○
野木政府委員 ただいまから
会社更生法案の御説明をいたします。
逐條説明につきましては、別に用意してありまして、お手元に差上げてあると存じますし、時間が非常にかかりますので、初めにはお手元に差上げました
会社更生法案要綱に基きまして、この法案の重要な箇所々々を指摘しつ御説明申し上げた方が全貌を把握するにかえつて都合がいいのではないかと存ぜられますので、そういたしたいと存じます。お手元に
会社更生法案要綱という書類を差上げてあります。なお別に
会社更生法案説明書、本年五月十五日付の書面も差上げてあります。この説明書の方は、要綱に多少の説明を加えたものであります。要綱の方をごらんになつていただきまして、説明をお聞きくだされば非常に都合いいと存じます。
まず要綱の第一から第七まででございますが、第一から第七までは通則的のことを規定いたしてあります。すなわち要綱の第一では、この
会社更生法案の目的を規定いたしまして、あわせてこの法律の対象となる会社は株式会社に限ることを明らかにしておるわけであります。
関係條文は第一條でございます。
次に要綱の第二は、会社の更生に関する外国人及び
外国法人の地位を定めたものでありまして、いわゆる無
條件平等主義を採用しておるわけであります。外国人及び
外国法人について特に異なつた取扱いをする必要はないからこういたしたわけであります。
関係條文といたしましては第三條でございます。
次に要綱の第三は、
更生手續開始の
国際的効力を定めたものでありまして、いわゆる属地主義を採用しておるわけであります。これは現行の和議法及び破産法の例にならつたものであります。
関係條文は第四條でございます。
次に要綱の第四は、
更生事件の
管轄裁判所を定めたものであります。会社の本店の所在地、外国に本店がある会社については、日本における主たる営業所の所在地を管轄する
地方裁判所の管轄に專属することを原則といたしました。これは
和議事件及び
破産事件と大体同様でありますが、著しい損害やまたは遅滯を避けるため特に必要があると認めるときは、この裁判所は職権で事件を会社の他の営業所または財産の所在地を管轄する
地方裁判所に移送することができることにいたしました。
関係條文といたしましては、第六條、第七條がこれであります。
次に第五から第七まででありますが、これは
更生手續に適用すべき手續的な原則を定めたものでありまして、いずれも現行の和議法の例にならつたものであります。
関係條文といたしましては、第八條、第九條、第十一條がこれであります。
次に要綱の第八から第十三までは、
更生手續開始前の手續について定めたものであります。第八と第九は、
更生手續開始の原因及び
更生手續開始の
申立権者を定めたものでありまして、まず会社に破産の原因たる事実の生ずるおそれのある場合には、
会社自身のほか、第九に定める債権者または株主から申立ができ、また次に事業の継續に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができない場合には、
会社自身からそれぞれ
手續開始の申立をすることができることにいたしてあります。さきにあげました概念は、商法において会社の整理の
開始原因として規定されてあります支払い不能または債務超過に陷るのおそれがあるというのと同様であります。あとの概念、すなわち事業の継續に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができない場合、これは会社に流動資産が欠乏して、会社が弁済期にある債務を弁済するには、その事業の継續に欠くことのできない営業用の
固定財産を処分しなければならないような場合をさしておるのでありまして、アメリカの
会社更生手續においてもほぼ同様のことが
更生手續開始原因として認められておるわけであります。
関係條文といたしましては、第三十條がこれであります。
次に要綱の第十は、
更生手續開始の申立があつた場合における裁判所による他の手續の
中止命令について定めております。
訴訟手續、
破産手續、
和議手續、
強制執行等のほか、
租税滯納処分等の中止をも命じ得るという強い権限が裁判所に認められております。但し、この
租税滯納処分等の
中止命令は、二箇月で失効することになつております。
関係條文といたしましては、第三十七條がこれであります。
第十一は、
更生手續開始前における会社の業務及び財産に関する
保全処分について定めたものでありまして、破産法、
和議法等において
保全処分が認められているのと同様の理由に基くものであります。
関係條文は第三十九條であります。
第十二は、
調査委員に関する定めであります。
調査委員の任務は、和議における
整理委員の
和議開始前の任務に類似しておりますが、
整理委員のように必須の機関ではなく、
任意的機関ということになつております。
関係條文は、第四十條から第四十四條まででございます。
第十三は、
