○勝間田清一君 私は、
日本社会党を
代表し、
吉田内閣の施政方針、なかんずく
講和問題と、これに関連する
経済政策について質問申したいと存ずるのであります。
そもそもイタリアの
講和会議の場合とは違
つて、ダレス使節団が、
日本の
講和について、戰勝者が戰敗者に対して命令するといつたような形ではなく、まつたく対等な立場で
日本人と相談する
態度を声明せられたことに対しては、まことに感激にたえないところであります。しかしながら、このことは、当然に
日本政府及び
日本人にみずからの
決意が要請せられるであろうことは想像にかたくないのでありまして、
吉田内閣また
講和に備えてみずから決するところのあるものと信ずるのであります。従
つて私は、まず
講和後に当然問題となるであろうところの重要諸問題について、
一つ一つ吉田総理の確固たる
信念を問わんとするものでありまして、まずわれわれは、従来しばしば論議せられた点でありますけれども、この重大なる
段階に処しての新憲法に対する
吉田総理の新たなる
決意をここに問わんとするものであります。
申すまでもなく、われわれ
日本人は、過ぐる
昭和二十一年十一月三日、極東委員会の承認のもとに、恒久の平和を
念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚いたしまして、新憲法を制定いたしたのであります。そして、国権の発動たる
戰争と、
武力による威嚇、
武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄することとなしたることは、われわれが、一に平和を愛する諸
国民の公正と信義に信頼してわれわれの安全と生存を保持しようと
決意したからであります。しかもこの理想は、
国家の名誉にかけて達成すると、あえて誓つたところのものであります。しかるに、今日
朝鮮事件の重大化に伴いまして、
わが国の
内外にわたり、時局をいたずらに誇大に宣伝し、
日本の再
軍備を達成する目的から憲法改正を主張せんとする者のあることは、まことに遺憾のきわみと存ずるものでございます。(
拍手)対外的な紛争を解決する手段としての
武力を放棄した
日本人の
決意は、国際的紛争が重大化した今日においてこそ、われわれは守り抜かなければならぬと序ずるものであります。(
拍手)われわれは、ここに、もしいずれかの
国家が、われわれのこの
日本憲法の改正をあるいは希望せんとするものありといたしまするならば、二千数百年の伝統に生き、新たなる
決意に生きんとするところの
日本人の名誉と
尊嚴とを傷つけるものであると信ずるものであります。(
拍手)われわれは、ここに
日本の
信念を
世界に訴え、
日本国民をして不動の道に安堵せしめるため、
吉田総理の
信念をあえて問わんとするものであります。
第二の重大なる問題は、
講和と再
軍備は可分なりや不可分なりやという問題について
お尋ね申したいと思うのであります。すなわち、今日諸外国において
日本の再
軍備問題がしきりに論議され、同時に対日
講和の促進が主張されていることは御案内の通りでありまして、アメリカの上
院議員タフト氏は、過ぐる一月五日の
演説におきまして、対日
講和條約を即時締結し、
日本に対し海空軍の援助及び
日本陸上軍を編成できるまで若干の地上軍師団による援助をなすべきであると提唱いたしております。また去る英連邦
首相会議におきましては、対日
講和の締結と、限定された範囲内で
日本の再
軍備を許すことに意見の一致を見たと外電は伝えておるのであります。
われわれがあらゆる困難と闘いながら今日まで忠実に降伏文書の実行に努め参
つたのは、われわれの
独立と平和を保障する
講和そのものであつたことは、疑いのない事実であろうと存ずるのであります。(
拍手)それゆえに、われわれは
講和の代償として再
軍備が
要求されるものと考えることはできないのでございまして、また
日本の再
軍備を可能ならしめ、それを目的として
講和が結ばれるものであるとも考えることはできないのでございます。
日本の
講和は、再
軍備とはまつたく無関係に、そしてそれはポツダム宣言を忠実に実行したところの
日本人に対する
連合国の好意ある代償として行われるものと、かたく信ずるものでございまして、また再
軍備は何ら強制されることなく、
日本人みずからが自由なる意思によ
つて決定すべきであるとの理解を、われわれは関係諸
国家に対し強く希望せんとするものでありまするけれども、
吉田総理の、これに対する確信ある
態度を承らんとするものであります。
次に
吉田総理は、昨日の
施政方針演説におきまして、
日本の再
軍備問題はすでに不必要なる疑惑を外国に與えておること、二つには、強大なる
