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1951-05-28 第10回国会 衆議院 法務委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十八日(月曜日)     午後二時十三分開議  出席委員    委員長 安部 俊吾君    理事 押谷 富三君 理事 北川 定務君    理事 田嶋 好文君 理事 猪俣 浩三君       佐瀬 昌三君    高橋 英吉君       花村 四郎君    古島 義英君       松木  弘君    山口 好一君       加藤  充君    上村  進君       世耕 弘一君  出席政府委員         検     事         (法務法制意         見第四局長)  野木 新一君         検     事         (法務特別審         査局長)    吉河 光貞君  委員外出席者         参  考  人         (警視総監)  田中 榮一君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局第         一課長)    桑原 正憲君         專  門  員 村  教三君     ――――――――――――― 五月二十八日  委員牧野寛索君及び梨木作次郎辞任につき、  その補欠として山口喜久一郎君及び上村進君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員山口喜久一郎辞任につき、その補欠とし  て牧野寛索君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  司法書士法改正に関する件  法制に関する件  人権擁護に関する件   請願  一 借地法及び借家法の一部改正に関する請願    (武藤運十郎君外一名紹介)(第七号)  二 住民登録法制定に関する請願平野三郎    君紹介)(第五二三号)  三 赤岡区検察庁舎新築請願大西正男君外    二名紹介)(第五六六号)  四 弟子屈町に区検察庁及び簡易裁判所設置の    請願伊藤郷一君紹介)(第六一二号)  五 借地法の一部改正に関する請願淺沼稻次    郎君紹介)(第六八五号)  六 佐川町に簡易裁判所及び区検察庁等設置の    請願長野長廣紹介)(第七〇二号)  七 古川拘置支所庁舎及び拘禁場改築請願(    安部俊吾紹介)(第八四九号)  八 角田町に簡易裁判所設置請願安部俊吾    君外一名紹介)(第一〇七〇号)  九 置戸町に釧路法務局支局設置請願林好    次君紹介)(第一一七〇号) 一〇 旧陸軍航空士官学校出身者司法第一次試    験免除等に関する請願川野芳滿紹介)    (第一一七三号) 一一 旭川地方法務局豊富出張所設置請願(玉    置信一君紹介)(第一二一七号) 一二 傷病者団体結成許可に関する請願足鹿    覺君紹介)(第一二九三号) 一三 印章法制定に関する請願山口好一君外一    名紹介)(第一六八一号) 一四 集会、結社及び言論弾圧反対等に関する    請願上村進君外一名紹介)(第一七三七    号)   陳情書  一 復権による前科の戸籍簿取扱に関する陳情    書    (第三四号)  二 強制立退者の借地権に関する陳情書    (第四四    号)  三 住民登録制度実施に関する陳情書    (第七四号)  四 らい患者を対象とする刑務所の敷地選定に    関する陳情書    (第二一四号)  五 最高裁判所裁判官に関する陳情書    (第四三〇号)  六 浮遊機雷による災害補償法制定に関する陳    情書    (第五二〇号)  七 国立教護院設置に関する陳情書    (第五六三号)  八 総社町に簡易裁判所及び区検察庁設立に関    する陳情書    (第五八八号)  九 改正商法施行延期に関する陳情書    (第七〇一号) 一〇 人権擁護に関する陳情書    (    第七三五号) 一一 改正商法施行延期に関する陳情書    (第七四〇号) 一二 改正商法施行延期に関する陳情書    (第七五二号) 一三 住民登録法案に関する陳情書    (第七九三号)     ―――――――――――――
  2. 田嶋好文

    田嶋(好)委員長代理 これより会議を開きます。  本日は法制に関する件、及び人権擁護に関する件を議題といたします。発言の通告がありますから、順次これを許します。その前にお断りを申しておきますが、本日出席を求めておりました大橋法務総裁は、所用のため出席をいたすことができないそうであります。なおただいまお見えになつております政府委員吉河特審局長でございます。田中警視総監はいすれここへ参ると思います。猪俣浩三君。
  3. 猪俣浩三

    猪俣委員 法務総裁所用があられるとのことでありますから、また明日でも本問題について質問を続行したいと思うのであります。幸い特審局長がお見えになつておりまするから、一、二お尋ねしたいと思うのであります。それは東京華僑総会から私たちに具申して参りました事実についてお尋ねしたいのであります。東京華僑総会幹部の数名に対しまして、国民政府代表追放を宣言し、これは七人だそうでございますが、この宣言した追放者に対しまして、本国送還日本政府に要請したという事実がありますか、ありませんか。特審局長はそれに関係なさつておるかどうか、それをお尋ねいたします。
  4. 吉河光貞

    吉河政府委員 私の知る限りにおきましては、チヤイニーズ・ミツシヨンと申しますか、中国代表部から日本政府に対して、留日華僑本国送還を要求したという事実は聞いておりません。
  5. 猪俣浩三

    猪俣委員 聞いておいでにならぬということになると、この先の質問がほとんどできなくなる。しからば中国政府、すなわち蒋介石の政府から軍統と称せられる――これは憲兵だそうでありますが、かようなもの、及び保密局、これは秘密警察だそうであります。こういうもの、及びCC団、これは暗殺団ですが、こういうものが日本内地に存在し、それぞれ活動しておるような状況を、特審局御存じであるかどうか。
  6. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えをする前に、先ほどの御質問に関連いたしまして、現在日本政府といたしましては、適法にわが国内に滞留する連合国人である華僑を国外に送還するような権限はないのではないかと考えております。それからただいまの御質問でございますが、中華民国政府から軍統とか保密局とかCC団とかいうようなものが、日本国内に潜入しておるというような事実は確認しておりません。
  7. 猪俣浩三

    猪俣委員 中華民国人保護というものに対する法律関係につきましては、法務総裁質問しようと思つたのでありますが、おいでにならぬのであなたにお聞きしたのでありますが、これは後日法務総裁質問いたします。そうすると特審局としては、こういうCC団とか軍統とか保密局とかいうものの存在は知らないという御答弁と承つたのでありますが、なお本年の五月六日に東京華僑総会選挙がありました。この選挙の際に、いわゆる国民政府がレツド・パージとして認めた七名のうち四名が候補に立つて、しかも最高点で四名とも当選をした。このときに日本警察官選挙場を包囲したということでありますが、特審局御存じであるかどうか。     〔田嶋(好)委員長代理退席委員長着席
  8. 吉河光貞

    吉河政府委員 本年五月六日に、八重州口の東京華僑連合会会館におきまして、東京華僑連合会幹部の改選が行われたいうことに関する情報は、情報として聞いております。しかしこの選挙に際しまして、日本側警察官が同会館を包囲したという事実は、情報としても、また報告としても聞いておりません。
  9. 猪俣浩三

    猪俣委員 中国華僑総会人たちが、人命保護あるいは本国送還をしないでくれろというような陳情を、特審局にしたことはありませんか。
  10. 吉河光貞

    吉河政府委員 権限がありませんので、さような陳情を受けたことはありません。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 東京華僑総会のおもなる幹部につきましては、それぞれいかなる政治信念を持つておる者であるか、あるいはいかなる思想を持つておる者であるか等について特審局が調査したことがありますか。
  12. 吉河光貞

    吉河政府委員 さような点を私どもが積極的に調査した事実はございません。
  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 それではこの問題は何も御存じないようでありまするから、この辺でやめておきます。  次に、新宿におきまする暴力団退治として、昨年解散を命ぜられましたるところの野原組、これらのものは表面解散したがごとくなつておるが、事実はその組員の連中がやはり新宿に跋扈いたしておりまして、恐喝、かたりを働いておるという情報があるのでありますが、特審局はこれらの解散後の組員動向について査察なさつたことがありますか。
  14. 吉河光貞

    吉河政府委員 ただいま御質問になりました新宿野原組解散後の動向、特に再建的な企図、あるいは解散団体を承継するような団体的活動の有無につきましては、先般来鋭意調査中でございますが、まだ結論には達しておりません。
  15. 上村進

    上村委員 特審局長に少し確かめておきたいのであります。「平和のこえ」の全国的検挙の問題でございますが、全国にわたつてたくさんの事件が起きて、それが今審理中でございます。もとよりこまかいことは弁護に属するので聞くわけには行きませんが、大あらましだけを、われわれの疑点とするところをここでお伺いしておきたいと思うのです。  第一に「平和のこえ」という新聞アカハタ後継紙と断定して検挙されておるのですが、どういう観点、どういう理由でこれを「アカハタ」の後継紙としたのであるか、この点がはつきりしないのであります。むろんそれは犯罪の契機になるのでございまするが、特審局で何かそこに標準を置いてかくくの條件があれば「アカハタ」の後継紙である、しこうして「平和のこえ」はそれに当るというような基準があつて、その基準を各地方検察庁指令されておるのかという点を、まずお確かめしておきたいと思います。
  16. 吉河光貞

    吉河政府委員 「平和のこえ」を「アカハタ」の後継紙と認定いたしましたる理由につきましては、前国会におきましても、法務総裁から再三御答弁があつたことと思うのであります。日本政府におきまして、また特別審査局におきましても、連合国最高司令官の「アカハタ」その後継紙同類紙発刊停止指令自体に基礎を置いてこれを行つておるのでありまして、特別に基準というようなものを設けてはいないのであります。
  17. 上村進

    上村委員 どうもその点がおかしいと思うのです。いやしくも憲法二十一條に保障されておるところの出版権利に基いてやつているものを禁止するには、それ相当の理由根拠がなければならないと思うのです。そこで最高司令官指令は、なるほど後継紙発行停止しろという指令はあつたでしよう。しかしその後継紙が何であるかということは、やはり国民常識もしくはいろいろの慣習によつて納得のできる條件及び理由をもつて、これは後継紙であると認定しなければ、国民に対して非常に無理ではないかと思う。たた最高司令官指令にあつたからすぐ後継紙――後継紙という言葉があつたからといつて、すぐこの新聞後継紙であるということは、非常に当局の行き過ぎではないかと思うのですが、この点に対して特審局長はどういうお考えを持つておるかお確かめしたいと思います。
  18. 吉河光貞

    吉河政府委員 ただいま「平和のこえ」に関する具体的な資料を持参いたしませんので、ここで正確なお答えをする準備をしておりません。しかしながら、指令内容につきましては、御承知でもございましようが、最終の解釈権指令発付をした最高司令官にありまして、日本政府におきましても、これを自主的な責任におきまして解釈し運用をし、最高司令官に対して責任を負うのでありまして、解釈行き過ぎの場合、あるいは解釈が誤つている場合には、最高司令官から即時訂正の措置がとられるものと考えております。「平和のこえ」につきましても、その他一般の後継紙につきましても、大体のことを申し上げますと、その紙面の内容が「アカハタ」のそれに同調し、また印刷発行編集配布その他の関係におきまして、「アカハタ」の発行団体である政治団体構成員が多数これに関係しておる。その他諸般事情を総合いたしまして、具体的にこれを認定しているわけでございます。
  19. 上村進

