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1951-07-12 第10回国会 衆議院 農林委員会 第47号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年七月十二日(木曜日)     午前十一時二十五分開議  出席委員    委員長 千賀 康治君    理事 野原 正勝君 理事 小林 運美君    理事 井上 良二君       宇野秀次郎君    遠藤 三郎君       川西  清君    河野 謙三君       中馬 辰猪君    原田 雪松君       平野 三郎君    八木 一郎君       大森 玉木君    吉川 久衛君       足鹿  覺君    山口 武秀君       横田甚太郎君    高倉 定助君  委員外出席者         農林政務次官  島村 軍次君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         食糧庁長官   安孫子藤吉君         農林事務官         (食料庁業務第         一部長)    須賀 賢二君         林野庁長官   横川 信夫君         経済安定事務官         (産業局次長) 渡部 伍良君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君 七月十二日  委員木村榮君及び中村寅太君辞任につき、その  補欠として山口武秀君及び高倉定助君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 六月五日  食糧及び肥料に関する件  畜産に関する件  蚕糸に関する件  林業に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  派遣委員より報告聴取  米価問題に関する件  林業に関する件     —————————————
  2. 千賀康治

    千賀委員長 これより農林委員会を開会いたします。  米価問題に関する件について調査を進めます。まず政府当局より当面の米価問題について、その方針及び現在までの経緯等について説明を願い、しかる後質疑を行うことにいたします。まず島村農林政務次官から説明を伺います。
  3. 島村軍次

    島村説明員 米価の問題に関しましては、先の通常国会末期におきまして、当委員会の強い御論戦ないし御申出の次第もありましたので、政府といたしましては、その線に従いまして検討を加えて参つたのでありますが、新聞紙上等でごらんの通り、六月の七日の三相会談の結果をもたらしてGHQとの折衝を進めて参つたのであります。その六月七日の線は、大要を申し述べますと、今回の米価決定に関しましての基本線は、いわゆるパリテイ指数による上昇の結果に基きまして、本年度の二十六年産米想定し、それを基準として麦価決定を急ぎ、かつ追加払い至急に進めて行きたいという考え方から、約一箇月前からバツク・ペイと切り離して早く麦の価格決定し、かつこれに伴つてパリテイ指数による麦の追加払いに関する決定を急いだのでありますが、その筋の意向といたしましては物価上昇によるパリテイ指数上昇に伴う、いわゆる本年度の全体の計画を勘案すべきであるという強い意見がありました。これは要するに、本年度決定されました予算範囲によりますと、食管特別会計においては、相当な赤字をもたらすことはもちろんのこと、いわゆる財政支出相当しなければならないということ、及び消費者価格相当影響があるということ、及び生産者価格は当然引上げなければならぬ、この三者の問題の調整をとることが、よほど数字的にもまた政策的にも、政府としては苦慮いたしたところであります。そこで三相会談の結果、従来きめられましたところのパリテイ指数一九五に対しまして、五月の指数はすでに二四〇になり、さらに本年の九、十を想定いたしますと、約二五〇が想定されるのであります。そこで二五〇の想定のもとに、特別加算額一五%を加えますと、米の価格は七千四百九十幾円——それを加算しますと相当の多額の数字が出て参るのであります。七千四百幾らと申しましたのは、これは一五%加算の場合でございませんで、三相会談で出しました結果に基く数字でありますから、訂正をいたしておきますが、そこで結論は、さような三つの大きな基本線従つて調整をはかつた結果が、いろいろ論議があつたのでありますが、まずパリテイ指数二五〇にいたしまして、それに大蔵省あるいは物価庁及び農林省等計数のいろいろな整理をいたしました結果、一〇・二の加算額をもつて政府案といたし、その想定に基く米価は先ほど申し上げた七千四百九十幾円と相なります。これは俵代を含まない数字でありますが、さような基本線に従いまして、麦の値段については、いわゆる対米比率の点は農民の強い意見もあつたのでありますが、その筋の意見——たびたび申し上げるように、その筋の意見に従いまして、及び今日の各種配給状況等を勘案いたしまして、対米比率小麦を六四、裸麦を六五という計算をもつて米麦価比率を定めたい、しこうしてそれに伴う米麦のいわゆるバツク・ペイに関する措置は、同時にその計数範囲において行いまして、至急決定をいたしたい、かような考え方をもつて折衝を進めて参つたのであります。その後六月の十一日でありましたか、マーカツトの方から書面が出まして、今日の日米協力の点から考え、かつインフレを阻止する点等考えて、再検討すべきであるという書面参つたのであります。さらに日にちははつきり覚えませんが、六月二十一日に、政府といたしましては、三相会談決定した線を強く主張いたしまして、事務的の折衝を進めて参つたのでありますが、どうしても打開の道に至りませんので、六月の二十一日の書面の結果に従つて、さらに検討を進めて参つたのでありますが、政府といたしましては既定方針をまげないことをどこまでもつつぱつて参つたのであります。申し落しましたが、その場合における米の消費者価格は、一〇・二といたしまして、二五〇の計算でやりますと、相当消費者価格の値上りを来し、たしか一九・五ぐらいだつたと思いますが、数字的のことはあとから、間違いがあるといけませんから、事務的に食糧庁の方から説明させるといたしまして、ともかくさような数字にいたしますと、消費者価格相当上る。しかし全体の生計費に対しましては四%内外に当るという一応の計算が出るのであります。そこでこれをいつ上げるかということが同時に考えられた問題でありますが、政府としては給与ベース等関係及び財政の全体をにらみ合せまして、十月一日に決定すべきものであるという考え方をもつて折衝を進めて参つたのであります。さような経過をたどつて参つたのでありますが、遂にその筋との了解を得るに至らず、最後に六月三十日にさらに再検討をすべきであるという書面をもらいまして、それに従つて目下折衝を進めておるのであります。この間、もちろん政府といたしましては、方針をかえておるわけではありませんけれども、今日までの推移から考えますと、吉田首相の出馬も煩わして参つた今日といたしましては、なお折衝の余地がありまするが、おそらくいろいろの関係から、バツク・ペイについては、大体予定通り決定をいたすことは間違いないと考えまするけれども特別加算額については、政府原案一〇・二は、おそらく五%程度に下るものと予想され、かつ米麦価比率については先ほど申し上げた線以上には出ないというのが現在の経過であります。なお米の価格引上げに関する時期については、先ほど申し上げたように、政府では十月一日を予想いたしたのでありますが、インフレその他財政上に及ぼす影響及び消費者価格値段をなるべく上げないというような考え方、しかも財政負担をできるだけ最小限度にとどめたいという点から、なるべく早く値上げをすべきであるというのが、その筋の意見でありまして、最初は七月一日という説があつたのでありますが、すでに時日の経過をたどつております今日としては困難であるのでありまして、八月一日になりますか、あるいは最初方針通り十月にやりますか、その点がまだはつきりしていないのであります。おそらく数日中には、事務折衝を重ねました結果何らかの結論が出ると思うのでありますが、われわれ農林省なりまた農民立場から強い御要求もあり、またそれらの点はGHQの方に対しても相当強い反響をもたらしているのでありますが、現在、今までの推移から考えますると、それに対しては決して農民立場を無視していないような弁解の言葉が出つつも、なお以上申し上げたような線が、なかなかわれわれの希望通りに参らないという経過になつていることを御了承願いたいと思うのであります。  なおこの点については、私が申し上げましたのは大要でありまするので、あと数字的の問題については、第一部長の方から補足して説明を加えていただくことにいたしまして、以上大体の経過を申し上げておきます。
  4. 千賀康治

    千賀委員長 それでは島村政務次官に対する質問から始めます。質問の通告がありますから、それについて……。
  5. 吉川久衛

    吉川委員 ちよつと議事進行について……。ただいま委員長から、島村政務次官に対し質問をということでございますが、政務次官を無視するわけではございませんが、本問題はきわめて重要な事項でございます。しかも新大臣になられて本委員会にはまだ一ぺんもお顔を出されておりませんしいたしますから、この際農林大臣に出ていただいて、そしてこの問題について大臣立場から御説明を願い、質問をいたしたい。従いまして、大臣の見えるまでは、この問題に関しましては、休憩なりあるいは保留なりの措置をとられんことを望みます。
  6. 千賀康治

