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1951-05-25 第10回国会 衆議院 法務委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十五日(金曜日)     午後二時十八分開議  出席委員    委員長 安部 俊吾君    理事 押谷 富三君 理事 北川 定務君    理事 田嶋 好文君 理事 中村 又一君       鍛冶 良作君    佐瀬 昌三君       牧野 寛索君    松木  弘君       武藤 嘉一君    山口 好一君       大西 正男君    上村  進君       佐竹 晴記君    世耕 弘一君  出席政府委員         検     事         (法務府法制意         見第四局長)  野木 新一君  委員外出席者         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ————————————— 五月二十四日  委員上村進辞任につき、その補欠として加藤  充君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員加藤充辞任につき、その補欠として上村  進君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  参考人選定に関する件  会社更生法案内閣提出第一三九号)  破産法及び和議法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一四一号)     —————————————
  2. 安部俊吾

    安部委員長 これより会議を開きます。  この際参考人招臨に関する件についてお諮りいたします。すなわち猪俣委員より人権擁護に関する件について、田中警視総監参考人として招致し、その意見を聽取したいとの申出がありましたので、申出の通りにはかるに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なければさようとりはからいます。なお参考人招致の日取りにつきましては、明二十六日午後一時に大体予定しております。     —————————————
  4. 安部俊吾

    安部委員長 会社更生法案を議題といたします。本案について政府側より逐條説明を聽取いたします。政府委員野木局長
  5. 野木新一

    野木政府委員 ただいまから会社更生法案の御説明をいたします。逐條説明につきましては、別に用意してありまして、お手元に差上げてあると存じますし、時間が非常にかかりますので、初めにはお手元に差上げました会社更生法案要綱に基きまして、この法案の重要な箇所々々を指摘しつ御説明申し上げた方が全貌を把握するにかえつて都合がいいのではないかと存ぜられますので、そういたしたいと存じます。お手元に会社更生法案要綱という書類を差上げてあります。なお別に会社更生法案説明書、本年五月十五日付の書面も差上げてあります。この説明書の方は、要綱に多少の説明を加えたものであります。要綱の方をごらんになつていただきまして、説明をお聞きくだされば非常に都合いいと存じます。  まず要綱の第一から第七まででございますが、第一から第七までは通則的のことを規定いたしてあります。すなわち要綱の第一では、この会社更生法案の目的を規定いたしまして、あわせてこの法律の対象となる会社は株式会社に限ることを明らかにしておるわけであります。関係條文は第一條でございます。  次に要綱の第二は、会社の更生に関する外国人及び外国法人の地位を定めたものでありまして、いわゆる無條件平等主義を採用しておるわけであります。外国人及び外国法人について特に異なつた取扱いをする必要はないからこういたしたわけであります。関係條文といたしましては第三條でございます。  次に要綱の第三は、更生手續開始国際的効力を定めたものでありまして、いわゆる属地主義を採用しておるわけであります。これは現行の和議法及び破産法の例にならつたものであります。関係條文は第四條でございます。  次に要綱の第四は、更生事件管轄裁判所を定めたものであります。会社の本店の所在地、外国に本店がある会社については、日本における主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に專属することを原則といたしました。これは和議事件及び破産事件と大体同様でありますが、著しい損害やまたは遅滯を避けるため特に必要があると認めるときは、この裁判所は職権で事件を会社の他の営業所または財産の所在地を管轄する地方裁判所に移送することができることにいたしました。関係條文といたしましては、第六條、第七條がこれであります。  次に第五から第七まででありますが、これは更生手續に適用すべき手續的な原則を定めたものでありまして、いずれも現行の和議法の例にならつたものであります。関係條文といたしましては、第八條、第九條、第十一條がこれであります。  次に要綱の第八から第十三までは、更生手續開始前の手續について定めたものであります。第八と第九は、更生手續開始の原因及び更生手續開始申立権者を定めたものでありまして、まず会社に破産の原因たる事実の生ずるおそれのある場合には、会社自身のほか、第九に定める債権者または株主から申立ができ、また次に事業の継續に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができない場合には、会社自身からそれぞれ手續開始の申立をすることができることにいたしてあります。さきにあげました概念は、商法において会社の整理の開始原因として規定されてあります支払い不能または債務超過に陷るのおそれがあるというのと同様であります。あとの概念、すなわち事業の継續に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができない場合、これは会社に流動資産が欠乏して、会社が弁済期にある債務を弁済するには、その事業の継續に欠くことのできない営業用の固定財産を処分しなければならないような場合をさしておるのでありまして、アメリカの会社更生手續においてもほぼ同様のことが更生手續開始原因として認められておるわけであります。