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1951-04-16 第10回国会 衆議院 本会議 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年四月十六日(月曜日)  議事日程 第二十九号     午後一時開議  第一 ダグラスマツカーサー元帥に対する感謝決議案佐藤榮作君外三百九十四名提出)(委員会審査省略要求事件)     ————————————— ●本日の会議に付した事件  日程第一 ダグラスマツカーサー元帥に対する感謝決議案佐藤榮作君外三百九十四名提出)     午後二時十七分開議
  2. 林讓治

    議長林讓治君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 林讓治

    議長林讓治君) 日程第一は提出者より委員会審査省略の申出があります。右申出の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 林讓治

    議長林讓治君) 御異議なしと認めます。  日程第一、ダグラスマツカーサー元帥に対する感謝決議案議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。植原悦二郎君君。     〔植原悦二郎登壇
  5. 植原悦二郎

    植原悦二郎君 ただいま上程されました前連合軍最高司令官ダグラスマツカーサー元帥に対する感謝決議案につきまして、提出者を代表して提案理由を御説明申し上げる光栄をにないます。  まず右案文を朗読いたします。    ダグラスマッカーサー元帥に対する感謝決議   前連合国最高司令官ダグラスマツカーサー元帥が、終戰当時わが国混乱窮乏とを匡救し、進んで民主主義確立経済自立とを指導援助し、もつてわが国独立機運を促進したる偉大な業績は、国民挙げて感激措く能わざるところなり。衆議院は、特に院議をもつてこの全国民意思を代表し衷心より感謝するとともに満腔敬意を表す。    右決議す。  終戰以来五年有八箇月にわたつて連合軍最高司令官として、敗戰後日本再建のため、深甚なる好意と、その叡知と、卓越せる識見とによつてわが国指導され、かつ援助されて参りましたダグラスマツカーサー元帥は、去る十一日をもつてその任を去られることになりました。この報一たび伝えられるや、全国民は悄然として深き思いに沈んだのであります。元帥わが国民に注がれました、あたたかい友情をしのび、惜別の情禁じがたいものあるを覚えられたのであります。今や、わが国民はすべて、元帥の在任中における偉大なる業績に対し衷心感謝にたえないところであります。  思えば、元帥着任当時のわが国民は、破壊と混乱窮乏と恐怖の中に立ちあえぎ、行くべき道、たどるべき策をも定めがたく、たださんたんたる様相を呈し、あたかも、かじを失うたるところの難破船のような姿でありました。この間に進駐されましたマツカーサー元帥は、占領軍峻嚴最高司令官というよりは、むしろ悩める敗戰国民に対する救世主のごとく、深き同情と好意とをもつて窮乏の中に混迷せる日本国民に対して、物心両方面にわたり、あたたかき救済の手を差伸べられ、しかも寛容と正義とによつてこれを指導されたのであります。かくわが国民は、ようやく敗戰窮乏混乱を脱却し、民生の安定と秩序の維持とを確保することができたのであります。  元帥は、さらに進んで、人類平和の崇高なる理念もと人間基本的権利、自由を保障する日本国憲法の制定に、諸制度の改変に、経済の再編成に、諸般の改革を断行され、あらゆる方面にわたつてわが国民の福祉増進のために、その民主化を企図、指導されたのであります。のみならず、わが国経済再建のためにはかられた功績もまた決して少いものではありません。しかして、百般の国民生活は徐々に健全なる民主化の軌道に乗り、国家復興またその緒につき、国際信用も漸次回復することを得、ここに全国民待望講和條約の締結、独立への進路もようやく前途の曙光を見るに至りました。これ実に偉大なる元帥人格と、その指導よろしきによるものでありまして、われわれ全国民の感激おくあたわざるところであります。(拍手)  元帥がわが日本国に残されたこの業績は、ひとりわれわれ日本国民元帥に対する感銘の象徴たるのみではありません。世界人文史上特に記録さるべき、まれに見る功績であることは、われわれ確信するところであります。(拍手)今や、元帥の不断の努力好意とによつて、われわれは、われわれ待望講和の日近きを思わしめられるのであります。しかるに、元帥とともに講和條約の成立、新生日本の門出を迎うることを得ずして、ここにその別離に際会することは、生者必滅、会者定離とは申しながら、われわれは、ひとしお、そのなごりを惜しまざるを得ないのであります。  われわれは思います。元帥去らるとも、元帥がわれら日本国民の胸底深く植えつけられました民主主義国家と人類平和への理念は、新生日本道標として、とこしなえに日本国民の間にその生を保持することを確信いたしております。われわれは、元帥とわかるるに臨み、元帥に対する感謝惜別の意を表現する適当な言葉を見出すに苦しむものであります。けれども、われわれは、かく申します。われわれは、ここに元帥の厚き友情にこたうるために、元帥がわれわれに與えられました民主主義と人類平和の道標を、新生日本前途の燈明台として、如実に見失わぬよう最善の努力を誓うものであります。(拍手)われわれは重ねて、全国民の名において、元帥に対し衷心感謝のまことをささげ、満腔敬意を表したいと存ずるのであります。  最後に、われわれは全国民とともに元帥の御健康を祈るとともに、常に元帥が、わが国の行手に、従来のごとく、よき、あたたかい助言を與えられんことを念願してやまざる次第であります。  以上をもつて提案理由といたします。何とぞ満場の御賛同を願います。(拍手
  6. 林讓治

