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1951-03-14 第10回国会 衆議院 法務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月十四日(水曜日)     午後一時三十六分開議     ―――――――――――――  出席委員    委員長 安部 俊吾君    理事 押谷 富三君 理事 北川 定務君    理事 田嶋 好文君 理事 猪俣 浩三君       鍛冶 良作君    佐瀬 昌三君       花村 四郎君    牧野 寛索君       松木  弘君    眞鍋  勝君       上村  進君    加藤  充君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  出席政府委員         法務政務次官  高木 松吉君         検     事         (法務法制意         見第四局長)  野木 新一君  委員外出席者         参  考  人         (警視総監)  田中 榮一君         参  考  人         (警視庁刑事部         長)      古屋  孝君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小林 貞一君     ――――――――――――― 三月十三日  委員梨木作次郎君辞任につき、その補欠として  加藤充君が議長の指名で委員選任された。     ――――――――――――― 三月十三日  有限会社法の一部を改正する法律案内閣提出  第一〇〇号)  少年院法の一部を改正する法律案宮城タマヨ  君外三名提出参法第六号)(予) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任  有限会社法の一部を改正する法律案内閣提出  第一〇〇号)  犯罪捜査及び人権擁護に関する件     ―――――――――――――
  2. 安部俊吾

    安部委員長 これより会議を開きます。  日程に入ります前に、まず小委員補欠選任に関する件についてお諮りいたします。すなわち昨十三日、梨木作次郎君が委員を辞任せられ、その補欠として加藤充君が委員選任せられたのでありますが、梨木君は戸籍法改正に関する小委員住民登録法案起草に関する小委員、及び商法の一部を改正する法律改正に関する小委員でありましたので、それらの小委員補欠選任を行わねばなりません。この補欠選任につきましては、委員長において、それらの各小委員加藤充君を御指名いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なければ、小委員加藤充君を指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 安部俊吾

    安部委員長 それではただいまより本日の日程に入ります。まず有限会社法の一部を改正する法律案議題とし、政府より提案理由説明を聴取いたします。野木政府委員。ついては、新法施行後も、なお同条の規定を準用する。(一時取締役職務を行うべき監査役
  5. 野木新一

    野木政府委員 ただいま議題となりました有限会社法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  有限会社は、その形態において著しく株式会社に類似した会社でありまして、これを法律形式の面から見ましても、その規定株式会社に関する商法規定と内容において同一なものが少くないのみならず、これらの商法規定有限会社に準用されているものがすこぶる多数に上つているのであります。しかるに、御承知の通り、第七国会において成立いたしました商法の一部を改正する法律は、多くの点において株式会社に関する規定改正いたしましたので、この法律案は、有限会社の特質を顧慮しつつ、株式会社制度改正の趣旨にのつとり、ことに社員権強化等の点において、有限会社法に必要な改正を加えようとするものであります。  次に主要な改正点を御説明申し上げますと、一、資本金の総額は、十万円を、出資  一口の金額は千円を下ることができないこととしたこと。  一、持分譲渡につき社員総会決議を要しないものとし、社員でない者に対する持分譲渡について、社員総会の指定する者に先買権制度を認めたこと。  一、社員総会普通決議をする場合の定足数について規定を設けたこと。  一、二人以上の取締役選任については、定款をもつて累積投票によるべき旨を定めることができるものとしたこと。  一、取締役は、決算期ごとに、会社業務及び財産に関する明細書を本店及び支店に備え置くことを要し、各社員は、何時でもその書類の閲覧、謄写をなし得ることとするとともに、資本の十分の一以上に当る出資口数を有する社員は、会計帳簿及び書類を閲覧し、または謄写することができるものとしたこと、  但し、定款をもつて、各社員会計帳簿及び書類を閲覧し、または謄写をすることができる旨を定めることができるものとし、この場合には、業務及び財産に関する明細書を備え置くことを要しないこととしたこと。  一、取締役会社の目的の範囲外行為その他法令または定款違反行為をし、これによつて会社に回復すべからざる損害を生ずるおそれがある場合に、社員は、取締役に対し、その行為のさしとめを請求することができるものとしたこと。  一、従来の少数社員の請求による訴え制度を廃止し、社員会社のため、みずから取締役責任を追及する訴えを提起することができるものとしたこと。  一、合併営業譲渡等の場合において、これに反対する社員は、一定の手続に従い、会社に対して自己の持分の買取りを請求することができるものとしたこと。  一、会社業務の続行が不能または不適当で、やむを得ないときには、資本の十分の一以上に当る出資口数を有する社員は、会社の解散を裁判所に請求することができるものとしたこと。  一、取締役責任を明確にしたこと。  一、監査役制度を改め、監査役は、もつぱら経理監査をすることとしたこと 等でありまして、その大部分は、株式会社に関する規定改正にならつたものであります。  以上がこの法律案の大要であります。  何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたす次第であります。
  6. 安部俊吾

    安部委員長 これにて提案理由説明は終りました。なお本案に対する質疑は追つて後日に行うことといたします。     ―――――――――――――
  7. 安部俊吾

    安部委員長 次に犯罪捜査及び人権擁護に関する件を議題といたします。  この際本日特に参考人として御出席を願いました警視庁田中警視総監及び古屋刑事部長に一言ごあいさつを申し上げます。今日は公務御多用中のところ御出席を煩わしまして、恐縮に存じております。本委員会が実施いたしておりまする国政調査事件のうち、本日は先刻申し上げました通り犯罪捜査及び人権擁護に関する件について調査を進めまするので、本件につきまして、委員諸君よりいろいろ御質疑があると存ずるのでありますが、その質疑に応じて十分御意見並びにその実情を御説明願いたいと存じます。  それでは委員より質疑の通告がありますから順次これを許します。なお委員諸君に申し上げておきますが、田中参考人は所用のため二時半ごろまでしか御出席ができないとのことでございまするからして、それをお含みの上御質疑をお願いいたします。では質疑を許します。猪俣浩二君。
  8. 猪俣浩三