軍備は敗
戰後の
わが国の国力が耐え得ないという事実、第三におきましては、
独立、自由、愛国的精神の熱情や、正しい観念に欠ける
軍備は
侵略主義、軍国主義の抬頭となるとの理由をも
つて、再
軍備に対する慎重論を期せられたことについては、もちろんわれわれは敬意を表するところでありまするが、しかしながら、釈然たらざる疑点がそこに存在し、われわれ
国民にその一切の疑惑を拂拭せしめるものでないということをここに感ずるのは、私一人のみではないと存ずるものであります。なかんずく、單独
講和を
決意している
吉田総理の考え方が、はたして最後まで再
軍備に反対し続けることができるかどうか、そこに根本的な問題が存在すると考えるのであります。(
拍手)
吉田総理は、昨年十月寄稿したといわれるフオーリン・アフエアーズにおきまして、われわれは決定的かつ取消し得ないほどに自由
世界の側に立
つている、それが他の側のお気に召さなくともいたし方はない、ということを言われているのであります。同時に
吉田総理は、
太平洋並びに
日本の
安全保障確立のため、もし必要とあらば、われわれは
国連主宰のもとにはせ参じたいと切望するものである、とも言われておるのでありまして、この考え方は、か
つてにおける外交白書と同様に、二つの
世界の
一つに決定的に身を寄せんとする
態度でありまして、はたしてアリユーシヤンからフイリピンに至る
防衛戰中の一拠点として
日本の再
軍備が論ぜられている今日におきまして、
総理の考えている再
武裝愼重論が最後まで貫き通せるものであるかどうか、根本的に疑いなきを得ないのであります。(
拍手)
もちろん、今日における
日本の再
軍備が、西欧における、ドイツの場合とは違
つて、その時間的緊急性、地理的緊迫感において雲泥の差のあることは私も認めるところでありますが、
内外にわたる風潮は、この
日本においてさえ、一辺倒の單独
講和が再
軍備に連なり、
戰争に連なる
危險を持
つておることは、疑いのない事実であると存ずるものであります。それゆえに、われわれは、今日インドのネール
首相を中心とするアジア、アラブ十二箇国が、アジアの解放と平和を守り拔くために、二つの
世界の中にあ
つて、よく合理性を求め、協調の道を発見し、不退転の
努力と忍耐を続けている行為に対して、満腔の敬意を表せんとするものであります。(
拍手)これこそが真の民主主義者の勇気であると信ずるのであります。そうして、かかる
態度においてこそ、極右極左等を排して、真に非
武裝憲法を守
つて日本の再
軍備に反対することのできる
態度であると確信いたすものであります。(
拍手)まさに一辺倒の單独
講和を
信念としている
吉田総理は、橋のたもとに来ておる。渡るのか渡らないのか、これを、われわれはここに問わんとするものであります。われわれは、
日本の再
軍備に反対いたします。このことは、
日本の
戰争介入を未然に防ぎ、同時にアジア及び
世界の平和に貢献する、困難にして唯一の光栄ある
態度と信ずるからであります。
われわれ
日本民族は、不幸にして、誤れる軍閥の
指導によ
つて廃墟の中に突き落されたのであります。領土の四割四分を失い、二百六十三万三千人の生命を、あるいは失い、あるいは傷つけたのでありまして、今日白衣を着て、あわれみを乞う
人たち、墓標さえつくることもできない遺家族、
生活の方途に迷う婦女子が、いまなお千数百万を下らないであろう。これらの
人たちは、いかに君が代を歌おうとも、あるいは、いかに修身の教科書ができようとも、
生活が今日のままである限りにおいて、
吉田総理の言う、いわゆる愛国的精神ある
国民を期持することは断じてできないと存ずるものであります。(
拍手)真の
愛国心、新たなる
自衛の心というものは、あるいは荷車をひき、あるいは草を刈り、あるいはハンマーを振うところの、最も市民的ないわゆる勤労階級にと
つて、守りがいがある祖国として
日本が再生するところに期待されるものであると確信いたすのであります。(
拍手)そしてまた、今日お年寄りや、あるいは特需で金をもうけた者や、あるいは資本主義
社会の
指導者たちは、再
軍備を説く権利もなければ資格もないと存ずるものであります。何となれば、銃をとるものは勤労階級であり、青年であります。また
危險、
犠牲を最も多く受ける者は婦人と子供であるからであります。わが党は、ここに重ねて再
軍備に反対するのであります。そして、真に
共産主義と対決するものは
社会民主主義であるとの
信念に立
つて非
武裝憲法をかたく守り、
日本が
平和機構としての
国連によ
つて保障されることを、好意ある諸
国家に対して、あくまでも訴えんとするものであります。
次に
吉田総理に