    上村委員 そうすると、私は議論しようと思うのではありませんが、結局後継紙ということを認定するにつきましては、あらかじめこういう條件であるという具体的な標準はないことになる。つまりそれが後継紙であるかどうかは、その具体的の事件の立証によつてきまるというのでございますか。
  20. 吉河光貞

    吉河政府委員 抽象的には、連合国最高司令官の両回にわたる指令に、何がゆえに「アカハタ」を発行停止するかということが非常に詳細に述べられておりまして、そのラインに従いまして、ただいま申しました通りアカハタ」を後継するような新聞後継紙と認めているわけであります。
  21. 上村進

    上村委員 そうすれば「アカハタ」のラインに沿うということが一つ條件であるように承りましたが、そのラインに沿うということは、その新聞記事内容意味内容というのですか、それが「アカハタ」のラインに沿つておれば、それでいいというのでございますか。何かはかに條件があるわけですか。
  22. 吉河光貞

    吉河政府委員 先ほども申しました通り指令内容及び印刷発行配布編集等関係におきまして、「アカハタ」の発行団体である政治団体構成員がこれに多数関與しておること、その他諸般事情を総合してという理由であります。
  23. 上村進

    上村委員 そのことが今非常に問題になつている。「平和のこえ」と「アカハタ」との関係が、後継紙のまた後継紙、そのまた後継紙という立場にもあるような後継紙としてやつておるわけでありますが、その点はわれわれとしては、言論の自由もしくは出版の自由ということから、そういうような理由が薄弱で行き過ぎのものであるならば、これはよほど強い意思で取締つてもらわなければならぬ一考えるのでありますが、その点はそれでやめておきます。第二点としましては、今全国の「アカハタ」の後継紙として「平和のこえを」を中央から配つて、それを受取つただけであるのでありますが、その受取つた人たち後継紙発行行為をなしたるものとして起訴しております。これは常識から非常にはずれておる。新聞発行というものは、およそ常識考えれば、記事編集印刷して一つの商品として外へ出すだけが新聞発行でございましてそれ以後の、それを発送したとか、その発送長野県の辺で受取つた者を、検事は発行行為をなしたるものと言つておるのですが、こういう常識がどこから出たのですか。これはおそらく何人が考えましても、「平和のこえ」を受取つて、それを読者に配つたというようなことしが発行行為であろうはずがないのでありますが、それを発行行為として起訴しておるということになると、これはまともな解釈でなくて、要するに彈圧をしようという目的から解釈されたものではないかと思うのですが、その点特審局では、どういう根拠によつて、もつて発行行為をなしたるものというのであるか、その理由をお聞かせ願いたいと思います。
  24. 吉河光貞

    吉河政府委員 ただいま御質問になりました起訴、不起訴の問題は、これは特別審査局の関與する問題ではございません。ただ御質問になりました発行の意義でありますが、発行につきましては、編集印刷発送配布を含むものという解釈をとつております。積極的に配布行為に参加協力したる者は、これは発行に関與したるものとして考えております。これは連合国最高司令官のただいま申し上げました指令の正当な解釈であると考えます。
  25. 上村進

    上村委員 それは解釈が非常に違つておるのですが、それを議論するつもりはありません。しかしそういうことは、もとの新聞法とかいろいろな出版法規によりましても、発行発売頒布というようなものはみな観念が違つておるわけであります。それを「アカハタ」の場合においてのみ、「アカハタ」が発行禁止になつた、あるいは「平和のこえ」が発行禁止になつたということで、そういう頒布発売までも発行と見るということは、どうしても人民納得が行かないと思う。それは処罰をするのには都合のいい解釈でありましようけれども、それを発売した者、頒布した者が罪に問われる、発行処罰されるからというのでそれが処罰されるということは、人民納得が行かないと思う。それにはどうしてもかくかくしかじかでこのことについてはそれも発行になるのだという特別の理由というものがなければならぬとし思う。その特別の理由解釈をお聞かせ願いたい。
  26. 吉河光貞

    吉河政府委員 私ども発行解釈配布行為を入れましたのも、連合国最高司令官指令自体に徴して明らかに正当な理由がある。新聞紙法または出版法にいう非常に狭い意味発行という解釈では、指令を適正に解釈することができないという立場からで、あります。
  27. 上村進

    上村委員 「アカハタ」の後継紙である「平和のこえ」の罰せられている條文占領目的阻害行為処罰令であるわけです。これは昨年の十月三十一日に政令三百二十五号として出ております。それで有害の行為をやつたということにして、指令をそこまで持つて行こうとするのでありますが、最高司令官指令そのものでやる場合には、それはどんなことがやられてもしかたがないというふうな解釈になるかもしれませんが、いやしくも日本政府によつてその趣旨を体してつくられた法律あるいは政令であつて、そういうふうに理由なく飛躍することは、この政令自体からいつてもできないと思うのです。この政令政令として解釈するには、発行行為をしたものは指令違反になる、こういうことはいいのです。発行行為でないものを発行行為に入れて、占領目的阻害行為に入れようとすることは、どうしても政令三百二十五号に入らないと思うのです。この点特審局ではどういう理由で入れられたか。
  28. 吉河光貞

    吉河政府委員 政令三百二十五号は指令趣旨に反する行為を禁止しております。ただいま申した通り指令趣旨として、発行行為の一部として配布行為を禁止しているものと考えております。
  29. 上村進

    上村委員 そうすると、この政令日本政府制定した政令ですね。その政令の中に、常識にはすれたりいろいろすることがあつては許されないと思う。それで指令趣旨に反するという文句はいいのですけれども、その指令発行停止をした指令で、その指令趣旨に反しない、発行行為にならないものをいろいろなことをし、しかもそれを今度は飛び越えて発行するだけでなしに――その趣旨を徹底するとしてもそれを禁止すればいいのに、その配つたものを罰するというように飛躍しておる、これはどうしても政令三百二十五号の趣旨にも反しておるのですが、その点を特審局ではどういうふうにお考えになつておるか。
  30. 吉河光貞

    吉河政府委員 ただいま申し上げました通り指令で禁止せられておるものは配布行為を含むもの一解釈しております。
  31. 上村進

    上村委員 含むものと解釈する、そういうふうな御解釈ですね。そこで特審局ではそういう解釈であるというような指令かなんかを地方検察庁へずつとおまわしになつた事実はございませんか。
  32. 吉河光貞

    吉河政府委員 一々具体的な事務上の運営については詳しくしておりません。しかしただいま申し上げた解釈は、ひとり特審局のみならず日本政府解釈であると考えております。
  33. 加藤充

    加藤(充)委員 関連して一言お伺いしたいとと思うのですが、世界人権宣言の十九條には、「何人も、意見及び発表の自由を享有する権利を有する。この権利は、干渉を受けないで自己の意見をいだく自由並びに、あらゆる手段によつて且つ国境にかかわらず、情報及び思想を求め、受け且つ伝える自由を含む。」という規定があるようであります。第二條の第二項には、「なお、個人の属する国又は地域独立地域であると、信託統治地域であると、非自治地域であると、その他の何らかの主権制限の下にあるとを問わず、その国又は地域政治上、管轄上又は国際上の地位に基くいかなる差別も設けてはならない。」という規定があるようであります。なお日本国憲法の第二十一條にも、出版あるいは思想の自由というようなことが保障されておるようでありますが、こういうふうに第二次世界大戦の結果国連ではつきりと打出された、同時にまた世界中の大きな新しい行き方によつて裏づけられた、そうしてその一端として日本国憲法にも基本的人権の保障ということが打出された、こういう事柄をそのまま主張するそのまま行う、これが占領政策に違反するというようなことは、少くとも論理的には成り立たないように思うのでありまするが、この点について特審局長の御意見を承つておきたい。
  34. 吉河光貞

    吉河政府委員 ただいま御質問になりました世界人権宣言における基本的人権規定につきましては、宣言的なものとしてきわめてごもつともなものと考えております。しかしながら基本的人権、特に言論、表現の自由と申しましても、絶対無制限なものではない、公共福祉のためには制限されることもやむを得ないものを考えております。また連合国最高司令官の発せられました先ほどの指令は、まさにこの公共福祉を保持するために発せられた指令解釈いたしております。
  35. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると、特審局長の方では、「平和の声」あるいはまた先日「労働者」、「新青年新聞」、「平和婦人しんぶん」、「祖国と学問のために」というそれぞれの四種類の新聞発禁処分に付されたのでありまするが、先ほどの御答弁によりますれば、それは公共福祉という一般的な立場、一般的な理論、前提、そういうものに立つて発禁ではなくして、占領政策に違反する、ないしは有害の行為として、そしてそれを代表的に出しておるものとして、マッカーサー元帥の書簡にその原因を発するものだというような御説明であつたのでありましたが、今のお話とは筋道が違うように私は拝聴したのですが、いかがなものでしようか。
  36. 吉河光貞

    吉河政府委員 連合国最高司令官指令は、公共福祉と矛盾するものではない。連合国最高司令官の発せられる指令は、ポツダム宣言わが国に履行せんがために発せられるものと解釈しておりまして、これはまたひるがえつてわが国内の公共福祉を維持増進するための指令であると解釈しております。
  37. 加藤充

    加藤(充)委員 そこで最後に一つお尋ねいたしますが、マッカーサー元帥がこのたび罷免に相なりましてアメリカに帰られたようでありますが、その国全内における、あるいはアメリカ国内における賛否両論のそれぞれの立場に立ちました論争、立論の立場新聞その他の報道機関によつて散見されるのであります。中にはひどい言葉で応酬しているようでありまするが、罷免になつた理由マッカーサー元帥個人が知らなくても、世界罷免しなければならなかつた罷免すべき理由世界のすべての人は知つておるというようなことまでトルーマン大統領が応酬しているようであります。すなわち戰争拡大の方針をとつたということ、それからはなはだしきに至つては、明らかに訓令違反をやつたのだというようなことまで新聞に報道されておるのであります。そうしますと、ここにたまたまGHQあるいは最高司令官としての地位にあつた人々の個人的な考え方によつて出したものは、罷免されなければならないような、世界の――日本だけじやありません、世界公共福祉、それは平和とか自由とかいうことはありましよう、そういうことのために必ずしも一致してないんだということをトルーマン大統領は認定されたのではないかと思うのでありまして、特審局長の先ほどの御答弁は、私には了解しがたいところを多々残すのであります。その点を承りたいと思います。
  38. 吉河光貞

    吉河政府委員 マッカーサー元帥米国にお帰りになつて米国国会でいろいろと陳述し論争されておることについてのお話でありますが、それは私どもの関知しないことでございます。     ―――――――――――――
  39. 安部俊吾

