○宮幡靖君 ただいま
議題と
なつておりまする
資金運用部資金法案外
関係二
法案につきまして、私は
自由党を代表して
賛成の意を表明するものでありまして、以下その理由を申し述べ、全
国民の意思を代表する議員各位の御賛同をこいねがうものであります。
すでに御承知のごとく、従来の預金部預金法を廃止して、新たに
資金運用部資金法を制定するゆえんは、
政府資金並びに準
政府資金統合
管理し、これら資金を確実かつ有利な方法をも
つて運用し、公共の利益の増進に奇與せしめんとするものでありまして、見返り資金及び国債
整理基金
特別会計における国債の保有等の資金を除く資金を統括
運用して、昨年来産業経済界を悩ました金詰まり経済を打開して、銀行の貸出し超過、企業の借入れ超過の変態情勢を是正し、かつ企業の正常な長期資金の調達を容易ならしめんとするものであります。しかも一面においてはインフレ抑止の安全弁的役割をも果し得るものでありまして、現下日本経済の実情とにらみ合せまして、まことに当を得た立法と申すべきであります。
顧みれば、戦後の混乱の中に激化した悪性インフレは恐るべき様相を呈し、日本経済の自立達成の希望もおぼつかない
状況に追い込まれましたが、第二次
吉田内閣の成立を見るや、まず悪性インフレ収束に志し、第三次
吉田内閣と
なつては、第五
国会を通ずる超均衡
予算の編成、デイスインフレ政策を主軸とする経済安定諸施策を強行し、悪性インフレを克服して、
国民経済を安定の起動に乗せ、わずか一箇年有余にして国際信用をかち得、国際経済へも参加し、自由民主主義
国家とともに世界平和に貢献し得る資格をも備え得るに至りました。この間、
統制経済より自由経済へと順次移行する過程において金融政策にも画期的な変更が加えられ、財政資金と産業資金との区分を明確にして、産業資金は市中銀行融資を原則とし、みずからの信用と
努力によ
つて調達することとなり、いわゆる思惑資金、見込み資金の調達は容易ならざる
状況となりました。通俗的に金詰まり経済と呼ばれる時代と
なつた上に、昨年六月二十五日勃発した朝鮮動乱の影響をも反映いたしまして、輸出貿易は急激に上昇し、
多額の外貨を保有することに
なつた反面には、国内の円資金不足の過渡的現象を示すに至りまして、輸入円資金の不足を償うため、日銀ユーザンス
制度実施による対策等も講ぜられましたが、昨年十月ごろは実に金詰まり経済の様相を呈するに至
つたことは、御記憶に新たなるところと存ずるものであります。
時あたかも
政府当局は、
昭和二十六
年度並びに
昭和二十五
年度補正
予算の問題でドツジ氏と折衝を行
つていた当時でありまして、大蔵省としては、ただに
予算面の検討だけでなく、広く日本経済全体を検討し、当面の貿易の正常化を中心とする
生産と金融の問題を取上げ、いわゆる金詰まり経済の問題と
なつている銀行のオーバー・ローンの解決と、企業の長期資金調達をめぐることに折衝の重点を置いて、その解決策として、日銀、市銀の固定貸しを正常な長期資金に転換させる方法、つまり預金部資金と見返り資金の動員にしわ寄せを行
つて、資金
運用の質的な転換を行うことをこれが対策として見出し、これを折衝の目標とせられたものと推測せられる次第であります。
当時、金融産業界に現われている特異な現象としては、銀行は貸出し超過、産業界は借入れ超過であ
つて、銀行の貸出し超過は、單に預金に対する貸出し比率の増大だけでなく、投資勧定の中に現われている保有有価証券のアンバランスの問題、つまり資本構成上の銀行
経理の異常化を究明して、オーバー・ローンの限界について根本的な検討を行うことが必要であ
つた。貸出し超過を是正するには、当時半ばこげついている短期資金の固定化を流動化しまして、本来短期資金であるべき性質の金が長期化している
部分を、正常な長期資金に置きかえて行くことが必要でありました。一方事業会社から見れば、銀行の貸出し超過を是正するには、自己資本調達の面で弊害策が加えられなければならないのでありまして、当時の企業は、自己資本に対する他人資本の比率が大き過ぎる実情でありました。これは日本の資本市場の狭小と貧困が大きな原因であ
つて、株価対策という意味ではなく、広く資本調達の打開策として、たとえば株式の保有会社案や、たな上げ株資金の構想をも再検討を加えなければならないときに
なつてお
つたのでありました。しかしこの考え方は、見通しとして株価対策とみなされる面も多く、急速な具体化は困難であり、また信用造出となる金融政策は避けなければならないので、結局産業資金調達の打開策は預金部資金と見返り資金の円滑な活用をはかり、これによ
つて日銀貸出し、市銀貸出しという形で、固定化している資金の質的転換をはかることが急務と
なつた次第でありまして、金融債の引受けによ
つて預金部資金の流入を見れば、長期設備資金の調達が促進せられ、ゆがめられた銀行の過重
負担が軽減されまして、さらに有効需要の喚起に伴い円滑な資金循環が行われるわけであります。
この観点において、大蔵省はドツジ氏との間に折衝を進め、この結果として、昨年十一月二十一日、ドツジ氏より池田藏相あての覚書が総司令部を通じて手交せられたものでありまして、いわゆる日本
政府の金詰り経済の打開に
努力した結晶であります。しかるに、野党各派の中には、大蔵大臣がドツジ氏の覚書に、理由なく、もろくも屈したりと難じ、さらには日本
政府の自主性の乏しきをも非難する向きもありますが、それはあまりにも真相をきわめない、軽挙、浅薄の議論と断せざるを得ないのであります。しかして、この結果として、郵政省所管の簡易生命保険の積立金等の
運用は、現段階においては資金