    議長林讓治君) これより討論に入ります。今野武雄君。     〔今野武雄登壇
  7. 今野武雄

    今野武雄君 マツカーサー元帥に対する感謝決議が、現在の日本にとつて最も緊急重大な問題であるとしまして、自由党民主党社会党共同提案で、わざわざ本会議を召集することになつたのでありますが、わが党がすでに指摘しているように、感謝理由とされている、日本民主化経済自立民族独立を促進したなどとは━━━━━━━━━━━━━━以外の何ものでもないのであります。このことは、これまでマツカーサー元帥政策を最も忠実に支持して来た自由党民主党社会党諸君の本日の出席ぶりを見ても明らかであります。日本国民大衆は、三党幹部のこの━━━━に賛同する者は、特別の者を除いては一人もいません。わが党は、以下その理由を明らかにします。  第一に、終戰当時を問題にするならば、終戰のどさくさにまぎれて臨時軍事費を濫費し、当時の価格でも一千億円に上る莫大な物資を隠匿し、経済再建を困難にし、やみとインフレの中に国民をおぼれさせ、財閥戰時利得者財産税を、インフレによつて実質上棒引き同然にしながら、他方新円切りかえによつて勤労大衆を、一人前五百円也の正札で、飢餓的わくにしばりつけたその政治的責任は、一体だれが負うべきであるか。  第二の、民主主義確立経済自立云々の点に至つては、まさに正気のさたではありません。第九国会の開会中に━━━━━━━━━━━━━━、われわれ家庭の電燈を暗くする電力再編成ポ政令によつて実施されたために、憤激して国会審議権の尊重を叫び、決議案提出したのは、一体どこのだれであつたか。日本経済にとつて死活の問題である中日貿易禁止━━━━━━━━━━━━。見返り資金のみならず、国民の血の出るような零細な金を集めた預金部資金まで政府国会が自由に運用できないのは、どうしたことか。日本人にとつて耐えがたい税制は━━━━━━━━━━━━━━。国民の血税で外国の作戰費まで負担しておる日本国家予算━━━━━━━━━━━━━━。また経済民主化の根本である帝国主義財閥解体は実行されておるか。最近発表された日本長者番付の筆頭には、三井、三菱、住友、安田等の九財閥が、くつわを並べております。これは、この問題に対する最も簡明な答えではないか。今や日本帝国主義財閥は、国際帝国主義財閥植民地的買弁となり、その軍事的、独占的性格はますます強化されているのではないか。━━━━━━━━━━━━━━━━。  次に、日本民主化と非軍事化の前提として極東委員会によつて取上げられた農地改革は、いかに実行されたか。昭和二十四年の農業センサスによつて全国農家の二四%が依然として小作をやつている事実、山林地主が完全に温存されている事実、ジープによる強制によつて生産費以下の低価格買出し供出までやらされている事実━━━━━━━━━━━━━━━━。重税によつて、働く農民は破滅に陷れられておるのではないか。かくして━━━━━━━━━━━━━━━━━━、他方において、労働者の低賃金と、戰争に備えての人的資源の確保の基礎條件━━━━━━いるのではないか。  さらに、日本民主化主力部隊として、極東委員会の十六原則によつて組合活動の自由を保障されたはずの労働階級は、現在どんな状態になつているか。