員
先ほど
地方税
と
平衡交付金
の
関係
についてお話がありましたが、
参考
に伺いたいと思います。
平衡交付金制度
を置いておりましたドイツだとか、その他の国において、
地方税
の
收入
の総体と、
国税財源
で出て来る
平衡交付金
との割合というものは、大体どんなふうに
なつ
ておりましようか。
汐見三郎
6
○
汐見参考人
私今その確かな
数字
は覚えておりませんので、
比率
の正確な
数字
は調べましてお答えいたします。やはり
原則
は、
地方税
を調整する
意味
での
調整財源
というふうに
なつ
ております。
比率
はもう少し少いのじやないかと思
つて
おりますが、今正確な
数字
を持ち合せておりませんので、調べましてお答えいたします。
西村久之
7
○
西村
(久)
委員
この機会に一点お尋ね申し上げたいと思います。直接税と
間接税
との
関係
につきまして、今日のような段階におきましてはやむを得ぬでありましようが、行く行くはどういうふうなお
考え
を持
つて
おられるか、伺いたいと思います。
汐見三郎
8
○
汐見参考人
ただいま直接税と
間接税
の
比率
の問題について御
質問
がありましたが、
シヤウプ税制
は直接
税中心
でや
つて
行きたい。それで
国税
、
地方税
を、将来
所得税
、
法人税
、
市町村民税
で全体の七割五分をまか
なつ
て行こうというふうな
考え方
で、
税制改革
を
シヤウプ
さんはやられたわけであります。直接税においては、
所得税
を充実する。それからまた
富裕税
というような
財産税
を
国税
でつく
つて
行く。
相続税
の
最高税率
を九割までにする。それから
地方税
としては、今まで
土地家屋
にだけかか
つて
お
つた
ものを
償却資産
にかけて行く。電車の車輌にも、レールにもかけて行く。それから旅館の夜具、
散髪屋
の鏡にもかけて行くというふうに、直接税は非常に重きを置かれておる。直接
税中心
というのは
近代国家
の特徴でありまして、このことは私よく認めるのであります。問題は
程度
の問題であります。それからこれは
国民性
の問題で、東洋では、直接税をかけると
非難
が
よけい
出、
間接税
だと割合納まりがよいというのでありますが、
取引高税
をやめ、
織物消費税
をやめ、
間接税
は軽減をはかるということに
なつ
ておる。直接税を増し
間接税
を減す、その進み方が非常に早く行
つた
ものでありますから、これも
税金
を納める人と
税金
を徴收する人との間の
摩擦
を起したのだと思います。この点について、もう少し
考え
てみる必要がありはしないか、今度
所得税
の
税率
を引下げて
所得税
を軽減したことは、相対的に申しますと、
間接税
の地位を、
シヤウプ
さんの思
つて
おるよりは少し高めたということに
なつ
ております。私は直接税の方を
間接税
より
よけい
にすべしというふうに
考え
ておりますけれども、その
程度
が
行き過ぎ
にならないように、
間接税
は
間接税
でまた
相当
強みを持
つて
おると
考え
ております。
間接税
をもう一度見直す必要がありはしないかというふうに
考え
ております。
西村久之
9
○
西村
(久)
委員
もう一点お尋ね申し上げたいと存じます。私は大体
国民
の
課税
の対象は、
中央税
、
地方税
を問わず、
国民
の
所得
を
基準
として、
生活
を脅かさぬ範囲内において徴收すべきものなりという信念を持
つて
おるのであります。今日のような複雑な時代には、いろいろな
税金
をと
つて
おるようでありますが、いかに複雑でありましても、
所得
以上の税をかけられるにおいては、
国民
は
担税力
がないのは申し上げるまでもないのであります。それで各
税種
によ
つて所得基準
で
課税
をするという
考え方
がよろしいのが、今日のように税目を、
府県税
、あるいは
地方税
というて盛んにふやしておるようでありますが、これをふやしました結果は、結局
課税標準
がダブるきらいがまたなきにしもあらずというような感じがするのであります。ダブリますと、結局それだけ
負担力
のない者に
負担
がかか
つて
来るというので、中産以下の人は特に苦しい思いをしなければならぬ、こういうふうな結果になるのじやないかと心配いたしております。従いまして、
所得中心
に
課税
をすべきものであるが、今日のように
資産
に対して
——
私は
資産課税
というのは、
資産
の生む
所得
を土台として
課税
せざる限りにおいては、必ず家を分割して処分しなければ、納税すべき
資本
がない、こういう結果を来すのではないかということを憂慮いたしておりますがために、
税そのもの
は
国民
の
所得
一本を
基準
にすべきものであるかないか、御見解が伺えたら
伺つて
みたいと思います。
汐見三郎
10
○
汐見参考人
原則
といたしまして、ただいまの御
意見
が私は正しいと
考え
ておるのであります。問題は、無
收益
の
資産
にかけるべきかどうか、
所得
のないところの
財産
にかけることが正しいか正しくないかという
考え
であります。これに対しましては、こういう
考え方
があるのでございます。無
收益財産
をそのままにしておくと、どうも
資本
の濫費と申しましようか、それを持
つて
いる人がなまけて、それを遊ばしておいて値上りを待つというような
考え方
に
なつ
て行く。無
收益財産
に適当な
税金
をかけると、その
財産
を持ち得る人は持
つて
おるが、持ち得ない人は人に離す。そこでその無
收益財産
を
收益
化するようにする
作用
がある。こういう
考え方
が
富裕税
、
固定資産税
の
考え方
なのでございます。これもおのずから限度があるのでありまして、薬がきき過ぎてはいけない。本来の建前は、お説の
通り所得
を
中心
にする。それで
外形標準
とか、そういうことは補充の
意味
、副の
意味
で、主客を転倒してはいけない。そういうふうに私は
考え
ております。
橋本龍伍
11
○
橋本
(龍)
委員
先ほど私の
質問
した点に関連しまして、ひ
とつ
御
意見
を伺いたいのですが、昨年以来
地方財政平衡交付金
の問題がありました際に、
地方
で当初
予算
で予想せざる歳出の必要が起
つた
ことが確かにあるのです。その
意味
において、もし
租税
にほんとうに
彈力性
があれば、これはむしろ
標準課税率
を
中心
にして動かして、
租税
でまかなうのが筋でありましよう。その際に
現実
に
地方税
に
彈力性
がない。従
つて
必要なものは、
平衡交付金
の
平衡作用
という点から少し離れるかもしれないが、
現実
問題として、全部国から出してくれという要求が非常に強か
つた
。昨
年度
は御指摘のありました
通り
に、
地方税
の
施行
が遅れましたし、後年期に
よけい
とらなければならぬような状態になりましたし、かつまた
平衡交付金
についても、御承知の
通り年度
の半ばに、前
年度
に比べて非常にいろいろやりくりをしなければならぬという無理があ
つた
のですが、二十五
年度
の今
言つた地方税
の
施行
が遅れたこと、それから
平衡交付金
を返したり、追加支出したり、入れかえをするという
関係
を拔きにして、現在の平
年度
において、今日の
経済事情
から
地方税制
を見た場合に、これは
彈力性
があるとお
考え
でありますか、あるいは強力性はないのだとお
考え
になりますか。その公平な、学問的に見られた、そして実情を検討された上での御判断を承りたいと思います。
汐見三郎
12
○
汐見参考人
ただいまの点でありまするが、たとえば
府県税
におきまして、従来農業、林業に事業税がかか
つて
お
つた
のが、農業、林業に事業税がかからなく
なつ
てしま
つて
、商工業だけの
負担
で事業税をまか
なつ
て行くという建前に
なつ
て参りました。それで商工業のない
府県
は非常に強力性を失
つて
来たというような点がありまして、
地方税制
につきましては、
府県
の中で農業
中心
の
府県
におきましては、
経費
の大
部分
は農業、林業に行く。ところが事業税の
負担
は農山村に少しもない。それから
府県
民税というのがなく
なつ
てしま
つた
ために、
府県
民と
府県
とのつながりがなく
なつ
てしまう。
税金
をちつとも納めない
府県
民があ
つて
、しかも
府県
の
経費
の余沢にはあずかるというようなことがあります。これは一例をあげたわけでございますけれども、
彈力性
につきまして、もう少し
考え
直してみなければならぬ。それから工場が建つというふうになりますると、
税金
がほとんどなくて済んでいるということが起
つて
来る。すなわち
片一方
は
財源
がなくて困り、
片一方
は
財源
があり余
つて
何に使おうかというところが出て来るというようなことがあります。この辺につきまして、
橋本
さんもお話になりましたように、もう少し
彈力性
の点を
地方税制
について
考え
てみる必要がありはしないか、
彈力性
を喪失しているような気がするのであります。 それから
地方財政平衡交付金
の金額の問題でありますが、私はこういう
考え方
を持
つて
おります。
地方自治
の建前で行くのだ
つた
ら、
地方財政平衡交付金
というものは第二義的のもので、
地方税
で支弁して行くというのがいい。
地方税
で支弁して行けるような
税制
を立てて行くべきもので、
地方財政平衡交付金
をそんなに
よけい
五倍とか、六倍とか得なければならぬという建前は、そこに何か
税制
の
彈力性
に欠けるところがあるのでわないかというふうに
考え
られる。しかし
現実
におきましては、
平衡交付金
をもらえないと、また増額してもらえないと、とてもや
つて
行けぬというような実情にあるわけであります。そこで私さきに申しました問題と関連いたしますが、私はむしろ
地方財政平衡交付金
のただいまのやり方、すなわち
地方財政法
第
五條
の
地方債
を非常に押えるやり方を少し緩和して、
地方財政平衡交付金
をもらわなくていいようなところは
地方債
を緩和する、それから
地方財政平衡交付金
を総花主義にどこにも渡すというのでなしに、ほんとうに調整を必要とするところに渡して行く。従
つて
地方財政平衡交付金
の算定標準も、
基準
財政
收入
の七〇%というのを一〇〇%にするとか、あるいは一〇〇%はどうかと思いましたら、あるいは八〇%にするとかいうことにして、
地方財政平衡交付金
は
原則
としてはもらわなくていいようなぐあいにや
つて
行
つて
、
地方債
でや
つて
行けるようにする。
地方債
のわくを緩和するのと、
地方財政平衡交付金
のわけ方を、ほんとうに困
つて
いるところには
よけい
渡すようにする。そうすれば、増額しなくとも相対的に
よけい
もらえる。そういうところに問題の解決点がありはしないかというふうに
考え
ております。
小坂善太郎
13
○
小坂委員長
では
汐見
教授はこれから
京都
へ帰られるそうですから、時間の都合がありますので、この
程度
にいたしたいと思います。どうも御苦労さまでした。
—————————————
小坂善太郎
14
○
小坂委員長
この際お諮りいたすことがあります。ただいま審査中の
昭和
二十六
年度
本
予算
審査のために分科会を設けたいと存じますが、御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
小坂善太郎
15
○
小坂委員長
御
異議
がなければ、さよう決定いたします。 なお分科会の区分、主査の選定及び分科員の配置につきましては、先例によりまして
委員長
に御一任を願いたいと存じまするが、御
異議
はありませんか。 〔「
異議
なしと」呼ぶ者あり〕
小坂善太郎
16
○
小坂委員長
御
異議
がなければその
通り
に決します。 午前中はこの
程度
にいたしまして、午後一時より再開、総理大臣に対する
質疑
を続行いたします。 この際暫時休憩いたします。 午前十一時五十一分休憩
——
——
◇—
——
——
午後一時十六分
開議
小坂善太郎
17
○
小坂委員長
休憩前に引続き
会議
を開きます。 これより
内閣総理大臣
に対する
質疑
に入ります。
川崎秀二
18
○川崎
委員
議事進行について……。私は議事進行に関連し、野党各派を代表いたしまして、政府に対し、重大なる警告を発せんとするものであります。 すなわち一昨十四日衆議院本
会議
におきましては、先般来のダレス特使の来訪に関連をいたしまして、吉田・ダレス会談の会談内容につきまして、野党首脳者より率直なる
質問
が展開されたのであります。これに対しまする吉田総理大臣の答弁は、野党の最高首脳者に対する礼儀を失するばかりでなく、答弁の内容は、その真髄に触れず、顧みて他を言うがごとく、まさに独善かつ高踏的であ
つて
、この
質問
戰を注視してお
つた
ところの満天下の期待を完全に裏切
つた
ものといわなければならぬのであります。その内容において、総理大臣は苫米地氏の
質問
に対し、こういう重大なる発言をされております。すなわち「一体外交は祕密であるのが本体であ
つて
、秘密でない外交はおかしな話であります。」これは一体何を
意味
するものでありましようか。われわれはまことに了解に苦しむのであります。すなわち口を開けば従来
国民
外交を唱えながら、実は秘密が本体であるということが明らかに
なつ
た以上、国会としてこれを軽視するわけにいかぬのであります。まさにこれは
国民
を愚弄し、民主主義の本則を蹂躙し、一党の私事をも
つて
国家の大事を律せんとする、独善的な態度であると私は
考え
るのであります。今まで総理大臣は、国家と民主主義の本則についてしばしば失言しておるけれども、失言にしてかくも重大なるものはいまだか
つて
なか
つた
と私どもは記憶しておる。この言葉だけは私は看過ができないので、これがもし本則であるとするならば、東條、スターリンと何ら選ぶところがない。(「ヒヤヒヤ」)私は、総理大臣が先般来ダレス氏と会談をされて、日夜苦労をされておるその姿に対しては、敬意を表しております。国を思う切々たる気持は実に見上げた人物であると思
つて
いる。しかし民主主義者としてのあなたの本則から見て、これは一体何事であるか。私はあなたは講和
会議
までの暫定的な政治家だと思
つて
おるが、その点についての
考え方
は今までも変化はありませんけれども、しかしこのことだけは国会として断じて融通することができない。
委員
会はもとより本
会議
においても、この総理大臣が外交は秘密が本体であると言
つた
ことを、そのまま見のがしておくわけには行かないのであ
つて
、おそらくこれは国際信義上言えない
部分
がある、秘密の
部分
が多いのだという
意味
であ
つた
のではないかと、私は実は好意的に
解釈
いたしておるのでありますが、適当な機会においてその信念を吐露せられるよう、
委員長
を通じて申入れをいたしておきます。
小坂善太郎
19
○
小坂委員長
ただいまの川崎君の御
意見
は、議事進行に関してでありますから、政府はお答えになることはありません。
委員長
といたしましては、あなたの御
意見
は御
意見
として承
つて
おきます。 これより
質疑
を続行いたします。松本
瀧藏
君。
松本瀧藏
20
○松本(瀧)
委員
ダレス特使
日本
滯在十七日間におきますところのその努力には、
相当
な成果があ
つた
ということを承
つて
おります。またその間の特使の御努力に対して深甚なる謝意を表するとともに、繰返して申し上げますが、吉田総理の御苦労に対しても敬意を表するにやぶさかでないものであります。しかし残念ながら、このダレス会見の全貌というものは、
国民
が満足するほどその情報が与えられていないのであります。ここに私どもがおそれますることは、政府が資料を出し澁ることによ
つて
、
国民
が正確なるところの判断を下すことができないために認識を誤り、講和受入れ態勢に誤謬を生じるようなことがあ
つて
はいかぬ、こういうことをおもんばかりまして、ここに若干
質問
を試みんとするものであります。 まず最初に総理にお伺いしたいことは、ダレス特使の演説の中にもしばしば出て来たように、
日本
は自衛力というものを必要とする、これに対して総理も御同意されておるように印象づけられておるのでありますが、この自衛力とは一体何を
意味
するか、御説明を願いたいのであります。
吉田茂
21
○吉田国務大臣 自衛力の定義ははなはだむずかしいのでありますけれども、読んで字のごとく、いずれにしても、常識で
考え
てみましても、
日本
の安全は
日本
の手で守る、守る権利があり、また義務がある。それが自衛力である。また
日本
国民
の自尊心からい
つて
みても、他力によ
つて
守ることを期待するとか、あるいは予期しておるというような、安全保障に対する
日本
の自衛力を他力本願で
考え
るようなことがあ
つて
は相ならぬのみならず、アメリカの方も、自衛する力があり、意思があり、覚悟のある国に対しては喜んで援助をするといいますか、協力するとい
つて
おるので、その趣旨ははなはだ明瞭であるように思います。
松本瀧藏
22
○松本(瀧)
委員
その自衛力の中には、総理の
考え
では軍備というものを含みましようか、御説明願いたい。
吉田茂
23
○吉田国務大臣 むろん軍備というものが
意味
せられるのであります。独立をした以上は、
国民
の考うるところによ
つて
、すべて自衛の方法を
考え
るということは当然のことであります。しかしながら、
日本
の現状においては、軍備というものができないという以上は他の方法によるほかない。しかしながら、未来永劫軍備を捨てることは、これは今後の状態によるわけであ
つて
、もし経済的力その他ができ、また
国民
も軍備を持つことを必要とするというように
なつ
て来れば、自然そのときに考うべきでありましようが、今日においてはまだその時期でないのみならず、また力がない。ゆえに軍備以外の力を
考え
て行くべきではないか、こう私は思
つて
おります。
松本瀧藏
24
○松本(瀧)
委員
しからば、将来もし軍備を必要とするような事態が到来し、また
日本
の経済がそれを許すというような場合には、軍備というものは、今日の警察予備隊をも
つて
充てるのか、あるいはまた別個の自衛部隊をつくるかということに対して、将来のことでありますが、一応総理のお
考え
を承りたいと思います。
吉田茂
25
○吉田国務大臣 今の警察及び警察予備隊が兵隊にかわるものでないということは、政府がしばしば言明しておるところで、この予備隊をも
つて
ただちに兵力にかえるとかいうような
考え
は毛頭いたしておりません。一に国内治安の維持のために備えておる警察力であります。
松本瀧藏
26
○松本(瀧)
委員
もう一点
伺つて
おきたいのであります。もし、自衛隊と申しましようか、軍備と申しましようか、こうい
つた
ものをつくりますときに、
日本
の憲法を改正する要があるかどうかという点につきまして、もう一言御説明願いたい。
吉田茂
27
○吉田国務大臣 これは、憲法にすでに軍備を撤廃するということを
規定
いたしておるのでありますから、いわゆる軍備なるものを置くということになれば、憲法を改正するか、
国民
の意思に問うのは、当然であろうと思います。
松本瀧藏
28
○松本(瀧)
委員
それでは次の問題に移りたいと思います。十一日のダレス声明に、対日講和の基本線とも目すべきような発表があ
つた
のであります。その一つの要点でありまするが、簡單な條約で戰争を正式に終了せしむるということが書いてありました。思うに、対日講和條約の場合には、ヴエルサイユ講和條約みたいなごまかい点を
規定
するのではなくして、基本的な條項であると推測できるのであります。従
つて
いかなる国でもこの講和條約を締結することを拒む理由のない、余地のないようなものである、とこう
解釈
できるのであります。その観点からいたしまして、ダレス特使も全面講和に全力を注いでおり、まだその希望を捨てていない証左であると思うのであります。しかし諸般の国際
情勢
からいたしまして、万一全面講和ということが不可能に
なつ
た場合に、不参加の国と
日本
との
関係
についてお伺いしたいのであります。その場合に、ミズーリ艦上で調印いたしましたあの無條件降伏の文書、これが失効するものであるかどうか、効力が失われるものであるかどうかということをお伺いしたいのであります。
吉田茂
29
○吉田国務大臣 ただいまのところは、今お話のように、ダレス氏としても、各連合国に対して講和成立を交渉せらるるであろうと思います。ゆえにこの際、不参加の場合あるいは不参加の国に対して、
日本
の政府当局者がどういう
関係
を持つと
考え
るべきかというようなことは、これはダレス氏との交渉にも支障を生じやしないかと
考え
ますから、お答えは差控えたいと思います。
松本瀧藏
30
○松本(瀧)
委員
私の問わんとしているところは、降伏文書を調印いたしました
日本
と、参加しない国との間における法的の
解釈
、一体降伏文言は失効するのかどうか。もしこれが失効した場合には、参加しない国と
日本
との間には戰闘状態が復帰するというような説もあります。またその場合には、これらの国がアメリカにと
つて
かわ
つて
占領をすることによ
つて
、戰犯を多く收容され、また漁船等が拿捕されるというような、いろいろな説が流布されているのであります。これを解消することによ
つて
、
日本
国民
の不安を除去したいという気持から総理にお尋ねしているのでありますから、この点についての御
解釈
をお願いしたいと思います。
吉田茂
31
○吉田国務大臣 そういう場合に、第一拿捕するような事実が生ずるか生じないか、あるいはその講和條約に参加しない国が、ただちに