    安部委員長 司法書士法改正に関する件を議題といたします。本件につきましては、去る三月二十七日の本委員会において一応の成案を決定し九案に対しまして、さらに愼重審議の結果、去る五月二十一日の本委員会において、各派共同修正意見が提出され、関係方面との折衝に入つたのでありますが、今般諸般の手続を完了いたしました。この修正意見を採用し立案されたのが、お手元に配付してあります司法書士法の一部を改正する法律案であります。本件につきまして御質疑または御意見の御開陳はありませんか――御質疑がなければ、この際お諮りいたします。本案を本委員会の成案と決定し、これを本委員会提出の法律案と決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なければさよう決定いたします。     ―――――――――――――
  41. 安部俊吾

    安部委員長 ただいま田中警視総監おいでになつておりまするから、通告の順序によつて発言を許します。猪俣浩三君。
  42. 猪俣浩三

    猪俣委員 警視総監にお尋ねいたします。実はこれは平林たい子という小説家の「地底の歌」という小説にシンポライズされております。なおまた読売新聞が、相当具体的な事実をあげて報道しております。これは一新宿の問題のみならず、近ごろ青少年の風紀の頽廃及び暴力を伴う残忍なる犯罪が激増いたしておりまする現状におきまして、こういう新宿の存在というものは相当影響力を持つておる。そこで私は警視総監に徹底的な粛正をしていただきたいというために質問を申し上げたいと思うのであります。どうか率直なる事実の報告と、これを粛正すべき確固たる方針とを御説明願いたいと存ずるのであります。  まず第一に、この新宿の問題として考慮すべきことは、風紀の問題及び暴力団の横行の問題、そうしてこれが乱れる根本原因として、いわゆる警察ボスの存在、こういうものにつきましてお尋ねしたいと思う。これは新宿のみに限らず、盛り場においては各種共通の事情があろうかと思いまするので、私ども新宿をその見本としてお聞きしたいと存ずるのであります。そこでこの新宿辺の繁華街におきまする飲食店、あるいは特殊飲食店の許可あるいは認可というものは、どういう方法で、いかなるところで決定されておるものであるか、これをひとつ明らかにしてほしいと思います。
  43. 田中榮一

    田中参考人 お答え申し上げます。都下における盛り場は新宿、澁谷、池袋、浅草、上野、銀座、大崎、その他戰災後に復興いたしました各地の盛り場、もしくはこれに準じたようなところが最近多数できて参りまして、これにつきましては警視庁といたしましても、犯罪予防の点から、あるいは風紀の維持の点から、今お示しの暴力団等が横行せざるような、明朗な盛り場をできるだけ建設いたしたい、かような関係からいろいろ努力をいたしておるのであります。ただ一言お断り申し上げておかなくてはなりませんことは、盛り場取締りにおきまする警察の責任、いわゆる担任の問題でございますが、犯罪予防でございまするとか、あるいは風紀の問題であるとか、そうした問題につきましては、警察といたしましても積極的に粛正の道があるのでございます。ただ盛り場は、御承知のようにいわゆる盛り場でございまして、いろいろな業態がここに山積蝟集いたしまする関係上、ひとり警察の権限のみでは、これが粛正明朗化はなかなか不可能でございます。いわゆる関係の諸官庁並びに官公衙、こうしたところが総合的にこういう方面に御協力をいただきまして、警察としての担任部面は警察としていたしまするし、都市の外観であるとかあるいはまた衞生の関係でございまするとか、あるいはそのほか業態の許可等は他の官庁に属するようなところもございますので、こうした関係の官公衙が相互に協力をいたしまして、同一目的に向つて手を組んで粛正に乗り出しませんと、ただ警察独力をもつていたしましては不可能なのでございます。そこでさしあたつてお話のございました新宿の問題でございまするが、風紀の点あるいは暴力団の横行というような点の情報も、警視庁にもいろいろと入りまするし、またいろいろ輿論の関係もございますので、警察といたしましては、過去におきましても相当力を入れて、風紀の維持並びに数次のいわゆる暴力団狩りを実施いたしまして、現に千数百名の町のだにといいまするか、そうした詐欺、恐喝常習犯を検挙いたしまして、いわゆる良民を苦しめるような、かかる徒輩の横行を防止いたしているような状況でございます。新宿の風紀の点につきましても、いろいろの点から、まだまだ今後十分に業者の自覚、反省を待ち、また新宿を中心とする業界の人々の協力または識者の御援助等により、また官公衙の御協力によりまして、風紀維持につきましては今後も最善の努力をいたしまして、明朗なる盛り場を実現いたすべく努力をいたしたいと考えております。  また暴力団の横行にいたしましても同様でございまして、こうしたものは、暴力団狩りをいたしますると、一時影をひそめるのでありまするが、やがてまた再び出て来るというのが今までの例でございますので、関係者の御協力によりまして、この暴力団の横行をできるだけ防止いたしたい、かように考えております。  それから飲食店の許可でございまするが、いわゆる軽飲食店のごときものは、別に許可が必要ございませんで、届出等によつてこれを行うことができるのであります。それから特飲の許可につきましては、これは風俗営業取締法の規定によりまして、現在公安委員会におきまして許可をいたしておるのであります。風紀維持の問題からいたしまして、こうした業態があるということは、まことに遺憾なことでございまするが、現在の状況といたしまして、全然これを禁圧するということも、いろいろの点から考えさせられる問題でございますので、現在といたしましては、これらの特殊喫茶店の業者の組合等を通じまして、その営業を行う上において、極力自粛自戒をいたさせまして、風紀の紊乱等の行為のないように、嚴重なる注意をいたしまして現在やらせておるのでございます。
  44. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、軽飲食店については届出だけでよろしいし、それから特殊飲食店につきましては、結局どういう機関によつてこれが許可されるのでありますか。風俗営業取締法による公安委員会ですか。実際上どういう機関が相談の上で許可するのか、あるいは警察だけでやるのであるか、あるいは区役所あるいは保健所というようなものがやるのであるか。特飲を許可する、あるいは許可しないということは、どういう機関でやられるのであるか、それを承りたい。
  45. 田中榮一

    田中参考人 現在風俗営業としていろいろな問題がございまするが、旅館営業につきましては、これは東京都知事の権限に属しております。それからいわゆる軽飲食店というようなものは一応届出によつて営業ができるのであります。それから主として風紀取締りを伴ういわゆる貸席等は、公安委員会において許可をいたすことに相なつております。それから今お話の特殊飲食店と申しまするか、そうしたものは、やはり主として風紀の取締りを重点に置くものでありますので、これは公安委員会の方においてこれを取扱つておると私どもは思つております。もし違つておりましたら、後ほど訂正させていただきます。
  46. 猪俣浩三

    猪俣委員 区役所とか保健所とかいうものは、これには関知しておらぬのですか、関知しておるのですか。
  47. 田中榮一

    田中参考人 たとえば婦女子の衞生の検査の問題でありまするとか、そうした問題につきましては、やはり保健所も関係し、また主として飲食店の関係、いわゆる飲んだり食つたわするというようなところは、保健衛生の点から、やはり保健所等もこれに関與いたしております。
  48. 猪俣浩三

    猪俣委員 新宿あたりの実際は、私の聞くところによれば、区役所と保健所で大体きめてしまつて、最後に警察へただそれをちよつと報告するだけで、警察でもほとんど盲判を押してしまう、だから前に非常にいかがわしいことをやつて、いろいろ警察のお世話になつたような連中でも、あまりよく審査せずして許可されるというような実情であると聞いておりますが、そんなふうになつておるのじやないのですか。
  49. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。新しい警察制度によりまして、警察署長が営業を許可するというのは、現在はないのでございます。また警視総監が営業の許可をするというのも、現在の制度ではないのでございます。もちろん、たとえば風紀取締りを伴う業態の営業の許可につきましては、公安委員会が許可いたすのでありまするが、願書等は警察署を経由して、必要なる調査事項を記入いたしまして、これが本庁に送付せられ、本庁においてさらにこれを公安委員会に提出いたしまして、公安委員会においてこれを許可する、かような建前になつております。ただこの場合に、もちろん保健衛生の設備の関係等も十分に許可の考慮に入れねばなりませんので、必要に上りまして保健所等に横の連絡をとりまして、保健所長等の意見を徴しまして、許可さしつかえないものであるかどうかということも十分にその意見を参酌いたしまして、許可を與えておるような状況でございます。また逆に保健所心おいて許可されるような問題につきましても、風紀上警察的な立場からいかなる考えを持つておるかというような場合において、保健所から警察署の意見を聴取されるような場合もございまして、保健所、警察署等は、大体におきまして横の連絡をとりながら、現在事案を措置いたしております。
  50. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは要望でありまするが、そういう許可をなさる際に、警察におきましては、前科者のような、そういう風紀犯を犯しておしかりを受けたような者に対して許可を與えるというようなことをなさらぬように、十分研究調査の上許可するように、特別の御配慮を願いたいと思うのであります。どうもわれわれの聞くところによれば、それらがみんなボスになつてしまつて、警察を薬籠中のものにして、それらの一派がみなこういう飲食店なんかの権利をとつて営業をやるというようなことが行われておると聞くのでありますが、さような状態では、何ぼ彼らを集めて説教なさつても粛正ができない。悪いやつはどんどんこれを粛正して、正しい者を許可するように、特別な横の連絡、縦の連絡のもとに、警察としても御考慮を願いたと思うのであります。  それから新宿へ行つて来た人ほとんど万人が言うのでありますが、喫茶店の前なり何なり、お客さんをみなひつばる、そうして白晝堂々として、お客さんをひつぱり込んで、そこで風紀を乱すということが行われておるけれども、警察は少しも取締つておらぬというようなことを聞くのでありますが、警視総監はそういう実情を御認定になるのか、ならぬのかお聞きいたします。
  51. 田中榮一

    田中参考人 ただいま婦女子の街頭における客引行為の取締りにつきましての御意見でございますが、もちろん客引行為につきましては、交通取締りの見地から、また風紀維持の見地から嚴にこれを戒めて、取締りをいたしておるような状況でございます。先般も、新聞で御承知かと思いますが、一週間ほど前にもすでに淀橋署におきまして、こうした街頭における婦女子の客引行為につきましては、これを多数検挙いたしました。ことに売春行為目的とした客引行為につきましては、嚴重に取締りをいたしております。また過去におきましても、数次の取締りを実施いたしたのでありますが、ただやはりお互いに競争のあまり、あるいは街頭に進出いたしまして、客引行為をする者もまだまだございますので、この点につきましては、さらにひとつ嚴重に、ひとりこれは淀橋の問題ではございません、他の盛り場等においても同様な行為があろうかと考えておりますので、これらの行為につきましては今後も警視庁といたしましては、嚴重に取締りをいたしたい、かように考えております。
  52. 猪俣浩三

    猪俣委員 首脳部においてはさようなお考えでありましようけれども、実際問題としてあまり行われない。その原因は第一線に働いておりまする刑事連中が、こういう飲食店へ行つて飲み食いをただでやる、これはほとんど長い間の風習であるようであります。読売新聞の報ずるところによりましても、さような実例が出ておるのでありましで、これはほとんど公然の秘密のようである。そういう第一線に働いておりまする刑事連中が、飲食店へ行つて、そういうただの飲み食いをやつて、そこに情実関係が出て、取締りが徹底せぬということが、これはほとんど公然の秘密じやないかと考えるのでありますが、こういう刑事連中に対しまして、警視総監はどういうふうな訓令を與え、どういう取締りをなさつておるかを承りたいのであります。
  53. 田中榮一

