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1951-02-14 第10回国会 衆議院 本会議 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月十四日(水曜日)  議事日程 第十二号     午後一時開議  第一 自由討議     ————————————— ●本日の会議に付した事件  吉田内閣総理大臣外交問題に関する発言に対する質疑     午後一時四十九分開議
  2. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 昨日の吉田内閣総理大臣外交問題に関する発言について質疑の通告があります。この際これを許します。苫米地義三君。     〔苫米地義三登壇
  4. 苫米地義三

    苫米地義三君 私は、国民民主党代表いたしまして、講和問題に関し過般来ダレス特使吉田総理との間に会談が行われましたが、その内容及び首相の今後の態度について、いささか質問を試みたいと存じます。  終戰以来平和條約の締結に対しましては、一日千秋の思いをもつてわが国民はひとしく待望いたしておつたところであります。五箇年有半を経た今日、ようやくその時期の到来を見るに至りましたことは、まことに喜びにたえません。ダレス特使来朝こそ、まさに旱天に雲霓を見るの感があつたのであります。私は、この機会に、ダレス大使の労を感謝するとともに、大使特使といたしまして日本に送られましたトルーマン大統領に対し深甚の謝意を表するものであります。(拍手)  しかるに、国民的願望であるこの講和問題の進行に際しまして吉田総理のとりました態度は、依然として旧来の秘密外交態度に終始した感がございます。(拍手)昨日の報告演説においても、きわめて簡單で、国民の聞かんとする要点をはずしております。全国民は、このあつけない態度に対しましては、おそらく失望を禁じ得なかつたでありましよう。けだし、單によらしむべしという態度でなく、国民をして十分納得させるために知らしめなければならないと思います。よつて私は、次の各項について、国民にかわし首相見解を伺いたいと存じます。  まず最初に、ダレス講和大使を迎うるにあたりまして、わが国講和受入れ態勢に不備があり、不十分であつたことは、まことに遺憾にたえません。(拍手)われわれは、昨春以来、超党派外交を提唱し、また去る一月二十三日に吉田総理から協力を求められましたのに対しまして、いやしくも講和問題に関する限りわれわれは全幅の協力を惜しまないと事いうことを申し上げました。と同時に、社会党その他の会派にも協力を求めるように強くお勧めいたしたのであります。それは、講和受入れ態勢の整備上、総理として当然拂うべき努力であつた思つたからであります。しかるに、爾来、ダレス特使来朝にもかかわらず、吉田総理から何らの相談も連絡もありません。また他会派にも呼びかけた様子もございません。かようなことでは、吉田総理協力を求められた意義は一体どこにあるかということをわれわれは見出すことができないのであります。われわれの協力ということは、ただ軍白紙委任状首相に渡すことでは、ございません。(拍手ダレス氏は、おそらく日本の内部に著しい意見相違があつたということを発見いたし、講和促進の上に遺憾の意を表しておつたと私は思います。ダレス氏は、入も知るように超党派外交主張者であり、また現在身をもつてこれを実践いたしておられることは御承知通りであります。おそらくその心中、日本政治家はもつと謙虚な態度国論の統一をはかつてほしいという感じを持つて帰られたに相違ないと私は思う。吉田総理は、はたしてその必要を認められないのかどうか、認められるならば、今後どんな態度をとつて行かれるのであるか、この際これをはつきりさしておくことが必要だと思います。(拍手)  また吉田総理は、先般本会議答弁で、講和に対しては世輪を指導するということはない、世論が自然に盛り上つたら、それに乘つて行く、ということでありました。今回とられたその態度は、まつたくこれに反しましてほとんど独善的に進捗した感があります。世論に聽従するということは、これで実行されておるのでありましようか。八千万国民とともに講和をするという意気込みは、まつたく見られないのであります。(拍手ダレス特使は、全日本国民との講和でなければならないことを強調しております。私は、その態度の公明なことに敬意を表しました。同時に、吉田総理独善的官僚外交に対しましては、国民とともに不満にたえない。総理は、今後もかような独善的官僚外交をやろうとするの、でありますか、その態度を伺いたい。(拍手)  第二点は、ダレス氏の全面講和に対する努力を無視する態度であります。