    猪俣委員 築地の四人殺し山口常雄につきましては、しろうとは大体あれが怪しいというふうに考えておつたにかかわらず、捜査当局だけはこれを白と断じまして、十数日間彼を有力な資料の提供者としてその捜査方針を立てた、彼の部屋につきましては、これも十数日間捜査検証もしなかつた、いよいよ彼を犯罪人としたその瞬間に自殺させてしまつた、かようなことは非常に異常なことだと存ずるのでありまするが、いかなる事情でさように相なつたか、その間の事情及びその責任について御説明願いたいと思います。
  9. 田中榮一

    田中参考人 猪俣委員の御質問に対しましてお答えを申し上げます。先月築地におきまして、八宝亭という中華料理屋の親子四人が兇悪犯人のために惨殺、金円を強奪せられたのでありまするが、警視庁といたしましては、極力捜査をいたしまして、特に重大事件と認めまして、築地警察署に相当優秀なる刑事を配置いたしました捜査本部を設置いたしまして、ただちに捜査に従事いたしたのであります。その際に当局として、まず容疑をかけましたのは前日八宝亭に臨時に雇用せられましたいわゆる太田成子と称する女中の行方でありまして、この女中が本事件の有力なるかぎを握つておるということは、当然捜査本部として捜査方針の第一として捜査に着手をいたしたのであります。もとより捜査本部といたしましても、同居人山口常雄が狭い家屋の二階におりまして、そうしてあれだけの惨殺せられたその当時の状況を、全然知らぬことはないということは、捜査本部といたしましても、一応容疑はかけておつたのであります。ただ捜査本部捜査方針といたしましては、まず女中太田成子と称する女性をまず検挙いたしまして、この女性の口から山口を割り出すと同時に、山口傍証を固めねばならぬ、かような捜査方針のもとに捜査を続けて参つたのであります。まず山口に対しましては、捜査本部といたしましては、むしろ黒ということを彼に思わせますと、いろいろ証拠物件その他を隠滅するおそれが多分にございまするので、山口常雄に対しましては、むしろ捜査本部としては、擬装的に、黒という感覚を与えることを極力避けまして、もつぱら太田成子追跡の方に重点を置いておつたのであります。もちろん山口の行動その他につきましては、厳重なる監視をつけまして、山口があるいは逃走するというようなことを十分に防ぐためには、相当なる手段を講じておつたのであります。  そこで山口部屋の問題でございますが、これにつきましても相当精密なる現場検証行つたのでありまするが、ことに指紋の摘出、並びにその他の犯行を犯したと認められるような傍証の収集に当つたのでありまするが、当時といたしましては、まだ彼の二階の部屋血痕の付着しておつたことが発見できなかつたのでありますが、そののち非常に努力いたしまして、ある刑事が畳の上に、ほとんど数時間めがねをもつて血痕の発見に努力をいたしました結果、柱の下の方に豆粒大血痕あとらしいものが見出されたのであります。ただちに薬品をもつて血痕検出方法によつてこれを検査いたしましたところが、これがAB型の血痕であるということが一つわかつたのであります。このAB型の血痕というのは、今回の事件において殺された妻女の血痕の型と一致いたすのであります。かような点からさらに血痕検出努力をいたしました結果、畳の隅の方に一点、それから壁の方にさらに一、二点ごく小さな豆粒大血痕らしいものを摘出いたしました。それから二階から下へおりる階段の壁のところに、これもきわめて小さな血痕摘出に成功いたしたのであります。それによりまして、山口がこの犯行に有力なる、いわゆる犯人であるという断定をいたしまして、十日の夕刊に一応任意出頭形式築地署に呼出しをいたしまして、さらに九時過ぎに逮捕令状執行をいたしたのであります。従いまして捜査本部といたしましては、山口を全然容疑者でないという理由のもとに、これを放しておつたのでは全然ないのでありまして、むしろ捜査本部としましては、山口に、山口自身が黒であるという感覚を持たせぬようなことにして、できるだけこれを遊弋さしておつたというような捜査方針をとつてつたのであります。猪俣委員から御質問がございました十数日間、部屋の中の血痕検出ができなかつたということは、私どもといたしましても若干これは遺憾の点でございまするが、ことほどさように血痕検出が非常に困難であつたくらいに、ごく微量の血液が出たのであります。その後さらに幸いにいたしまして、太田成子こと本名西野つや子を十日の日に検挙いたしまして、この西野つや子自供によりますると、山口常雄犯罪を犯したことが西野つや子の陳述によつて一応確実になつたのであります。それと同時に山口常雄を一応任意出頭形式築地署に呼びまして、その上で逮捕令状執行いたしたのでありまして、さよう御了承願いたいと思います。
  10. 猪俣浩三

