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1951-06-02 第10回国会 衆議院 法務委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年六月二日(土曜日)     午後零時十四分開議  出席委員    委員長 安部 俊吾君    理事 押谷 富三君 理事 北川 定務君    理事 田嶋 好文君       鍛冶 良作君    牧野 寛索君       松木  弘君    眞鍋  勝君       大西 正男君    田万 廣文君       加藤  充君    上村  進君       佐竹 晴記君    世耕 弘一君  出席政府委員         法制意見長官  佐藤 達夫君  委員外出席者         專  門  員 村  教三君     ————————————— 本日の会議に付した事件  閉会審査に関する件  法制に関する件     —————————————
  2. 安部俊吾

    安部委員長 これより会議を開きます。  まず閉会中の審査申出に関する件を議題といたします。本委員会といたしましては、本委員会に付託され、なお愼重審議中の法律案について、また司法行政検察行政法務行政等適正化をはかるために、閉会中にも審査を継続したいと存じますので、閉会中の審査を議長に申し出でたいと思います。閉会中の審査事項といたしましては、一、会社更生法案、二、破産法及び和議法の一部を改正する法律案、三、裁判所侮辱制裁法案、四、検察行政及びこれと関連する国内治安に関する件、五、人権擁護に関する件、六、鉄道公安職員の職務に関する法律改正に関する件、七、印章、署名制度に関する件、八、純潔確保に関する件、九、出版の自由に関する件として申出をしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なければさよう決します。  なおこれらの事項につきまして多少の変更ある場合は、委員長及び理事に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なければ御一任をいただいたものと認めます。  なおこの際お諮りいたします。ただいま決定いたしました閉会審査の件につきまして、議院の決定により本委員会に付託されました場合には、それに基きまして委員派遣を行いたいと存じます。つきましては派遣の目的、派遣地派遣委員指名等につきましては、委員長及び理事に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なければさようとりはからうことに決します。     —————————————
  6. 安部俊吾

    安部委員長 次に法制に関する件を議題といたします。発言の通告がありますので、これを許します。世耕弘一君。
  7. 世耕弘一

    世耕委員 簡単に二、三点政府委員お尋ねいたしたいと思います。  過般の委員会で、非常事態に際しての国民権利義務ということに関して法務総裁意見を述べておいたのでありますが、その後そういう問題について政府はどういう考えを持つておられるか、非常事態国内に発生した場合には、総理大臣非常時宣言をする権能を持つて、同時に予備隊活動を開始するようになつておりますが、その非常事態が大きな場合は、現在の予備隊活動だけでは不十分である。場合によれば国民の大きな協力をまたなくてはならぬ。しかしながらその国民協力をまたなくてはならぬ場合において、何に上つてその協力を求めるかという法的根拠が現在のところ私はないと考えるのであります。過般来アメリカの議会においては、もしソ連が朝鮮問題に介入する場合には、日本空襲下に置かれるであろうということを発表されております。そればかりではない、国際情勢から考えて、われわれはある場合の非常事態ということも考慮に入れなくてはならぬと思うのであります。さような場合に、国民に対する権利義務ということがおのずから考えられなくてはならぬと思いますが、これについて何か御研究があらば、この機会に簡単でよろしゆうございますから承つておきたいと思います。
  8. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 先回法務総裁お尋ねがあつて、いかなるお答えがありましたか私承知いたしませんが、ただいまのお尋ねに対しまして、それとの関係なしに私からのお答えを申し上げたいと存じます。  今お話通りに、非常事態を予想いたしまする法制といたしましては、警察法非常事態宣言條項がございまして、総理大臣に一種の警察の統轄がなされるということはございます。またおそらく警察予備隊もそういう場合には、総理大臣の命によつて行動するであろうということは想像できるのでございますが、これはあくまでも国の機関としての編成の方の問題でございまして、国民に対する権利義務関係というものは、何らそれらの法制は触れておるところはないわけであります。従いましてその方は別個のおのおのの実体法規取締り法規というような問題になるわけでございますが、現在のところ非常事態を予想しての特別の国民権利義務影響を及ぼすような法律というものはございません。従いましてさような場合に、特別の必要を生じますならば、これはまたそれに適切なるその事態に応じての立法をしなければならぬということも想像すれば想像できるわけでございます。しかしながらこれは今日われわれ政府立場として考えますところは、いずれにいたしましても昔の憲法には御承知のように、非常大権あるいは戒厳というようなものがございましたが、そういうようなものは非常に民主主義なり何なりの原則に沿わないということで、今日の憲法にはさような條項はないのであります。従いましてでき得る限りは、そういう非常大権の発動的なことを避けるべきであるということは、新憲法の精神からいつて当然でございますから、われわれといたしましては、よくよくの最悪の場合ということがあれば別でございますけれども、それのない限りは極力現在の法制のままで、むしろ国民の自発的の協力をまつて諸般の措置が進められて行くべきであらうという意味で、今お尋ねのありましたような具体的の非常立法というようなものは、今日のところは考えておりません。
  9. 世耕弘一