更生手續開始の申立を棄却すべき場合について定めたものであります。申立が適法であり、かつ先ほど申し上げました第八及び第九に掲げるような
更生手續開始の原因がありましても、この要綱十三に掲げるような一定の事由がある場合には、
更生手續を開始すべきでありませんので、裁判所は申立を棄却しなければならないこととしております。
関係條文は、第三十八條であります。
次に要綱第十四から第二十一までは、
更生手續開始の効力について定めたものであります。そのうち第十四から第十六までは、
更生手續開始の効力の最も重要なものの一つであります管財人の設置と、会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分の権限について定めたものであります。
更生手續開始後は管財人が設置されるのを原則といたしますが、比較的小規模の手續については費用の関係もありますので、管財人の必要がなければこれを選任しなくてもよいことといたしてあります。
関係條文は第四十六條、第五十三條から第六十條までであります。
第十七は、
更生手續開始決定の他の手續きに及ぼす効力について定めたものであります。
更生手續を円滑に進めて行くことができるようにするために、非常に強い効力を認めておるわけであります。
租税滯納処分等はあまり長く制限することは適当でありませんので、決定の日から六箇月間中止し、必要があればさらに三箇月間だけその期間を延ばすことができることといたし、その後は
徴收権者がその本来の権限によつて処置することができることといたしました。
更生手續開始決定によ
つて和議手續、
整理手續、
特別清算手續等の競合的な手續はその効力を失いますが、
開始決定によつて中止した
破産手續、
強制執行、
競売手續等は
更生計画認可決定があつたときにその効力を失うことになつております。
関係條文は第六十七條から七十條まで、及び第二百五十四條でおります。
要綱の第十八は、
更生裁判所に他の裁判所に係属中の会社の
財産関係の訴訟の移送を求める権限を認めたものでありまして、新しい考え方であります。この種の訴訟を
更生裁判所に集中して、
更生手續を能率的に進めて行くことができるようにしようとするものであります。
関係條文は第七十一條であります。第十九は、
更生手續開始後の取戻権及び相殺権について定めたものであります。大体において破産法及び和議法の例にならつておりますが、相殺権は
更生手續が事業の
維持更生のための手續である関係から、破産及び和議の場合よりもこれを制限して認めております。
関係條文は第六十二條から第六十六條まで、第百六十三條及び第百六十四條等であります。
第二十は、会社の発起人、
取締役等に対する
損害賠償請求権等の査定の手續について定めたものであります。
更生手續開始の場合には、このような
簡易手續を認める必要が多いと思われますので、商法の会社の整理において認められております査定の手續にならつたものであります。
関係條文は第七十二條から第七十七條までであります。
第二十一は、否認権について定めたものであります。否認権の内容等は破産法の否認権と大体同じでありますが、管財人が置かれていないときには
更生債権者及び
更生担保権者にその権利の行使を認めたこと、及びその行使の方法として、通常の訴えの方法のほかに否認の請求という
簡易手續を認めたこととなつております。
関係條文は第七十二條から條九十二條までであります。
次に要綱の第二十二から第二十五までは管財人について定めています。第二十二及び第二十三は、管財人の資格について定めました。管財人は会社の業務及び財産の管理をし、また
更生計画案の作成及び遂行に当るものでありますから、事業経営の知識経験を有する者が適任であります。また
利害関係のない者であることを原則としますが、数人の管財人を選任するときは、そのうちの一人は会社の
取締役等の
利害関係のある者でもよいことにいたして、実情に沿うことにいたしました。
会社更生の成否は管財人の手腕にかかることが多いので、人選には愼重を要する次第であります。なお法人でも
信託会社や銀行のうちには管財人として適当なものがあるので、これを管財人に選任できることにいたしました。
関係條文は九十四條でございます。
第二十四は
管財人代理について定めました。
管財人代理は費用の前払いと報酬を受けることができることとなつております。
関係條文は第九十八條、第二百九十三條であります。
第二十五は、管財人の
注意義務について定めました。
破産管財人の
注意義務と同様であります。
関係條文は第九十七條であります。
次に要綱の第二十六から第三十までは、
更生債権及び
更生担保権について定めました。そのうち第二十六は
更生債権の意義を定めました。すなわち会社に対し
更生手續開始前の原因に基いて生じた採算上の請求権を
更生債権とするといたしたわけであります。
関係條文は第百二條であります。
第二十七は
更生手續開始当時、