    猪俣委員 私が質問いたしました第二の点、山口自殺の模様及びそれに関する責任についての御答弁を願います。
  11. 田中榮一

    田中参考人 せつかく犯人を逮捕いたしながら、遂に留置場の中において犯人自殺をいたしましたことにつきましては、私といたしましてもまことに申訳なく考えておるのであります。今回の事件におきまして、山口が、これは擬装かどうか存じませんが、死にたいと言つてつたことは再三再四でないのでありまして、彼は何か他の者から、君がやつたんじやない歩というようなことを冗談に言われますと、彼は、自分はここまで協力しておるにかかわらず、そんなに皆さんが私を疑われるということは、まことに残念である、自分は死んでしまいたいのだということを常に言つてつたのであります。かような関係からいたしまして、十日の午後九時四十分ごろ、逮捕令状執行いたしまして、ただちに本人の取調べにも当つたのでありまするが、非常に本人が疲れておるから、明日一切をお話し申し上げたい、今日は疲れておるから、ぜひ今晩は寝かしてくれ、かようなことを言いますので、係官といたしましても、本人は大分疲れておりまするし、若干酒も飲んでおつたようでありますので、正確なる陳述、正確なる自供を得るためには、なるべくそうした状態にないことを希望いたしましたので、そういう場合におきましては、警察といたしましても、当然容疑者の要求をいれまして、明日にこれを延ばすようにいたしたのであります。その際に、普通容疑者留置場に入れる場合におきましては、警察官等職務執行法規定に基きまして、容疑者身体捜検をいたすのであります。これは主として、兇器等を持ち合せまして、房内で自殺をしたり、あるいはまたその他の行為をなすおそれがありまするので、兇器所持あるいは劇毒薬物等所持を十分に点検するために、身体並びに服装の検索をいたすのであります。山口につきましても、これは平素山口がそうした死にたいというようなことを、ほんとうかうそか知りませんが、そういうことを言つてつた関係もありまするので、捜査当局並びに築地警察署といたしましては、細心の注意を払いまして、まず衣服を全部とりまして、この衣服の縫い目あるいはそのほかの劇毒物等が隠匿されるおそれのあるようなところは一切これを検索いたしたのであります。それでなお一応本人承諾を得まして、さるまたのひものところまで全部これを手で繰りまして、何か薬品等が入つておりはせぬかということで、さるまたまでとりまして検索をいたしたのであります。それからなおさらに他にからだの各所に毒物が隠匿されておるのではないかということで、懐中電燈をもちまして、鼻腔、わきの下、その他薬物等の隠されやすいような場所を詳細に点検いたしまして、そして大体異状を認めませんので、一応またもとの衣服を着せまして、房に入れたのであります。  翌日の午前四時過ぎごろでありまするが、山口は絶えず看守係巡査に時間を聞いておつたそうであります。築地警察署といたしましても、特に重要なる犯罪容疑者でありまするがゆえに、普通ならば看守三人で監視をいたすのでありますが、当日は特に制服巡査二名を増員いたしまして、一人の制服巡査を第四房の前に常時坐らせまして、一挙一動を見守らしておつたのであります。午前四時ちよつと過ぎごろ、また時間を、何時でありますかという質問がありましたので、看守巡査から、今四時過ぎだということを言いましたところが、間もなく容疑者山口毛布をがばつと自分の顔におおつたのであります。そこで看守巡査はそれというので、すぐ錠をあけまして、山口毛布をはぎとりまして、山口をゆり起しましたところが、両方の口よら少量の血が流れておりまして、舌をかみ切つたような形跡がありましたので、ただちに同僚を招集いたしまして、手ぬぐい等を口の中に詰めまして、さらにかみ切ることを防止いたしたのであります。巡査としましては、そんな、死ぬ必要はないのだと言つたときに、山口もうなずいておつたそうでありまするが、ただちに警察医を呼びまして、その手当をしておるうちに、これは舌ではない、毒薬を飲んでおるに違いないというので、その手当をいたしておつたのでありまするが、漸次脈も弱りまして、五時過ぎについに息が絶えたのであります。  そこでその劇毒為の検索につきましては、普通の容疑者以上の精密、細心、周到な注意をもちまして、一応検索をいたしたのであります。もちろんこうしたことにつきましては、警察といたしましては異例に属することでありまして、本人承諾の上でかかる徹底的な検索方法をとつたのであります。そしてなお監視につきましても、特別に警部を宿直といたしまして、その下に増員いたしまして、二名の警察官を一時間交代で監房の前で監視をさせたのでありまして、まず警察といたしましては、普通の常識的に考えられる以上の特別細心なる監視方法は講じておつたものと考えられるのであります。しかるに今回山口自殺いたしたのでありまして、しからばその劇薬はどこに所持しておつたか、どういうものであつたかということでありまするが、死体解剖の結果、胃の中から〇・一四から一五グラム程度青酸カリの容量が検出されたのでありまして、もちろん致死量をオーバーいたしたのであります。しかしながら、私どもしろうとでよくわかりませんけれども、〇・一四程度青酸カリと申しますると、大体米粒大くらいではないかと考えられるのでありまして、この米粒大かあるいは米粒二粒くらいの薬品を、しからばどういう方法で持つてつたかというのでありまするが、これもすでに本人が死んでおりまするから、われわれとしてはただ想像お話をするほかなかろうと考えておるのでありまするが、あるいは本人がこの口の上の方にこれを含めておつたのではないか。当日逮捕令状が出ましてから、黙秘権を行使して全然沈黙を守つてつたという点、それから入るときに二言三言話したほかは口をきかなかつたという点、そういう点で、上あごのどこか奥の方に小さなセロフアンに包んだものを含んでおつたのではないか、これも一つ想像であります。いま一つは、はなはだこういうことを申し上げてどうかと思いますが、小さいものでありますから、あるいは肛門の中にでも、そつと押し込んでおつたのではないかということも、あとから考えられるのであります。捜査中に、かれはいすにすわつてつたときに、少しからだをもじもじしておつたということも、あとから申す者もあるのでありまして、そういつたところから、これは一応想像でありますが、肛門の中にでも差込んでおつたのではないか。これも一つ想像でありますから、断定的にそうだということは言えないのであります。こうした場合におきまして、普通身体検査をするにおいて、身体並びに被服の捜検をするのでありますが、かりに警察官が素裸にしまして、肛門の中まで検査するということは、警察官として行き過ぎでありまして、また大きな口をあけさせて、中までつつ込んやるということも、これも私は身体捜検方法としては行き過ぎであるのではないかと考えるのであります。しかしそうした中にかかわりませず、築地警察署としては、相当警察官の職権として行き得る程度まで、こまかく徹底的な検索をいたした上で、しかもかような結果になつたのでありまして、この点につきましては、私どもも、まだ十分に、今後もこれを参考にして研究いたさねばならぬと考えておるのでありますが、やはりこうした重要なる犯罪容疑者身体捜検につきましては、何か法律をもつて規定をいたしまして、警察官等が十分に自信を持つて身体捜検をするような法制が必要ではないかということも一応考えられるのでありまして、ただいま猪俣委員から、しからば責任の問題はどうなるかということでありますが、とにかく容疑者を殺した事実は、これはもうはつきりした事実でありますので、さらにもつとつき詰めまして、本件を取上げまして、詳細に調査いたしました上で、その責任の所在をはつきりとして、適当な措置をとりたい、かように考えておる次第であります。
  12. 猪俣浩三

