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1951-07-14 第10回国会 衆議院 農林委員会 第49号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年七月十四日(土曜日)     午後一時四十二分開議  出席委員    委員長 千賀 康治君    理事 河野 謙三君 理事 野原 正勝君    理事 小林 運美君 理事 井上 良二君       宇野秀次郎君    遠藤 三郎君       中馬 辰猪君    原田 雪松君       平野 三郎君    八木 一郎君       大森 玉木君    金子與重郎君       足鹿  覺君    木村  榮君       横田甚太郎君    高倉 定助君  出席国務大臣         農 林 大 臣 根本龍太郎君  委員外出席者         農林政務次官  島村 軍次君         農林事務官         (蚕糸局長)  青柳 確郎君         食糧庁長官   安孫子藤吉君         経済安定事務官         (物価庁次長) 熊田 克郎君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君 七月十四日  委員吉川久衛君辞任につき、その補欠として金  子與重郎君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  米価問題に関する件  蚕糸に関する件  林業に関する件     ―――――――――――――
  2. 千賀康治

    千賀委員長 これより農林委員会を開会いたします。  まず米価問題につきまして前会に引続き質疑を行います。質問の通告がありますからこれを許します。河野謙三君。
  3. 河野謙三

    河野(謙)委員 まず麦の問題について、差迫つた問題でありますから、この際できるだけ明確な御答弁をいただきたいと思います。御承知のように、本年の供出農家実情考えられまして、きわめて妥当なものであつたと私は思います。しかし全国各地区別にこれを見ましたときには、相当麦の増産のために、供出以外に多量の麦が余り、現に麦のやみ相場が、大麦にすれば八百円、七百五十円というような取引も、ごく一部ではありますけれども行われておる。この際農家が金をほしさに、やむを得ず七百五十円、八百円というような麦をやみで売つておるという実情であります。この麦の供出以後の問題につきましては、今私は、ただちにここで自由販売であるとか何であるとかいうことを御答弁願いたいとは申しませんけれども、今後できるだけ早い機会に、供出以外の麦について、一体政府農民に対していかなる責任をとつてくれるか、政府はいかない方針でそれを処分させるおつもりであるか、これを明確にしていただきたい。それでありませんと、いたずらに農民が一部の商人等の誘惑によりまして、供出価格をさらに下まわつた、今申し上げるような七百五十円、八百円という価格取引を行う結果になります。でありますから、この点につきまして、政府はきわめて早い機会にこれについての明確な方針を立てていただきたい。なおこの機会に、これにつきましての大臣のお考えについて、御答弁いただければたいへん仕合せであります。
  4. 根本龍太郎

    根本国務大臣 お答え申し上げます。麦の供出割当につきましては、二回にわたりまして知事会議を開催いたしました。その席上におきましても知事側から要請の出ましたのは、まず第一には、この割当基礎が非常に不明確である。従つて作報もしくは農業調査部でございますか、あちらの方の数字と、それから地方自治団体基礎資料が違うということで一応議論がありましたが、今度の数量は大体妥当であるという点は御了承願つたと思います。  次に今の供出後の処置の問題でございまするが、現在食管法の規定に基きましてこれは他に売ることができません。従つてその反対解釈といたしまして、農民要請するところでありまするならば、無制限にこれを買い入れる、こういう方針でございまして、この点は知事会議においても明らかに言明いたしておる次第でございます。なお全体の麦の問題につきましては、先般の国会において否決になりましたけれども、先般のあの立法措置はわれわれとしては妥当なものと今でも信じております。しかし国会において成立を見ない今日、政令でやり得るからといつて、ただちに抜打ち的にやるというところまでは今考えておりません。但し情勢政令を出さなければならぬ、むしろその方を農民が要望するという空気になりますれば、その場合には考えますけれども、全体としましては、今の食管法でも無制限に買入れすることができる。買い入れるという措置で、ただいま農民方々が一部買取り業者の言に迷わされて、政府はこれ以上供出は買わないだろう、だから余るのだ、今のうちに早く売つた方がいい、こういう宣伝で、やみ価格がかえつて買取価格より下つておる。これはまことに農民のためにお気の毒でございまするから、その点を明確にいたしまして、農民の安心を得たい、かように考えております。     〔委員長退席野原委員長代理着席
  5. 河野謙三

    河野(謙)委員 政令によつてやる問題につきましては、井上さん初め当委員会におきましてもいろいろ御意見があるようでありますけれども、議論を抜きにして、実情は今申し上げたように、現に八百円、七百五十円という相場でさえも売らなければ農家が立ち行かないような実情になつておりますので、私はひとつ仮定のもとに質問してみたい。次の国会を待たず、政令によつて農民のために自由販売措置をとらざるを得ない、私はこういう前提のもとにお尋ねするのですが、自由販売になつた場合に、政府供出以外のものを買い取つたときに、昨日他の委員からの御質問によりますと、この買取り価格政府のきめた供出価格によつて買い取る、供出部分については、将来当然パリテイとなつた以上はバツク・ペイを保障する、こういうお返事でありましたが、供出以外のものを自由販売制度において政府が買い取つたものにつきましても、供出のものと同様に、パリテイ計算によつて価格をきめたものでありますから、バツク・ペイをされるかどうか伺つておきたい。
  6. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいまの御質問は、理論的には非常に筋の通つた話でございまするが、実質上、政府食管法に基いて供出制度をやつておりまするので、従つてこれにはバツク・ペイは当然やらなければならぬと思います。しかし供出後の問題につきましては、御承知のように理論的に言いますれば、飯米もしくは飼料用として保有した分という建前になりまするので、これは農民方々自己消費を節約して金銭にかえる、こういう建前だと考えられるわけでございます。その意味におきまして、供出後の政府買取りの問題についてバツク・ペイをやるということは現在のところは考えておりません。
  7. 河野謙三

    河野(謙)委員 私はちよつと意見が違うのであります。仮定の上に立つて議論でありますから、私はここで大臣に迫るわけではありませんけれども、この自由販売制度はいわゆる自由販売制度ではなくて、最低価格を保証するという思想の上に立つた自由販売であります。この最低価格とは何かと申しますと、今度の政府の買取り価格パリテイによつて計算された価格最低価格である。従つて最低価格を保障するという思想の上に立つたところの自由販売は、どこまでも最低価格を保障するという制度のもとに立つて、もしパリテイによつてバツク・ペイの必要があつたときには、自由販売によつて買取つたものもバツク・ペイすべきである、かように私は考えますけれども、この際はもう少しく研究課題として、御答弁を求めようとは思いません。  次に、私は一昨日砂糖の問題につきまして、大臣のお留守に政務次官にお尋ねしたのでありますが、食糧庁におきましては、一方にきまつておりますところの八日の登録がえを一箇年延期するという通牒を出した。これは非常に私はけしからぬことだと思います。よく役所におきまして、通牒政令というようなものは、大臣次官も知らない間に行われる。しかもこれが小さな問題でなくて、国民の生活、台所に非常に大きく響く問題を、簡単に次官大臣も知らない間にいろいろ行われるという事実は、これは農林省だけではありません、各省にたくさんあるのでありますが、今度の砂糖の問題もその例であります。大臣承知のように、登録制度には登録がえというものはつきものであります。理想から申せば、毎日々々登録の自由を得るということが国民の声であります。しかるに一箇年の登録がえさえも長いというのに、さらにこの一箇年を一方的にもう一年延期するというような措置をとつたことは、少くともこれは役所本位事務官本位行政であつて消費者本位国民本位行政ではないというよい例であります。つきましては、この際砂糖の問題につきましては、既定方針通り登録がえをやつて、そうして一箇年の経過におきまして、それぞれ自分の台所に不自由な店からは他のいい店にかえるという自由を与えるべきである。私はかように思いますけれども、この点につきまして、大臣の御所見を向いたいと思います。
  8. 根本龍太郎

    根本国務大臣 砂糖配給制度につきましては、実はもつと本質的に検討いたしております。現在の需給関係あるいは輸入状況から見まして、近き将来に、配給制度をやめて自由にしたいという方向で実は検討いたしております。但しこれには一つの難点がございます。これはほとんど輸入に基くものであります。しかもこの輸入業者がかなり金融面において困難であります。従つて輸入の面まで自由にするということはほとんど困難な情勢にありまするので、輸入政府一本でやるが、これを入札、払下げというような形で行きたいということで検討いたしておるのであります。そういう建前からいたしまして、むしろ近き将来において、全面的に配給制度をやめるという立場になるならば、現在登録がえをするということによつてたくさんの運動費と時間を費す、また時間的ずれのために御売業者その他の小売業者も相当ストツクを持たなければならぬ。その間にいろいろの摩擦が起る。こういうことで事務当局は一応これを延期したいというような気持があつたようであります。しかし私は事情をよく検討いたしました結果、ただいまの状況においては、来年の何月から全面的に砂糖配給制度をやめるという見通しがつかない今日、それを理由にして、近くやるからということで登録制度をそのままにくぎづけにするということは、ただいま河野議員の言う通りり、これは消費者立場から見てよろしくないと考えました結果、八月二十六日をもつて登録がえをいたす、原則的にこれをやるという決意でございます。但し方法については、実はいわば登録の総選挙をやるということは、事務的にはいろいろの問題もございますし、また都市においては必ずしもそれをやらなくてもいいというような部面がありまするので、その選挙方法その他については検討いたしまするが、原則といたしまして登録がえは八月二十六日からやらせるという方針を持つておる次第であります。
  9. 野原正勝