吉田総理及び自由党は、常に早期講和を唱えております。そのためには單独講和または多数講和でもさしつかえないと主、張いたして参りました。しかるにダレス氏は、いまなおソ連参加を断念しておりません。マリクソ連代表とは、帰米後にもさらに交渉しようとしておるのであります。この忍耐強い努力を顧みないで、責任の地位にある首相並びに與党單独講和でさしつかえないと主張するのは、そこに何か理由がなければならないと私は思います。(拍手單独講和を行う国には、なるほど平和が回復するでありましよう。しかし、残余の国に対しましては、どうして一体平和を回復しようとするのでありましようか。もとよりソ連参加ということは相当困難であるかもしれません。しかし、最後の瞬間まで努力を続けるべきものでありましてこれによつて可能世が生れるかもしれない。(拍手世の中には奇跡さえある場合もあるのであります。また、ただちに参加が困難であるといたしましても、平和裡参加機会を残すこともできるはずであります。(拍手)政局を担当する首相與党とが、独断的な観点から、ある推定を前提としての態度は、その責任上、軽率、不謹愼のそしりを免れないと思います。(拍手)なるほど講和は早い方がいい。しかし、講和のもたらすものは平和と安全と独立でなければならない。單独講和のよつて招来するものは、混乱、紛争の動機を與える危險さえあるのであります。吉相並びに與党の、單独講和に偏向するのは、どういう意味であるか、その真意を伺いたい。(拍手)  第三には、領土の問題に関することであります。領土の問題については、ポツダム宣言に認められた四つの島のほかに、わが国民が琉球小笠原諸島並びに千島の変換を熱烈に希望しておることは御承知通りであります。これはまた各政党とも一致した希望でもありましよう。しかるに、米案七原則第三項には、琉球小笠原諸島国連信託統治としてアメリカの管理に移し、わが領土権は永久に否認されようとしておるのであります。しかも、吉田首相はこれに同意を與えたとさえ伝えられるのであります。もし、はたしてしかりとするならば、事はすこぶる重大であります。吉田首相は、この国民的熱望ダレス特使にいかように懇請し、いかにして同意されたのであるか、明確に答えられたい。(拍手)わが党は、この問題については、十年間の期限付信託を承認することにして、その主権はあくまでもこれを主張し、懇請するつもりでございます。(拍手政府は、この千載一遇の機会に、全国民の名において、熱誠をこめた懇請を続けるべきであると思うのであります。(拍手領土権問題は民族的願望であり、国民感情としても最も強烈に残存するものでありまして、かかる問題を歴史に残すということは、日米将来の親善友好関係に好ましからざる影響を招来することは、火を見るより明らかであると思います。(拍手米国もまた、仏つくつて魂を入れないような講和となることは、決してその本意ではないと存じます。首相は、今後これに対してどういう努力を拂うつもりでありますか伺いたい。  第四点は、講和後の安全保障の構想、それから警備力に関する問題であります。安全保障わが国民への最も重大な関心事でありますが、政府は、再軍備憲法上許されないのみならず、財政上困難であるから不可能だとしておられます。われわれもまたこれに同感であります。しかし、国際情勢をつぶさに観察するときに、われわれの周囲には侵略と暴行とが次々と横行しつつあることは嚴然たる事実であります。それゆえに、われわれは、自衛のためにある程度の装備をしなければならないことは、もはや議論の余地はございません。(拍手)しかも現在の警察予備隊では、とうていその目的を果し得ないということも、すでに国民常識となつております。政府は、この点に対していかに考えられ、いかに対処せんとするか、そのお考えを伺いたい。また現在の警察予備隊はどんな内容を持つておるのであるかは、一般国民承知しておりません。そこでこの機会に、どういう程度武装を持つておるか、またその内容から見て憲法と牴触することがないかあるかということを、はつきりと説明していただきたい。(拍手)もし国家の安全のために警備力の充実を必要とし、しかもその内容が、いやしくも憲法の範囲を越えるような懸念がありまするならば、むしろ国民に訴えて進んで憲法の改正をいたし、祖国防衛の全きを期すべきではありますまいか。この点に対し、首相信念を伺いたいのであります。(拍手)  第五点は、国内治安の問題でございます。吉田首相は、過般の施政演説において、国内共産主義勢力の衰退を高調して、治安維持上少しも心配はないと言われましたが、それは現在でもなおさように思われておりましようか。ダレス特使は、工業倶楽部演説で、間接的侵略に対しては自衛力強化をもつて、みずからこれに当るベきことを要望しております。