関係條文といたしましては、第三十條がこれであります。  次に要綱の第十は、更生手續開始の申立があつた場合における裁判所による他の手續の中止命令について定めております。訴訟手續破産手續和議手續強制執行等のほか、租税滯納処分等の中止をも命じ得るという強い権限が裁判所に認められております。但し、この租税滯納処分等中止命令は、二箇月で失効することになつております。関係條文といたしましては、第三十七條がこれであります。  第十一は、更生手續開始前における会社の業務及び財産に関する保全処分について定めたものでありまして、破産法、和議法等において保全処分が認められているのと同様の理由に基くものであります。関係條文は第三十九條であります。  第十二は、調査委員に関する定めであります。調査委員の任務は、和議における整理委員和議開始前の任務に類似しておりますが、整理委員のように必須の機関ではなく、任意的機関ということになつております。関係條文は、第四十條から第四十四條まででございます。  第十三は、更生手續開始の申立を棄却すべき場合について定めたものであります。申立が適法であり、かつ先ほど申し上げました第八及び第九に掲げるような更生手續開始の原因がありましても、この要綱十三に掲げるような一定の事由がある場合には、更生手續を開始すべきでありませんので、裁判所は申立を棄却しなければならないこととしております。関係條文は、第三十八條であります。  次に要綱第十四から第二十一までは、更生手續開始の効力について定めたものであります。そのうち第十四から第十六までは、更生手續開始の効力の最も重要なものの一つであります管財人の設置と、会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分の権限について定めたものであります。更生手續開始後は管財人が設置されるのを原則といたしますが、比較的小規模の手續については費用の関係もありますので、管財人の必要がなければこれを選任しなくてもよいことといたしてあります。関係條文は第四十六條、第五十三條から第六十條までであります。  第十七は、更生手續開始決定の他の手續きに及ぼす効力について定めたものであります。更生手續を円滑に進めて行くことができるようにするために、非常に強い効力を認めておるわけであります。租税滯納処分等はあまり長く制限することは適当でありませんので、決定の日から六箇月間中止し、必要があればさらに三箇月間だけその期間を延ばすことができることといたし、その後は徴收権者がその本来の権限によつて処置することができることといたしました。更生手續開始決定によつて和議手續整理手續特別清算手續等の競合的な手續はその効力を失いますが、開始決定によつて中止した破産手續強制執行競売手續等更生計画認可決定があつたときにその効力を失うことになつております。関係條文は第六十七條から七十條まで、及び第二百五十四條でおります。  要綱の第十八は、更生裁判所に他の裁判所に係属中の会社の財産関係の訴訟の移送を求める権限を認めたものでありまして、新しい考え方であります。この種の訴訟を更生裁判所に集中して、更生手續を能率的に進めて行くことができるようにしようとするものであります。関係條文は第七十一條であります。第十九は、更生手續開始後の取戻権及び相殺権について定めたものであります。大体において破産法及び和議法の例にならつておりますが、相殺権は更生手續が事業の維持更生のための手續である関係から、破産及び和議の場合よりもこれを制限して認めております。関係條文は第六十二條から第六十六條まで、第百六十三條及び第百六十四條等であります。  第二十は、会社の発起人、取締役等に対する損害賠償請求権等の査定の手續について定めたものであります。更生手續開始の場合には、このような簡易手續を認める必要が多いと思われますので、商法の会社の整理において認められております査定の手續にならつたものであります。関係條文は第七十二條から第七十七條までであります。  第二十一は、否認権について定めたものであります。否認権の内容等は破産法の否認権と大体同じでありますが、管財人が置かれていないときには更生債権者及び更生担保権者にその権利の行使を認めたこと、及びその行使の方法として、通常の訴えの方法のほかに否認の請求という簡易手續を認めたこととなつております。関係條文は第七十二條から條九十二條までであります。  次に要綱の第二十二から第二十五までは管財人について定めています。第二十二及び第二十三は、管財人の資格について定めました。管財人は会社の業務及び財産の管理をし、また更生計画案の作成及び遂行に当るものでありますから、事業経営の知識経験を有する者が適任であります。また利害関係のない者であることを原則としますが、数人の管財人を選任するときは、そのうちの一人は会社の取締役等利害関係のある者でもよいことにいたして、実情に沿うことにいたしました。会社更生の成否は管財人の手腕にかかることが多いので、人選には愼重を要する次第であります。なお法人でも信託会社や銀行のうちには管財人として適当なものがあるので、これを管財人に選任できることにいたしました。関係條文は九十四條でございます。  第二十四は管財人代理について定めました。管財人代理は費用の前払いと報酬を受けることができることとなつております。関係條文は第九十八條、第二百九十三條であります。  第二十五は、管財人の注意義務について定めました。破産管財人注意義務と同様であります。関係條文は第九十七條であります。  次に要綱の第二十六から第三十までは、更生債権及び更生担保権について定めました。そのうち第二十六は更生債権の意義を定めました。すなわち会社に対し更生手續開始前の原因に基いて生じた採算上の請求権を更生債権とするといたしたわけであります。関係條文は第百二條であります。  第二十七は更生手續開始当時、当事者双方がまだともに履行を完了していない双務契約についての解除権と、その解除の効果について定めました。これは破産法の規定にほぼならつたものであります。関係條文は第百三條であります。  次に第二十八は、更生担保権の意義を定め、第二十九は担保付債権のうち、実質上その担保権によつて担保をされていない部分の権利の行使について定めたものであります。