  10. 井上良二

    井上(良)委員 まず第一に伺いたいのは、本年の麦価をきめる前提となりまする産米価格決定想定米価をどうするかということが問題になり、巷間、政府の方では昨年きめた特別加算額を削除するのではないか、あるいはまた減額するのではないかというような声が非常に高まりまして、国会開会中においても、この問題は非常に重要な問題として取上げられまして、この問題に関して、先般参議院の本会において、二十六年度産米に対しても特別加算額を昨年通りつけるかどうかという質問をいたしております。これに対して農林大臣は、加算額農民既得権であるから、これはしておきたい、その率も一五%を維持したいということを明確に答弁をされております。また安本長官も、パリテイ方式が採用される限り一五%程度の加算額は必要であるということを言明をされており、大蔵大臣も、ただ指数上つて価格が相当高くなるが、しかし一五%そのまま実行できなくても、十二、三%は必要であろうということが、いずれも関係大臣がそれぞれ特別加算額必要性を確認をされた答弁をしておるのであります。ところがその後司令部側からの御意見もありまして、政府の方では、この一五%を一〇%に引下げる、これが政府の原案なりといたしまして、先般米価審議会懇談会の席上で、当面の責任者であります物価庁の方からその案が示されたのであります。さらにその後この一〇%も非常に危うい状態になつて、最近ではこれがさらにその半額五%削減をされるというような情勢にあつて、しかもそれさえ非常に危険な状況に今あるのではないかということさえ伝えられておるのであります。     〔野原委員長代理退席委員長着席〕 こういうことから考えまして、この特別加算額というものに対して、農林大臣一体どうお考えになつておりますか。私は昨年この加算額米価審議会に上程されましたときに、そういう不安定なものでもつて米価をきめるということは、非常に米価自身に対しての国民的な不安があるから、あくまで米価生産費を償う基本的な立場において算定すべきであるということを極力主張して参つたのでありますが、しかし従来政府は、現在のパリテイをそのまま米価算定方針として採用する以上、これでは生産費を償うことができないのだ、さりとて生産費を今すぐ算定ることがいろいろ困難な事情にあるので、従来農民所得となつておりましたいろいろの奨励処置、いわゆる供出に必要な政府奨励処置を全部御破算にするということは、再生産を償い得ない現状においては、特別加算額のようなものを、従来の農民所得から割り出した場合には一五%になるので、これを農民既得権として今後この方法米価をきめて行きたい。こういうことを明確に昨年は答弁をされておつた。ところが、今申し上げます通り、本年になりましてパリテイ指数が非常に上昇したという理由により、食管特別会計の赤字が予算額よりも非常に大きくなるというような理由から、この加算額を削減しようとする一方的な要求に対して、政府は何ら確信を持たず、これが農民既得権であるとして断固これを貫くところの決意が現われていないことを、私どもは非常に遺憾に思います。一体政府は、この特別加算額というものをどうお考えになつておるか。今日ではこれは農民既得権ではないというのか。昨年までは農民既得権であつて、これを基本米価加算をして米価決定したいという確信ある意見を持つておられたにもかかわらず、今年になつてはそれがくずれてしまつておるような現状であるが、農林大臣特別加算額一体どうお考えになつておるか。廣川前農林大臣は、これは農民既得権として貫きたいという言明をしておられるが、現農林大臣においてはどうお考えでありますか。この点をまず伺いたい。
  11. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいまの井上さんの御質問につきましては、実は昨日同様の問題が出ましたので、十分御説明いたしたつもりでございますが、当時井上さんがおらなかつたようでありますので、ごく簡潔に申し上げます。  米価の問題は、今御指摘のように、農村にとりましては最大の関心事でございます。従いまして、この問題につきましては、政府農林大臣のみならず、総理を初め重大な関心を持つてこの有利なる決定を望んでおるわけであります。井上さんも御承知のように、あなたもかつて政務次官としておられた当時から、米価の問題は非常に問題がございましたので、日本政府意見だけではなかなかきまらない、その点については御了承を得られることと存じます。今井上さん御自身が申されたごとくに、実はこの米価、特にバツク・ペイ特別加算の問題につきましては、日本政府一体となつてこれの有利なる解決を望んでおりますけれども、実情は相当難局にあるということは、あなたの御想像の通りであります。もしこのままにしてこちらが引下りますれば、農民が要望するところの状況にはなかなか行かない、そこで最後まで実はがんばつておる状況であります。ただしかしその折衝の内容の具体的な詳細について申し上げられない状況であることは、はなはだ遺憾とするところでありますが、その点だけはひとつ了承をいただきます。但し特別加算につきましては、私はもとよりのこと、総理もぜひこれは貫くという決意のもとに、実はこの折衝が長びいておる次第でございます。但しその筋の意見としましては、パリテイ計算方式を貫いて行く限りにおいて、これは物価の上昇がすべてパリテイ指数に含まれて来るから、特別加算という制度は理論的にはおかしい、これは純政治的な考え方だ。従つて米価、特に財政上の観点から見るならば、これは好ましくないというような考えの強いことも事実のようであります。しかし前農林大臣が明確に言明し、また安本長官も、大体同様な意味において特別加算額はぜひとも置きたいという、この方針には私になつても何らかわつておりません。政府全体としてもかわつておりません。但しこの加算率の問題については、実は加算それ自身に大きな難行を来しておるような状態でありますので、この点については、実ははなはだ残念ながら今相当困難な立場にあるということも、私が申し上げなければならぬ状況であります。しかし先日も申し上げたように、農業政策の中の一番大事な米価政策問題でございますが、農業生産現状から見ますれば、他の商業的な生産物と違いまして価格だけで一切の農村経済を解決するということはほとんど不可能です。かえつて不利になりますので、これらの加算額における不利な点は、他の諸施策によつてでき得るだけカバーし、特に特別加算の問題は、早場米なり、あるいは超過供出等によつて一番大き一なしわ寄せを受けるのは単作稲作地帯であります。これらの地区につきましては、皆様の御賛成によつて単作地帯特別措置法もできておりますので、これの予算化、あるいはまた農林漁業融資特別会計、これの資金の増大に基く、低利にして有利なる金融農民に与えることによつて、あるいはまた蚕糸の安定の措置肥料需給調整等、こういうような広汎な措置をもつて実は善処したい、かように考えておる次第でございます。
  12. 井上良二

    井上(良)委員 よく御苦心のところはわかります。ところが私はここで政府の基本的な食糧政策について伺いたいのですが、特別加算額を何ゆえに農民団体やわれわれがやかましく主張するかといえば、この加算額基本価格にプラスされるところにおいてどうにか再生産を償うにがまんのできる価格であるというところであります。もし一五%が、今政府折衝しておりますような五%に引下げられて、一〇%も削減されることになりました場合に、はたして一体日本食糧需給確保というものに確信があるかどうかということであります。これはそんなことをあなたに申し上げるのははなはだおこがましいことでございますけれども、少くとも毎年々々人口は平均百二、三十万ずつ増殖して来ます。ここにそれに伴う食糧のふえる分がやはり三、四百万石いるではないかと見ております。一方人口の増加や、工業の発展、あるいは老朽地等の関係から耕地が毎年毎年つぶれております。この関係から約百万石というものは減産の状況にある。一方人工はふえ、米はどんどん必要であるのに、耗地は逆に減つておる。この関係から年間二千万石からの米を補給せなければならぬ状況にある。しかもその裏づけである貿易はなかなか思うように行かない。その関係から、輸入食糧に支払う外貨は一年間一千万億に達する大きな金額に上つておる。そういうときにおいて、国内における食糧増産及びその確保というものは絶対条件であります。まして講和がいよいよ結ばれれば、いよいよひとり歩きをせねばならぬ日本にとりまして一番大事な問題は、国内において食糧を絶対確保することであります。しかるに政府の最近とつております食糧増産対策というものは、まつたく野放しの状況にある。これは昨日来いろいろな方から御指摘がございましたから、ここで私はしつこく申しませんけれども、第一に価格政策においてその通り、あるいはまた本年の麦の供出割当においてその通り、昨年の供出割当は、全体でもつて千九百万石の収穫見込みにおいて、約八百八万六千石の割当をいたしております。本年の収穫予想は内地だけで千九百万石を押えておる。北海道を除いて千九百万石を押えておる。昨年と比べますならば、ほとんどどつこいどつこいの収穫を押えておりながら、その割当は百万石削つておる。百万石少く割当てておる、こういう状況でございますから、その割当不足分外国から入れなければならぬことになるのです。事実上政府の手持ちがそれだけ少くなりますから、それだけ日本の金が外国に出て行くことになるのです。あらゆる輸入において、食糧輸入するほどわが国再建に役立たないものはない。食糧輸入するかわりに、鉄を輸入し、石油を輸入し、ゴムを輸入し、そうして再生産いたしまして、これを再び海外へ出すということの政策をとらなければ、日本国民全体の経済水準は高まらぬと私は考えておる。安易な食糧輸入にたよつちやならぬとわれわれは考えておる。また国内人口分布を見ましても、入口の約半分というものは農村がかかえ込んでいる。もし農業生産が行き詰まつて農民経営が破綻に瀕した場合は、これは都会へ出て参ります。そうして都会へ参りましても仕事がないとするならば、結局街頭における失業者となつて政府失業救済対策にこれがまわることになる。また一方工業生産品の需要はどんどん減つて行きます。そういう国民経済関係から、国民人口分布関係から、農業生産が非常に大事な経済条件の上に立つておるということを考えました場合、その農業生産物価格保護政策をとつて行くということは当然であります。それを貫かなければ今の日本として成り立たないです。一体大臣現状のような農業生産状況でいいとお考えになつておりますか。たとえば肥料問題、電力問題、あるいは飼料問題、あるいは農機具対策等を見ても、どれ一つとして農民の納得するような対策は立てられておりません。今度の電力値上げという問題に対しても、もつとあなたの方で積極的に――農業用灌漑排水方面、これに対しては一体政府はどうしようとするのか、また肥料値上げのはね返りによつてつて来るものはどうしようというのか、そういう点から、あなたのほんとうのわが国における食糧増産自給対策というものについて、不安のない御意見をひとつ承りたいと思います。
  13. 根本龍太郎

    根本国務大臣 今るると御意見並びに御批判、さらにそれに加えて質問がありましたが、食糧自給態勢を強化するということは、お説の通り日本自立再建のために最も大事なことであります。その意味におきまして、諸般の政策をやつておるのでございますが、これに関連してひとつ私申し上げたいことは、本年の麦の割当が昨年より百万石減つておる。従つてそれだけ外国食糧輸入することになりますので、非常に不利だ、こういうような御指摘でありますが、これは御承知のように、今まで農民の各位から飼料の問題と自家飯米の保有について非常に強い要請があるのであります。食糧問題は同時に特に蛋白資源――現在農家経済が安定を目ざしておるのは多角形経営であり、その中には有畜農業奨励ということが盛んに言われておりましたが、飼料問題で非常に困難をいたしておつたのであります。幸い本年は輸入食糧見通し、さらに国内米麦産、これらのものを見合せてみまして、この際に農民の要望する飼料問題をある程度解決したいということと、それから農民が今までは国民食糧の非常に足らないことに犠牲的に、いわば自家用飯米まで相当削つて出しておつた、こういう実情にありますので、やはり腹が減つて生産ができないという観点から、実は相当考慮して、この麦の供出については慶民の意向を入れてやつたつもりでございます。  それから輸入食糧日本貿易バランスの面において、非常に遺憾な点である、その通りであります。大体現在の推算に基きますれば、砂糖油糧原料、さらに主食、これを合せますと、一年約六億ドルの外貨が必要となるのであります。従来はガリオアで入つてつたために、外貨資金でそれほど困難でありませんでしたけれども、将来これが全部コマーシヤル・ベースになることになりますと、外貨割当上、相当困難な問題になるのであります。その意味におきましても、どうしても全体の貿易バランスの面はもとよりのこと、さらには日本食糧を、いざという場合に――現在は安定しておりますけれども、また国際情勢必ずしも楽観を許さない今日、でき得るだけ食糧自給態勢を強めたい、かように考えております。その意味おきまして、土地改良なり、あるいはその他の面において、強力なる施策をいたしたく考えておるわけでありますが、しかし今急に一、二年のうちに全部自給態勢をとるという段階には困難でありますので、現政府におきましては、大体十箇年計画で二千五百万石程度の増産をはかるという意味において、実は農林省の現在の構想といたしましては、十箇年間に約七百億円程度の資金、そのうち約半分は政府出資に基く金融措置もしくは財政投資が必要でないか、これを年次的に財政の許す範囲内において実現したい、かような考えを持つておる次第でございます。
  14. 千賀康治

