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野原正勝君 ただいま議題となりました、
野原正勝外八十七名提出、
森林法案、同
森林法麺行法案並びに
野原正勝外二名提出、
農漁業協同組合再建整備法の一部を改正する
法律案の三法案につきまして、
農林委員会におきまする審議の経過並びに結果の大要を御報告いたします。
まず
森林法案から御報告いたします。
わが国の
森林資源ば、敗戦による
領土喪失の結果、面積において約四割、蓄積において三割の減少をいたしました上に、木材その他
林産物の需要は、戦後の
復旧資材を初め、
建築用材、
パルプ用材、さらに最近における特需用をも含めまして、ますます増大の傾向をたどり、
生長量をはるかに凌駕する過伐となりまして、森林の蓄積は日一日と減耗しつつある状態であります。他方、造林の状況を見まするに、戦後の混乱とインフレーシヨンの
悪影響等によりまして、植栽は一向に進捗せず、
伐採跡地の
造林未済面積は年々拡大いたしまして、今日すでに百四十万町歩にも上つておるのであります。
以上申しましたような濫伐並びに植伐不均衡の結果、
森林資源は今や洞渇の危機に瀕しておるのでありまして、最近累年の恐るべき水害の原因をなしておると考えられるのであります。
従つて、かかる状態をこのまま放置いたしますならば、
林産物需給の不均衡はますますはなはだしくなり、国民の
日常生活を圧迫するのみならず、電力、パルプ、
炭鉱業等、
工業生産にも多大の悪影響を與え、
国土保全上ゆゆしき事態を招来するおそれあり、農業その他あらゆる産業、
国民経済に甚大なる障害となる心配があるのであります。
かかる点にかんがみまして、政府においても、終戦以来、造林五箇年計画の実施、
治山事業の
強化等、諸対策を講じ、さらに
造林臨時措置法の実施による造林の励行をもはかつて参
つたのでありますが、最近特に
自立経済計画の確立の要請がますます加わつて参りました実情に照しまして、この際さらに百尺竿頭一歩を進めまして、
現行森林法を全面的に再検討いたしまして、これを根本的に改正し、
森林施業の改善、
合理的伐採の実施、
奥地林分の
開発等の措置を講じまするとともに、特に幼壯叢林の保護をはかりまして、
森林資源の保続、培養と、
森林生産力の発展を期しまして、現下の切実なる要請にこたえる必要があるのであります。
以上が本
改正案提出の理由でありますが、次にその内容につきまして重要な点を申上げたいと思います。
本
改正案は、八章、二百十五條からなる浩瀚なものでありまして、前に申し上げましたごとく、
現行法に根本的な改正を加えたものでありますが、
現行法に比較いたしまして特に顕著な相違点が二点ございます。
第一の点は、営林のための従来の施業案の制度を改めまして、国の責任のもとに
行政庁において
森林計画を編成実施し、
森林施業の基準を示しまするとともに、その責任の所在を明らかにしたことであります。すなわち
森林計画は、
森林基本計画、森林区
施業計画及び森林区
実施計画の三段階にわかち、
森林基本計画は、主として
小流城別に定められた
区域ごとに、
国有林民有林を涌じて
農林大臣が五年を一期として定め、森林区
施業計画及び森林区
実施計画は、
森林基本計画に基いて、
都道府県知事が森林区ごとに、
施業計画は五年を一期とし、
実施計画は毎年これを定めることといたしております。元来、
森林計画の主眼点は造林の促進と伐採の
合理化にありますので、森林区
実施計画におきまして、
森林所有者ごとに
人工植栽による
造林計画を定めて、これを義務づけるのであります。また伐採につきましては、森林を
制限林、
普通林、
自家用林及び
特用林の四種にわかちまして、
自家用林及び
特用林に対しましては、立木の伐採は自由であります。
普通林も適正伐期齢級以上の立木は、單に届出だけによ
つて伐採を許すのでありますが、ただ
普通林の
幼壯齢林及び
制限林の
立木伐採につきましては
許可制度といたしまして、毎年の
生長量を基準として、その
伐採許容量を
森林計画で定めんとするものであります。第二の点は
森林組合についてでありますが、
現行法によりまする
強制加入制度を改めまして、
加入脱退を自由にいたしまするとともに、主として林業に関する
共同施設を行う
協同組織の組合といたしまして民主的な運営を期したことであります。なお組合の
再建整備法の改正を行いまして、
森林組合につきましても、
一般農漁業協同組合と同様に、
増資奨励金及び
固定化資金の
利子補給等をはかりまして、これが健全なる発達を期しておりますることは、後ほどあらためて御報告いたします。
本法案は、去る十七日付託と相なり、十八日、不肖私が
提案者を代表して
提案理由を説明いたしました後、引続いてその大要を御説明したのであります。続いて質疑に入りましたところ、