    世耕委員 きわめてのんきだと私は思います。すでに警察予備隊を増員し、あるいは警察予備隊活動させる非常事態宣言総理大臣の名において行われるときに、国民権利義務が明瞭でなかつた場合、はたしてその大きな暴動なり大きな事態をうまく食いとめられるかということに考え及んだならば、少くとも法制的にこれを検討されておらなくてはならぬしということは、言うまでもないことであります。ことに文明国各国の実例を見ましても、先例は幾らでもあるんじやないかと思う。それは意見長官御存じだろうと思うのであります。この点は私この際議論をするわけじやないが、特にこれを研究しておいていただきたいということを御希望申し上げておきます。次にお尋ねしたいのは、今講和問題が非常にやかましく言われておりますが、講和問題と並行して、いわゆる戦争終結宣言ということが国際関係上非常に重要視されておるのであります。そこで講和問題と切り離して戦争終結宣言ということが日本にあてはまらぬかどうか。講和がもし長引くような場合にあたつて戦争終結宣言というものをわれわれが要求していいのではないか。これは実際的効果の上から見て検討されなくてはならぬと思うのですが、この点についてのお考えを承りたいと思います。
  10. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私最近たしか新聞で、パキスタンか何か西独に対する関係において戦争状態終了宣言をやつたというようなことを見た覚えがございますが、おそらくそういうものをさしてお尋ねになつておるのであらうと思います。私ども常識として考えておりますことは、戦争終了というものは、第一は完全なる征服によつて相手国が完全に征服されてしまうという場合には、講和條約も何もなしで戦争は済んでしまう。それ以外の場合には、講和條約の締結によつて戦争終了するというのが常道でございます。ただお尋ねの変則な場合、すなわち講和條約が非常に長引くような場合に、戦争状態終了宣言というものが戰勝国によつてなされたという事例が、これは非常に少い事例のようでありますけれども二、三あるということを承知しております。しかしその戰争状態終了宣言というものは、法的にどういう性格のものか、これはまつたく国際法の通則というようなものもありませんし、今までの例を考えてみますと、その場、そのときにおける戦勝国態度によつてきまるようなことであつて一貫した原則も何もないというように承知しておるわけです。そこで今お尋ねの、今日わが国の場合についてこれを考えるということは、実は前にちよいちよい新聞に出たことは私も覚えておりますけれども、最近は全然私ども考えておりません。何となれば、今までの例から見ましても、平和條約の目途がつかないという場合にこれが行われておるのであつて、今日は御承知通り講和條約というものは目の前に追つておるというのが、私ども常識となつております関係から、今日のわが国の場合に当てはめてこの問題を考えたことは、少くとも私はございませんので、従いまして完全なお答えが出ないわけであります。
  11. 世耕弘一