日本
に対して開戰を布告するとかいろいろな話がありますが、これはある事態を想像いたしての話であ
つて
、私としては、その場合にこうするああするとい
つて
、あらかじめいわゆる仮定の問題についてお答えすることは差控えます。但し、講和條約が成立すれば、いわゆるポツダム宣言なるものは失効をいたすといいますか、それにかわる條約のできるのが本体であろうと思います。何となれば、ポツダム宣言は戰敗国と戰勝国との間の
関係
を根本として
規定
いたしておるのであるし、講和條約は
日本
を対等の国として、もしくは独立の国として戰勝者、戰敗者という
関係
でなくして、友邦としての
関係
において
規定
せられるべきものでありますから、根本的
原則
において違
つて
来る。従
つて
講和條約成立とともに、ポツダム宣言の中に含まれておる條項は、一応廃棄せられるものと私は了解いたします。しかしこれは講和條約後における事態に処して、政府としては善処いたします。
松本瀧藏
32
○松本(瀧)
委員
まだ
解釈
においてはつきりしない点があるのでありますが、この問題はこの
程度
にいたしまして、次の
質問
に移ります。 去る十一日に発表されました総理の声明の中に、「彼我了解上きわめて満足すべきものがあ
つた
。」とあります。また十三日の本
会議
場におきまして、その演説の中で、領土、国連加入云々といろいろと述べられまして、これらの
わが国
民の関心の深い諸事項について十分話合いができた、すべての点について双方にとり満足すべき了解に到達したということを言
つて
おられるのであります。双方の満足とは一体何であるか、
国民
は非常に知りたが
つて
おるのでありますが、もう少し詳しく御説明を願いたいと思います。
吉田茂
33
○吉田国務大臣 お答えいたします。いかなる了解に達したか、すつかり申せと御請求があ
つて
も、これは講和の将来の内容にわたることでもあり、またダレス氏との間の話の内容にもわたりますことでありますから、これはお答えできません。はたしていかなる了解に達し、またそれが満足すべきものであるかどうかということは、今後の事態に徴して御
了承
を願いたいと思います。
松本瀧藏
34
○松本(瀧)
委員
この問題はこれ以上追究してもちよつとむだと思いますので、それは他日の機会にまたお伺いすることにいたしまして、次に
日本
国民
の最も関心を持
つて
おりまする集団安全保障の問題でありますが、これは
日本
の当然
負担
すべき事柄が
規定
されております。従
つて
日本
が
負担
しなければならないことは当然であると思いますが、その
負担
の限界について、総理の御所見を伺いたいのであります。
吉田茂
35
○吉田国務大臣 ダレス氏との話合いは條約の交渉ではないので、いわゆるネゴシエーシヨンではなくて、何かの発表にあ
つた
と思いますが、デイスカツシヨンの
程度
であり、互いに気持を話し合
つた
程度
であ
つて
、その結果これだけの
負担
を
日本
は持つ、あるいはこれだけの犠牲を米国政府としては
日本
に与えるというような、そういう具体的の結論に達したわけではないのであります。互いに気持を語り合う、率直な気持を語り合
つて
、日米の間の了解点、合意点を発見するために、ダレス氏が来られたのであります。ただちに私たちの話が條約の内容をなすという交渉の性質ではないことを御了解願います。
松本瀧藏
36
○松本(瀧)
委員
それではもう少し具体的につつ込んでお聞きしたいのでありますが、対日講和七
原則
提案書の第四点にも示されてあるごとく、
日本
国がフアシリテイーズ
——
このフアシリテイーズの訳は、外務省の訳によりますと、施設という訳と便益という訳の
二つ
がありますが、專門的に申しますと、あるいは同一の
意味
であるかもしれませんが、いずれにしましても、通過の権利を含めたフアシリテイーズの供与ということが
規定
されております。そこでこのフアシリテイーズの
解釈
でありますが、一応私の見解も申し述べまして、もし間違
つて
おりましたならば、御訂正を願いたいと思います。 このフアシリテイーズの形においては、フイリピンにおけるそれと、あるいは英国におけるそれとに差があると思うのでありますが、ときどき私どもが聞かされておる権威筋からの話によりますと、英国におけるところのフアシリテイーズというのは軍事基地ではない、従
つて
治外法権というものを
意味
していないのだという説明を聞いております。このフアシリテイーズの
解釈
の中に、英国におけるそれと同じような
解釈
ができるものであるかどうか、総理の御見解を承りたい。
吉田茂
37
○吉田国務大臣 ただいま申したようなわけで、互いに了解し合うという
程度
でありまして、七
原則
にフアシリテイーズという
文字
があ
つた
として、この
意味
合いはいかんという法律的な談判をいたしたのでないのでありますから、そのフアシリテイーズの範囲はこうこうかくかく、性質はこうこうかくかくと、ここに正確に申し述べることはできないのみならず、そういう話はいたしませんでした。
松本瀧藏
38
○松本(瀧)
委員
これはきわめて重要な点でありまして、
日本
国民
の持
つて
おる疑点を氷解するところの資料になると思うのでありますが、英国におけるフアシリテイーズの供与というものが、決して英国を植民地化していない、また英国の主権を阻害していないという説明を、しばしば聞かされておるのであります。もし
日本
のフアシリテイーズの場合におきましても、一応こういう
解釈
ができるものであるとしたならば、
日本
を植民地化するとか、あるいは
日本
の主権を阻害するという宣伝に惑わされることなく、きわめて
国民
が納得する一つの資料になると思うのでありますが、こういう研究等は外務省においてなしておられませんかどうか、お伺いしたいのであります。
吉田茂
39
○吉田国務大臣 それはフアシリテイーズの定義について論じなくても、ダレス氏にしても、あるいは米国側にしても、
日本
に対して完全な独立、自由、自主を与えたいという気持でありますから、
日本
の主権を害するような、将来においてフアシリテイーズについての
解釈
が生ずる余地はないと思います。
松本瀧藏
40
○松本(瀧)
委員
ただいまの総理の御説明はきわめて重大なポイントだと思うのであります。
日本
の主権を阻害しないところのフアシリテイーズであるならば、治外法権というものはないというこの事柄は、
国民
が今日まで聞かんとしてお
つた
大きな点だと思うのであります。ただ一つ加えておきたいことは、いかなる集団安全保障の形におきましても、国連憲章第四十三條のあの
規定
に基いて集団保障というものが行われる以上、このフアシリテイーズの
解釈
というものは、きわめて重要なポイントになると思うのであります。従
つて
、今後ともわれわれ
国民
は、きわめて深い関心を持
つて
この
解釈
に注目しなければならぬと思うのであります。 次にお伺いしたいことは、総理は、国を守るためにはみずから犠牲を払うことを、
国民
の自尊心からして当然であると述べられておるのでありますが、ある大新聞の社説によりますと、これは再軍備を
意味
しておるんだというようなことを書いておりましたが、はたして再軍備ということをお
考え
に
なつ
ての表現であるかどうか、お尋ねしたいのであります。
吉田茂
41
○吉田国務大臣 先ほど申した
通り
、再軍備ということは
考え
ておりません。
松本瀧藏
42
○松本(瀧)
委員
しからば進んでこの問題についてお尋ねしたいのでありますが、先ほど事態の変転により、あるいは
日本
の経済の事情が許すならば、自衛のための軍備ということは
考え
られるというような
意味
のことを言われたのでありますが、ここに
国民
が知りたいと思
つて
おる点が一つあるのであります。国連憲章第五十一條の、自衛は固有の特権であるという精神は、われわれも双手をあげてこれに納得するものであります。そこでこの自衛のために必要であるところの自衛隊、地上部隊と申しましようか、この地上部隊を将来編成いたしましたときに、この地上部隊をばただ国内だけにとどめて、海外に派遣する要のないような
規定
は
考え
られるかどうか、御所見を承りたいのであります。
吉田茂
43
○吉田国務大臣 私の軍備を
考え
ておらないとかいうようなことは、現在の国内外の
情勢
に
考え
て言
つて
おるのであ
つて
、変転きわまりない将来、しかもいろいろな国際状況のはなはだ雑な今日において、未来永劫軍備を持たないとかいうことをここに断言しておるのではあまりせん。しかしながら現在の国情において、現在の事態において、
日本
は軍備を持つことができない、のみならず持たないがいい、こう申すのであります。
松本瀧藏
44
○松本(瀧)
委員
ちよつと私の
質問
が不明であ
つた
かもしれないのでありますが、将来のことを私は言
つて
おるのであります。地上部隊を編成いたしましたときに、この地上部隊を国内の防備のみに使うような
規定
ができるか、あるいはどうしても自衛の性質上、海外に派遣しなければならないようなことになるか、もちろんこの研究はしておられるだろうと思いますが、その研究の一端を伺いたいのであります。
吉田茂
45
○吉田国務大臣 いろいろ研究はしておりますが、すべての場合を想定して研究をいたして、こういう場合にはこうする、ああするということを、ここで私が具体的に発表するということは、少し問題が微妙過ぎると思いますから、お答えはいたしかねます。
松本瀧藏
46
○松本(瀧)
委員
それではこれに関連して、もう一点だけお伺いしたいのでありますが、專門家の研究の結果こういう説があるのであります。と申しますのは、もしアジア大陸諸国を除いたところの太平洋諸国の防衛協定というものができたときには、海外に
日本
の地上部隊を派遣するという事態は生じないということを言
つて
おりますが、そういう点からしても、
日本
国民
の非常に関心を持
つて
おりまするところの海外派遣ということを食いとめることができるか。また同時にフイリピンその他の輿論に徴しましても、海外に出さない部隊であ
つた
ならば、納得できるというような強い
意見
が出ておるのであります。こういう点を加味したところの
考え方
というものが、もしあ
つた
としたならば、一応お聞かせ願いたいのであります。
吉田茂
47
○吉田国務大臣 将来
日本
が地上部隊を置くというような事態が生じたといたしまして、その事態をどうするかということは、その事態に処してお答えをいたすほかいたし方がないと存じます。
松本瀧藏
48
○松本(瀧)
委員
それでは時間が少く
なつ
たようでありますから、次の問題に移りたいと思います。 軍事基地の問題ですが、これは一応私の
解釈
が間違
つて
おるかどうか、情報が間違
つて
おるかどうかということをただしてみたいのであります。万一事態が急迫いたしまして、どうしても
日本
に軍事基地を求めなければいけないというような状態に
なつ
た場合、もしかりにアメリカならアメリカが
日本
に軍事基地を求めんと欲するならば、それには四
原則
があるということを聞かされております。第一は
日本
国民
の自由意思によるものである。第二には
日本
国民
の完全なる了解に基くものである。第三は
日本
国民
から完全なる協力を求め得るということであり、また第四は親善
関係
においてでなくちやいかぬ。もしこの
原則
がくずれたならば、軍事基地を
日本
に設ける意思はないということを言
つて
おられるのであります。この事柄はダレス声明等あたりを通じましても一応うなづけるのでありますが、一応私の
考え
ておるこの線に誤りがございましようか。
吉田茂
49
○吉田国務大臣 ダレス氏との間の話合いにおいて、軍事基地という問題には触れておりませんから、従
つて
あなたのお
考え
が正しいか正しくないかは、私はここに申し上げかねます。
松本瀧藏
50
○松本(瀧)
委員
これ以上は追究してもしかたがないと思いますので、次の問題に移ります。 英仏等西欧陣営の軍備は防備のために、言いかえれば戰争回避に残された唯一の道であるということを言
つて
おります。またこの線がダレス氏の最近の著書であるところの「戰争か平和」の中にも盛り上げられておるのでありますが、こういう
意味
におきまして、
日本
に将来もしかりに軍備をもたらすようなことがあ
つた
ときには、この軍備は戰争回避のための軍備であるというふうに
国民
指導というものができるかどうか、総理のお
考え
を承りたい。
吉田茂
51
○吉田国務大臣 これも将来の仮定にわたる問題でありますから、お答えいたしかねます。
松本瀧藏
52
○松本(瀧)
委員
では次の問題に移ります。総理は一昨日の議場において答弁の際に、ダレス氏と朝野各方面との会合を自分は妨げたものではない。むしろ自分が進んでお願いしたから皆が会えたのだということを申されました。
参考
までに承りたいのでありますが、去る六日に行われましたダレス・鳩山会談も総理があつせんされたのでありますか。
吉田茂
53
○吉田国務大臣 これははつきりお答えいたしますが、私は何らの相談を受けておらないのみならず、周旋もいたしません。もう一つお答えいたしますが、私はダレス氏がたれと会われようと御自由である、けつこうな話である、広くお会いなさいと申しましたが、お願いはしませんでした。
松本瀧藏
54
○松本(瀧)
委員
もう一点お伺いしたいのですが、十一日の新聞紙上に掲載されました総理の声明の中に、「大使は
日本
本土及びその周辺に米国軍を駐在せしめて、軍備のない
日本
を守るため、米国との間に安全保障に関するとりきめを締結するよう招請されたが、政府及び
国民
大多数はこれを心から喜んで迎えるものである。」と表明されておるのでありますが。この内容に関して私は決して可否論をここに申さんとしておるのではありません。ただその政府のコミツトメントの態度に対して、少し説明を求めんとするものであります。これは
国民
並びに国会を無視したところのコミツトメントであるという論が高ま
つて
おる今日であります。この招請に対しては、総理は一度も国会にこれを報告し、あるいは国会の
意見
を打診されたことはないのであります。このような重大なコミツトメントは、今後とも政府は国会に諮るごとなく、自由にできる立場にあるとお
考え
になるか。わが
日本
の憲法によりますと、講和の諸條件というものは、事前において、あるいは事後において国会に諮り、承認を得なければならないということが
規定
されております。この
意味
におきまして、当然総理は国会にお諮りになるのだと思うのでありますが、もし事前にお諮りになるとしたならば、そのために今後国会と絶えず折衝して行かれるつもりか、あるいは対日講和のとりきめは、全然今後秘密によ
つて
行うのであるか、所信をひ
とつ
承りたいのであります。
吉田茂
55
○吉田国務大臣 ダレス氏との間に私は何らのコミツトメントを与えておりません。話合いをいたした
程度
で、ダレス氏としては防備のない
日本
の防衛に不安を生じておるのである。もしこのときに外国の侵入、進撃を受けた場合に、無防備の
日本
の安全のために
日本
が希望するならば、兵を常駐するというようなことは
考え
てもいいという向うの気持をべたのです。われわれもそういう場合に進んで
日本
の安全を保護してくれるという御好意は、まことにありがたいと申しただけで、ただちに軍事同盟を結ぶという協定をいたしたわけでも何でもないのでありますから、いわゆる話合いで、何らの約束でもなければ、いわゆる、コミツトメントでもないのであります。しかして将来はどうかというお話でありますが、
日本
憲法に書いてあります
通り
、條約はすべて国会に報告し、国会の承認をとるということは当然であります。
松本瀧藏
56
○松本(瀧)
委員
時間が参りましたので、最後にちよつと所見を述べて私の
質問
を終りたいと思うのですが、われわれ国
会議
員は、対日講和を締結する連合国と
日本
国民
との間に立
つて
、重大なる責任を感ずるものであります。
日本
国民
の間には、まだ種々異
なつ
た見解を持
つて
おる者があり、ことに政府並びにその指導層の
考え
と一般庶民との
考え
には、かなり大きな開きがないとは断言できないのであります。一般
国民
が
情勢
に通ぜざるがために事実を把握し得ず、臆測による誤解を招き、内外の事態に不安を感ぜしめるようなことがあ
つて
はならないと思うのであります、また連合国が求めておるものは、一政党あるいは一特定グループとの講和ではなくして、八千万
日本
同胞との講和であります。講和條件に対する八千万
日本
国民
の容認を求めておるのであります。また
日本
国民
のその望むところは、何をおいても
日本
が平和で安全な環境を守るということであるのでありまして、ゆえに政府は
国民
によく説明し、説得することが必要であり、またかかる説得によ
つて
のみ
国民
一致の見解に到達し、も
つて
講和担当の重大な責任をに
なつ
ておるところの政府の事業も遂行できるのであります。よ
つて
今日説明の不十分であ
つた
ことに対しては、他の機会において、さらに御
質問
する権利を留保いたしまして、本日の私の
質問
はこれをも
つて
打切ることにいたします。
小坂善太郎
57
○
小坂委員長
次は北澤直吉君でありますが、この際
上林
山
榮吉
君から
質疑
を要求せられております。た
つて
の御希望でありますから、これを許します。
上林
山
榮吉
君。
上林山榮吉
58
○
上林
山
委員
委員長
がた
つて
の希望であるというので許してくれたわけでありますけれども、同僚諸君に時間を十分にお譲りするという
意味
において一問だけお尋ねをいたしたいと思います。 十三日の本
会議
において、総理とダレス特使との間の会談の内容を発表せられたので、私どもは十分に納得が行
つた
のでありまするが、ただ一点だけ領土の問題に対して私はもう少しお尋ねしてみたいと
考え
るのであります。しかし領土の問題は言うまでもなく、講和條約の重要なる
部分
をなすと
考え
ますので、詳しくお尋ねすることをやめまして、一、二要点だけをお尋ねしたいと
考え
るのであります。というのは、まず歴史的に
考え
、あるいは法律的に
考え
、かつまた民族ないしは地理的に
考え
まして、琉球列島、ことに奄美大島などは
わが国
の領主に属すべきものである、またそうしなければならぬという
国民
の熱烈なる希望でありますので、もし事情が許されるものならば、ダレス氏との会談の零囲気なりと私どもは承知をいたしたいのであります。この一点についてまずお尋ねをいたしたいのであります。
吉田茂
59
○吉田国務大臣 領土の問題については、ダレス氏とは申さないが、連合国の立場はすでにポツダム宣言、もしくは降伏條約において解決された問題であるという態度をと
つて
おるのであります。しかしそれは連合国の態度であ
つて
、われわれとしては、
日本
国民
の要望はでき得るだけの機会、いかなる機会をとらえても、
国民
の要望するところは十分連合国に伝え、また将来も伝えますというだけのお答えをいたすよりどうもいたし方がない。
上林山榮吉
60
○
上林
山
委員
総理のお答えは、やむを得ない御事情があるということは十分に承知しておりますので、かつまた
国民
の熱烈なる要望を、ダレス特使だけに限らず、連合各国にこれを十分に伝えたし、これからも伝えてこれが実現をはかるという、その熱意を私どもは十分に信用することにいたしまするが、ただここに琉球列島の中に奄美大島が含まれているというような実にあいまいな風説をなす者がありますので、私どもはこれは法律的にあるいは歴史的に、ないし民族的に
考え
て、そういう妄説をなす者がもしあるとするならば、これらの妄説を是正しなければならない、こういうような
考え
を持
つて
おります。一部の風説にすぎないと思いまするが、琉球列島の中に奄美大島が入
つて
おるという
解釈
もあり得るものであるかどうか、私どもはそういうものは絶対にあり得ないと
考え
るのでありまするが、この点をお伺いいたしまして、私の
質疑
を終ることにいたします。
吉田茂
61
○吉田国務大臣 これはダレス氏には、先ほど申した
通り
交渉に参られたのではないのでありますから、ただ、今お話したように連合国の態度はこうであるという話を聞いただけの話であります。しかして
日本
の領土として奄美大島が残るか残らないかは、今後講和條約の協議の場合において確定的にきまるわけであ
つて
、それまでは確定的にどうきま
つた
とか、きまるということについての情報は存じておりません。
小坂善太郎
62
○
小坂委員長
北澤直吉君。
北澤直吉
63
○北澤
委員
総理大臣にお伺いしたい第一点は、対日講和に関しまして、総理とダレス氏との間に会談の結果
意見
の一致を見ましたいわゆる吉田・ダレス方式につきまして、
国民
の理解を深め、全
国民
がこの方式を全面的に支持するように、政府が
国民
の啓発について一段の努力を傾倒してもらいたいという点についてお伺いしたいのであります。 一昨
日本
会議
におきまして、総理大臣の報告によりますると、米国は
日本
を敗戰の敵国と見ないのみならず、進んで日米両国が世界の民主自由主義諸国の一環として共同防衛の責任をわかち、将来長きにわた
つて
友好
関係
を結ぶことを希望しております。総理といたしましても、
日本
の新しい将来の運命を開拓して行くためには、民主主義諸国、特に米国と緊密に協力して行くことが必要であるとかねがね信じておられたという話であります。われわれとしましても、この点はま
つた
く御同感でございます。今回の講和にあたりまして、最も重要なことは、第一は、