    田中参考人 ただいまお話のような警察官のいわゆる無銭飲食と申しますか、こうしたことが過去におきましてあつたのでございまして、この点につきましては、私どもも事案として発見されました際には、それぞれそれに対しましてよく実情を調査いたしまして、それぞれ措置をとつておるのでございます。ただ中にはほんとうに、いわゆる無銭飲食というのではなくして、むしろ警察官の平素の労苦をねぎろうといいますか、警察官の御苦労に対して感謝の意を表するという意味の、いわゆる好意的なそうした飲食物の提供等も、ときにはあるのでございますが、しかしながら警察官としてはその困難な職務を執行いたしますることが、これが当然の警察官の職務でございますので、こうした場合においても、こうした好意ある提供に対しましても、これを遠慮するのが警察官の当然の規律保持である、かようなことで、現在といたしましては、こうした無銭飲食等は絶対にやらぬようにということを嚴に指令もし、戒めておるような状況でございます。警察官には御承知のように警察官としてのいわゆる基本規程の中に、相当嚴重なる、いわゆる服務紀律がありまして、この服務紀律に違反するというような事実が発見されました場合におきましては、それぞれ措置をとつておるような次第でございまして、今後もこうした一般の民衆から警察と民衆との情実関係を誤解されるような、こうした無銭飲食等の行為につきましては、嚴に戒めて、かかることのないように最善の注意をいたしたい、かように考えておる次第であります。
  54. 猪俣浩三

    猪俣委員 敗戰後の現象といたしまして、風紀の乱れることは、これは歴史の示すところであります。警察が怠慢であつたとばかりは責められないのでありますけれども新宿あたりの暴状というものは、実にはなはだしいものがある。しかもこれに対して警察がまつたくゆるふんで、取締りを今までしなかつた。その根本原因は、第一線に働いておる刑事たちの態度にあろうかと考えられますので、その労苦に報いるための飲食などというものは、徹底的に粛正していただきたい。さようなことが広がりますると、こういう売春行為とか、あるいは客を引込むというような、ほんとうの第一線の状況を取締ることができる道理がないのであります。これは警視総監嚴重に戒めていただきたい。これは私の要望であります。そうして少しでも明るい新宿、ひいては明るい日本というものを再建して行かないというと、私ども子供を持つておる親といたしましても、安心ができないような状態でございまして、特に私は警視総監の重大なる責任として徹底的な御構想を願いたいと思うのであります。  なお次の問題は、いわゆる暴力団の問題でありますが、これも新聞紙上相当報道されております。今特審局長質問いたしましたる野原組などというものも、特審局が特別に調査されておるそうでありますが、こういう暴力団、あるいは尾津組だとか和田組だとかいうような暴力団の状態、こういうものにつきまして、警察では一体、特に視察をなさつておるのであるか、あるいは取締りをなさつておるのであるか、ほとんど放任状態ではないかという輿論なのでありますが、どういう状態に相なつておりますか、お聞かせ願いたいのであります。
  55. 田中榮一

    田中参考人 ただいまいろいろな組の名前をお示しになつたのでございますが、警察といたしましては、いわゆる暴力団として取締りをいたしておるのでありまして、これらの組に属する者が違法の行為をいたしまして、良民を苦しめたりあるいは刑法犯に触れるような事案を惹起いたしましたる際は、ただちにこれを検挙し、この取締りをいたしておるのであります。ただこうした組、野原組であるとか、尾津組であるとか名前を仰せになりましたけれども、これらにつきましては特審局におかれまして、いわゆる団体等規正令その他によりまして、それぞれ取締りをされておるものと考えます。これらの組の実体の取締りにつきましては、別途特審局におかれまして取締りをされておるものと思いますが、これらに属する人々で、もし不法行為あるいは刑法犯に触れるような行為がありました際には、警察といたしましても断固取締りをいたしております。またひとりこれらに属するものでなくともいわゆる盛り場を中心として、盛り場においてたかりをしたり、あるいは脅迫をしたり、あるいはまた良民を苦しめたり、あるいは業者を苦しめたりするようなものにつきましては、警察において発見次第これを取締り、また関係者の訴え出によつてただちにこれを取締りする方針で、現在もいるわけであります。
  56. 猪俣浩三

    猪俣委員 新宿におきましては、防犯協会と交通安全協会あるいは警察後援会等があり、またこの三つでもつて、三団体協議会というものを組織しておる、こういうことが聞かされるのでありますが、かような団体は現在も存在しますか、しませんか。
  57. 田中榮一

    田中参考人 現在防犯協会、交通安全協会、警察後援会というものはございます。防犯協会は、これは主として一般都民の方々の自発的な防犯組織によつて、犯罪を未然に防止したいという、主としてこれは一般の都民の方々によつてつくられておる団体でございます。また交通安全協会は、これもやはり、ひとり警察が交通取締りをするだけでは、十分に交通取締りの目的を達成することができませんので、広く一般都民の方々の自覚によつて交通安全を維持したい、かような意味から、これも主として都民の方々の自発的な団体と相なつております。また警察後援会につきましては、当初自治体警察ができました際に、その増員の関係上、施設等において急激に予算を計上することのできなかつた関係上、いわゆる警察後援会というものを各警察署ごとに組織をいたしまして、相当財的の御援助を願いまして、警察官の待機所の施設であるとか、あるいはそのほか一般警察活動に必要なる施設を補助していただいておつたのであります。昨年の十月一日から、本庁といたしましても、警察後援会というものを解散する方途に出まして、今後警察後援会からは一切の財的の援助を御遠慮する但し警察後援会として精神的にいろいろ警察活動について御忠告をいただいたり、あるいはまた御指導をいただき、また民衆の声を警察に持ち上げる一つの中間団体として、警察の活動の指針としてこういうものを置くことはさしつかえないという方針で、現在警察後援会というものが、もう四十以上のものが解散をいたされまして、――ただ現在は財政上の、財産移讓の関係あるいは財産処分の関係、そういう点から、また警察後援会という名前において残つておるところはございまするが、おそらく淀橋もまだ財産処分その他の関係から、名前は警察後援会として残つておるものと考えております。実体的には私はほとんど活動はせられてないものと考えております。従いましてこの防犯協会、交通安全協会、警察後援会の三者のいわゆる連絡協議するための団体が淀橋警察署に置かれてあるということは、承知いたしております。しかしながらこの三つの団体がどの程度に、実際に活動しておるかどうかという内容につきましては、私残念ながらまだ十分に了承いたしておりません。
  58. 猪俣浩三

    猪俣委員 防犯にしろ、交通安全にしろ、警察後援会にしろ、趣旨ははなはだけつこうなものであります。しかし実際上はこれらの役員をやつておる、実際これらの協会を牛耳つておる連中というものは、みんな飲み屋のおやじ連中である。しかも防犯、交通安全、警察後援会各協会はほとんど全部共通の幹部でもつて握られておるというのが、新宿の実情である。総監はそれまでお調べになつたかどうかわからぬのでありますが、かような関係であつて、しかもそれが中には札つきの飲み屋のおやじがおる。こういう防犯とか交通安全とか、警察後援会というものに特殊飲食店だのそういう経営者を参加させておる。どこでもそういう状態でありますが、一体彼らは取締りを受ける立場の人間であつて、取締るべき立場に立つ人間じやない。それが防犯協会の幹部、交通安全の幹部だとか、警察の後援会の幹部だということは実にふしぎであります。こういう協会が存在し、精神的に警察を応援するということならば、さしつかえないのであるが、それにはそれぞれ適当の人があると思うのです。それをかような、一体取締られる側の人間がみんな幹部になつてつておるところに、いわゆる警察ボスなるものの発生が現われて、風紀を乱し、暴力行為があつても、彼らが口をきくことによりまして、警察権の発動が鈍る。普通ならばただちに検挙処断さるべきような行為をやつてつても、彼らがもらい下げればそのままうやむやに終つてしまうということが、私は今日百弊のもとだと考えるのであります。そこでかような協会の人選は、一体これは何人がやるのでありますか。
  59. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。現在これらの団体は、警察とは全然独立した形において存在いたしておるのであります。防犯協会にいたしましても、交通安全協会にいたしましても、今の警察後援会にいたしましても、これは警察とは全然別個な独立の人格をもつて運営いたされております。従いましてだれが会長になり、だれが役員になるか、どういう人がメンバーになるかというようなこと、そからまた予算がどういうふうになるか、一年の会計はいかに運用されているかというようなことにつきましては、警察といたしましては全然干渉いたしておりません。この団体の責任者の自覚と自粛によりまして、この団体の運営を行うように、今なつております。従いまして、今お説のように、団体の役員等の中に、かかる団体の役員として不適当なものが、過去においても現在においても、あるいはあるかもしれません。かかるものにつきましては、警察署長から団体の責任者の方に、警察側の意見を一応参考に申し述べまして、団体の責任者の自覚反省をまつという態度に出ているのでございます。
  60. 猪俣浩三

    猪俣委員 民主的の団体であつて、警察が干渉すべからざるものであるというような建前でありますけれども、しかしこれらの団体は、警察それ自体に寄與せんとしての団体でありまして、警察と密接な関係がある、しかもこういう三つ、四つの団体の役員をしておると、ほとんど警察署長などと一週間に一ぺん以上会見、いろいろ懇談をする機会がある。そういう人たちは警察の手足になるような外部的な団体であつて、警察の運命に関しましては重大な責任を持つておる団体であります。こういう団体の構成員につきましては、ことに幹部につきましては、私は警察が忌憚なき意見を吐くべきものだと思うのであります。これも新聞紙の報ずるところによれば、鈴木某という人間は、淀橋警察のこういう外郭団体の重要な地位にある。しかるに彼が営業所を持つておる四谷管内におきましては、人身売買あるいは無届建設、あるいはその他の不都合なことを働いて、再三再四四谷警察署にあげられておる。しかるに彼は淀橋においては一ぺんも取締りを受けたことなく、この三団体の協議会の幹部として納まつておるというようなことは、実に私は不都合だと思うのであります。かようなことをやつている以上は、警察の粛正もできないし、従つて新宿なら新宿のいわゆる風紀紊乱を矯正することはできないと思う。こういうふうな状態ではいわゆる警察ボスというものが跡を絶たない。新宿には数万、数十万の人間がおるのでありまして、相当の人物があるはずでありますから、そういう場合においては警察が相当のサゼスチヨンをいたしまして、いかがわしい人物を出さぬように御努力を願うとともに嚴重に警告を発してもらいたい。しからざれば一切こういうものをおやめになつて――一時やめたのが、警視庁の解釈が精神的援助ならいいということになつたらまたみな存続したというのでありますが、これがやはりボスになつておる。どうしてもこういう飲屋のおやじや、こういうものをしなければ治まりがつかぬのなら、こういう団体を一切禁止していただきたいと思う。しからざればその人選についても警察では相当考慮して、責任を持つていただきたい。こういう連中がかつてにつくつたのだから責任がないというのでは、警察ボスの発生は絶滅できません。この点についてはいかがお考えになりますか。
  61. 田中榮一