従前破産手續におきましても別除権者として取扱われて来た担保権者は、更生手續が開始されますとこの手續に参加することになります。けだし担保権者を除外しては会社の更生が困難なことが多いからであります。関係條文は第百二十三條、第百二十四條であります。  第三十は、更生債権及び更生担保権の弁済の禁止等について定めました。しかし国税徴收法または国税徴收の例によつて徴收することができる祖税等の請求権につきましては、例外の場合を認めました。関係條文は第百十二條及び第百二十三條であります。  次に要綱の第三十一から四十一までは、更生債権者更生担保権者及び株主の更生手續参加について定めております。  第三十一は、更生手續参加のための届出について定めたものであります。更生債権者更生担保権者及び株主は、更生手續に参加して関係人集会において議決権を行使するなど、その権利を行使するためには届出をしなければならないことにいたしました。関係條文は、百二十五條から第百三十一條までであります。  第三十二は、更生債権者表更生担保権者表及び株主表について定めました。これらの表にはその権利に関する重要な事項を記載させ、これに一定の効力を認めることにいたしました。関係條文は第百三十二條、第百四十四條、第百四十五條、第百五十條、第百五十一條、第百五十二條、第百五十三條、第二百五十三條、第二百九十一條、第二百九十二條であります。  第三十三から第三十五までは、更生債権及び更生担保権の調査及びその確定手續について定めました。これらの権利は、更生手續において調査確定すべきものといたしまして、その確定手續はおおむね破産の場合における破産債権確定手續の例に従うことにいたしました。しかしいわゆる有名義債権でなくとも管財人に異議のない権利につきましては、異議を述べた者から訴えを提起しなければならないものといたしまして、異議権乱用の防止をはかつた点等が、この法律の場合と異なつております。関係條文は第百三十五條から第百五十六條までであります。  要項の第三十六は、更生債権者更生担保権者及び株主の組みわけについて定めました。これらの権利者は、それぞれその権利の性質及び利害の関係が異なつておりますもので、これを組にわけて更生計画案の作成及び決議に便ならしめることにしました。関係條文は第百五十九條であります。  第三十七は、更生計画から除外できる更生債権者及び株主について定めたものであります。会社の財産を事業が継續するものとして評価して清算したものとして仮定した場合において、債権の弁済または残余財産の分配を受けることができないような者は、更生手續に参加する実質上の正当な権利を有しない者ということができますから、更生計画から除外できることにいたしました。このような者は、また更生計画案の議決権をも有しないことにいたしました。関係條文は第百六十條及び第百七十三條であります。  第三十八は、更生債権及び更生担保権のうちの租税等の請求権について特則を定めたものであります。すなわち国税徴收法または国税徴收の例によつて徴收することができる租税等の請求権は、国または地方公共団体等の財政基礎をなすものでありまするから、徴收の権限を有する者、たとえば税務署長の同意なくしては、更生計画において、その権利に影響を及ぼす定めをすることができないことにいたしました。関係條文は第百二十二條であります。  第三十九は、代理委員について定めました。更生手續には多数の利害関係の異なる権利者が参加して、しかも更生計画案の作成及び決議のために、相互に折衝を行うようなことが多いので、利害関係を同じくする一群の者が、その者の間から数人の利益代表者を選任して、あるいは共同して特定の第三者を選任して、この者に権利をかわつて行使させる等いたしまして、手續の円滑な進行をはかることができるようにする必要があります。それでこのような代理委員の制度を設けることにいたしました。関係條文は第百六十一條であります。  第四十及び第四十一は、社債権者について定めたものであります。第四十は、この手續においては、社債権者を集団的に取扱うことは不適当でありますから、この四十のような定めをしたものであり、第四十一は、零細な社債権者等で、みずから手續に参加する熱意に欠ける者の利益を保護するためのものであります。関係條文は第百六十二條であります。  第四十二から第四十五までは、関係人集会に関する定めであります。第四十二は、関係人集会のことを定めたものであります。関係人集会は、関係人の更生手續参加のための機関でありまして、裁判所が招集し、これを指揮いたします。裁判所は相当と認めるときは、関係人集会、及び更生債権及び更生担保権調査の各期日を併合することができるようにいたしております。関係條文は第百六十五條から第百六十九條まで、第百九十五條、第百九十六條、第二百條、第二百一條、第二百六條、第二百八條、第二百九條、第二百十二條等であります。  第四十三から第四十五までは、関係人集会における議決権について定めています。更生債権者及び更生担保権者は、原則として更生債権、及び更生担保権の額に応じて議決権を有しますが、更生手續開始当時、期限の到来していない無利息債権を有する更生債権者等の議決権については、特則を設けました。会社が破産状態にあるときには、株主には更生計画に対する発言権を認めべきではありませんから、議決権を有させないことにいたしました。議決権の額または数の決定方法は、破産における強制和議の手續に準じてあります。更生手續の機会に乘じて不当な利益を得るようなことは許すべきものではありませんから、そのような目的で権利を取得した者には、議決権を行使させないことができることにいたしました。関係條文は第百十三條から第百十八條まで、第百二十四條、第百二十九條、第百七十條から第百七十二條までであります。  第四十六から第五十七までは、更生手續開始後の手續について定めました。第四十六は会社の業務及び財産の管理状況等を裁判所に報告すべきことを定めました。財産目録及び貸借対照表も作成して、その謄本を裁判所に提出すべきものとしています。なお裁判所に提出された書類は、利害関係人の閲覽に供されます。関係條文は第百七十九條から第百八十五條までであります。  第四十七と第四十八は、管財人が置かれない場合の更生事務の処理と、これに伴う会社の責任について定めました。