    世耕委員 よくわかりましたが、お説に対して少し私の意見をつけ加えて申し上げます。講和を開始する場合に戦争終結宣言をすることがかえつてじやまになるというなら、これは考慮しなければならない。けれども講和に先だつて戦争終結宣言をするということは、むしろ当然のことではないか。たとえばわれわれが法廷に出ていろいろの犯罪取調べの実情を見ました場合に、まず法廷内においては被告の手錠をはずすじやないか。戦争状態に置いておいて講和ということは、理論的に成り立つかということを私は議論していいと思うのです。これ以上は長くなりますから申しませんが、もつ日本政府連合国側に対して活発な意見を発表していいんじやないか。誤つていたら取消せばいいです。西ドイツアデナウアー首相のごときは実に胸のすくようなことを言うておるじやありませんか。私はこの点についてはなはだ遺憾に思うのであります。今の戦争終結宣言のごときも私は勇敢に——例がないと言うけれども、例のないのが今度の戰争状態であります。一例を申しますと非常に矛盾だとわれわれ考えることは、たとえば英国政府中共を認めております。そうして朝鮮では戦争しておる。こんな矛盾なことは国際公法上どう解釈していいか妙なことであります。しかも六年間われわれは忠実にポツダム宣言を尊重して来た。しかも今なお戰争終結もしないし、講和もしないということは、これは戰勝国責任だと思う。こういうことは活発に要求していいのじやないかと思う。権利の上に眠るような民族は、おそらく各国は観迎しないでしよう。自分の権利義務を強く主張し、責任感を持つところに文化国家としての承認を得られるのではないかと思う。この点をもう少しこの際活発に言うていただいていいのじやないかと思う。なお現在は停職状態と申し上げることができるしかもしれませんが、停戰して六箇年、事実上戰争は終結したのと同じであります。この点法理的にも実際的にも明らかにすることを、連合国側にわれわれは堂々と要求してさしつかえないじやないか、かように考えます。多数講和、あるいは単独講和議論があるようでありますが、そういう議論は別といたまして、戰争が終結したということだけを宣言してもらうことは、われわれが要求して少しも遠慮のないことだと考えます。この点は特に御研究を願いたいということを御注文申し上げておきます。  次にお尋ねいたしたいのは、この間私は岡崎長官にお聞きしたのですが、追放関係の問題で、委員会審査された、その審査の内容について、できれば公表されたらどうか。今日は中共あたり人民裁判というものが行われておるが、その人民裁判ですら公開じやないか。それをわれわれのこの民主国文明国において、国民公権を剥奪する重大な審査委員会が、どういうふうに運ばれたか、どういう経過であつたかということが、一向に国民得心が行かないということは、これは鉄のカーテンに似たような態度ではないか、これはむしろ明瞭になさつたらいかがですか、こういうことを岡崎長官に話したところ、岡崎長官は、ごもつともだけれども審査委員会は人事に関することだから、あの人がこう言うた、この人がこう言うたということを発表すると、さしつかえがあるから発表しない。しかもそれは政令にちやんと書いておるからというようなことを言うておりましたが、政令に書いてあるということは、怪しいと思うのですが、いかがですか。私も調べてみたけれども、どの辺に書いてあるかわからない。
  12. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私も御同様、政令のどの條文かということは、今とつさにお答えする能力を持つておりませんけれども、この追放関係は例の一月四日の覚書の方にははつきり書いてありまして、最終的の追放関係審査は、やはり最高司令官が持つておるというふうになつておりますことは明らかでありますので、それらの関係から岡崎長官が今のようなお答えをしたのではないか。これは推測でございますけれども、さように考えます。
  13. 世耕弘一

    世耕委員 私の調べによると、秘密というような委員会の事情に関しましては、三月末で廃止になつているのだからもうないはずだ、こういうことは発表したつていいじやないか。それにつけ加えて私が申し上げたいのは、過般松本治一郎君、鳩山一郎君はあの委員会では全会一致可決されているというように私たちは聞いているのであります。そうすると、あれは反対した、これは反対したということで、はなくて、全員一致可決されたものならば、発表して悪いというりくつが出て来ないじやないか、これはどうかということを私は重ねてお尋ねすると同時に、委員長に対しては、全会一致可決されたのか、それともされなかつたのかということの事実を調査して、この委員会に御報告が願いたいということ差お願いして、委員長には御了承願つていただいたのでありますが、この点はあなたの方はいかがですか。おわかりでしたらこの際お聞きしておく方がけつこうであります。
  14. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 それはやはり官房長官の方の系統のお仕事であるようでありますので、私としては全然その能力もあるいは材料も持ち合せておりません。
  15. 世耕弘一