    猪俣委員 真犯人捜査当局が非常に御苦労の上、発見されたのでありますし、われわれがそれをとやかく申すことも、はなはだお気の毒には存ずるのでありますけれども、この築地の四人殺しの事件につきましては、一般世がどうしても山口が怪しいと言い、また法医学の先生も、この惨劇の音を山口が聞かない道理がないという鑑定をしておつたやに新聞が伝えておつたのでありますが、今御説明を承れば、なるべく山口を白と思い込ませておいて、傍証を固めたいためにやつたとこう申されるけれども、この山口がもし黒だという認定があつたとするならば、少くとも二階の彼の部屋くらいの検証というものは、時を移さずやらなければならなかつたものではないか。それが一体いつその検証をされて、その血痕を発見されたのか、いま少し早くその検証をされたならば、早くその血痕が発見されたのではないか。なおまた新聞の伝うるところによれば、捜査本部は、彼を白と見て検証をする気がなかつたが、築地警察署では、ひそかに検証をやつたのだということも新聞紙は伝えておる。一体かようなことが真にあつたのであるかどうか。もしさようなことがあつたとするならば、築地警察人たち捜査本部というものに、一体意見対立があつたのであるか、なかつたのであるか。さような疑惑が本件にはあるのでありまして、私どもしろうとといたしましても、何がゆえに数十日もその部屋検証さえしなかつたのであるかということに対しては、どうも割り切れないものがあるのであります。一体これはいつ本格的の検証をなさつたのであるか、その日をお知らせ願いたい。
  13. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。第一回の検証は、犯行がありましたその日の二月の二十二日に鑑識課長以下関係者が全部出まして、階下の調理室並び西野つや子の寝とまりしておりました三畳の部屋、便所、それから客席またそこにある一切の物件並びに二階に参りますはしご段、さらに山口常雄の起居いたしておりました部屋、戸だな、物件その他一切を詳細に検証をいたしたのであります。しかしながらそのときには何といたしましても、今申し上げました血痕を発見することができなかつたのであります。それで第二回目の三月九日に、さらにもう一回というので検証をいたしました結果、ごく微量血痕が数滴汚染されていた事実を発見したのでありまして、二月二十二日から三月九日の間は、先ほど私が説明いたしましたことくに、まず太田成子を追いまして、太田成子を逮捕いたしまして、それからやるというのも一つ犯罪捜査の有力なるきめ手でございましたので、その方面に重点を置いたのであります。それから山口常雄をなぜ早く逮捕しなかつたかというのでありますが、これにつきましては、捜査本部といたしましては、さような気持であると同時に、もとより捜査本部といたしましては、山口は非常に密接な関係を持つておる容疑者であるということは、捜査本部としてもそういう考えを抱いておつたことは、先ほど申し上げた通りであります。但しこの山口常雄を逮捕するだけのきめ手というものはなかつたのであります。いろいろうわさはありまするけれどもうわさでただちに逮捕令状を出すことはできないのであります。何かやはり物的証拠きめ手がなければ逮捕令状は当然発行されないのでありまして、そこでこの血痕が出たということと同時に、西野つや子を一方におきまして逮捕いたしまして、これの事情を聞いてみたら、ここにきめ手ができまして、初めて逮捕令状を発行し、山口常雄を逮捕したのであります。それからまた築地警察署捜査本部とにおいて、捜査方針その他につきまして、何らか意見対立があつたのではないかというようなお話でございまするが、捜査本部を置かれたときには、一応捜査本部意見というものが優先的に採用せられることになりまして、その捜査本部意見従つて署長も当然捜査に従事するということになるのであります。もちろんその間に警察署の署長以下捜査主任等の意見というものは、常に捜査本部捜査会議に反映をいたしまして、そうしてその会議において決定した方針に基いて、築地署並びに全警視庁及び関係警察署の方がこれに基いて捜査活動をいたすのでありまして、従いまして、捜査本部並びに警察署の間に何か意見対立があつたというような事実は全然ございませんので、その点御了承願いたいと思います。
  14. 猪俣浩三