お尋ねをいたしたいと考えますることは、軍事基地を含む特定
国家との軍事同盟を結ぶのか結ばないのか、また
太平洋軍事同盟をどう考えておるのか、
吉田総理の
信念を伺いたいのであります。前述のタフト氏は、十五日の
演説において、アメリカは即時
日本と軍事援助條約を締結すべきであると強調いたしております。また英連邦
首相会議においては、
日本の再
軍備は、アメリカ軍の
日本駐留を認めるとわきめを日米両国で結ぶことが前提
條件なりと言われておるのであります。まだダレス氏が関係各国と交渉中と伝えられる七つの大綱の中で、第四におきまして、
日本の
安全保障は、
国連がこれを保障し得るまでは米軍がこれを行い得るように、
日本は
米国に対して一定の便宜を典える、と君かれてあります。このことは、
わが国の
安全保障について、国際連合による
安全保障以外に、特定
国家との集団的、地域的
安全保障か、しからざればアメリカとの間における軍事的同盟の條約が締結される
可能性があることを示すものであると考えるのでありまして、それが、たとい
共産主義から
日本を守らんとするアメリカの好意ある意図に出でたといたしましても、全面
講和を不可能ならしめる重大なるポイントとして、われわれが最も危惧するところのものでありまして、われわれは、われわれの調印したポツダム対日宣言第十二項に示された通り、「前記諾目的が達成セラレ且
日本国
国民ノ自由二表明セル意思二従ヒ平和的傾向ヲ有シ且
責任アル
政府ガ樹立セラルルニ於テハ聯合国ノ占領軍ハ直二
日本国ヨリ撤収セラルベシ」との條項が文字通り実行せられるものであると確信して疑わないものであります。
日本の
安全保障は、ただ
一つの
世界平和機構としての
国連に期待をいたしまして、またその
国連が
日本基地を求める場合は、まつたく
日本の
安全保障を目的とする一時的駐屯の場合に限るものと強くわれわれは希望せんとするものでありまして、
吉田総理は、軍事基地及び特定
国家との軍事同盟條約に対していかに考えておるか、これを明確に御答弁願いたいのであります。
またわれわれ
国民は、今日の
講和が
太平洋軍事同盟の起点となるのではないかとの心配を持
つておるのでありまして、終戰以来今日まで、しばしば
太平洋軍事同盟は主張されておるし、またそれが蒋介石、李承晩、キリノ氏等によ
つて計画されたこともある。そうして、この
計画も、インドの反対によ
つて挫折したとさえ聞いておるのでありますが、数日前のニツポン・タイムス紙にも、いわゆるパシフイツク・パクトとして
国会において論議せられたと報道されておるのでありますが、もしわれわれがこうした軍事同盟に参加するとしたならば、その結果はどうであるかということは明白でありましよう。特に重大な問題は、
日本が万一の場合に
戰争に参加する
決意を示したものであるとわれわれは見ざるを得ないのでありまして、ここにわれわれは、
吉田総理の、かかる地域的集団保障の軍事同盟に参加することに対しての確固たる考え方をたださんとするものであります。
次にわれわれが質問いたしたいと考えておりますることは、もし不幸にして單独
講和となつた場合に、それ以後の外交にいかなる困難が予想されるか、特に中共、ソ連に対する外交をいかに処して行かれんとするのであるか、ここに重大な
課題が存在いたしておると考えるのでありますが、
吉田内閣は、今日まで
講和を過大に宣伝して、従
つて国民は、
講和によ
つてただちに平和が訪れ、
独立が確立されるものと素朴に信じ込んでおるのであります。しかしながら、はたしてかくのごとき
楽観論が許されるでありましようか。われわれの見るところをも
つてするならば、西欧側との関係は、確かにある程度前進するでありましよう。しかし、そのことは、同時に、ソ連と中共との間のみぞを一層深くすることを
意味するものでありましてわれわれはミズーリ艦上において英米同様に、中ソに対しても無
條件降伏をしたのであり、中ソに対して、少くともこの降伏
條件の実行を拒否する権能も実力もわれわれにはないからであります。もし
吉田総理が火中にくりを拾わんといたしまするならば、これに対する断固たる確信を、しかもその裏づけを、われわれに示してほしいと思うのであります。
私は、か
つてインドのネール氏が、
日本の單独
講和は
日本に若干の利益を與えるかもしれない、しかしながら、それがアジアの平和にプラスになるかマイナスになるか、にわかに判定できないと言われたことを記憶いたしておるのでありまして、
吉田総理は、單独
講和後に予測される困難にいかに処して行こうとするのか、確信ある答弁を求めるのであります。
最後に一言、領土の問題について申し上げたいと存ずるのであります。すなわち、ダレス氏が