二・一ストがマツカーサー指令によつて禁圧されて以来━━━━━━━━━━━━━━━━━━、特に昭和二十三年七月のマ書簡によつて、公務員という名のもとに、官公庁労働者ストライキ権団体交渉権などを全面的に剥奪したポ政令二〇一号が公布され、翌二十四年には、定員法によつて、多数の官公庁労働組合活動家を根こそぎ馘首し、さらに昨年は全労連を解散し、真に実質的な労働組合に━━━━━━━━、さらにレッド・パージによつて民間企業の有力な活動家━━━━━━、極東委員会の十六原則━━━━━━政府並びに警察によつて……(発言する者多く、聽取不能労働組合に対する支配行為━━━━━━及びあらゆる種類の━━━━━━━━━━━━━━いるではないか。その上、軍隊まがいの……(発言する者多く、聽取不能職階制━━━━━━、労働者は、再び戰前と同じく活動の自由を━━、千数百万人の失業者は国土にあふれ、資本家は正規の労働者を首にして、臨時工を低賃金で雇い入れ、物価が上つて賃金は引下げられる。まつたくの━━━━━━━━━━いるではないか。特に特需または軍直営の仕事に従事している労働者━━━━━━━━━━━━━━━━に対して、政府は、一旦占領軍当局に引渡した以上、その労働者がどのように使用されているかは、政府としては責任を持てない、と答弁しておる。日本には━━━━━━━━━━━━━━━━ことになつていることを、政府自身が認めているではないか。  さらに民主主義保障である言論、出版、結社の自由、信條思想の自由はどうか。……(発言する者多く、聽取不能)濫用によつて朝連、全労連を解散し、アカハタの刊行停止処分をし、川上君を除名し、ほとんどあらゆる集会、デモの禁止、就学、就職に際しての厳重な思想の調査などの例によつても明らかなように、今日の日本では、まつたく━━━━━━━━━━━━━━━━が行われておるではないか。  こういう事例は、いくらでもあげることができる。この決議のいう、日本民主主義確立経済自立とを指導援助し、もつてわが国独立機運を促進したという理由が━━━━━━━━━━━━━━明白である。(発言する者、離席する者多く、議場騒然)  最後に、第三の、国民がこぞつて感激しているという点である。じようだんじやない。アメリカ有力紙であるUS・アンド・ワールド・レポートの東京特派員でさえも、日本の目的は再び自由な国になることである、多くの日本人は、征服者に出て行つてもらいたいと望んでいる、こういう報道をしています。それゆえにこそ、警察力を増強し、警察予備隊を創設して、これらに暴動鎮圧の演習をやらせ、朝鮮で手一ぱいであるにかかわらず、アメリカの州兵二箇師団を日本警備のために配置し、さらに……(発言する者多く、議場騒然聽取不能)  以上のように、事態は明らかであります。日本━━━━━━━━━━━━━━━━。あるものは悪税であり、窮乏であり、失業であり━━━━━━━━━━━━━━。しかるに━━━━━━満ちた決議衆議院の名においてなさんとする真のねらいはどこにあるか。第一に、世界周知の通り、マツカーサーの罷免は、極東における━━━━━━━━━━の一環の破綻を示すものである。しかるに、今までこの政策に同調し、この政策を全幅的に支持して来た自由党一味とその政府は、この事実に対して何ら反省の色を示さず、かかる━━━━━━唯一の正しい政策として、日本人民大衆に押しつけようとしている。この感謝は、その意図を最も端的に暴露したものである。  第二に、この決議案は、終戰以来……。
  8. 林讓治