    千賀委員長 大臣は今日は出られる見込みはありません。そこで、休憩お話もありますが、せつかくの時間でありますから、やはり私が先刻申し上げたように、できれば質問をやつていただきたいと思います。ちよつと速記をとめて……。     〔速記中止
  7. 千賀康治

    千賀委員長 それでは速記を始めて……。ただいま理事の諸君の御意見を伺いまして、進行をすることにいたします。大臣出席をされましたときに、これはあす必ず出席されると思いますから、そのときに大臣に対する質問はやつていただきまして、やはり今日は政務次官に対して質問を続行いたします。河野謙三君。
  8. 河野謙三

    河野(謙)委員 ただいま政務次官説明によりまして、今日までの経過もよくわかりました。その間いろいろ御苦心をなすつておることもよくわかつたのです。しかし事米価の問題に関しましては、一つのどうしても譲れない線が私はあると思う。消費者価格の問題とか、財政負担の問題とか、食管特別会計の問題とか、いろいろありますけれども、これらを超越して譲れない線がある。その線は少くとも農家が経済的に引合うか引合わないかという線と、もう一つは、今度きめられる価格によりまして、はたして今後の麦や米の増産を阻害するような結果になりはしないか。逆に、新しくきまる米価麦価によりまして、農家が従来以上に米なり麦の増産に励むことができるような価格設定という一つの厳格な線がある。それを具体的に申すならば、たとえば私が調べましたところでは、大豆においてさえも、最近の価格粗収入を見ますと約八千円になります。あずきにいたしましても、一万円以上になります。かんしよにおいては、一万六千円くらいになると思います。かように農村生産します種々雑多の作物粗収入を時価によつて調べてみますと、いずれも今回政府原案として示されました米なり、麦の価格がかり原案そのままを承認されても、農村は他の作物の方が有利だということになつております。なお政府原案をさらに二歩、三歩、四歩譲歩して、米が七千円にきまり、麦がまたそれに比例してさらに安くなるということであるならば、他の作物との関係におきまして、米麦をつくる農家が一番引合わない、損だということになります。こういう価格のきめ方をしておいて、今後の麦や米の増産ということは絶対にできないのであります。御承知のように、今は作付面積割当もありません。事前割当もありません。一切価格によつて農村米なり麦の生産の刺激をしよう、こういう価格政策一点に政府方針はきまつておる。この線が強く立てられておる以上は、他の作物との価格のつり合いにおきましても、私は今回政府がきめられました当初の案、この価格は絶対的のものであると考えます。その折衝の間におきまして、非常に困難を予想されることは私も十分承知しております。私も過日司令部行つていろいろ直接折衝をいたしましたが、向うが非常に頑強であることはわかつております。しかしいかに頑強でありましても、当初に申し上げましたように、今後麦なり米の増産を刺激する意味において、どうしても譲れない線がある、この線は絶対に最後までがんばり、最後まで努力していただきたい、かように強くこの機会に再び要望いたします。  なおこの機会に私は、こまかな問題でありますが、急を要する問題でありますから伺いますが、本年の麦につきまして、供出以後の麦の処分をどういうふうにされるか。新聞紙上で拝見いたしますと、食糧庁長官は、供出以後の麦につきましては自由販売制度を立てるというようなことを言われておるようでありますが、この麦の問題につきまして、供出以後の問題をどういうふうにされるか、伺つておきたいと思います。
  9. 安孫子藤吉

    安孫子説明員 私どもの現在の考えは、大体食糧情勢推移を見ますと、この前食管法改正法案を御審議願いました際にわれわれの予想いたしました情勢が、なおはつきりして来たという感じを持つております。国際政局関係は予断を許さないと思いますけれども、一応現在のところは、朝鮮の問題がありまして若干小康を得ておる、それから国際小麦協定への参加も確実になつておる、各種状況をとりましても、私どもが当時予想いたしました情勢に大きな変化がないと考えます。やはり麦につきましては、一定価格でもつて政府が買い入れるという制度を確立しておきまして、麦の現在のような統制方式を改める方がいいのではなかろうかという考えをいたしております。これを実行する方法といたしまして、この前と同じように食管法改正法律案ということで行くのは、これは一つの大きな行き方と存じます。もちろん当時もいろいろ議論がございましたが、政令でもつてそういう措置ができるかどうかという点は、法律上の解釈は政令ででもできると思いますけれども、一面政府買上げ措置というものもあわせて考えてみる必要がございますので、常道といたしましては、法律改正法案を御審議を願いまして、麦の統制価格措置に対処するのがよかろうかというふうに私ども考えております。しかしこれはいろいろ情勢変化もございますし、また各般の動きの関係もございますから、ただいま確定的なことを申し上げるわけには参りませんが、一応の考え方はそういうふうでございます。
  10. 河野謙三

    河野(謙)委員 私はさらに議論を進めまして、もし供出後の麦につきましてそういう措置をとられる場合に起る問題として、これは自由の商品となりますから、その間において麦の規格銘柄というものを新しく定めて、そうして過去の食糧自由販売当時のような銘柄規格というものを設定してお買上げになるかどうか、私は当然そうしなければいかぬと思いますが、それらに対して、仮定の上に立つ議論でありますけれども、もしそういうふうな、供出以後の麦について、政府農民希望によつて買い取つてやるというようなことが起つた場合には、現在の供出の麦や米を買い取るような、単なる等級だけでは買い取れないと私は思うのですが、これらに対しての準備があられるか。
  11. 安孫子藤吉

    安孫子説明員 順次自由にいたしますれば、銘柄設定等は当然考えなければならぬと思います。今年の麦についても、産地銘柄あるいは種類別銘柄というものを十分研究して、銘柄設定いたしたいという方向で実は進んで参つたのであります。大体種類別銘柄は、品種銘柄と申しますか、これは若干そういう方向にのつとりまして設定をしたいと考えております。産地銘柄につきましては、やはり自由取引の形が相当出て参りましたときにおいて、諸材料を検討した上に設定すべきものであつて、今一方的にわれわれが産地銘柄設定することは非常に危険でもありますし、資料も十分整つておりませんので、まず第一段階といたしまして、品種銘柄というようなものを設定してそれから漸次、ただいまお話のございましたような銘柄設定を推し進めで参りたいと考えております。
  12. 河野謙三

    河野(謙)委員 そういたしますと、もしそういうふうなことが行われますと、現在供出によつて銘柄関係なく買つておられるもの、それから銘柄を厳格につけて買われるもの、この二つ政府の手持ちになるが、この両者の関連、またこれらが食管特別会計等に及ぼす影響等につきましては、何か御準備がありますか。
  13. 安孫子藤吉

    安孫子説明員 要するに政府買上げ規格についての銘柄を、ただいま申し上げました程度においてつけて買うわけでありますから、しからざる、自由市場において銘柄がつくられたものを、政府が買うというようなことはありません。ただいまのお話の点は十分はつきりいたさなかつたのでありますけれども、大体政府設定をした銘柄政府買入れを実行する、そういうものしか政府の手には入らないというようにお考え願いたいと思います。
  14. 河野謙三

    河野(謙)委員 私が言うのは、従来通り制度によつて供出で買い取る麦が六百万石かあるでしよう。それと供出以後においてもし自由販売なつた場合に、農民希望によつて政府が買い取るものは、産地銘柄をつけて買い取る、こういうふうに二つになるが、その二つについての調整はどういうことになりますか。
  15. 安孫子藤吉