日本と関係諸国との
講和を進めておるという
條件の七項目の中におきまして、領土の問題についての明白な
意味が出ておるのであります。すなわち第一は、
朝鮮の
独立を認めること、第二は、
米国による琉球及び小笠原諸島の信託統治に
同意を興うべきこと、第三に、台湾、膨湖島、南樺太及び千島列島の処分はまず米、英、ソ、中国が決定し、條約成立後一年以内に意見が一致しないときは
国連総会が決定するとあるのでありまして、われわれの
要求は、一九四二年一月一日の
連合国共同宣言が指令したように、
一つは
連合国が領土の拡張を求めないという
原則、
一つは
国民の自由意思に基かないところの領土の変更を行わないという
原則、この
連合国共同宣言の趣旨にのつとりまして、
一つにおきましては南樺太、千島列島、歯舞諸島、色丹島、沖縄島を含む南西諸島、小笠原諸島、硫黄列島、大東島、鳥島諸島等が
日本の所属として最終的に決定せられることを強くわれわれは
要望せんとするものであります。
われわれは、なかんずく今日におきまして
最大の
課題とするところは、われわれは一面におきまして、南樺太あるいは千島列島に対するソビエトの考えには多く
修正を
要求せんとするものであると同時に、われわれは今日合理的な見地に立
つて、沖縄及び小笠原諸島に対する今日の
状態をきわめて悲しく存ずるものであります。(
拍手)われわれは、これらの諸島における住民の自由なる意思と、しかも
連合国が領土を求めないという精神にのつと
つて日本に対するこれら諸島の最終的帰属決定がなされることを切に希望せんとするものであります。(
拍手)
吉田総理の所見を承りたいのであります。
次に、
日本経済と国際
経済との結合に関する諸問題であります。現在自由党
内閣は、いわゆる
講和後における
経済態勢に処するに、一面におきましては
自立経済の確立が唱道されており、面におきましては、いわゆる外資導入のから念仏がとなえられておるのでありますが、かかる
事態におきまして、われわれがいかなる形で国際
経済との結合をそこに持
つておるのか、あるいはいかなる
日本経済の繁栄の基礎をそこに築かんとしておるのであるか、われわれは、そこに大きな
課題があると存ずるのであります。しかも、
講和会議直後における
一つの重大な問題は、一面においては
安全保障の問題でありましよう。他面におきましては、いわゆる国際通商及び航海條約の締結等の諾問題が当然ここに日程に上らざるを得ないでありましよう。しかるときに、われわれが今日いかなる国際
経済への参加が可能になるかと申しますならば、そこに
一つは、プレトン・ウツズ協定及びこれに関連する国際
経済機構並びに国際開発銀行に参加する問題が上
つて来るのであります。われわれは、もとより全
世界の友好国の間に立
つて、多角的貿易をそこに確立せんとする制度に対しては、もちろん賛意を表するところでありますがゆえに、このプレトン・ウツズ協定及びこれに関する国際
経済機構への参加に対してわれわれは現
政府の所信を承りたいと思うのであります。同時に、今日われわれの目前に追
つておりますものは、ハヴアナ憲章に基くところのいわゆる国際関税
会議に参加する問題であります。同時に、年来
課題とな
つておりますところの国際小麦協定参加に関する問題であります。この関税と食糧との二つの国際
経済会議参加に関する
政府の準備、用意を承りたいのであります。(
拍手)なおその他、通商、航海あるいは漁区、あるいは関税條約等の締結につき、いかなる用意を現
政府はなされておるのであるか、明白に今日所信を明らかならしめてほしいのであります。
また今日、
吉田内閣の
自立経済を見てもわかります通りに、三箇年
計画の最後の水準がわずかに戰前の九割程度にすぎないのであります。しかも、
自立経済がはつきりいたしております通りに、雇用の問題は若干の改善があつたとしてもこの問題の解決はできないと断
つてあるのでありまして、これがとりもなおさず、
日本におけるところの、一面においては産業の破壊、他面においては年百五十万人の過剰人口をここにかかえておるからでありまして、
日本の真の
自立経済を確立せんといたしますならば、われわれは、そこに自由にして平和的な移民の
要求を諸外国の好意によ
つて許容せられることを強く
要望せんとするものであります。(
拍手)
また同時にわれわれは、ここにさらに重大な問題と考えられるのは、いわゆる今日における対日援助の打切りの問題でありまして、打切り後における
日本の
経済が、そのままに放置されてよろしいのであるかどうか。従来
吉田内閣は、いわゆる外資導入と
自立経済の二本建によ
つて主張されてお
つたのありますけれども、われわれは、アジアにおける今日の