管財人がないときは、会社が裁判所の監督のもとに、本来管財人が処理すべき事務である更生事務を処理いたします。会社の注意義務は管財人と同一でありますが、注意義務違反の責任は、会社自身のほか、任務を怠つた取締役も負うものといたしました。関係條文は第百八十六條であります。  要綱の第四十九は、比較的小規模の事件における会社の業務及び財産の処理方法の変更について定めました。事情に応じて適当な管理方法をとることができるようにしたものであります。関係條文は第百八十七條及び第百八十八條であります。  第五十は、審査人のことを定めています。管財人を置くまでの必要はないが、会社のみに更生事務処理をまかせることも不適当なような場合に、審査人を選任して裁判所の命ずる事項を行わせることができることにいたしました。関係條文は第百九十一條から第百九十三條までであります。  第五十一は、法律顧問について定めました。更生事務処理については、法律知識を要することが多いので、常設の法律顧問を置くことができることにいたしました。なお法律顧問は、費用の前払い及び報酬を受けることができることになつております。関係條文は第百九十四條及び第二百九十三條であります。  次に第五十二と第五十三は、更生計画案の立案及び提出について定めました。第五十二に定める者は、義務的に計画案を作成、提出しなければなりません。第五十三に定める者には、そのような義務はありませんが、権利が認められております。これは広く良案を求める趣旨であります。関係條文は第百九十七條及び第百九十八條であります。  第五十四は、更生計画案の排除について定めました。計画案の提出がありましても、それが結局において認可できないようなものであれば、これについて手續を進めてもむだであるからであります。なお裁判所は案の修正を命ずることもできることといたしました。関係條文は第二百七條及び第二百五條であります。  第五十五は、更生計画案可決の要件について定めました。権利者の頭数は考慮しないことにいたしたのであります。関係條文は第二百十三條であります。  第五十六及び第五十七條は、共益債権について定めました。共益債権は破産における財団債権と類似の観念でありまして、第五十六に掲げるものは、本来の共益債権ともいうべきもの、第五十七に掲げるものは、公益上の理由等から特に公益債権として取扱うべきものについて定めたものであります。使用人の給料請求権等について、このような取扱いをするのは、更生手續においては、特にこのような請求権を保護する必要があるからであります。関係條文は第二百十六條から第二百十八條まで、第百十九條等であります。  次に要綱の第五十八から第六十までは、更生計画の内容について定めました。  第五十八及び第五十九は、更生計画の條項について定めております。第五十八は、更生計画必要的記載條項でありまして、このような條項を欠く計画は不適法となります。第五十九は任意的條項でありまして、このような條項は必ずしも定めなくてもよいことになつております。しかし任意的條項でありましても、そのうちの一定の條項、たとえば新会社の設立に関する條項を定める場合には、一定の要件を備えなければならないことといたしまして、計画の内容の明確を期し、あわせて計画遂行の場合における他の法令の適用の排除を可能ならしめるようにいたしました。関係條文は第二百十九條から第二百三十五條までであります。  第六十は、更生計画の條件についての定めであります。更生手續には異なつた権利と利害を有する者が参加しますので、これを無差別に取扱うときは不都合を生ずることとなります。そこで計画におきましては、一、更生担保権、二、一般の先取特権その他一般の優先権のある更生債権、三、二及び四以外の更生債権、四、更生手續開始後の利息等の劣後的更生債権、これは法人の破算の場合と同様劣後的債権といたしました。五、残余財産の分配に関し、優先的内容を有する株主の権利、六、それ以外の株主の権利というような順位を考慮しまして、計画の條件に公正衡平な差等を設けなければならないことといたしました。その結果、たとえば株主の権利よりも債権者の権利を不利に取扱うような計画は不適法となります。また同じ性質の権利を有する者の間では、計画の條件は平等であるのを原則といたしますが、少額の債権等については、特別の取扱いをしても、衡平を害しない限りさしつかえないことといたしました。関係條文は第二百三十六條及び第二百三十七條であります。  次に要綱の第六十一から第六十九までは、更生計画の認可及びその効力について定めました。  第六十一は、更生計画認可の要件について定めています。計画案が可決されたときは、裁判所は、さらにその案が計画として法定の要件を具備しているかどうかをあらためて審査し、要件を満たしていると認めた場合に限つて認可の決定をすることができるのであります。関係條文は第二百四十條及び第二百四十一條であります。  第六十二は、計画に不同意の組のある場合の定めであります。計画に不同意の組があるときでも、計画の内容においてその組の者の権利が保護されているときは、その同意がなくても計画を認可できることとして、計画の成立を容易ならしめることとしたものであります。なおあらかじめ不同意のことが明らかなときは、当初からその組の者を除外して決議することもできることといたしました。関係條文は第二百四十二條であります。  第六十三は、更生計画の効力発生の時について定めました。計画認可の上は、すみやかに遂行する必要がありますので、確定をまたず効力を生ずることといたしました。関係條文は第二百四十四條であります。  第六十四は、更生計画の効力の及ぶ範囲について定めました。更生手續に参加しない更生債権者更生担保権者及び株主にも効力が及ぶことになります。関係條文は第二百四十八條であります。  第六十五から第六十七までは、更生計画による更生債権者更生担保権者及び株主の権利の変更について定めています。届出をしなかつた債権、届出をしても異議があつたかわからず確定手續をとらなかつた債権等については、会社は計画認可の決定があつた場合には、その責任を免れることになります。株主は、手續に参加しなくても、計画によつて与えられて株主の権利に対するわけ前にあずかることになります。関係條文は第二百四十九條から第二百五十二條まであります。  