    安孫子説明員 仮定論議でありますけれども、かりに供出制度を続けて参りまして、あとで自由になつたと仮定をいたしますれば、その際にいろいろな銘柄によつて相場が出て参ると思います。しかし政府といたしましては、その相場で買うということでなく、今年設定いたしました政府買入れ価格で買うことになるのではなかろうかと思います。今年の麦についてはそういうふうに考えておりますので、ただいまお話のような事態は、今年の麦については出て参りません。
  16. 河野謙三

    河野(謙)委員 私が申し上げているのは、政府は、買い取るときは今度新しくきまる価格によつて買い取る。しかし自由になつたときに政府が売る場合には、一般市場銘柄別価格に支配されますね。売る場合には当然そういうことになりますから……。そこで買い取る場合にも、売る場合と関連をする制度で買わなければいかぬと思いますが、そういうふうになりませんか。
  17. 安孫子藤吉

    安孫子説明員 原則的にはそういうことになろうと思います。それで産地銘柄等までも設定をしてやる方が、その観点からいたしますれば、適当だろうと思うのです。しかし産地銘柄等をここで大きく価格差設定いたしますことは、いろいろな準備関係もあり、また自由取引相当長い間中断をいたしておりますので、その辺の状況もありますから、それを思い切つてこの際設定をすることは困難ではないか、やはり少しずつ漸進的に参りたいというふうに考えております。
  18. 河野謙三

    河野(謙)委員 私は、今の供出後の自由販売の問題につきましては、もう事態がそうせざるを得ないようなことになつて来ているので、政府はもう少し勇敢に今から早く、供出以後はこうするということを農民に知らしめて、それぞれ準備をされたらよい、こう思うのです。同時に今からそういうことをおきめになるのならば、これから買われるところの麦についても、自由販売なつたときの市場というものを十分想定されて、これから供出によつてとる麦も、銘柄その他を十分勘案して、すべての買取り方針をきめられたらよいのではないか、こういうことです。  なお伺いたいのは、バツク・ペイの問題です。先ほどの政務次官お話では、大体対司令部との折衝バツク・ペイの問題は見通しがついたということですが、ところで私の伺いたいのは今後のバツク・ペイの問題です。先ほどお話がありましたように、今年の麦は政府自体パリテイ上昇は予定されている。そうすると、パリテイによつて計算されて買われる麦、これは今後においても前年度同様に引続き麦なり米なりバツク・ペイの問題が起つて来るわけです。ところが私の承知している範囲では、今年の麦についてのバツク・ペイ予算は組んでいない。今までのものは大体払うとしても、これからのものは、大体パリテイによつて政府が買い取るという方針を立てている以上は、当然バツク・ペイの問題は出て来るわけです。ところが予算の方にはそれがないのですが、これについては政府方針はどういうふうになつているのですか。
  19. 安孫子藤吉

    安孫子説明員 パリテイ方式によつて供出制度がとられている以上は、バツク・ペイは当然であると思います。今年の麦については八百万石自由買取りの方針予算が組まれておりまして、パリテイ指数によつて麦供出制度を続行しているわけでありますから、この善後措置につきましては、バツク・ペイがあるという方針でもつて予算の改定なり、その他については処置をしなければならぬ、このように考えております。
  20. 河野謙三

    河野(謙)委員 政務次官に伺いたいのですが、今の長官お話のように、制度としてこれは当然なことでありますが、今後のバツク・ペイについて再び問題が起るといけませんから、この機会政務次官からはつきりとお答え願いたいのですが、必ず今後も現買取り制度方針のもとにおいては、バツク・ペイ政府約束できるというふうに承知してよろしいかどうか、これをはつきりとお答え願いたい。
  21. 島村軍次

    島村説明員 食糧庁長官から申した通りに、現在の買入れ方式パリテイ指数によつて価格決定が行われて、それに従つてパリテイ指数上昇すれば、当然出すのが建前であり、また今日までそれを履行して参つているのであります。従つて今後買入れ方針が現在の制度をとられる以上は、理論的にも、また実際の執行の面においても決して間違いはない、かように御承知を願いたいと思います。
  22. 河野謙三

    河野(謙)委員 最後に米との関連において砂糖の問題を伺いたい。砂糖登録がえ、これは一年前に消費者との約束において、本年の八月において登録がえをやることになつてつた。しかるに政府は、一方的に八月の登録がえをもう一年延期をする、こういう通牒を出したと承知しておりますが、一体こういうことを政務次官はどういうふうにお考えになつているか。およそこれは極端な政府事務当局本位制度である。国民本位消費者本位考えるならば、登録制度というものは、即登録がえというものがつきものである。極端に言うならば、国民要求があれば毎日でも登録がえの自由があるのが当り前です。きようは島村政務次官の店に登録したが、サービスが悪いから今度は安孫子さんのところに行つた。あさつては都合が悪いからというので、今度は千賀商店に行く、これが自由にできるのが国民の当然な要求である。しかるに手数がかかるとか、煩雑であるとか、費用がかかるというようなことで、国民の迷惑、国民の不自由ということは何も考えないで、一年に一回の登録がえというようなことは非常な迷惑です。登録がえの制度が一番最初に行われたときに、私も司令部折衝してよく知つているが、毎月かえろというのが司令部意向なんです。毎日では行かぬから、毎月かえろということが、当初の司令部日本政府に対する要求であつた。ところがそれが事務が煩雑であるから、理想は毎月であるけれども、三月に一ぺんとか半年に一ぺんとか登録がえをやつてつた、これがあらゆる物資の登録がえの制度である。しかるに砂糖は米や麦ほどの問題ではありませんけれども、それにしても一年に一回というのは長いのです。それを当然八月にかえるという約束をしておきながら、政府はだれにも相談しないでもう一年延ばして、来年の八月までは登録がえをやらせないというようなことをやつた一体政務次官政治家として、国民の代表として、国民の台所の迷惑というようなことはかまわずに、こういうものに判を押されたかどうか、もし判を押されたなら、このあやまちを御訂正なさる御意思があるかどうか、それを伺いたい。
  23. 島村軍次

    島村説明員 登録を延期したことは事実でありまして、実は私はそういう事務面の問題については判を押しておりません。しかしその後問題のあつたことを承知いたしまして、その善後措置について目下検討を加えております。そこでいかにこれを処置するかという問題についての考え方は、河野さんのお話なつ通りで、われわれも原則としては法律で定められたものをかえるということは不適当であろうと思います。しかし一年を限つて延期したということでなくして、当分延期しようということが出ておるのであります。そこでそれを調整するのに目中いろいろ検討を加えております。近く延ばすとしてもどの程度でいつまで延ばすかということを決定いたしたいと思います。なるべく早く登録がえをするような措置を講ずることで検討を加えておることを、御承知願います。
  24. 河野謙三

    河野(謙)委員 御承知のように、国会は今休会中でありまして、これを御返事をあした以上に延ばされては困る。あしたもう一日委員会があるそうでありますから、きよう帰られて御検討の結果、政府食糧庁が出しました通牒通り砂糖登録がえを一年延ばすということをそのまま強行するのか、それとも今政務次官お話通り、与う限り登録がえを早くやろうということになると、与う限りというのは九月か十月か、これをあす本委員会に御返答をいただきたい、私はかように思います。委員会はあす一日だからというようなことでほおかむりをされては困ります、明日必ず砂糖登録がえに対する政府の御方針を承りたい。かように希望いたしまして、私の質問は終ります。
  25. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 ただいま河野委員からいろいろ質問がありましたが、それに関連しまして二つの点を私ははつきりさせていただきたいと思うのであります。  その一つは、自由取引になりました後の麦の等級格差の問題であります。この問題はきわめて重大な問題でありまして、私ども農村の人々の意向をよく聞いておるわけでありますが、農村の方では非常に心配しております。このことあるを私どもは予想しまして、先般の国会で国営検査法を満場一致で通しておつたわけでありますが、早く検査機構というものを整備しなければいかぬ。そうして自由取引になりましても、いささかも農民の不利益にならないように、あるべき規格、あるべき等級でもつて当然政府が引取るように、そういう措置を検査制度の確立によつて確保しよう、こういう考え方で国営検査の法律をここで通して参つたのであります。ところが伺いますと、検査機構もなかなか整備ができて行かない、それは主として予算問題にあるというようなことも伺つてつたわけでありますが、これは急速に整備をいたしまして、自由販売になると同時にはつきりした等級格差でもつて政府が買い上げる、そういう態勢にしなければ必ず混乱が起きて来ると思うのであります。そこで検査の機構、検査の制度、それから来るべき自由販売に備えての準備等についてどの程度に進んでいるかを、この際伺つておきたいのであります。
  26. 安孫子藤吉