客観的に見まして日本危險は国内的にも十分伏在するという見方であります。政府は、この国内情勢をどういうふうに判断されるのであるか。過日、「平和のこえ」に関連いたしまして、首謀者家宅捜査を行つた際に、多数の武器、弾薬等を発見したことは、明らかに暴動計画を示すものと見なければならない。(拍手政府は、すみやかにその実体を検討して、これに善処すべきであると存じます。(拍手)さきに追放されました共産系の諸氏の逮捕が今なお五里霧中にある実情に照しましても、かような警察力では、はたしてこれら計画的暴動を阻止し、治安維持の大任を果し得るやいなや疑わしいのであります。吉田総理は、とかく楽観に過ぎております。おそらく偸安の夢をむさぼりつつあるようにも思われる。朝鮮事変の実例に勘案して、一体どういうふうに考えられるのであるか。  世の中には、わが国中立論を振りかざして、無抵抗主義が平和を呼び、武装はかえつて戰争を招くと言う人も一方にはございます。そうして、安全保障はすべて国連にまかすという虫のいい議論もありますが、世界列強が非武装であり、公正信義国際間の規律となり得れば、それもできるでしよう。日本憲法は、まさにそのような世界を目標としてできたものであります。しかし今日、共産帝国主義が、味方でなければ一切敵だという鉄のような方針を実行しつつあるこの現時代におきまして、はたして中立ということはあり得るであろうかどうか。吉田首相は、その点についていかにお考えになつているか伺いたい。  第六点は、吉田総理米軍駐留希望されるのであるかどうか、その点であります。ダレス特使工業倶楽部においての講演によりますと、講和が成立した後に、日本治安維持力の欠陥を補う場合、もし日本希望するならば米軍駐留を好意的に考慮してもよろしい、こう言われております。また集団安全保障に、日本希望するならば参加を許してもよろしい、こう言われております。吉田ダレス会談では、当然これに触れておると思うのでありますが、吉田首相は、講和後における米軍駐留に対して希望されているものかどうか。また集団安全保障協定参加希望されるのかどうか。もし米軍駐留が実服する場合に、その期間というものは暫定的でなければならないと思いますが、首相はこれに対してどういう考えをしておられるか。またこの駐留は、万一にも米ソ熱戰に突入する不幸なる事態が起つた場合でも依然として継続され、断じて日本を捨てないという協約ができるでありましようか、この点も伺いたいと思うのであります。さらにまた、集団安全保障協定参加するとするならば、わが国侵略を受けた際には当然その援助が受けられるのでありますけれども、それと反対に、他の参加国侵略を受けました際には、わが国もまたこれを応援すべき当然の義務が生ずると思うのであります。すなわち、わが自衛兵力を他国に出すということになると思うが、これは憲法の許さないところであるばかりでなく、たとい自衛力強化する場合がありましても、外国への進出は断じてしてはならないと思うのであります。(拍手)このに対しまして、吉田吉相の所信を伺いたい。  第七点、経済援助要請に関して、もう少し詳細に御説明をしていただきたい。経済自立というものは、なかなか言うべくして容易にできないのであります。ことに各国が軍備拡張時代に入りまして、世界経済変態的様相を示している今日でありまして、わが国経済復興には相当の時と国民的努力とがいることは申すまでもありませんが、いずれにいたしましても、アメリカ援助なしには、とうてい達成はできません。すなわち、当面、原材料、資金、技術はもとより、特に食糧供給援助を得ることは絶対必要だと存じます。それゆえ講和條約には、わが経済復興力を阻害するような切の制限、拘束等は排除されることを要請すべきであります。(拍手)また貿易上の差別待遇を受けないように懇請するのも当然であると思います。(拍手吉田総理は、この点について、ダレス特使にどういうふうにお話なつたか、詳細に説明してもらいたいのであります。また国防力強化を必要とするならば、その規模と裝備いかんによつては莫大な経費を要するのであります。国力に伴わない軍備は負担し得ませんが、さればといつて国内治安がなければ国家独立維持は困難であります。政府は、どういう程度にこれを考えるか、具体的にどれほどの裝備を拡充しようとしておられるのか、この点を具体的にご説明願いたい。(拍手)  これを要するに、講和戰争に対する跡始末であり、過去の清算を意味するのでありまするが、同時に将来の友好親善関係を樹立する建設的意義はさらに重大であると存ずるのであります。従つて敗戰国といえども、わが民族感情不満が歴史的に残ることは避けなければなりません。また侵略溝にそのよい口実を與えるような條件も避けなければならないと思う。