運用部に専属することに
なつており、第五
国会当時、衆議院において議決せられたる、簡易生命保険積立金等の独立
運用へ復元する要望の達成は見送りと
なつたわけでありまして、このことのみを取上げて勘案するときは院議無視の議論も生じ、ことには一度閣議決定を見て、
昭和二十六年一月一日より郵政省の独立
運用が再開せられる報道さえ伝わ
つた事情から見て当てを失する措置の避難がありますが、前段申し述べた
通り、目まぐるしい変転する国際経済の動きに順応し、日本経済の自立を達成するための、いわゆる金詰まり経済を正常化せんとする措置と比較考案するときは、その軽重はおのずから明らかであ
つて、従
つて原案に反対すべき理由の乏しきを私は断ぜざるを得ません。
しかも、簡易生命保険積立金等の独立
運用は、戦時中停止せられ、今日と
なつたものでありまして、現に独立
運用中の資金を、資金
運用部にあらためて集中するものではなく、従
つて郵政従業員の待遇その他に格段の変化あるべしとは考え得られないのでありまして、本
法案に反対せんとする郵政従業員等の心情は察知するにやぶさかではありませんが、経済自立の過程における基本的な構想とその措置を意義あらしめんがためには、やむにやまれぬ立法であることを了とせられたいと存ずる次第であります。
思うに、現在の財政資金と準財政資金の合
計額の中に占むる簡易生命保険積立金等の資金ウエートは重く、これを一元的な
国家の金融政策と切り離して
運用することは、功罪にわかに決しがたいものがあるのでありまして、安定経済のもと、正常な財政金融政策のベースに乗
つて、簡易積立金等の資金ウエートも軽くなり、あるいはこれが
運用を郵政省独自の構想にゆだねても、金融混乱のおそれ等なき見通しとならば、すみやかに郵政省の独立
運用に移管すべきものであることは議論の余地のないところでありまして、本
法案が恒久的生命を有するかのことく見受けられますけれども、その実績は、金融情勢とにらみ合わせ、簡易保険事業運営の本質にかんがみ、当然近き将来において郵政省に復元さるべきものであることを強く認識すべきであります。
なお、本
法案の急速なる成立を必要とする反対的理由としてこれを配慮に加えますならば、もし本
法案が三月末日までに成立を見なか
つた場合における支障として予見せられる点は、第一に金融債
運用の中絶であります。金融債に対する
運用は、
関係方面との交渉
経過において、本
法案通過を条件とするものであ
つて、本
年度二百億円のわくは、四月以降資金
運用部を
改善することを見越して、特に
政府が懇請して承認を得たものでありまして、二百億円わくのうち、十二月以降二月までに百三十三億円許可を得たが、許可は一箇月分ずつ切り離して行われることに
なつておりまして、現に三月分の金融度
運用予定額六十七億円は本
法案通過まで保留されているので、四月一日から資金
運用部新発足がなか
つた場合には、従来経緯にかんがみまして、三月分六十七億のみならず、四月見込み額三十三億円も御破算となり、合計百億に達する長期資金の供給が中絶し、債権発行銀行の融資計画に重大な変更を来し、目下緊急を要する造船、買船資金その他の需要産業の長期資金調達面に深刻な影響を與えることは必至であり、これによる
国家的
損失も少なくないとおもわれるのであります。
第二は、資金
運用部
特別会計予算執行不能の問題であります。すでに衆参両院を通過成立した
昭和二十六
年度予算においては、資金
運用部の
設置を前提として同
特別会計予算が組まれておりまして、預金部としての
予算は組まれてありません。従
つて、預金部としては
予算が全然なく、
歳出の権限がなくなるので、暫定的に他
会計の資金を繰りかえ使用することもできないことは当然であ
つて、ま
つたくの
状況となりまして、四月早々要求されている地方債の前貸や、地方公共団体に対する短期融資も停滞することになり、地方財政にも悪影響を與えるのであります。この場合の対策としては暫定
予算を組む必要が生じまするが、
昭和二十六
年度予算の組み方から見て、数々の財政技術上の困難が伴うもののごとく推測せられるのであります。のみならず、
関係方面との折衝、承認、閣議決定、
国会の議決という手続には相当の日子を必要とするのでありまして、空白をなくすることは困難であると思われる次第であります。
第三は郵便貯金
関係予算の空白でありまして、この
法案として新たに設けられる郵便貯金
特別会計は、そのほとんど全部が資金
運用部から支拂わるべき利子でありまして、この利子収入がま
つたくないことになるので、
支払いの点において停滞を生ずることは必然となるものであります。
以上のような問題がありまして、その障害が尋常一様のものではなく、簡易生命保険積立金等の
運用の問題に籍口して
審議遅延と
なつた場合の社会的
責任は、だれが負うべきものであるか、愼重に
考慮すべきものであります。しかも
予算審議の過程において、野党各派は、この
特別会計予算についてなんら反対の意思をなくして、その裏づけとなる
法案の
提出された場合、ことさら反対の意思を表明せられることは、
国会の
審議過程において、私は不思議に思うのであります。(「反対したじやないか、速記録を呼んでみろ」と呼ぶ者あり)
わが
自由党としては、如上の事由によりまして、單なる議論せんがための議論でなく、国の金融政策よりする大衆的見地より三
法案に
賛成の意を表するものでありまして、郵政
関係者の切実なる声は十分脳裡にとどめ、他日の
善処を期する次第であります。
以上をもちまして私の
賛成討論を終ります。(
拍手)
〔発言する者あり〕