    議長林讓治君) 今野君、発言に御注意を願います。
  9. 今野武雄

    今野武雄君(続) ━━━を唯一の正しい政治として……(発言する者多く、議場騒然聽取不能)依然として━━━━━━━━━━━━━━━━感謝の形で表明したものである。  第三に、この決議は、以上の━━━━━━当然の帰結である單独講話によつて━━━━━━━━━━━━━━━━━━、マツカーサー元帥の名によつて強行せんとするものである……(発言する者多く、議場騒然聽取不能国際的帝国主義の……(発言する者多く、聽取不能)破砕せんとして戰つている全日本人民と、世界十億の平和擁護勢力の名によつて反対するものであります。(拍手
  10. 林讓治

    議長林讓治君) ただいまの今野君の発言中、占領軍政策に関する不穏当の言辞があれば、速記録を取調べの上、適当の処置をとることにいたします。  三木武夫君。     〔三木武夫登壇
  11. 三木武夫

    三木武夫君 私は、ただいま議題となりましたダグラスマツカーサー元帥に対する感謝決議案に対し、国民民主党を代表して賛成の意を表するものであります。(拍手)  マツカーサー元帥が、昭和二十年八月三十日厚木飛行場に進駐されまして以来、満五箇年八箇月の間に日本に残された不滅の業績は、そのまま新しい日本の育成の歴史でありました。日本民主化は、政治経済社会の各分野においてその基盤を固め、今やまさに自主独立日本国際場裡に現われようとするとき、マツカーサー元帥の解任、帰国を見ましたことは、日本国民のひとしく遺憾にたえないところであります。(拍手)もちろん日本占領政策は源を極東委員会に発するとはいえ、利害を異にする連合諸国干渉妨害をしりぞけ、日本好意ある立場に終始一貫したものは、実にマツカーサー元帥の声望と信念と手腕に負うところ大なりと、国民のひとしく感激するところであります。(拍手)  マッカーサー元帥業績につきましては、提案者から詳しく申し述べられましたので、これを繰返しませんが、私はこの機会に、一月末元帥と会見した際、元帥の述べられた言葉の一端を、ここに回顧したいと存じます。すなわち元帥言葉は、自分日本戰争のさ中にあつたときにも、高貴なヒユーマン・フイロソフイを失つたことはなかつた、戰爭が終つて日本に来てからは、そのおおいかくしていたものを表面に出したまでであつた従つて自分は、日本人に懲罰を加えるべきだという考え方を一度も持つたことはなかつた日本敗戰の恥辱だけで、すでに十分罰せられている、自分占領政策の最初から努力したことは、日本人をして一日も早く敗戰卑屈感を捨てしめて、日本人としての自尊心と自信をとりもどすということが一番自分努力したことであつた日本は対等の地位と平等の條件自由国家に加入すべき十分の資格を備えて来た、講和は三箇年も遅れ過ぎた、今年はぜひとも講和條約を締結されなければならぬ、講和中心課題安全保障の問題である、日本国民自由意思と完全な理解を基礎として有効適切なる安全保障の道を講ずることが日本の急務である、進駐以来、司令部はおそらく幾つかの誤りを犯したに相違ない、けれども、それは頭脳から来た誤りであつて、心から来た誤りでなかつた、ということを国民が理解してもらいたい、これが元帥言葉でありました。(拍手)  この言葉の中に現われているごとく、マツカーサー元帥日本人に対する愛情と信頼は、日本人をして、受付けがたい不名誉な占領の事実を忘れしめました。そして、日本人をして新しい日本建設に情熱を振い起さしめて、最も大きな精神的影響力を與えたものはマッカーサー元帥であつたということを申し上げても過言ではないと存じます。(拍手)われわれは、他の何人を持つよりも、マツカーサー元帥最高司令官として持つたことが日本人の幸福であつたことを確信いたします。われわれは、マツカーサー元帥最高権力者であるから尊敬するものではありません。一介の米国市民となられたとしても、人間マツカーサーの高貴な人間性に対しましては、衷心敬意愛情を感ずるものであります。(拍手)  マツカーサー元帥の残された、日本民主化経済自立化への数々の業績と、その根底をなしたこの尊い人間精神は、日本民族の胸の中に永遠に生きて、折に触れ、時に応じ、日本人自信勇気を與えることと信じます。われわれは、最後まで元帥の念頭を離れなかつた安全保障の問題を、元帥自身が解決せられないで今般帰国をされましたことは、元帥自身としても心残りのことであつたと存じます。今後われわれは、国民的意思に基いて、この問題に対しても聰明なる解決を與えなければなりません。  元帥は、今太平洋上を、おそらく無量の感慨をこめて本国に急いでおられることでありましよう。われわれは、ここに元帥の真情に対して尊敬と感謝の念を送り、元帥の多幸を祈るものであります。(拍手
  12. 林讓治