当事者双方がまだともに履行を完了していない双務契約についての解除権と、その解除の効果について定めました。これは破産法の規定にほぼならつたものであります。
関係條文は第百三條であります。
次に第二十八は、
更生担保権の意義を定め、第二十九は
担保付債権のうち、実質上その担保権によ
つて担保をされていない部分の権利の行使について定めたものであります。
従前破産手續におきましても別除権者として取扱われて来た
担保権者は、
更生手續が開始されますとこの手續に参加することになります。けだし
担保権者を除外しては会社の更生が困難なことが多いからであります。
関係條文は第百二十三條、第百二十四條であります。
第三十は、
更生債権及び
更生担保権の弁済の禁止等について定めました。しかし
国税徴收法または
国税徴收の例によつて徴收することができる祖税等の請求権につきましては、例外の場合を認めました。
関係條文は第百十二條及び第百二十三條であります。
次に要綱の第三十一から四十一までは、
更生債権者、
更生担保権者及び株主の
更生手續参加について定めております。
第三十一は、
更生手續参加のための届出について定めたものであります。
更生債権者、
更生担保権者及び株主は、
更生手續に参加して
関係人集会において議決権を行使するなど、その権利を行使するためには届出をしなければならないことにいたしました。
関係條文は、百二十五條から第百三十一條までであります。
第三十二は、
更生債権者表、
更生担保権者表及び株主表について定めました。これらの表にはその権利に関する重要な事項を記載させ、これに一定の効力を認めることにいたしました。
関係條文は第百三十二條、第百四十四條、第百四十五條、第百五十條、第百五十一條、第百五十二條、第百五十三條、第二百五十三條、第二百九十一條、第二百九十二條であります。
第三十三から第三十五までは、
更生債権及び
更生担保権の調査及びその
確定手續について定めました。これらの権利は、
更生手續において調査確定すべきものといたしまして、その
確定手續はおおむね破産の場合における
破産債権確定手續の例に従うことにいたしました。しかしいわゆる有
名義債権でなくとも管財人に異議のない権利につきましては、異議を述べた者から訴えを提起しなければならないものといたしまして、
異議権乱用の防止をはかつた点等が、この法律の場合と異なつております。
関係條文は第百三十五條から第百五十六條までであります。
要項の第三十六は、
更生債権者、
更生担保権者及び株主の組みわけについて定めました。これらの権利者は、それぞれその権利の性質及び利害の関係が異なつておりますもので、これを組にわけて
更生計画案の作成及び決議に便ならしめることにしました。
関係條文は第百五十九條であります。
第三十七は、
更生計画から除外できる
更生債権者及び株主について定めたものであります。会社の財産を事業が継續するものとして評価して清算したものとして仮定した場合において、債権の弁済または
残余財産の分配を受けることができないような者は、
更生手續に参加する実質上の正当な権利を有しない者ということができますから、
更生計画から除外できることにいたしました。このような者は、また
更生計画案の議決権をも有しないことにいたしました。
関係條文は第百六十條及び第百七十三條であります。
第三十八は、
更生債権及び
更生担保権のうちの租税等の請求権について特則を定めたものであります。すなわち
国税徴收法または
国税徴收の例によつて徴收することができる租税等の請求権は、国または
地方公共団体等の財政基礎をなすものでありまするから、徴收の権限を有する者、たとえば
税務署長の同意なくしては、
更生計画において、その権利に影響を及ぼす定めをすることができないことにいたしました。
関係條文は第百二十二條であります。
第三十九は、
代理委員について定めました。
更生手續には多数の
利害関係の異なる権利者が参加して、しかも
更生計画案の作成及び決議のために、相互に折衝を行うようなことが多いので、
利害関係を同じくする一群の者が、その者の間から数人の
利益代表者を選任して、あるいは共同して特定の第三者を選任して、この者に権利をかわつて行使させる等いたしまして、手續の円滑な進行をはかることができるようにする必要があります。それでこのような
代理委員の制度を設けることにいたしました。
関係條文は第百六十一條であります。
第四十及び第四十一は、
社債権者について定めたものであります。第四十は、この手續においては、
社債権者を集団的に取扱うことは不適当でありますから、この四十のような定めをしたものであり、第四十一は、零細な
社債権者等で、みずから手續に参加する熱意に欠ける者の利益を保護するためのものであります。
関係條文は第百六十二條であります。
第四十二から第四十五までは、
関係人集会に関する定めであります。第四十二は、