    田中参考人 これらの団体はまさに警察活動の一つの協力団体でございまして、もちろんこの団体の活動につきましては、警察ときわめて密接な関係を持つておりますので、お説のように警察側としてもその役員の個々の行動等につきましては、全然無関係であるわけではないのでございます。その団体の役員その他会員のうち、これらの団体の役員としてそのまま職をとることが不適当である、あるいはまた犯罪を犯したというような場合におきましては、むしろ警察側から積極的に団体の責任者の方に善処方を申入れした例が、過去においてもしばしばあるのでございます。仰せのごとくにこれらの団体の役員におかれましても、最近の情勢からいたしまして十分にその職務を認識せられまして、万々間違いはなかろうかと考えております。なおこれらの団体の人選につきましても、各方面のいわゆる識者を網羅すべきが至当であろうかと考えております。これらにつきましても十分ひとつ今後さような、仰せのような方針で進みたいと考えております。
  62. 猪俣浩三

    猪俣委員 休会前の当委員会におきまして私は警視総監質問したのでありますが、まだ調査中のゆえをもつて御報告をいただかなかつたのでありますが、淀橋の署長の渡曽という人についていかがわしいことがあるというようなことが新聞紙上に発表せられたのでありますが、その後調査の結果、署長その他警察署におきましての粛正問題がどういうふうに処理されたのであるか。あるいは新聞に伝えられたようなことはなかつたのであるかどうか。その後の模様を御報告願いたいと思います。
  63. 田中榮一

    田中参考人 淀橋渡會署長の家の建築の問題でございますが、これにつきましては警視庁におきましても方面本部長をして詳細嚴重に調査をいたさせたのでございます。ところが調査をいたしました結果、渡曽署長の家の問題につきましては、その建築資金の出どころ等につきましては、あるいは一部を住宅公庫の金を借り入れまして、それからまた一部は無盡を落した金を充当し、また二人の子息の貯金をおろしましてこの建築を計画いたしたのでございまして、その金によつて現に建築費が支払われている状況でありまして、別に建築資金につきましてはいかがわしいような点は全然ございません。それからまた防犯主任の話では、家の建築資金の問題で月給にふさわしからぬ金を出したという話でございますが、これも警視庁といたしまして十分調査いたしました結果何らその金の出どころ等につきましては、別にいまわしいところから入手したこともございませんし全部正しい自分の金によつて建築されたということが判明いたしておりますので、この点は御了承願いたいと思います。その他いろいろ淀橋署員のことにつきまして書かれておつたのでありますが、しからばだれがどういうことをやつたかということにつきましては、これはそこまで調べておりません。先ほど冒頭に申し述べましたごとくに、警察官の無銭飲食をした者はだれだということまでは調べておりませんが、私はその淀橋署員が絶対に無銭飲食したことはございませんとはお答えしないのでありまして、過去におきましてあるいは不心得な警察官がありまして、あるいはそうしたことがあつたかも存じません。今後も先ほど冒頭に申し述べましたごとくに、警察官が業者のところへ行つて無銭飲食するということは何としても服務紀律違反になることは事実でございますので、警察の威信保持の上からも、こうしたことは絶対に戒めて行かねばならぬと考えております。この点につきましては今後十分戒めて行きたいと考えております。
  64. 猪俣浩三

    猪俣委員 最後に、実は読売新聞が三月三十日の記事に、警視総監に対しまするところの新宿粛正に関する質問六十四項を提示しておるのであります。中にはたとえば淀橋署に対して告訴件数が二百三十件あるにかかわらず、ほとんどこれを取上げておらぬ。そして被害者は淀橋はだめだからというので早稻田警察署に訴えて出るようになつたというような質問書がある。その他詳細にわたつて質問されておりまして、私どももこの答えを聞きたいと思つてつたのであります。しかるに警視総監は回答の要なしとしてお断りになつた。今一つ一つこの條項にわたつてお尋ねすることは省略いたしますけれども、天下の新聞に発表されたのでありまして、やはり新宿の紊乱しておるということは、ほとんど公然の事実である。これに対しまして、新聞社がその調査に基きましたる質問をしておることに対しましては、警察の名誉のためにも、またわれわれ大衆の安心のためにも適切なる答えがほしかつたのでありますが、どういう事情で回答の要なしということに相なつたのでありますか、お聞かせ願いたいと思うのであります。
  65. 田中榮一

    田中参考人 読売新聞社から警視総監あてに六十四項目の質問が提出されたことも事実であります。私の方もこれにつきましていろいろ考慮いたしまして、本庁において、部長会議にかけ、あるいは公安委員会にもかけ、いろいろ御協議申し上げたのでありますが、警視総監として、この六十四項目の小さな事柄について一々お答えするのも、形式の上から言いましてもどうも不適当である。むしろ警視総監としては、これらの事柄全体につきまして所信を披瀝しで、今後の取締り方針等につきまして、建設的にお答えを申し上げたい、かようなことを交渉いたしておつたのでありますが、どうも形式論と申しますか、答えの形式、方法等につきまして意見の相違を来しまして、結局ああいう結果になつたのでございまして、われわれとしましては、決して六十四項目に対しまして絶対に答えない、こういうのではないのであります。お答えはしたいけれども、むしろ建設的に総括的に今後の方針その他についてはつきり声明をいたしたい、かようなことを申し上げたのでありますが、結局再審におきまして意見の相違を来しまして、残念ながらまだお答えしないうちに、結局問答無用ということになつてしまつたわけなのであります。われわれとしては、決して問答無用という当時の意思ではないのでありまして、できるだけお答えもいたしたい、警視庁の立場も鮮明いたしたい、かような熱意に燃えておつた次第であります。
  66. 猪俣浩三

    猪俣委員 私はこまかいことの質問は省略いたしますが、淀橋警察署の志気が弛緩している、新宿における風紀の取締り、あるいは暴力の横行等に対します粛正が不行届きであつたということを――抽象論でありますが、大体において警視総監はお認めになるのか、ならぬのか。もしそういうことはなかつたということになれば、これから努力する必要も何もないことでありますが、署長初め、刑事連に至るまで、この新宿の風紀取締り及び暴力的悪行為の横行に対しまして遺憾な点があつたのであるか、ないのであるか、それをお答え願います。
  67. 田中榮一

    田中参考人 淀橋署の取締りの方針でございますが、これにつきましては、常に本庁の指示によつて取締りをし、また署長独自の考えから再三再四取締りをいたしておつたのであります。しかしながら、先般の新聞紙にあるがごとくに、取締りが不徹底である、かような御批判を受けたのであります。もしかような御批判を受けたといたしましたならば、私はまだあるいは不徹底の点があろうかと考えております。警察は最善の努力をいたしましても、なおかつ民衆から、お前の取締りは不徹底だと言われたときには、やはりその民衆の輿論というものを貧重いたしまして、警察といたしましても十分反省して、さらに徹底した取締りをすべきであろうと考えております。ただ過去におきます淀橋警察の取締りにつきまして、私どもといたしましては、まず本庁の指令通りにやつてつたものと考えておりますし、また淀橋警察署自体といたしましても、相当努力はいたしておつたものと私どもは認めておるのでありますが、しかし外部からのそうした御批判があるといたしましたならば、私どももさらにひとつより以上に署の取締り方針を徹底して行わせるように指導して行きたい、かように考えております。
  68. 猪俣浩三

    猪俣委員 総監が責任上さようにお答えなさることも無理からぬと思いますから、追究はいたしません。しかし新宿の紊乱しておることは、いかにあなたが申されても、これは嚴たる事実であり、これに対して警察がはなはだゆるふんであつたことも、ほとんど周知の事実であります。しかし総監の立場からいきなりそれをお認めなさることも困難かと思いますので、私はこれで遠慮いたしますけれども、これは相当小説の材料になり、新聞記事になり、しかもほとんど新宿へ行つた人たちが、衆口一致しておる事実でありまして、いかに警察がこれを否認いたしましても、争うことのできない事実であります。こいねがわくは、どうぞ決定的にこの風紀を取締り、そしてゆすり、たかりが新宿から消え去るように、これは先ほど総監も申されたように、警察のみの力ではいかぬと思う。その他の官庁の協力あるいはまた一般民衆の協力がもちろん必要だと思いますが、警察が率先してこの態勢を示されますならば、おのずからそこに協力が生れて来ると存ずるので、どうぞ一段の御努力を願いたい。なおまた新宿のみならず浅草その他の盛り場におきましても、これら風紀が青少年に及ぼす影響というものは実に慄然たるものがあるのでありまして、私どもは若い子供をたくさん持つておりまして実に心配にたえない点があるのであります。これは弾圧だけではもちろんいけないと存じますけれども、まず警察官が率先して立ち上るということが重要問題だと考えますので、邦家百年のために御健鬪を祈りたいと存じます。
  69. 田中榮一

    田中参考人 ただいま猪俣議員からたいへん建設的なけつこうな御意見がございまして、私どももまことにありがたく御意見を拜聴いたすのであります。現在東京都下におきまする盛り場の取締り状況につきましては、私個人といたしましても、必ずしも完璧を期しているとは毛頭考えておりません。まだ不十分な点が多々あろうと考えております。これらにつきましては、今後また関係方面の十分なる御協力を得まして、十分に輿論を尊重いたしまして明朗な盛り場を実現すべく最善の努力をいたしたい、かように考えている次第であります。
  70. 世耕弘一

    世耕委員 簡單に二、三警視総監にお尋ねいたします。第一点は、最近人権の擁護がやかましく叫ばれている折柄、別の面におきまして、か弱い子供を道連れにして一家心中ということが、ほとんど毎日のように記事になつて現われて来るのでありまして、その心中せる原因等に関して何か警視庁は研究されたかどうか、またそれに対する対策等を考えたかどうかという点。なおこれに関連してたとえば生活相談所とか、人事相談所というような、人命保護とか、あるいは人権擁護とかいう方面に積極的に何か働きかけがあるかどうか、この点をまず最初に伺つてみたいと思います。
  71. 田中榮一

    田中参考人 最近の新聞紙上における一家心中の記事は、まことに私どもも暗憺たる思いがいたすのでございます。東京都内における一家心中の原因は、新聞にも報道されておりますごとくに、主として失業あるいは商売の失敗、並びに家計不如意、あるいは本人が病弱でとうてい一家の生計を立てて行く見通しがつかない、かような点から前途を悲観いたしまして、罪のないか弱い子供を道連れにして一家心中をいたすのでありましで、まことに悲惨なことであります。現在警察署におきましては、いわゆる生活及び人事の相談所というものを設けまして、こうした思いあまつた方々、煩悶を持つた方々に対しては、係りのものが親身になつてできるだけお世話を申し上げておる次第でございます。ただ家計不如意、その他生活困難ということにつきましては、これはひとり生活相談、人事相談だけでなくして、やはりこれらに対しまして社会的ないわゆる救護施設というようなものが何か必要なような気がいたしまして、警察のできる範囲におきましては最善の御協力を申し上げておる次第でございますが、何か別にこうした人々を救済する社会施設というものが必要なような気もいたしております。
  72. 世耕弘一

