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横田委員 実に気の長い話ですな。彌勒菩薩が五十六億三千万年したらお釈迦様の言われたように衆生を救済できると
言つた、そういう大聖人も大昔はあ
つたのです。あなたの言うことはそれに似ている。あなたも大聖人の中に入りますよ。しかし早くや
つてもらわぬと困る。
日本はか
つてはよいときもあ
つたのです。それはずつと前のことではありません。われわれにはやはり
一つの目途がありませんと、私が国へ帰りましたときに、国の学校の先生
たちに
天野さんという文部大臣は、現在の閣僚中最も誠実な愛国心の持主で、君
たちのこともよく
考えているからもう少しがまんしてくれということが言えない。予算の説明ができないのです。予算面から見ましたときに満足してもらう結果にな
つていない。ただこれを満足してもらうためには、
天野さんという人格、誠実さ、それが吉田さんに買われたのでしようが、それを説明する以外に方法がない。だからある時期というものをある
程度急いできめておいてもらわぬと困るのです。急げないという
ところを急いでくれというと、あなたは品が悪いといわれるでしようが、大体私
たちはあなた方の持
つている愛国心はきらいなのです。なぜきらいかというと、
満州事変のときも愛国心を言われた。そうして満州は生命線だといわれた。実際満州でやられた愛国心の実態をわれわれは見ています。聞いています。そうしたらうそだ
つた。満州には
日本人より安い
労働者がある。
日本の
労働者より安い賃金で雇える労働力がある。そこへ工場を建ててもうけられる。もうけた
ところに銀行が置いてある。このもうけを銀行に置いておる。その金と工場と安い労働力を守るのがいわゆる資本家の説く愛国心だ
つたのです。私はこう思う。さればこそ
日本においての愛国心、そうして
日本の国土、この土地というものを
考えたときに、この土地の内容を言うならば、愛国心というような空虚なことを言わないでも
日本人は期せずして守るのです。しかし今日
日本の工場の
労働者にして、一部の人は別ですが、食えない
労働者は毎日工場に通
つております。工場を守
つております。賃金という形において工場を守
つておるのです。
農民はあなたが教育勅語を読んでやると言
つても決してあなたの
ところに来ません。三月までに麦に肥料をやらなければならないと言
つて田に行きますが、これは愛国心の発露です。今まで言われた愛国心は内容のない空虚なものであ
つて、資本家だけが、地主だけが得をした。特権階級が人民を抑圧した。そうしておのれのほしいままの暮しをした。この権益を守る内容がいわゆる愛国心であ
つた、私はこう思う。だから
天野文部大臣もその点をよく
考慮していただいて、いたずらに学校の子供
たちに、この誤解されやすい愛国心というものを混同してつぎ込まないようにしてもらいたい。私があなたに何ぼ聞いてお
つてもあなた
たちの説く愛国心というものはわからない。世の中には、私
どもより未来はもつともつと発展するだろうと思うが、今は幼い子供
たちがおる。その子供におとなの私
たちがわからないような愛国心を言われると、この子供
たちは何もかもわからず、ただとにかく人を殺したらいい。よそに行
つたら、旅の恥はかき捨てだ、他国で強盗しろとか、金をと
つて来いとかいうことになる。この点をよく御注意いただきたい。私は
天野文部大臣にこれ以上
質問しませんが、だから特に愛国心というものはどんなに注意しても、
日本の国、世界の国を誤るものである、偏狭なものである。ちようど
日本の神国と同じものだ。耶蘇の神は、隣の人を愛せと
言つたが、
日本の神様は自分以外の仏など川の中にほうり込めというので、これが
日本人の神様であ
つた。そういうややこしい愛国心を々する前に、
天野文相は哲人的な才能をも
つて、もつと
日本にぴ
つたり合う
ところの
経済政策に重点を置いていただきたい。それを文教
政策の中心にしていただきたい。この点だけを申し上げておきます。