関係人集会のことを定めたものであります。
関係人集会は、関係人の
更生手續参加のための機関でありまして、裁判所が招集し、これを指揮いたします。裁判所は相当と認めるときは、
関係人集会、及び
更生債権及び
更生担保権調査の各期日を併合することができるようにいたしております。
関係條文は第百六十五條から第百六十九條まで、第百九十五條、第百九十六條、第二百條、第二百一條、第二百六條、第二百八條、第二百九條、第二百十二條等であります。
第四十三から第四十五までは、
関係人集会における議決権について定めています。
更生債権者及び
更生担保権者は、原則として
更生債権、及び
更生担保権の額に応じて議決権を有しますが、
更生手續開始当時、期限の到来していない
無利息債権を有する
更生債権者等の議決権については、特則を設けました。会社が
破産状態にあるときには、株主には
更生計画に対する発言権を認めべきではありませんから、議決権を有させないことにいたしました。議決権の額または数の
決定方法は、破産における
強制和議の手續に準じてあります。
更生手續の機会に乘じて不当な利益を得るようなことは許すべきものではありませんから、そのような目的で権利を取得した者には、議決権を行使させないことができることにいたしました。
関係條文は第百十三條から第百十八條まで、第百二十四條、第百二十九條、第百七十條から第百七十二條までであります。
第四十六から第五十七までは、
更生手續開始後の手續について定めました。第四十六は会社の業務及び財産の
管理状況等を裁判所に報告すべきことを定めました。
財産目録及び
貸借対照表も作成して、その謄本を裁判所に提出すべきものとしています。なお裁判所に提出された書類は、
利害関係人の閲覽に供されます。
関係條文は第百七十九條から第百八十五條までであります。
第四十七と第四十八は、管財人が置かれない場合の
更生事務の処理と、これに伴う会社の責任について定めました。管財人がないときは、会社が裁判所の監督のもとに、本来管財人が処理すべき事務である
更生事務を処理いたします。会社の
注意義務は管財人と同一でありますが、
注意義務違反の責任は、
会社自身のほか、任務を怠つた取締役も負うものといたしました。
関係條文は第百八十六條であります。
要綱の第四十九は、比較的小規模の事件における会社の業務及び財産の
処理方法の変更について定めました。事情に応じて適当な管理方法をとることができるようにしたものであります。
関係條文は第百八十七條及び第百八十八條であります。
第五十は、審査人のことを定めています。管財人を置くまでの必要はないが、会社のみに
更生事務処理をまかせることも不適当なような場合に、審査人を選任して裁判所の命ずる事項を行わせることができることにいたしました。
関係條文は第百九十一條から第百九十三條までであります。
第五十一は、
法律顧問について定めました。
更生事務処理については、
法律知識を要することが多いので、常設の
法律顧問を置くことができることにいたしました。なお
法律顧問は、費用の前払い及び報酬を受けることができることになつております。
関係條文は第百九十四條及び第二百九十三條であります。
次に第五十二と第五十三は、
更生計画案の立案及び提出について定めました。第五十二に定める者は、義務的に計画案を作成、提出しなければなりません。第五十三に定める者には、そのような義務はありませんが、権利が認められております。これは広く良案を求める趣旨であります。
関係條文は第百九十七條及び第百九十八條であります。
第五十四は、
更生計画案の排除について定めました。計画案の提出がありましても、それが結局において認可できないようなものであれば、これについて手續を進めてもむだであるからであります。なお裁判所は案の修正を命ずることもできることといたしました。
関係條文は第二百七條及び第二百五條であります。
第五十五は、
更生計画案可決の要件について定めました。権利者の頭数は考慮しないことにいたしたのであります。
関係條文は第二百十三條であります。
第五十六及び第五十七條は、
共益債権について定めました。
共益債権は破産における
財団債権と類似の観念でありまして、第五十六に掲げるものは、本来の
共益債権ともいうべきもの、第五十七に掲げるものは、公益上の理由等から特に
公益債権として取扱うべきものについて定めたものであります。使用人の
給料請求権等について、このような取扱いをするのは、
更生手續においては、特にこのような請求権を保護する必要があるからであります。
関係條文は第二百十六條から第二百十八條まで、第百十九條等であります。
次に要綱の第五十八から第六十までは、
更生計画の内容について定めました。
第五十八及び第五十九は、
更生計画の條項について定めております。第五十八は、
更生計画の
必要的記載條項でありまして、このような條項を欠く計画は不適法となります。第五十九は