日本
が完全な主権を回復すること、第二は、無防備の
日本
の安全を保障すること、第三は、
日本
の経済の自立を達成することであろうと存じますが、この三つの大きな目的は、米国の好意と援助によりまして、大体達成されることが明らかと
なつ
たと思うのであります。敗戰によりまして完全に打ちのめされ、しかも
世界各国
の対日感情がいまだ完全に改善されておらない今日におきまして、しかも朝鮮動乱に見るがごとく、国際共産主義勢力が
日本
の周辺に追
つて
日本
をうかがいつつある今日において、
日本
の独立と安全と繁栄を確保し、将来の運命を開拓するためには、世界の民主主義諸国、なんかずく米国と緊密に提携し、いわば米国と
日本
とが同じ船に乘
つて
、米国の援助を受けること以外に道はないと思うのであります。このときにあたりまして、
日本
国内には、反米、向ソ一辺倒の共産主義は論外といたしまして、一部にはいまなお世界の共産主義労力と民主主義勢力との中間に立
つて
、いわゆる第三勢力として中立を守らんとする
意見
や、
日本
の安全保障はすべて国際連合に依存し、
日本
防衛のための外国軍隊の駐屯に反対するばかりでなく、
日本
みずからを守る責任、義務をも回避せんとする
意見
が行われておりますが、これは
現実
の客観国際
情勢
を無視する
議論
でありますのみならず、
日本
を共産主義勢力の侵略の犠牲とするものでありまして、われわれのとらないところであります。こういう
議論
は、日米友好
関係
に重大な惡影響を及ぼし、国家のために百害あ
つて
一利なきものであると思うのであります。そこで政府におかれましては、大局的見地から、かかる思想を一掃し、
国民
大衆が全面的に吉田・ダレス方式による講和構想を支持し得るように、
国民
に対する啓発について一段の努力を払う必要があろうと思うのであります。これがためには、たとえば過般の外交白書に類するような、講和白書のようなものを発表することが時宜に適することと思うのでありますが、これについての政府の御所見を伺いたいのであります。
吉田茂
64
○吉田国務大臣 政府の方針としては、国論の統一とか確立とかいうことをはかるよりは、なるべく自由に
国民
の意思を発表し、その輿論の向うところに従
つて
善処したいというのが私の
考え
であります。しかしながら、同時に
国民
が客観
情勢
について十分の知識を得るために、外務省として持
つて
おる資料は絶えず発表したい、また発表させる計画をいたしております。今日ただちにダレス氏との会談について白書を出すとか、出さぬとかいうような計画は持
つて
おりませんが、しかしながら、時々刻々の国際
情勢
の推移については、外務省をしてその研究の結果を発表することに手落ちがないようにさせております。
北澤直吉
65
○北澤
委員
次にお伺いしたいのは、講和の最大問題でありまする
日本
の安全保障の問題でございます。
日本
は講和後ただちに国際連合に加入しまして、そうして国際連合によ
つて
日本
の安全を保障することを希望するわけでございますが、イタリアの前例もありまりて、ただちに
日本
が国際連合に加入することは、非常に困難であろうと思うのであります。ここに百歩を譲りまして、
日本
の国際連合加入が可能といたしましても、今日の国際連合の状況では、国際連合のみに依存するわけに参らぬと思うのであります。現に国際連合憲章の第五十一條におきましても、加盟国の個別的または集団的自衛権を認めまして、これに基いて地域的集団安全保障機構の設置を認めているわけでございます。北大西洋條約のごときはその一例でございます。
日本
の一部には、国連による安全保障はよろしいけれども、地域的の集団安全保障は危險であるというふうな
議論
があるのでありまするが、地域的集団安全保障というものは、国連の補完的
作用
をなすものでありまして、国連と一体であると私は思うのであります。
日本
としましては、国際連合のわくの中で地域的集団的安全保障機構に参加し、
日本
の安全を守ることが必要であるのでありまするが、この地域的集団安全保障機構は、北大西洋條約のごとき加盟国の自衛と相互援助を基本としており、
日本
のような無軍備の国がただちにこれに加入し得るやいなやは疑問と思うのであります。ダレス氏もこの点を指摘しておるのであります。従いまして
日本
としましては、地域的安全保障機構に参加し得るまでの暫定的の安全保障措置としましてこれを
考え
なければならぬのでありますが、これにはどうしても米国軍隊の
日本
駐屯以外には道がないのであります、米国も
日本
が希望するならば、軍隊を
日本
またはその周辺に駐屯してもよろしいと申されているわけであります。しかしながら外国軍隊の駐屯ということは、満州国の場合を
考え
てみましても、またイラクあるいはフイリツピンの場合を
考え
ましても、実質におきましては、駐屯されている国の主権に種々の制限、制約が加えられる結果となるのみならず、
国民
の独立心を鈍らせることになりますので、米国軍隊の
日本
駐屯に関する協定を結ぶにあたりましては、できるだけ
日本
の主権を尊重するように
考慮
を払うとともに、駐屯期間をなるべく短かくするように留意することが必要だろうと思うのであります。もちろん
日本
の経済力や、あるいは地域的安全保障機構の設立等ともにらみ合して
考え
る必要がありまするけれども、いつまでも米軍の駐屯にのみ依存するのは、適当ではないと思うのであります。これにつきまして総理大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
吉田茂
66
○吉田国務大臣 ただいまのお尋ねでありますが、先ほども申した
通り
、ダレス氏との話は交渉ではなく話合いであ
つて
、アメリカ政府は防禦のない
日本
に対し、万一の場合に対して援助する用意があるという気持を申されたのであ
つて
、その場合に
日本
の主権がどうなるかこうなるか、あるいはこれに対する
日本
の義務はどうかというような、詳細な交渉をいたしたわけではありませんから、その点はお答えをいたしにくいが、しかしアメリカ政府の
考え
ておることは、講和後において
日本
に完全な独立を認めるという趣意にありますから、今お話のような場合においても、
日本
の主権を害するような、
日本
の独立を害するような協定は、要望するはずはないと
原則
的に
考え
ます。
北澤直吉
67
○北澤
委員
次にお伺いしたいのは、
日本
の加盟する地域的集団安全機構についてであります。この点については、この間の総理とダレス氏との間の会談でも触れられたようでありますし、またアメリカ政府におきましても、この問題については、同情的態度をも
つて
考慮
するというふうに新聞等には伝えられておるのであります。この問題には種々の問題があるわけでありますけれども、
日本
といたしましては、アメリカをも含んで、地域的な安全保障機構がすみやかにできることを希望する立場にあると思うのであります。ヨーロツパでは、御承知のように北大西洋條約の成立と、マーシヤル・プランによります米国の経済援助によりまして、一応の勢力の
バランス
が共産主義陣営と民主主義陣営との間に保たれておるようでありまするけれども、極東におきましては、この力の
バランス
が、
日本
の敗北によ
つて
破壊されたままと
なつ
ておりまするために、遂に中共の中国大陸席巻となり、さらには朝鮮の動乱と
なつ
たわけであります。極東の平和のためには、ヨーロツパと同じように、米国を含んだ地域的の集団安全保障機構と、アジア・マーシヤル・プランのようなものによりまして、アジア諸国の経済復興をはかり、そうして力の
バランス
を回復することが必要だろうと思うのでありますが、この点に対しまして、総理の御所見を伺いたいと思います。
吉田茂
68
○吉田国務大臣 従来の国会の議場においてもはつきり申しておきましたが、ただいまお話の地域的集団安全保障というようなことは、何ら言及いたしておりません。
北澤直吉
69
○北澤
委員
もう一点伺いたいのは、日米友好
関係
の増進についてでございます。
日本
の安全保障のためにも、また
日本
経済の自立達成のためにも、日米の友好
関係
をますます増進する必要があることは申すまでもないのであります。従来の日米の
関係
を見ましても、日露戰争までの五十年間は非常によか
つた
のでありますが、日露戰争後は、あるいは支那大陸におきまする両国の利害の衝突、あるいはアメリカ本国におきまする排日移民問題というようなことから、両国の
関係
は非常に惡くなりました。これが遂に日米戰争にまでも入
つた
わけであります。ところが今後日米両国が協同して共産主義勢力に当るというためには、両国の友好
関係
をますます強化する必要があることは申すまでもないのであります。これにはもちろん政治、経済その他各方面において、両国の友好
関係
の強化をはかることが必要でありまするが、最も必要なことは、
日本
とアメリカ両国の
国民
の精神的の結合をはかることであろうと私は思うのであります。相手の国の歴史なり伝統なり文化なり、あるいは
国民性
をよく理解し合い、お互いに尊敬し合うことによ
つて
、初めて両国の精神的結合ができると思うのであります。こういうためには、私は両国の文化の提携と申しますか、そういう文化方面におきまする両国の提携を強化することが、非常に必要だと思うのであります。そういう点につきましては、政府におかれましてもいろいろお
考え
に
なつ
ておると思うのでありますが、この機会に日米の友好
関係
をさらに増進することにつきまして、政府はどういうお
考え
を持
つて
おられますか、この点を伺いまして私の
質問
を打切ります。
吉田茂
70
○吉田国務大臣 日米の文化交流あるいは日米の間の文化連絡等については、米国政府側も
日本
政府側も、いろいろな形において
考慮
いたしております。たとえばグルー基金でありますとか、あるいはクリスチヤン・ユニヴアーシテイーかいろいろな企てがあり、さらに企てばかりでなく、着手している向きもありますが、このたびダレス氏は特に文化に関する点に重きを置かれたと見えて、ロツクフエラー氏を連れて来られて、
日本
の実地について視察もし、また
考え
も立てておられるようであります。ダレス氏のこのたびの訪問において、またロツクフエラー氏が
日本
に見えたということによ
つて
、話はさらに一層具体的になるであろうと思いますし、なることに政府も努めます。
小坂善太郎
71
○
小坂委員長
中曽根康弘
君。
中曽根康弘
72
○中曽根
委員
吉田総理大臣にお尋ねいたします。ずばりと聞きますから、御明答をお願いいたします。 先ほどの御答弁の中で、講和條約ができればポツダム宣言は失効する旨お答えになられました。しからばその場合には、ポツダム宣言に基礎を置くあらゆる協定あるいはとりきめ、こういうものは一切効力がなくなると
考え
てよろしゆうございますか。
吉田茂
73
○吉田国務大臣 私はなくなるだろうと申したのであ
つて
、なくなると断言はいたしません。何となれば、これは将来に属することでありますから。しかしながら常識で
考え
てみて、講和條約とポツダム宣言なるものの基本観念が違うから、講和條約ができれば、ポツダム宣言にかかわる性質において新しいものができる。ポツダム宣言の中にどういう将来残るものがあるかということは、今日私はここに明言いたしませんが、そういうものは講和條約の中に織り込まれるか何かして、ポツダム宣言にかわるものができるであろうと私は想像いたすのであります。
中曽根康弘
74
○中曽根
委員
その場合に、要するにポツダム宣言に基礎を置く現在の協定やとりきめというものは、当然効果を失うように想像されるのでありますが、総理大臣はいかにお
考え
になりますか。
吉田茂
75
○吉田国務大臣 当然失うか失わないかは連合国の決定するところによるのであ
つて
、今日私が当然失うということを断言することも早過ぎます。し、失わないと言うのも早急であろうと思います。ゆえに私は、ポツダム宣言にかわる新條約ができて、従
つて
ポツダム宣言の処分は連合国においてするだろうと想像するのであります。
中曽根康弘
76
○中曽根
委員
ポツダム宣言の効力がなくなると想像されれば、ポツダム宣言に基礎を置く協定やとりきめは、当然私解消すると想像する。これは論理的に当然だろうと思う。総理大臣はもう一回この点を明確に、想像でけつこうでありますからお答え願いたい。
吉田茂
77
○吉田国務大臣 これは想像論の交換弁は重要な問題を含んでおるのでありでありますから、結果を見て論ずるよりほかいたし方ない。
中曽根康弘
78
○中曽根
委員
吉田総理大臣の答弁にはなはだ不満であります。 しからば次にお尋ねいたしますが、ポツダム宣言が効果を失うであろうという場合に、ソ連が講和條約に入らないときには、ソ連も含めてポツダム宣言は効力を失うと吉田総理大臣は御想像に
なつ
ておるのでありますか。
吉田茂
79
○吉田国務大臣 今日は一応全面講和の線で参りますから、ソ連が入らなか
つた
場合にはどうするかということは、その場合に御答弁いたします。
中曽根康弘
80
○中曽根
委員
今の答弁は、はなはだあいまいであります。総理大臣はかねてより、全面講和ができない場合は多数講和でもやむを得ないということを希望いたします。
中曽根康弘
81
○中曽根
委員
希望を聞いたのではない。吉田総理大臣がお答えに
なつ
た御意思は、全面講和ができた場合にはソ連との
関係
において効果を失う、こういうふうにお答えに
なつ
たかという
意味
であります。
吉田茂
82
○吉田国務大臣 私の申した説明は前言の
通り
。
中曽根康弘
83
○中曽根
委員
前言の
通り
と言われても、前言がはなはだ不明瞭である。吉田総理大臣は世の中で知られているように白たびをはいているので、きのうの雪のように、非常に純潔な人だと思
つて
お
つた
が、今の御答弁はきようのぬかるみみたいなお答えである。私は今のお答えを不満に思いますが、この点については時間がないからこれでやめます。 次に
質問
いたします。ダレスさんの声明があります。この声明の内容を読んでみると、
日本
に完全な主権を回復させるという言葉が書いてある。これもまた重要な言葉であります。そこで、完全な主権を回復させるという
意味
は、講和ができたあとには対日監視
委員
会というようなものはできない。完全に
日本
政府にあらゆる権限を回復させて、
日本
政府の自主性においてあらゆることを運ばせるという
意味
でありますか。この点を御説明願いたいと思います。
吉田茂
84
○吉田国務大臣 私は多分そうだと
考え
ますが、詳細のことはダレス氏にお聞き願いたい。
中曽根康弘
85
○中曽根
委員
詳細なことはダレス氏にお聞き願いたいとい
つて
も、ダレス氏の声明を読んでごらんなさい。総理大臣御存じのように、こう書いてある。政府と特使団との打合せに基いて政府が声明を出しておる。その中で政府は何と言
つて
いるかというと、「彼我了解上きわめて満足すべきものがあ
つた
。」と書いてある。そうすると了解のあ
つた
ことは、はつきりしており、了解があ
つた
というからには、今の国内的な措置の問題についても話合いがあ
つて
、お互いに了解したことがあ
つた
と私は判定する。だからこそここに完全な主権を回復させるということをダレス氏は言
つて
おられる。そういう
意味
で、対日監視
委員
会とか
——
要するに国際法上、国内事項というものは不干渉ということが
原則
に
なつ
ております。この
原則
が完全に貫かれた講和が締結されるのでありますか、その点の了解はいかがでありますか。
吉田茂
86
○吉田国務大臣 先ほども申す
通り
、ダレス氏と私との間は交渉いたしたのではないのであります。互いに気持を話し合
つた
ということであ
つて
、その気持はまことにけつこうであるという了解に達したというのがどこが惡い。
中曽根康弘
87
○中曽根
委員
そうむきにならぬでもよろしい。
小坂善太郎
88
○
小坂委員長
中曽根君に申し上げますが、中曽根君の御
質問
は前の松本君の御
質問
と共通のものがありますから、簡潔にや
つて
ください。
中曽根康弘
89
○中曽根
委員
今総理大臣のお答えがありましたけれども、了解上満足すべきものがあ
つた
という政府の声明があるので、了解があ
つた
ということになる。そこで国内事項について、いかなる
程度
の了解があ
つた
かということを私はお聞きしておるのであ
つて
、決して無理な
質問
ではありません。今の吉田総理大臣の答弁に対して、私は不満足であります。 そこで、しからばもう少し具体的にお聞きいたしますが、同じくダレス氏の声明の中にこういう言葉がある。「
日本
の戰後の
立法
及び発展を活気づけて来た国内的並びに国際的行為のりつぱな
原則
を守る」云々、このことはおそらくマツカーサー元帥が
日本
に来てや
つた
偉大な
改革
、たとえば農地
改革
、労働組合の育成あるいは独占の禁止、こういう連合軍がや
つた
重要な
立法
や
改革
というものを、そのまま戰後も
日本
に継続させるという内容の講和が締結されるのであるかどうか、この点も御
質問
いたします。
吉田茂
90
○吉田国務大臣 その点は特に話し合
つた
ことはございませんから、お答えいたしません。
中曽根康弘
91
○中曽根
委員
しからばここに書いてありまする「戰後の
立法
及びりつぱな
原則
」ということはいかなる内容のものでありますか。
吉田茂
92
○吉田国務大臣 それはダレス氏にお聞きを願いたい。
中曽根康弘
93
○中曽根
委員
ダレス氏にお聞き願いたいとい
つて
も、政府とダレス氏が打合せてや
つた
声明の中にそういうことが書いてあるのですから、総理大臣は知
つて
いるのに違いない。それを隠して言わないのに違いない。ちやんと顔に書いてある。私は総理大臣の答弁を非常に
国民
の名において不満に思います。
小坂善太郎
94
○
小坂委員長
中曽根君に申し上げますが、最初の約束を守
つて
ください。
中曽根康弘
95
○中曽根
委員
最後にもう一点お尋ねいたします。ロツクフエラー氏が参りまして、
日本
の文化の向上について非常に協力されましたことをわれわれも感謝いたしますが、
国民
が一番関心を持
つて
いる文化上の問題は、
日本
に民間航空機の保有あるいは運営を認めるかどうか、あるいは平和のための原子科学の研究を
日本
にも認めてもら
つて
、サイクロトロンをまた
日本
に復活させて、湯川博士が
日本
で自分で研究できるような地位に
日本
がなるかどうかという問題であります。この民間航空機の保有と運営及び平和のための原子科学の研究の問題について、いかなるお話がありましたか、いかなる要望をなされましたか、お尋ねいたします。
吉田茂
96
○吉田国務大臣 そういう点については何ら触れておりません。
中曽根康弘
97
○中曽根
委員
何にもしてないとは、政府は無能であります。私ははなはだ遺憾に思います。
小坂善太郎
98
○
小坂委員長
勝間田清一
君。
勝間田清一
99
○勝間田
委員
総理大臣に若干の
質問
をいたします。今まで再軍備の問題についてしばしば総理がお話になりましたことは、よく了解できるのでありますが、さらにひ
とつ
つつ込んで疑点になる点をお尋ね申したいと思う。けさでありましたか、キヤンベラから例のダレス氏が声明を出されたということでありますが、それによりますと、
日本
の再軍備は、国連に加入した後において、
日本
は再軍備をするということが一つ。その再軍備の大きはあまり大きなものではない。この
二つ
を指摘されておるのでありますが、これについて吉田総理はいかにお
考え
に
なつ
ていらつしやいましようか。
吉田茂
100
○吉田国務大臣 私は
日本
国が持つべき将来の軍備の大きさとか、規模とかいうようなことには全然触れておらないのみならず、私としては今日
日本
国としては軍備を持つことができないというので、その
議論
を私はいたしましたけれども、さてその内容にわた
つて
どれだけの軍備を持ち、どういう規模のものを持つかということは一切触れておりません。また触れるべきでないと思いますから、ダレス氏も何ら言
つて
おられません。従
つて
いかなることを声明せられたか、それは私の気持は
——
理由は存じません。
勝間田清一
101
○勝間田
委員
総理の答弁を聞いておりますと、現在はということが非常に耳につくのでありまして、そこであなたの談話の中にも、再軍備問題は講和後において、自由なる意思において考うべきだということを書いてございますが、その前にはやはり
日本
の自衛についての
日本
の義務を言われております。そこで私が聞きたいのは、現在の問題を聞いておるのではございませんで、たとえばあなたが言われた場合における講和後において、あるいは国連加入後において、こういう問題が現に世界的にいわれておる問題でございますので、この点についてのあなたの決意もやはり承
つて
おきたいと思います。
吉田茂
102
○吉田国務大臣 むろん
日本
として独立を回復する以上は、軍備を持つとか、持たないとかいうような主権の行動については、国際的に制約を受けるはずもなし、また制約を受けたくない、与えたくないつもりであると
了承
いたします。少くとも米国政府の
考え
ておるところは、いわゆる完全なる主権を回復させたい。また
日本
国として、あるいは
日本
政府として、でき得べくんば自国の安全は、自国の力でも
つて
、自国の軍隊その他店も
つて
守ることにするのが
原則
であ
つて
、そういうふうにいたすべきであると思いますが、現状において
——
また現状においてと言わざるを得ないのであります。将来
日本