自由党の平野、小笠原両委員、
民主党の
大森玉木委員からそれぞれ発言がございまして、各委員とも
提案者でございまするので、主として本法案の実施上留意を要する諸点並びに
一般林政との関係を
政府当局にただすことを目的としたのであります。
発言の主要な点を申し上げますると、
改正森林法施行以前に濫伐が行われるような心配はないか、あるいはまた
民有林関係は
指導機関が不十分であるから、
国有林の方から
技術的援助を與える必要はないか、
林産物の消費について利用の
合理化をはかるべきであると思うが、政府はそのいかなる用意があるか、また
自立経済のために、ここ数年間は必要やむを得ない需要についてはこれを充足するようにする必要があると思うが、それに対して本法案の眼目であるところの
伐採合理化に関していかなる調節をする考えであるか、あるいは森林の保育、培養上最も必要な造林について、
電力事業、あるいは
パルプ工業等、
森林享受者の投資を勧奨する必要があると思うがどうか、あるいは
林産物の
需給状況の
見通しいかん、
森林組合育成のため予算を計上して、専従の従業員を置くべきではないか、
開拓政策と
森林政策と競合があるが、これをどう調整するかというような、これらの観点に対しましての質問であ
つたのであります。
これに対しまして、主として
政府委員より発言があり、また私からも補足的な説明を加えたのでありますが、第一の濫伐の点につきましては、本
改正法が成立いたしますれば、八月一日から伐採について届出制をと
つて調節をする、第二の
民有林に対する
技術指導につきましては、今後は
民有林、
国有林の
技術者の交流を
行つて技術指導をはかりたい、第三の利用の
合理化については、
研究機関の拡充を計画して予算の折衝中である、第四の点につきましては、
自立経済達成のために必要な
木材需要はなるべく満たしたい、そのため
改正案第十六條に、二割以内において
許容限度を越える増伐を認めておるほかに、今後さらに
伐採余裕数量を検討して調節をはかりたい、第五に、
森林享受者に対する
投資励奨は同感であるから、協力を求める措置を講じたい、また第六の
需給状況につきましては、
配付資料について詳細な説明がなされたのであります。第七の
森林組合の
保護育成につきましては、極力健全な発達を期するよう努力する方針である旨の答弁があり、第八の
開拓政策と
森林政策との競合については、その調節に努めるとともに、
開拓用地として買收せられました未墾地につきまして、いまなお開拓されていないものの中で、山林に還元するを適当と認めるものは
地目変換を
行つて、元の
所有者に還元させる措置を講じたい旨の答弁があ
つたのであります。
なお
炭鉱業関係業者から、本
改正案について、
幼壮齢林の
伐採合理化が実施されれば坑木の不足をもたらし、ひいては採炭に支障を来すようなことはないかという陳情もあ
つたのでありまするが、本
法律案におきましては、
坑木適材のごとき
幼壯齢林の伐採をいたずらに制限するものではないのでありまして、所要の坑木の生産はあくまでもこれを確保せんとするものであります。そのため、
自立経済達成のため必要なものに対しましては、この必要に応じ何らかの措置を考慮せらるべきものと考える次第であります。
本法案は、
共産党を除く各派の
共同提案でありまして、
提出者各委員は内容を十分了承いたしまして、各委員とも異論はありませんので同日
質疑終了後、討論を省略、ただちに採決いたしましたところ、
全会一致をもちまして原案の通り可決すべきものと決しました。
次に、
森林法施行法案について御報告いたします。
ただいま御報告いたしましたごとく、
現行森林法の
全面的改正を行いましたるため
現行法が廃止になりますので、
新法施行の際におきまする経過的諸規定を設けますとともに、
関係法律中に所要の改正を加えまして、新法の円滑な実施をはかることとしたのであります。これが本
改正案提出の理由でございます。
次にその内容について申し上げますと、主要な点が二つあるのであります。その第一点は現在の
森林組合は、
定款変更の手続によりまして新しい組合に移行できることでありまするが、その際、旧法による旧組合の定款の
変更手続と、新法による新組合の
定款変更手続との双方の條件を備える
議決方法によることとし、さらに
組織変更は
行政庁の認可を受け、登記をすることを必要とするのであります。第二の点は、
森林計画の実施によりまして
幼壮齢林の伐採の制限を受けました森林の
所有者に対しまして
資金融通の道を開いたことであります。すなわち、さきに本国会を通過いたしました
農林漁業資金融通法の一部を改正いたしまして、同
特別会計から、
年利平均四分、
貸付期間二十五年以内の
長期低利資金が、いわゆる
伐採調整資金として融通されることといたしたのであります。
本法案は、さきに御報告いたしました