    猪俣委員 実は非常に御心労をなさいまして、遂に真犯人まで突きとめたのでありまして、はなはだ私どもとしても警察の労を多とするものでありまするが、結果から見ますると、日本の警視庁の大捜査陣が山口常雄なるところの青年にことごとく初めから終りまで翻弄されたという印象を与えたことは、ぬぐうことのできない恥辱であると私は思う。もちろん異常な性格の犯人であるがゆえに私どもはその責任を云々するのではございませんけれども、床屋やふろ屋で世人がうわさしておるのを聞きますると、自分たちだつて山口だと思い込んでおつたのに、警察はこれをほつたらかしておいて、そしてあつという間に自殺させてしまつた。まつたく道化役者を警察がやつてつたというような風評があるのでありまして、これは日本の大警視庁の威信にもかかわる問題だと存じまして、その真相をお尋ねいたしたのであります。さような山口を白とまず思わせておいて、その傍証を固められるということは、私どもも察知できるのでありまして、それが証拠固めの常道であろうと思うのでありまするが、ところが世人はそういうふうに考えておりませんでしたがために、事の真相を国民に伝えていただきたいと思つて、この質問をしたのであります。  そこで今山口自殺いたしましたことにつきましても、だんだんお話を承ると、どうもこれを責任呼ばわりするのも無理であるような気もいたしますが、これに関連いたしまして、警視庁あるいはその他の警察署の留置場というものに対しまして、われわれ国会といたしましても考慮しなければならぬことが多々あるように考えられます。昨年でありまするか、警視総監から留置場の問題につきまして御説明を承つたことがあるのでありますが、一体警察留置場なるものはいかなる法的根拠に基いて管理せられたものであるか承りたいと思います。
  15. 田中榮一

    田中参考人 ただいま警視庁留置場は、警視庁といたしましては留置場管理規則というものを、これは警視庁単独でございますが、これを制定いたしております。もちろんこの留置場管理規則は刑事訴訟法及び警察官等職務執行法の根拠に基きまして、総監訓令といたしまして、留置場管理の規則を制定いたしておるのでありまするが、これ以外には直接法律の根拠等に基いて留置場の管理をいたしておるのではないのであります。そこでわれわれといたしましては、こうした留置場の管理につきましては、単に総監訓令というような一地方的の長の訓令的なものではなくて、むしろできればこれを法制化するような方法を講じていただいた方が根拠もはつきりするし、また管理の上においてもよりよい結果を得るのではないかということも考えておるのであります。現在刑務所の囚人につきましては、監獄法に基きましていろいろ管理をされておるのでありますが、現在の警察署の留置場は、総監訓令と留置場管理規則というものだけしか根拠がないのでありまして、そのためにたとえば留置場内におきまして被疑者が非常に留置場の管理規則を無視して、あるいは放歌高唱したり、あるいは看視巡査の命令に服従しないという場合におきましては、的確なる制裁規定、懲戒処分というものはなかなかでき得ないということもあるのであります。ただ管理規則の範囲内においてのみ懲戒処分ができるということに相なつておるのでありまして、警察側といたしましては拘禁、看護、接見、領置、給養、衛生、医療等の処分につきましては、何らか明確な法律をもつて保護されることが人権尊重の趣旨にも最も合致するのではないかと考えておりますので、一応御答弁申し上げる次第であります。
  16. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうしまするとこの留置場監視いたしまする警官は、さような専門の者があるのではなくて、かわり番こにそういう任務につく仕掛になつておるのでありますか。あるいは留置場監視等については、それ専門の警官があつてつておられるのでありますか。
  17. 田中榮一

    田中参考人 留置場監視につきましては、だれでもが、その場におる者が監視するというのではございませんので、各警察署に留置場看守係というものがございまして、この看守係捜査主任の指揮命令を受けて専任の看守巡査というものが配置されておるのであります。この看守巡査は大体三人勤務になつておりまして、一人が休憩、一人が見張り、一人が立番をするというように、この三人の者が交代で勤務をいたしております。そうしてこの看守巡査は相当専門的な知識を要しまするので、単なる初めての巡査ではその目的を達成することができませんので、なるべくなれた頭の緻密な、しかも相当注意力の周倒な優秀なる警察官を、この看守巡査にただいま充当いたしておるような次第でございます。しかも相当期間これを専属にいたしてやりますので、今までのところ非常に大きな事故というものは、警視庁管内にはなかつたのであります。今回こうした事故を起しましたことはまことに申訳ないと思います。
  18. 安部俊吾

    安部委員長 猪俣委員にお諮りいたしますが、たいへん重要な御質疑ではありますが、先ほど申し上げました通り、二時半から田中参考人は所要がございますので、でき得る限り簡単にお願いいたします。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 ではこの問題はこれで打切ります。次に先般参議院の法務委員会におきまして、いわゆる五井産業事件なるものが調査せられました。この調査の過程におきまして、警視庁のそれぞれの係の課員が数名証人として出頭して証言をしたのであります。巷間伝うるところによりますと、警視庁にとりまして不利なる証言をした者はみな左遷されたということでありますが、その当時法務委員会に出頭いたしましたる証人について、その後どういう人事上の異動がありましたかを御説明願いたいと思います。
  20. 田中榮一