    千賀委員長 井上君に御注意しますが、もうお約束の時間を経過しつつあります。どうかすみやかに結論に入られたいと思います。
  15. 井上良二

    井上(良)委員 最後に、さきに大臣は、特別加算額農民既得権として確保してやりたい、こういうお話でございます。これはまことにけつこうな答弁でありますが、しかし中身をあけてみると、実際は加算額という名前だけで、一五%が五%に削られておる、あと残つた一〇%はどうなるか。私どもしろうと考えで概数の計算をいたしましても、この一〇%を削減されるということによつて、昨年度の計算通りで計算をいたしましても、少くとも農家の欠損は二百二、三十億になりはせぬかと考えております。二百億というものが、農家のふところから、まつた政府の努力の足らぬ結果、マイナスになつちやうのです。二百億と申しますと、農業所得税の約半額に匹敵する大きな金であります。それを政府の方で特別加算額は獲得したが、あけてみたところがたつた五%だ。あと一〇%の約二百億に相当する大きな農家所得がふいになつてしまつた。しかも何らその裏づけをなさずに、一方その逆に電力は値上げされるわ、肥料は上つて来るわ、飼料は上つて来るわ、農機具は上つて来るわ、ますます農家経済の困雑な事情になつて行く現状にあるのです。だからあなたがどうしても加算額を貫きたいというならば、折衝の上でいろいろ困難な事情はあることは了といたしますので、そこで今あなたがおつしやるように、国内食糧の飛躍的な増産をはかるために、少くとも国庫から約三百億をつぎ込もうという大きな決意を持たれているあなたといたしましては、この一〇%を削られておる二百億を、それじやしようがないから別の方で、たとえば単作地帯対策としてこうする、あるいは四国方面にあります段々畑の対策にこうする、あるいはまた塩害、――地震その他によつて非常に陥没しておるこれらの地域に対しては、こういう方面の対策を打つ、そうして全体で食糧をこれだけ増産する、この二百億を別に生産面に振り向ける、あるいはまた政府は近く過燐酸の補給金をぶち切ろうとしておる。そうしてもしこれをぶち切れば、当然ぶち切つただけは余ります。
  16. 千賀康治

    千賀委員長 井上君、時間が来ましたから結論をお急ぎ願います。
  17. 井上良二

    井上(良)委員 そういう関係から、たとえば過燐酸に対する補給金はこの際大蔵省に、司令部の考慮を願つてこの補給金は二年度の予算にも計上する。そして電力料金に対しても、特別にひとつこの際農業電力として割引を認めますとか、あるいは電力料金の値上げによるはね返りについては、肥料会社その他に多少無理をしてでも値上げをできるだけ食いとめて、実質において約二百億に相当するものが農家のふところに入るというような、ここに裏づけ対策が明確になりませんと、農民は納得しませんぞ。これをあなたはどうお考えになりますか。この点を伺いたい。
  18. 根本龍太郎

    根本国務大臣 お答え申し上げます。特別加算の問題については、昨日以来いろいろと申し上げまして、総合的な施策で全体の農業生産の増強と経済の安定をはかる、こういう考えでございます。但し今それについてどの程度の予算を単作地帯につぎ込むか、あるいはまた農業災害にどれくらいをつぎ込み、さらにはまた肥料需給調整、こういうものにやるかということは目下検討中でございますので、この点を明確に申し上げる機会ではございません。なお電力料金値上につきましては、われわれも反対の意思を明確に示しておるのでありまして、特にこれは政策料金としてぜひやつていただかなければ、農業生産に非常に阻害を及ぼすという観点に立つて、十分に公共事業委員会の方にも申し上げております。また肥料の問題につきましては、これは補給金を存続するかどうかということは非常に問題でございまして、むしろ需給調整によつて全体の肥料の配分と、それから価格の安定をはかることが適当ではないか、かように思つておる次第でございます。
  19. 千賀康治

  20. 横田甚太郎

    ○横田委員 占領下の奴隷的な論争では、一向に日本の農業問題の解決はできないので端的に伺います。昨日今日迄の質問といい、答弁といい、非常に政府の都合のよいところに引きずり込んでの論争だと思う。たとえば農林大臣がこれは供出問題だ、価格問題だと、別々に分けていうが、それはでたらめな論議だ。日本の農政はそんなことで論議できる軌道に乗つているかどうかということを私はまず伺いたい。たとえて申しますと、ここにこういう例がある。これは東京朝日に出た東京都内米飯店の米を扱つた米の記事である。これによりますと、米を食わす場合には、食わした御飯と引きかえに券をもらわなくちやならない。そうして都に券を届けなくてはならない、その券が一つも来ない。これが一軒や二軒ではない。ここに出ておりますのは東京都の食糧課の調べなんですが、都内の米飯供給店は、十一日現在で約九千五百軒に達した。同課の推定では六月中に米飯店業者より入手した外食券は最低約三百万枚あるだろう、業者が米ととりかえた場合、この券は翌月の十日までに都へ出すことになつておる。ところがこれが一つも届けられておらない。しかも米を食わす営業はやつておる。これはやはり米を食わしているのだ、決してアメリカから日本人好みのよい米が船に積み込まれてたくさん来たはずはない。日本農村から出た内地米だ。こういう事実が出ている。この三百万枚の米というものがあるということを認められるか、あるとすればそれはどんな米か、こういう米がありながらこれを除外しておいて、価格論争だとか、供出論争だとかいうようなことを言われるのは実に大それた考えだと私は思う。もう一つはこういうことを言いたい。自由党は統制経済がきらいだ、自由経済が好きだ。それを一ぺんにはできないから民営米屋をこしらえた統制と配給を緩和したとこう言われるのですが、民営米屋ができてから、一方では三百万枚のやみの券によつて白飯をたらふく食つている人があるにかかわらず、一般家庭では一体どんな現状ですか。必要ならば見本を見せますが、大阪で見ました配給米は食えない外米が入つている。石が入つている。この配給米には大阪府庁の経済課自身が非常に困つてつた。しかも吹田においては、こんな米は食われないからといつて米屋に交換に行つた。以前であるならば、悪い米であるからかえてやろうと言つたときに、配給を受けておる人たちは、これをただちにかえてもらう運動が起つたのだ。ところが近頃はいよいよかえてもらうということに話合いができておるにもかかわらず、この米を持つてかえに行けない。なぜ行けないかといえば、一般家庭では一日のうち一食しか米の御飯を食つていない。たしか安孫子という政府委員席のまん中にすわつている長官はこういうことを言つた日本人にはたしか内地米を一ケ月十五日間食わしておる。外国の米は五日間食わしておる。だから内地米は一日一回半は食えるはずだと言つておるが、一回しか食つていない。一回だつたらまだよい方です。米は食つていない。そこであなたに伺いたいのは、配給公団というものをやめにして、そして米屋が扱ふやり方にかえた配給にした、こういうようなことを言つておりながら、この政策の実際は片一方においては、東京都だけにおいても三百万枚に余るところのやみ食糧の大輸送をさしておいて、片一方では食えない米を配給する。これで一体米価論争なんか議会でできるか、この三百万枚の券に相当する米は一体どこから運んでいるのですか、農林大臣はこれを運んでくれることを農民の健全な姿だといつて喜んでおられるのですか、その点について伺いたい。
  21. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいまの横田さんの議論はどうもわれわれの常識をもつて考えられないことであります。ただ一つだけ申し上げたいことは、あなた方が非常に尊敬しているところのソ連、中共、北鮮において、価格の問題がはたして農民と協同してやられているかどうか、またこれが強権によつて生命の不安のもとにやられていないかどうか、この点をあなたに反問するだけで、あとは食糧長官からお答えいたさせます。
  22. 横田甚太郎

    ○横田委員 日本共産党がなぜソビエト共産党や北鮮共産党のやつたかやらないかわからない政策責任を負わなければならぬのか、大臣の頭が狂つていないか、考え直せ、まだ自由党の政調会から討論会に来たつもりか、あの答弁は何だ、ばかなことを言うな。     〔横田委員離席〕
  23. 千賀康治

    千賀委員長 横田君に注意します。議席でやるべし。
  24. 横田甚太郎

    ○横田委員 米価問題をやかましく言いますと、それが共産党の言い方がきついのであつたら、吉植庄亮さんあたりの調子で行きましようか。これによりますと、この追放された吉植さんが、非常に米価の問題で、あなたたちの政策並びにそれをひつくるめてぜんぶを皮肉つておるのですよ。それによりますと、これは米価審議会懇談会の席上において、大体米一石が七千四百八十四円もらわなければいけない、ところが六千七百九十円に下つてしまつた。そうすると、差引六百九十四円マイナスになる。そういたしますと、供出米がかりに三千万石出るとして、農村へ入るべき金は百八十八億二千万円の金なんです。これが六千万石の供米だと三百七十六億四千万円の金が農村に入るのが入らないことになります。そこで私たちは価格問題をやかましく言う。あなたは価格問題と供出問題は問題が違うと言われるのですが価格問題が合理的に片づいて供出制度というような必要があるか、特に強権を伴つた供出という必要があるかということをお聞きしたい。だから私たちの聞きたいことは、大臣価格の問題で農業問題を片づけようとはしないというようなことを、きのうから阿呆の一つ覚えのように言つておるのであります。ではこの価格の問題のほかに何を片づけるかというと、補給金を出すと言われる。その補給金を一体幾ら出せばいいかというと、正確な額が出てない、なぜ出ないというと、日本の米がだんだん上つてつて外国の米にさや寄せして、価格が同じになつて行く、これではどうしてもやつて行けない。これがはつきり価格の面に現われて来る、これを国際価格より安く生産して行くようにして行かなければならぬ要請がある。それができない、その一例がここに出ておるのですね。たとえばパリテイがあなたたちの希望を実にはかないものにしてしまつて、九月に二五〇になつたとします。それに一五%の特別加算額が加わりますと、トン当り百四十二ドルとなります。シヤム米は正米にいたしまして、大体横浜の沖渡しなのですが、百四十五ドルになります。エヂプト米が百四十三ドルになります。そうすると値段が非常に接近して来る、わずかにその差が三ドルから十一ドル。しかし日本の場合は黒い米です、相手の場合においては正米と云う白い米なのです。そこでここに日本農業が米をつくるためのたくさんの生産費を費しておる弱味が出ておる、これをはつきり出したときにあなたのお答えになつたところの補助金をこれだけ出さなければならないという額が出て、この額をアメリカに強く主張できる。ところがあなたたちはそうではないのでありまして、農民をごま化すだけのことを考えておられる。これは国会図書館から出ておるものの中から拾つた言い表わし方です。「農林省側が食糧価格面から検討を行つているのに対し、安本側では賃金ベースと一般物価の均衡を中心に考え、大蔵省では予算を基礎としておる点から夫夫主張を異にして意見の一致をみなかつた。」そこへある筋がつけ込んでいるのです。だから非常に米の値段がきまり得ない。この三つの主張がある場合に、どの主張を貫くのが正しいかということをあなたに伺いたい。あなたたち政府の人たちは米の値段をきめる場合に、純然たる農民に聞かずして、繊維の宮島あるいは鉄鋼の長野に聞いて、その長野や宮島は、大体二五〇くらいのパリテイで、米価が七千円余となつても資本家としてはやつて行けると言つた。それを関係方面に押えられている。この問題で占領下四年も五年も押えつけられ続けている。そんなことで何でわれわれがやつて行けるかということであります。そこで大臣のなまいきな答弁それに対するこちらの出方もありましたので、少し長くなりましたが、この三つの主張、農林省の主張、安本の主張、大蔵省の主張、この主張のうちのどれを貫くのが正しいかということを、はつきりと大臣の信念として伺いたいのです。
  25. 千賀康治