森林法案とともに十七日付託と祖なり、翌十八日、
提出者を代表いたしまして私が
提案理由並びに内容の大綱を説明いたしました後、
森林法と一括して議題に供したのでありまするが、本法案は、御承知のごとく、
改正森林法案の施行に伴う経過的諸規定に関するものでございまする上に、
森林法案と同様、
共産党を除く各派の
共同提案でありまして、大部分の委員がこの内容を十分に承知しておりますので、格別の発言もなか
つたのであります。
次いで、異議がありませんので、討論を省略、採決たしましたところ、これまた総員の賛成を得まして原案通り可決すべきものと決したのであります。
次に、
農漁業協同組合再建整備法の一部を改正する
法律案につきまして御報告いたします。
休会前の国会におきまして、内閣より提出せられました
農漁業協同組合再建整備法が成立し、
農漁業協同組合の
再建整備を法律によつて指定したことは御承知のごとくであります。その際私から、
森林組合に対する
再建計画が除外せられたことは、はなはだ片手落ちの措置であることを指摘してお
つたのでありますが、今回同法の一部改正によりまして、その欠陷を是正することと相なつた次第であります。そもそも
現下最大の課題である
森林復興のため、
治山治水の全きを期する上において、
民有林所有者の
協同組織である
森林組合の
整備強化をはかることが必要であることはもちろんでありまするが、戦時戦後を通じ、
木炭供出等に関連しまして、逐次組合の
経理内容は悪化して参りまして、最近
森林組合、同
連合会を通ずる要出資額は約十一億円、債権の
固定化額は八億円にも及んでおりますが、零細な山の
所有者たる
組合員の自力をもつてしては、再建はとうていおぼつかなく、ひいてはこれが
わが国森林の復興を阻害することは明らかであります。
森林法の
全面的改正によりまして、組合の性格に
一大転換が行われようとしておりまする現在、その
財政的基礎を確立しておきますることは、今後における組合の
使命達成上重要なる案件と申すべきでありますので、この際
農漁業協同組合法の適用を
森林組合へも拡大いたし、そのために二十六年度中に
農林漁業各組合に対し、
増資奨励金及び
固定化資金利子補給金として支出される予備金の額を、六億五千万円より七億円に増額しようとするのが、本法案の
趣旨内容であります。
五月十五日、私より
提案理由の説明を行い、簡單な質疑が行われまして、十八日、対論を省略、ただちに採決いたしましたところ、総員をも
つて本案はこれを可決すべきものと決した次第であります。
以上三つの
法律案は、
林業振興上関連する緊要なるものでありまして、
日本林業百年の大計はここに定まるのであります。いまさら私が申し上げるまでもなく、産業、経済、文化の基盤をなすものは森林であり、森林の復興なくして祖国の再建はないのであります。しかるに、
わが国の森林は、すでに昔日の面影もなく荒れ果てて、恐るべき水害の原因となり、一面過伐、濫伐は依然として強行されておる状態であります。
従つて、もしも今までのごとき
放任主義をもつてするならば、今後三十年を出でずして国内全山まる裸となるのおそれさえあるのであります。ここに本法を制定し、全国五百万
森林所有者各位の御奮起を願い、その御協力を期待するとともに、特に政府に対し、従来の
消極的態度を改め、
森業振興のため
積極的施策の断行を強く要請する次第であります。すなわち、造林五箇年計画、治山五箇年計画、林道五箇年計画、以上三つの五箇年計画は必ず実行してもらわないと、
森林法は一片の空文に終つてしまうのでありますから、政府は責任をもつて御実行願いたいのであります。
次に、
林産物利用の
合理化を促進するため、
林産科学研究等に
積極的施策を講じてもらいたいことであります。
次に
林業税制の改正であります。林業の特殊性を無視した税制は、林業の振興をはばむ最大の原因と考えられるのでありますから、ただちに改正に着手していただきたいのであります。
その他要望の事項は山のごとくありますが、以上の五点は特に重要と考えられますので、これらの
予算化あるいは
立法化に対し、諸君の御協力を望む次第であります。
森林復興の
仕事たるや、一朝一夕の仕事ではありません。文字通り国家百年の大計であり、
政党政派を超越した、実に
民族的使命であります。幸いにして
国土緑化の
国民運動が全国に展開せられつつあるとき、
共産党を除く各党の熱心なる御支援のもとに
森林法制定の運びと相なりましたことは、
国家再建のため、まことに御同慶にたえざる次第であります。本法案の成立により、
森林復興に対する
国民的機運ますます高揚せられ、
国土緑化の実現期して待つべきものあると確信する次第であります。国敗れて山河あり、われらの
紀国日本をして輸したたる美林をもつておおわしむるため、一段の御協力をこいねがう次第であります。
以上をもつて御報告といたします。(拍手)