第六十八は、更生手續開始によつて中止した手續の失効について定めています。更生計画の認可決定後は、これらの手續は存續させる必要がなく、かえつて計画の遂行に支障を来すことになるからであります。関係條文は第二百五十四條であります。  第六十九は、更生計画認可決定確定後の更生債権者表及び更生担保権者表の記載の効力について定めました。確定した権利についてこれらの表の記載は、確定判決と同一の効力を有しまして、更生手續終了後は、この表に基いて会社等に対し強制執行ができることといたしました。関係條文は第二百五十三條であります。  第七十から第七十六までは、更生計画の遂行について定めています。  第七十及び第七十一は、更生計画遂行の責任者について定めました。管財人があれば、管財人が計画の遂行に当ります。管財人がないときは会社が遂行に当りますが、裁判所が整理委員を選任したときは、整理委員がこれに当ります。計画によつて新会社を設立したときは、これらの者が発起人または設立委員の職務を行います。関係條文は第二百五十五條であります。  第七十二は、更生計画の遂行に関する裁判所の命令について定めました。この命令に違反した者は、過料に処せられることになつております。関係條文は第二百五十六條、第三百三條であります。  第七十三は、更生計画遂行の場合における他の法令の適用の排除について定めています。更生計画の遂行を円滑迅速にするため、たとえば商法の規定によれば、本来株主総合の決議を要する事項でも、これが更生計画に記載され、その計画が認可されたときには、株主総合の決議を経なくても、適法にこれを遂行できることにいたしました。またたとえば計画において更生債権者更生担保権者または株主に対し新たに払込みまたは現物出資をさせないで、株式を引受けさせることによつて、新会社を設立することを定めたときは、新会社は通常の会社設立の方法によらず、單に定款を作成し、更生裁判所の認証を得た後設立の登記をしただけで成立するものといたしました。なお税法の特例といたしましては、更生手續による会社の財産の評価がえまたは債務の消滅があつた場合における法人税の軽減、更生手續においてする登記登録についての登録税の減免等について定めています。関係條文は第二百五十七條から第二百六十九條まで、第二百七十三條から第二百七十七條までであります。  次に第七十四は、計画によつて新たに会社または新会社の株主または社債権者となつた者の失権について定めました。三年間も株券または債券の交付を請求しないような者は、これを失権させて、従来の権利関係を整理いたし、会社または新会社の更生を容易ならしめようとするものであります。なお従前株主または社債権者であつた者が、新株券または新債券の交付を請求するには、原則として従前の株券または債券を提出しなければならないことにしております。関係條文は第二百七十條、第二百七十一條であります。  第七十五は、更生計画の変更について定めています。更生計画認可決定後やむを得ない事由によつて計画をそのまま遂行することができなくなつたが、計画を変更すれば遂行が可能になるような場合には、計画の変更を許しまして、更生の失敗によつて生ずるむだを省くことができることといたしました。関係條文は第二百七十九條であります。  第七十六條は、更生手續の終局について定めています。更生計画の遂行を確実にするため、計画が遂行されたか、または遂行されることが確実と認められるようになつて初めて終局決定をすべきものといたしました。関係條文は第二百八十條であります。  次に要項の第七十七條から第八十條までは、更生手續廃止について定めています。  そのうち第七十七から第七十九までは、更生手續廃止の決定をすべき場合を定めました。第七十七と第七十八は、いずれも更生計画認可決定前の場合で、第七十七は更生計画が成立しなかつた場合、第七十八は、更生の必要がなくなつた場合であります。第七十九は、計画認可後の遂行不能の場合であります。関係條文は第二百八十一條から第二百九十條までであります。  第八十は、更生手續廃止の決定確定後の更生債権者及び更生担保権者表の記載の効力について定めています。一定の範囲内で確定判決と同一の効力を認め、また強制執行もできることといたしました。更生手續において適法に確定されたものであるからであります。関係條文は第二百九十一條、第二百九十二條であります。  次に要項の第八十一から第八十六までは、その他の点について定めています。  第八十一と第八十二は、破産宣告前の会社について開始された更生手續が不成功に終つた場合における破産手續及び和議手續との関係について定めています。更生手續開始の原因は破産原因より広いので、更生手續が失敗しても必ずしも破産手續に移行しないのは当然であります。破産手續または和議手續に移る場合は、更生裁判所が破産裁判所または和議裁判所となります。関係條文は第二十三條、第二十四條、第二十七條及び第二十八條であります。  第八十三と第八十四は、報酬及び報償金に関する定めであります。第八十三に掲げる者は当然に費用の前払いと報酬を受けることができます。但し、裁判所の許可なくして会社の株式を売買する等の行為があつたときは、費用及び報酬の支払いを受けることができません。第八十四は、ここに掲げる者が特に更生に貢献した場合のことであります。報酬を支払うべき者には、その職務と責任にふさわしい十分な報酬を支払い、更生に貢献した者には報償金を支払うというようにいたしまして、この面からも手續が円滑に進むように考慮いたしております。関係條文は第二百九十三條から第二百九十七條までであります。  第八十五は、行政庁の更生手續への関与について定めています。更生手續は関係行政庁の密接な協力を得て行われなければ、その目的を達することが困難なので、関係行政庁に対し更生手續の進行について通知をし、また更生計画について意見を述べさせるなどいたしまして、これを手續に関与させることにしております。関係條文は第三十五條、第四十八條、第五十一條、第百六十六條、第二百二條、第二百八條、第二百四十三條、第二百八十條、第二百八十九條等であります。     〔委員長退席、田嶋(好)委員長代理着席〕  最後に、第八十六は罰則について定めております。破産法、和議法等の例に準じて規定を設けました。関係條文は第二百九十八條から第三百三條までであります。  以上で要項の説明は終ります。     —————————————