    千賀委員長 先ほどの横田君の言論の中に不穏当と認められる箇所が多々ありますから、これは速記録を調べました上委員長において適当な措置をとりたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 千賀康治

    千賀委員長 異議なしと認めます。さようにいたします。高倉定助君。
  27. 高倉定助

    ○高倉委員 先ほどから各委員会から米の価格並びにバツク・ペイの問題が出ましたが、私はこれに関連いたしまして二十五年度産の大豆を主とする雑穀類につきましてお尋ねしたいと思います。本年の三月にこれらの豆類は統制が撤廃となりまして、その後農家より供出いたし、政府において買上げたものが、現在買上価格をはるかに上まわつておる。政府は第一回、第二回、あるいは第三回を最近やつたかわかりませんが、業者にこれらの相当数量を払い下げておるのであります。ところが雑穀の主産地でありますところの北海道におきましては、過般業者に払い下げたものを見ますと、一俵六十キロ入りの豆、大豆は別ですが、菜豆類、これは実にマル公で生産者より買い上げた価格の約倍ないし小豆のごときは三倍になつておるのであります。でありますから、これらをめぐつて政府は思わざるところの利得をしておるのであります。すなわち差益額に対しましては、保管料その他の所要経費を控除したる剰余額一切の差益金は、当然供出制度において供出したのでありますから、これは供出したところの農民に返還することが至当であるかように私は考えるのでありまするが、これに対してどういうようなお考えであるか、これを伺いたいと思います。この雑穀は、主として主食としてわれわれはこれを供出したのでありまして、これを国民に米麦と同じように、主食としてマル公の価格で配給したのではありませんで、これは農民はマル公の価格供出し、これが国民全体に主食として配給でき得るものであるというところの観点から供出した。ところがこれが業者に競争入札によつて払い下げられた。落札したところの業者は、これによつて相当の利潤を得ておるのである。今二十五年度産の買上げた雑穀の中の大半を占めるところの大豆は、大体にマル公で工業用あるいは加工用として業者へ払い下げられておるのでありますが、これは差益金はあまりないようであります。その他の雑穀は相当以上に思わざるところの差益があつたことは、過般食糧庁の経理課において調べました本年度におけるところの雑穀の特殊売却実績を見ますと、一万六千余トンの雑穀を四億三千二百余万円で売却しておる。それから農家より強制供出で買いとつたところの価格は三億六千七十万円くらいであります。この差益額がわずか一回払い下げしましただけでも七千百八十五万円の差益利潤を政府がとつておるのであります。さらに現在政府が手持ちしておりますところの雑穀について、ちよつと計算いたしましても大体に七億五千万円ぐらいの差益金があるように思うのであります。現在政府の手持ちの雑穀は大体十四万七千トンくらいあると思いますが、これらは全国より供出したものであつて、北海道ばかりではありません。過般払い下げましたのとにらみ合せまして計算いたしましても、七億円以上になると私は思うのであります。もつとも今後いろいろと経済界の変動あるいは需給関係で、多少安くなるといたしましても、最小限度見ましても、五億円くらいの差益金が出ると思うのであります。さきに申し上げましたように、米麦等は国民に配給したので、消費者との関係も出て参るのでありましようけれども、この雑穀を供出した当時におきましては、先ほど申し上げましたように、生産者は国民全体にマル公で配給されるのであるという前提のもとに、強制的に供出をされたのであります。この差益金が今日あるといたしましたならば、これは私はこれらの生産者に返還していただくことが当然であると、かように考えるのであります。それで自由販売になりましてから、これらの多くの雑穀が業者に払い下げられたのでありますが、業者はこれを製菓用あるいはその他に使いまして、相当のもうけをいたし、同時に政府業者に払い下げて相当のもうけをしておるのであります。かような状態でありましたといたしますならば、ばかをみるのは農家だけであります。これらはぜひこの際生産農家へ返還していただくことが当然であると考えるのでありますが、これに対して大臣はいかなるお考えであるかをお伺いしたいと思います。
  28. 根本龍太郎

    根本国務大臣 お答え申し上げます。主食の第一回に供出いたしました雑穀につきまして、その差益につきましては、損したものもありますし、得したものもありますが、全体として総合的な立場からして、これはバツク・ペイする立場をとつております。
  29. 高倉定助

    ○高倉委員 バツク・ペイの問題と差益金は全然違うのです。
  30. 根本龍太郎

    根本国務大臣 いや、そういう意味ではありません。差益についても考えております。詳細は食糧庁長官から……。
  31. 千賀康治

  32. 宇野秀次郎

    ○宇野委員 ただいまの国政は、諸般にわたつてきわめてむずかしい問題が多いのでありますが、とりわけ農政の問題は非常にむずかしい問題がたくさんあるということは、昨日大臣は就任のあいさつで述べられたのであります。そのうちで、例として米価の問題を取上げてお話になつたのであります。すなわち農民は高く買つてもらうことを強く要望する。消費者はこれより高いことは困るという大きな矛盾があるわけであります。この矛盾を適当に、すなわち農民をしてある程度の納得を得せしめ、消費者をしてこれまた納得を得せしめるというところに、政治があるわけであります。根本農林大臣が御就任なすつて、新米穀政策をお考えになつておるわけなのでありますが、この二つの矛盾の間に、政府としての財政的措置というものが入つて、初めてほんとうのいい政治ができるのではないかと私は思う。そういう意味で、実はよほど前の案ですが、四月二十日、周東安本長官が西下の車中談で、食糧消費者価格の値上りを防止するために、現行の輸入補給金のほかにも、一般会計と食管特別会計の調整による特別の財政措置をとるよう考えておるというようなことを言つておると発表された。私はその当時、非常にこれはわが党内閣としていい考え方であると思つてつた。ところがだんだん押し迫つて、今日の情勢から行きますと、あくまで食管特別会計は均衡予算で、自まかない、独立採算制で行く傾向が強くなつて参りまして、いろいろな方法考えておられるようでありますが、私はこの食糧関係が均衡予算であるということに対して、実は不満を持つておるわけであります。たとえて言えば、わが政府が、はたして均衡予算をとつておるかと言えば、とつておらない。輸入食糧に対しましては、今年度も二百二十五億という価格差補給金を出しておる。こういうことは、輸入食糧に対しては、一般会計から相当の額を負担してやつておるという二重価格制をとつておる。こういうふうに一方でとつておるのですから、今日のごとくパリテイも上つて、非常にむずかしい段階に達しておるときにあたつて、適当なる財政的措置というものをお考えになるべきであると私は思つておるのであります。すなわち消費者立場からいたしましても、この一月の東京都民の生活状態を調査したものによりましても、現にこの一月で世帯の生計費の負担力というものは一〇%が赤字である。今日でもおそらく一〇%以上の赤字を出しておると思う。そうすると消費者価格は一銭ももう上げられないという段階にあつておる。先ほど大臣は、政府の総合施策によつて、すなわち税金その他の方法によつてこれをカバーするとおつしやるが、私はこれは万全の策ではないと思う。というのは、税金を負担しておらない自由労働者その他の最も零細なる国民も多数おるのであります。これらにとつては税金の加減は何らの利益にならない。すなわち消費者価格というものが一銭でも上ることが、決定的、致命的に生活を窮乏に追い込むゆえんなのでありますから、総合的施策で万全を期することは私はとうていできないと思う。結局万全を期するためには、政府の財政措置というものを適当に織り込む、すなわち二重価格制というようなことを、断然とるべきじやないかと私は思つておるのであります。これらに対する、すなわちこの困難なる米価決定に対する新農相のお考えを伺いたいと思います。
  33. 根本龍太郎

    根本国務大臣 大体の構想は賛成でございますが、御承知のように、均衡財政の建前から、若干そこに困難な問題がありますが、インヴエントリー、フアイナンスに対して、一般会計から繰入れることによつて、ただいま問題になつておる特別加算あるいはバツク、ペイの問題を解決しておる次第でありまして、これはある意味において若干二重価格制を加味しておるといわれるわけであります。但し消費者価格生産価格を同一にして、その差を全部一般財政でになつたり、あるいは他のいわゆる財政支出でやるということは困難でございまして、これは財政の建前から、今その点ははつきりと消費者価格生産価格を同一にして、しかもその差額を財政負担をすることは困難であるということだけは、御了承をしていただきたいと思います。
  34. 宇野秀次郎

    ○宇野委員 今のインヴエントリー・フアイナンスで一部財政措置をとるということは、それはまことに当然のことで、でき得ればインヴエントリー・フアイナンスの量を、これは見様一つだと思うのでありますが、十分大幅に決定さるべきものだと思います。  次に輸入食糧の問題であります。本年度の予算においては三百二十万トンでありますか、予算として予定されておるように見るのであります。私は現在の需給推算の上において三百二十万トン必要であるかどうかということを疑う一人なのであります。昨年の輸入数量等も、大体予想は二百八十三万トンくらいのつもりであつたらしいのが、前年の契約も入れて、四百万トン近くのものが入つたのじやないかと思います。これは特に食糧庁長官にお伺いいたします。かように今日の世界のいろいろな情勢のもとにおいて、とり過ぎる、あるいは買い過ぎる傾向があるのではないか、こういうように考えるのでありますが、これらに対して本年度三百二十万トンを予想するという根本的な考え方について、一応お聞きしたい。
  35. 安孫子藤吉

    ○安孫子説明員 三百二十万トンが多いか少いか、これはいろいろ見方があるかと思います。私どもといたしましては、終戦直後の窮乏いたしました食糧事情考えますと、やはり国内生産力の増強もさることながら、輸入につきましても、できるだけたくさんゆとりを持ちまして入れたいという気持がございます。従つてこれをぎりぎり詰めますれば、あるいは二百八十万とか二百四十万という数字も出るかと思いますが、そこはやはり若干の安全を考えまして、三百二十万トンという数字を出しておるわけでございます。輸入実績を申し上げますと、四八アメリカ会計年度で二百八万トン、それから四九アメリカ会計年度では二百四十七万トン、五〇年では三百二十四万八千トン、さような数字でございます。
  36. 宇野秀次郎

    ○宇野委員 なお昨年の輸入実績並びに今年、今までの輸入実績等は、ひとつ表で見せていただきたいと思います。  さらに時間もありませんので、最後の結論的の大きな問題を大臣にお尋ねしたいのであります。前農林大臣の廣川氏は、今から一年少し前に就任した当時、麦は自由販売にする。それから米の問題も、二十六年度からは自由販売考えておる、というような朗報を出したことを私は記憶しておる。今日になれば単なる朗報で、不実行居士に終つたのを遺憾に思うのでありますが、私は輸入状態から考えたり、あるいは日本食糧増産意欲をさらに起さしめて、自給度を上げるというような意味からいたしましても、新農相としては朗報があつてもいいんじやないかというように私は思います。すなわちもうこの段階においては、米に対しては十分再検討をして、昭和二十七年度とおつしやらなくてもいいが、これらに対して根本的に自由販売、すなわち生産に対して政府最低価格を示して買上げをするということをあくまでやつて、半統制、半自由というような形をお考えになるべきときだと思う。私はそうすること自体がこういつたような生産者と消費者との価格の問題等もありませんし、特にまたこの中間経費というものがただいま非常に厖大です。これは自由経済時代においてはわずかに一割ないし一割五分と言われておつた、今日では数割になつておる、これらのことも解消されまして、真に農民としてつくつたものが売れた値段から考えても納得できると思う。こういうことが私は農民生産意欲に大きなプラスになると思うし、こういう時代になつておるのじやないかと思うのでありまして、私は農林大臣にこういつた食糧政策に対する大きなお考えを持つていただきたいと思いますが、この点御腹蔵なく聞かせていただきたいと思います。
  37. 根本龍太郎