    田中参考人 昨年参議院の法務委員会におきまして、五井産業事件に関連いたしまして、いろいろ御調査があつたのであります。その際に、警視庁警察官関係者と認められる人々が法務委員会出席いたしまして、それぞれ証言をいたしたのでありますが、当時私の考え方といたしましては、出席した各警察官が当然自己の信ずるところによつて自由に答弁してもらう、絶対にうそを言つたりまた事を曲げて話をしてはいかぬ、それがかりに警視庁に不利なことであろうが、有利なことであろうが、そういうことは全然考慮せずに、真実をぜひひとつ話してもらいたいということを、私から出席者の人々にも御注意申し上げたのであります。従つてこれらの人々は、警視庁に有利であるとか、不利であるとか、そうしたことは全然考えずに、それぞれ自己の信ずるところに従つて答弁をされたものと考えております。また答弁としては当然そうでなくてはならぬと私は考えておるのであります。そこでその後これらの問題につきまして、警視庁側としまして十分に調査いたしました結果、いやしくもこうした五井産業事件というような問題を、法務委員会に御迷惑をかけて国政調査にまで持ち出したということは、何としても申訳ないわけでございまして、とにかくこうした関係者につきましては、一応事実を調査いたしました上で、それぞれの事由に従いまして、私としましては全部を処分にいたしたのであります。  まず第一に吉武警視につきましては減給一箇月の処分に付したのであります。それから当時の予備隊長でおられました土田精君に対しましては、総監譴責処分ということをいたしております。それから第一方面の監察官付の折田警部につきましては、譴責転任をいたしたのであります。また張本松榮警視につきましては、事案がやや軽くあつたので、譴責猶予処分に付したのであります。宗像警部補につきましては、譴責転勤をいたしたのであります。それから当時の捜査二課長は総監訓告処分に付したのであります。それから第一方面の監察官藤澤三郎君は、ちようどこの事件は彼が病気中に起つたのでありまするが、一応責任をとる意味におきまして警務部長の職を解くことにいたしたのであります。その後私といたしましては、一応全部の処分をいたしましたので、いわゆる五井産業事件に対する処分としては一応これをもつて打切りまして、さてそれから他に進むべき者は進ませるような処置をとつたのであります。吉武警視は過般上野署の次席から滝野川の署長に転勤を命じ、また土田精君は警視正試験に合格をされまして、警視正にはならなかつたのでありますが、警察予備隊に栄転をせられたのであります。それから折田君につきましては、ただいま第二方面予備隊の副隊長になつて勤務いたしております。藤本君はただいま成城の警察署長をやつております。それから宗像君につきましては、今浅草警察署において主任として少年補導に当つておられます。松本捜査第二課長につきましては、かねてから国家地方警察に復帰したいという本人の希望がございましたので、ただいま仙台管区本部の警備部長に警規正として栄転をされたのであります。それから当時の第一方面監察官の藤澤警視は、過般の警視正試験に優秀な成績で合格いたしまして、警視正となつてただいま警視庁の教養課長を勤めております。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうするとこの人事異動は、総監のお考えでは、警視庁内部における派閥抗争のようなものに対する手段としてなされたということになるのでありますか。あるいはこの参議院の法務委員会に何か不実の供述をしたということで異動されたということになるのであるか。どちらでありますか。
  22. 田中榮一