    安孫子説明員 この前の国会で農産物検査法の御審議をお願いいたしておりましたが、ただいまのお話の趣旨によつて御賛成を得て、私どもといたしましては、非常にありがたく思つているわけであります。その後準備状況は、大体本年度予算についてはいじらぬという原則で、あの法案を実行いたしておりますので、ただいまのところ予算措置等については格別の措置考えておりません。特別会計の中においてその振合いをどうつけて、今後の事態に処すべきかということを検討いたしておる段階であります。また来年度予算編成の方式と検査機構については、どういう形において組むべきかということを検討いたしている最中であります。  なお検査規格、特に銘柄の問題につきましていろいろ研究をいたして、若干の資料も整備いたしております。従つて産地銘柄品種銘柄等についての一応の結論も実は持つておるわけであります。ただこれをただちに供出制度のもとにおいて、これを出すことが適当であるかどうかという判断について、先ほど申し上げたような結論を出しておるわけでありまして、農産物検査法が通過をして、これが実施についての諸般の準備は、御趣旨に沿いまして、いろいろの方面から落度のないようにやつておる最中でありますので、御了承願います。
  27. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 国営検査の準備もだんだん進んでおるということを伺いまして、はなはだ心強く思うわけでありますが、しかし聞くところによりますれば、なかなかそれが進んでおらない。えてこういう問題は、いよいよ買上げをするという段階になりましてから、価格はいかにも高いように見えながら、等級とか検査の問題でもつて、実質的には農村の方にその高い価格がほとんど均霑されないような結果になる場合が多いわけであります。この問題はきわめて大事な問題でありまして、食糧管理の問題としては、今後はこの食糧の国営検査の問題が最も重大な問題の一端と私ども思います。この問題について予算等が非常にきゆうくつだとか、あるいは現在ある予算のやりくりでもつてやるとかなんとか言つておるようでありますが、もし必要だとすれば、遠慮しないでこの問題に集中をして、そうして農民の要望に反しないように、それもむやみにルーズな規格をつくれというわけではないのでありますが、当然あるべき正しい規格、正しい格差でもつて農民に不利益にならないようにやることを、特にこの際お願いしておきたいと思うのであります。  なおもう一つの問題は、来るべき機会に、供出が完了した後に自由販売になる場合を予想しまして、自由販売になりましても、供出した残りの麦については、政府は公定価格でいくらでも買うという建前をとつてつたはずでありますが、その考えは現在でもかわりはないかどうか、その予算についてはどういう措置考えておるか、農民が買つてくれと要望したときには、いくらでも公定価格でもつて買う用意があるかどうか、その点について、この委員会を通してはつきり言明しておいていただきたいと思います。
  28. 安孫子藤吉

    安孫子説明員 その用意はございます。
  29. 野原正勝

    ○野原委員 米価問題については、いずれ農林大臣出席したときに、基本的な問題はいろいろつつ込んだお話をしたいと思います。従つて今日はあまり根本的な問題には触れるわけには参らぬと思います。ただ政府の今までの米価に対する態度を見ておりますと、いわゆるパリテイ方式によつて買い上げなければならぬという原則をずつとやつて参りまして、ときにはまるでパリテイ計算方式生産者価格と同等に幅のあつたときもあります。そのときにおいてさえも、政府はすべてパリテイによつて買い上げることが最も妥当であり、正しい方式であるということを主張しておつたわけであります。ところでパリテイの上り方が、政府考えておつたものよりも、上り方が少し強くなつて来たということになりますと、俄然今度はパリテイ方式だけではどうも困るといつたような、パリテイ方式だけに準拠したのでは、むしろ現実にそぐわないというような、妙な説をなす者を新聞等で見受けるのであります。初めからパリテイ方式でいいということで、それに対する特別加算もつけて買うということに腹をきめておるならば、だれが何と言おうとも、やはりその方式をずつと堅持すべきであろうと思う。何となく政府の最近の米価麦価に対する考え方が、その点において少しぐらついて来たというように考えられるのであります。特に関係方面から予算の問題、あるいはまた食管特別会計がそれによつて非常に赤字ができる。自立経済の方式において健全財政、あるいはまたインフレの防止というような基本的な問題から見て、どうしても米価はある程度の安定したもの、あまり急に引上げてはならぬといつたようなブレーキをかけたがる傾向に見受けます。それに関係方面からの申入れに対して、何となく政府の主張する点が腰が弱いように見受ける。その点はなはだ遺憾に思います。特に特別加算については、先ほどの政務次官お話では、一五%の加算をするつもりであるという点を最初主張しておりながら、あとから関係方面の強い壁にぶつかつたために、一〇・二%というような点に一応折れて、それさえもなかなか容易でないというので、現段階においては五%をようやくにして主張しておる。何となく腰が弱いように見受けるのでありますが、その点どうも農民が非常に心配をしておる。どうしても従来のような毅然たる態度をとつて——われわれは、米価に対しては生産者の再生産の十分償うような、安心して食糧増産のできるような価格でなければならぬという点を非常に強く主張しておるわけでありますが、その点に対して、先ほどの政務次官の御説明ではだんだん影が薄くなつておるような形に見受けますが、一体政府は五%などと言わずに、一〇・二%というのが、三相会談でこれ以上は絶対に引けないという線であるならば、依然としてその線を強く要求してもらいたい。なお政府がいろいろと腰が弱くなつてしまいますと、従来約束しておつたものもなかなかできないようなことがあつては、はなはだ遺憾であります。特に東北地方などの積雪寒冷の単作地帯では、従来から早場米奨励金というようなものが——これもだんだん減つておりますけれども、本年の予算にも出ておりますが、まずこういうものは当然二十六年度は出るべきものであり、政府でもしばしば出すことを言明しておりますが、万一にも関係方面から云々というようなことで、出さぬというようなことがあつてはたいへんなことであります。この機会にひとつ、従来通り出すということを一言はつきり聞いておきたいと思います。だめ押しのようでありますが、この問題もあわせてお伺いしたい。いずれこれらの問題につきましては、あした農林大臣が出ましてから大臣の決意を聞きまして、その上でまた質問をしたいと思いますが、この特別加算については、少くも一〇・二%という線も強く主張することを要望するとともに、早場米奨励金は従来通り出すということについて、この際確認をしておきたいと思いますので、その点の答弁を要求いたします。
  30. 安孫子藤吉

    安孫子説明員 早場米奨励金は既定方針通り出します。それから特別加算の問題については、いろいろ原因はございましたが、ただいま折衝中でありますので、詳細申し上げかねます。結局財政生産者価格消費者価格との均衡をどこでとるかということが問題の中心になつております。その関係においてできるだけ生産者に有利なようにきめたいということで、せつかく努力いたしております。御了承願います。
  31. 野原正勝

