○岡良一君 私は、社会党の立場から、ただいま上程されましたる
生活保護法、
兒童福祉法並びに
身体障害者福祉法の今次の
改正に対して賛意を表するものであります。しかしながら、この三つの
法律案は、将来にわれわれが大きな期待を寄せておりまする
社会保障制度そのものの大きな四本柱の三本でありまして、この重要性にかんがみまして、われわれは、この
法案の運営に対して、わが党の立場から、以下希望を付したいと思うのであります。
その第一点は、これら三法の運営の民主化及び
財政についての責任ある裏づけを要求いたしたいのであります。現在は、
福祉主事あるいは
福祉司というものがこの
制度の運営の第一線に当ることにな
つておりまするが、皆さん方も御存じのように、長い伝統と、ゆたかな経験を持
つておるところの民生
委員あるいは
兒童委員が二次的な、副次的な役割を務めることに相な
つております。しかしながら、彼ら民生
委員や
兒童委員の、ゆたかな、伝統のある、しかも多大の犠牲を拂
つて民生の
福祉のために努力して参りましたところのこの経験を十二分に尊重いたしまして、今度の
法律改正が、
福祉行政をいやましに官僚的な偏向に導くことのないように、われわれは衷心より希望せざるを得ないのであります。
なお、さらには、
生活保護法の扶助額にいたしましても、また
兒童福祉の
措置費にいたしましても、その他各般の
福祉施設にいたしましても、今日のわが国の現状はきわめて寥々たるものでありまして、その
福祉比率は、まことにわれわれが言葉に出して言うのもはずかしいくらいであります。そういうわけで、どうか今後、特に今日社会の重大な問題とな
つておりますところの養老
施設、母子寮、あるいは
身体障害者の職業補導と
生活安定を兼ねた訓育
施設等においては、とりあえず緊急の重要な課題でありまするが、ぜひとも
政府は、この問題の解決に対して責任ある
措置を講じていただきたいのであります。
さらに私は、この機会に大蔵当局の猛省を促したいのであります。それは、
兒童福祉法の
措置費が、現在はいわゆる
財政平衡交付金のもとに、一括
都道府県や
市町村に流されておりまするが、その結果といたしまして、これを受取つた
都道府県や
市町村においては、これが本来の
兒童福祉のために役に立たないで、あるいは橋に化けたり、道路に化けてしま
つておるのであります。せつかく
兒童憲章をつくりながら、こういう取扱いのために、国のせつかくの親心ある
措置費というものが、あるいは道路や橋梁に化けるということでは、決して
兒童福祉の本来の
目的を果すことはできません。われわれは、あくまでもこれは法本来の趣旨を生かす意味において、従前
通り国庫
補助の姿において一貫いたしまして、真に広く
地方における
兒童福祉の事業のために役に立つように、これはあくまでも
改正をいたしていただきたいと思うのであります。
また日本の大蔵省は、ともすればギブ・アンド・テークのルールに立
つて、厚生行政のための
財政支出は、どう申しましても非常にまま子扱いにな
つております。憲法でも明らかなように、
国民の文化的な、健康な最低
生活の保障は国の当然の
義務でありますから、こうした支出というものは、赤字、黒字というような概念をも
つて論ずべきものではありません。初めから赤字を覚悟して大いにふんば
つていただかなければならないのであります。
イギリスの
社会保障制度は、あの徹底せる医療国営を断行いたしておりまするが、昨
年度の当初
予算は一億六千万ポンド、そのうち一億二千万ポンドは国庫が
補助いたしております。しかもその財源は、所得税の徹底せる高率累進課税を中心にまかな
つておるのであります。しかるに、わが国においては、医療保險
財政が赤字になりますると、あるいは保險料を引上げたり、一部
負担を
増加したり、あるいは医療
内容に制限を加えたり、あるいは医療報酬を医師に支拂います場合にこれを引下げておる。こういうようなことでは、——先般大蔵
大臣は、
予算委員会において、所得税の累進課税を考慮すると申されておりまするが、われわれは、さらにこれに加えて、特殊需要や緊急調達の利得をも捕捉しながら、これらを財源として、
国民生活安定のために、あるいは
社会保障の財源として導入せられんことを強く要求いたしたいのであります。
社会保障とは、資本主義的な観念に基いて保險を行うものではないのであります。保險料の収入と給付費の支拂いの均衡の上に運営するものではなく、あくまでも憲法に定められたる健康で文化的な
国民の
生活を、