    田中参考人 先ほどから説明いたしましたことくに、いやしくも国家の公の機関である法務委員会に出て発言をする、答弁をする以上は、その真実を語らなくてはならぬということを私は考えておりますので、それぞれ出席された各警察官諸君は真実を語られたものと考えておるのであります。従つて私は、この真実を語つた点に対して、あえて処分をするとか、そういうことは全然いたしておりません。しからばなぜ処分をしたかということでありまするが、これは派閥抗争ということではなくて、むしろいろいろな事の行き違いであるとかいうことで、お互いに捜査上に、あるいは他を調べたとか調べぬとかいうような、いろいろ世間の誤解を受けるような行動をとつたということに対して――私は決してこれは派閥抗争のためではないと考えております。やはりおのおの職務によつてつたものと考えておりまするが、特にそのやつた行動が行き過ぎたり、あるいは世間の疑惑をこうむつたということで、世間を非常にお騒がせしたことに対して、私としては各人の監督上の責任をそれぞれとつたり、あるいはそうした行動に行き過ぎた点があつたのを是正するために、処分をいたしたのであります。
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 私どもははなはだここに疑惑があるのであります。これは五井産業事件の場合のみならず、当衆議院の法務委員会が横浜の検察庁を査察いたしましたときにも、証人として出て来たような巡査に対しまして、これをみな左遷するというようなことをやつておる。今衆議院におきましては、行政監察委員会ができたのでありますが、そこでも私は申したのであります。一体警視庁なり検察庁は、事が明るみに出ることを非常に恐れる傾向がある。横浜の検察庁の事件に対して検事正が、事が明るみに出て衆議院の法務委員会調査にかかるようになつたことに対して、まことに申訳ない、自分が無能だから事が明るみに出てしまつたということを言うので、私は意外に感じまして、その際に検事正にも言うた。今の田中警視総監説明の中にも、どうもそういうにおいがするのであつて、参議院の法務委員会で取上げられて、そういうことが明るみに出たことを非常に不都合だとして、それによつてみんな人事異動をしたような感じを私どもは受けるのであります。もしさようなことがありますならば、検察庁や警察内部におけるスキャンダルというものは、国会がこれを調査することができません。さような考えでやられると非常に困ると思うのでありますが、現に警視庁における第二捜査課は、事が政治問題にからむような問題は一切手をつけないでおこう、われわれが一生懸命やつても、結局はにらまれて左遷されてしまうというようなことで、意気消沈しているというようにも聞いております。これは巷間言うことでありまするから、必ずしも信用するわけではないのでありますけれども、人情上さようになると考える。これは警視庁といたしましても、内部におけるこういう不都合なことに対しましては、決して臭いものにふたするようなことをせずに、かえつてこれを明らかにするように総監自身が努力していただきたい。事が明らかになると、明らかにしたような人間をみなどこかへ動かす。そうして沈香もたかずへもひらず、だまつてつているやつだけがうまくやつているということになりましては、志気の沮喪その他の点につきまして容易ならぬ結果を発生すると思う。これは一般の官庁の弊害だと私は思うのであります。何でもボロを出さぬようにやろうとする。そこでボロを出すような人間に対しましては、極端にこれを憎む。しかしその結果その人間が一生うだつが上らぬということになりましては、官紀の振粛などはできないと私は考えるのであります。これは私の方でも、総監がさような意味でやつたのじやないということは一応了承いたしておきまするけれども、将来御注意なさつていただきたい。なお、お急ぎのようでありますから、この問題はこれとして、最後に淀橋警察署の署長初め警察署をとり囲んでおりますところのボス退治は、警視庁実によく手をつけていただいたと私どもは感謝いたしております。実は昨年か一昨年、法務委員会におきまして、新宿の暴力団見るに忍びずと、法務委員会が直接乗り出して徹底的に調査しようじやないかという議まで出たのでありますが、それはそのままに相なつたので、今日警視庁がこれに対してメスを振われることに対して、われわれ快哉を叫ぶものであります。ただこの種事件はややもするとうやむやに終るおそれがあるのでありまするが、これに対して田中総監はいかなる決意を持つてこれを粛正されるのであるか、承りたいと思います。
  24. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。ただいまある特定の新聞に、淀橋ことに新宿の繁華街をめぐるいろいろな裏面的な記事が非常にセンセーシヨナルに書かれているのでありまするが、警視庁といたしましては、そうしたことがあつてはならぬのでありまして、十分に方面本部長を指揮いたしまして、事実を調査いたしておるのであります。ただ今まで私どもで調べたところによりますると、非常に事実と相違した点が相当多いようにも発見されるのでありまして、いやしくも社会の木鐸として、輿論の最も有力な機関として、社会に事実を報道する方々におきましては、事実をあまり歪曲して報道されるということは、関係者はもちろんのこと、警察といたしましても非常に迷惑をいたしておるのでありまして、警視庁といたしましては、ひとり新宿、淀橋のみならず、こうした盛り場等が各所にもございますので、十分に是々非非主義によりまして、悪い点はこれを十分に矯正いたしまするし、そうでない点は、事実に違つた点を報道側におきまして、発表していただくと、関係者が非常に迷惑をこうむるのではないかということを考えておる次第でありまして、警視庁としましては、是々非非主義でこれを監察して行きたいと考えております。
  25. 猪俣浩三

    猪俣委員 今でも各警察署に、何々警察署後援会だとか、あるいは防犯協会だとかいうものが存在しておりますか。
  26. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。警察後援会につきましては、昨年の十一月に従来の警察後援会を一応解散をするということに方針をきめまして、関係方面に通達をいたしたのであります。従来警察後援会はいろいろ財的に警察署に援助をしておつたのでありますが、警察の費用というものは当然公費をもつて支弁するのが建前であると考えておりますので、爾今警察後援会から財的の援助を受けることをやめたいという考えで、一応解散をすることに方針をきめたのであります。ただ財産を持つてつたり、手続の関係で、まだ警察後援会として形そのものが残つておるところも若干あると考えておりまするが、むしろ、これらは形をかえまして、警察に対するアドヴアイスの機関として、警察に対していろいろ意見を述べたり、あるいは警察の方針について批判をする、いわゆる民間の方々の批判機関としてこれを存置するというように、将来方針をかえて行くつもりであります。
  27. 安部俊吾

    安部委員長 田中参考人は二時半という約束でありまして、すでに二時半を過ぎましたから、一応この際本件はこの程度にとどめたいと思うのでありますが、御了承願います。  参考人各位におかれましては、職務御繁忙中のところ、長時間にわたりまして御出席の上、詳細にわたる御説明並びに有益なる御意見をお聞かせくださいまして、本委員会本件調査の上に多大の参考となりましたことにつきましては、委員長といたしまして厚く御礼を申し上げます。たいへん御苦労様でありました。これをもつてお引取りを願います。ありがとうございました。
  28. 加藤充