    ○野原委員 もうひとつ、この間の第十国会におきまして、食糧管理法の改正法案が上程されまして、この委員会で非常な論議になりまして、結局麦の買上げについては、政府考えて提案いたしました食管法の改正は、遂に参議院において否決をされまして、これが改正を見ずに終つたのであります。今日になりまして対米比価の問題等で大分やかましくなつておりますが、一体あの食管法の改正におきまして政府のねらいましたことは、いまさら申すまでもないのでありますが、ある最低基準価格設定いたしまして、相当予算準備をもつて希望があればいくらでも買上げをする、しかし自由に民間取引において麦の売買が行われるならば、あえて政府では、供出というか、買上げというふうなことはせずに、すべて希望に基いてやるというのがあの食管法の改正の要点であります。われわれとしましては、非常に弾力性に富んだ、今日の麦の問題においては最も賢明なる対策であり、そのことこそ農民がほんとうに望んでおるところの麦に対する対策である、かように考えまして、われわれも全面的に政府原案を支持したのでありますが、そのときに参議院におきまして否決を見ましたことは、はなはだ遺憾でありました。しかし政府は今日、麦がはたして入つて来るかどうか、この食管法の改正によつて麦の統制を撤廃するというふうなことにしたならば、そこに食糧管理において非常な混乱が予想されるというふうなあの当時の反対側の意見に対しましては、今日まつたくその心配がない、国際小麦協定にも参加の見通しがついておることだし、すべて順調に進んでおるという先ほどの食糧庁長官お話でありますので、この際においては、政府はもうすでにそろそろ毅然たる態度をもつて、次の国会に対する準備をしておると思いまするが、はつきりその腹をきめて、次の国会において再び食糧管理法の改正をはかる準備を進めておるかどうか、その点を一言だけ聞いておきたいと思います。
  32. 島村軍次

    島村説明員 現在までの経過は皆さんも御承知通りでありまして、国会の意思を全然無視するわけには参らぬのであります。そこで措置をどうするかということは目下検討中でありまして、いろいろな方面で研究を進めておりますが、まだ結論に到達いたしておりませんので、ここではつきり申し上げることを差控えたいと思います。
  33. 千賀康治

    千賀委員長 野原君の質問関連する質問を許します。
  34. 高倉定助

    高倉委員 米麦パリテイの問題に関連してお尋ねしたいのですが、二十五年度産の雑穀類が約百八十五万石くらい米に換算して主食として供出買上げになつておる。米麦パリテイ指数上昇に伴いまして、これらの雑穀も当然米麦同様に取扱つておられることと思いまするが、この点一点だけお伺いしたいと思います。
  35. 安孫子藤吉

    安孫子説明員 大体供出分については同様に取扱つております。
  36. 井上良二

    ○井上(良)委員 麦の供出後の自由販売の問題でございますが、これは食管の重大な行政上の問題ですから伺つておきたい。たしか廣川前農林大臣が、供出後には自由販売をするということを声明されました。それに対して事務当局のあなたとしましては、まだそこまではつきり答えが出ていない。もしやるとすれば政令でやるか、政令には多少むりがあるように考えるが、しかし法律改正をしなくてもやれぬこともない、こういうまことにあいまいきわまる御答弁ですが、御承知通り食管法の中心を貫くのは米麦の管理の問題です。その中の一つのつつかい棒である麦の統制を一部緩和するというか、解除するということは、当然法律の改正をまたなければできぬと私は考えますが、政令でやつてもさしつかえがないというその根拠を明確にされたい。それから、一体そういう政令でやるということが国会無視とあなた方はお考えになりませんか。わが国の国民生活、わが国の経済全般に重大な関係を持つておるこの麦の統制の撤廃を、一政令によつてやろうとするその行為は、国会無視という大きな問題を生むことについて、あなた方はお考えになりませんか。これは島村政務次官——いずれ大臣が来たら大臣に伺うつもりでありますが、事務当局としては、そういうことをしてもさしつかえない、国会を無視してもやむを得ないというお考えですか、それをまず伺いたい。
  37. 安孫子藤吉

    安孫子説明員 政令でやられるということは、この前の法案の審議の際も申し上げておるはずです。しかし非常に重大な問題でありますので、そういうことは適当ではないと考えます。それで改正法律案の御審議によつて実行したいと考えておりますが、その考えはただいまもかわつておりません。政令でやれるという根拠は、農林大臣の指定するものについて統制をやるというような法律の条文がありまして、その品目につきましては政令に譲られているのであります。それを削除することによつてはずれるという形に相なります。これは御承知のように、いもについても、雑穀についても、その措置従つて実行して参りました。従つて麦も解釈論から言へばそうすることによつてはずし得るわけであります。しかしながら先ほど申し上げましたように、国民食糧の大宗をなすものでありますから、やはり国会の御審議を経て、法律的な手段によつてこれを実行することが望ましいと考えて、御審議を願つたわけであります。その気持はただいまもかわつておりません。
  38. 島村軍次

    島村説明員 お尋ねの点はただいま食糧庁長官が御答弁申し上げた通りでありまして、私もさように考えております。
  39. 井上良二

    ○井上(良)委員 国会の権威に対してどう考えているか。
  40. 島村軍次

    島村説明員 国会の審議は尊重すべきものと考えております。
  41. 井上良二

    ○井上(良)委員 いま一つ非常に大事な問題なのでお伺いいたします。そういう自由販売にするという一つの方法を政府はとろうとしておりますが、そうしますと、国内食糧の確保増産という問題に対して、一体どうお考えになりますか。その方が増産になるとお考えになつておりますか。麦のように国際競争に非常に弱いものの統制をはずして、国際競争のちまたの中にこれをほうり込んでしまう。その結果はわが国の農家にどういう影響をもたらし、増産に一体どういう影響をもたらすか。そういう全体的な構想の上に立つてはずしてもさしつかえないという考えですか、これをまず伺いたい。
  42. 島村軍次

    島村説明員 農政的な見地から、麦の供出制度を、さきに提案をいたしましたいわゆる買入れ制度によつて措置することは、これは決して増産を否定するということにならない。むしろそれが農家自身の希望であり、かつ増産を来すゆえんだ、かように信じておりまして、たびたび説明申し上げたことは、現在でもかわつておりません。  従つてただいま御指摘になりましたような点は、井上さんの御意見であつて、これは意見の相違かと考えます。
  43. 井上良二

    ○井上(良)委員 私は、島村さんともあろう人が、非常に独断的な、官僚的な意見を吐かれるのはまことに遺憾である。私ども先般国会の農林委員会から地方の農業事情等を視察に参りました。そして特にこの麦の供出後の自由販売問題を取上げて、各農業団体の意見なり農家意見を聞いてまわつたのであります。ところがいずれの県も、われわれがまわりましたところにおいては——特にその場合は自由党の方々がその会の、主宰者なられていろいろ政府立場説明されておりましたが、いずれにおいてもみな反対の意見を出しおります。(「ノーノー」ノーノーという声がありますが、これははなはだ実情を知らない意見であつて、実際はこの麦の価格は、農家の再生産を償う価格政府が補償するという線を出さない限りにおいては、増産はあり得ない。それよりも国際価格の競争に自由にまかされるということは、農家は非常に不安で心配をされております。そういう点を全然考慮せずに、ただあなた方がかつてのきつかつた統制時代を夢見て、自由販売にしたらさだめし農家は喜ぶであろう。あなた方はこうした一つのやすんじた考え方に立たれているのですが、現実は非常に違うのであります。あなたのおつしやるようなことをどこのだれが言うておりますか、どこの団体がそういうことを言うておりますか。少くとも農家団体全体は、供出後の自由販売を望んでおらないのであります。その点についてあなたはどうお考えになりますか。
  44. 島村軍次

