○石野久男君 私は、労働者農民党を代表して、ただいま上程にな
つております
日本国有鉄道法の一部を
改正する
法律案に絶対
反対をするものでございます。
第三臨時
国会において、長年にわた
つて国営
事業として経営を続けて来た国有鉄道
事業を、公共企業体に
法律改正行つたのであります。その際われわれは、明治三十年以来のわが国の鉄道の歩んで来た歴史にかんがみ、また国民すべての共有財産である鉄道が、独立採算の名のもとに、その公共性が、うとんぜられ、経営は一部の独占資本のために壟断され、あるいはまた鉄道に対する外資導入の地ならし工作になることをおそれて、強く
反対したのであります。
昭和二十四年の六月に鉄道公社が発足してから僅々二箇年に満たない今日、
自由党の
諸君は、早くも日本国有鉄道の業務の運営に関する責任体制を明確にし、あわせてその業務の適正な運営をはかるために本
改正法案を
提出するに
至つたのでありますが、私どもは、以下述べる三つの点から、本
改正法案に対して絶対
反対をするものでございます。
第一の点は、本法を
改正しなければならない
理由、その根拠が薄弱であるという点であります。国鉄は、一昨年公共企業体として発足以来、長い間の国鉄
事業にからんでいた政治的、行政的ないろいろな干渉から、経営の自主性がようやく確立せられて、人事に関する問題においても、企業体としての自主性が打出されるようにな
つていたとわれわれは信じておるのであります。過去二箇年間にわた
つて、われわれの痛感した国鉄経営上の欠点と申しまするものは、それは財政的、予算的拘束があまりにも強く、
従つて経営上のいろいろな難点が、特に労働問題の不明朗な強圧等が、ここから発生して来ていたことであると存ずるのでございます。戰後苦難の中から今日の国鉄の復興をかち得たのは、一にかか
つて国鉄従業員
諸君の、見るに忍びない労働強化によ
つて築き上げられて来たものであるということを、われわれは銘記しなければならないと存ずるのであります。
公共企業体を主張した
自由党の
諸君が、真に国鉄を公共企業体として、独立採算制と公共性の満足なる調和をはかり、かつこれを育成しようとする一片の誠意を持
つておるならば、本法
改正の方向は、おのずから、むしろこの
改正法案とは全然違つた面において、少くともその財政的な自主性の確立に意を注がなければならなかつたはずであります。しかるに、本法の
改正は、あとにも申し述べるように、その考え方において公社制の本旨に逆行、これを抹殺しようとするものであります。
法令の
改正は朝令暮改であ
つてはならないこと、言をまたないのでありまするが、特にこの国鉄法
改正の趣意にかんがみて、公社制の運営は、いましばらく、これが整備増強のために、親心をも
つて、
自由党の
諸君はもとより、立法部は見守らなければならない時期であるのではないかとわれわれは考えるのであります。しかるに、法を
改正する当事者であつた
自由党の
諸君が、このことに思いをいたすことなく、
趣旨一貫しないところの態度をも
つて法を
改正することは、あまりにも軽率であるのでありまして、それがもし軽率でないといたしますならば、何らか他に政治的な意図があるのではないかとさえ思わせるものがあるのであります。まことにこの
改正の
理由、根拠が薄弱にして、あまりにも不純であるといわなければならないと信ずるのであります、われわれは、この
改正の
趣旨において、
かくの
ごとく根拠薄弱である
改正法案に対しては、
賛成することはできないのであります。
第二点といたしましては、本
改正法案によ
つて、国鉄の企業経営に対する政党支配の影響が露骨に現われて来るということでございます。監理
委員会があるために大臣の権限が国鉄内部に及ばないというのが、
自由党の
諸君の偽らない不満であつたのであります。第二章を削除して監理
委員会を廃止し、第二十條、第二十二條によ
つて、国鉄役員の任免が政党内閣の支配のもとに確立せられるのでありますが、監理
委員会の功罪については、われわれは、さきに田中君からも言われたように、本