    根本国務大臣 根本的な考え方は私ども同感であります。但し現在の状況においては、これは金融の問題その他輸入確保の問題、いろいろの問題がございますので、近き将来におきまして需給調整法に基く販売の自由というところまでは、まだそこまでの結論は出ておりません。これは国内情勢と国際情勢見通しが大事であります。もしこれが誤りますというと、一般国民に及ぼすところの食糧不安、従つて同時に産業に対する大きな影響がありますので、これは慎重に研究の上、確信を持つたときに朗報を出したいと思います。今朗報の作成のために検討しておるところでございます。     ―――――――――――――
  38. 千賀康治

    千賀委員長 小林運美君から緊急動議の要求がありますから、発言を許します。小林運美君。
  39. 小林運美

    ○小林(運)委員 わが農林委員会は、現在日本農民が非常に重大な関心を持つておるこの米価問題について、三日にわたつて審議を続けて参つたのでありまして、政府の意のあるところもわれわれは大いに了承するのでありますが、この追加払いの問題については、政府もしばしば公約をしておる。それに対して政府も、誠意を持つてやりたいということを、この委員会でも明らかにしておられます。しかし特別加算の問題については、なかなか困難の問題もあるというような事情もわかりますけれども、われわれ農村立場に立つてみれば、やはりこの問題はただ単に政治的な問題というようなことだけではないのだ、実質的にこれが盛られなければどうしてもやつて行けないのだ、こういうような意味もありまして、われわれはここに三日間にわたるわれわれの討議の結果を一つの決議案にまとめたいのであります。先ほど来農林大臣並びに食管長官からいろいろ御答弁もありましたけれども、これを要約いたしますと、結局追加払いの問題と特別加算の二つになるのでありますが、その他いろいろ麦の対米比価の問題もあります。しかしこの問題を要約して、二つにして私はここに決議案を上程したいと思います。一応決議案の案文を朗読いたします。   米麦価に関する決議案  一、米麦供出追加払の実施は現行パリテイ制度の上において当然のことである。    政府は昭和二十五年度産米麦の追加払を公約により即時支払うべきである。  一、政府は昭和二十六年度産米麦価を決定するに当り昭和二十五年度米価決定方法従つて基本米価に十五パーセントの特別加算を加えること。  右決議する。 これを本委員会として決議したいと思いますから、満場の諸君の御賛成を得たいと思います。
  40. 千賀康治

    千賀委員長 お諮りをいたします。小林君の動議に御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 千賀康治

    千賀委員長 御異議なしと認めます。小林君の動議の通りに決議になりました。  なお右の政府に対する参考送付その他の手続は委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 千賀康治

    千賀委員長 御異議なしと認めます。さようにとりはからいます。     ―――――――――――――
  43. 千賀康治

    千賀委員長 なお米価問題につきまして熊田物価庁次長も来ておられますが、この方に対する質問があれば発言を許します。
  44. 足鹿覺

    足鹿委員 安本長官は本日おいでにならぬですか。
  45. 千賀康治

    千賀委員長 出席がありません。
  46. 足鹿覺

    足鹿委員 そうしますと、熊田次長で御存じの点があつたらこの機会に御発表願いたいのですが、昨日の新聞紙に、この加算額の問題その他について、安本長官関係当局との交渉の概要が出ておつたと思います。この点につきまして、熊田次長はその会合に一緒においでになつたと想像するのでありますが、もう少しその内容について、この際御発表願えたならばお聞かせ願いたいと思います。
  47. 熊田克郎

    ○熊田説明員 安本長官は、きようは予算の問題についていろいろ検討中なものですから、三時ごろにはおいでになるはずだつたのですが、まだおいでにならないのです。ちよつとお断り申し上げます。  それから昨日の新聞に出ている司令部との交渉経過でありますが、私は出ておりませんので、新聞がはたしてどういう程度までに正鵠を得ておるかということまではわかつておりません。
  48. 足鹿覺

    足鹿委員 おわかりにならねばいたし方ありませんが、そういたしますと、安定本部としてのバツク・ペイ特別加算の問題に対しては、先刻来根本農相からも、いろいろと農相としての御見解を発表になつたわけでありますが、結局農相の御主張のごとく、また農民の要求に当局がこたえられるということになりますと、財政的な面、また一般物価の面、賃金の面等で、安定本部の立場というものは必ずしも一致しないではないかというふうに世間では見ておるのであります。この点について先刻来の農林大臣の御所見というものは、おそらく農林大臣としての御所見が中心であつたと私お聞きしておるのでありますが、この問題については経済安定本部の御主張というものは、農林省と必ずしも一致しておらないように、私どもは従来聞いておるのであります。一五%の加算額が五%説に切りかえられる、しかも当時においては一〇・二%の案を安本案としての案としてわれわれは聞いておつたのでありますが、それすらもすでに五%に切下げられようとしておるのでありまして、その点については、経済安定本部として物価との関連あるいは賃金との関係、すべての物価体係との関係においては、根本的にどのような御見解を持つておいでになりますか。昨日来安定本部長官のおいでを待つておるのでありますけれども、お見えになりませんので、この機会に次長から、安定本部としてのこの加算額の問題について、特に御見解をお聞きしておきたいと思うわけであります。
  49. 熊田克郎

    ○熊田説明員 お答えいたします。第一の問題のバツク・ペイあるいは特別加算額の問題については、最初のうちはいろいろ各事務当局その他の考えはあつたかと思うのでありますが、しかし最後においては、もとより他の各省と意見が一致しておるということは申すまでもないことであろうと思います。ところでその後の、あるいは最近出ている五%がどうであるか、特別加算が減らされるかどうかというような問題は、それはどこかの意見でありまして、いまだなおそういうところには至つていないかと思うのであります。はつきりしたどうこうということは、今申し上げることができないと思います。  ところでこれらのバツク・ペイ及び特別加算が、バツク・ペイをそのまま払い、特別加算を出した場合において、消費者価格に影響し、あるいは物価、賃金に影響する、こういう問題は重大に考えておりますのでありまして、その点については先ほど農林大臣からお話がありました通り、あるいは財政的な一般会計からの負担をどうするとかいろいろな点で考える。さらに消費者価格が上る問題については、そのとき減税であるとかいろいろの問題について御考慮になるということで、あるいは物価、賃金のはね返りをなるべく少くするということを考える。それらの点についても各省とも一致したことを私は申し上げておきます。
  50. 足鹿覺

    足鹿委員 端的にお尋ね申し上げますと、当初一五%案が出たときに、三相会談その他で安定本部が中心となつて一〇・二というものに大体意見を一致せられた、こういうふうに伝えられておるのであります。その点について現在もなお安定本部としては物価なり賃金なりその他すべての点を勘案して、一〇・二というもので押して行く御方針であるかどうか。いろいろなことを聞きたいのでありますけれども、端的に、現在の御所見はどうであるかということを明らかにしていただけばけつこうであります。
  51. 安孫子藤吉

    ○安孫子説明員 経過を申し上げますと、当初いろいろ意見はありましたけれども、日本政府案といたしましては一〇・二という数字で出しております。これは予算に織込み済みの金額であります。これは若干財政と調整をとつた意味において、安本といたしまして国内的に裁定いたしましたその案で出ておるわけであります。その後の経過については、新聞で御承知通りいろいろな問題に波及いたしまして、いまだ決定を見ておらぬわけであります。大体日本政府原案をどうしても了承してもらいたいということで、各省足並をそろえてただいま折衝をいたしておる最中であります。
  52. 井上良二

    井上(良)委員 先ほど時間がなかつたので言わなかつたが、この際特に大臣に一言だけ伺いたい。大事な問題ですが、それは今決議されました追加支払いの問題であります。これはいろいろな御都合で非常に遅れております。これはどうせ政府は支払うということにきまつたのだし、司令部も了解をしておると思いますから、至急に払うということを実行できないものですか。その点について、農林大臣の腹を割つたはつきりした御意見を、この際伺つておきたい。  それからもう一点、さいぜん食糧長官に伺うのを忘れておりましたが、最近の需給推算というものが一向わかりません。特に七、八、九の端境期の需給推算がわかつておりましたならば、あとで書類だけでもひとつお出しを願いたい。
  53. 根本龍太郎

    根本国務大臣 簡単に御説明申し上げます。特に農村におきましては、お盆前にどうしても金が必要なので、われわれはできるだけ早く支払いたいと思つています。但し米価という基本問題がきまらないと、事実それが根本なので、それで実は一方においては有利に、しかも早くということであせつておるのでありまして、何とか間に合うように努力中でありますので、御了承を願います。     ―――――――――――――
  54. 千賀康治

    千賀委員長 遠藤君から決議案について発言を求められております。これを許します。
  55. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 私は昨日の委員会で、主要食糧の検査問題がきわめて重大である。政府はその用意をしておるかどうかということについていろいろ長官とも質疑応答を重ね、さらに検査課長ともこまかな論議をしたのでありますが、私は検査問題の重要性にかんがみましてここで委員会の決議をしていただいたらどうかと思うのであります。  決議案を朗読いたします。    主要食糧検査に関する件  農産物の検査は今後の食糧増産並びに農業問題として、極めて重大なる意義を有している。  よつて此の際、政府は速かに左の措置を講ずべきである。  一、主要食糧の検査については、独立持算制に拘泥することなく、相当額の一般会計よりの負担を為し、検査機種の充実を図るとともに、検査手数料の低減を図ること。  二、現在の検査機構は、食管特別会計による検査であり、買手たる政府の御都合主義による検査に陥る弊がある。政府は、検査機構を食管特別会計より独立せしめ、充実した検査所を設けて、これを一般会計の負担とし且つ農産物の検査の統一性を保ち得る様な機構とすること。 以上であります。
  56. 千賀康治

    千賀委員長 ただいまの遠藤君の御発言に御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 千賀康治

    千賀委員長 御異議なしと認めます。よつて農林委員会の決議となりました。  本決議案の政府に対する参考送付その他の手続は委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 千賀康治