状態から見て、そこにクレジツトの設定、なかんずくいわゆる純
政府資金のクレジツトの設定が当然
日本政府において考慮あるものと考えるものでありまして、これらに関する所見を承りたいのであります。
さらに重大な問題は、
吉田総理は、フオーリン・アフエアーズにも書いてあります通り、いわゆるアジア、なかんずく中国の市場を失
つても
日本経済は成立つとの
信念を披瀝されているのであります。しかしながら今日におきまして、われわれが真実にアメリカ的あるいは西欧的陣営の協力を得なければならぬことは当然でありますけれども、それのみをも
つていたしまして、
日本の繁栄と
発展は断じて期し得られないと考えるものであります。(
拍手)われわれは今日、イギリスの労働党が、
政治とは別に、あえて中共との通商を一面において行いながら、他面において
朝鮮で
中共軍と戰
つておるという矛盾を見るのでありますけれども、われわれは今日、歴史的にも地理的にも、全アジアを失うことによ
つて日本民族の繁栄は断じてあり得ないと考えるのであります。(
拍手)試みに見るならば、われわれは今日まで、台湾から五百万石の食糧を得られ、
朝鮮から一千万石の食糧が得られて戰前のわれわれの需給態勢を確立してお
つたのであります。八十あるいは九十万トンの大豆が供給せられて
日本の油脂資源及び調味料の資源が確保されておつたことは、
諸君の御案内の通りでありましよう。さらにわれわれは、塩あるいは粘結炭、鉄鉱石等の諸資源を考えて参りまするならば、いかに深き関連が今日の中共と今日の
日本との間に保たれねばならぬかということを痛感するのであります。われわれは、長い数千年の歴史の中で、あるいは仏教において、あるいは儒教において
幾多の影響を受けたでありましようけれども、その間にあ
つてわれわれはよく
日本を維持し、
日本を
発展させ得たことを、われわれはつぶさに知らなければならぬのであります。今日における
吉田内閣の施策は、不幸にして、このアジアにおける友好、アジアにおける連繋、われわれ
民族の運命を引裂かんとする政策であるといたしまするならば、それは浅見もはなはだしい議論であるといわなければならぬのであります。(
拍手)そこにわれわれは今日における問題、この
世界におけるところの国際
経済上、
世界経済構造の中に
日本経済がいかに処せんとしておるかについて、従来の
吉田内閣の所見というものを根本的にここにかえる考え方が、当然
要求されると考えるものであります。これに対する
吉田内閣の真の希望を承りたいのであります。
さらに私は
吉田内閣の
自立経済について申したいのでありまするけれども、
自立経済がいかに資本家階級のために立案されておるかということは、内容を見れば一目瞭然とするところでありますけれども、(
拍手)なかんずく
吉田内閣が、
生活水準はわずかに九〇%、特に雇用を全然考えないという考え方は、現在の
日本の農村の
最大の
課題と結びついて、これは
日本経済の
自立、民主化を徹底的に確立するところの基本的な
課題に対して何らこたえていないことを証明するものであります。(
拍手)現在われわれが最も問題とするところは、年々百五十万の人間が増大し、いわゆる不完全就業者が四百万人存在し、完全失業者が五十万人存在しておる。このうちの半数、すなわち不完全就業の約二百万、これらが現在において農村に潜在するところの圧力とな
つていることは明らかな事実ではありませんか。増大する人口が一切考慮せられず、その結果現われるところの農村の生産水準はいかがであるかというならば、わずかに戰前の一〇%が
吉田内閣の
自立経済の実体であります。増大する人口と、わずか一〇一%の生産水準、そこにおいて現
吉田内閣は、農村におる近代化と進歩
発展とをいかに蹂躪しているか、いかに欺瞞のものでおるかということが、はつきりわかるに違いないのであります。われわれは、かかる低
生活水準、及びあくまでも農村をいわゆる奴隷的な形にすえつけんとしておるところの、その基礎に立つところの資本蓄積と、その基礎に立つた
自立経済は、絶対に排撃せんとするものであります。(
拍手)。今日これらの諸問題に対してわれわれは関係閣僚の所見を承りたいのであります。
以上、
講和問題の重要
課題と目される問題は、あるいはいささか今日においてその時を得ないかもしれませんけれども、その問題の主点は、結局われわれは、今日におきまして
講和会議の問題
そのものの背後にあるところの諸條約の締結がいかに重大であるかと存ずるがゆえに、この際
吉田総理の所見を承りたいのであります。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君
登壇〕