  6. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員長代理 次に破産法及び和議法の一部を改正する法律案を議題といたします。本案につきまして政府側より逐條説明を聽取いたします。野木政府委員
  7. 野木新一

    野木政府委員 破産法及び和議法の一部を改正する法律案につきまして、お手元に差上げてありまする逐條説明に基きまして、逐條的に御説明をいたします。  まず第一條破産法の改正関係の部分から説明を始めます。  第六條第三項の改正、これは昭和十年法律第十五号民事訴訟法中改正法律によりまして、同法第五百七十條に第二項及び第三項の規定が追加せられ、従前の第二項の規定が第四項に繰下げられたので、これに伴う整理を今回いたしたのであります。  第十八條から第二十一條までの削除、これは後ほど述べまする免責制度を採用する関係上、これら十八條から二十一條までの條文に掲げる債権の全額を破産債権として取扱う必要があるので、これらの條文を削除することにいたしました。なお、第二十條後段の定期金債権につきましては、債権額と評価額との間の差額の観念が認められるかどうかについて疑いがありましたので、これを第二十二條後段に移すことにいたしました。  第二十二條の改正は、ただいま申し上げました第二十條後段の規定を本條後段に移しかえたものであります。  第三十八條の改正。免責制度を採用する関係上、本條に掲げる請求権を全部破産債権として取扱う必要がありますので、改正することにいたしました。右の請求権中、破産手續参加の費用についてだけ、積極的な規定を置くことにいたしましたのは、その他の請求権は元来破産債権すなわち破産宣告前の原因に基いて生じた財産上の請求権だからであります。  次に第四十六條であります。第十八條から第二十一條までを削除し、第三十八條を改正することとしたことに伴い、ここに掲げてある請求権を、いわゆる劣後的破産債権とすることにいたしました。改正條文の第五号から第七号までの規定は、債権額と第十八條から第二十條前段までの規定により定まる額との差額の請求権を直接的に表現したものにすぎません。  第五十二條、これは第十八條から第二十一條までの規定を削除することにいたしたことに伴い、法文の整理をしたものであります。  第百二條、これも同様第十八條から第二十條までの規定を削除したことに伴い、法文の整理をしたものであります。  第百五條、第百六條及び第百七條第一項の改正、これは裁判所法の施行によりまして区裁判所が廃止されるとともに、右各條の規定は、裁判所法施行令により、「区裁判所」とある部分を「地方裁判所」と変更して適用せられていたのでありまするが、今回その字句を修正したのであります。  第百十三條の削除、これは裁判所法の制定、及び民事訴訟法の改正によりまして、破産事件の抗告裁判所は高等裁判所となり、抗告裁判所決定は最高裁判所に対する特別抗告の有無にかかわらず、ただちに確定することとなりましたので、本條を削除することにいたしたわけであります。  第百十六條の改正は、本條中「出張所」とあるのは、法文上、地方裁判所の出張所と解するほかないわけでありまするが、現在地方裁判所の出張所は全国に一箇所しか設置されておりませんので、「出張所」が裁判所法施行前は区裁判所の出張所をさしていたものであることから考えまして、これを簡易裁判所に改めたわけであります。「市役所、町村役場」を改めたのは、地方自治法の制定に伴う字句の修正であります。  第百三十三條第一項の改正。「産業組合」を削ることといたしましたのは、産業組合法が、消費生活協同組合法(昭和二十三年法律第二百号)第百三條によつて廃止せられましたからであり、「株式合資会社」を削ることといたしましたのは、商法の一部を改正する法律(昭和二十五年法律第百六十七号)によつて株式合資会社に関する規定が削除されることとなつたからであります。なお「相互保険会社」を「相互会社」に改めたのは、保険業法の用語と一致させることにしたものであります。  第百四十六條の改正、これは保険業法の改正法律(昭和十四年法律第四十一号)により相互会社の社員の責任は、すべて保険料を限度とする有限責任とすることに改められ、また組合員が無限責任または保証責任を負担する産業組合その他の法人は、すべて関係法律の改廃によつて、もはや存在しないので、本條文の整理をしたのであります。  次に第百四十九條第二項及び第百五十一條第二項の改正、これは警察法(昭和二十二年法律第百九十六号)の制定に伴い法文の整理をしたものであります。  次に第百八十二條の改正、これは改正法案第四十六條に掲げる劣後的破産債権に属するものは、従来その届出のあつた事例はきわめて少く、またこれらの債権議決権行使を認める実益も少いので、手續を簡易にするため、第五項を設けたわけであります。  次に第百八十六條第一項、第百八十七條及び第百八十八條の改正、これは「裁判所書記」は裁判所法等の一部を改正する法律(昭和二十四年法律第百七十七号)の施行によりまして、「裁判所書記官」と読みかえられていたものであります。「執達吏」は裁判所法施行令により「執行吏」と読みかえられていたのでありますが、いずれも今回その字句の修正をすることにいたしました。  第百九十七條の改正、これは経済事情の変動に応じ金額を修正することにしたものであります。  第二百七條後段の改正、これは保険業法第三十六條第二項において、相互会社の基金の払込みについて準用している株金の払込みに関する商法第百七十七條第一項の規定は、商法の一部を改正する法律(昭和二十三年法律第百四十八号)によりまして改正せられました結果、相互会社の基金についても一時に全額の払込みを要することとなつたのでありますが、他面、右改正法律附則第六條は、同改正法律施行の際すでに設立されている相互会社の基金の支払いについては、なお従前通り分割支払いの方法を認めていますので、本條後段の規定は、一応現在でも適用の余地があるはずでありますが、現存の相互会社には基金の未払いになつているものがなく、本條後段の適用を見ることがないので、これを削除することにいたしたわけであります。  