    世耕委員 お説のように、結局生活に希望を失つたので一家心中をするということが、まずわれわれの推察し得るところでありますが、過去における日本の国情から見まして、食えないから一家心中するということはなかつたのです。これは戦後特にひどい。それには何か精神的な欠陷があるということを考えなければならない。むろん国家的見地からも大いに考えなければならないのだが、人権擁護立場に立つておられる警視総監としては、この点について十分な資料、用意があつてしかるべきではないか。またぜひそういう点について御協力を願いたいということをお願いいたします。長くなりますから、その程度でとどめておきます。  次にお尋ねしたいのは、凶悪犯罪が一向に影を失わない。ことに最近においても凶悪な犯罪が新宿方面で起つたということが新聞をにぎわしておりますが、こういう点に関しまして何か対策をお持ちでありますか。あるいは警察の手が足りないから自然そういうふうな結果を生むのであるかどうか、この点についてお伺いいたします。
  73. 田中榮一

    田中参考人 一家心中について何か精神的な欠陷があるのではないか、警視総監においては十分なる資料と用意が必要であるということにつきましては、まことにけつこうな御意見であると考えておりますので、この点につきまして、私どもも十分その辺に意を用いまして考察を進めたいと思つております。  それから凶悪犯罪が跡をたたない、先般も淀橋管内におきまして女中さんが惨殺されたのでございますが、最近におきましては、割合に凶悪犯罪というものはやや下火になつてつたのでありますが、突然またこうした犯罪が起つたのでありまして、まことに申訳ないことであります。ただ警視庁といたしましては、結局凶悪犯罪は、凶悪犯罪に対する前科者がしばしば再犯、累犯を犯すおそれがございますので、本庁におきましては、たびたび凶悪犯の検挙週間、あるいは検挙月間というものを実施いたしまして、都内七十三の警察署がすべて全力をこの凶悪犯の検挙に集中いたしまして、二週間なり、二十日なり、一月なりぶつ続けでこれに従事いたしたのであります。この期間中に、幸いにしまして、他府県下において行われました凶悪犯の犯人が相当あがつておりまして、そして再び犯罪を敢行せんとする一歩手前におきましてこれを逮捕しておるというような事例がしばしばございます。ほかの県で警察官の拳銃を奪つて、その拳銃によつて都内において一仕事しようという一歩手前において逮捕した、あるいはほかの県で良民を惨殺して、都内において一仕事しようというやさきにつかまつたという例もしばしばございまして、まず凶悪犯を行うと思われるようないわゆる前科者に対しましては、相当注意をいたしまして、検挙週間、検挙月間等を通じましてこれを逮捕する。それから絶えず上野の地下道でありますとか、こうした者の蝟集するような場所に重点的に取締りを行いまして、容疑者を検挙いたしまして、凶悪犯を未然に防止する、かようなことも実施いたしております。そのほかいろいろな点につきまして、凶悪犯の防止につきましてはいろいろとくふうを凝らしてやつておるのでありますが、ときどきこうした凶悪犯の起りますことは、まことに遺憾な次第でございまして、今後さらに凶悪犯の絶滅に対しては十分努力をいたしたいと考えております。
  74. 世耕弘一

    世耕委員 最近の犯罪の傾向を見ますと、前科者よりも、むしろ不良性を帯びた者の初犯者に凶悪犯罪が多く発見されるように思うが、統計上の関係はどういうふうになつているかということをお聞きしたい。  なお時間を節約する意味においてお尋ねいたしたいのは、過般来私は警察の機械化ということをやかましく主張しておいたのでありますが、最近の警察隊における機械的な活動、機械を利用しての、たとえば自動車とか、無電とか、そういうあらゆる文化的な警察施設による犯人の逮捕状況というようなことについて、何か進歩的な構想なり、あるいは実施をされておりますか。
  75. 田中榮一

    田中参考人 前段の凶悪犯は、最適におきましては、中には不良性を持つた青少年が相当ございます。これにつきましては、ただ普通の強力犯的な取締りだけでは十分でございませんので、いわゆる少年警察の手によりましてこれが補導に万全を期しておる次第であります。しかしながら、中には初犯者の中で、とても考えられぬような凶暴な犯罪を犯すものがときに起りまして、この点は警察側といたしましても非常に憂慮いたしている次第でございます。なおこの点につきましても十分に注意をいたしたいと考えております。  それから警察施設の充実でありますが、現在警視庁におきましては、国警と十分に連絡をとりまして、なるべく機械化に重点を置きまして、あるいは無線自動車による警邏あるいはまた、街頭における警察電話を設置いたしまして、犯罪をただちに通知させる。そのほか機動力の強化のために自動車を購入いたしまして、これによつて警察人員を合理的に転換配置いたしまして、警察活動に便ならしめる。そのほかいろいろいたしております。また犯罪検挙につきましては鑑識施設を十分に拡充いたしまして、現在アメリカ等に、このために特にニューヨークの警察その他非常に設備の優秀なる警察署の鑑識施設等を実地に視察させ、その長所を取入れまして、現在着々そうした施設の拡充に努力をいたしておるような次第でございます。
  76. 世耕弘一

    世耕委員 警察行政の機械化ということは御説明によつて大体了承いたしましたが、たとえば犯罪捜査の面におけるところの自動車の活用等につきまして、どうも上役の方は自動車が配置されているが、ほんとうに大事な現場の検挙にあたつて十分な活動性がないというふうにも聞いておるのですが、そういう方面の予算はどういうふうに考えられておるか。この刑事活動における機械化ということが犯罪捜査の上に非常な敏活さを現わすものと思うが、この点について特に留意してもらいたいということと、それから防犯という問題に対してはかなり大きな問題が残されておると思います。できれば防犯関係における科学的な捜査、研究、そして犯罪発生の原因、社会情勢等も包括して、総合的に研究される機関が当然なくちやならぬと思うが、そういう方面についての組織はどうなつておるかということをお尋ねしておきたいと思います。
  77. 田中榮一

    田中参考人 犯罪現場における刑事活動でございまするが、この点につきましては、警視庁といたしましてはまだ十分に施設が完備いたしておりません。最近ようやく犯罪現場に鑑識自動車というものを設けまして、その中に無線装置、それから鑑識施設の一切の設備、その他必要なる施設を備えました鑑識自動車というものをただいま運営いたしております。私の念願といたしまするところは、まだ実現いたしておりませんが、少くも刑事活動に便ならしむるためには、まず刑事を一定の場所に集団的に住居せしめる。なるべく本庁に近い所にいわゆる待機寮を設けまして、そとに刑事が集団的に住居いたしておりまして、いざというときにはただちにそこから飛び出せるということが必要であろうかと思います。それがためにはやはり何といたしましても今刑事が電車に乘つたりあるいは省線にぶら下つて行くようでは、とうてい急速なる検挙ということはむずかしいのでありまして、何としても小型の自動車等を十分に備えまして、二人か三人現場に飛び出せばいいのでありまするから、刑事自体が小型自動車を運転してただちに現場に向うというような措置ができれば非常にけつこうであろうと思います。またそこまで行かなくとも、進駐軍でよくやりまするモーター・プールでも置きまして、チケツトによつてただちにだれでもそのモーター・プールから自動車をひつぱり出して現場に行かれるというようなことが必要ではないかと考えております。  なお科学的捜査の研究につきましては、すでに私の方の景山鑑識課長は昨年米国に渡りまして、実際に自分で鑑識施設を研究いたしております。なおそれをなるべく予算化しで実現するように努力いたしております。そのほかまた近く私の方の刑事部長もアメリカに参りまして、あちらの防犯施設の粹を十分に研究いたしまして、これを取入れるべく着々準備を進めておるような次第でございます。なお犯罪発生の原因調査につきましては、やはり刑事部にそれに相当する課、係がございまして、いろいろな調査について統計資料を集めまして、いろいろ研究をいたしております。ときに雑誌その他についてこれを発表はいたしておりますけれども、小規模ではございまするが、こうした調査もいたしております。
  78. 世耕弘一

    世耕委員 それでは最後に申し上げたいと思いますが、結局警察行政の使命は犯人の逮捕ということよりも防犯が主でなくちやならぬと私は思う。ところが防犯に対する対策が非常に日本では遅れていはせぬか、こういう点が考えられるのであります。私はかつて中支に遊んだことがありますが、あそこには三、四十万人の人口があつたと思いますが、四年に一ぺんくらい強盗殺人があるとかいうふうなことで、もしそういうようなことがあつたらたいへんな国内の問題になると言つて聞かされたことがあるのでありますが、さようなことを考えてみますと、文化国家に強盗犯人があるというのはあり得べきことじやない。殺人犯なんというのはあり得べきことじやない。ところが依然としてその跡を絶たないということは、これはどうしても帝都における治安の確保なり、われわれの生命財産を確保してもらわなければならぬ。幸いに田中警視総監は非常に各方面にわたつて御努力してくださることは、私たちは陰ながら喜んでおるのでありますけれども、ひとつこの際合理的な計画を立てて、都民の不安を一掃するように御努力が願いたい。警察の機械化ということは必要であるが、これも長く述べられておるのだが一向に具体化していないようであります。ぜひこれを具体化するようにお願いいたしたいと思うのであります。  なお先ほど申しましたが、生活相談、人事相談というようなことも、警視庁にすわつてつて相談を受けるというのじやなしに、何か積極的な方法が考えられるべきだと私は思うのであります。こういうような点に関しましても、新しい行き方としてお進み願いたいということをお願いして、私の質問を終ります。
  79. 田中榮一

    田中参考人 ただいまの御意見まことにありがたく拝聴いたす次第でございます。なお防犯につきましては、警視庁といたしましては格段の努力をいたしておりまして、それがために防犯部という部並びに防犯課という課まで特に設けまして、一般都民の防犯施設に対する御協力をいろいろとお願い申し上げておる次第でございます。今後も十分努力をいたしたいと考えておりますので、ひとつ何分の御協力をお願いいたしたいと考えております。  なお生活相談、人事相談につきましても、役所でなくして、どこか百貨店とかそういう所へ進出していろいろこれを実施いたしたいと計画をしておるのでございますが、まだそこまで行つておりませんので、これも十分ひとつ意見を取入れまして、将来考えてみたいと思つております。     ―――――――――――――
  80. 安部俊吾