政府の責任において保障するという決意を持たれんことを大蔵省当局に要求してやまないのであります。
さらにこの機会に要望したいことは、
生活保護法に関連いたしまして、現在のところ、いま一歩で
本法の適用者に転落せんとする階層が、すでに七十万世帯を越えておるのであります。これらの、いわゆるボーダー・ラインの階層に対しまして、
生活資金の供給をや
つていただきたい。相かわらず露骨な資本蓄積の方式が強化され、特需も緊急調達も、勤労大衆の犠牲において、実質的にはソーシヤル・ダンピングの形において遂行され、加うるに電気料金が七割上る、あるいは主食が場合によ
つては五割も上るかもしれない、こういうような
状況では、大衆の
生活というものが今後ますます窮乏のどん底に追い込められることは必至であります。この緊急の事態に対し、われわれは、
生活保護法の補完的
措置として、
政府はよろしくこういうボーダー・ラインの階層、また賃金遅欠配の労働者に対しまして、物件の担保、あるいは対人信用の二本建による
生活資金保障の
制度を確立すべきことを強く要求したいのであります。
さらに私は、この三法を含む
社会保障制度そのものの実現について、
政府の責任ある積極的
措置を要求いたさなくてはなりません。
さきに
社会保障制度審議会の勧告が発せられまするや、
政府は、当時林国務
大臣を責任者として、
関係閣僚を加えて懇談会をつくり、これが実施の準備に当るべき旨を言明せられたのであります。しかるに、懇談会の幹事役が、実に
関係各省の次官にゆだねられておつた。
審議会における勧告
審議の過程について見ましても、この
審議会の勧告成文を獲得する上において最も大きな抵抗を示したるものは、この各省次官によるところの官庁のセクシヨナリズムにあつたことは、天下周知の事実であります。従いまして、
関係閣僚懇談会が、この大きな抵抗力を示したところの各省次官をプロモーターとして使用するということは、明らかに
社会保障制度そのものを、
社会保障制度審議会発足以前に引きもどしたものといわなくてはなりません。心ある者は、この実情に対して心から痛憤をいたしたのでありますが、はたしてわれわれの予期せるごとく、今日
関係閣僚懇談会はいずれにありや、まつたく有名無実どころか、雲散霧消いたしておるのであります。これはまさしく、今日
国民があげて待望しつつある
社会保障の実現に対して
吉田内閣が何らの誠意もないことを暴露するものであり、これはまた実に大衆の
生活安定そのものに、まつこうから弓を引かんとするものであります。われわれはここに、
昭和二十七
年度予算はもとより、来るべき追加補正の
予算においても、
社会保障の実現に必要なる
予算的
措置を講ぜられんことを強く要求するものであります。
最後に私は、リツジウエイ声明に関連して
政府に要求したい。今日、衆参
両院においては、遺家族、傷痍軍人等、戰争犠牲者の援護に、小
委員会まで設けて、砕心して努力を拂
つております。ところが、これが実現を困難にした
一つの大きな隘路は、
昭和二十一年二月二十七日附の連合軍司令官覚書、すなわち日本における
生活困窮者に対しては無差別平等なる救済を行うべきものであるという趣旨の解釈であつたのであります。さらにまた、
社会保障制度審議会の昨年七月発表されたる試案要綱に加えられましたる
関係方面の批判ないし意見、すなわちその
内容は、この試案要綱の
内容が、あるいは社会主義的であるとか、またわが国の
財政規模よりして、いささか困難であろうというふうな批判が下されておつたのであります。しかしながら、この
審議会勧告は、各党代表参画のもとに策定せられたものであり、またその実施に要する七百余億の支出も、今日のわが国の
財政規模よりして決して困難でないことは、当時の会長であり、わが国の
財政学の権威であるところの大内会長みずからが言明されておつたのであります。
政府が、今日リツジウエイ声明に基いて、各種の政令に対しても、わが国の現状に即したる
修正を行わんとしておるのでありますが、この諮問
委員会は、今日厚生行政上最も重要なる戰争犠牲者の援護あるいは
社会保障制度の実現のためには、よろしく如上の覚書あるいは批判、意見等をも取上げて、
関係方面と強力に折衝せられまして、戰争犠牲者の援護並びに
社会保障制度実現のための道を開いていただきたいのであります。
以上、われわれは、社会党の主張といたしまして、
予算上の希望を付しまして
本案に
賛成をいたす次第であります。(
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