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平野委員 それでは
中国班の
国政調査の結果につきまして御
報告を申し上げます。
中国班は私のほかに木村
委員が前半参加せられ、去る七月二日から同九日まで、鳥取、島根、山口、広島各県の
農林関係事情につきまして調査をいたしたのであります。その概要を簡単に御
報告をいたします。
まず鳥取県の会議におきまして問題となりました点は、一、
農林漁業資金融通法につきましては、現在のところ
全国的にきわめて申込みが低調であ
つて、特に鳥取県におきましてはきわめて申込みが少い
状態であり、これにつきまして種々論議をいたしました結果、
一般に対する趣旨の徹底をきわめて欠いておるという点に
原因が多くあることが発見せられ、この点について特に格段の努力を要することを認めたのであります。
二に、麦の
統制撤廃につきましては、同県の代表的
意見としては、
農民経済並びに消費者の生計費を考慮の上で、さらに麦価を調整し得る方法を講じて
統制を
撤廃すべしとの要望がありました。
三といたしまして、畜産特に本県の和牛いわゆる因伯牛は、本県の最も誇る特色でありまして、ブラウンスイスを交配して従来の和牛を
改良し、粗食にたえ、性温順にしてまことに同県農業の根幹をなすのみならず、広く
全国的に分布し得る盛況でありまして、将来一層の
改良増殖普及のためには、十分なる国の
助成施設、特に
導入資金融通の
措置を要望するのであります。ことに
農林漁業資金融通法におきまして、家畜の
導入資金に対する要望は、本県のみならず全般にわた
つてきわめて強いものがありましたが、これにつきましては特に大家畜である同地方の牛につきましては、今後何らか
法律を
改正いたしまして、これらの資金を融通するという方法を講じなければ、真に畜産の振興ははかり得ないということを痛感いたしたのであります。なお
中国山脈地帯には霧酔病と称する牛の特殊の疾病がありまして、これの予防治療法等未解決の
状態にありますので、国の試験機関等も協力し、すみやかに適切な
対策を講ずる必要があることを痛感いたしたのであります。さらにまた飼料
対策といたしましては牧野の開放を非常に希望しておるところでございます。
四として
林業関係について申しますならば、
パルプ用材の手当のために、鳥取県だけに出張所を設けておる
工場は大小十五に及んでおる。なかんずく日本
パルプ米子
工場は明年には操業を開始する予定をも
つて着々進んでおるのであります。本県はきわめて財政難の折から、
木材価格の値上り、税収入の増加等の見地から、極力
工場誘致に努めておるのであります。しかして将来の需給
計画の方針としましては、県内
工場に重点を置きまして、約一万
町歩の県行造林を設け、四割を国の補助、六割の手入費を
会社負担として、
生産物は二、三割を県収入、残りを
会社に供給するというような案を立てておるのであります。また本県は
坑木も供給しておるのでありまして、県では用途指定を希望しておりました。
次に島根県におきましては、これまた同様、ほとんど県の収入の八割は国に依存しておるような状況でありまして、これらは
一般的な問題でありますけれ
ども、地方税法の
改正によりまして、県自体の財政的裏づけを強化することを要望するものがございました。
本県の
農林漁業資金融通法の成果につきまして申しますならば、すでに本県は割当の六割くらいは申込みがあり、特に山間部地帯の
水田は、道路が悪いために農道の希望が多い状況であります。本県についてはどうしても融通資金手続の簡素化、同時に一事業当りに対する貸出し最低限度が三十万円とな
つておりますけれ
ども、十万円に
引下げるならばさらに申込みが増加するであろう、特にこの点の要望があ
つたのであります。
第二に麦の
統制の
撤廃問題につきまして代表的本県の
意見としては、麦の
統制は継続いたしまして、
統制方式については事後割当の制度とし、農業
生産に必要な自家
保有量と
価格とを保証するということも要望があ
つたのであります。
第三に積雪寒冷単作地帯法に関しましては、本県は特に県独自の審議会をつく
つて、目下着々とその
法律の
実施に伴いますところの具体案を検討準備中でありまして、なおまた本県の宍道湖畔の出東村外六箇村の農業水利
改良事業を
視察いたしましたが、この一帯約三千町殆はまつたくの濕田でありまして、従
つて高畦をつく
つて、かろうじて麦作を
実施しておるというような特殊な地帯でありますので、今後この地帯の
排水工事を推進することによりまして、本県が二毛作に転化し得る可能性のあることが認められたのであります。島根県はほとんど麦の
生産はないような
状態でありますが、この
工事を
実施いたしますならば、今後相当
程度の二毛作の美田になし得ることの可能性が認められたのであります。
第四に
林業関係につきましては、最近本県の鉄道輸送がきわめて悪く、滞貨が激増しておるような
状態でありまして、滞貨一掃のために特に増配車の要望がありました。次に
パルプ用材等につきましては、本県もまたきわめて製造
会社が多数入
つておりまして、新たに
パルプ工場の建設
計画もあり、
需要はきわめて増加しつつある状況であります。
第五に、本県におきましては、農業倉庫がきわめて腐朽はなはだしく、従
つて農業倉庫の建設並びにこれの補修に対しまして、国の特段の
助成を要望いたすものがありました。
次に山口県でありますが、本県は前の鳥取、島根両県とはきわめて状況がかわ
つております。特に本県は工業がきわめて盛んでありまして、農業に対しましては比較的他府県に劣
つておる感があるのでありますが、しかしながらその山口県でさえも、依然としてやはり中央に依存する度合は七〇%以上の多きに達しております。これまた
地方財政制度の根本的
改正を大いに望んでおるものがありました。