が余力があればむろん軍備を持つがよろしい。またみずから他国に依頼せずして、
日本
の安全はみずから保障すべきであり、守るべきであると思いますが、現在としては、いかんせん敗戰後間もない今日において、かつまた
国民
の感情においても、親を失い、子を失
つた
国民
の感情からしても、再び軍備を持ち、再び戰いを開くのであるかということは、これは
国民
に対して感情的に非常に不安な念を生ずるであろうし、かくのごとき不安はなるべく与えずに、他の方法をも
つて
国の安全をはかる、こういうのが政府として努むべきものであると
考え
ますから、今日において軍備というものを
考え
られないという観点から、私はダレスさんにも率直に、今日われわれは再軍備というものは
考え
られない、こう申したのであります。将来は将来、今日は今日、私は今日の現状においてと言わざるを得ない。
勝間田清一
103
○勝間田
委員
そうしますと、今後の問題について再軍備、あるいは再軍備をするしないというような問題については、もう言葉の
通り
だと私は思うのでありますが、今後の問題については、
日本
国のいわゆる自由なる意思によ
つて
決定すべきものである。再軍備の問題は外国からとやかく言わるべきものではない、またアメリカもそう理解しておると思う。従
つて
今後の問題として再軍備をするというような公約なり了解なりを与えたことはない、こういうふうに
解釈
してよろしゆうございましようか。
吉田茂
104
○吉田国務大臣 その
通り
であります。
勝間田清一
105
○勝間田
委員
そこで次にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、そういう状態のもとにおける
日本
の安全保障形式というものを、どういうようにお
考え
に
なつ
ていらつしやいますか。
吉田茂
106
○吉田国務大臣 この間も国会で私ははつきり申したと思いますが、いわゆる国内の安全ということは、
日本
の自力で、警察力なり何なりの力で国の治安は保障するが、しかし集団的に攻撃を受けた場合においては、集団的に
考え
ざるを得ない。しからばいかなる集団的防禦をなすかということは、これは相手方もあることでありますからして、
日本
政府だけがこういうことをきめたところが実行ができない話で、これは今後の交渉にまたざるを得ないとお答えをいたします。
勝間田清一
107
○勝間田
委員
国内の治安ということについてもつとはつきりさせたいと思うのですが、国内の治安について、現在の警察制度あるいは予備隊制度、こういうものを改正して行こうと
考え
ていらつしやるのですか。
吉田茂
108
○吉田国務大臣 これはこの間の私の演説の中にも言
つた
と思いますが、治安の状態は、現在においては現設備をも
つて
足りると思いますが、しかし将来ますます警察その他の機関は充実して行きたいと思います。
勝間田清一
109
○勝間田
委員
次に集団安全保障の問題でありますが、この問題についても、総理の談話なり、またダレス氏の談話なりがございまして、
日本
国はこれに対して招待されておるということがはつきり言われておるわけであります。これに対していかにお
考え
に
なつ
ていらしやいますか。
吉田茂
110
○吉田国務大臣 ちよつと聞きのがしましたが、しまいの方は招待されておるですか。
勝間田清一
111
○勝間田
委員
ええ、招かれておる……。
吉田茂
112
○吉田国務大臣 これはさつきここで申した
通り
ダレス氏としては、防備を撤廃した
日本
において、防禦のない
日本
において、安全が外国の侵入その他において侵された場合には、みずから守るだけの今日設備がない。ことに講和條約がたとい締結せられたその直後において、どうすることもしかたがないであろうから、その場合にはアメリカとしては、
日本
に兵隊を置いて、
日本
の安全を保護するという用意を持
つて
おるという気持を話してくれたのです。いまだわれわれは独立も回復せざる今日でありますからして、独立後において安全の保障はどういうふうにするか、集団的安全保障はどうふうにするかということは、外国との交渉によ
つて
集団的保障の協約といいますか交渉によ
つて
自然形ができるので、これは
日本
だけがこう
考え
てお
つて
も、相手方が承知しないかもわからない。また相手方の事情については今日われわれは全然承知しないのでありますから、相手方の承知もしそうのないような計画を立ててもいたし方ないのでありますから、これは独立後における事態にかんがみて善処いたすと、お答えするよりしかたがないと思います。
勝間田清一
113
○勝間田
委員
独立後において当然これは
考え
るべき問題もあると思います。すなわち
日本
の自由なる意思によ
つて
この問題はほんとうは
考え
るべきだと私も存じます。しかしその点についていわゆる先ほどから御
質問
のあ
つた
ような了解というものがもしあのといたしますれば、これこそ私どもはほんとうに聞きたいところなのでありまして、最近よく太平洋同盟ということが、アメリカでも、また南方あたりでも盛んに
議論
されておるのでありますが、こういう問題についての了解というものがございませんかございますか。
吉田茂
114
○吉田国務大臣 これは先ほど申した
通り
、独立後の話でありまして、今日われわれとしては、他国と交渉する地位に立
つて
もおらず、相手方の事情もわからない今日でありますから、この点については、ダレス氏も私も何ら言及いたしておりません。
勝間田清一
115
○勝間田
委員
何も研究していないということでございますが、しかしこの問題は非常に重要な問題でありますから、総理の所見を承
つて
おきたいと思うのであります。
国民
はいわゆる地域的な保障を受ければ安心するというような
考え
にのみ実は
考え
がちであります。しかしながら私は、北大西洋同盟というようなものとは、
日本
の場合は非常に違
つて
来るのではないか。というのは地理的ないろいろな條件が違
つて
おります。特にすでに大陸などでは戰争状態というものを引起しておるわけであります。従
つて
地域的な集団保障というものに参加する国の性格によ
つて
は、むしろ
日本
の安全保障よりも、他のアジアのトラブルに
日本
が参加する方が主に
なつ
て来る場合の方が私は多いと思う。従
つて
むしろ
日本
の権利よりも
日本
の義務の方を、われわれは重要親して参りたいと実は
考え
るのであります。そういう
意味
から申しますると、私どもは現在諸外国でいろいろ論議されておる地域的な保障というものが、はたして
日本
の保障になるか、ならないかというところに疑点があるわけでありますが、総理の所見をひ
とつ
承りたいのであります。
吉田茂
116
○吉田国務大臣 私は先ほど言及いたさなか
つた
と申したので、これは私の聞き間違いであるかもしれませんけれども、論じておらないということと御承知願いたいと思います。研究はいたしております。しかしこの研究の結果、どういう結論が出たかということは申しかねますが、しかしもしかりに、よくうわさに上るがごとき東太平洋集団保障でありますか、というような形、新聞だけの話でありますが、それだけの形で
日本
がただちに参加するのはどうかというような、今お話のように、義務の方が多過ぎるというような感じもいたします。ゆえに御承知の
通り
大西洋防衛問題についても、現に
相当
議論
があり、また
議論
のあるために結論に達しておらないような状態であ
つて
、ことに東太平洋における地域的集団保障というようなことについては、よほど
日本
として
考え
なければならぬことでありますから、軽率にこうあるということは、よほど研究を要することだと思います。私一個の
考え
はありますが、政府の
考え
として、講和條約のできざる
日本
の立場において申し上げることは影響がありましようから、お答えは差控えたいと思います。
勝間田清一
117
○勝間田
委員
その問題はきわめて重要な問題でありますので、私どもは、総理も十分に御研究を願
つて
おると
考え
ますけれども、なお
日本
のためにそういうことを強く希望いたしたいと存じます。 それから次の問題でありますが、講和というときに、やはり私どもの頭に一番浮んで来るのは、敗戰国
日本
は完全な平和を希望したいのであります。その点から見まして心配になるのは、中国の問題だと私は思います。一体講和の締結国に対する
日本
の自主権というものは、あるいはないかも存じませんけれども、いわゆる中国と平和を結ぶということは、一体どの政権であるか、この点どう
考え
ておるか、中共政権であるか、あるいは蒋政権であるか、この問題は私ども今後の問題としてやはり残
つて
来る問題だと思います。これについての総理の御所見をひ
とつ
承りたいと思います。
吉田茂
118
○吉田国務大臣 この点は御承知の
通り
、現に国際連合加入の問題についても、中共を認めるか、認めないかというようなことが問題に
なつ
ております。そこでこういう係争問題があるときに、
日本
政府の当局者として、この国、この団体といいますか、薪政権とかあるいは中共と話をするというようなことを申したところがいたし方ないのでありますし、ことに現在国際連合において係争問題に
なつ
ておるところでありますからして、私としてはお答えを差控えたいと思います。
勝間田清一
119
○勝間田
委員
総理は従来全面講和を特に希望されてお
つた
が、しかしやむを得なければということでおられたようでありますけれども、もし現在全面講和を希望するとしても、こうい
つた
特定国の軍隊が
日本
におるとか、あるいは集団保障の問題が
考え
られるとかいうような、いわゆる軍事同盟の締結が、他の世界と締結されて行くということでありますれば、事実上いわゆる全面講和の精神というものは空文になるのであ
つて
、それは單なる一つの気休めにすぎない、こういうように私は思いますが、その点についてはいかがでございましようか。
吉田茂
120
○吉田国務大臣 それは
日本
国政府としても、またアメリカ政府としても、一応全面講和の建前でも
つて
列国に交渉するのが当然であり、またそうなるのであろうと思います。そこで
日本
政府として全面講和ができなか
つた
場合、どうする、こうするということは、当局者としてお答えができにくいと思います。
勝間田清一
121
○勝間田
委員
しかしこれは何回言
つて
も同じかもしれませんが、全面講和の思想で貫くということであれば、私はあらゆる軍事同盟というものにこの際参加しないということを明確に言われた方がいいのではないかと思うのです。もし軍事同盟の問題を真剣に論議するということでありますれば、むしろ多数講和の吉田内閣の
考え方
というものがここにはつきり表面に出されて、
国民
の批判にまつということの方が私はいいと思う。それが
国民
を現在迷わしておる問題だろうと実は思うのでありまして、現在はむしろあなたの見込みから行けば、全面講和はできないという立場に立
つて
いらつしやるのではありませんか、その点をひ
とつ
はつきりお尋ねいたしたいと思います。
吉田茂
122
○吉田国務大臣 見込みはとにかく、政府の立場としては、一応全面講和でも
つて
講和條約を
考え
て行くという立場をとるべきであると
考え
ますし、またそういうふうな立場をと
つて
おります。
勝間田清一
123
○勝間田
委員
こういう問題を次に聞いてみたいと思うのでありますが、私は最近における
日本
の自主権という問題を、講和前においてやはり当然
考慮
すべきである、こういうように
考え
るのでありますが、講和前における
日本
の自主権回復ということについての総理の確信なり、所見なりを承りたいと思います。
吉田茂
124
○吉田国務大臣 今日
日本
は降伏條約のもとにおいて、占領下におる
日本
として自主権の回復ということは、これは矛盾する
考え
であると思う。ゆえになるべく早く講和條約をこしらえて独立を回復するということに邁進いたすべきものだというふうに
考え
ます。
勝間田清一
125
○勝間田
委員
これは必ずしもダレス氏の方ではないと思いますが、この問題について政府は折衝をされておられますか。具体的な問題がございましたら、お知らせ願いたい。
吉田茂
126
○吉田国務大臣 ちよつと御
質問
の趣意がわかりませんが、自主権回復について交渉しているかということでありますか。
勝間田清一
127
○勝間田
委員
そうです。
吉田茂
128
○吉田国務大臣 そういう交渉はいたしておりませんけれども、しかしながら私の交渉をまたずに、始終申す
通り
でありますが、米国、マツカーサー元帥が、
日本
の自主権、
日本
の行政は
日本
になるべく委譲するようにせよという方針でや
つて
おられることは事実であります。しかしながらわれわれの方から自主権回復を公然持ち込んだことはありません。また持ち込まなくても、なるべくその趣意に沿うというマツカーサー元帥の趣意を
了承
いたしましたから、特に私の方から交渉はいたしません。
勝間田清一
129
○勝間田
委員
私は
日本
の自主権の問題を
考え
て行く場合には、常に西ドイツの自主権というものと比較して
考え
て参りたいと思う。しかしその間において、私どもは西ドイツの場合と
日本
の場合と、非常に大きな違いのあることを実は悲しむものでございまして、この点については、私は吉田総理大臣の責任もあられようかと思うのであります。私は最近の
日本
の経済状態、特に輸入物資の状態等から
考え
まして、ドイツの場合と
日本
の場合とは、非常に大きな違いがあると思う。たとえて申しますれば、ドイツの場合は、六月以降においても完全に入超をと
つて
おる。
日本
は不幸にして出超で、しかも政府の発表によれば、十二月末には五億二千万ドルのドルもかかえておるというような状態に
なつ
ておる。こういう状態では、私は
日本
の経済的な自主権というものは期待できないと思うのでありますが、総理はどう
考え
ていらつしやいましようか。
吉田茂
130
○吉田国務大臣 ドイツの現状は私はよく存じませんが、しかし一つ
考え
なければならぬことは、ドイツはヨーロツパの中央に位し、ことに鉄であるとか、石炭を持
つて
いる。ヨーロツパの重要なところに位しており、しかも軍需品といいますか、軍備に必要ないろいろな資源を持
つて
おる。このドイツの連合国に対する立場と、
日本
の立場とよほど違うことも
考慮
に入れなければならぬと思います。しかし、しからば
日本
の現在の状態が完全なりやといえば、完全でないのであります。なお幾多の不満がありますが、現状においてはこれ以上はいたし方ありません。これは私の責任であるかもしれませんが、できるだけのことは盡しているが、これ以上はできないのを遺憾といたします。
勝間田清一
131
○勝間田
委員
さらに一つの問題があると思うのであります。というのは、御存じの
通り
に、中共等との貿易が、一切ここで中絶をしておるという状態にあります。塩にいたしましても、大豆にいたしましても、あるいは鉄鉱石、粘結炭等々いろいろの問題にいたしましても、経済的に当然ペイすると思われる地域の貿易というものは、一応禁止されている。それらの品物がすべてアメリカなりカナダなりへ振りかえられている。これは私は経済上
相当
の損失もあろうかと
考え
るのであります。そこで
日本
の経済の窓口というものが、ほとんど一つの世界だけに限られて行く、地域だけに限られて行く。この限られて行く状態というものと、
日本
の経済の現状における自給率というものとを
考え
てみるならば、たとえば食糧は二割も依存しなければならぬ。あるいは原料は七割も依存しなければならぬ。あるいは
日本
の船舶の八割、九割をこれらに依存しなければならぬ。ま
つた
く
日本
の経済の綱というものは、ある特定国家に依存してしまうという形をとるのではなかろうか。そこに、今後の経済を
考え
て行く場合に、私どもは当然今度の講和では、それにかわるべき
日本
の当然主張すべき最低の要求というものがあると思う。これらをほんとうに確保できなければ、政治的に独立ができたとしても、経済的には
日本
の独立というものはできない。ここに私は問題があると思うから、今度のダレス会談なり、今後の講和
会議
に、
日本
の政府のしつかりした立場というものを発露されてほしいと私は思うのでありますが、これらに対しまして、会談をなされたかどうかということについて、総理の所見をはつきりお尋ね申したいと思います。
吉田茂
132
○吉田国務大臣 最低の要求として、あなたのお
考え
に
なつ
ておることはどういうことでございますか。
勝間田清一
133
○勝間田
委員
私はまず第一に、
日本
の必要なる物資についての輸入を、たとえば中国等から確保してもらいたいが、それができなければ、たとえば食糧については国際小麦協定に参加して必ず食糧というものは確保するという道にわれわれを進めせてもらいたい。あるいはその他の、たとえば原料確保、あるいは粘結炭、鉄鉱石等揚々の軍需資材の割当計画が、アメリカ、フランス、イタリア等において現在やられております。しかもその国際機構が現につくられつつあります。そういう国際機構への参加なり、あるいはそれに対するわれわれの輸入の保障なり、こういうものを確実にやられて行かなければ、前途はちようどかごの中に入れられた小鳥のように、よそから三人の持
つて
来るすりえさに依存しなければならぬという状態が出て来れば、私は遺憾だと思う。従
つて
そういう條件というものがここに出て来るのではないか。その條件で出て来たものについての
日本
の要求というものは、不当な要求ではなくして、これは
日本
の
自立経済
の上における必須の條件だと思う。これについての総理のお
考え
を聞きたいのであります。
吉田茂
134
○吉田国務大臣
日本
に対しての各種の物資の割当については、現にワシントン政府が
考え
ておられると思います。つまり
日本
の産業なり経済なりを崩壊しないようにするためには、どれだけの輸出を必要とするかということは現に
考え
られております。適当の結果が出ることを希望いたしております。
勝間田清一
135
○勝間田
委員
私はそれと同時に、向うが
考え
ておるということでなくして、
日本
の自主性ということが最後においては非常に重要に
なつ
て来ると思う。この点をお尋ねいたしたい。
吉田茂
136
○吉田国務大臣 お答えいたします。
日本
の自主性で、
日本
が
現実
にどれだけのものが必要であるかということの希望は申し述べております。この希望に応じてワシントン政府が検討しておるものと了解いたします。
小坂善太郎
137
○
小坂委員長
横田甚太郎
君。横田君に申し上げますが、非常にお気の毒ですが、
委員長
と総理が約束いたしました時間はすでに過ぎておるのであります。これは
委員
会の運営によることでありまして、
委員長
といたしましてはこの時間を守りたいと思
つて
おるのでありますけれども、あなたの御要求があるので、特に許したことをお含みの上
質疑
を願いたいと思います。
横田甚太郎
138
○横田
委員
二十分はあるのですね。
小坂善太郎
139
○
小坂委員長
それは
委員
会全体として、一時間ある場合にあなたの方に二十分行くという話であ
つて
、すでに一時間半を経過しておるということを、あなたは承知していただきたいのであります。横田君。
横田甚太郎
140
○横田
委員
非常に見解の違う党が、総理の見解が私の方とどのくらい違うかということをはつきりさせるために伺います。 第一は、現在講和條約が進行しておると、こう言われますが、われわれはそう思わない。それで総理に言わせますと、
日本
は自由民主国家に
なつ
て、その晴れの一員に加われると言われますが、われわれは今の講和の形が、このままで行
つた
なら植民地になるのだ、こう
考え
ます。しかしこのように見解が違うと言
つて
おりましても、議会で答弁をつつぱねられるだけでありますから、最も近い、端的な問題からお伺いいたします。 まず西欧民主主義者にとりましては、立憲議会が一番大事だと思うのです。国
会議
事堂が一番神聖な殿堂だ、これが向うの主張だと思う。共産主義者には大衆集会が大事だ。総理大臣は、現在の講和の進行の過程におきまして、米国は
日本
に対して旧怨を持
つて
おられない、非常に友好的に出ている、こう言われる。もし友好的に出ているのであれば非常にけつこうですが、われわれにはそう受け取れない点があるのです。それがすなわちこの国
会議
事堂の問題です。一例をあげますと、この国
会議
事堂の中にアメリカの兵隊さんが入
つて
毎日軍事訓練をや
つて
おります。私はこのことに対しては非常に不愉快に思うのです。吉田総理大臣は
日本
人として、
日本
の代議士として、この事実をどうお
考え
になるか。これを私と同じように不愉快に思われるものであるならば、外国の実権を握
つて
いる人たちとお話する機会が総理には多いですから、そのときにはつきり意思表示をされたかどうか。このことが一つと、それからまた、こういうふうな不愉快なことをなくしてもらうためには、
日本
人としてはどういうような運動をしたらいいか。これは法務府に圧迫されつつ、それに反抗して運動をやるしかしかたがないのか。それからまた同時に、こういうふうなことをやられますこと自体が、非常に大きな刺激になりますから、われわれはこれをやめてもらわなければならない。少くとも議事堂に対して鉄砲を向けるような訓練は困る。こういうようなことをはつきり意思表示するということ自体が、占領政策に違反になると思われるのか、それをまず第一点としてお伺いいたしたい。
吉田茂
141
○吉田国務大臣 もしアメリカの兵隊が議事堂に入
つて
来て、国会に入
つて