次に第二百八條から第二百二十四條までの改正、これは第百四十六條について説朗した通り、無限責任または保証責任の相互会社、産業組合その他の法人は現存をしないので、これに関する規定を削除することにしたものであります。  次に第二百二十八條第一項、第二百二十九條、第二百四十條第一項、第二百四十一條第二項の改正、現行法では、改正法律案第四十六條に掲げる請求権は、原則として破産債権とされていないのでありますが、さきに述べた通り、今回これを劣後的破産債権とすることにいたしましたので、現行法が破産債権のうち一般先取特権その他一般優先権のあるものにつき、その権利届出及び債権表への記載を必要とし、かつ債権調査の期日に異議のないときは、その優先権を確定することとしていることに対応いたしまして、劣後的破産債権についても、その届出及び債権表への記載にあたつては、その区分を明確にすべきこととしたほか、債権調査の期日に異議のないときは、劣後的債権の区分も確定することといたしたわけであります。「裁判所書記」についての字句の修正をしたのは、第百八十六條第一項において修正したのと同趣旨であります。  第二百四十五條但書。本條後段を削除いたしましたのは、破産事件管轄裁判所地方裁判所に改められた結果、本條但書の規定を存置する必要がなくなつたからであります。  第二百五十三條の削除、附帶私訴の制度は、刑事訴訟法を改正する法律(昭和二十三年法律第百三十一号)によつてなくなりましたので、本條を削除することにいたしました。  第二百五十四條の第一項の改正。これは第三十八條及び第四十六條を改めたことに伴い法文の整理をしたのであります。  第二百五十五條第一項の改正は、「行政訴訟」という用語は、もともと行政裁判所の裁判権に属する訴訟を意味するものでありまして、日本国憲法施行後においては、このような意味の「行政訴訟」は存しませんから、字句の修正をすることにいたしました。  第二百五十八條第二項は、第二百二十八條第一項及び第二百二十九條及び第二百四十條第一項の改正と同趣旨の改正であります。  第二百七十一條第二号及び第二百八十條第二号の改正は、これも第二百五十五條の改正と同趣旨の改正であります。  次に第三百二十二條の改正、これも第百八十六條中「裁判所書記」について字句を修正したのと同趣旨の改正であります。  次に第三百五十三條第二項の改正、これも第百四十六條の改正と同趣旨の改正であります。  次に第三百五十八條第一項、第三百五十九條第一項及び第三百六十條の改正、これは経済事情の変動に伴いまして、小破産の金額の引上げを行うものであります。  次に第三百六十六條の二、本條第一項前段は、免責の申立てについての原則的規定でありまして、同項後段は同時廃止のあつた破産者のため免責申立ての機会を与えるための規定であります。第二項から第四項までは、第三百六十六條の十二に規定する免責の効力との関係から、免責の申立てと強制和議の提供、または第三百四十七條の規定による破産廃止の申立てとを競合的に認めるのが妥当でありませんので、これを避けるためのものであります。第四項は免責の申立ての追完を認めたものであります。  次に第三百六十六條の三、本條は免責の申立てをする破産者に対し、債権者名簿を提出すべき義務を課したものであります。この名簿は、裁判所が次條の規定により審訊期日を定め決定を送達すべき債権者を知る一つの資料となるものでありまして、破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかつた請求権については、債権者破産宣告のあつたことを知つている場合を除き、免責の効力が生じないばかりでなく、(第三百六十六條の十二第五号)破産者が虚偽の債権者名簿を提出したときは免責不許可の事由となるものであります。  第三百六十六條の四、本條は免責の申立てをした破産者の審訊期日についての規定であつて、この期日において第三百六十六條の九に定める免責不許可の事由の有無が審理せられるわけであります。免責の申立てについては後に説明しますように、第三百六十六條の七に掲げる者が異議申立てをすることができることとしたのでありますが、これらの者に対し審訊期日を知らせるため、本條第二項及び第三項の規定を設けました。  第三百六十六條の五は、裁判所は免責の申立てについて裁判をするため、免責不許可事由の有無をみずから職権で調査することができるのでありまするが、本條は、裁判所が必要により破産管財人調査をさせ、その結果の報告をさせることができることにしたものであります。  第三百六十六條の六、本條を設けたのは、免責の効力を受けるべき破産債権者等、破産者の免責の申立てについて利害関係を有する者に、本條に掲げる書類を閲覽して免責不許可事由の有無を調べる機会を与え、次條の規定による異議申立てをすることができるようにする必要があるからであります  次に第三百六十六條の七、及び第三百六十六條の八、これは免責を許すべからざる者に対して免責を許すようなことがないようにするため、免責の申立てに対して、本案に掲げる者から異議申立てをすることができることといたしました。異議申立て期間内に異議申立てがありますると、裁判所破産者及び異議申立て人の意見を聞き、異議申立てを理由ありと認めたときは、免責を許可せずとの決定をし、異議申立て期間内に異議申立てがないか、または異議申立てがあつてもその理由がないと認めるときは、免責許可の決定をいたします。  次に第三百六十六條の九。破産者に対しては原則として免責を許すべきでありますが、本條に列挙するような事由のある場合にも、常に免責を許すことは行き過ぎでありまするので、このような場合には免責の申立てがあつても許可しないことができることとしました。  次に第三百六十六條の十。免責の申立てをしながら、正当の事由なく審訊期日に出頭しなかつたり、出頭しても陳述を拒否するような不誠実な破産者に対しては、しいて免責の手續を進める必要がないから、申立てを却下できることにいたしました。  第三百六十六條の十一。免責の手續には、後述のように第三百六十六條の二十で第百八條を準用することにいたしましたので、免責の手續でなされる決定は、確定をまたないで執行力を生じ得ることとなるのでありますが、免責の決定が上級審で取消されることにより生ずる煩雑を避ける必要がありますので、本條を設けたわけであります。  第三百六十六條の十二、本條は免責の効力についての規定であります。