    島村説明員 私は、この問題については、時期を見て私の信念を訴えたいと思つてつたのでありますが、よい機会でありますから、ひとつお聞きとりを願いたいと思います。  麦の俊出問題は、ただいま御指摘のように、最低価格を保証して供出の強化をやるということでなくして、政府が全量買上げ、しかも価格の点についてはもちろん議論はありましよう。しかし今日きめておりまする価格が最低価格であつて、その範囲において政府が買い上げる。従つて農業経営の立場から考えますと、自分のつくつたもののうち、一定数量は政府へ買い上げてもらう、そうして余裕があればいわゆる買上げをさらに政府に願う。そういうことになれば、そういうことが農家自身の考えにも合致することであるし、それがやがて、たとえば牛を飼つているものはこれを飼料になす、あるいは素麺を希望しているものはこれを製粉して盆の仏前に供える。こういう措置が講じ得るのでありますが、さような見地において——私も農業をやつておりますが、農家立場から言えば、私は当然さようになし得ることだと思います。こういう点が一般によく農家まで徹底しておらぬために、ただいまお話のような点が一部分から、あるいはまた農家自身の方から、統制は反対だという意見が出ておりますが、私もごくわずかな範囲かもしれませんが、この問題については、私の立場を離れていろいろ聞いてみますと、以上のような見地において、この際食糧の事情がかような情勢なつた場合には、最初政府の提案いたしました通りに、政府は麦の統制撤廃をいたしまするけれども、これは自由に買い上げるというだけの問題でありますので、この措置は現在においても適当だと考えております。また農民団体の方から申しますると、たとえばこれは私の県の例でありますが、岡山の販連においては百万俵の買入れ計画を立てております。そうして供出割当はおそらく七十五万俵ぐらいだと思います。しかし政府は無制限に最低価格——今度きめられる価格買上げるという措置になれば、販連自身はその線に従つて農民に呼びかけて、そうしてやみ価格がほとんど同一になつておる今日におきましては、どんどん政府に売り渡すという措置を販連自身が講ぜられることこそ、これが農民団体の生きる道であり、かつ農家を益する道だ、かように私は信じております。その考え方については、現在でも間違つておらぬと信じております
  45. 井上良二

    ○井上(良)委員 私は、あなたの言う議論には全幅的に賛成できません。問題は自由に買い上げるということが、一体政府は国内食糧の需給確保という問題をどう考えておるか。年間なんぼ足らぬのです。足らぬというところから国内増産を主張されておるのでしよう。そうすると、一応あなた方が、かりに麦八百万石を供出してもらおうという目算を立てる。自由買上げで八百万石買うということになつて、それ以上のものについては従来政府は二倍なり三倍なりの買上げをしておつたわけです。それを全然やめたではないか。しかもそれを特別加算額なんというようなけつたいな名前をつけやがつて、そうしてあなた方の方で従来農家の再生産を償うことができないで出しておつた奨励措置をいつまでも続けて行かにやならぬというので、特別加算額という名前で、全体の一五%出すことになつた。それがもはやどうなつたのです。一五%が依然として基本価格に加えられるということならば、あなたの言う理論は成立つて行きますよ。それを何ら対策を講ぜず、責任も負わず、まるつきり指一本切られるような思いを農民にさせて、それで自由に買い上げるんだからよいのだと、よくもあなた方はずうずうしく言うが、実際農林次官としている以上は、もう少し責任を持たなければいかぬ。実際そこまで腹をきめてやりなさいよ。やれば必ず問題は妥結するのである。それをあなたががんばらぬから、指一本切られる思いで、大蔵省の官吏に予算がどうのこうのと言われて、一五%が一〇%、一〇%でとまると思つたら五%で、この五%も危いという状態である。それで自由に買い上げるなんて、あなた農民にそんなことを言えるか。そういう物の考え方自身が、逆に日本の食糧を困難に陥れて行きます。それだからそこはあなたの方で、(「価格の問題だ」と呼ぶ者あり)価格の問題なら価格の問題ではつきりすればいいが、それができないじやないか。そこはあなた方がはつきり、こうすればこうなるんだから、こうやつた方がいいという、農民の納得する裏づけが出るならいい。出ていないところにあなたの議論の弱さがある。価格政策ならば価格政策で、増産をこういうふうにやるというはつきり線が出るならいい。事実は逆になつて来ておる。だから問題は、一つは国内食糧確保の問題と、一つは農業経済の安定の問題というふうに考えて、この問題は検討を加えなければならぬと私は考えておる。だからあなたがそういう理論で行つて、現に問題になつている一五%の問題を実行できるとお考えですかどうですか。
  46. 島村軍次

    島村説明員 これは答弁の必要はないと思うのでありますが、しかし今お話なつた点は、価格の問題とこんがらがつた議論であつて供出制度そのものには直接関係がない問題である。(発言する者あり)ただ価格の点については、お話通りに、現在の価格は必ずしも高い価格であるとは存じておりません。だからそれは極力われわれもやつておる事柄でありますが、一五%が一〇%になつたから、それと関連をもつて供出制度は現在の制度を続けるものだという御議論には賛成いたしかねます。
  47. 千賀康治

    千賀委員長 関連質問一つあります。横田君。
  48. 横田甚太郎

    ○横田委員 次官に伺いますが、政府は横着だ。なぜかといえば、制度の問題とか価格の問題とか逃口上を言いますが、価格の問題を合理的に解決つけておれば、強奪にひとしい供出制度はいらぬ。価格が十分でないから、武器を持つたり警官ジープに乗つた気違いのようなやつが収奪をやる。その点に対するあなた方の考えはどうか。なるほど価格が合理的に解決つかない。価格を引合うようにしないところに問題があつた国際小麦協定への参加は、世界人民勢力の攻勢によつて、ソ連の小麦で濠州の小麦問題が英との間にいよいよ解決した。そうなると、今まで南方で日本が米を買いつけておつたものが、人民勢力の台頭によつて米を失つた。南方反動政権により南方米が買えなくなつて来た。これは食糧庁のお役人たちに言わせると、横着にも、南方の米は臭いとかまずいとか、あるいは質が悪いとか言つておる。それで南方米よりよいエジプト米やカナダ米を買うというようなことを言つておる。しかし米は実際上買えない。今まで日本政府は、日本は米を南方から買いましよう、そのかわり日本でできる機械を南方へ送りましよう、これが━━━━━━━━南方貿易であつた。それが現に南方米が買えなくなつたら、日米の貿易品は南方へ出ないじやないか、物を買うてくれと言つても、南方には金がなくなるじやないか。これは余談になるようだが、朝鮮戦争がこういうように、急に停戦のきざしが見えて来た。それであなた方の頭がぐるぐる気違いのようにまわつておるのでしようが、とにかく混乱しておる。その混乱しておるのをごまかす意味合いにおいて、あなた方は間違つた意見を出しておる。それが統制撤廃と価格論議だ。そこであなた方にはつきり聞きたいことは、価格問題を解決つけないで、さらに低米価ということは、アメリカが日本の人的資源とか、工場設備とか、生産力を十二分に軍拡に使いたい。その資料は共産党にたくさん集まつておる。その低米価のため、農村からの食糧を収奪するために供出がある。これが中心だ。価格問題が解決つかないところに供出問題があるのであつて価格問題が解決つくんだつた供出問題はない。価格問題と供出問題を二つにわけてあなたが答弁することは、一体どんな横着心から出ておるか、その点を伺いたい。
  49. 島村軍次

    島村説明員 ただいま申し上げました通りに、どうも横田さんの、価格を高くするために供出制度を強化せねばならぬという議論には賛成しかねます。
  50. 横田甚太郎

    ○横田委員 それではさらに伺いますが、とにかく最近になつて米の値段パリテイ算出以下に下げねばならないというりくつがどこからか出て来た。今までのパリテイ計算による算出方法によつても、米価は十分に払われておるとは言われておらない。パリテイは安い米価算出の仕方なんです。これは吉植庄亮さんが実業之日本にも書いておるのですが、昭和九年から十年を基準にしてきめた米価は安いものであつて、その結果日本の米の生産を減産させ、農村を窮乏にさせた。それゆえに大東亜戦争が必要になつて、日本の今日を招来した。それを基準にしてきめたパリテイによるところの米価決定というものは、実に不合理であるにもかかわらず、それをさらに去年は政治的に解決つけて、一割五分の加算額でごまかした。それさえ井上さんのおつしやるように、一〇・二%もいけない、五%もあぶなつかしくなつて来た。それも日本の役人がやつたのではなくて、━━━━━━━━━━━━。こういうようなばかな言い分をなぜ聞かなければならないか。さらにあなたに聞きたいのは、パリテイによる米価は合理的にきめておらなかつた。安くきめるためにパリテイ算出をやつておる。それをさえ削つて安くするという議論はどこから来ておるか、それを聞きたい。
  51. 島村軍次