来て、議事を妨げるとか、圧迫したということになれば、あなたのお説のようでありますが、現在においては、アメリカの兵隊が、国会の構内において練兵をするからとい
つて
、それをも
つて
ただちに国会の神聖を汚したものと私は
考え
ません。
横田甚太郎
142
○横田
委員
強く追究したいのですが、二十分に制約されておりますので……。
小坂善太郎
143
○
小坂委員長
横田君に言いますが、二十分ではありませんよ。すでに…。
横田甚太郎
144
○横田
委員
それでは簡單にしますけれども、第一に、この問題が非常に問題になるのであります。なぜと申しまして、侵略ということを、現在では間接侵略と直接侵略の
二つ
にわけております。間接侵略の場合におきましては、ポツダム宣言第十二條によりましても、民族の自決ということが高く叫ばれております。われわれはこれゆえにこそポツダム宣言を進歩的な條約であると思い、これを守らなければならないと思
つて
お
つた
のであります。またこれを守ることが世界の大勢であります。世界の人権宣言の前文には、どう書いてありますか。反対派をして武器をとらねば政権を握られないというような、思い詰めた形に追い詰めてはいけないというのが、世界政治今日の行き方であります。これが世界の最も正しい行き方であります。であるにもかかわらず、間接侵略ということは、賃金が安い、米価が不合理だ、
税金
が高い、
日本
の国には非常に軍事基地がふえて行く、これでは
日本
の独立が危ういと思
つて
運動するところの勢力を抹殺するということが、すなわち間接侵略に対する防衛で、それに対する防衛が問題に
なつ
ているのであります。だからこの点において、ポツダム宣言第十二條に盛られましたところの、いわゆる民族自決、みずからの力において政体をきめる。一例をあげますと、全面講和が多数講和を圧迫いたしまして、全面講和でなくちやならないということで全面講和派が大多数を制した場合においては、一体政府はそれに従うのか、従わないのか。この点をお伺いいたします。
吉田茂
145
○吉田国務大臣 私が最も関心を払
つて
おる間接攻撃なるものは、諸君のような共産党が
日本
の
国民
の安定を害することが、最も困ることだと思
つて
おります。(「その
通り
」笑声)
横田甚太郎
146
○横田
委員
政府の講相談義につきましてはつきりと言えることは、インチキだということであります。今度の戰争の原因は一体どこにあ
つた
のでしようか。われわれが
日本
の歴史を見ますと、アメリカと争
つた
のじやない、中国の大きな人口と領土、資源が問題に
なつ
た争いなのであります。これと戰端を開きまして、
日本
がここに侵略をしておりましたときに、アメリカは初め武力を用いなか
つた
。しかし
日本
の侵略がだんだん南に伸びることにおいて、アメリカは非常に焦躁を感じ、後ほどになりましてアメリカがこの戰争に介入して来たのであります。戰争の原因といいますものは、近衛三
原則
として示されておりましたように、日支の共存共栄であり、共同防共であり、経済提携であります。これを徹底的にやろうと進んだものが、中国に台頭する人民の力に圧迫されまして撃破されたのであります。撃砕されたのであります。されば中国との親善が大事であります。中国との通商が大事であります。これを
考え
ずに、何を好んでアメリカと今講和を問題にしなくてはならないのか。アメリカとはすでに講和に
なつ
ておるじやないか。あなた方は何ぼでもアメリカへ行ける、われわれは行けない。(笑声)あなた方はアメリカのものは何ぼでも高く
日本
に持
つて
来ている。アメリカの思う
通り
に政治をや
つて
おるのだ。これ以上の親善が何が必要なんだ。むしろこの既定の事実を失いたくないために、アメリカの人たちはこれを法文化しようと思
つて
や
つて
る、それが單独講和だと思う。だからかような
意味
におきまして、総理にはつきりと聞きたいことは、中共問題をはつきり解決し得ないところの講和
会議
の進行なるものは、
日本
の多数の人民にと
つて
非常に迷惑であるということははつきり言えるのであります。そんなものは講和ではないのであります。中共との問題につきまして、ダレスさんとどういうようにこれを扱うという話合いをされましたか。この問題が解決してこそ初めて問題が解決するのであります。その点をお答え願いたいのであります。
吉田茂
147
○吉田国務大臣 はつきりお答えいたしますが、ダレス氏との会談の内容は申すことができません。
小坂善太郎
148
○
小坂委員長
総理大臣に対する
質疑
は、これをも
つて
打切ります。
中曽根康弘
君。 〔「もう一問だけいいじやないか」と呼び、その他発言する者あり〕
小坂善太郎
149
○
小坂委員長
中曽根康弘
君。
中曽根康弘
150
○中曽根
委員
私は先ほどの
質問
に関連いたしまして、
外務政務次官
及び
関係
局課長に、国際法上の技術的な問題について簡單に御
質問
いたします。 まず第一は、講和條約というものは、先ほどの総理大臣の御答弁でもわかりましたように、非常に創設的な
意味
を有する。従
つて
ポツダム宣言であるとか、あるいはその他戰争に
関係
したいろいろなとりきめが、講和條約という新しい創設的な行為をやることによ
つて
とりかえられる、こういうことが先ほどの総理大臣の御答弁で明らかに
なつ
たように思うのであります。そこでこの講和條約というものは、どの
程度
の創設的効果を有するかという問題を、
二つ
の問題に限定してお聞きしたい。その第一は、いわゆる戰争終了宣言という問題、つまり占領及び管理の終結の問題と、ただいま申し上げた講和の
関係
であります。よく政府筋の見解で、占領を終結してもらう、あるいは管理を終結してもらう、そのためには必ずしも講和を必要としないであろう、戰争終了宣言でも法律的には可能であろう、こういう見解が言われておりますが、はたしてその
通り
でありますか。
草葉隆圓
151
○草葉政府
委員
戰争終了宣言だけでは十分でない場合が多くあると思います。従来の各国の例等を見ますと、その国内で戰争終了宣言をいたしまして、それを受けた方がこれを受けるという
関係
に
なつ
ている場合が多いと存じますが、條約とは違いますので、全部が国際法的に有効に
なつ
たという立場に至らない場合が多いと思います。
中曽根康弘
152
○中曽根
委員
そうすると、戰争終了宣言というものは、たとえば
日本
とアメリカが戰争終了宣言をや
つた
場合には、アメリカ国内における
日本
人の待遇が敵人でなくなる、あるいは敵人の取扱いがなくなる、あるいは外交使節の交換が行われる、そのことは可能であるが、マツカーサー司令部という占領軍の廃止、あるいは管理の廃止、こういうことは実現できないというお
考え
でありますか。
草葉隆圓
153
○草葉政府
委員
それは、かりにアメリカが戰争終了宣言いたしまするならば、どういう形をとるかによ
つて
きま
つて
来ることだと思います。 〔
委員長
退席、
西村
(久)
委員長
代 理着席〕
中曽根康弘
154
○中曽根
委員
もちろんそのアメリカの戰争終了宣言の内容によると思うのでありますが、
日本
と戰争状態を終結する、そういう終結するという
意味
は、現在のマツカーサー司令部の解消を
意味
しないものであるかどうか、つまり戰争状態がなくなるということは、占領や管理がなくなるということに必然的になるかどうかということを聞いておるのです。
草葉隆圓
155
○草葉政府
委員
必ずしも必然的ということは妥当ではないと思います。その場合々々によりまして現われて来る状態になると思います。
中曽根康弘
156
○中曽根
委員
その背後
関係
を少し法的に説明していただきたい。というのは、先ほど私が吉田総理大臣に
質問
いたしました背景には、降伏文書というものがあります。あるいは一九四五年十二月のモスクワ協定というものがある。これにより極東
委員
会や対日
理事
会ができておる。そういう降伏文書あるいはモスクワ協定に対して、戰争終了宣言というものがいかなる影響力を及ぼし得るか、講和はまたそれに対していかなる影響を及ぼし得るか、この二点について精細に御説明願いたい。
島津久大
157
○島津政府
委員
ただいまの御
質問
は、戰争状態終了の宣言というのを前提としての御
質問
と思いましてお答えをいたしますが、戰争状態終了の宣言というものは、今日まで二、三の例があるのでありますが、その際にいかなる効果を及ぼすかということは、その場合々々によ
つて
異
なつ
ておりまして、今回の場合にかりに講和條約以外に戰争状態終了の宣言というものがありましたといたしましても、その効果というものは今日予測ができないという状況でございます。なおまた講和條約そのものが戰争状態を終結するというのが常則であろうと思うのであります。その場合は講和條約そのものと、ただいまおつしやいましたような問題との
関係
に
なつ
て来ると思います。
中曽根康弘
158
○中曽根
委員
ただいまの答弁は答弁に
なつ
ていないのでありまして。そんな答弁を聞くために、私はわざわざあなたに来てもら
つた
のではない。もう少し精細な研究のお答えを煩わしているのであります。私がなぜそういうことを言うかというと、われわれ
日本
人、特にわれわれの所属しておる政党は、軍事占領及び管理の廃止ということについて、今極力
国民
の輿論を盛り上げておる。占領と管理をすみやかにやめてもらいたい。講和が早いということはもちろんけつこうだ。しかしその前でもよいから、ともかく早く今の軍事占領や管理をやめてもらいたい。なぜそういうことを言うかというと、今
日本
人は国連協力でいろいろなことをやらされておる。あるいは朝鮮の戰乱で掃海作業をや
つて
おる。そういうことはポツダム宣言には書いてないことである。あるいは占領基礎法規にはないことである。そういう今までの占領基礎法規をオーバーするようなことが出ておる。朝鮮戰線の模様によ
つて
は、もつと積極的な国連協力が出て来るであろう。われわれは国連協力軍参
つて
もよい、や
つて
もよいが、それは占領、被占領という
関係
でやるのは妥当ではない。
日本
国民
に自由意思を返還して、
国民
の多数の自由意思によ
つて
、新しい
関係
を連合国と
日本
国との間に設定してやるべきである。従
つて
軍事占領及びその管理というものは、すみやかに国際法上も国際道徳上も終結せらるべきというのが、われわれの主張なんだ。そういう前提をも
つて
私はあなたに
質問
しておるのです。従
つて
ただいま申し上げましたように、戰争終了宣言ということによ
つて
、軍事占領がやむのかやまないのか、マツカーサー司令部による
日本
の内政管理というものがやむのかやまないのか。これが一番基本問題に
なつ
て来ておるのです。その点もう少し明快にしていただきたい。と申しますのはあなた方の今の御答弁は、それは相手の占領終了宣言の内容によるとい
つて
おるけれども、常識上、通念上戰争状態がやむということが宣言されれば、今までのモスクワ協定とか、あるいはマツカーサー司令部というものがどういう地位になるかということを説明していただきたい。
草葉隆圓
159
○草葉政府
委員
先ほど御答弁を申し上げましたように、アメリカ一国がかりに戰争終了宣言をいたしました場合には、アメリカと
日本
との戰争状態が終了した、しかし連合国との間における
関係
は、国際法規的には全部それで解消するという
解釈
は妥当でないと思います。
中曽根康弘
160
○中曽根
委員
そうしますと、マツカーサー司令部の占領、管理というものは、そのまま法的にも継続し得る、こういう御答弁と解してさしつかえありませんか。
草葉隆圓
161
○草葉政府
委員
お見込みの
通り
でけつこうであります。
中曽根康弘
162
○中曽根
委員
しからばただいまの軍事占領及び管理をやめてもらう方法は、講和以外にはありませんか。
草葉隆圓
163
○草葉政府
委員
これもお見込みの
通り
であると思います。
中曽根康弘
164
○中曽根
委員
では講和以外にはないとしますと、講和の形に多数講和と全面講和とが出て来る。しかし今一番可能性のあるのは、何とい
つて
も多数講和であります。その場合一番問題になるのは、一九四五年十二月の皆さん御存じのモスクワ協定である。あるいはそれに基く極東
委員
会や、あるいは対日
理事
会の問題である。そこからマツカーサー司令部というものも出て来るわけです。そうするとアメリカと、あるいはソ連を除く国々と多数講和をした場合に、それらの創設的な効果というものは、モスクワ協定を無効に帰するだけの効果がありますか。
草葉隆圓
165
○草葉政府
委員
この問題につきましては、さきに大臣からも申し上げましたように……(「答弁していない」と呼ぶ者あり)現在政府といたしましては、先般ダレス特使との会談の内容等から
考え
ましても、いわゆる極東
委員
会構成十三箇国と全面的な話合いを進めて行く。従
つて
それを別にこれこれこれだという前提で今
考え
ながら研究して
議論
をすることは、かえ
つて
災いを生ずると思います。
中曽根康弘
166
○中曽根
委員
私はそんな答弁を要求しておるのではないのです。私が冒頭申し上げましたように、軍事占領と管理をやめてもらうにはどうしたらいいかということを、あなたに御相談して、教えてもらおうと思
つて
おるのです。先ほどの御答弁で講和
会議
以外にはないということに
なつ
た。その講和は多数講和と全面講和以外にはない。そこで私は法技術的な
解釈
を聞いておるのです。何も政治的にあなたが総理大臣や外務大臣に
なつ
たつもりで答弁しろと言
つて
いるのではない。それは無理でしよう。しかし外務省としては、今日條約局長も
政務局長
も来ているけれども、その研究は済んでいるはずなんです。もしアメリカと多数講和しても、マツカーサー司令部というものはのかない、依然として軍事占領があ
つた
り、管理があ
つた
りする、モスクワ協定に縛られておるからそうなんだということに
なつ
たら、われわれは必ずしも多数講和に賛成だというわけにはいかない。われわれが念願しておるのは、占領と管理のすみやかな終了である。その大事なものが出て来なければ、そんなものは
考え
直さなければならない。そういう
意味
でお尋ねしておるのです。もう少し丁寧に、まじめに御答弁願いたい。
草葉隆圓
167
○草葉政府
委員
お話の点についても、もちろん十分研究はいたしております。しかし今は政府の立場において、これを法的に
解釈
して、ここで申し上げるという立場にない一と存じます。
中曽根康弘
168
○中曽根
委員
草葉政務次官は、先ほどわが党の川崎
委員
の発言をお聞きに
なつ
たと思う。川崎君は秘密外交を排せということを言
つて
おる。私は国
会議
員の一人として、ほんとうに現在の軍事占領、管理をどうしたら早くやめてもらうことができるかということを毎日心配して研究しておるのです。しかしそれをたれに相談するか、外務省にのこのこ行
つて
、あなたに個人的に相談したのでは公式的の見解はわからない。そのためにこそこの
委員
会というものがあ
つて
、われわれ
予算
も
審議
しておるのではないですか。もつとまじめにお
考え
を願いたい。決して私は党略的な
考え
で言
つて
おるのではない。
国民
が一番願
つて
おることは何であるかというと、講和や何かということもあるけれども、それよりも具体的なものは、占領と管理がやまるということなのです。その占領と管理がどうしたらやまるかということをあなたから教えてもらわなければ、
国民
としては多数講和がいいか單独講和がいいか、全面講和がいいか見当がつかない。それを明らかにすることは
——
前にあなた方は外交白書というものを出したじやないですか。それくらい熱心に
国民
に対する意思を表明するという御希望があるならば、一番キイ・ポイントのそれを出さなくて、どうして外務省と言えますか。もう少し精細に私は御返答を願いたい。今のようなお返事だ
つた
ら、私は絶対に承服しません。
予算
委員
会の権威を冒涜する御答弁です。
島津久大
169
○島津政府
委員
ただいま政務次官が申し上げた
通り
でありましで、法律的な
解釈
を公式にただいま申し上げる段階にないと思います。しかし占領を終結させるということは、講和條約で必ずできる問題と思います。
中曽根康弘
170
○中曽根
委員
その講和によ
つて
占領を終結させることができるだろうということを今
政務局長
は御答弁に
なつ
た。これは非常に重大な発言であります。そこで私はこの法的な根拠をこれからちよつとお聞き願いたいと思います。御存じのように、極東
委員
会の根本に
なつ
ている一九四五年十二月二十六日モスクワ
会議
公表文というのがあります。その内容を読んで見ると、現在の占領管理に
関係
している文章としては、こういうことがある。「
委員
会は其の活動に関しては連合国対日
理事
会が組織せられたるの事実より出発し、かつ合衆国政府より最高司令官への命令系統および最高司令官の占領軍隊に対する指揮を含める
日本
国における現存の管理機構を尊重すべし。」こう書いてある。これを読んで見ると、極東
委員
会の行動というものは、合衆国政府とその出先機関である
——
出先機関というより、合衆国政府より最高司令官、つまりマツカーサー司令部への命令系統、あるいはマツカーサー司令部の占領軍隊に対する命令指揮、そういうものを尊重してやれということになると、必ずマツカーサー司令部というものが極東
委員
会にかわるような、あるいは米国
中心
的な存在に
なつ
ているということは、私はここで推定しております。 それからもう一つ見のがすべからざる問題は、対日
理事
会の條項のところでこう書いてある。「最高司令官は
日本
の降伏條項、占領および管理ならびに其の補足的指令の完遂のための一切の命令を発すべし。」ここが大事なのです。「一切の場合において行動は
日本
国における唯一の聯合国のための執行権者たる最高司令官の下に、かつ之を通じ遂行せらるべし。」こういうふうにあります。そうすると、マツカーサー司令部というものがトンネルに
なつ
てお
つて
、ほかのトンネルを使
つて
はならぬということが、大体これでうかがわれるわけです。そうしますと、もし
日本
と米国が講和を結んで、ここで今までの戰争状態が終結して、新らしい創設的
関係
に入るとする。そうすると米国の出先である
——
出先と言うと変でありまするが、マツカーサー司令部、米国軍隊、これが主流に
なつ
ている、これが占領軍ということをやめて、駐屯軍であるとか、あるいはその他の名前のものに
なつ
た場合には、米国の系統によるところの最高司令官もない、そのチヤネルがなくなる。その場合には、ソ連の方はこれに対してしからばここへ占領軍を出すとか、司令官を置くということは、少くともこのモスクワ協定違反に
なつ
て来る。そういうことがあり得るから、米国との多数講和をや
つた
場合には、ソ連がここへ兵を出して来るとか、あるいは最高司令官を置くという可能性はなくなるのではないか、アメリカと多数講和をやる場合には、占領はやみ得るし、あるいはソ連から進駐して来るということも拒否し得るという可能性がここにあるのでありまするが、このただいま申し上げた点について、精細に外務省の研究をお示し願いたいと思う。精細に願います。少くとも十分以上話してください。
草葉隆圓
171
○草葉政府
委員
いろいろ今こまかい点についての御
質問
でございますが、これ具体的な問題としてなかなか微妙な問題だと思います。それで対日講和が全面的に極東
委員
会構成十三箇国でできない場合、ある多数の講和ができて、そうして加盟せなんだ国々は、その後、ただいまお話のように、あるいは進駐等というような心配が多分にあるのではないか、これを法的にはどう取扱うとさようなことがなくなるかというような、ごく具体的な問題であります。常識的に
考え
ますると、必ずしもそうばかりではないと存じまするし、また実際の国際法的に
考え
ましても、講和の結ばれまする際には、十分それぞれの連絡をなされてやられると存じておりますし、一応戰闘行為、敵対行為は調印後済んだのでありまするが、お話のように、戰争終了という問題における講和というものが今後の問題でございまするから、従
つて
この点に対しましては、十分の連絡があ
つて
進められることと私どもは
考え
ております。そういう
意味
におきまして、これを法理的にこまかく分析いたしますることは適当でないと存じます。
中曽根康弘
172
○中曽根
委員
今の草葉
外務政務次官
の御答弁を聞いて
委員長
もよくおわかりでしようが、ああいう答弁をしている限りは、私は時間の制限というものの拘束を受けたくない。これは
予算
委員
会の名誉のためにも、
委員長
にぜひお願いいたします。私は満足する答弁を得るまで、追究するつもりですから、その点は御
了承
願いたい。私はまじめに
質問
しておる、これでも一生懸命勉強して来ておるのです。
西村久之
173
○
西村
(久)
委員長
代理 あなたの御
質問
の趣意はわかるのですけれども、答弁の方はあなたの御
質問
の趣意に沿うだけの御答弁ができかねるように
委員長
はうかがうのであります。何回繰返しても同じ答えをされるのではないかと思います。それでその心持を持たれまして、適当な時機に責任ある総理大臣にお尋ねになることが、かえ
つて
私はいいのじやないか思います。
中曽根康弘
174
○中曽根
委員
私は外務省の人は、技術的に研究しておるので、中立的見解……。
西村久之
175
○
西村
(久)
委員長
代理 研究はなされておるのでしようけれども、この責任ある議場で、この研究を発表する段階にないと仰せに
なつ
ておるのであります。
中曽根康弘
176
○中曽根
委員
委員長