任意的條項でありまして、このような條項は必ずしも定めなくてもよいことになつております。しかし
任意的條項でありましても、そのうちの一定の條項、たとえば新会社の設立に関する條項を定める場合には、一定の要件を備えなければならないことといたしまして、計画の内容の明確を期し、あわせて
計画遂行の場合における他の法令の適用の排除を可能ならしめるようにいたしました。
関係條文は第二百十九條から第二百三十五條までであります。
第六十は、
更生計画の條件についての定めであります。
更生手續には異なつた権利と利害を有する者が参加しますので、これを無差別に取扱うときは不都合を生ずることとなります。そこで計画におきましては、一、
更生担保権、二、一般の先取特権その他一般の優先権のある
更生債権、三、二及び四以外の
更生債権、四、
更生手續開始後の利息等の
劣後的更生債権、これは法人の破算の場合と
同様劣後的債権といたしました。五、
残余財産の分配に関し、
優先的内容を有する株主の権利、六、それ以外の株主の権利というような順位を考慮しまして、計画の條件に公正衡平な差等を設けなければならないことといたしました。その結果、たとえば株主の権利よりも債権者の権利を不利に取扱うような計画は不適法となります。また同じ性質の権利を有する者の間では、計画の條件は平等であるのを原則といたしますが、少額の債権等については、特別の取扱いをしても、衡平を害しない限りさしつかえないことといたしました。
関係條文は第二百三十六條及び第二百三十七條であります。
次に要綱の第六十一から第六十九までは、
更生計画の認可及びその効力について定めました。
第六十一は、
更生計画認可の要件について定めています。計画案が可決されたときは、裁判所は、さらにその案が計画として法定の要件を具備しているかどうかをあらためて審査し、要件を満たしていると認めた場合に
限つて認可の決定をすることができるのであります。
関係條文は第二百四十條及び第二百四十一條であります。
第六十二は、計画に不同意の組のある場合の定めであります。計画に不同意の組があるときでも、計画の内容においてその組の者の権利が保護されているときは、その同意がなくても計画を認可できることとして、計画の成立を容易ならしめることとしたものであります。なおあらかじめ不同意のことが明らかなときは、当初からその組の者を除外して決議することもできることといたしました。
関係條文は第二百四十二條であります。
第六十三は、
更生計画の効力発生の時について定めました。計画認可の上は、すみやかに遂行する必要がありますので、確定をまたず効力を生ずることといたしました。
関係條文は第二百四十四條であります。
第六十四は、
更生計画の効力の及ぶ範囲について定めました。
更生手續に参加しない
更生債権者、
更生担保権者及び株主にも効力が及ぶことになります。
関係條文は第二百四十八條であります。
第六十五から第六十七までは、
更生計画による
更生債権者、
更生担保権者及び株主の権利の変更について定めています。届出をしなかつた債権、届出をしても異議があつたかわからず
確定手續をとらなかつた債権等については、会社は計画認可の決定があつた場合には、その責任を免れることになります。株主は、手續に参加しなくても、計画によつて与えられて株主の権利に対するわけ前にあずかることになります。
関係條文は第二百四十九條から第二百五十二條まであります。
第六十八は、
更生手續開始によつて中止した手續の失効について定めています。
更生計画の認可決定後は、これらの手續は存續させる必要がなく、かえつて計画の遂行に支障を来すことになるからであります。
関係條文は第二百五十四條であります。
第六十九は、
更生計画認可決定確定後の
更生債権者表及び
更生担保権者表の記載の効力について定めました。確定した権利についてこれらの表の記載は、確定判決と同一の効力を有しまして、
更生手續終了後は、この表に基いて会社等に対し
強制執行ができることといたしました。
関係條文は第二百五十三條であります。
第七十から第七十六までは、
更生計画の遂行について定めています。
第七十及び第七十一は、
更生計画遂行の責任者について定めました。管財人があれば、管財人が計画の遂行に当ります。管財人がないときは会社が遂行に当りますが、裁判所が
整理委員を選任したときは、
整理委員がこれに当ります。計画によつて新会社を設立したときは、これらの者が発起人または設立委員の職務を行います。
関係條文は第二百五十五條であります。
第七十二は、
更生計画の遂行に関する裁判所の命令について定めました。この命令に違反した者は、過料に処せられることになつております。
関係條文は第二百五十六條、第三百三條であります。
第七十三は、
更生計画遂行の場合における他の法令の適用の排除について定めています。
更生計画の遂行を円滑迅速にするため、たとえば商法の規定によれば、本来株主総合の決議を要する事項でも、これが