    世耕委員 この間の日本銀行の氷川寮の御会合、その後の総理官邸等の御会合に、あなたが御出席なさつておられると思います。そういうふうに新聞記事が出ております。そうすればまんざら知らぬとは言わせません。それは逃げ方が少しまずいと私は思います。だからこういうことはあつさりお言いになつたらいいじやないか。言いにくければ、これ以上お尋ねすることはむだだと思いますから、お尋ねいたしませんが、そういうものを発表した方がいいか悪いかくらいの判断はできるでしよう、意見長官ですから……。
  16. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私も身のまわりに追放者をたくさん持つておりますので、個人としては非常に関心を持つて知りたいと思つておりますけれども、知り得べき状態に今のところまだ置かれておりません。また知つたからといつて、私の知り合いにそれを漏らそうなんという気持は持つておりませんが、要するにそういう関係にはございません。さつきのお話松本治一郎氏の関係に中心を置いてのお尋ねでございましたから、これはほんとうに私は存じませんということを申し上げたのでございます。今度の政令諮問委員会関係では、まあ幹事役と申しますか、ある意味のお手伝いで二回ばかり出ましたけれども、ゆうべは私出ておりません。
  17. 世耕弘一

    世耕委員 せいぜいなるべく出て、あなたの正論を吐いていただきたいと思います。なぜこういうことをお尋ねするかというと、妙なうわさが飛んでいるのです。私の収集した情報は、実は前回一万九十名の追放解除のときに、審査委員会で提出したのを二、三政府で削つて出したといううわさを聞いておるのです。さようなことがはたして適当であるかどうか。御承知のように、ドイツ追放解除方式は、みな公判に付せられております。そうして重軽罪あるいは無罪というふうに判決されているから、たといその判決が正当であるなしにかかわらず、法治国の国民としてみな得心が行くのです。ところが日本行政処置なんです。その行政処置が非常によく行つておるかというと、決してよく行つておらぬ。えこひいきが非常に多い。あの人が解けておれが解けぬという法があるかというような不平が今満ちております。さようなことはあつてはならぬと私は思う。しかも二、三日前に私は資料を得たのですが、ワシントン・スターという新聞記事だと思いましたが、今度は全面的に追放解除する、その中で特に過激な者、特殊な者のみは除外するというようなことを、相当確かな筋から情報を得てその記事を書いたように私は記憶いたしておるのであります。今日の追放解除なるものは、もういじくつているときじやないのです。早く講和前に国民に満足な地位を與えて、一致してこの講和に臨むという態勢が必要じやないか一思うのであります。この点についてどうも世間のうわさでは、総理が握つているのだ、あるいは周囲の者が握つているのだというが、どつちが握つているのか実はわからない。ところがある方面の様子を聞いていると、どうも日本側にくさいところが多いという結論が出ているのであります。これは国民思想の上にもはなはだ大きな影響を及ぼしますから、できるならば、これこれこういうわけだからこれは追放解除ができないという納得の行くような処置をとつてもらいたいということを、この際特に意見局長官にお願いしておきます。  それからもう一点伺いたい。調査が私の方では十分ということは申し上げられませんが、この間任命された七名の諮問委員が取扱うところの政令に関する問題が総計で二百二十七件あります。その中には、一々読んでいると時間がかかりますから申し上げませんが、憲法関係国家行政関係司法関係港湾関係教育文化関係厚生関係労働関係財政関係租税関係金融関係産業一般関係農業関係水産関係商工関係運輸関係電気通信関係建設関係外務関係占領軍関係兵器処理、公職に関する就職の禁止、団体等規正令経済管理連合国財算経済統制等、非常に厖大な案件があるのです。これを処理するのに、幾ら多能なる委員諸君といえども、あの七人では処理できないと思う。同時にまた悠重にかまえて何年もかかつてやるべき筋合のものではない。講和を前に整えての態勢としては、大急ぎで増員されて、できたら衆参両院議員の中で有能な人も加えて、大いに公平な敏速な処置をとることが、吉田内閣のとるべき最も公正なる態度ではなかろうかと考えるのでありますが、意見長官はこういう点について意見をお吐きになる御意思があるかないか。御謙遜なさつてお話が伺えなければいたし方がありませんが、御参考までに私の考えを開陳した次第であります。
  18. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 意見ではなしにお答えを申し上げますが、ただいまお読み上げの調べは、たいへん精密にできておると感心して舞聽した次第でございます。確かに全体のポツダム政令、それから省令等を合せますると、私どもの勘定では百五、六十件、それからそのほかにすでに兵役法を廃止したとか何々法を廃止したというものが出ておりますから、それを入れるとあるいはお示しの二百何十件になるかもしれません。要するに百数十件以上現在効力を持つたものがあります。けれどもその中には、御承知のようにきわめて技術的な、ドイツのある株式会社であるところの何とかコーツ・リミテツドというような、一つの株式会社についての処分的な事項をきめたものもみな含まれております。それから占領が終止するという場合においては当然必要がなくなるというようなものも、相当に考えられるわけであります。従いましてそれらの中でおもなるものといつてつて参りますと、そう百何十というようなところまで参りません。そして私が先ほど申し上げましたように、この諮問委員会関係ではまるで走り使いのような仕事しかやつておりませんけれども、しかしおそらく諮問委員会としては大所高所から非常に大きな政策的の、あるいは政治的の、あるいはまた経済的の大きな問題を含んだものを重点的にお取上げになつて調べになるのではないかというように思いますので、そうなりますれば、そう荷が重過ぎるという心配はないと考えます。一応お答えだけ申し上げておきます。
  19. 安部俊吾