    加藤(充)委員 この委員会の運営の問題なのですが、役人どもが出張して来れば、これは公務多忙の折から御苦労であるに違いないのですが、やはり国会は国家の最高の意思機関なのでありまするからして、その委員会が必要であつて捜査並びに人権擁護の問題、あるいは裏からい言えば蹂躪の問題について、いろいろな国政調査をやるという真剣な方針と態度で、そういう期日を取上げました以上は、やはり期日のきめ方、時間のとり方などにつきましても、真剣にひとつ委員会が中心になつて、そして各人、各委員の発言したいところのもの、国会がどうしても全体としてはつきりさせたいというものを、十分に質疑応答できるような処置をしていただきたいと思います。いいかげんに向うの都合で、向うの時間に縛られて、委員会の発言が非常にはんぱになり、拘束されるということになりますと、国会の国家の最高意思機関としての権威というものを、私はみずからそこなうことになると思います。役人に対して、わざわざ御足労だの何だのという感謝のごあいさつは、委員長として儀礼的なこととしてけつこうなのでありますが、役人どもが出て来て、私は二時半に帰るということでは、委員会としては時間が不十分だとすれば、もつとゆつくり出張できる日にちをきめるか、あるいは今後もここへ来て発言するのも公務でありますから、そういうような一般公務を差繰つてもここへ出て来るという強い要望をもつて委員会に喚問しなかつたら、これはおざなりになつてしまうと思う。私はきようは田中警視総監に対してこの前は大橋法務総裁に質問をしておりましたところが、三時までということで質問の途中で大橋さんがいなくなつてしまつた。その問題があるから、警視総監がきようは出ているから、ぜひやらせてもらいたいということで、事前に発言を通告しておきました。しかし二時半ということであつたから、私はその間に大橋さんも来ましたし、大橋さんに肩がわりしてもいいからということで、その旨を事務の人たちにもよく話しておいたのであります。そうしたら田中警視総監は、二時半過ぎて七、八分までは時間の余裕をつけたが、いなくなつた。どうしても私は今度大橋さんにしなければならぬと思つたら、大橋さんもいつの間にか消えるがごとく消えざるがごとく、その数十分前に席をはずしてしまつた。こういうことはまつたく大臣や行政官吏は国会を侮辱し、国会議員を侮辱したことになるので、これは重大な人権蹂躪ではないかと私は思いますから、委員長の権威において、この委員会の権威を十分に見識をもつてつてもらいたいと思います。
  29. 安部俊吾

    安部委員長 加藤君にお答えいたします。もちろん最高機関である国会におきまして、議員の発言は重大であります。従つて今日も警視総監にできるだけ時間を繰合せて出席を願つたのであります。しかし二時半という約束でありますから、その約束を実行いたしまして、そうして二時半まで御質疑を願つたわけであります。加藤委員より、この前の大橋法務総裁に対する質疑もありましたが、そのときもやはり三時でありまして、加藤君の質疑にお答えする機会がなくてそれは総裁といたしましても、あるいは参議院におきましても、あるいは本会議において、あるいは委員会において、あるいは閣議等いろいろ政務多端でありまして、なかなかあなた方の御都合のいいように一方的には都合できぬのであります。その点は賢明なる加藤君はよく御了承のはずであります。特に加藤君よりいろいろな質疑もあるでありましようが、また明日の機会もあります。御要請によりましては、明日また大橋法務総裁が参りまして、あなたの御質疑に答えることもできます。いやしくも人権蹂躙などということは、言い過ぎであると思います。十分言語に御注意を願います。
  30. 加藤充

    加藤(充)委員 私は何でそういうふうなことを言つたかというと、警視総監がいなくなるということは、委員長の御発言で私も了承したのですよ。それで二時半ごろにいなくなるというので、大橋さんが来ているから、それじや加藤君は大橋法務総裁に質問があるようだが、問題はどういうことだということを、わざわざ委員長の意向を受けて私のところへ来た。ですから、私はこの前質問の途中になつたものをしたいと思つておりましたから、ぜひということを言つた。しかるにこれは人を瞞着しておる。時間の都合があるならば、どういうことで質問したいのだと聞いた以上は、私は残念ながらその時間までおられないという返答ぐらいあつてしかるべきである。これは何もむずかしいことではない。紳士的な普通の礼儀だと思う。そういうことを言わずに、質問しようと思つたら、いつの間にかどこかへ行つてしまつた。こういうことは人を瞞着するにもほどがあると思う。
  31. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 加藤君の今の発言に対して私も一言発言を許していただきたいと思うのでありますが、委員長委員会の運営に対する加藤君の御意見は、一応私たちも了承できると思いますが、本委員会委員長に関する限り、また本委員会に関する限り、委員の発言は十分聞いているつもりであります。この委員会が野党、与党差別なく愉快に今日まで審議を進め、討論を重ねて参りましたことは、加藤君の前者である梨木君がよく知ついるはずであります。本日の警視総監出席につきましても、十分なる発言をしてもらうべく準備をいたしまして、警視総監委員会の一時きつかりにここへ見えられました。遺憾ながら開会が遅れたために、発言を十分する時間を委員会みずから放棄した形になつております。これによつて警視総監を責めることはできないと思います。  なお先日の法務総裁に対する加藤君の質問でございますが、これはまつたくやぶから棒でございまして、その前にたくさんの必要な質問の通告がありました。これを順次許して行くのが委員会の建前だと思います。しかし加藤君は委員外質問をもつて通告されました。われわれは委員外質問を許すべく準備をしておつたのでありますが、二日間にわたる法務総裁の熱心なる答弁で、もう加藤君自体の委員外質問に対して答えるだけの時間がなかつたことを御了承のはずであります。本日も法務総裁が御出席になりまして、そのお答をすべく準備をしたことと思いますが、おそらくやむを得ない事情によつて他へ行つたものと思います。私たち委員会の運営には十分なる気を配つてつていることをここに申し上げておきます。
  32. 安部俊吾

    安部委員長 なお委員長からも加藤君にお答えいたしますが、大体田嶋委員からもお話がありました通り、ほとんど社会党の猪俣君、あるいはあなた方の党派の梨木君が十分にその質問の機会を得まして、与党側の質問する時間は野党の方で十分に使つているようなわけでありまして、きわめて公明正大、きわめて公平であります。その点は加藤君といえども了承することと思うのであります。今日は特に大橋法務総裁がおいでになつたのでありますが、先ほど秘書の方から何かほかにどうしても出席しなければならぬとういことで退席されたのであります。  それでは本日はこの程度において散会いたしまして、次会は明日午後一時より開会いたします。     午後二時四十九分散会