    千賀委員長 御異議なしと認めます。さようとりはからいます。     ―――――――――――――
  59. 千賀康治

    千賀委員長 次は林業に関する件を議題といたします。平野三郎君。
  60. 平野三郎

    ○平野委員 米価問題が当面の重大問題となつておりまして、熱心な質疑が行われておりますが、重大問題は米価問題だけではございません。およそあらゆる国政に関する問題ことごとく重要ならざるものはないのでありますが、ことに国土の面積の八割を占めておりますところの林野の問題こそは永遠の重大問題であるのであります。特に日本の歴史が始まりまして以来、今日ほどこの問題が、国家的に見まして重大なる時期に際会しているときはないと考えるものでございます。この点につきまして、私は根本新農相にきわめて簡単に御認識と御抱負を伺いたいと思うのでございます。  最近におきまするところの日本に発生いたしまする風水害その他の災害はきわめて甚大なるものに上つておるのでありまして、その被害もおそらく年々数千億に達しております。またこれに対する災害復旧費も、予算の面からだけ見ましても、中央地方を通じまするならば、一千億円以上も支出をせられておるというような現況にあるのでありますが、この重大なるところの原因としては、この国土の大半をおおつておりまするところの森林が著しく過伐せられておるために、それがかくのごとき事態の重大要素となつておることは、これはもはや議論の余地のないところであります。これは実に、戦争中並びに終戦以来木材の需要がますます激増いたしておるにかかわらず、限られた森林資源の成長というものは増加をいたすものではないからであります。すなわちこのアンバランスがかくのごとき結果を来しておるのでありまするが、この傾向は今後ますます強まつて行くのでありまして、今やこれに対して何らかの措置をとらなければ、この国土の荒廃を守ることはとうてい不可能だというような事態になつておるのでございます。国会におきましても、すでにしばしばこれに対するところの決議案が可決をせられ、前国会におきましても、この国土の緑化に関する何回目かの決議が行われたというような事態であります。ことに立法措置といたしましても、前国会におきまして、われわれ議員の提出によりまして、森林法が全面的に改正をせられたのであります。これは明治以来長年の間古色蒼然とした法律でありましたが、日本の林野に対しまして根本的なる計画性を付与するというのでこの措置がとられたのであります。今やこれもようやく実施の段階に入らんといたしておりますが、ここで私は新農相にお尋ねを申し上げたいことは、単に森林資源の供給の抑制をこの法律によつて規定をいたしましたけれども、これをやつただけでは、いわゆる頭隠してしり隠さずであつて、とうていこの法律の目的を達成することができないのであります。どうしても供給の方を抑制するならば、当然一方において需要の方についてもある程度の措置をとらなければ、これは成り立つものではございません。従つてこの際政府並びにわれわれ国会においても慎重に考えておりますることは、森林法の施行に伴うところの今後の措置については、急速に適切なるところの手を打たなければならないのであります。その前に農相にお伺いいたしたいことは、この森林法を施行する面だけを見ましても、日本の民有林に対しまして、今後この法律を施行するために、それぞれ林業経営指導員なるものを配置するのでありますけれども、これが現在の政府案においては、一万町歩に対して一人の林業経営指導員を置くにすぎないのであります。国有林につきましては、御承知通り、非常に民有林に比すれば内容が整備いたしております。わずか千町歩、二千町歩というような小面積に一つの営林署が設けられておる。あるいは一万町歩の国有林を監督するために実に大きな営林署があつて、数百人の人員を配置しておる状態でありますけれども、民有林については一万町歩にわずかに一名というような状態で、とうていこの森林法の完全な施行はできないと考えるのであります。この際政府においては、行政整理のお考えもあるようでございますが、もとより原則的には私どももこれにつきまして同感の意を表するものでありますけれども、しかしながらこの森林法を施行する面におきましては、どうしても民有林に対するところの行政措置を相当程度にとられなければならない。これはあるいは国有林の方から転換をする方法考えられまするが、この点につきましては、どうしてもこの際特別の方法考えなければならない、かように思うのであります。新農相はいかなる構想を持つてこの森林法を施行せられるお考えであるか、まずこれを伺いたいと思います。
  61. 根本龍太郎

    根本国務大臣 今御指摘のように、森林行政は現在日本において最も危機に瀕しておるといつてもさしつかえないほどの状況だと思います。すなわち戦時中の濫伐、過伐から、さらに戦後の国内の非常なる経済上の混乱等によりまして、非常に濫伐されております。しかも特にこれが山元の最も便利な地区従つて民有林がやられております。そのために御指摘のように、今にして森林に対する根本的な政策を樹立しなければ、せつかくの日本の国土も、この森林行政の弱体から崩壊する、かような点を考えまして、森林法の制定をいたしたわけであります。しかし一面におきまして、日本の自立経済の再建の面から見まして、石炭も非常に足らない、また高い、実は大部分の国民燃料が森林資源に依存しておる、また石炭の増産日本自立再建のために一番の基礎になる、こういう点から、この増産に伴うところの坑木の問題、あるいは化学繊維の原料としてのパルプ、こういう方面の需要が殺到して参りますために、この二つの要求が相矛盾しております。しかし当面におきましては、まずここで両者の要望をどこかの点において調整して行かなければならぬ。それには造林が大切でありまするけれども、治山治水の面から見て、割合に障害のないところにおいて伐採を許し、どうしても確保しなければならぬところは伐採制限をする、この道が端的にとられなければならぬと思います。この意味におきまして、奥地林道の開発ということはすでに皆様方から非常に要望されておりますので、二十七年度予算あるいは補正予算においても、農林省としては、奥地開発の予算はぜひ皆様の御賛同を得て強くこれは取上げたい、かように考えております。なおまた森林行政の一番の基本をなすのは民有林の保護育成でございます。この観点において、今非常に問題になつておりますのは、富裕税の問題であり、あるいは相続税の問題が森林の増殖を非常に押えているような関係がありまするので、今大蔵当局とも連携しつつ、これら森林関係の税制の軽減をいたして、増産意欲を振興せしめたいと思つております。なおまた木材の需給調整あるいは利用の合理化、こういう点につきましては今研究中でございます。これは立法措置についても非常にむずかしい点がございまするので、研究機関の設備、技術の導入等いろいろありまするが、目下林野当局において十分に検討いたさせておるわけであります。また民有林の経営指導の問題は非常に大きな問題でございまするが、これは国家みずからやるべきか、あるいはまた地方自治団体、あるいは現在これらに関する民間の団体もございまするので、これらの総合的な活用によつて、その目的を達したいと考えております。
  62. 平野三郎

    ○平野委員 ただいま国務大臣の総括的の御抱負を拝承いたしまして、非常に安心をいたしたのであります。ただいまの御抱負を大別いたしまするならば、結局森林法施行に伴いますところのとるべき措置は三つに相なるのであります。  その第一は造林でありまするが、造林は急速には間に合わない。どうしてもただいまお話にありました通り、この際急速に奥地林の開発をしなければならぬ。従つて奥地林道の問題こそ、まさに脚光を浴びた当面の中心問題といわなければならぬのであります。この点について特に農林大臣に申し上げておきたいことは、先般本委員会におきまして、安本並びに農林大臣及びわれわれとの間に質疑応答した結果、どうしても二十七年度におきましては九百万石の木材を節約するか、あるいは他の資源に転換しなければならぬ、そのためにはこの際四百億の事業費をもつて奥地林道を開発しなければならないということがはつきり数字的に結論が出たのであります。従つてどうしてもこの際二百億の国費を投じまして、緊急三箇年ぐらいの計画をもつてこれに当らなければならない、かようなことになつておるのであります。しかしながら従来林業行政の重大性ということが唱えられながら、ややもすれば閑却せられておるうらみがありますが、先ほど来お話の通り、今日ほど重大な危機はないのでありますから、この際この林道関係の緊急三箇年計画の二百億、二十七年度においては少くともその三分の一ないし四分の一程度の予算の獲得ということにつきまして、絶対的の要請のもとに、新農林大臣責任を持つてつていただかなければならぬと思うのであります。この点について重ねて大臣の御抱負を承つておきたいと思います。
  63. 根本龍太郎

    根本国務大臣 非常に激励を受けました。ただいま申し上げた通りでございまして、これは補正予算並びに二十七年度予算において、当面の一番大きな問題として取上げている次第であります。ぜひ皆様方の一段の御協力をお願いする次第であります。
  64. 平野三郎

    ○平野委員 次に造林の問題でありまするが、これにつきましては税制をかえるのだ、これはしごく御達見でありまして、実にその成果を期待いたすものであります。しかし特に私はこの際農林大臣に御提案申し上げる。われわれ自身もこの際研究いたしておりまする問題は、相続税その他富裕税、林業税制の改革よりも、さらに一歩前進いたしまして、この際所得税のうちで造林を施行したことについては、特にこれをある制限のもとに免税にする、こういう方法をとるべきではないかと思います。今日パルプ企業のごときは莫大なるところの利潤を上げまして、一会社で年に数億円というような所得税を国に納めております。従つて大蔵省の自然増収も一千億という状態になつておるのでありまするが、このうちの一割ないし二割くらいは、これを造林に投資をしたという証明が成り立てば、その分に限つては免税にするというような方法をとりますれば、これは単に税法の改正をやるだけであつて、おそらく全国的な造林熱が起り、また造林が進む。ただいたずらに補助金を多額に計上して、補助政策のみに終始をするということでは、真の意味国民的な造林熱というものは起つて来ない。こういう方法をとることこそ最も必要だと私は思うのでありまするが、この点についてどうお考えになりますか。
  65. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御意見非常にありがたく承わました。これは十分検討いたしますが、税制の問題は実は全体の国民経済の問題と同時に、負担の均衡という原則もございまして、たいへんむずかしい問題でありまするが、御趣旨がよくわかりますので、十分御意思を尊重いたしまして、その線に沿つて、税制改革の問題を農林省から強くこれは閣議に反映させたい、かように存じております。
  66. 平野三郎

    ○平野委員 最後に木材の利用合理化の問題でありますが、これは先ほども、大臣も実はこれについては非常にむずかしい点があるというお話がございました。おそらくは木材の利用合理化という問題は、通産省との関係におけるところのいわゆるセクシヨナリズムの点にあると思うのでございます。これはこの際特に申し上げておきたいのでありますが、肥料の問題につきまして常に本委員会において農林、通産関係の問題が今まで俎上に上つて來ております。廣川農林大臣のごときは、行政管理庁の長官を兼任しておる立場にあつて、そうして肥料行政は農林省に一元化するということを本委員会において言明せられたくらいであつたのでありますが、遂に今日までこの問題がうやむやに終つているというような次第でございます。木材の所管は今日通産省になつておりまするが、これはただいままでの議論通り森林資源確保という点から、農林省がこれにつきまして少くも重大な関心を払うと同時に責任を持たなければならない。たとえば現在木材の大消費者でありまするところのパルプ工場のごときは何らこれを法的に取締る制度がないのでありまして自由に各方面に設立せられておるのでありまするが、これはすみやかにこの際立法的措置を講ずるなり、あるいは政令によるなりして、政府がこれに対する監督権を持つことが必要であります。これは一応主務大臣が通産大臣になつておりまするが、少なくも通産大臣農林大臣と協議をした上でこれの監督権を行使するということでなければ、これは何にもならないと考えるのであります。どうしても農林大臣が、これらの点について重大なるところの責任と同時に権限を持つということこそ必要であるのであります。木材の利用合理化は、最近ガソリンが大分緩和されて参りましたので、従来の薪炭自動車がガソリンに切りかえられるということがようやく実現されかかつておりまするが、これによつて節約される木材は実に三千万石の多きに達するのであります。なおこのほかに木材の利用合理化のいろいろな問題があり、これらについての立法的な措置も必要になつて来ると思いまするけれども、どうしてもこれはこの際所管の問題をはつきりしなければならぬ。おそらく通産省においてもこうしたことを考えられるとともに、これはどうしても農林大臣が重大な決意を持つて、この木林利用合理化については、少くとも両省の共管のもとにこれを進めて行くということでなければならぬのでありまして、この点について農林大臣の御信念をあわせて伺いたいと思います。
  67. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御趣旨を尊重して、十分検討し、善処いたします。
  68. 千賀康治

