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国務大臣(
山崎猛君) ただいま小林君より
緊急質問が行われたのでございますが、その御趣意につきましては、
政府といたしましては、林君と同様に、この問題について心を痛め、
最善を盡して、
国民の許されたる、與えられたる
権利を保護したいと努力しておるような次第であります。ただいま
お尋ねの中ごろにおきまして、十分お聞き取り申すことのできなかつた状況にもあ
つたのでありますが、その終りにおいて
項目をあげて、六
項目について具体的な
お尋ねがありましたので、この点について明瞭にお聞き取り申したとこちを
お答えしたいと
考えます。
第一には、かかる計画的に行われる
拿捕に対し、
政府はこのまま
黙視、放任するかどうか、将来の
講和とも関連して重大な問題を内包しておる、特にこの問題を取扱
つておる
主管官庁は何省何部であるか明瞭にしてほしい、こういう点であります。このような
国民の
権利が
危險にさらされておる状態に対して
政府が
黙視せざることは、申し上げるまでもないのであります。また将来の
講和とも関連して重大な意味を内包するという点においても全然御同感でありまして、
講和会議の進展というような場合においては、この問題は大きく取上げて
国民の
期待に沿わなければならないと
考えておる次第であります。さらにまた、
主管官庁は何省何那であるかという
お尋ねでありますが、
主管官省として、あるいは
返還を
要求するというような渉外的の案件につきましては申し上げるまでもなく
外務省でありますが、これを
監視し保護するという面から申しますると、
農林省と
海上保安庁が協議の上にその
監視保護の任に当
つておるような次第であります。ただ
農林省水産庁の場合におきましては
当局者より御
説明があろうかと
考えますが、
運輸省海上保安庁に関する限りにおきましては、
海上保安庁の
活動について、その裝備の点において
施設の点において
法律的の
制限を受けておりますがゆえに、十分なる
活動が
現状においてはできないのであります。一言を加えて申し上げますならば、
海上保安庁の
監視船は、
基地を去ること百海里以上に出動することはできないような
制限のもとにあるのであります。このたびのような、いわゆる
支那海における
不法拿捕というようなことは、
日本の
海上保安庁の
基地を去る百海里ぐらいのところで行われるのではなくして、数百海里の遠き場所において行われるものであり、われわれ
占領治下の今日、まことにやむを得ないのでありますが、この点については、まことに歯がゆい感を持
つておるような次第であります。
第二には、
不法拿捕を受けた
漁船と
乘組員の
返還要求を、
中共政府に対し何らかの
方法で折衝する
意思があるかどうか。第三には、今後起らぬよう申し入れる
考えがあるかどうか。実は、このような
不法なる
拿捕に対しては、できることならば、
中共といえども、どこといえども、積極的に進んでその
返還なり、将来を押える手を打つべきでありますけれども、
講和会議前、
占領統治下の今日においては、
日本政府は直接
中共政府に対して交渉いたすことの力がないのであります。この点は、
連合国軍総
司令部を通じて、その
要求を果すために努力するほかに
方法はないのであります。この線に沿うて
政府は従来もやりつつあり、将来もこの線を強く
要求したいと
考えておる次第であります。
第四に、もしすみやかに
返還される見込みがないとすれば、
船主及び
乘組員の
損害を補償する
措置をとるかどうか。これは
水産庁の
当局者より、
漁業に関する直接の問題でありますから、
お答えをすることにいたします。
第五、
マツカーサー・ラインを絶対越えることのないように
わが国の
監視船を強化拡充し、
漁船べの
注意を
徹底せしめ、ますます
国際的信用を高める
方策を必要と思うが、
政府の
対策はいかがであろうか。これにつきましては、
海上保安庁に関する限りにおいては常に細心の
注意を継続して参
つておるのであります。ここに具体的に二の例をあげて申し上げますならば、これらの
漁船に対しまして、毎日正午の
位置を通報せしめる。正午にはどこにおるかという船の
位置を通報せしめる。さらにまた、
航海作業の
日誌を詳細につけさせておくのであります。こういうことによ
つて、はたして、
マツカーサー・テインを侵したりやいなやということが、その正午の
位置の通報と、
航海作業の
日誌を照し合せて、おのずからわかるようにいたしておるような次第でありますが、さらにまた、
マツカーサー・ラインを
越ゆべからず、これは
国民の名誉にかけてへ
世界的にも
信用を博するゆえんなのでありますから、この点については、それぞれの
船主、
艦員に対して常に
注意を促しておることは、申し上げるまでもないような次第であります。われわれ
占領治下にあ
つては、こういう面から消極的ながら
注意を絶えず
拂つて、お互いの
権利を守ることに力を盡しておるような次第であります。
六番目には、
不法拿捕から
漁船を守るために
快速の
哨戒艇を配置して、
相手方の
行動をあらかじめ察知する
方策を立ててはどうか。これは非常にむずかしいのであります。限りある力をも
つて、限りなき
といつてもさしつかえない空漠たる
海上において、どこに、どういうふうに起るかということをあらかじめ予知し、
監視し、保護し、警戒することが困難であるということは、御了察を願えることと思うのであります。もちろん、それゆえにわれわれはこれを閑却はいたしておりません。
最善を盡しておりますけれども、
事情の困難なることは御了解を願いたいのであります。その上に、
海上保安庁の持
つておるところの
監視船には
法律的の制約がありまして、その限度を越えたる設備をすることはできないのであります。しかしながら、
予算の許す
範囲におきましては、
最善を盡して御
期待に沿うような
施設をいたしまして、
国民の
権利保護に当りたい、かように
考える次第であります。
以上
お答えいたします。
〔
政府委員島村軍次君
登壇〕