○若林義孝君 ただいま上程に相なりました
宗教法人法案につきまして、その立案の
趣旨及びその
目的と内容の概略を申し上げますとともに、これが文部
委員会における
審議の経過並びに結果につきまして御
報告を申し上げます。
国民の心のかてである、これらの宗教の混乱を防ぎ、それぞれ自由活発なる活動と発達とをなし得るよう保護助成を加えまして、
国民の魂のよりどころを確実なものとし、かつ正しく深いものといたしまして、
国民文化の発達に資する必要があるのであります。さらに敗戦によ
つて人生観に混迷を来しまして、帰趨の定まらない上に、国際情勢の不安な状態もまた強い影響を與えておりまするので、今日急速に宗教上の適切なる施策を講ずる必要があるのであります。現在宗教法人令が実施せられておりますが、この法令は、さきにポツダム勅令として公布せられたものであります。その当時の
事情により、とりあえず旧宗教団体法にかわる、宗教団体の財産の保全のための善後措置として制定せられたものでありますので、今日の
実情にそぐわない点も多々現われて参
つたのであります。
以上の
趣旨に基きまして本
法案を
提出せられたのでありますが、この
法案の
目的といたしますところは、あくまでも信教の自由、政教分離の原則を基本といたしまして宗教団体に法人格を與え宗教法人が自由で、かつ自主的な活動をするための物的
基礎を得させることにあります。同時に宗教法人の
責任を明確にし、かつその公共性を強調するにあるのであります。
次に、内容のおもなる点について申し上げます。
第一に、宗教法人の規則の作成と変更及び合併等に関し認証
制度を設けまして、信教の自由に対しては慎重な注意を拂いつつ、宗教法人の規則の作成等については所轄庁の認証を要することとしたのであります。これによりまして、宗教団体でないものが宗教団体にな
つたり、法令に適合しないような規則の作成や設立の手続がとられることを防止したのであります。
現行の宗教法人令は、宗教法人の設立には、いわゆる準則主義、登記主義によりまして、みずから規則を作成して登記さえするならば成立し得ることにな
つておりますので、公益法人成立の手続としては不合理なものであると思われるのであります。この点を是正するとともに、兼ねて自由の濫用を抑制することとしたのであります。しかし、この認証はあくまで宗教団体の
立場を尊重いたしまして、所轄庁に認証すべき期限を設けるとか、再
審査訴願の道を講ずるとかいたしまして、愼重な手続を定めております。同時に、この
法律の公正な
運用をはかるために、文部大臣の諮問機関として文部省に宗教法人
審議会を設けまして、所轄庁の認証拒否の場合あるいは訴願の場合はこの
審議会の意見を求めなければならないことにいたしております。
第二には、宗教法人の管理
運営面の民主化をはか
つたことであります。すなわち、
責任役員制と公告制とを設けたことであります。宗教法人の事務決定機関として三人以上の
責任役員を置き、そのうちの一人を代表役員として宗教法人の代表者としたのであります。しかし、その
資格、任免、職務権限等は、その宗教法人の
特殊性に従
つて自主に規則を持ち得ることにな
つております。一方には公告
制度を定めまして、これら役員の
業務執行の公明適正を期したのであります。すなわち、不動産の処分や財産管理上の重要なる行為及び合併、解散等の行為は、あらかじめ信者その他の利害関係人に周知させることにしておるのであります。
第三は、宗教法人の合併を認めたことであります。これは宗教界の要望に沿
つたものでありまして、
現行法令には、これを欠いております。不便でありましたので、新たに制定したものであります。
このほかに経過的措置を定めまして、急激なる変化を避けるために、
現行宗教法人は、原則としてこの
法律による認証を受くるまでは、
現行宗教法人令による宗教法人として存続し得ることといたし、その他登記等の手続
規定、あるいは民法等の準用
規定や解釈
規定をできるだけこの
法律の中に取入れております等も特徴のある点であります。
次に、
審議の経過について申し上げます。本
法案は、去る二月二十七日、本
委員会に付託せられたのでありますが、爾来ほとんど連日にわた
つて各委員より熱心なる
質疑が行われましたが、去る十九日には終日公聽会を開きまして、学識経験者側として安藤正純君、岩本東京大学教授を初めとして十六名の臨席を得まして、それぞれ真劍なる意見を述べられたのでありますが、結論といたしましては、本
法案の成立をほとんど全員が期待しておるのであります。各委員の
質疑に対する当局の答弁によりまして、その内容の巨細が明らかにな
つたのでありますが、この
法案に関連ある爾余の問題につきましていろいろ検討せられたのであります。
本案の解釈上重要な見解を述べられておりますが、そのうちの一、二を申し上げますと、宗教の嚴密なる定義を
規定することは困難であるのでありまして、しかし宗教法人
審議会において、広い
意味の社会通念に基き、おのずから妥当なる線を見出し得べきはこと、及びその委員の人選については宗教界のみに偏することなく、宗教に理解ある第三者的
立場にある権威者をも加えること、神社に関しましては、今日置かれておる国家的
事情と行政的取扱い上、広い
意味での宗教の範疇に入れることの妥当であること、信者とは宗教団体関係者を包含するすべての関係者、たとえば氏子、崇敬者、教徒、信徒、檀家、檀徒等一切を包含するものであること、また免税の取扱い中、新たに
予定した土地、建物については、
予定の條件のみでは、免税の対象になり得ること、個々に決定さるべきことであ
つて、一般論として免税の決定は困難であること等があるのであります。いずれその詳細な内容につきましては、速記録によりまして十分なる御了承を願いたいと存ずるのであります。
次いで
討論に入りまして、
自由党は
賛成、
国民民主党を代表いたしまして笹森順造君より要望を付して
賛成、
社会党も要望を付して
賛成、公正倶楽部も同様に
賛成の意見を述べられ、
共産党を代表して渡部義通君より
反対の意見の開陳があ
つたのであります。
採決の結果、
起立多数をもちまして、
本案は
原案の
通り可決すべきものと議決せられた次第であります。
以上をもちまして
本案に対する御
報告を終ります。
なお、ただいま
議題となりました
市町村立学校職員給與負担法の一部を
改正する
法律案につきまして、本
委員会における
審議の結果を概略御
報告申し上げます。
本案は、教育
委員会法の制定、学校教育法の
改正、給與関係諾法令の改廃等に伴い、市町村立学校職員の給與の名称、退隠料及び公務災害補償の負担区分並びに小中学校の教員の定数等につきまして必要な
改正を行い、教員の給與の安定をはかるとともに、その身分の保障を一段と完全なものにしようとするものであります。
そこで文部
委員会といたしましては、愼重に
審議をいたしました結果、本
改正案の
趣旨が妥当であることを認めまして、
討論を省略いたし、
全会一致をも
つて原案の
通り可決すべきものと議決いたしました次第であります。
以上御
報告を申し上げます。(
拍手)