    安部委員長 次に前回に引続き請願の審査を行うことといたします。請願日程中第一、第二、及び第五の審査は一応終つておりますので、今日は日程第三、第四、第六及び第八十より審査を行います。なお請願の審査につきましては、紹介議員のお見えになつておるものにつきましてはその紹介説明を聴取し、政府の御所見をただすことといたしまして、他のものにつきましては九かちに政府の所見を聴取することにいたしたいと存じます。さよう御了承を願います。  それではまず日程第七及び第八の審査を行います。日程第七は、古川拘置支所庁舎及び拘禁場改築請願(第八四九号)。請願者、宮城県古川市長、佐々木稜治。紹介議員、安部俊吾。本請願の要旨は、宮城県古川市所在の宮城刑務所古川拘置支所は、仙台地方検察庁古川支部及び古川区検察庁及び仙台地方裁判所古川支部並びに古川簡易裁判所の管轄する古川市を初め、大崎五郡すなわち志田郡、遠田郡、栗原郡、加美郡のほか、登米郡の一部地内で、犯罪を犯した者の取調べ中の被害者または裁判中の被告人を、現在一日平均六十名前後収容している。この建物は建設以来六十年以上を経過した腐朽の建造物で、強悪な犯罪人を収容拘禁しておくことができず、また拘禁者の保健衛生上から見てもきわめて悪いから、古川拘置支所の改築を実現されたいというのであります。政府の御意見を求めます。
  81. 野木新一

    ○野木政府委員 ただいまの請願について意見を申し述べます。未決拘置者の人権を保護し、同時に刑事訴訟法の完全な遂行をはかるために、当局におきましてはかねてから拘置所の拡充整備に努めているのでありまして、古川拘置所もこの線に沿い、昭和二十六年度において予算百四十一万九千九百円を計上し、これが改築工事に着手することになつておりますから、さよう御了承を願いたいと存じます。
  82. 安部俊吾

    安部委員長 日程第八は、角田町に一簡易裁判所設置請願(第一〇七〇号)請願者宮城県伊具郡角田町長、佐藤聰平。紹介議員安部俊吾、庄司一郎君。本請願の要旨は、簡易裁判所は、宮城県では県北地方に七箇所設置されたにもかかわらず、県南地方では柴田郡大河原町に一箇所設置されたのみである。伊具郡は交通不便で、関係町村民が裁判所関係用件で大河原町まで行くためには、早朝から夕刻まで終日を要し、用件によつては数日を要するため、伊具郡町村民は大なる迷惑をこうむつている。ついては、伊具郡の中心地である角田町に簡易裁判所を設置されたいというのであります、この日程に関しまして政府の御意見の開陳をお願いいたします。
  83. 野木新一

    ○野木政府委員 ただいまお申し述べになりました角田町簡易裁判所設置請願の御趣旨は十分了解いたしました。簡易裁判所は直接社会の秩序維持に任ずる第一線の機関でありまして、政府といたしましてもできるだけ多くの土地にこれを設置すべく努力しておるのでありますが、財政の関係等から、この実現は思うにまかせない状況にあるのであります。角田町に簡易裁判所設置請願は、去る第七国会衆議院において採択されたのでありまして、その後調査の結果土地の状況も判明いたしましたので、最高裁判所とも協議いたしまして、事情の許す限りなるべく御希望に沿うよう努力いたしたいと存じますから、さよう御承知をお願いいたします。
  84. 安部俊吾

    安部委員長 ただいまの日程に関して、裁判所側より御意見の御開陳ありますか。
  85. 桑原正憲

    ○桑原最高裁判所説明員 角田町に簡易裁判所設置請願に関しましては、ただいま法務府からも御説明がございましたように、裁判所といたしましても請願趣旨は十分了解いたしたわけであります。簡易裁判所の設置の必要なことは最高裁判所も認めておるわけでありますが、ただいま最高裁判所において全国から設置の請願なり陳情なりを受けております箇所が約五十箇所あるわけでございます。最高裁判所といたしましても予算の許す範囲内において、でき得る限り国民の御要望に沿いたいと考えておるわけでございます。なお諸般事情を十分研究いたしまして適当な処置をとりたいと考えておる次第でございます。
  86. 安部俊吾

    安部委員長 御質疑はございませんか。     ―――――――――――――
  87. 安部俊吾

    安部委員長 質疑はないようでございますから、次に日程第三、大西正男君外二名紹介。第四、伊藤郷一君紹介。第六、長野長廣紹介。及び日程第九、林好次君紹介。第一〇、川野芳滿紹介。第二、玉置信一君紹介。第一二、足鹿覺君紹介。第一三山口好一君外一名紹介。第一四、上村進紹介。以上九項の日程に関しまして政府の御意見を求めます。
  88. 野木新一

    ○野木政府委員 赤岡区検察庁庁舎新築の請願について意見を述べます。赤岡区検察庁庁舎新築の件は、昭和二十六年度予算で大蔵省当局と折衝いたし、当時敷地未定のため同年度予算に計上しなかつたもので、昭和二十七年度におきましては考慮したい意向でありますから、さよう御了承を願いたいと存じます。  次に弟子屈町に区検察庁及び簡易裁判所設置請願について申し述べます。ただいまお申し述べになりました北海道川上郡弟子屈町に簡易裁判所及び区検察庁設置方の請願趣旨は十分了解いたしました。簡易裁判所及び区検察庁は、現在全国に五百六十五箇所がそれぞれ設置されておるのでありますが、その数は必ずしも十分とは申せませんので、全国各地からその設置方につき請願陳情のありましたのは数十箇所に及んでおるのでありますが、現下の国家財政事情等から、その設置は思うにまかせない現状にあるのであります。今回請願のありました北海道弟子屈町に区検察庁及び簡易裁判所設置のことにつきましてはすでに調査をいたし、土地の状況も判明いたしましたが、ただいま申し上げたような事情もあり、他地方との権衡の問題もありますので、最高裁判所とも協議いたしまして、なお十分研究いたしたいと存じますからさよう御承知をお願いいたします。  次に佐川町に簡易裁判所及び区検察庁等設置請願について申し述べます高知県高岡郡佐川町に簡易裁判所及び検察庁設置方請願の御趣旨は十分了解いたしました。簡易裁判所及び区検察庁は社会秩序の維持にあたる第一線の国家機関でありまして、国民の利害に関係するところがきわめて多いものであるにかかわらず、その数が少いために、全国各地から熱心に請願陳情がなされておるのでありましで、政府といたしましては今国会にわずか三箇所ではありますが、栃木県下都賀郡小山町ほか二箇所に簡易裁判所の増設に関する法律案を提案いたしまして、幸い成立を見ました次第でありますが、国家財政上の制約等から、この上の増設は思うにまかせない現状にあるのであります。  さて今回請願のありました高知県高岡郡佐川町に簡易裁判所及び区検察庁設置のことにつきましては、早速関係庁へ照会い出しまして、土地の状況も一応判明いたしましたので、最高裁判所上も協議いたしまして、なお十分研究いたしたいと存じますから、さよう御承知をお願いいたします。  次に置戸町に釧路法務局支局設置請願について申し述べます。ただいまお申述べになりした釧路地方法務局の支局を置戸町に設置するようにとのことでありますが、その内容から察しまするに、釧路地方法務局の出張所を設置されたいとの請願のように考えられますので、その前提のもとにお答えいたします。出張所の設置すべきかいなかについては、その地方の人口、交通状況、産業、面積の実態、登記件数及び隣接登記所の事務量等を十分考慮して決すべきでありますが、本請願の置戸町及び訓子府村における既往三箇年間の総処理件数を見まするに、昭和二十三年六百八件、昭和二十四年六百大十八件、昭和二十五年六百九十八件、平均六百五十八件でありまして、この程度の事件を処理するために、地方法務局の出張所を設け、職員を常駐させることは、これによつて受ける当該村民の利益に比し、国庫の負担がいささか多きに過ぎる感があり、現在わが国の現状から見て、ただちに実現することは困難であろうと考えます。しかしながら置戸町及び訓子府村に請願にもあるように、いろいろな事情もあり、特に面積も広く、この地を管轄する釧路地方法務局北見出張所に至るには、相当の距離であり、また同地の発展、人口の増加も予想されるので、今後の事情に上つては考慮すべきものと思われます。  次に旧陸軍航空士官学校出身者司法第一次試験免除等に関する請願について申し述べます。司法試験管理委員会においては、陸軍士官学校を卒業した者について司法試験法第四條第一項第四号に定める認定を行つた事実はありません。請願にかかる陸軍航空士官学校を卒業した者については、陸軍士官学校を卒業した者の場合と比較検討の上、司法試験法の趣旨に適応した認否を行うためには、その教科の課程の実情を知る必要があるので、目下その具体的の資料について研究中であります。  旭川地方法務局豊富出張所設置請願について申し述べます。出張所を設置すべきかいなかにつきましては、その地方の人口、交通、産業、面積の実態、登記件数及び隣接登記所の事務量等を十分考慮して決すべきでありますが、本請願の豊富村における既往三箇年間の総処理件数は、昭和二十二年百八十三件、同二十三年三百十八件、同二十四年二百三十三件、一箇年平均二百二十九件でありまして、このような僅少な事件を処理するために、地方法務局の出張所を設け、職員を常駐させることは、これによつて受ける当該村民の利益に比し、国庫の負担があまりにも多きに過ぎる感があり、現在わが国の現状から見て、ただちに実現することは困難であろうと思われます。しかしながら同村は面積三十八方里という大村で、現管轄登記所である天塩出張所に至るに相当の距離であり、各種の好條件を備え、その発展、人口の増加等も予想されるので、今後の事情によつては考慮すべきものと考えます。  次に傷病者団体結成許可に関する請願について申し述べます。終戰後、財団法人大日本傷痍軍人会は団体等規正令第二條第六号の禁止條項である、陸海軍軍人であつた者に対して民間人に與えられる以上の恩典を供與することを目的とした団体として、同令によつて解散されるべきであつたが、すでに自発的に解散しており、その後結成された財団法人協助会は前述の大日本傷痍軍人会の財産及びその構成員を承継していたものであるが、その目的及び性格は前述の大日本傷痍軍人会のそれとは若干異なつていたので、同令の規定によつて全面的に解散指定されるこよなく、單独の省令によつて解散せしめられ、その承継財産の国庫帰属と新会員の四分の一以上を旧構成員で占めることの禁止のみに対し、同令の規定が準用されたのであります。これを要するに、旧陸海軍軍人であつた傷痍者のみに対して救済保護その他の恩典を與えたり、またはかようなことを目的とする団体を結成することは、団体等規正令第二條によつて禁止されていますが、陸海軍軍人であつた傷痍者を含め、一般の戰災傷痍者に対して救済保護を與えたり、またはかようなことを目的とする団体を結成することはさしつかえないものであります。  次に印章法制定に関する請願について申し上げます。印章の保護について、現行の一般法令による以外のなお特別の法律制定を必要とするかどうかにつきまして、実情を十分調査の上考慮したいと思います。  次に集会結社及び言論弾圧反対等に関する請願について申し上げます。日本政府としては、日本国憲法を忠実に遵守し、言論、集会、結社の自由を不当に制限した事実もなく、またその意図もありません。しかしこれらの自由は絶対無制限なものではなく公共福祉保持のために、公共を害する破壊的言動を行うものに対しては、各関係法令によつてこれを禁圧することは、憲法第十二條、第十三條の規定趣旨に徴しても明らかであります。なお「アカハタ」及びその後継紙、同類紙の発行停止については、昨年六月連合国最高司令官よに発せられた指令趣旨に基くものであつて公共報道機関を利用して自由を濫用し、破壊的言動をなすものを禁止を行うことは、何ら憲法の精神に矛盾するものでありませんまた集会に関する制限については、各地方自治体における公安條例に基くものであつて、これら公安條例は一般の公安保持のために適用されているものであり、特定の集会を禁圧する目的としたものではありません。犯罪を犯した者が検挙拘束を受けることは、刑事訴訟法上やむを得ないところであつて政府としてはできる限り取調べの促進をはかつて、その拘束の期間を短縮するよう努力しております。川上議員の懲罰に関しては、これは国会議員に対する院内の制裁であつて、直接政府の関知するところではありません。
  89. 安部俊吾