このことは決して利己的な主張ではなく、将来国際間の平和親善を招来するわれわれの衷情であります。かかる観点に立つて、われわれは、少くとも左の三項について強い希望を訴えるものでありまするが、これはわが国民の熱望でありまするのみならず、ダレス特使においても、その方向を示しておるように思います。すなわちその三点というのは、講和は対等の立場で行われること、(拍手)第二は、完全なる独立主権回復を許されること、(拍手)第三は、歴史的、民族的にわが領土であつた領土主権を認められること、(拍手政府は、全国民の名において、これを強く懇請すべきであると思うのであるが、首相はいかなる見解態度をとられんとするのでありますか、その決意のほどを伺いたいと思うのであります。(拍手)  以上各項にわたつて吉田氏がダレス特使との会見によつて得られました見解と、これに対する信念とを伺いまして、私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  5. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  私のダレス特使に対する話合いと申しますか、相談については、すべて秘密であつて秘密外交をなお継続するかというような意味合いと考えます。が、一体外交秘密であるのが本体であつて秘密でない外交はおかしな話なのであります。(拍手発言する者あり)聞きたまえ。(発言する者多く、聽取不能)舞台もあり、楽屋裏もある……(発言する者多く、議場騒然聽取不能舞台裏の話まですべきではない。これは、ぐずぐずおつしやる方が間違つておると思うのであります。すなわち、舞台裏の話は話、またその話の結果表面に出た芝居がどうあるかは、この芝唐の結果によつて御判断になるべきであると私は考えるのであります。  また超党派外交についてお話がありましたが、常に申しておることは、超党派外交けつこうであるが、しかしながら、でさなければ、相手がこれに応じなければいたし方ないではないかと申すのであつて趣意けつこうであるが、できないから困るというのである。趣意において反対ではないのであります。すなわち私の態度をもつて謙虚でないとおつしやるが、むしろ私の稀な謙虚な気持でもつてお聞き願いたいと思うのであります。(拍手独善だ」と呼び、その他発言する者多し)これが独善というお話は、むしろ諸君の方が独善であつて、もし独善であるならば、ダレス特使に対して諸君がお会いになることも私は妨げたかもしれません。しかし私は、このたびのダレス特使のミツシヨンは何であるか、広く国民意思を聞きたい、意見を聞きたいといつて来られたので、私は自由にお聞きになることを希望し、また諸君も自由に会われたのであります。もし独善であるならば、政府だけの意見を申して、そうして諸君意見を開陳せられることを妨害したかもしれないと思うのでありますが、私は、むしろ国民の各方面の意見を聞くようにダレス特使にも希望し、またダレス特使も、限られた時間であるにもかかわらず、広く諸君にお目にかかつてお話をせられたということのように承知いたしておるのであります。どこが独善であるか、どこが秘密外交というか、あるいはひとりよがりと申すか、これは私においては、あなたの攻撃が的をはずれておると思うのであります。(拍手領土問題についても、私は国民の意のあるところを十分お伝えいたしたつもりであります。しかしながら、その詳細については、こういう話をいたしたということは、楽屋裏になりますから、申す理由はないのであります。  安全保障については、私の昨日の演説において……。     〔発言する者多し〕
  6. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 静粛に願います。
  7. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君)(続) 安全保障については、昨日も申した通り、今日は集団的攻撃に対して、いかなる国といえども独力をむつて自己の安全を保障できない状態にあるのでありますから、日本国としては、自己国内の安全はあくまでも自力をもつて保障すべきであり自力をもつて当るべきでありますが、集団攻撃の場合に、集団的に防衛をするということは、今日の通義であります。これをしもいかぬというのは、私は、はなはだ了解に苦しむのであります。(拍手)  また米ソ戰争が万一起つた場合には、というお話がありますが、これは、かかる想像の場合に対してはお答えをいたしません。  また日米関係友好的親善関係を樹立すべきである、これは私も御同感であります。ゆえに、このために私はでき得るだけの努力をいたし、また国民諸君努力をせられるであろうと思います。