    議長林讓治君) 淺沼稻次郎君。     〔淺沼稻次郎登壇
  13. 淺沼稻次郎

    淺沼稻次郎君 私は、ただいま議題となりましたダグラスマツカーサー元帥に対する感謝決議案に対し、日本社会党を代表いたしまして、賛成の意を表明したいと存じます。(拍手)  わが国は、敗戰という冷嚴な現実の前に、ポツダム宣言受諾と、国民戰争に対する鋭い批判が相まつて、封建的な、専制的な、軍国的な、独裁的な日本国家体制を、真に民主的な、平和的な、文化的な体制たらしめるために、偉大なる変革を遂げて今日に至つたのであります。すなわち政治の面においては、新憲法もと主権在民の大原則を打立て、政治民主化を徹底し、また国際紛争を解決する手段としての戰争は永久に放棄すると規定し、平和非武装の宣言憲法においてなしたのであります。経済の面では、財閥解体労働運動の発展、農地改革など、経済民主化を遂げたのであります。しかも、この偉大なる変革を、われわれは平和と無血の間になしたのであります。およそ偉大なる変革の中には血がつきまとうものであります。われわれは、この血の道を選ばず、平和と無血の間に偉大なる変革を遂げたことを記憶しなければなりません。これは日本国民の平和への熱願と、民族独立への要望から来る自制の上に行われたことは、いなむことのできないことではありますが、マツカーサー元帥助言指導によるところ大なるものがあると私は信ずるのであります。(拍手)  マツカーサー元帥が、連合軍最高司令官として、日本国民民主主義理念を植えつけた功績は、大なるものがあると存じます。これと並行して、戰争によつて困窮のどん底に陷れられた国民生活戰争によつて崩壊した日本経済に対し、国民生活の安定と経済再建のために、食糧並びに二十億ドルに達する経済援助のために努力せられたことは、国民のひとしく感謝するところであります。(拍手)  次に、講和会議が近いということを身に感ずるものがあります。講和会議、それは日本人及び日本国が、自由国民として、自由国家として国際社会に再出発することであります。戰争によつて失われたる国家自主性を回復することであります。終戰六年、ようやくこの道が開かれんとしておるのであります。この道を開いてくれましたのも元帥に負うところ大なるものがあるのでありまして、われらの感謝するところであります。(拍手)  本日、マツカーサー元帥日本を去る日にあたり、本決議案がこの会議に上程されておるということは、異議深きものがあろうと思うのであります。この元帥指導好意に報いるゆえんのものは、日本民主化の徹底、日本経済自立日本の平和と独立のために努力することにあると信じ、われわれは一層の努力を拂うことを付言したいと思うのであります。  ここに元帥の健康を祈り、本決議案賛成意思を表明するものであります。(拍手
  14. 林讓治