にお言葉を申し上げてはなはだ恐縮ですが、そこが祕密外交と言うのです。秘密外交というのはそこなんです。要するに私が聞いておるのは国際法上の
解釈
であ
つて
、
国民
が一番願
つて
おることは、占領と管理をどうして早くやめてもらうかということです。占領と管理をやめてもらうためには、法的にどういう処置が必要かと聞いておる。
西村久之
177
○
西村
(久)
委員長
代理 中曽根君に御注意いたします。あなたの申すことはわかりますが、政府の方のお答えの趣旨はあなたもおわかりになると思います。これ以上のことは、現在の段階においては申し上げにくいということを言われておると思うのであります。従
つて
何回お繰返しになりましても、あなたの満足の行くような答弁は得られないと、
委員長
は
解釈
いたしておるのであります。
中曽根康弘
178
○中曽根
委員
委員長
は、そういうふうに
解釈
しておられるかしれませんが、私は少くとも数万票という票を得て国会へ来ておる。これは
国民
の名前において、ただしておかなければならぬことなのです。総理大臣は政治的な役目ですから、これはやむを得ないでしよう。しかし外務省の方々は官僚であ
つて
、中立性を持
つて
おる專門家なんです。従
つて
われわれに、われわれが政治的に一番欲しておるところの軍事占領や管理をやめてもらうためには、法律的にはどういう過程が必要なんだということを教えてくれることは当然のことです。私は專門家じやないのです。それを教えていただきたいと言
つて
おるのです。それを
国民
はまた一番聞きたが
つて
おるのです。そういう
意味
で、私はもう少し
質問
を継続します。そこでただいま問題に
なつ
ておるのは、モスクワ協定でありますが、先ほど政務次官、あるいは島津さんのお答えでありましたか、講和ができれば占領はやむであろうということをおつしや
つた
。そのことは私が先ほど申し上げたことに触れる言葉だろうと思うのです。多分それを肯定して、そういうふうな答弁をされたのではないかと思います。つまり講和という創設的効果を有する行為、しかもアメリカが
中心
をなしている占領というものは、モスクワ協定によ
つて
アメリカが
中心
に
なつ
てこれを引受けておる。そのアメリカと
日本
の間が平和状態に帰
つて
、戰争状態が終結してなくなれば、ソ連としてもここへ持
つて
来るだけの大黒柱というものはないのだから、従
つて
占領を主張することもできないであろうし、あるいはまた最高司令官をここへ置くということもできないであろう、私はそういうふうに自分ながら
解釈
して来た。そういう
意味
で多数講和というものも、占領や管理をやめてもらうという
意味
においては、多少妥当性がある。もしそういう
解釈
が可能であるならば、われわれは多数講和というものも、
国民
の念頭から
考え
てよほど慎重に
考慮
してよろしい、こういう見解を持
つて
おるわけなのです。従
つて
ただいま申し上げましたように、モスクワ協定の
中心
はアメリカである、しかもここへ来ている占領軍はアメリカである、従
つて
アメリカとの
関係
が平和になれば、その他の国々はここへ占領やあるいは最高司令官を設置するという余地はなくなると思うのですが、その点もう少しこまかに説明していただきたいと思うのであります。島津さんは先ほど占領はやむであろうということをおつしや
つた
、その背景を問題と結びつけて教えていただきたいと思うのであります。
島津久大
179
○島津政府
委員
先ほど申しましたように、私御答弁申し上げましたのは、ごく常識的に
考え
て申し上げておるのでありますが、そういう
意味
で、大体お説のような方向であろうと思うのであります。法律的の
解釈
、またこれは
事務
当局が中立性を持
つて
お
つて
、はつきりと割切
つて
一本に出るものというようなお説でございますが、何分国際法その他の
解釈
というものは、いろいろな説があるのでございます。現に国内においても
議論
も区々にわかれております。そういう
意味
でただいま外務当局がはつきりと一つの固定した理論を、ここで御披露するという段階にないことを御
了承
願いたいと思います。
中曽根康弘
180
○中曽根
委員
外務省の
政務局長
が、
予算
委員
会に来て答弁なさるのですから、
相当
責任を持
つた
御答弁である、
国民
に対して責任を持
つて
御答弁なさるのだろうと私は
解釈
しております。従
つて
先ほど講和が成立すれば占領はやむであろう、そうおつしや
つた
背景には、やはり一つの透徹した体系をも
つて
お答えに
なつ
ておるに違いないと思う。 〔
西村
(久)
委員長
代理退席、
委員長
着席〕 その
考え方
というものは私が申し上げましたその
考え方
を基本にして、そういう
考え方
を言
つた
のであるか、ただいま島津さんは、いろいろ学説があると言われましたが、いろいろな学説をひ
とつ
御紹介願
つて
、その中でどれが大体妥当性を有するか、その点もお示しを願いたいと思います。
島津久大
181
○島津政府
委員
ただいま申し上げましたのは、ただいま問題と
なつ
ております具体的の問題について、こういう学説があるということを申し上げたのではないのでございまして、一般的に国際問題に関する理論というものの扱いについて申し上げたのであります。私これ以上御答弁はできかねると思います。
中曽根康弘
182
○中曽根
委員
先ほどあなたがお答えに
なつ
たのと、大分違うのじやないですか。私が聞いたのはこのモスクワ協定を
中心
として、この講和という問題とあるいは協定の
関係
がどうなるかということを
質問
しておる。私は私の見解を述べた。それに対してあなたは、いろいろ見解があるということをおつしや
つた
。明らかにこの問題を
中心
とした学説をあなたはお示しに
なつ
てお
つた
。今に
なつ
て、何だか一般的な国際法の
原則
論みたいな話を持ち出しても、それは私は肯定することはできない。問題を集約してこれから話しましよう。ともかくこのモスクワ協定というものを
中心
にして、アメリカあるいはその他との多数講和が行われた場合に、モスクワ協定及び現在の極東
委員
会、対日
理事
会、占領国というものは、アメリカが
中心
に
なつ
てチヤネルに
なつ
ておる。従
つて
そのチヤネルであるアメリカと講和が成立して、創設的な効果を有する事態が出て来れば、それ以外の問題は一応は解消する、言いがかりの材料にはならない。こういうふうに私は
解釈
しておる。それは先ほど申し上げた
通り
です。この点を
中心
として外務省のお
考え
をお示し願いたい。
島津久大
183
○島津政府
委員
率直にお答えを申し上げておるのであります。ただいまの御
質問
に対しましては、先ほど申しましたように、大体の方向として、そういうような
考え方
が常識的に妥当であろうという
考え方
を持
つて
おります。だがしかし、理論としてどうこうという結論を申し上げる立場にないということを申し上げておるのであります。もともとこれらの協定は、連合国間の問題であります。その
解釈
について、
日本
政府がたとい一
事務
官でありましても、法的な
解釈
を下すということは、この際差控えたいという
考え
を持
つて
おります。
中曽根康弘
184
○中曽根
委員
なるほどそれは連合国間の協定ですから、それは連合国間において
解釈
が正式にきまるものと
了承
いたします。しかし敗戰国の、しかも早く独立を願
つて
いる外務省としては、当然それらの問題について精細な研究をしているに違いないと思う。それを隠すというところがどうしても国会の権威にかけて解せない、私は何も吉田
内閣総理大臣
がこういうふうに
考え
ておるのだとか、どうかということを言
つて
おるのじやない。少くとも法律專門家である、また国会の、言いかえれば外務
委員
会や
予算
委員
会の法律顧問ともなるべきような官僚が、どういう
解釈
をしておるか、それを国会が採用するとか、内閣が採用するというのは別問題だ。だから中立性を持
つて
おるというのです。その御見解を聞いて私なりに消化して、
国民
にも伝えよう、こういう
意味
で言
つて
おるのです。今のような常識的のあるいは大臣の答弁みたいな御答弁を、私は官僚であるあなたからは要求しておりません。従
つて
もう少しモスクワ協定を
中心
にして法律的にどういう見解が成立するか、この点をお答え願いたいと思います。常識的な見解というものは、政治的の責任を有する大臣がおやりになるのであ
つて
、それを私は役人である皆様方にお願いしておるのではありません。どうぞ法律的な見解をお示し願いたい。要するにどうしたら早く軍事占領と管理がやむか。政務次官に聞いておるのではないですよ。島津さんに聞いておるのです。いいですか。ともかくどうしたら軍事占領と管理がやむか、法律的にはどういう方法が一番よろしいか。これをぜひともお教えいただきたい。私はそれをこなしまして、
国民
にお伝えいたしたいと思うのであります。
島津久大
185
○島津政府
委員
たびたび申し上げますが、占領、管理を終結させる唯一あるいは最良の道は、講和であろうということを繰返して申し上げる次第であります。
中曽根康弘
186
○中曽根
委員
大分話が前進して来まして、私も大分愉快に
なつ
て来ました。そうすると占領、管理を終結させるというのは、講和であるというのですが。それは全面講和でありますか、多数講和でありますか。いかなる種類の講和を
意味
しますか、島津さんにお尋ねいたします。
島津久大
187
○島津政府
委員
この点は先ほど総理がお答え申し上げました
通り
であります。また政務次官からもその
通り
お答え申し上げました。
中曽根康弘
188
○中曽根
委員
どういう
意味
です。あなたからもう一回言
つて
ください。
島津久大
189
○島津政府
委員
ただいま季三面であるとか、多数であるとか、單独であるとかいうようなことを、確定的にどれであるということを論ずる段階にはないと思います。
中曽根康弘
190
○中曽根
委員
また変な話を承
つて
来まして、逆もどりしましたが、ともかく講和をやれば占領と管理がやむというところまではお答えに
なつ
た。しからばその講和、というものは、一応は常識的には全面講和にきま
つて
いる。全面講和をやればもちろんこれは常識的にも必然的にそうなるでしよう。これは私は問題ない思う。しかし問題は多数講和あるいは米国との單独講和の場合に、そのことが期待し得るか期待し得ないかという問題に問題をしぼ
つて
来ます。その問題についていかにお
考え
になりますか、あなたがおつしや
つた
のは、いかなる講和を
意味
しておりますか。
島津久大
191
○島津政府
委員
この点は、全面講和でない場合を想定してのお答えは、はつきりしたお答えを申しかねるのであります。
中曽根康弘
192
○中曽根
委員
今の御答弁は、私、今ちよつと話中でありましたので、明瞭にお聞きし得なか
つた
のでありますが、恐れ入りますがもう一ぺんお答え願いたいと思います。失礼いたしました。
島津久大
193
○島津政府
委員
全面講和でない場合を前提としての御
質問
には、はつきりここでお答えはできないのであります。
川崎秀二
194
○川崎
委員
議事進行について。先ほど同僚中曽根議員の條約
関係
に対するところの
質問
は、きわめて微細にわた
つて
、しかも專門的な
質問
であります。そこで当然外務省としては政務次官以下陣容をそろえて出て来られたのであるから、従
つて
堂々たるところの太刀打ちがあるものと私は思
つた
。これは総理大臣に対するところの
質問
でないのですから、政治的な問題ではありません。従
つて
もつと真剣なる応答があるべきでありますが、あるいは準備が足らなか
つた
かもしれない。従
つて
この問答をいつまで繰返してお
つて
も
——
質疑
者は十分なるところの材料を持ち、答弁者の方はそれに対して、いろいろの
関係
もございましようけれども、十分なる答弁ができない。従
つて
これは適当なる機会において十分なる用意をされて答弁をされるまで留保をしてもら
つた
らどうか、これをお諮り願いたいと思います。
中曽根康弘
195
○中曽根
委員
私から発言いたします。
小坂善太郎
196
○
小坂委員長
区切りをつけましよう。
中曽根康弘
197
○中曽根
委員
区切りをつける
意味
でちよつと発言いたします。ただいま同僚川崎
委員
から御発言がございまして、私も外務省の方々の苦衷もわかります。しかしこの
予算
委員
会、国会というものの使命をもう一回再認識いただきまして、もし材料や、あるいは資料、あるいは研究が足りないようなことがありましたら、別の機会で十分です。私は何も今答弁しろと言いません。今度の議会が終
つて
、われわれが国へ帰るまで十分研究していただいて、御答弁していただいてもけつこうです。あるいは要すれば秘密会でもけつこうです。秘密会で秘密にしてくれということであれば、議員の名譽において秘密にいたします。ともかくフランクに、この問題は十分われわれに教えていただいて、納得して、多数講和とか全面講和とか、單独講和論、それをやれるようにしていただきたいと思うのであります。そういう
意味
でただいまの川崎
委員
の発言に私は同意いたしまして、少くとも一週間以内くらいにもう一回陣容をそろえて、資料をそろえてわれわれに適切なる御説明をいただく機会をいただきたいと思います。これで私の
質問
は終ります。
小坂善太郎
198
○
小坂委員長
天野
公義君。
天野公義
199
○
天野
(公)
委員
私は労働大臣に数点お伺いしたいと思うのでございますが、まず第一に労働パージの問題についてお伺いしたいと思います。 戰争中、産業報国会、労務報国会等の重要役職員であ
つた
者は、労働に関する一切の団体の一切の役職員の地位につくことが禁止されておるわけでございますが、産報等にあ
つて
、労働者を抑圧したり、勤労大衆を軍国主義にかり立てた者が労働
関係
からパージされることは当然であります。この措置は戰後の民主的労働組合運動の発達のために不可欠なことであ
つた
ことは言うまでもないところでございます。しかしながら労働パージは、急速に一定の
基準
で行われたために、たとえば
地方
の名望家であ
つて
、名望家であるというために無理に名目的な役員のポストにすえられて、実際上には何ら産報等の活動に関与しなか
つた
者や、また一生を労働者の安全、衛生の改善に捧げた篤志家であ
つて
戰時中その特別の知識、技能のゆえに産報の役員にされたが、実際はもつぱら技術
関係
の業務のみに関与して、産報本来の業務にま
つた
く無
関係
であ
つた
者までが、一律にパージされているという気の毒な例もたくさんあるのでございます。これらの特殊事情のある気の毒な人たちは適当な救済が
考え
られてしかるべきであると
考え
るのでございますが、今日民主的労働組合運動が強力に発展しておる現状においては、これらの人々に対するパージを若干緩和しても、何ら民主化に逆行する憂いなく、ときにはその專門的技術知識をも
つて
労働運動に貢献し得る面もあると
考え
られるのでございます。特に一般の公職追放該当者の一部が先般解除されたことにかんがみまして、労働パージについても、事情により一部解除の措置をとるべきではないかと
考え
るのでございます。聞くところによりますと、本日この問題について閣議決定を見たとのことでございますが、これに関する政府の見解及び措置をお伺いしたいと思うわけでございます。
保利茂
200
○保利国務大臣 お答え申します。御
質問
の労働パージの問題でございますが、労働追放として指定を受けられている方が二万名以上に達しているわけでございます。この労働追放が、御
意見
のごとく
わが国
の民主的労働組合の発達の上に
相当
大きな寄与をなしたということは申すまでもないことでございますけれども、何さま
とつ
さのうちにこの指定措置がいたされましたために、内部に立ち入
つて
みますと、事情まことに気の毒な方があるわけでございます。
昭和
二十三年の省令改正において、さような特殊な事情のある方については、それを免除するという救済
規定
もできたのでございますけれども、いろいろの事情で今日までの救済
規定
が十分に生かしておられない。今日の発達いたしました
わが国
の民主的労働組合の現状からいたしましても、この救済
規定
をできるだけ全面的に活用することが最も妥当ではないかという
考え
をもちまして、先般来
関係
方面とも折衝いたしました結果、完全な了解を受けまして、労働省内に労働追放に関する審査
委員
会のようなものを設けまして、そうして御設問のように、たとえば産報あるいは労報、そうい
つた
ような戰時中の労働
関係
の団体の主要役員という名前を連ねてお
つて
も、実務の上に実質上
関係
を持たなか
つた
人でありますとか、あるいは專門的な技術により今後
わが国
の民主的労働組合の発展の上に寄与し得るような方々を、特別に詮議をいたしまして、この條項の免除を設けることが妥当であるという結論をいたしまして、その措置をと
つて
参りたい、かように
考え
ております。
天野公義
201
○
天野
(公)
委員
まことに適当な措置であると
考え
るのでございますがその労働追放に関する審査
委員
会というものは、大体いつごろまでにできて、そしてその審査の
基準
となるものはどの
程度
であり、その結果解除の見込まれる人数は、大体どのくらいの人数であるか、それからその解除の発表される時期は大体どのくらいの時期であるか、こういうことを伺います。
保利茂
202
○保利国務大臣
委員
会はただちに発足いたしたいと存じます。どのくらいの方が免除の該当者として取扱われるかは、その都度心々審査に当
つた
結果を見なければわからないと存じますけれども、二万以上を越えられる該当者の中には、
相当
の数が含まれているのじやないかということは想像せられます。審査の結果は、その都度々々本人に御通知を申し上げるようにいたして参りたいと思います。
小坂善太郎
203
○
小坂委員長
それではこの際、庄司君に発言を許します。
庄司一郎
204
○庄司
委員
最初法務総裁に所見をお伺いしたい点は、過般の本
会議
において、民主党の苫米地
委員長
の
質問
にも現われてお
つた
のでありまするが、過般、アカハタ代用といいましようか、「平和のこえ」とかいう新聞
関係
の検索において、兵器彈薬といえば大げさであるが、銃砲火薬あるいは爆薬のような危險物を、
相当
数量において確保されてお
つた
。共産党員であるかあるいは同調者であるか、承知いたしておりませんが、
相当
量の危險物を所持してお
つた
者もあ
つた
。物件はむろん没收されたでございましようが、その後さような危險物の所持者等に対して、どういう方途を講ぜられておるか、やし、テキ屋のたぐいがチヤンバラのけんかを二、三回や
つた
くらいで、かなり全国的には解散命令を受けておる。しかるにただいま申し上げたような状況のもとにおいて、暴力革命を企図しておると言われておる共産党部内において、さような危險物を收集してこれを保持しておるというような、危險なるところの不逞なるやからに対しては、いかなる措置を法務総裁は講ぜられたのであるか、またこの後講ぜられんとするものであるか、最初この一点を伺います。
大橋武夫
205
○大橋国務大臣 先般アカハタ類似紙の頒布の疑いをもちまして、全国的に多数の共産党員を検挙いたしたのであります。このうちに、数箇所におきまして彈丸、ダイナマイトあるいは小銃等を所持してお
つた
という事実がございました。事案は、ただいまなお検察庁におきまして取調べ中でございまするが、これらの品物を入手いたしましたる経路、また所持の目的等を十分に取調べましたる上、これらにつきましては、それぞれ法に従いまして嚴重に処断をいたしたい、かように存じておる次第でございます。
庄司一郎
206
○庄司
委員
法に従いとは、銃砲火薬の取締り規則違反
程度
の該当者と法務総裁はごらんに
なつ
ておられますか、さように軽微にごらんに
なつ
ておられますか。
大橋武夫
207
○大橋国務大臣 銃砲火薬類取締法に違反をいたすということはこれは当然のことでございまするが、なおその他に、騒擾その他の計画をいたしておるというような事実が、取調べの上明らかになりました場合におきましては、当然そうい
つた
面においても起訴しなければならない、こういうことになるわけであります。しかしながら先ほど申し上げましたる
通り
、これらの入手の経路、目的等につきましては、今なお取調べ中でございまするので、これ以上取扱いについて明確に申し上げる段階に至
つて
おりませんのでございます。
庄司一郎
208
○庄司
委員
国民
の間においては、この問題に関してはかなり深刻なる不安焦燥にかられておるのであり、他の共産党の団体、あるいは党員等においても
相当
さようなものを携帶しておるのじやないかというような疑いも、
相当
持たれておるのでありまするから、すみやかに取調べを終了されて適当な手を打たれ、すみやかなる善処を煩わしたいと思うのであります。 次に法務総裁は、第九国会の末期でありましたか、徳田君あるいは野坂君のような、すでに逮捕状が出ておるところの諸君については、すみやかに逮捕の確信ありということを、本
予算
総会において言明されたことを記憶しておりまするが、その後一向逮捕も検索も拝聽しておらないのでありまするが、これは現下における
わが国
の警察力、捜査力がないという証左でありまするか、どうお
考え
でありまするか。
大橋武夫
209
○大橋国務大臣 本件に関しましては、全国におきまする検察庁、国警、自治警察また特審局等の各機関が、それぞれ緊密なる連絡をとりまして、鋭意努力をいたしておるのでございまするが、ただいままでその成果が上