    千賀委員長 時間が切迫しておりますから、結論を言つてください。
  69. 平野三郎

    ○平野委員 大臣の御抱負を拝聴いたしまして大いに意を強ういたしたのでありますが、従来の農林大臣もいたずらに顔を広げるばかりであつて、何ら根本的解決というものが与えられておりません。幸いあなたは林学も修められた御経験もあるし、それから名前からして、私はこの際ほんとうにこの問題は根本的に解決されるべきでないかという期待を持つのでありますが、どうか名の示す通り、すべて問題を根本的に解決されることを望んで私の質問を終ります。
  70. 中馬辰猪

    ○中馬委員 ただいま平野委員から治山の問題があつたのでありますが、われわれも非常に心配をいたしております。はたせるかな今年二回にわたつて台風あるいは暴風のために、南九州を初めとしてほとんど中部地方に至るまで非常な大災害をこうむつたのであります。一例をあげますと、南九州地方においては、先般のケイト台風によつて、人的被害が死者七名、負傷者三名、農作物の被害が二億五千万円、耕地の被害が三億万円、土木、山林その他を合せまして、十億八千七百万円という概略の数字を示しております。さらにまたつい最近の豪雨の被害は、死者が三十七名、負傷者が三十五名、計七十二名に及んでおります。家屋の被害が、住家の倒壊九十一戸、住家の半壊七十四戸、床上浸水が千二百五十一戸、床下浸水が一万五千二百二十一戸、その他耕地の被害におきましては、流失、埋没が三千百二十町歩、冠水七千八十一町歩、土木関係その他を合計いたしますと、実に被害が十三億円に上つております。ケイト台風と先般の豪雨とを合せますと、合計で二十三億八千七百万円、かように単に鹿児島県だけで約二十四億円の被害をこうむつております。例年台風の通過するたびに、南九州から四国にかけて、ほとんど多少なりとも災害をこうむらない年はないのであります。これらの数字をさらに上まわる具体的数字を、われわれの知事その他の関係者が近く持つて参ると思うのでありますけれども、これらについて現地の住民は非常な心配をいたしております。願わくは農林大臣においては、これが災害復旧の対策をすみやかに講じていただきたい。さらにできるならば大臣に行つてもらわなければなりませんけれども、もし大臣がどうしても多忙なために行けないならば、少くとも政務次官あるいは次官を中心とする見舞団あるいは災害視察団を派遣して、早急に根本的な対策を講じていただきたい。あるいはすでに関係の係官は現地に参つているとは思いますけれども、ただいま申し上げましたように、現地の住民は毎年々々のことでとほうに暮れております。すみやかに政務次官あるいは次官を中心とする視察団を派遣していただきたいことを、われわれは切望いたすものであります。
  71. 根本龍太郎

    根本国務大臣 今回のケイト台風に続いて昨今の台風は、われわれまことに御同情にたえません。由来日本は天災の国、災害の国でありますが、このために失われる国土資源はまことに大なるものがあるのであります。実は昨日井上委員からおしかりを受けましたが、デユーイ氏と一昨日会つたときも、非常に重大な関心を持つているのはこれであります。デユーイ氏は例のテネシー・ヴアレーを実行するにあたつて相当強力に推進した人だそうでありますが、今度の災害にあたつても、神戸でほんのわずかな水害のために多数の被害を受けている、また電力がすぐにとだえてしまう、こういう状況では日本はまことに困難であろうということからしてこれはちよつと余談になりますが、どうしても日本自立再建のためには、治山治水と電力開発の総合的な施策をやらなければならぬ、これには現在の資本の蓄積では足らぬから、ぜひ政治クレジツトが必要であるということまで論じたわけでありますけれども、政府といたしましても、全面的にこの治山治水については、きびしい財政の中から、すでに御承知のように、二十五年度以来大幅の予算を実は傾倒している次第であります。さらにこの問題を強力に推進して参りたい、かように思つております。  なお現地についての状況視察につきましては、係官をして、ケイト台風につきましては調査報告をすでに受取つております。なお最近の豪雨についても、ただちに係官を派遣している次第でありますが、今の御要望に即応する意味におきまして、政府の方からも適当な人物を現地に派遣いたしまして、実情調査とともに御慰問申し上げたいと存じている次第であります。
  72. 千賀康治

    千賀委員長 お諮りいたします。林業に対する問題はこの程度で打切りたいと思いますが、いかがでしよう。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 千賀康治

    千賀委員長 御異議なしと認めます。     ―――――――――――――
  74. 千賀康治

    千賀委員長 それでは蚕糸問題を議題といたします。八木一郎君。
  75. 八木一郎

    ○八木委員 根本新農林大臣蚕糸政策について特に伺つておきたい点は、蚕糸行政機構を一元化して蚕糸価格の安定をはかる、これは大臣政調会長時代から手がけて来た政策でありますから、全国の五百万蚕糸関係者は、必ずやこれは実施してもらえると期待しております。これに関する御所見を伺いたいのであります。なぜそれを要求するかについて、あたかも今問題となつておる点がありまするから、この点をあわせて一例として内容にわたりますので御質問を申し上げたい。問題は繊維局と蚕糸局との両建てになつて行政が行われておる結果しばしば起きるのであります。先ほど平野委員から言われた、肥料や林政に関することと同じことでありますが、蚕糸に関しては以前はまつたく農林省の一元行政のもとに置かれておつたのであります。それが戦時、戦後を通じて農業に関する養蚕の分、工業に属する製糸の分は農林大臣が握つておりますが、輸出に関する面は、一般輸出と同じような扱いで、特殊性のあるこの問題を切り離れて通産省に行つておりまして、かつては農林省の出先機関がニユーヨークに市場を設けて、世界の生糸市場を直接見ておつたのであります。それすらもなくなり、かんじんな輸出の大宗である絹が通産省に行つているという事態に置かれた結果、内政にもいろいろ関係して来るのでありまして、今私がここに問題として出します事項は、政府が一部の絹糸業者、絹紡業者の利益に追随した結果として、内政に、非常に蚕糸関係業者に大きな迷惑を来しておる、その事実をここに指摘したいのであります。これは通産省の当局が呼出しをかけておるにかかわらず、本日出て参つておりません、そのこと自体が私は誠意を欠くものといたしまして、本委員会の名において厳重なる注意を通産当局に與えたいと思うのであります。本日限りの委員会でありますので、ただいま質問はいたしますが、この点はあわせて委員長に要求いたしておきます。  問題の起りは、蚕糸業者蚕糸の工場から出て参ります副産物の処理は、数種の絹紡業者がこれを壟断しておるのであります。この事態にありまする工業原料の副蚕糸につきまして通産省は、昨年突如として副蚕糸なるものを、市場価格を引下げるに役だつ輸出禁止の措置をとつてしまつたのであります。しかるにこの措置をとられた結果がどういうふうになつたかと申しますと、輸出禁止をいたしましたが、当時の情勢は、いわゆる朝鮮景気の思惑に乗りまして、国内の狭い市場は暴騰を来しまして値下りは来ない。しかし原料を輸入にまつというような事態をもとりのぼせて来たのでありますけれども、狭い市場で自由に操作ができまする商品でありますために、その結果はこの引下げの目的を達成されまして、かんじんな繭が出まわりをいたします四月の時期に二百五十億にも及ぶというその繭出まわりの最盛期にちようどはまりまして、この零細な農家は、遂に副蚕糸の値下り価格の結果が繭の価格に響きまして、その数百掛はこの結果から来たんだというように見てとつて、この副蚕糸措置は絶対に承服しかねる、こういうことを全国の養蚕農民組織の農協連が、総会の決議をもつて通産省にかけつけますと、係官は何と言つておるかというと、おれも信州生れの男で、お蚕のことはお前よりよく知つておる、こういう不誠意な答弁をいたしたのみならず、何らの措置をとらないで、依然として禁止してあるのであります。そこで数個の商社が、輸出を禁止いたしまして、一手に出まわる時期に操作をいたしますと、これは独占支配の自由になる結果が生れるのは当然でありまして、現にその犠牲に泣く数百万の養蚕農民は、何としてもこれを解除してもらいたい。現に買い付けておる価格と内地の価格と比べれば、買付価格は、私の調べによりますと、海外は生皮苧において四万円を唱えておるのに、内地相場は一万七千円だ、二万円だというような非常なひどいときもある。こんな事態になつてもなお輸出を禁止したままにおいて、繭の価格の協定を、養蚕農家と製糸工業家との間に熱心にとりかわしているこの際、非常に影響の多いこれを見送つたままで、輸出禁止の措置を解除しようとする誠意がない。これは政令でやり、あるいは閣議でやろうと思えばすぐできるのに、これを見送つておるという事実を見まして、蚕糸業の関係が今農業、工業、商業の三部門に関係が深いが、その中でもかくのごときみじめな姿を、多数の生産農家に影響のあることを、一体通産省は絹紡業者の指導のためにやるからよいとしても、農林省には堂々たる蚕糸局があり、りつぱな蚕糸局長がおるのに、これを見送つておる。これは蚕糸局長の政治力がないのか、うつかりしておつて何も知らないのか、一体どういうことになつておるのかということを、通産省と農林省の繊維当局と二人呼んで明らかにいたしたいというので、一昨日来呼びかけておるのでありますが、かんじんの繊維局が来ない。この間の事情を知つておる限り、ざつくばらんにこの際まず繊維局長に答弁をしていただきたい、そうして実相を明らかにしてもらいたい、こう思います。
  76. 根本龍太郎

    根本国務大臣 私から先に答弁申し上げます。蚕糸政策については、ただいま八木議員から言われた通り非常に重大な問題でございます。その意味におきまして、糸価安定の法的措置も現在検討中であります。でき得れば臨時国会に出したいと思つて着々準備中でございます。この問題は御承知のように、先ほど米の問題のお話のときにありましたことく、農業生産物が実は相当以前は輸出されておつたのが、現在は繭とお茶、食糧品は非常に少くなつておる。特に水産食料が少くなつたために、それによる外貨の獲得が少い。主食並びに油糧原料輸入されるためにバランスがとれない。そのためにはどうしても蚕糸の輸出をやらなければならない、こう思つております。しかもこれには現在の海外情報をいろいろ聞いてみますと、これは八木委員が最も真剣に海外情勢を見て来たわけでありますから、私から申し上げる必要はございませんけれども、アメリカにおいても、あるいは欧州諸国におきましても、糸価が安定しさえすれば、さらに相当の需要が増すということが明確になつております。なおまた農業経営の面から見ましても、最近は再び蚕糸業、養蚕業をやろうとする意欲も非常に強いのでありますが、ただいま御指摘通り蚕糸が安定しないために、従つて繭の値段も実は非常に不安定である。ここに、せつかく伸び得る養蚕業が、糸価の定安しないために押えられておる。この難点をぜひとも私は解決したい、かように思つております。しかも現在の繭のくずでありますか、この問題はごくわずかな人々の利益のために、せつかくの養蚕家の増産意欲を阻害することは、国家的な意味においても、社会正義の意味からしても、私はとるべきではない、かように考えまして、この問題については、蚕糸局長から後ほどいろいろ申しあげますが、農林省の立場として、これは養蚕業の立場からしても一番の基本である、養蚕が振興しなければ蚕糸業の振興ができない、こういう観点において、ぜひこの輸出の制限を解くべきであるということを申し入れさして、今折衝中でありまするが、ある段階になりましたならば、通産大臣はもとよりのこと、閣議に諮つてこの問題の解決をはかりたいと今考えて、着々その折衝並びにその準備を進めておる次第でございます。
  77. 八木一郎