    議長林讓治君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。本案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  15. 林讓治

    議長林讓治君) 起立多数。よつて本案は可決いたしました。(拍手)  この際内閣総理大臣から発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣吉田茂君。     〔国務大臣吉田茂登壇
  16. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 本決議に対しましては、政府はまことに同感であるのみならず、本院が本決議により国民意思、感情を内外に表明せられたことを、まことに喜ぶものであります。  終戰以来五箇年有余、その間数回内閣更迭がありましたが、党派のいかんにかかわらず、内閣首班に対し常に公平かつ丁重に応接せられ、温情をもつて国政の指導に当られたることを、私は感謝せざるを得ないのであります。  ここに特に全国民を代表して感謝を表示いたしたいことは、わが皇室に対し、元帥が特別の注意を常に拂われたことであります。(拍手元帥は、日露戰争中父君マッカーサー将軍とともに日本訪問以来、わが国に対し非常の関心を寄せられ、元帥わが国情に対する造詣、蘊蓄が、日本国家の礎石はわが皇室にあることを洞察せられ、わが皇室に対し非常の注意と用意をいたされたることは、元帥の対日識見のたまものであることは明白なことであります。(拍手)私が惜別の意を表するため過日訪問の際にも、元帥は、今上陛下ほど民主的の君主は、かつて自分の知らざるところである、わが国民主化の大業の容易になつゆえんは一に陛下のお力であると激賞せられたのであります。(拍手もとよりこれは元帥謙讓の徳がかく言わしめたものと存ずるのでありまするが、同時に元帥が、わが陛下の御性格に対し最も熟知せらるるとともに賞讃しておらるるからこの言のあつたゆえんと信ずるのであります。(拍手)  元帥は、厚木上陸の際、身に寸鉄も帶びず、單機上陸せられたということは、当時言い伝えられておりましたが、その軍人としての勇気に対しては絶大の敬意を表するとともに、またわが国民及びわが国情に深き了解のある証拠であると私は存ずるものであります。(拍手)  なお元帥は、わが国民が正直にして、勤勉なるがため、わが復興もはなはだ迅速で、他にその例を見ないと、始終言つておらるるのであります。ゆえにまた、対日講和の一日もすみやかなるべきことを終始主張せられて、今日対日早期講和の空気の世界に横溢するに至つたのは、一に元帥のわれに対する好意努力がここに至らしめたことは、まことに明白な事実であります。(拍手)その講和の完成を見ずして元帥わが国を去られたことは、わが国民あげて遺憾とするところであり、また元帥の対日友情からもつていたしましても、けだし、われわれと同じく、これを遺憾とせらるることと存ずるのであります。  元帥の、この限りなき対日友情は、過去五年有余の間に国民の心境に徹底し、元帥離任の報を得るや、全国津々浦々まで、元帥に対し深甚なる惜別の情を期せずして発露するに至つたことは、けだし元帥初め米国民の了解するところと私は思うのであります。(拍手終戰以来元帥に親炙いたしました私といたしましては、感謝惜別の意を申すのにその言葉を知らないのでありまするが、全国民が、知ると知らざるとわ問わず、翕然として元帥に対し敬愛を表する国民的運動とも言うべき形で、実際において、かくのごとき国民的運動が自然の間に出現いたしたということを見て、私はみずから慰むるのであります。(拍手)けだし、これはおのずから元帥識見及び有徳の人格のいたすところであると、私はかたく信ずるのであります。  元帥わが国及びわが国民に対する絶大なる友情好意を長く記念し、感謝のため、適切なる方法を今後考究いたして、いずれ政府がその構想のなり次第国会に付議して、諸君の御協賛を得たいと存ずるのであります。(拍手
  17. 林讓治

    議長林讓治君) 次会の議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散会いたします。     午後二時五十八分散会