つて
おらないことはまことに遺憾に存じておる次第でございます。警察力の点につきましては、こうした全国的に捜査をしなければなりませんところの事件につきましては、現在の制度は運用が非常に困難な面も
相当
ある、かように私は
考え
ておる次第でございまして、この点につきましては、目下警察制度改正の問題の一つのテーマといたしまして、十分に研究をいたしておるところでございます。
庄司一郎
210
○庄司
委員
警察制度の運営が何かこう望ましくないような
意味
において、捜査、逮捕が困難であるかのような印象を受ける御答弁でありましたが、はなはだ遺憾であります。そういう点があれば、すみやかに改善の措置をと
つて
いただきたい。この件はこの件として、もう一点だけあなたに承
つて
おきたいのは、前国会の末期において、やはりこの席よりお伺いを申し上げ、かつ要望しておきました、私多年の持論の例の前科者の愛護の問題でございますが、せつかく長い十年の歳月をけみして、努力の結果
立法
化された刑法第三十四條第二項、すなわちある一定年限を経過せる刑余者は、ことごとく公なる公簿よりその前科リストを抹消する、かようなあたたかい愛の法律である。しかるにその後法務府系統の官公署において、あるいは警察あるいは市町村等の役所、役場等におけるいわゆる刑名簿の中には、全然刑法第三十四條第二項の
立法
の精神を実行に移しておらない点がきわめて多い。これはま
つた
く画竜点睛を欠くといいましようか、仏つく
つて
魂入れずといいましようか、せつかく刑余者に対するあたたかい、りつぱな愛護の
立法
化がなりましても、やはり二十年た
つて
も、三十年た
つて
も、常に前科者扱いをしておる、こういうようなことはすなわち基本人権の尊重という点から言いまして、まことに遺憾千万なことである。しかも検察庁の検事のごときは、被告人何がしは前科何犯であるというようなことを、起訴状の中にまでしたためておる事例が多々あるのでありますが、いわゆる前科抹消制度が
立法
化して、これが実施されてすでに満三箇年を経過しておる今日であります。それらに対して法務府は、あるいは更生保護事業
審議
会等と協議の上、どんな手を打たれ、この大きな愛護の理想を実施するために、どういういい手を打たれたか、あるいは公にはどういう通牒を出されたか、あるいは検事長とか検事正等の会合等においても告示されたか、そういう点において私はあえてあなたの責任を問いたいのであります。
大橋武夫
211
○大橋国務大臣 前科抹消の件に関しましては、前国会におきましても、庄司
委員
より温情に満ちておりまするところの御
質疑
をいただいた次第でございます。爾来法務府といたしましても、この問題は行刑並びに矯正保護の上から申しまして、收も重大な問題でございまするので、誠心誠意これについて研究を重ねて参
つて
おるのであります。御承知の
通り
犯罪人名簿というものは、市町村役場において、保管をいたしておりまするので、これが抹消その他の事後の整理につきましては、当然市町村役場においてでき得る限りの努力を払
つて
もらはなければならぬものでございまするが、何分にも御承知の
通り
市町村役場等におきましては、
事務
も非常に熟練いたしておりませず、また人手も足りないために、自然にそのままに
なつ
て、法の趣旨を実現できないというようなことに相
なつ
ておる次第でございます。従いまして当局といたしましては、この市町村役場に対して、いつ幾日だれの前科を抹消すべきであるということを、適当なる機会に通知をいたすということがきわめて適切有効なる措置である、かように存じまして、この通知の方法について研究をいたして参
つた
のであります。これにつきましては、
関係
官庁といたしましては、市町村役場の管轄をいたしまする
地方自治
庁、また検察庁、刑務所、中央更生保護
委員
会というように、いろいろあるのでございます。これら各機関いろいろと案を協議いたしましたる結果、まずさしあたり、大般的には犯罪人名簿の制度につきまして、根本的な検討を加える必要があるということになりまして、これもまたいろいろ考案をいたしましたる結果、検察庁にありますところの名簿をカード化するということが一つであります。このカード化したことによりまして、その索引を便利ならしめ、そうして適当な時期に適当なる通知を発するということが必要である、こういうので目下いかなる様式のカードにすべきかという案を、寄り寄り研究をいたしておるような次第なのであります。このカード化ができますと、従
つて
市町村の犯罪人名簿もこれに即応いたしまして、整理することができるというふうに
考え
るのであります。 それからもう一つの点は、さしあたりの措置をいたしまして、懲役、禁錮につきましては、刑の執行を終了いたしましたるときにおいて、この刑の執行の最後の指揮を担任いたしましたる刑務所の側から、管轄の検察庁並びに市町村役場に対して、いつ幾日刑の執行を終了したということを通知する。そうすればこれを編綴いたしておきまするならば、その後は自動的にその編綴の順序に従いまして前科抹消の手続をと
つて
行けばいい、こういうことになるのでございまして、これによりまして法定期間が経過した後におきましては、自動的に市町村役場はその編綴いたしました通知書を索引といたしまして抹消手続をや
つて
行く、こういうことに相なるわけであります。もちろんこれでは懲役及び禁錮だけでございますから、十分なりとは申しかねるのでありますが、主として一般的に問題になりまする前科といたしましては、懲役及び禁錮の場合でございますから、この場合についてはそういう措置をとりたいということで、この旨を刑務所に対して通牒をいたした次第でございます。犯罪人名簿の制度の根本的な検討ということは、さきに申し上げました
通り
、別途に進めておるのでございます。これらの措置を講ずることによりまして、御趣旨のような前科抹消の手続の完璧を期して参りたい。こういうように
考え
、またさような措置をいたしたような次第でございます。
庄司一郎
212
○庄司
委員
たいへんけつこうな措置をとられたようでありますが、
地方
の警察あるいは町村役場等において、ま
つた
くこの問題を軽視している傾向がきわめて多いのであります。すでに刑法上においていわゆる前科者でない者を、前科者扱いにしている、これくらい大きな社会問題はありません。これは大きな人道問題です。どうかあなたは、たいへんけつこうな手を打たれているようであるが、これがすみやかに全国一万何千の市町村等に滲透して、ほんとうにこの刑余者に対する愛護の法律が花を咲き実を結び、再犯、累犯等がないように、やけを起して犯を重ねる者等がないように、そういう措置をひ
とつ
と
つて
いただきたい。これであなたに対する
質問
を終ります。
林百郎
213
○林(百)
委員
関連して伺いたい。先ほどの庄司
委員
の法務総裁に対する
質問
で、「平和のこえ」の検挙に際して、共産党員のところからダイナマイトや小銃が出て来たというような
質問
に受取れました。この点はあたかも共産党が暴力革命の準備のために党員がこういうものを計画的に準備しておるという
意味
にとれました。そこであなたにお聞きしたいのは、第一には、これは一体共産党員が所持していたのか、あるいは被検挙者の同居の家屋あるいは居所を捜査した際にそれが出て来たのか、その所持者は一体だれであ
つた
のかということが第一点。 それから第二点は、これは党の指示あるいは党の方針として所持していたということに
なつ
ていたのか。 第三点として、騒擾の目的のために所持していたのか。かりに党員の所有であ
つて
も何かか
つて
炭坑夫であ
つて
そういう職務上の必要から持
つて
いたという
意味
なのか。そういう点が非常に不明確、あたかも党の方針に従
つて
、党の革命のために所持しているという
意味
にとれたのでありますが、その点について、以上三点を明確に答弁願いたいと思うのであります。
大橋武夫
214
○大橋国務大臣 私どもといたしましては、庄司
委員
の御
質問
に対しまして、その辺の事情を目下取調べ中でありまして、取調べの結果明らかと
なつ
た事実に対して、嚴重に法を適用して処断をいたす、こういうお答えをいたしたわけであります。
林百郎
215
○林(百)
委員
今取調べでわか
つて
おる限度でけつこうです。
大橋武夫
216
○大橋国務大臣 ただいま捜査中でございまするので、これ以上申し上げることは御容赦願いたいと思います。
庄司一郎
217
○庄司
委員
天野
文部大臣にお伺いしたい第一点は、
わが国
現下の高等学校以上大学等に進学しあたわない青年大衆が、約五百万人あると調査されております。そこでお伺いしたいのは、向学心を持
つて
おる
わが国
青少年に対しては、学問をおのれの欲するままに、自由に勉学をしあとら教育上の機会均等を与えなければならないと私は
考え
ておる。従
つて
お尋ねしたい第一点は、この学校教育を受けたくも受けることのあたわない境遇にある全国約五百万の青年大衆を、どんな方法をも
つて
、将来文化国家を背負うところの、この後のよき
日本
、正しい
日本
の、文化国家の成員としてふさわしいものに教育せんとなさるお
考え
を持
つて
おられるか、最初その一点をお伺いしたいのであります。
天野貞祐
218
○
天野
国務大臣 仰せの
通り
今中学校を出ても先に進めない学生が五百万人もおるということは、その
通り
でございます。私も非常に遺憾千万だと思います。何が気の毒だとい
つて
、力がありながら上の学校に進めないというくらい気の毒なことはない、またそれが社会不安のもとにもなるということから育英制度を拡充して、来
年度
には高等学校生徒の三〇%はそれに行くように努めようと今や
つて
おります。けれども、そういうような育英制度の拡充といえども、そういう向学心のある者をすべて学校にやるということはできませんから、その行けない人たちに対してはいろいろのことを
考え
おります。たとえば通信教授によるのも一つでございます。定時制の高等学校もそうであります。また公民館を利用して、さまざまの教育的なことをするということ、また今回は社会教育法を改正いたしまして、社会教育主事というものを教育指導主事と同じような資格にする、それを教師にして、社会教育を盛んにする、また二十六
年度
から非常にわずかでございますが、モデル的な勤労青年学級というものを開設いたしまして、それは百十五学級でありますが、
予算
が非常に少うございまして、百七十万円でございますが、とにかく二十六
年度
からそういう新しいことを企てております。そのほか成年者のために社会学級というものを創設して、それに政府が助力するというようなことを企てておるのでございます。そういうような、学校の開放とか、さまざまな方法をも
つて
、この学校に行けない人たちの教養を高めるということに盡力をしようと思
つて
おります。
庄司一郎
219
○庄司
委員
文部大臣のお
考え
は大体においてよろしゆうございます。だがあなたのお
考え
に
なつ
ておる、また
予算
を要求されておる勤労青年学級の補助費、これはわずかに百七十万円、それから定時制の青年学校、これは全国現在学生が四十三万人就学しておる。この定時制の高等学校をもつと拡充強化するお
考え
があられるならば、やはり都道
府県
の教育
委員
会、あるいは都道
府県
等に対して、教員の俸給の国庫
負担
であるとか、そういう手をお
考え
にならなければ、この後定時制の高等学校の生徒を増加させる余地がございません。この定時制の高等学校にさえも入ることのあたわない青少年が大体四百五十七万人、文部大臣はただいま議題と
なつ
ておる
予算
のうち、文部省
予算
の国立の学校
経費
として百四十七億円を要求されております。そのほか五十七億かの文教施設費というものを要求されておる、はなはだけつこうであります。けつこうであるが、この教育の機会均等に全然恵まれておりませんこの四百五十七万人の諸君は、多くは社会教育法に準拠して、各市町村の公民館が経営をしておる青年学級というものに入
つて
、これは一箇年に何日かの教育を受けておる。教育の機会均等の点からいえばまことに恵まれない不遇なるところの青少年諸君である。しかもこの四百五十七万の青年学級に学んでおる、そうして学問を求めておる、教育の均霑を求めておるこれらの青少年大衆に対するあなたのお
考え
の上より、
予算
を要求されておるただいまの補助額は、わずかに百六十三万円と記憶しておりますが、そういう
程度
であります。国立の大学の学生一人当り一箇年の教育費は約五万円である、あるいは理工科あるいは医科大学生に至
つて
は、一人当り七万円
程度
と私の調査においては出ております。しかるに高等学校にさえも、いわんや定時制の高等学校にさえも進学することのあたわない境遇にあるこれらの四百五十七万人の青少年諸君のために、百六十三万円の国庫補助というのは、一体これはどういうことになるのか。一人当りた
つた
三十三円ですよ。境遇に恵まれておる、大学に学んでおる諸君は、国費を一箇年に五万円ないし七万円の教育費の恩典を受けておる。恵まれざるところのこれらの青少年は三十三円、しかもそれも直接の補助ではない、都道
府県
に対するところの補助である。そこで文部大臣のお
考え
を煩わしたいのは、これらの恵まれておりません青少年学級
程度
の教育を受けておる、この青年学級教育というものを、もつとこれを刷新し、振興させてそうしてこれらの青少年諸君が、昔の言葉でいえば高等普通教育を受け得る
程度
の国費の助成ということをお
考え
になるごゆとりはありませんですか、この点をお伺い申し上げてみたいと思います。
天野貞祐
220
○
天野
国務大臣 今おつしやいましたことは、一々ごもつともだと思います。一方には、そういう多数の青年が、学校に行きたくも行けない、しかも学びたくも学べない、他方には、国家が多額の補助をしている学生たちが、まま自分の学業をも放擲しておるというような状態にあるが、実は自分が文教の府にお
つて
、微力にしてこういう状態にしておくことははなはだ申訳ないことであると思
つて
おります。でありますから、そういう青年が、その土地にお
つて
も一般の教養を十分持つことができるように、今後はできるだけ努力を払
つて
御趣旨に沿いたいと
考え
ております。
庄司一郎
221
○庄司
委員
こいねがわくは、今度の
予算
には無理なことでございましようが、ぜひ次の二十七
年度
の
予算
等において、これらの恵まれておりません青少年のために、真剣に
なつ
てひ
とつ
御検討をお願いしたい。 次に文部大臣は、育英資金を増額して、やはり経済的に恵まれておりません学徒を援助すると述べられました。たいへんけつこうでございます。そこで私はお伺いしたい。なるほど配付された
予算
の説明書を見ると、本
年度
は育英資金
関係
が約二十四億、前
年度
より九億増額された。この御努力のあとはよく
了承
されます。また説明書の最後には
——
今度の増額二十四億によ
つて
、学生十四万九千人に対して、つまり均霑を与えた。前
年度
より五万三十四人だけがふえるわけでありますから、たいへんけつこうなことであります。ところが私のお伺いしたいのは、育英資金の貸付運営の面において、とかく国立学校方面の学生にだけこれらの恩恵といいましようか、均霑が割合によくて、私学の方は差別虐待をされておるという事実を聞いております。文部省としては、もとより公立学校であろうと私学であろうとそこに差別はあられないと思う。しかし
現実
の問題としては、私学の方はきわめて少人数しかこの恩典に浴し得ない現状にあるということを聞いておりまするが、この十四万九千人のうち、国立学校はどのくらい、私学はどの
程度
というような何か切札でもあるのでございまするか、数がわか
つた
ら
参考
にひ
とつ
承
つて
おきたいと思います。
天野貞祐
222
○
天野
国務大臣 この育英資金をどういうように割当てるかということについては、育英会はもう絶対公平にや
つて
、公立とか国立とか私学とかいう区別は少しもいたしておりません。現在は国立の方が多く
なつ
ておりますが、これには実績とかいろいろな理由がございます。もう三年ぐらい前、あるいは四年ぐらいになるかもしれませんが、たとえば都下の私立の大学に対しては、どうかひ
とつ
申し込んでくれ申し込んでくれとい
つて
育英会の方から学校に催促をして、ごくわずかな人だけがそれに申し込んだというくらいで
——
今は事情が一変してしま
つて
、どこの学校でもここに申し込みをしますが、以前はそういう状態であ
つた
のです。いろいろなことからして、国立学校が多く
なつ
ている、ということはありますが、すぐ調べて、どれだけのパーセンテージに
なつ
ているかということをこの次お知らせいたします。私は先年その育英会の会長をしておりましたが、そのときのパーセンテージはむしろ私立の方が多か
つた
くらいだと承知しております。それは今度提出いたします。
庄司一郎
223
○庄司
委員
どうかこの上とも公平無私に、怨嗟の声がないように御善処を煩わしたいものであります。 もう一点は、ただいま全国の国立大学あるいは高等学校の先生方、特に国語、漢文に
関係
のある教師だちから、こういうことを国会にたくさん陳情されております。それは、漢文というものを非常に虐待しておることである。これは詳しく申し上げると
相当
長くなるから簡單に言いますが、ちうど太平洋戰争のさ中において、中学校以上の学校において、英語教育は必要がないというようなことに
なつ
たと同様なことが、ただいま高等学校以上大学の間に行われておる。文部省のあるおえらいお役人は、大学高等学校漢文教授連盟の代表者に対して、マツカーサーの指令によ
つて
漢文の方などはどうでもよいのだ、つまり軽く扱
つて
よいのだ、軽く扱うということは、教師の数において、また時間の割当てにおいて
——
ただいま漢文は国語科の中に含まれてお
つて
、一月大体二時間であるそうでありますが、文部省のお役人の中には、マツカーサーの指令を受けて、われわれ書生時代の言葉で言えば漢文、大きく言えば支那学と言いましようか、そういう学科は教えずともよい、あるいはきわめてこれを軽視しているような
——
命令とまでは行かなくても、何かアドバイスを受けて文部省の指導方針がさようなことに
なつ
ておるのでありますか、この点を
伺つて
みたい。
天野貞祐
224
○
天野
国務大臣 マツカーサー元帥からそういうような指令は決してございません。あるいはこういうことが誤り伝えられたのではないかと思います。それは、従来国語漢文と言
つて
いたのを、今は国語科というものの中に漢文も含めているためにそういう誤解が起
つて
来たのではないかと思います。漢文をや
つて
はいけないとか、漢文を粗略にするというような指令などを受けたことは全然ございません。私は元来漢文を非常に尊重している人間で、漢文のために
日本
人の性格がつちかわれて来たことは事実だと思います。今後も尊重して行きたいという
考え
でございます。ただ漢文と普通言
つて
いるものは、これは中国の古典というよりは、私はむしろ
日本
の古典だと思
つて
おります。あのひつくり返して読むのは
日本
の古典だとい
つて
もよい。従
つて
これを国語の中に包括するということ自体は何もさしつかえないのであ
つて
、これを重要視してどういう教科においてやるかということには、まだ多く研究を要するものがあると思
つて
、文部省の
事務
当局によくそれを研究するように今頼んでおります。
庄司一郎
225
○庄司
委員
たいへんけつこうでございます。それらの調査研究をすみやかにされて、やがて中国との和平の時代がすみやかに来ることを念願しているこの場合、数年後において漢文を教える先生がない
——
いわゆる漢文です。いわゆる漢文を教える先生がない、あるいは七言絶句の詩もつくれない、あるいは禪でいえば、最後においてやるあの偈頌なんかもつくれないというようなことがあ
つて
は、まことに嘆かわしいことでありまして、将来中華民国との国文親善の時代において大いに役立つことでありまするから、願わくは今より漢文、支那学等について教え得る実力を持
つた
教師の養成等にも深い関心を持たれて、適当に御善処あらんことを要望してやまないのであります。 最後にもう一点は、義務教育の小学校あるいは中学校等の教師、特に小学校の方に多いのでありますが、最近山間僻地を開拓開墾して、入植者が新しい開墾の村をつく
つて
おられる。従いましてそういうところにはなかなかりつぱな学校ができませんで、俗にいうところの分教場、寺子屋というものしかできていないのであります。ところがそういうところは文部省の御規則では、僻陬地といわれておるそうでありまするが、そういう遠隔の農漁山村あるいは難れ小島、新しい開拓村等に勤務するところの教職員は、中には非常な理想を抱いて喜んで行く教員もあるが、大
部分
は、特に家族の多い者等は、やはり子弟の教育その他の
関係
において、これを喜ばない傾向にある。そこで文部省の御規則によ
つて
、僻陬地の教員に対する特別の勤務手当というような制度ができておるそうでございまして、ただいまは都道
府県
の教育
委員
会あるいは県等に大体おまかせのようであるが、これらの遠隔の地、特に新しく山奥あるいは海拔何千尺という奥地に開墾をして新しい寺子屋を建てた、そういうところに喜んで教員が行けるように、一層特別なる勤務手当と言いましようか、そういうことをぜひ御
考慮
の上、都道
府県
教育
委員
会その他と協議を遂げられて実施を願いたい。何かただいまの文部省の御規則では、国鉄から二十四キロ以上の地あるいは私鉄から十二キロ以上の地、いろいろそういう條項が二條とか八條とかにうたわれておる