日本の将来の運命は、いわゆる自由民主主義国家と一連になつて反共防衛をなすのが日本の将来の道を開拓するゆえんであることは、昨日申した通りであります。これによつて日米の間の親善——これが日本の将来の行くべき道であり、またこれによつて日本の安全が確立せらるるのみならず、世界の平和を確立し、また日本の将来を開くためには、日米親善ということは最も大事な問題でありましてこのためにその確立をはかるということについては御同感であります。  また経済援助の問題でありますが、これは日本政府品要請を待つまでもなく、日本国経済的に自立いたすようにということは、これはダレス氏においても言明せられたのみならず、つとに米国政府が言うところであつて日本経済が崩壊するようなことがあれば、結局反共、防共の線の一角がくずるる話であります。ゆえアメリカ政府としては、十分日本経済援助に対しては考えておるところであります。しかしながら日本としては、一に米国援助のみによつて経済自立をはかるべきものではなく、自力によつて日本経済を確立いたすべきところでありますから、私は長くアメリカの対日援助による考えはないのであります。対日援助はなるべく早くこれを打切つて経済自立のできる道に進み、また米国政府日本経済自立のできるように援助をいたす考えであると承知いたします。従つてまた、アメリカ援助によつてのみ日本経済が立つように導くようなことは、アメリカ政府趣意とするところでないと考えます。これもダレス特使が私に言明せられたところであります。ただ、諸君にここに申すことは、ダレス特使は、日本国論がどこにあるか、講和に対する日本各界意思意見がどこにあるかを聽取せられるために来られたのであつて、ただちに講和條交渉に入るために来たのではありません。従つてまた、ダレス特使も、ごく率直な意見を述べ、われわれも、ごく素直に意見を交換いたしたのであります。従つてまた、ここに交渉は、——同意したとか、あるいは固執したとかいう問題は全然ないことを御承知を願いたい。(拍手
  8. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 淺沼稻次郎君。     〔淺沼稻次郎登壇
  9. 淺沼稻次郎

    淺沼稻次郎君 私は、日本社会党代表して、昨日本会議場においてなされたダレス・吉田会談内容に関する総理大臣演説に関質し質問をせんとするものであります。  総理大臣演説はあまりに抽象的であり、あまりに簡潔であつて、その内容を捕捉することのできないのは、はなはだ潰憾なことであります。ダレス特使は、一月二十五日来朝以来、吉田総理大臣初め各界代表に面会し、講和問題について意見を求められたのであります。現在、日本の国には外交権はありません。しかし、国家として外国相談し、折衝に応ずるのは吉田総理大臣であり、吉田内閣であります。従つて吉田ダレス会談には国民の目が集中されておつたのであります。三回の会談において何を相談し、何を折衝し、何を約束したかということは、国民の聞かんとするところであります。(拍手)しかし、昨日の演説では)国民は納得しなかつたと存じます。そこで私は、国民の聞かんとするとこるを取上げて、掘り下げて総理大臣説明答弁を求めたいと存ずるのであります。総則大臣は、秘密外交というそしりを打破するためにも、率直に、国民の納得の行くように答弁を願いたいと存ずるものであります。(拍手)  第一には、講和形式に関する問題であります。申すまでもなく講和会議は、日本人及び日本国が、自由国民として自由国家として国際社会に再出発する基点と存じます。言葉をかえて言えば、日本にとつては、戰争によつて失われたる国家の自主権回復であり、民族独立にあると存ずるのであります。この講和会議にあたつて特に日本が考慮しなければならないことは、われらは終戰直後ポツダム宣言受諾という客観的事実と、戰争に対する鋭い批判の上に、平和、非武裝宣言をなし、憲法第九條において「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戰争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と規定し、現在日本は、身に寸鉄をまとつていないのであります。しかも国際情勢は、国際連合が平和への必死の努力をしておるにもかかわらず、世界部分部分には戰争を内包する姿を見るのであります。戦争か、平和かという課題は、全人類にとつて大きな課題となつておるのであります。講和会議を前にして、日本も平和か戰争化という大きな岐路に立つておると言つても過言ではありません。かかる際に、いかなる形式講和が結ばれるかということは、国民関心事考えます。  