    島村説明員 パリテイ方式米価決定に適当かどうかということについては、これは議論の余地もあります。われわれは多年生産計算を指導して参つて来た。しかし今日の段階は、国家の財政関係もあるし、消費者価格の点もあるし、生産者の再生産の保障の問題もあるし、このような三つの問題を兼ね合つて決定せざるを得ないという段階に今日なつておることは、あなたも御承知通りであります。この均衡をどこにとるかということが今問題の中心であります。安いことに対してはあなたの議論と同一であり、われわれもまたそれを主張して参つたのであります。しかし今日までの経過を申し上げても、その経過とあなたの御議論とは別の問題と考えておりますので、その程度で御了承願いたい。
  52. 横田甚太郎

    ○横田委員 選挙区は私も井上さんも同じ区だ。それで聞きたいことは再生産の点だ。価格は安いのです。それで私の選挙区には螢ケ池という所がある。これも日本の一角です。そこの一帯はどうなつておるか。飛行場を拡張して農地をつぶして、そこには━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ができておる。そこへは━━━━━━━━━毎晩酒を飲みに来る。正義、人道、博愛の戦士と言つておりながら、持つて来たのは━━━━━だけだ。しかもその女の子は一体何をしておるか。━━━━━━━━月五万円、六万円といつて━━━━━━━金をもらう。そんなところで安い米をつくるために草取りや何かばかばかしくてできますか。それで聞きたいのは……。
  53. 千賀康治

    千賀委員長 横田君に注意します。議題から逸脱せぬように願います。
  54. 横田甚太郎

    ○横田委員 再生産云々の点で言つておるのだ。それで道徳的、経済的、政治的にいつて値段は安いし、ばかばかしいし、それでどうして再生産ができるか。この点を聞きたい。価格が安いということはあなたの答弁の中に認められたのであれば、価格を高くするために、十分なる農民に対する再生産を償うための費用をとるためには、当然あなたは相当の覚悟をしているはずだから、その覚悟の一端をはつきりと述べてもらいたい。
  55. 島村軍次

    島村説明員 極力努力を重ねております。
  56. 千賀康治

    千賀委員長 横田君の発言中、不穏当な点があると認めますから、これは速記録を調べまして適当な処置をいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 千賀康治

    千賀委員長 異議なしと認めまして、さようにいたします。  午後は二時から再開することにいたしまして、休憩いたします。     午後零時五十分休憩      ————◇—————     午後二時四十二分開議
  58. 千賀康治

    千賀委員長 午前中に引続き会議を開きます。  先般来、本委員会より各地に委員を派遣いたしまして、麦の統制存廃問題、畜産業及び蚕糸業の振興対策、森林資源と木材の需給状態等につきまして、詳しく実情の調査を願つていたわけでありますが、すでに調査を終られた班について、この際その報告を求めたいと思います。  北海道班を野原正勝委員にお願いいたします
  59. 野原正勝

