○林百郎君 私は、ただいま上程にな
つております七
法案について、
共産党を代表して
反対の
意見を申し上げます。
まず第一に、
港湾法の一部を
改正する
法律案を除いた他の大案についてでありますが、これにつきましては、朝鮮動乱に伴
つて、特需の輸送あるいは軍需品の輸送の活発化からして、あらゆる輸送機関がきわめて重要視されるように
なつたことは、
諸君御存じの
通りであります。運送機関の中心であるところの貨車については、全国的に軍需品あるいは特需品の輸送にまわされて非常な不足を来しておることも、
諸君、いろいろな陳情によ
つて御存じだと思うのであります。特に例をあげますと、石炭、これは
産業の動力源でありますけれども、この石炭生産の五四・五%、ほとんど半分を占めておる九州におきましては、この石炭の輸送に対して、貨車の不足のために非常な大きな問題が起きておのであります。このような貨車の不足が急激に増加しておる際には、トラツクに対する輸送に重要な
関心が拂われ、貨車輸送がトラツク輸送に切りかえられるという問題は当然考えられるところであります。本来、軍需品の輸送のために、国内のわれわれの
生活に欠くべからざる物資の輸送が非常に困難な
状態になるということは遺憾な点であります。
本案も、こうした不幸な
状態からして、やむを得ず出て来た
法案とは思うのであります。ところが、この
法案につきましては、われわれとしては次の二点について
反対の意を表するのであります。
第一は、この
法案によ
つて九州の輸送業者が非常に経営上困難を来して、大事業に統一される可能性があるのであります。この
法案の第二十一條を見ますと、これには私的独占禁止法の通用が除外されておるのであります。こうして、中小の輸送事業を大きな事業が吸収して行くという形が明らかに出ておるのであります。どうしてこの大きな事業、たとえば日通というような大きな運送事業が中小の運送事業を吸收あるいは合併して行くかといいますと、大体トラツク輸送の事業の運賃を調べてみますと、近距離ほど採算が合
つておるのであります。たとえば白河—青森間、百六十八キロメートルのこの輸送についは、国鉄の運賃と日通の運賃を比較してみますと、国鉄では二百五十円かかるのだが、日通では三百三十円要するのであります。また仙台—青森間、四百七十五キロメートルでありますが、この長距離になりますと、国鉄の運賃は三百二十円で済むのでありますが、日通は七百五十円を要しておるのであります。こうして、大きな運送業者も、遠距離では大分採算がとれないのであります。ところが、仙台—平間、百七十キロメートルになりますと、大分これが近づいて参りまして、国鉄運賃二百五十円、日通運賃三百二十円、さらに仙台—山形間、七十六キロメートルになりますると、大体国鉄運賃が二百円かかるところが、日通が二百五円で、近距離になるほど採算が合
つて来るのであります。従
つて、日通その他の大きな運送事業家としては、採算に合う小運送企業を順次吸収して行
つて、遠距離の赤字を近距離の運送によ
つて補填して行くという方針が立てられて来たのであります。
これに基いて本
法案を調べてみますと、大体
免許基準、あるいは定額制、あるいは登録制、あるいは運転手の資格、こういうような点で、非常に厳重な規格が設けられて参るのであります。大きな事業家は、こうした
基準に合うのでありますけれども、小さい企業家は、この
免許基準、定額制、登録制、運転手の資格等の嚴重な條件というようなものに、つい合致することができなくな
つて、犠牲になるような條文がたくさんできておるのであります。たとえば登録制、定額制等を調べてみますと、車両の
基準が
一定にきめられておりまして、古い車を
廃止しなければならない、また運賃が定額制で
決定されまして、いかに採算が合わなくても、その定額制でやらなければならないというような
状態が生じて来るのであります。従
つて、古い車を廃して新しい車にする力を持
つている大きな企業、あるいは定額制で耐え得るような大きな企業が、これらの條件に耐えられない小企業を吸収して行
つて、採算の合う近距離の事業を大会社が吸収して行くという方向が出て来ておるのであります。こうして、結局この