およそ講和形式には三つあると存ずるのであります。第一には、極東委員会加盟諸国との間に全面的融和を結ぶこと、第二は、できるだけ多数の国と多数講和を結ぶこと、また日本がある一国と融和と結ぶとともに、さらに個別に講和を結ぶ個別講和形式等が考慮されるのであります。先ほど苫米地さんも言われました通りに、二月二日、ダレス氏は、日米協会の演説で、自分及びアメリカは今後さらに平和のために努力すると述べ、帰米後はソビエトを含めた連合国側と協議すると言つておるのであります。また米国の対日講和七原則の一つには全面講和主張しておるのであります。(拍手)この講和形式について、いかなる話合いが行われたか、また苫米地さんの言われました通りに、全面講和への努力を、いかほど総理はなされたか、これを私どもは承りたいと思うのであります。全面講和は平和への道であります。單独講和は、意識するといないとにかかわらず、戰争へ通ぜんとする危險なる道であります。国民の警戒し、聞かんとする点であります、  第二点は、再軍備並びに憲法改正に関することであります。吉田総理は、去る一月の施政方針演説において、こういうことを言われておるのであります。そもそも講和條約の問題は、自然わが国安全保障に想到し、すでに種種論議の焦点となつておる、わが国の安全は、国民みずからの力によつて保障され擁護さるべきはもちろんである、しかしながら、軽々に再軍備を論断するのは私のとらざるところであります、わが国軍備論は、すでに不必要なる疑惑を中外に招いており、また事実上強大なる軍備は、敗戰後のわが国力の耐え得ざるところ、こう言つておられるのであります。その吉田総理大臣言うには、われわれ意を強うしたものでありますが、しかし新聞の伝えるところによりますれば、ダレス会見において、吉田総理は前言を取消され、講和後秘軍備に関し、これを承諾したやに伝えられておるのであります。(拍手)はたしてしかるか、国民の最も聞かんとする点でありまして、この点をお伺いしたいと存ずるものであります。  また、再軍備が現行憲法では不可能なことは、たびたび総理大臣が言明せるところであり、また総理大臣は、憲法の改正は行わないと言明をして参つたのであります。従いまして、今後も総理大臣憲法改正の意図を全然持つておらぬか、この点について伺いたいと存ずるものであります。(拍手)  第三点は、日本安全保障に関してであります。講和後の日本安全保障は、われわれは国連尾集団保障に求めたいと要望しておるものでありますが、総理は、外部から来る侵略に対しては、特定国との問に防衛協定を結ぶことは国民多数の支持を受けると信じ、この趣旨にのつとつて話合いを進めたと言われておるのであります。ある特定国と阻衛協定を結ばれれば、残されたある特定国に、法律的に侵略の口実を與える結果となり、日本が再び戰争に介入する危險を内蔵する結果となると私は信ずるのでありまして、私の非常に心配をするところであります。(拍手総理のこの問題に対する所見を承りたいと存ずるのであります。  また国内の治安の問題は、国民の生活と相関関係に立つもので、国民生活の不安なところに社会不安は醸成され、そこに暴力主義者の乘ずるところがあるのであります。従つて治安維持に必要なる処置は講ぜなければならぬのでありますが、国民生活の安定こそ間接侵略防衛で、また国民生活の安定こそ国家自衛の基盤でなければならぬと考えるのであります。(拍手)この点について総理の所見を承りたいと存じます。  第四点は、領土に関する事項であります。領土に関する要請は、各政党ともに大同小異であります。これ、祖先伝来の領土はこれを確保したいという国民的要諦の帰結と思うのであります。領土の問題は、ポツダム宣言に基き、北海道、本州、四国、九州、この四つの島及び連合国の指定せる周囲の小島ということに最後的にはきまつて、連合国の決定するところに従わなければならぬことであるのは論をまたないのであります。しかし、領土に関する国民的感情は、相当深刻なるものがあります。従つて琉球がどうなるか、小笠原諸島がどうなるか、千島がどうなるかということは、国民の聞かんとするところであります。この点について、いかような話合いが行われたかということの御説明を願いたいと存ずるものであります。(拍手)  第五点は、経済自立に関する事項であります。経済自立のないところに民族独立はないといわれております。日本自由国民として、自由国家として出発するためには、これを裏づける経済的基礎がなければなりません。敗戰日本は、国土の四割五分を失い、そのために食糧の自給は不可能となり、ようやく二合七分の食糧配給が確保されたにすぎません。その他、砂糖、油脂資源等の食料やパルプ原料はその八割以上のものを失い、工業原料は、とるに足らざるものがあるので、あります。