    ○八木委員 蚕糸局長答弁は、新大臣なかなか勉強して詳しいので必要はありません。次いでお願いしたいことは、ただいまの問題は、私一例として大臣に申し上げたのであります。通産省が所管しておる関係から、貿易面においても、数種の貿易業者意見を聞きまして、そのために国内五百万にも及ぶ多数の業者関係しておる零細な蚕糸業がひどい目にあう。私はこれはその都度、その都度いつもいやな立場に立つて、最大多数の最大利益のために申入れをいたして、今日まで来ております。今の副蚕糸のごときものも、もう輸出の方はとめてやるのはあたりまえだということは、一部の絹紡業者に使嗾せられておつた関係方面の一属僚が――今いませんが、通産省の一属僚の話で、輸出禁止の品目を羅列するときに、しまいの方にちよこつと入れておいた。閣議ではおそらくこんなものが入つたつて大した問題には考えなかつたと思う。ところがこの結果たるや、かくのごときことをして、池の中のこいにして、薬籠中のものにしておいて、われわれの汗とあぶらの繭の価格を高くしないことに政府が一緒になつて協力しておるのではないか、こういうふうにとらざるを得ない。これは私は蚕糸局長答弁を求めないが、蚕糸局長にしつかりしてもらいたい。ここに目をくばる人はほかにありません。専門に生産から流通、消費、輸出まで見ておる蚕糸局長以外には目の届く人はないのであります。この意味におきまして、行政の機構をどうしても一つにすることが、蚕糸業発展のためであると思う。近く第三回の全世界の絹業大会がイギリスに開かれて、代表が参ります。この代表に参加する発言権はどうかと見ますると、ピラミツドの尖端である輸出関係方々が大多数である。その基盤である農民代表はかろうじて一人か二人行かれるという程度の発言権である。しかもそういう事態に置かれていて、行政を見る人は、かんじんなところが通産省に渡つておるという事態でありますから、セクシヨナリズム的な考えでなしに、全世界の蚕糸業の七割も日本が握つて、しかも困難な中に輸出をしまして、一億ドル、三百億――輸入食糧の補給金はこの蚕糸の輸出でりつぱにまかなえる、農地を一割しか使わないで、厖大な輸入食糧の補給金は、余りが来るほどかせげる、ここに思いをいたされまして、この際蚕糸行政の機構は、ぜひ一元化するということに力を盡していただきたい。こういう例はいくらでもある、今後も出て来ると思いますから、行政の機構を一元化して、従前の通りニユーヨークの世界市場に農林省の出元機関を持つまでぜひともやるべきであるという信念を固めていただきたい。そうしてとるべき手は、今御指摘のように価格安定の政策を取上げる、そうして行政機構一元化に関する御所見をもあわせて伺うことができれば仕合せであります。
  78. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ちよつと速記をとめてください。
  79. 千賀康治

    千賀委員長 速記をやめて。     〔速記中止〕
  80. 千賀康治

    千賀委員長 速記を始めて。
  81. 小林運美

    ○小林(運)委員 ただいま八木君の質問に対して、農林大臣大分勉強されたとほめられたようですが、吉田内閣成立以来、歴代の農林大臣に最初に私が伺うのは、蚕糸政策の問題であります。ところがいつも糸価安定はぜひやりたい、今準備している、もうじきだと言つて、もう何年になつておるか。まだ現在何も具体的になつていない。大臣は非常な決意をもつて答弁になつております。非常にけつこうですが、森農林大臣蚕糸業の専門家だつたが、これもやらなかつた。廣川農林大臣もずいぶん大きなことを言つたが、これもできなかつた。今度の根本農林大臣は、これは本気になつてとつつてもらいたい。その理由として、先ほど大臣がおつしやつたように、糸価が安定すれば海外の需要は増すということは、これはまつたくわかり切つたことだ、われわれも先般国会の農業関係の議員団としてアメリカに行つたが、向うの連中の話を聞いても、やはりそうだ。ところがこれが一体どうして今までできなかつたかというと、その筋の了解が得られなかつた。われわれも議員提出の法律案として出したかつたが、これもできなかつた。しかるに最近いろいろ考え方も違つて来たので、ようやく今度の臨時国会に糸価安定の法案を準備するというようなふうになつたけれども、一体関係方面の了解を得ておられるかどうか、これをまず第一にお聞きしたい。
  82. 根本龍太郎

    根本国務大臣 お答え申し上げます。リツジウエイ声明によりまして、非常に緩和された観はありますけれども、なかなか骨がかたい線がございます。今の糸価安定の方についても、まだ具体的な了解は得ておりません。おりませんけれども、われわれとしましては、アメリカ側の立場から見ても、世界の絹の需要者の面から見ても、日本の養蚕業の立場からいつても、これは必要にしてかつ妥当なものと、こう考えておりまするために、ぜひ実現したいと思つて、今こちらで構想を練りつつ了解を得べく努力しておる次第でございます。
  83. 小林運美

    ○小林(運)委員 糸価安定の問題について新大臣の熱意のほどはわかりましたから、そのつもりで十分な努力をしていただきたいことをお願いいたします。  次に、先般の本委員会におきまして、私は政府蚕糸業の五箇年計画について質疑をしたところが、五箇年計画というものを立てておきながら、予算の裏づけがほとんどないということがわかつて来た。ところがその後もう相当期間を過ぎておりますが、補正予算にどれだけの五箇年計画の裏づけとなる予算措置が講じられておるか、これが一つ重大問題、と申しますのは、すでにあの当時は、本年の一月は三十万円となつた。ところがだんだん値段が下つて来た。しかし二十数万円であの当時はとまつてつた。そのときに政府蚕糸業の復興五箇年計画を立てた。それに対して、その内容は相当の増産を目的としておる。これはその裏づけがなくして、ただ政府増産をする。結局桑も植えて行く、いろいろな政策もやる。そうなると、農民はどう考えるかというと、これは現在くらいの値段でどんどんできるのだ。生糸も売れるのだと考えた。従つてことしの春繭の計画もずいぶん無理をして掃立をやつた。ところがあまり掃立が多いために桑が足りなくなつた。いよいよお蚕が上る五齢になつて来た、桑が足りないというので、非常な大きな金を出して方々から桑を買い集めて繭にした。ところが繭になつて、さあ売る時期になつたら生糸の値段がどんどん下つて来た。先物は十七万円というような値段が出ています。そこでこういう百姓の値下りによる損失は一体だれが負担すべきか、政府が五箇年計画をやつて増産をするということになれば、これは増産しても売れて行くというふうに農民はとるにきまつておる。またそうでなかつたら、増産したら値段が下るのだということを言うなら、増産する必要がない。政府は五箇年計画を立てて増産をする以上は、値段に対する見通しがなくちやいかぬ。ところがそういう見通しもなくて、そうしてこういう計画を立てる、ところが農民は損をしてしまう。この損害は一体だれが補填するか。その責任一体だれが負うか。その責任を私は追究したい。現在も事実として現われている。これはどうしますか。農林大臣は、就任早々ですからおれは前にやつたことは知らぬとは言えないと私は思う。これは新大臣がはつきりその責任はおれが負うと言つてもらいたい。
  84. 根本龍太郎

    根本国務大臣 お答え申し上げます。ただいまいろいろと御意見が開陳されましたが、やはり一番の基本の問題は、増産するためにも糸価を安定しなければならない。糸価を安定しなければ増産が不可能であるのみならず、なおかえつて不測の損失を農家に及ぼすということがありますので、先ほど五箇年計画の増産の裏づけがないと言われておりますが、先決の問題は糸価安定の措置を法的に講じて、しかる後増産に対する予算措置がやられるのが順序だと考えておる次第でございます。  責任追究の問題がございまするが、これは現在一般に自由の経済の原則で動いておる限り、私が責任を負う筋はないと思いますので、はなはだ残念でございますが、さよう申し上げるほかございません。
  85. 小林運美

    ○小林(運)委員 大臣はおれに責任はないと言われるが、しからば一体五箇年計画はだれが立てたか。政府が五箇年計画を立てて増産計画を立てれば、増産に対する価格の保障というものはある程度見なければいかぬ。それは糸価が安定すれば価格は安定するから値段の問題は解決する。ところがその糸価安定さえまだその筋の了解も得ていない。なぜそれならば、糸価安定の見通しがついてから五箇年計画をやらなかつたかと私は言いたい。そういうことをせずに五箇年計画を立てたのは、農林大臣責任があるということを私は言つておる。自由経済だから品物はどんどんできて、上つたり下つたりする、それは農民のかつてだというなら、それは何でもないことで、それでいいかもしれないけれども、農林省が責任を持つて五箇年計画を立てた以上はそこに責任が生ずる、こういうことなんです。よくひとつ御勉強願いたい。  もう一つは、これは以前から私はこの委員会でもずいぶん問題にしておりましたが、現在の繭の取引機構です。この問題でも非常な物議をかもしておる。昨年もいろいろ問題を起こした、本年に至つてもこの問題は解決していない、私は取引方法がこうであるああであるということを今ここに言うのは差控えますが、昨年度の繭の取引の問題でもいろいろ問題になつた。この席で蚕糸局長あるいは大臣次官は、その問題は善処するいうことをしばしば言つておるけれども、何ゆえに取引の問題について具体化していないか。ただほつたらかしである。先ほどの大臣のお話のように、自由主義で、かつてに売ればいい、買う方もかつてに買えばいい、これだけならば問題は何もない。ところが蚕糸業の現状はそうじやない。そういう点を大臣は少し勉強して、この繭の取引機構の問題について、はつきりした線をここに出してもらいたいということを申し上げて、私は新大臣の所見をひとつお聞きいたしたい。
  86. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいまの小林君の御議論は、いろいろと私に御訓示を賜わりまして、これを十分検討いたします。但し私が申し上げたのは、あなたの言われる気持はわかりますけれども、この問題の結果と責任を負え、これだけ損したから政府が補償せよというような言葉に聞えますが、それはできないということだけでございます。蚕糸業の振興、安定をするということはあなたの意見と私と同じです。しかもその方法についても同じでございます。どうかその意味におきまして、今の責任問題を云々するよりも、お互いにこの蚕糸業の振興のために御協力賜わらんことをお願いいたしまして私の答弁を終りたいと思います。
  87. 千賀康治

    千賀委員長 本日はこれをもつて散会をいたします。次会は公報をもつて承知を願います。     午後四時九分散会