    安部委員長 日程第四、日程第六に関して、裁判所側の御意見の御開陳を願います。
  90. 桑原正憲

    ○桑原最高裁判所説明員 北海道の弟子屈町及び高知県高岡郡佐川町に簡易裁判所設置請願につきましては、最高裁判所におきましても、現地の実情を調査いたし、その管内の交通状況、管内に発生を予想されます事件数等についても、調査を終つたわけであります。先ほども申しましたように、全国の他の地方とのつり合いの関係、その他予算の関係等を考慮いたしまして、愼重に考慮いたしたいと考えております。
  91. 安部俊吾

    安部委員長 御質疑はありませんか――なければこれより以上審査を一応終了いたしました請願につきまして、委員会の態度を決定したいと思います。  本日の請願日程中、日程第三、第四、第六ないし第八は、これを採択し、議院において採択の上は、これを内閣に送付することを適当と認めたいと存じます。御異議ありませんか。     〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  92. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なければさようとりはからいます。  次に日程第一三は採択すべきものと議決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なければさように決します。  次に本日の日程中、第二はその趣旨が達せられておりますので、これは議決不要といたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なければさようとりはからいます。  なお本日決定いたしました以外の請願につきましては、さらに検討を要する点もありますので、本日はその態度を留保したいと存じます。さよう御了承をお願いいたします。  なおただ今採択いたしました各請願委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任ねがいたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
  95. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なければ、御一任いただいたものと認めます。
  96. 安部俊吾

    安部委員長 次に陳情書の審査を行います。  陳情書につきましては、すでに文書表によつて、その内容は御承知願つておることと存じますので、おのおのの陳情書について、それぞれ政府の御意見を求めたいと存じます。政府よりの御意見をお願いいたします。
  97. 野木新一

    ○野木政府委員 復権による前科の戸籍簿取扱に関する陳情について申し上げます。  現行法のもとにおいては、陳情趣旨とされるような、前科を戸籍に記載する取扱いは認められておりませんので、さよう御了知願います。  次に強制立退者の借地権に関する陳情について申し上げます。太平洋戰争に際し、防空上の必要により、疎開建物が除却された当時におけるその建物の所有者、または借主は、罹災都市借地借家臨時処理法第九條の規定により空襲による災害のため滅失した罹災建物の借主と同様、同法第二條または第三條の規定により、同法施行の日である昭和二十一年九月十五日から二箇年以内に、その土地の所有者または借地権者に対し、建物所有の目的で賃借の申出をするか、または借地権譲渡の申出をすることによつて、優先的に借地権を取得する道が開かれていたのであります。従つて陳情において述べられているような、罹災者と建物疎開者との間に異なる取扱いがされたわけでなく、平等の保護が與えられたのであります。  次に住民登録制度実施に関する陳情について申し述べます。すでにこれにつきましては本委員会において審議を了されておるところでありますから、政府としては別に申し上げることはございません。さよう御承知願います。  次にらい患者を対象とする刑務所の敷地選定に関する陳情について申し上げます。  本陳情の御趣旨は、療養生活の平和を希求する同園癩患者に與える影響から、もつともなことでありますが、また他面癩患者であるところの受刑者、刑事被告人、被疑者に対する適当な収容施設がないところから、往々刑の執行停止、または不起訴、その他の釈放によつて、設備の完備した病院に収容するの事例が多いのであります。このことは、この種犯罪者に対し、癩患者なるがゆえに、刑罰を免れる結果を與えるとともに、癩収容所の平和を撹乱するおそれもあるばかりでなく、将来犯罪を繰返し行うことも予想されますので、まず癩刑務所を設置し、癩受刑者を集禁して、十分な療養を加えつつ、矯正教育を施す方針を立て、厚生省と法務府との数次会議の結果、両者共管のもとに癩刑務所を設置する方針をきめ、厚生省、菊池恵楓園長、法務府、並びに熊本刑務所長とが協定の上、同敷地内の一部に本刑務所を設置することに内定したのでありますが、その後当府に対し本陳情趣旨が園長を通じて申入れがありましたので、さらに別の菊池恵楓園内の大体患者が満足し得る場所に変更して、目下設置の準備をしている次第であります。  次に最高裁判所裁判官に関する陳情につきましては、すでに御承知のように後任者が任命せられておりますので、別段申し上げることもありませ  次に浮遊機雷による災害補償法制定に関する陳情について申し上げます。本件陳情の御趣旨は、一応ごもつともと拝承しますが、本件立法については、何分予算的措置を必要とするものであり、その他諸般の観点より十分研究を要するものとし認められますので、御趣旨はとくと拜承して、今後の参考にいたしたいと存じます。  総社町に簡易裁判所及び区検察庁設立に関する陳情について申し上げます。本件は初めての陳情でありまして、まだ現地の実情をよく調査ができておりませんから、早速関係庁へ照会いたしまして諸般の状況を調査中であります。調査の完了をまつて、何分の考慮をいたしたいと存じますから、さよう御承知を願います。  第七〇一号、第七四〇号及び第七五二号の改正商法施行延期に関する陳情について、一括して申し上げます。今回の商法の改正が、その規模においてまさに画期的であることは陳情通りであります。この改正法の国会における審議に際しましても、この趣旨の周知徹底を期するよう強く要望せられました。政府といたしましても、この法律の重要性にかんがみ、パンフレツトの配布はもちろん、商工会議所、弁護士会、裁判所、関係官庁等に呼びかけ、全国にわたる主要都市約四十箇所において、普及講演会を開催する等、できる限りの努力を重ねて参つた次第であります。まえ民間実業団体等においても、すでに一昨年の八月の法律案要綱発表以来、改正法について熱心な研究をしており、かつ学者、研究家の改正法に関する著書、論文等もすでに多数に上つているのでありまして、改正法運用に必要な知識は一応の普及浸透を見たものと考えております。なお新たに施行法の立案に際しては、できる限り既存の株式会社がその改正によつてこうむる不便不都合を除去することに努めておるのであります。従つて政府といたしましては、七月一日より施行してさしつかえないものと考えておる次第であります。  次に人権擁護に関する陳情について申し上げます。  陳情書記載の村八分につきましては、昭和二十四年八月二十三日三重県南牟婁郡新鹿村遊木浜田玉喜、大川奈良一より津地方法務局に人権侵犯事件として申告がありましたので、当局においては同局の受理報告に基いて現地に調査官を派遣して調査をなさしめたものであります。この事件の起りました三重県南牟婁郡新鹿村遊木は戸数百八十五戸、人口一千余名の小漁村でありまして、わずか一日に二回程度の船便によつて他町村と連絡しておる状態でありまして、民情はきわめて封建的でありまして、本件の村八分もまことに深刻なものであります。本件は同部落における漁業会長兼敷網組合長たる浜田玉喜が、在職中その地位を利用して取引先の各荷受所から操作金(やみ代金)を横領した容疑に端を発し、かねて個人的感情から対立している現組合長畑中幸平、現漁業会長浜口隆治の発議によりまして昭和二十四年六月十四日の漁業会の臨時総会において、前会長浜口玉喜の非行を糾明することが決議された。その結果決議に賛成する者は、全面的に漁業会及び部落区を支持する趣旨の声明書に署名調印を求められまして、全部落のうち百五十名は署名調印いたしましたが、浜田玉喜外九名はその調印を拒んだために、昭和二十四年七月二十六日の漁業会及び区の臨時総会におきまして、敷網組合の配当金並びに魚類の配給停止、区民との交際禁止の決議がなされ、同月三十日その旨前述の九名の者に通達されました。また九名のうち水産加工業大川奈良一に対しましては、加工用水産物原料の魚類の販売を停止し、敷網組合元会計係大川敏夫に対しましても、漁業会長浜口隆治の再三の呼び出に応じなかつたことは、漁業組合の秩序を乱る行動として除名処分にすることを決議いたしまして、同会長の名におきましてその旨本人に通達したものであります。当法務人権擁護局におきましては、この決議ないし申合せは、それ自体個人の自由を侵すものでありまして、人権擁護上看過しがたい事実であると考えまして、現漁業会長浜口隆治並びに組合長畑中幸平に対しまして、すみやかにこの九名の組合員に対する人権を侵害するがごとき総会の決議ないし申合せを取消すとともに、該決議等に基く一切の行動を中止して、区民全般の融和のために円満解決するよう善処せられたい旨の勧告をいたしました。その後に至りまして当局におきましては、その勧告がいまた施行されない状況を察知いたしましたので、さらに津地方法務局から現地に係官を派遣しまして、よく村八分の非を説いて、極力和解を試みたのでありますが、両者の根強い感情の対立から遂に円満解決を見るに至らなかつたので、機の熟するのを待つことにいたしました。ところがたまたま先ほど申し上げました操作金の横領問題に関連いたしまして、所轄警察を経て津地方検察庁木本支部に対し、本件両当事者から告訴がされておりましたので、津地方検察庁検事正におきましても、告訴事件の処理と並行いたしまして、村八分の紛争を円満に解決すべき旨申出があり、津地方法務局長は検事正に本件の解決を一任いたし、検事正は現地におもむいて和解を試みましたところ、村八分の加害者たる多数派は検事正の趣旨を了承いたしましたが、一方被害者たる少数派がこれに応じなかつたため、全面的な解決を見るに至りませんでしたが、解決の曙光を見出すには十分であつたのであります。その後当局から津地方法務局長に命じ、昭和二十六年五月十日より十四日まで村八分の経過の現状を調査させましたところ、一部の問題を除いておおむね平常に復しており、当初のような深刻な村八分の状況は、すこぶる緩和されておるとの報告を受けております。なお本件については引続き最後的な解決を得べく努力しておる次第であります。
  98. 安部俊吾

    安部委員長 これをもつて政府よりの意見聴取は終了いたしました。  この際お諮りいたします。今日の陳情書日程中第三、第四、第六、第八、第十三はこれを委員会において了承することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。   しばらく休憩いたします。     午後四時四十七分休憩      ――――◇―――――     〔休憩後は開会に至らなかつた