文字通り日本は原料なき工場となつたのであります。さらに無謀なる戰争は、二百五十三万の戰死傷者を生み、昭和二十三年度の価格で四兆二千億の国富の被害を受けておるのであります。しかし幸いにも、マツカーサー元帥の好意ある指導と、二十億ドルに達するアメリカ援助にささえられて、廃墟のうちから立ち上りつつあるのでありますが、なお日本人の消費水準は、経済安定本部の調査でも戰前の七三%にすぎず、完全失業者五十万、不完全就業者四百万、年々五十万人の人口が増加しつつあることは、何といつてもこの事実が日本の民主化を阻害し、日本の自由と独立を誤らしめておるということを、私どもは考えなければなりません。しかし、このことは、日本人みずから解決しなければならぬ問題であります。すなわちわれわれは、その創意くふうにより工業を興し、貿易を盛んにして参らなければなりません。また食糧、原料が確保されなければなりません。また賠償の打切り、経済に関する制限の撤廃、航海通商の自由が保障されなければならぬのであります。この日本経済自立に対して、いかなる話合いが行われたか、詳細なる説明を願いたいと存ずるものであります。(拍手)  最後に申し上げたいと思いますことは、講和会議もいよいよ今秋までには成立する形勢になつて参りました。終戰五箇年有半、ポツダム宣言を忠実に履行し、占領政策に協力して参つた日本人の姿が認められ、いよいよ自主自立国家国民たる段階に至りましたことは、まことに喜びにたえません。しかし、その受入れ態勢は、二年前に行われた総選挙の結果成立せる吉田内閣の手によつて行われんとしておるのであります。吉田内閣は院内多数の支持の上に立つておるのでありまするが、院内の数必ずしも院外の輿論を代表しません。しかも、講和会議民族百年の大計を決するものであつて吉田内閣がずるずると担当することは、必ずしも妥当ではないと思うのであります。各新聞社の輿論調査は、講和会議前の国会解散が圧倒的であります。この際、吉田総理大臣は、謙虚な気持で国民意思を問うために国会を解散し、自由に解放されたる国民意思によつて総選挙を断行して講和会議に対処すべしと存ずるのでありまするが、この所見を承りたいと存ずるのであります。  以上をもつて私の質問を終るものでありまするが、答弁いかんによつては再質問を留保いたしまして、私の演説を終る次第であります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  私の昨日の演説が、はなはだ簡に過ぎて……(「おそまつじやないか」と呼ぶ者あり)私は、そまつと考えておらないのであります。十分要を盡して、申すだけのことは申したと思うのであります。演説が長いからといつて必ずしも要領を盡すものではない。しかしながら、私がダレス氏と会つて話をいたした内容は、ことごとく包含せしめたものであります。頭がよければ、これを読んで必ずわかると思います。(拍手)  次に自主独立回復ということは、もちろん必要なことでございます。ダレス特使の声明の中にも、今日アメリカは、日本に対して敵国というような考えではなくて、長く日本との間に友好関係を立てて、友好国としての話をするということを申しておられますから、自主独立回復は、もちろん当然のことであると了解いたします。しかしながら、ダレス氏と、何と何を、どういう話をしたかという内容については、これは淺沼君が、どういう話をダレス氏とせられたかということを私は聞きもいたしませんが、またお答えもいたしません。  また再軍備輪、全面講和に関することは、お答えをいたした通りでありますが、しかしながら、全面講和をすれば必ず戰争にならない、多数講和をすれば必ず戰争になるということは、あなたの御意見でありますが、なるかならないか、私はそのことに対して、はつきりならないとは言わぬ、なるとも申さない。外交は占いでありませんから、占いでお答えをすることはできない。(拍手)  再軍備論については、しばしば申す通りであります。今日私は、再軍備をすべからずという議輪においては、私の所見は、こうもかわつておりません。従つて憲法改正ということは考えておりません。  また米国との問に同盟をするという話でありましたが、ちよつと聞き漏らしましたが、いずれにしても、すでに集団防衛がある以上は、これに対して集団防衛をいたすのが当然であると思いまするから、防備のない日本危險を防ぐがために、ある国が集団、障の協約をしようということであれば、けつこうな話と思います。ゆえにに私は、もしそういう場合については、日本としては、これに応じて日本の国土を守るという策を立つべきであると思います。  領土に関しては、これは講和條約の内容をなすものでありまするから、ここに、いかなる話をなしたかということは申しませんが、しかし、先ほども申した通り国民希望するところ、要望するところは遺憾なく申した考えであります。