「破産手續二依る配当ヲ除キ……其ノ責任ヲ免ル」というのは、破産者の責任破産財団の限度にとどめる意味であります。配当すべき財産がないときは、配当なくしてその責任を免れることになります。破産者が責任を免れた債務は、一種の自然債務となるわけでありまするが、破産債権者はこれを自働債権として破産法上の相殺権行使することはさしつかえありません。しかし破産債権のうちには、以上のような免責の効力を与えるに適当でないものがありまするので、これを但書に列挙して免責の効力が及ばぬことにいたしました。なお本條但書の請求権中「租税」とあるのは、第四十七條第二号の財団債権でない租税で、たとえば関税、屯税、登録税のようなものをさすのであります。  次に第三百六十六條の十三。免責は破産者を更生させるため、その責任を限定するにすぎないのであつて免責によつて本條に掲げた者の責任までを軽減するものでないので、この趣旨を明らかにしたものであります。  第三百六十六條の十四。免責は破産債権者権利に重大な影響を与えるばかりでなく、後に述べるように免責の決定が確定すると、破産者は法律上当然復権することになりますので、第三百七十二條の規定にならつて公告についての規定を設けました。なお確定債権についての債権表の記載は、一定條件のものとに債務名義となるものでありまするから、免責の決定が確定したときはこれを明らかにする必要があるので、その旨を記載させることといたしました。  第三百六十六條の十五、免責の決定が一旦確定しても、本條に掲げる事由があることが後に判明したときには、免責を取消すのが相当でありますので、免責取消しの決定をすることができることにいたしました。なお本條後段の場合については、不安定な権利関係をなるべく早く除去する趣旨から、免責取消しの申立て期間を制限することといたしました。  次に第三百六十六條の十六、免責取消しの裁判をするについては、少くとも破産者及び免責取消し申立人の意見を聞くのが相当であるから、その旨を定めたものであります。  第三百六十六條の十七、第三百六十六條の十一の規定と同趣旨で設けた規定であります。  第三百六十六條の十八、免責後、その取消しまでの間に破産者と取引した者は、免責のあつたことを考慮に入れて取引をしたのであるから、その者の債権が免責の取消しのあつた後、これにより復活する破産債権や、免責前または免責取消し後の原因に基いて生じた債権と同等の地位に置かれることになりますと、不測の不利益を受けることになりますから、本條を設けました。「他ノ債権者二先チテ」というのは、債務者の総財産から、弁済を受けるべき他の債権に先だつという意味でありまして、特別の先取特権、質権、抵等権等で担保されている債権にまで優先するものではありません。  第三百六十六條の十九、第三百六十六條の十四に対応する規定であります。  第三百六十六條の二十、免責手續は、破産手續ではないので、復権の章の第三百七十三條の規定と同様の規定を置いたわけであります。第百十八條規定をも準用したのは、公告と送達とをともにする場合があるからであります。  第三百六十六條の二十一、免責の制度を採用した以上は、本條第一項に列挙する事由のある場合にも、なお破産者に対し、身分上の制限をしたままにしておくことは当を得ませんので、右の事由のある場合には、破産者は、当然に復権することといたしました。本條第二項中、「復権ハ将来二向テ其ノ効力ヲ失フ」とあるのは、免責取消しまたは強制和議取消しがあつても、復権していた間の身上の効果にまで影響を及ぼさない趣旨であります。  第三百六十七條、前條の規定を新設することとしたことに伴い、法文の整理をしたものであります。  第三百七十四條第四号、第三百七十五條、第三百七十七條第一項、第三百八十條第一項、第三百八十一條第一項、第三百八十二條第一項、裁判所書記についての字句の修正は、前に説明したところと同趣旨のものであり、罰金額を改めたのは、経済事情の変動に応じたものであります。  次に第二條和議法の改正について申し上げます。  第十一條破産法第百十三條を削除することとしたことに伴い、法文の整理をしたものであります。  第四十四條の二から第四十四條の四まで、破産法第十八條から第二十條までの規定を削除することとしたことに伴い、和議法第四十五條において準用していたこれらの規定の内容を、直接規定することが必要となつたため、これらの條文を設けたものであります。  第四十五條、右に述べた通り、破産法第十八條から第二十條までの規定を削除することとしたことに伴う法文の整理であります。  第六十八條第一項、第六十九條第一項、第七十條第一項、いずれも経済事情の変動に伴う罰金額の修正であります。  附則第一項、この法律の施行期日を定めたものであります。  第二項、この法律施行前に、破産宣告のあつた事件に対する、ここに掲げる改正規定の適用に関する経過規定を定めたものであります。  第三項、本項前段は、改正法施行前に破産手續の解止のあつた破産者に対し、免責申立ての機会を与えるための規定であり、本項後段は、改正法施行の際、裁判所に係属中の破産事件破産者が、免責の申立てをする機会を失うことのあることを考慮したものであります。  第四項、本項は、前項の破産者のために、免責の申立ての追完をすることができることとしたものであります。  第五項、第三百六十六條の二十一、第一項第二号から第四号までに掲げる事由が、改正法施行前にあつた破産者の復権について規定したものであります。第六項、前項の規定による復権について、第三百六十六條の二十一第二項の規定と同趣旨の定めをしたものであります。  第七項、華士族平民身代限規則(明治五年太政官布告第百八十七号)等により、身代限りの処分を受け、または家資分散法(明治二十三年法律第六十九号)により、家資分散の宣告を受けた者も、第五項に規定する破産者と同様に取扱うことが相当であるから、本項を設けることとしたのであります。  以上で逐條説明を終ります。
  8. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員長代理 ではここでしばらく休憩いたします。     午後三時四十六分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかつた〕