改正法案の
審議に際して、運輸
委員会において、これが
審議を詳細にしようとしたのでありまするけれども、
自由党の
諸君の横暴なる拒否によ
つて、これを果すことができなかつたのであります。まことに残念であります。
現行法第十三條第三項に明記されておりまするように、この監理
委員会は、毎年輪番に改選される監理
委員をも
つて構成されており、政治的な力の抑圧を均等化することにおいては、一応民主化が行われておると考えられるのでございます。国鉄総裁の言をも
つてしても、国鉄経営のために、この
委員会が著しく障害に
なつたとは決して言
つていないのであります。
本
改正法案の
提案者たちは、国鉄の運営上の責任体制を明確化するために現
委員会を廃止するという
理由を言うのでありまするが、われわれは、これを理解することができないのである。国鉄の機構
改正にあた
つて、大臣の権限が、あるいはまた
国会における一部の人々の意図が、監理
委員会という壁にぶつかつたことによ
つて、この
委員会を廃止する必要性が痛感されるに至つたとするならば、これはあまりにも公共企業体の本旨にもとるものといわなければならないのであります。第二十條、第二十二條の
改正は、責任体制の明確化という名目で、政党内閣の国鉄企業に対する支配の確立であるということは、
條文を読める者ならば、だれでもわかることであ
つて、私は、このような意図に対しては絶対に
反対をするものでございます。
第三点は 運輸大臣の権限が過大に強化されることによ
つて、国鉄経営の自主性が著しく阻害されるのみならず、それに伴う反民主的官僚支配の弊害が増大することでございます。第五十三條の
改正によ
つて、大臣の監督権を強化拡大しただけにとどまらず、第五項として、基本的な業務運営組織の変更が認許可事項として加えられたことは、担当者に対する制約と干渉これに過ぎるものなしといわなければならないのであります。このことは、第五十四條における大臣の命令事項の拡大強化と相ま
つて、もはや国鉄の公共企業体としての独自性を完全に佛拭してしま
つて、国有
事業としての
政府事業への昔の形にもどすのではないかとさえ疑われるような懸念があるのでございます。
自由党の
諸君は、国鉄を公社として育てようとしておるのか、あるいはまた
政府事業にもどそうと考えているのであるけれども、世間への手前上、このような、へびのなま殺し的な
取扱いをしようとしているのか、この点は、むしろはつきりすべきであると考えられるのであります。
第五十四條第二項以下に
規定されている立入り検査権の
ごときは、
政府の不当干渉の道を開くものでありまして、これは第三
国会においてわれわれが認めたところの
参議院の附帶決議の
趣旨ともまつたく逆行するものであるといわなければならないのであります。このことは、やがて国鉄内における労働諸
條件に対する
政府の干渉となり、その他の諸問題に反動的な支配と干渉とが持ち込まれることになるのであ
つて、
かくの
ごとき意図に対しては、全然われわれは
反対せざるを得ないのであります。
以上、これを要約いたしまするに、本
改正法案は、
提案者が国鉄総裁の責任が明確化され、権限が拡大強化されたのだと主張するにもかかわらず、政党内閣の圧力と、所管大臣の監督権限の拡大によ
つて、国鉄経営内部における自主性と創意性は、はかり知れぬ程度にまで制約され、他面では、国鉄経営の独立採算性が強調せられるために、公共企業体としての経営的成長が著しく困難となり、この企業体に従事する従業員は、公共性と企業性の板ばさみにな
つて、苛酷な労働強化をしいられること火を見るよりも明らかである反動的改悪
法案であるといわなければならないのであります。労働者農民党は、以上のような
法案に対しては、絶対に
賛成することはでき得ないのであります。
以上、われわれのこれに対する
反対の
理由を申し述べた次第であります。(
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