    安部委員長 世耕委員お答えいたしますが、委員長に対する申入れ、適格審査に関する問題は内閣委員会に属することでありまして、本委員会委員長としてどういうことができるか知りませんが、できるところの範囲内において善処したいと思います。
  20. 世耕弘一

    世耕委員 ちよつとその点についてつけ加えて申しますが、ただ全会一致可決なつたかならなかつたかというような簡単な返事を実は伺つておきたいのです。それは自然人権問題その他に波及する大きな問題が起つて来るからです。それでお尋ねしたのです。単なる追放問題ばかりじやないのです十九万何千人としいう、あるいは二十万近くの者が公権を剥奪されている。それがただ単純な委員会の祕密行為によつてやみからやみに葬られて、国民納得できぬということは、民主国会として許すべきではないという建前を私はとつております。しかし政府立場としてはぐあいが悪いであろうが、私は少しも無理な注文でないと思う。だれがどう言うたか言わぬかということを尋ねているのではない。全会一致可決なつたかどうかということを聞いているのであります。政府はこれについて言われぬような口ぶりでありますが、言わぬというならば私は言わす方法をとります。どうですか、その点は。
  21. 安部俊吾

    安部委員長 その点に内閣委員会の所管の問題でありますから……。
  22. 上村進

    上村委員 関連して質問いたします。この前岡崎長官質問を始めて途中で時間がなくて打切られたので、その結末を一、二点質問したいと思います。第一の質問ですが、世耕委員追放解除のことについてきわめて熱心に主張されたのですが、それは国民代表者である国会議員として当然だと思うのです。しかし国民の中には進歩的、保守的というような階級がわかれておつて、今世耕委員質問されたのは主として保守主義的な側の国民追放解除の要望であると思うのです。共産党幹部追放されておるわけですが、しかしこの追放ポツダム宣言の受諾の際には予想されていないところの思想の分野に属する人たちであります。そしてポツダム宣言が主として要求したものは戦争犯罪もしくは軍国思想、こういう人たちを好ましからざる人物と見たわけであります。その他極右反動的の諸団体は、超国家主義としての好ましからざる部分に入れたのでございまして、ポツダム宣言の当初の趣旨はそれしかなかつたのでございますがその後だんだん民主主義的な傾向が助長されるのではなくて、むしろ民主主義が逆もどりする傾向が生じて来た。そしてついに共産党幹部追放なつたと私どもは思うのですが、これは一体ポツダム宣言のどの條項のどの部分によつて共産党幹部追放されたのであるか、これをこの際明確にしていただきたい。それは今何といつて世界は二つの世界にわかれておる。資本主義世界共産主義もしくは人民民主主義思想とのわかれになつておるわけです。日本においてもこの思想がないとは言えないわけであります。そういう部分を代表する共産党幹部追放は、理由なき追放のようにわれわれは思う。どうしても納得が行かない。共産党幹部思想が好ましからざる思想であるということは、いつどういう法令で、どういう規定によつてそういう認定になつたのかということを、一応御説明願いたいと思うのであります。
  23. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 その点の問題はずつと前にたびたび御議論に出たことでございまして、当時逐一お答えしてあつたはずであります。今日また再びお尋ねで、当時のお答えを私は忘れてしまいましたけれども、要するにポツダム宣言は軍国主義的あるいは反民主主義的の勢力を永久に芟除することが主眼となつてできておるのであります。しかしてこの追放につきましては、先ほどちよつと触れましたように司令官の要求による事柄であり、かつまたその実施については、最終的の審査最高司令官の権能に留保されるというようなことであります。最高司令官ポツダム宣言にのつとつて、それに即応する措置をおとりになつて来ておるところであります。その趣旨に沿つた措置であるというふうに考えておるわけであります。
  24. 上村進