農林漁業資金融通法の本県の事情につきましては、これまたきわめて不徹底なものがありまして、現在のところの申込みは、はなはだ少いものがあるのであります。これにつきましても、さらに周知徹底方につきまして一段の努力の必要が痛感されたのであります。
次に本県におきましては宇部興産株式
会社並びに山陽
パルプ岩国
工場等を
視察いたしましたが、特に
木材利用合理化の見地から、現在
使用いたしておりますところの
坑木を鉄、セメント等の
使用に置きかえるということにつきまして、相当研究が進められておることを見たのであります。その
坑木にかえるに鉄柱及び
カツペをも
つていたしましたのは、宇部炭鉱に隣接いたします大浜炭鉱がわが国における最初のものでありまして、相当の成果をあげておるように見受けられましたが、この方法が
九州、北海道とすべての炭鉱に一律に行い得るやいなやにつきましては、なお大いに研究の余地があるように感じたのであります。
次に宇部興産
会社の硫安の製造状況を
視察いたしましたが、きわめて順調に進んでおるのでありまして、その
工場には滞貸がきわめて増大いたしておる状況であります。
工場の倉庫はほとんど一ぱいでありまして、
会社の説明によりますれば、現在の在荷数量は二万数千トン、
価格にして約五億円に近いものがあ
つて、しかもなお製造は極力進められておりますので、
会社としては、かような状況下におきましては今後早急に輸出を望むというような要望があ
つたのであります。これは本
委員会におきましても、先般来肥料問題をきわめて重視いたしまして種々論議を加えました結果、
政府におきましても肥料の増産に極力努力をし、また各
工場ともこの点につきまして特段の努力をいたした結果であると思うのでありますが、現在かくのごとき
工場が
全国的にかような状況にあるとするならば、
政府としては、これらの滞貨するところの肥料をすみやかに買い上げて貯蔵するか、あるいは何らか肥料の需給調整に関しまして特段の
措置を講じて、も
つて春肥に対しますところの肥料
価格の確保をはかるために、
処置を講ずる必要があるということを痛感いたしたのでございます。
また岩国におきます山陽
パルプ会社の
木材使用量は年百万石以上でありますが、現在その貯木場には四十万石から五十万石
程度の貯材が滞貨せられておるのでありまして、まことに壮観なるものがございました。なおまたこのほか国策
パルプ会社の防府
工場設立の
計画もありまして、各
会社とも資材の収集に大わらわの現状であります。また炭鉱
会社も
坑木の収集に全力を傾注いたしておりまして、その競合
状態は深刻なものがあり、今後需給がいよいよきゆうくつになることは明らかであります。同社としては、原料
対策の一つとして、
宮崎県において三千六百
町歩の山林を所有し、造林等につきましても若干の努力をいたしておるとのことでありました。しかしながら同社としては、製品には人絹用
パルプをおもにいたしておる
関係上、ほとんどこれを針葉樹のみに依存し、また将来もその方針でおるとのことでありました。
広島県におきましては、農林漁業資金特別融通法の
関係につきましてはこれまた同様の
状態でありまして、現在決定いたしました貸出しの実績は、きわめて僅少のものであります。本県の
林業関係につきまして申しますならば、本県の蓄積は約八千七百万石、うち
利用可能のものは七千六百万石でありまして、そのうち約三分の二は針葉樹であり、三分の一は濶葉樹であります。しこうしこうして生長量は三百六十万石でありまして、このうちには
利用不可能のものを含んでおりますが、これに対しまして消費量は七百三十万石以上、うち
パルプ及び
坑木用として百万石ないし百四十万石の
利用があるのであります。従
つてこの需給
状態が続きますにおいては針葉樹は十五年ないし十六年をも
つて三十年以上のものはほとんどなくなり、濶葉樹も十年くらいでなくなるのでありまして、本県には最近さらに東北
パルプ会社が呉に進出することにな
つており、
パルプ年産一万トン。なお近い将来におきましてはこれを二万トンに拡張する
計画であり、現在建設
工事はほとんど進捗いたしておりまして、その
工場の運転も十一月一日に予定されておるような
状態でありましたが、本
工場につきましては、先般本
委員会におきまして通産省雑貨局長の説明によりますれば、いまだまつたく
計画中のものであ
つて、敷地もまだ確定していないというような答弁であつたことを考えますときに、事実といかにも相違いたしておりますので、一驚を喫したような次第でございました。
次に広島市におきまする山陽
木材防腐
工場を
視察いたしました。当
会社は
全国に五つの
工場を有し、年間約六十万石の
木材の防腐、ことにまくら木、電柱を主として
行つておりまして、この防腐を
実施いたしますならば、その
木材の耐久力は約三倍になります
関係上、
木材の
利用合理化の見地より、国家的にきわめて必要な事業であります。しかしながら遺憾なことには、原料でありますところのクレオソートがきわめて騰貴いたしております
関係上、防腐に要します経費が石当り千三百円の高価につきまするのが欠点でありまして、今後これらの代用品として、他の安価な油を
使用する等経費低下のくふうがまず必要と考えます。
以上きわめて簡単に申し上げましたが、詳細につきましては、専門員室に参考資料等が整理してありますから、ごらんを願います。
今回特に重点を置きました
林業関係につきまして考察いたしますれば、需給の調節をはかるためには、
パルプ会社の設立等に関しましては、通産、農林両省緊密な連繋のもとに
政府がこれを監督する必要がありまするとともに、一面
奥地林の未
利用資源の
開発、
木材利用の合理化並びに造林
計画等の施策を強力に推進する必要があることを痛感いたした次第であります。
以上簡単でありますが、
報告を終ります。