法案は中小の運送企業を犠牲にして行くという点で、第一にわれわれは
反対するものであります。
それから第二は、七十條等にありますが、運輸大臣の権限が非常に強化されまして、こうした統制された大きな事業に、運輸大臣が事業計画の改善変更等の行政命令を発動する権限が與えられることによ
つて、
政府の統制力が非常に強化されて来たのであります。このことは、事業の自由性を
政府の行政命令によ
つて束縛すると同時に、将来の
日本の国の万一の場合に備える戦時的な運輸業、あるいは戦時的な運送業に切りかえるということが、ここに含まれておるのであります。これを第二点としてわれわれは
反対しておるのであります。
諸君、御存じの
通りに、実は昭和二十六年五月二日、社団法人
日本乗合自動車協会、これは会長が自由党の幹事長の佐藤榮作氏であります。この佐藤榮作氏が会長をしておる
日本兼合自動車協会から、次のようなお願いが出て来ておるのであります。そのお願いを読んでみますと「
道路運送法案中修正希望事項に関する件」とありまして、目下御
審議中の
道路運送法案は公共機関たるバス事業の助成
発達を期する上において画期的の重要
法案であると信じます従
つて業界の
関心は今日この一点に集中し、本会としても本
法案に対する輿論の帰趨を知るために数次に亘りこれが
研究会を開き愼重に
検討を重ねてまいりました。
その結果別冊「
道路運送法案中の修正希望事項」のよう修正方を要請することを
決議いたしました。右は今後業界の運命を托する重要
法案であり、
原案のままで通過することは業者多年の体験からみて到底忍び得ない処でありますので敢て威重を托し陳情懇願いたす次第であります。何卒われわれの切なる衷情を御汲取りの上宜敷御考慮をいただくよう御願いいたします。自由党の幹事長佐藤榮作氏と出ておるのであります。(
発言する者多し)もちろんこれは、社団法人二本乗合自動車協会の佐瞬榮作氏であります。要するに、業界をあげてこの
法案に
反対しておるのであります。そうしてまた厖大な修正案が出されたのでありますが、この修正案は一顧も顧みられなかつたという点であります。この点について、われわれは業者の代表としても
反対しなければならないと思うのであります。
その次に
港湾法の一部を
改正する
法律案についてでありますが、
諸君御存じの
通りに、この
港湾法が制定されましたのは、わずか一年前であります。しかるに、今これを
改正しなければならなく
なつたという必要がどこにあるかと申しますと、実はこの港湾が、最近非常に軍需的な方面に
利用されておるのであります。神戸、横浜等の
日本の国の重要な港湾が、はとんど朝鮮動乱のために関係方面によ
つて利用されておることは明らかであります。ほとんど岸壁の━━━━━━━よ
つて使用されておるのであります。このために民間の輸送は非常に困難に陥り、それのみか、港湾労働者は三十六時間も四十八時間以上も交代制による非常な労働強化が行われまして、三力三十日には、大阪の港湾労働者が大きなストライキまで起しているような
状態であります。こうした
状態のもとにこの
法案を見ますと、特定な重要港湾の
施設に対しては、
国家の補助費として十分の十あるいは十分の七・五の国庫負担を認めるというのであります。これが
法案の表面では、一般公衆の利益のためと書いてありますけれども、先ほど申しました
通りに、重要な港湾の八割というものがほとんど関係方面に
利用されておることは、否定できない事実であります。ですから、表面は一般公衆の利益とあるけれども、実際は━━━━━━━━━重要港湾の十分の十あるいは十分の七。五を国庫で負担するとうことは、当然一で負担すべき費用われわれ
国民の負担に転嫁されておるという点であります、われわれは、こうした———ために使おれる費用を、われわれ
国民の血税でまかなうような本
法案については、断固
反対するものであります。
以上をも
つて、私はただいま上程に、な
つております七
法案に対して
反対の
意見を表明するものであります。
(
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