    上村委員 今の説明ではちよつとわからないのですが、ポツダム宣言その他その後の対日占領政策の諸規定に照らして、どの條文のどういう言葉に当てはまるかということを承りたい。
  25. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ポツダム宣言わが国も加わつておりますならば、その解釈権はわが政府にもあるわけでありますが、遺憾ながらポツダム宣言わが国以外の国々によつてなされた宣言であります。しかしてこれに基いて最高司令官日本におつてその実施に当つておるわけでありますから、その最高司令官が有権的な解釈を持つておるのであります。いかに法制意見長官といえどもポツダム宣言についての有権的な解釈をする権能はないのであります。
  26. 上村進

    上村委員 やはりそれを受諾し、それから最高司令官の趣旨によつて追放の中に入れたということは、日本政府の権限によつたのであると思うのであります。そうすると、それがどういう條文でどうだということは、やはり日本政府責任において解釈すべき問題ではないかと思うのですが、この点はいかがですか。
  27. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 もちろん実施の立場日本政府があります以上は、実施上一応の解釈を立てて現実に実施するということは当然であります。しかしその解釈というものは、日本政府がかつてに左右し得るものではないのであつて最高司令官の有権的解釈のもとにそれが行われるということなのであります。
  28. 上村進

    上村委員 その点はそれでやめま  す。  この前私は講和問題の当事者の法律的な見解を岡崎長官にお伺いして、その半分しか承つていないわけで、一体何国が日本講和條約の相手当事者国家になるかということを聞いたのですが、その点はよろしゆうございます。そうすると日本の国が今度講和條約を結ぶにつきまして、先ほど戦争終結の問題があつたのですが、政治的でなしに法律的にどういう資格において講和條約を結ぶ当事者上なるか、この問題であります。
  29. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 講和條約は国と国との間における條約に間違いございませんからして、わが国も国たる資格において結ぶことになると思います。
  30. 上村進

    上村委員 国たる資格ですけれども、一体主権国として講和條約を結ぶのであるか。これは法律論ですけれども講和條約によつて主権が回復するという観念をわれわれは持つておるのですが、そういう場合に講和條約によつて一体主権を回復するものであるかどうかということ。それからして講和條約は過去の戦争に対する損害賠償的なことを主として結ぶのであるか。それとも講和條約はそんなことでなしに対等の資格で将来の平和への約束をするのであるか、この三つの点をお確めしておきたいと思います。
  31. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは裏からお答えすればきわめてはつきりすると思うのであります。御承知のように方々の国々とただいま貿易上の協定を結んでおります。これは連合国司令部の方が当事者となつて、たとえばインドならインド、あるいはイギリスならイギリスと日本のために條約を結んでくれておるわけでありまして、講和條約が結ばれる際には、そういう形で日本の後見人として最高司令官が連合国と條約を結ぶなんということは夢にも考えられないことであります。その逆が正しい答えになるというふうに考えます。
  32. 上村進

    上村委員 そうすると占領中は主権が少しも制限されないという考え方があるわけですか。
  33. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 御承知通りに主権が制限されております。
  34. 安部俊吾

    安部委員長 ほかに御発言がなければ本日はこの程度にとどめまして散会いたします。     午後零時五十三分散会