(拍手)  また日本経済独立についてのお話でございますが、御趣意同感であります。また米国も、先ほど申した通り、すでに日本友好関係を結び、日本とともに集団保障といいますが、安全保障の方策を考えておる以上は、日本経済自立に対しても十分の援助を與えることと私は確信いたします。しかし、いかなることを話したかということは申し上げにくい。こういうことが、あたりまえであります。  また、講和條約を前にして再び総選挙をしないかというお話でありますが、これに対しても、しばしば申しておる通り、総選挙をいたす考えはございません。(拍手)  黒田議員の御質問に対して答弁が留保いたしておりますから、お答えをいたします。黒田議員の御質問は、対日講和の七原則はポツダム宣言及びわが国憲法の基本原則こ抵触すると思うがいかんということでありますが、アメリカの対日講和に対する態度は——私の昨日の説明にも申した通り、対日議和七原則は、わが国憲法と矛盾するところとは考えておりません。(拍手
  11. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 長沼君は質問がありますか。     〔淺沼稻次郎登壇
  12. 淺沼稻次郎

    淺沼稻次郎君 外交問題は非常に重大な問題でありますから、お互い聞いてていただき、また総理にも、この国会を通じて、国民がわかるように答弁を願いたいと私は申し上げたのであります。しかし私は、総理がいささかけんか腰であるということは、遺憾しごくに考えるのであります。(拍手)たとえば、昨日の演説において要を盡しておると言われておりますが、なるほど昨日は十分間にわたつて演説をされたのであります。しかし、新聞の伝うるところによりますれば、自由党の代議士会では二十五分にわたつて演説をされたということがいわれておるのであります。(拍手)そうなりますと、総理考え方の中には、国会の本会議よりかも、自由党の代議士の方が強いという感じを持つのでありまして、遺憾しごくに考えなければなりません。(拍手)  ここに私が非常に遺憾に思いますることは、苫米地君の質問に対する答弁であります。初めから、外交は元来秘密である——われわれは、秘密外交のそしりを招かないように、率直に、納得の行くようにお話を願いたいと申したのであります。少くとも秘密ということは、封建と専制の遺物であるということを指摘しなければなりません。およそ民主主義社会には、秘密があつてはならないのであります。総理は、私の質問に対して、社会党代表して会つたのではないかと言われるのでありまするが、なるほど私は、社会党という一党派を代表してダレス氏と会見したのであります。総理大臣は、日本国家代表して会見をしたのであります。自由党の総裁としての会見ではございません。(拍手従つて総理大臣たる地位から申し上げますならば、この国会を通じて国民に報告するの義務があるといわなければならぬのであります。(拍手)私は、そういうような観点において、もう一度総理に対してお伺いをしたいのであります。率直に私の申し上げましたところの要点は五点にわたつておるのでありますが、これはまだ、すべてが盡されておりません。しかし私は、これ以上質問することはやめまして、あと私は答弁を求めませんが、どうか委員会には出席をされて、委員会において十分論義ができるようにしていただきたいということを望みまして、私の質問を打切る次第であります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  13. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  秘密会議については、私は責任を負いません。これは秘密会議でありまして、新聞が何とあれしようが、私はこれに関して答弁責任をとりません。  また私は、ダレス特使との間の話について、十分私の昨日の声明で盡したつもりであります。これはあえて秘密だと申すのではなくして、要領のいい説明諸君にして、諸君を通じて国民の了解を求める考えであります。(拍手
  14. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) これにて質疑は終了いたしました。
  15. 福永健司

    ○福永健司君 自由討議は延期し、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  16. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時四十八分散会