関係
上、
地方
の都道
府県
の教育
委員
会が、手当を出したくとも出せない場所が
相当
あるというようなことを本員は聞いておるのであります。こういう
意味
において、かような交通不便な山奥や離れ小島等に勤務されておる教職員の諸君が、願わくはその子弟の教育も十分なしあたうようにしてあげる一端としては、どうしても特別の勤務手当を増額してやらなければならない、さように
考え
ておるのでございまするが、こういう点に対してはいかがでございますか、文部大臣のお
考え
を承りたいと思うのであります。
天野貞祐
226
○
天野
国務大臣 ただいまおつしやいましたことは、私もぜひそうした方がよいと
考え
ております。現在でも僻陬地には手当を出しております。また單式学級と申しまして、一年から六年まで一つ教室で教えるというようなところも、また複式と言いまして、四年以上を一つ教室で教えておるところもみな特別の手当を出しております。しかしその手当が十分だとは言えませんから、そういうのを増額して、そして喜んで有能の士がああいう寺子屋的な、全体の生徒を自分一人で教えるというような、特別なところに教育の興味を持
つて
行かれる人もあるようにすることが、私は非常に望ましいと思い、そういうふうに配慮をいたしたいと
考え
ております。
庄司一郎
227
○庄司
委員
けつこうです。その御方針でなお
予算
措置を通して、
相当
待遇の改善をすみやかに実施されるように御善処を願いたいと思うのであります。 そこで最後にお伺いかたがたひ
とつ
献策したい。それは旧臘
内閣総理大臣
は、官邸に全国の義務教育の校長さん方を総理大臣の名によ
つて
招待をされ、いろいろ教育上に関する懇談会を催されたが、これはたいへんけつこうなことであると思います。そういうことは教育者の社会的地位を向上させるだけでなく、明るい希望を与えるものである。従
つて
文部大臣としてあなたは、総理大臣がああいうことをや
つた
から、おれはどうでもいいというお
考え
を持
つて
はならない。今申し上げた遠隔僻陬の地にあるような分数場や寺子屋の先生でもあなたの官邸に御招待されて、あるいは感謝あるいは激励あるいは慰問されるという御意向がございませんか。あなたは何か大学や高等学校方面には非常に御熱心であるようであるが、義務教育の低学校の方にはあまり手をお出しにならないような傾向が印象づけられておりまするが、総理大臣のおやりに
なつ
たけつこうなことをひ
とつ
まねられて
——
と言
つて
ははなはだ失礼ではありまするが、いいことはまねてもよろしいと思う。私はかような恵まれない、交通不便な僻陬の地に、默々として働いておるところのこの無名の先生方を、文部大臣はすべからく在職中一回くらい御招待なされて、大いに慰安の道、あるいはそういう方々より教育上の研究報告をお聞きなさることがまことにけつこうであると
考え
ておるが、いかがでございますか。
天野貞祐
228
○
天野
国務大臣 私は多年大学にお
つた
ために、私が何か大学に熱心で、義務教育に不熱心のような印象を世間に与えるなら非常に遺憾千万であります。私は就任した際に、まず三つのことをやりたいと言いました。その第一は、義務教育の充実でございます。第二には、育英制度の完成でございます。第三には、学術の振興でございます。大学の充実とかいうことは、私の三大目標の中には入
つて
ないくらいでございます。義務教育は第一に私が掲げたところでございます。また微力のために十分なことはいたしておりませんが、十分義務教育のために努力したいということは、第一に義務教育の充実を掲げたという事実でも御
了承
いただきたいと思います。 私は教育者の地位が社会的に低いということは実に残念です。小学校長というものを社会がほんとうにあがめ見るということにならなければいけない。そういうことはただ言うだけではいけないから、何か実際の方法はないものかとしきりに苦慮いたしておる次第でございます。ただいま仰せられたようなことも一つのことと思い、私も総理大臣の御招待には、たいへんよいこと、だと思
つて
、当時これに参加して、自分の
意見
も述べたくらいでございますから、私も総理大臣のそういう精神にのつと
つて
、今後いたして行きたい
考え
でございます。
庄司一郎
229
○庄司
委員
教育者の地位を社会的に、国家的にこれを顯彰するというお
考え
、まことにけつこうである。ただそれを実現されなければなりません。たとえば文化勲章は、ただ大学を長くや
つた
先生であるとか、あるいは詩をつくる詩人であるとか、あるいは絵を画いて金をもうけた連中だとかいうだけでは、文化勲章の
意味
はない。やはり初等教育あるいは中等教育、大学教育でもけつこうであるが、一生を教育のために奉仕をした方々にも、文化勲章であるとか、あるいはまた藍綬褒章でもけつこうであるから、そういうことをあなたは真剣に
なつ
て実現を願いたい。最後にこのことを献策して私の
質問
を終ります。
小坂善太郎
230
○
小坂委員長
天野
公義君。
天野公義
231
○
天野
(公)
委員
先ほどに続きまして、第二の問題といたしまして、現在問題に
なつ
ております炭労ストの現状とその見通しについてお伺いいたしたいと思います。
保利茂
232
○保利国務大臣 昨年の十二月で期限に
なつ
ておりました炭鉱従業員の賃金協定の更改にあたりまして、円滑の妥結を得ずして、去る七日から三井ほか大手四社のストライキが行われた。十三日にさらに九州の九社が参画するという現状で、炭労参加二十八万の従業員の中で約二十万のストライキが今日続行されておる。今回のストライキは、先申しますように、純然たる賃金協定、賃金問題をめぐ
つて
の純経済闘争の形をも
つて
行われておりますわけで、しかも労使当事者ともに、何とか相互の交渉によ
つて
解決点を発見して行きたいという非常な熱意に燃えて努力をしておられる。その努力がだんだん進展いたして参りまして、かつまた政府といたしましても、基幹産業と言われます石炭業が、かような状態で停滯をいたしておるということは、まことに遺憾に存じまして、すみやかに団体交渉の妥結を得るようにその自主解決を望みまして、十三日に労使双方に対して、政府の
考え
としてすみやかに最後的な団体交渉を持たれて自主解決をはか
つて
いただきたいという申入れをいたしたわけであります。もとより重大なる産業でございますから、労働省といたしましても、争議の平和解決機関であります労働
委員
会といたしましても、この推移に対して深甚の注意を払
つて
おりまして、団体交渉をも
つて
解決しあたわずというような状態に処するためにも、用意をいたしているわけでございますが、今日ただいまの段階におきましては、おそらく最後的な交渉の段階に入
つて
いる。しかも相互に、あくまで相互の交渉によ
つて
事態を解決いたしたいという希望と熱意を持
つて
当
つて
おられますから、おそらくすみやかに自主解決がはかられるものと、ただいまのところさように期待をいたしておる次第でございます。
天野公義
233
○
天野
(公)
委員
この問題は重要な問題でありまして、
日本
産業に及ぼす影響も非常に大きなものと思います。労働省といたしましては、労使双方の自主的な解決にま
つて
おられるようでありますが、できるだけ早くこの問題が円満妥結に行きますように、格段の御努力のほどをお願いしたいと思うわけであります。 次に、先般本
委員
会で川崎
委員
からいろいろ御
質疑
があ
つた
ところから労働大臣のお
考え
を推察いたしますると、雇用の問題の解決には、大体において
自立経済
を達成することによ
つて
、雇用問題を解決するというような大臣のお
考え
であるようでございます。根本的には私もそのように
考え
ておるものでございますが、しかしながらこの失業問題の解決ということは非常に大きな問題でございますので、重ねて大臣の御見解を伺いたいのでございますが、
自立経済
審議
会の試案によりますると、
昭和
二十五年を一〇〇といたしますと、二十六年、七年、八年と行くに従
つて
、失業者はずつと増して行くというような統計に
なつ
ておるのでございます。二十六
年度
が一〇四・九%、二十七
年度
が一一〇%、二十八
年度
に
なつ
て、ちよつと減
つて
一○二%というようなぐあいでございまして、また人口の増加率から見ますと、失業者というものはだんだんふえて行くような傾向にあるように統計が出ておるのでございまするが、そのほかに潜在失業者の問題も大きな問題としてその背景にあるわけでございます。そこで労働大臣としては、
自立経済
に依存して雇用問題の解決に当られるのも当然でございましようが、さらに労働大臣としてこの失業問題の解決になお一層御努力をされる必要があると思うのでございまするが、この点についての大臣の御見解を承りたいと思います。
保利茂
234
○保利国務大臣 失業問題が、
わが国
におきまして非常に複雑かつ深刻な様相を呈しておりますのは、申すまでもなく的確に捕捉したがい不完全失業者と申しますが、都市におきましても、
地方
におきましても、この不完全失業者が
相当
数背景をなしておるというところに、この失業問題の複雑性と深刻性があると思うのであります。根本の
考え方
としましては、要するに雇用の源泉である
日本
の産業それ自体が充実され、産業規模が拡大されて行くということでなければ、根本的な解決ははかられない。完全雇用完全雇用という声を非常にかけられるけれども、結局何と申しましても、雇用の源である産業の充実と規模の拡大に期待を持つ以外には、私は解決の道はないと思う。同時に失業問題の背景をなします、先ほど申しました農村等におきまする過剰労力と申しますか、不完全失業者と申しますが、この農村における過剰労力なり、不完全失業者の問題が、農村経済の充実発展によ
つて
完全の形に安定して行くと
——
日本
の失業問題の場合には、私は特に農村の経済の面から来る影響が非常に大きいと思うのであります。そういう
意味
からいたしまして、
自立経済
の一応の試案ができておりますが、この自立計画の達成で、失業問題の背景をなします不完全失業者の就業の安定を期待することができるのではないか、むろんこれができなければならない、かように
考え
ておるわけであります。この不完全失業者の就業安定があ
つて
初めて雇用安定の第一歩を踏み出すことになる、かように
考え
ております。最近の
情勢
によりますと、
自立経済
計画の一試案として推定せられておりますところによりますと、雇用
情勢
の見通しは、先ほどお示しのような
数字
を示しておりますけれども、最近のいわゆる完全失業者の統計を見ましても、八月には五十五万円であ
つた
ものが、十一月には三十七万に減
つて
参
つて
おる。全体の雇用の状況を見ますと、八月ごろから全般的にはもち合い、あるいは紡織工業、金属工業、運輸業、建設業等においては、堅実な足どりをも
つて
雇用の増大を見ておるわけでございまして、この上失業者がどんどんふえて行くという統計は、最近の統計をも
つて
見ますとどこにも現われていない。八月以降は漸次改善の方向に向
つて
いるということを申し上げてさしつかえなかろうと存じます。なお何と申しましても、年々新たに追加せられて参ります労働力の吸收、少くも年々五、六十万の新たな労働力の吸收、そのことをかかえておりますから、さらに
日本
の産業の規模の拡大充実を見ずして失業問題の全般の解決を得るということは、事実不可能のことであ
つて
、これは一歩々々
日本
の経済の立て直しととも拡充をして改善せられて行くべきである、かように
考え
ております。
天野公義
235
○
天野
(公)
委員
次に失業対策
予算
に関連した問題ですが、昨
年度
は失業応急
事業費
として五十五億計上されておるのに、今度は七十七億五千万円計上されて、非常に増額を見たわけでありまして、この点につきまして、労働大臣の御努力に敬意を表する次第でございますが、この応急失業対策でいろいろ仕事をや
つて
おる部面を見ますと、事情はありましようけれども、仕事の能率の上
つて
いない部面もたくさん見られるわけであります。すなわち労働力のある者も、ない者も同一賃金、働いても働かなくても同一賃金であるというところに、労働力の低下というか、非能率化ということが生じて来ると思うのでございます。しかも
国家予算
を七十七億も投じておる大きな事業であるのに、これを有効適切に使えないということは、非常に
国家予算
の浪費でもあるし、遺憾千万だと思う次第でございます。そこでこの
事業費
を有効適切に使用するために、賃金をある
程度
能率給にかえるお
考え
はないか。またそのほかにこの事業を有効適切にや
つて
行く御方策があるとすれば、それを承れれば幸いだと思う次第であります。
保利茂
236
○保利国務大臣 確かに御指摘のように、国費の浪費ではないかと
非難
をせられるような向きも、私は決して否定いたすものではございませんけれども、またできればお話のように能率給的な
考え
をも
つて
この事業が経済的に、効率的に、建設的に、さらに有効的に用いられるようにいたしたいと思うのでございますが、この失業対策事業による賃金の扱い方は、御承知のように緊急失業対策法によ
つて
、その同一地域の同一職種の賃金の一〇%ないし二〇%を下まわ
つて
支給するという建前に
なつ
ておりますので、その範囲内においては、御
意見
のような趣意をも
つて
操作もできると思いますから、その趣意で御
意見
は十分伺わせていただきたい、かように
考え
ます。
天野公義
237
○
天野
(公)
委員
政府当局では、今度いわゆる
地方
公労法というものを国会に提出されるようでございますが、もし提出するとすれば、
地方
公労法に含まれる対象をどうするか。すなわち
地方
の公営事業に
関係
する者、及び單純労務も含まれるか。業態の違
つた
二種類のものが同一法律に含まれるものであるか。それともこれは別途に扱われるようになるのであるか、この点を伺いたいと思います。
保利茂
238
○保利国務大臣
地方
公務員法の
審議
をいたしました機会に申し上げておりますように、
地方団体
の営みます公営企業に対しましては、公営企業組織法と申しますか、その法案とにらみ合せて労働
関係
法を制定御
審議
願いたいという方針をも
つて
、ただいま準備をいたしておりますので、これはこの国会中に大体御
審議
を願える段階に至るではなかろうか。そしてその問題とあわせて、いわゆる公営企業の事業に含まれざるところの單純労務者の労働
関係
についてはどう扱うかという御
質問
でございますが、この分につきましては、一面において国家公務員法との
関係
がありますし、及ぶところが
相当
広汎にわた
つて
おりますから、十分の検討を盡さずして法律をつくるというようなことは、なるべく避けなければならぬじやないか、十分の用意が整
つた
上でこの措置を講ずることが妥当であろう。ただいま検討をいたしておりますけれども、予言はできませんが、おそらくこの国会中にそれに関する法案の御
審議
を願うということは困難ではなかろうか、かように
考え
ております。
天野公義
239
○
天野
(公)
委員
そういたしますと、今度の国会には、いわゆる
地方
公労法の中に單純労務は含まれないというふうに了解してさしつかえありませんか。
保利茂
240
○保利国務大臣 公営企業労働
関係
法と申しますか、かりにそう名前をつけますと、その中には單純労務の
関係
は含まない、かように御了解を願いたい。
小坂善太郎
241
○
小坂委員長
関連
質問
を許可いたします。久野忠治君。
久野忠治
242
○久野
委員
先ほどの
天野
君の失業対策
事業費
の運営の問題に関連してお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、この事業の運営上とかくの批判がなされておりまして、先般の
公聽会
においてもこれは指摘されたところであります。この失業対策費の
予算
の流用にあた
つて
、この事業を運営する場合に明確性を欠いているのではないか、私はさように
解釈
するものであります。すなわちこの
事業費
は、單に失業者を救済すれば事足りるものである、失業者を救済すればそれで目的は達せられるのだという
解釈
をも
つて
予算
を流用されるのか、あるいは一定の事業計画をお立てに
なつ
て、その事業分量を完遂するためには、これだけの
予算
がいるのだというふうな計画性をも
つて
や
つて
おいでになるか、こういう点が非常に不明確なところからこうした問題が起きて来るのでないかと思うのであります。特に公共事業が各所において行われておりまして、しかも同一箇所において失業対策事業と一般公共土木事業とが運営されております場合に、その間労働者の賃金その他の労働條件において非常に相違があるというようなことが、
地方公共団体
でもとかくの批判を生んでいるわけであります。そういう
意味
合いから、私の希望を申し上げますならば、農業土木事業あるいは災害復旧事業等にこの
予算
を流用されまして、真に再生産に有効適切なる事業分野を開くということがこの際必要ではないか、さように
考え
る一人でありまするが、こうした点について大臣の御所見を伺いたいと思います。
保利茂
243
○保利国務大臣
考え方
としては全然同感でございまして、ぜひそういうふうにやらなければならぬ。ただ残念なことには、失業者の多いところと、事業
施行
を要するところが必ずしも一致しない。しかもこれは市町村なり、あるいは
府県
の公共団体で事業を主宰されておるのでありまして、むろん
相当
の
地方
負担
を伴うことでありますから、事業主体におきましても、その事業を計画せられるときには、できるだけ経済的な、建設的な種目を選ばれておるということはわかりますけれども、しかしまたもう少し何とかした仕事を計画したらよかりそうなものだと見られる点も
——
これは失業者の分布状況から見ましても、どうもやむを得ない場合もあろうかと存じます。しかしながらこの失業対策事業は非常に貴重な国費を
相当
大きく使
つて
おることでありますから、御趣意のような点において十分に注意して参りたい。なおこの事業計画の遂行と申しますか、実施にあたりましては、ひとり労働省のみならず、安本と協議をいたしてその実施をいたすようにいたしておりますから、御
意見
の点はこの事業の実施に十分生かして参りたいと存じます。
久野忠治
244
○久野
委員
ただいまの大臣の御答弁まことに満足するものでありますが、
地方
によりますると、
地方公共団体
の建設官庁にこの事業が委託されております。ところが直接の責任官庁でないために、ややともしますると投げやりに
予算
が流用されるという部面が非常に多いと思うのであります。そのために一部労働ボスの食いものにされたり、あるいは惡徳官吏の浮貸しの対象と
なつ
ておるというようなうわさをまま聞くのであります。そうした
意味
合いから、ぜひひ
とつ
労働省においても御留意をいただきたいことは、
地方
の建設官庁にその事業を委託する場合には、一定の事業分野というものをきめて、そうしてこの
予算
を御流用願うということが必要ではないか、私はさように
考え
る一人でありますが、そうした面において、各事業官庁との御折衝、あるいはそうした事業計画をお立てに
なつ
ておいでになるかどうかという点をお尋ねしたいと思います。
保利茂
245
○保利国務大臣 先ほど申しますように、この失業対策事業は、市町村もしくは
府県
が計画を立て、その
地方公共団体
が主体と
なつ
てその事業を営まれておるわけであります。先ほどのお話のように、もしただすべきところがあれば、これは十分ただして参らなければならぬと思うのでありますけれども、委託ではございませんので、
地方公共団体
が主体と
なつ
て営む事業でございますから、どうかそういうふうに御
了承
願います。
天野公義
246
○
天野
(公)
委員
最後に、退職金の問題についてお伺いしたいと思うのであります。現在の
税制
で参りますと、納入時期によ
つて
、退職金の
税金
に非常に差が出て来るばかりでなくて、金の運用の面でも
相当
差が出て来るわけであります。その点については、大臣よく御承知であると思いますので、この点ぜひとも調整というか、何らかの措置が必要であろうと思うわけでございます。労働者保護の見地から、労働大臣にこの退職金の
税金
に対するお
考え
をお伺いしたいと思います。
保利茂
247
○保利国務大臣
勤労者
の退職金に対して
相当
高率の
税金
が課せられておるということは、私は非常に遺憾だと思
つて
おりまして、全部退職金に対して免税をするということは困難ではありましても、退職金額によりまして、そこにあるいは二十万円とか三十万円とかいう
控除
ぐらいは当然さるべきではないか。個人としてはそう
考え
ておりまして、政府内部におきましても、この問題には努力をいたしておるわけであります。御協力をいただきまして
——
別外は、ございましても、多くの場合、退職金は
勤労者
の余生をその上に託する最終的の
所得
でございますから、これに高率の
課税
をするということは、理由はむろん十分あることと存じますけれども、なるべく早い時期に緩和せられるように措置しなければならぬじやないか。個人としてはま
つた
く御所見に同感であります。
天野公義
248
○
天野
(公)
委員
この点について大臣の格段の御努力をお願い申し上げる次第であります。これで
質疑
を終ります。
小坂善太郎
249
○
小坂委員長
本日はこの
程度
にとどめまして、明日は午前十時より
公聽会
を開会いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時五十七分散会