更生計画に記載され、その計画が認可されたときには、株主総合の決議を経なくても、適法にこれを遂行できることにいたしました。またたとえば計画において
更生債権者、
更生担保権者または株主に対し新たに払込みまたは現物出資をさせないで、株式を引受けさせることによつて、新会社を設立することを定めたときは、新会社は通常の会社設立の方法によらず、單に定款を作成し、
更生裁判所の認証を得た後設立の登記をしただけで成立するものといたしました。なお税法の特例といたしましては、
更生手續による会社の財産の評価がえまたは債務の消滅があつた場合における法人税の軽減、
更生手續においてする登記登録についての登録税の減免等について定めています。
関係條文は第二百五十七條から第二百六十九條まで、第二百七十三條から第二百七十七條までであります。
次に第七十四は、計画によつて新たに会社または新会社の株主または
社債権者となつた者の失権について定めました。三年間も株券または債券の交付を請求しないような者は、これを失権させて、従来の権利関係を整理いたし、会社または新会社の更生を容易ならしめようとするものであります。なお従前株主または
社債権者であつた者が、新株券または新債券の交付を請求するには、原則として従前の株券または債券を提出しなければならないことにしております。
関係條文は第二百七十條、第二百七十一條であります。
第七十五は、
更生計画の変更について定めています。
更生計画認可決定後やむを得ない事由によつて計画をそのまま遂行することができなくなつたが、計画を変更すれば遂行が可能になるような場合には、計画の変更を許しまして、更生の失敗によつて生ずるむだを省くことができることといたしました。
関係條文は第二百七十九條であります。
第七十六條は、
更生手續の終局について定めています。
更生計画の遂行を確実にするため、計画が遂行されたか、または遂行されることが確実と認められるようになつて初めて終局決定をすべきものといたしました。
関係條文は第二百八十條であります。
次に要項の第七十七條から第八十條までは、
更生手續廃止について定めています。
そのうち第七十七から第七十九までは、
更生手續廃止の決定をすべき場合を定めました。第七十七と第七十八は、いずれも
更生計画認可決定前の場合で、第七十七は
更生計画が成立しなかつた場合、第七十八は、更生の必要がなくなつた場合であります。第七十九は、計画認可後の遂行不能の場合であります。
関係條文は第二百八十一條から第二百九十條までであります。
第八十は、
更生手續廃止の決定確定後の
更生債権者及び
更生担保権者表の記載の効力について定めています。一定の範囲内で確定判決と同一の効力を認め、また
強制執行もできることといたしました。
更生手續において適法に確定されたものであるからであります。
関係條文は第二百九十一條、第二百九十二條であります。
次に要項の第八十一から第八十六までは、その他の点について定めています。
第八十一と第八十二は、破産宣告前の会社について開始された
更生手續が不成功に終つた場合における
破産手續及び
和議手續との関係について定めています。
更生手續開始の原因は破産原因より広いので、
更生手續が失敗しても必ずしも
破産手續に移行しないのは当然であります。
破産手續または
和議手續に移る場合は、
更生裁判所が破産裁判所または和議裁判所となります。
関係條文は第二十三條、第二十四條、第二十七條及び第二十八條であります。
第八十三と第八十四は、報酬及び報償金に関する定めであります。第八十三に掲げる者は当然に費用の前払いと報酬を受けることができます。但し、裁判所の許可なくして会社の株式を売買する等の行為があつたときは、費用及び報酬の支払いを受けることができません。第八十四は、ここに掲げる者が特に更生に貢献した場合のことであります。報酬を支払うべき者には、その職務と責任にふさわしい十分な報酬を支払い、更生に貢献した者には報償金を支払うというようにいたしまして、この面からも手續が円滑に進むように考慮いたしております。
関係條文は第二百九十三條から第二百九十七條までであります。
第八十五は、行政庁の
更生手續への関与について定めています。
更生手續は関係行政庁の密接な協力を得て行われなければ、その目的を達することが困難なので、関係行政庁に対し
更生手續の進行について通知をし、また
更生計画について意見を述べさせるなどいたしまして、これを手續に関与させることにしております。
関係條文は第三十五條、第四十八條、第五十一條、第百六十六條、第二百二條、第二百八條、第二百四十三條、第二百八十條、第二百八十九條等であります。
〔委員長退席、田嶋(好)委員長代理着席〕
最後に、第八十六は罰則について定めております。破産法、
和議法等の例に準じて規定を設けました。
関係條文は第二百九十八條から第三百三條までであります。
以上で要項の説明は終ります。
—————————————