    ○野原委員 北海道班の国政調査につきまして御報告いたします。  私ども一行は、千賀委員長並びに宇野、中馬、横田の四委員に私を加えた五名、それに事務局から藤井専門員が随行し、また林野庁からも特に杉山技官を派遣されまして、八日間にわたり調査をいたしました。  北海道は御承知のごとく、鉱工業としましては、石炭及びパルプ、製紙工業が中心でありまして、いずれも林業との関係が特に密接であります。先般改正森林法案を初め、国有林野法案及び国有林野整備臨時措置法案の通過を見た際でもありまするので、特に林業関係に重点を置き、あわせて北海道農業の特質を検討いたしまして、北海道農業の動向並びに開発上問題となる諸点を究明いたしまして、今後の立法及び農業政策の確立に資したいと存じたのであります。  まず林業から御報告いたします。北海道林業の最も大きい特徴は、大部分が国有林によつて占められ、民有林面積が僅少であるということであります。わが国林野総面積二千五百十五万町歩のうち、国有林野は三一%の七百八十三万町歩を占めているのでありますが、北海道における国有林は三百二十九万町歩で、全国有林の四割に達しておりまして、北海道全森林の六〇%にあたり、蓄積では七五%を占めているのであります。これから年間約七百十万石の木材を生産し、パルプ、坑木、一般材等の需要に応ずるとともに、四百六十一万石の薪炭林を供給して、民生安定に貢献しているのでありまして、北海道産業経済上から見て、北海道森林の大部分は国有林をもつて占めているといつても過言でないほど、北海道における国有林の存在価値は大きく、これが管理経営のいかんが北海道産業に及ぼす影響もまた軽視することのできない特質を持つているのであります。国有林以外に北海道有林一一・八%、約六十五万町歩がありまして、現林叢から見て道有林もまた国有林に次いで北海道林業に重要な位置を占めております。  このように北海道林業は大部分官有林を基盤として発達し、なお北海道林産物の市場は、遠く京浜、阪神、中部地方で、一部インチ材等に海外市場を持つていた関係上、道内自体における生産と消費との関連性が薄く、育成林業の発達が遅れていたのであります。しかし終戦を契機として国内産業はもつばら国内資源に依存せざるを得ない宿命的結果になりまして、パルプ、抗木の需要の激増は急激に北海道林業の重要性を高め、同時に積極的に諸施策が講ぜられるようになつたのであります。特に北海道は森林植物学上寒帯林及び温帯林でありまして、とど松、えぞ松、しなのき、なら、やちだも、かえで、かば、ぶな等の有用樹種が豊富にあり、今日なお原生林型を保持した群落がありまして、中央山岳地帯、日高地方には、いわゆる千古斧鉞を知らざるの密林を呈する所もあり、今後の開発と育成部面における集約的林業の導入は、急速に着手しなければならない点であると痛感する次第であります。  北海道は戦時中に相当の増伐を強制せられ、至便な里山に伐採が集中され、資源的に楽観を許さない事情にありまして、目下の緊急施策としては、林業生産を標準の状態に矯正維持することが不可欠の要件で、今後の正常な姿において伐採を進めるとすれば、大体今後五箇年間の年平均伐採量は、用材におきまして国有林一千五十万石、道有林におきまして百二十万石、民有林二百万石、合計千三百七十万石、これは立木材石をもつてするのであります。かように相なります。また薪材におきましては、国有林が四百四十万石、道有林九十万石、民有林百九十万石、合せて七百二十万石程度の平均伐採量と相なるのであります。これに対しまして、年間需要は生産量をはるかに上まわりまして、二十六年度需要は、坑木二百八十一万石、パルプ四百八十五万石、一般材八百二十九万石、合計一千五百九十五万石余であつて、約六百万石近い不足であると言われているのでありますが、利用の合理化、代替品の使用等によつて相当量の木材の使用規正ができると思われます。しかしながらいまだ積極的具体的な施策はなく、製材加工の工程における歩どまりの向上、乾燥による耐用年限の増加、坑木、まくら木、電柱の防腐処理、カツペ採炭法の実施等による坑木の原単位引下げ、パルプ材の広葉樹使用、土木建築における代替品の使用等によつて二百万石くらいの調節ができても、年間二百万ないし三百万石程度の不足量は避けられない事情にありますが、経済性からいいまして、供給の不足による木材価格上昇は、必然的に消費節約、利用の合理化が真剣に考慮せられ、反面森林に対する施設が拡充強化されて、再生産を容易にし、末木枝条の利用、原資外蓄積の利用促進、不採算林分の採算化、植森撫育による成長量の増加等、生産力の躍進的増加を期待し得るのであります。また極端なる過伐を回避いたしまして、必要な森林面積を確保する、森林の保続と国土保安の要請を全うすべきものでありますが、なかんずく二十億石の蓄積中その六〇%を占める広葉樹の合理的利用促進は北海道における大きな課題の一つであると思うのであります。  次に奥地林の開発についてでありますが、北海道においては施設がなくて、十分開発できない有用樹種を持つ奥地の森林資源は相当あるのでありまして、おもなるものは、知床半島、白糠奥地、大雪山を中心とする地帯、日高地方等がありまして、知床半島は森林資源といたしましては比較的小さいのでありますが、地下資源並びに根室地区の酪農開拓との関連性においての開発と、水産資源等の総合的開発が要求されておるのであります。白糠奥地は釧路と十勝の境界地帯で、釧路側を主とする地帯でありまして、面積的には比較的小さいのでありますが、まつたくの未開発状態であります。阿寒岳に近い北方の国有林と、音別に近い南部の民有林で、流域は分散しており、林業のみでの開発は経済性において困難でありますが、面積約三万六千町歩、蓄積二千五百万石、年間生産素材二十一万石、木炭三千五百トン、まき七万層積石を期待できるのであります。大雪山を中心とする地帯は、北海道中央高地に属する大雪山一帯であつて、石狩川上流と十勝川上流にまたがり、石狩川は大函小函の難所によつて、従来開発が進展せず、音更川三股方面は、鉄道の開設によつて開発が進められ、十勝川上流は昨年度より林道が開設せられ、本格的開発の緒についたのでありますが、本地方は北海道中水力資源的に最も有望な地方であり、電源開発と相まつて緊急開発を要望せられておる地方でありまして、予定奥地面積は十一万町歩、蓄積七千八百万石、年間素材三十七万石余、木炭二千六百トン、まき六万五千層積石を期待できるのであります。開発の進展に伴つて生産量の増加はなお見込まれると思うと同時に、本地方はほとんど全部が国有林であり、森林資源も豊富でありますので、林業資本のみにても早期開発は採算的に十分できると思うのであります。日高地方は北海道中央山脈の背陵地帯を占め、北海道中開発が最も困難な地方でありまして、森林資源は十勝側よりも日高側に見るべきものがあり、面積約十九万町歩、蓄積一億一千万石に達し、年間素材生産五十ないし六十万石は期待できるのであります。なお北海道林業の大宗を占める国有林は、管理区域面積が広大であるにかかわらず、施設はそれに比較して微々たるもので、今後の開発の進捗状況と集約林業促進との観点から相当充実する要があると認められるのであります。  今後の対策及び林業界の要望でありますが、金融問題が第一にあげられるのであります。雑穀等の統制解除によつて、国家資金として道内に導入していた五十億円近くが民間資本に依存せざるを得ないために、全体的に資金難となつているため、木材金融も以前に増して相当逼迫する事情にあるのであります。これが打開の道を早急に講ずる要ありと思うのでありますが、今後民間においても一段の努力を必要とし、国家としても木材生産の重要性から見て、何らかの施策を考究すべきであります。また造林を急速に促進いたしますために、特に種苗養成資金について考慮を拂う必要があります。前にも述べたのでありますが、国有林としては、増産あるいは積極的な奥地未利用林の開発によつて供給量の増加をはかり、林業界の健全な発達を善導すべきであることはもちろんでありますが、なおこれから奥地林の開発にあたつて、農業用水の水源を枯渇させないよう格段の注意を拂うべきであると思います。その他道有林につきましては、その性質上国有林に準ずべきものと考えられますので、国有林同様の取扱いをする措置を講ずること、すなわちこのたびの森林法の取扱いにつきましても、いわゆる基本計画等は国が立て、その実施計画等は、道有林に関しましては、国有林と同じように扱うようにいたしたいという道庁側の強い要望がありましたので、これは政府でも十分検討を要することありと思うのであります。なお北海道は、薪炭を使用することが非常に多いのでありまして、森林法の規定は、自家用林五反歩ということに相なつておりますが、北海道のごとき事情を考えますと、この五反歩はいかにも少いのでありますから、これらは十分実情に合うように考えるべきであろうと思うのであります。  なお結論的に一言にして言うならば、北海道の林業は非常に遅れておるといわざるを得ないのであります。国有林の管理経営におきましても、内地の国有林についてはすでに集約化され、管理経営も非常に適切妥当に行われていると申してもよかろうと思うのでありますが、北海道の場合は、非常に広大なる地域に対しまして営林署の数も非常に少なく、一担当区数万町歩の管理をしておるというような所もございまして、まつたく手の屈かないような状態が多いのであります。従つて今後われわれは、この北海道の国有林の経営につきましては、その集約性を高めて、その経営の合理化を促進するために、来るべき林政機構あるいは行政簡素化等の場合においては、特に北海道のそうした特殊性を十分考慮して、むしろこの際北海道に対しては、ある程度施設の拡充強化をはかる必要があろうと考えるのであります。  次に一般農業について御報告申し上げます。まず北海道の農業の特質を簡単に申し上げますならば、その自然的条件が北方寒地農業地帯に属しております関係上、平均気温が低く、大体関東地方の平均気温十四度に対し、北海道は五度ないし七度程度となつております。また農業期間が短かく、大体百二、三十日でありまして、東京の二百二十日に比べまして、はなはだ短いのであります。降雨量も内地に比べまして非常に少く、大体千ミリ前後、十勝、網走方面は八百ミリないし九百ミリ程度にすぎないのであります。このため十勝地帯はしばしば旱害による凶作を惹起しております。しかも降雨季の分布が、春夏の発芽生育期に少く、秋の成熟収穫期に集中いたします関係上、農作業に種々なる支障をもたらしております。その上年々の気候に変化が多く、ために冷害その他の被害による凶作もまれでなく、過去の統計は約四年半に一回の割合で凶作に見舞われていることを示しているのであります。さらに泥炭地、火山灰地、重粘土壌、酸性土壌等の特殊土壌が非常に多く、耕地の約八一%を占めており、この点からも、本道におきましては土地改良が特に重要性を帯びているのであります。かような自然条件に対応いたしますため、農業経営もまた都府県のそれとは異つた様相を示しているのであります。すなわち第一には、一戸当りの経営面積が大きいことであります。水田経営で三町ないし五町、畑作地帯は十町前後、主畜農業になりますと十五町から二十町に及ぶのが標準の大きさと考えられています。第二には地帯別の自然条件に適応した特殊な作物がつくられていることであります。たとえばビート、亜麻、はつか、みぶよもぎあるいはデントコーン、赤クローバー等の飼料作物等がその地帯の自然条件と経営形態に応じてたくみに取入れられておるのであります。第三に、農繁期と農閑期の労働時間の差がはなはだしく、十一月から五月までの約七箇月間が農閑期となつているのであります。この農閑期の労働力利用は、今後における農業経営の集約化、合理化の上の大きな課題であると思います。第四としまして経営規模が大きい関係上、牛馬等の大家畜による有畜農業を必須条件とし、さらに地帯別の自然条件、経営条件に即した長期輪作形態がとられなければならぬことであります。  以上のような諸特質を有する本道の農業に対しましては、一般的に言つて次のような断定を下してさしつかえないのではないかと思います。すなわち北方寒地農業の自然的条件を背景に、畑作地帯は畜産または商品作物を主体として、商業的性格が著しく、水田地帯は積雪寒冷単作農業であり、特に気温低下による冷害の危険に常にさらされているのであります。従いまして、これが対策といたしまして、適地適作主義の原則を堅持すること。畑作地帯においては地方培養、労力の適正配分のためばかりでなく、特に商業的性格の強い点にかんがみ、収入の恒常化、危険の分散等をも考慮して輪作体系を確立すべきこと、畜産の振興及び有畜農家の育成をはかるごと、これがためには家畜の導入並びに飼育、施設の改善等につき補助政策を強化すること。  次に既耕地生産力の昂揚を期することでありまして、畑作地帯については、輪作による牧草、緑肥栽培、厩堆肥の増投、防風林、防霧林の強化、土地改良等により生産の恒常化をはかること、及び水田地帯については、土地改良、水温上昇対策等による冷害防止に重点を注ぎ、収穫の恒常化をはかるべきであると思います。また北限にあつて無理な水稲栽培を行つているものは、適地適作主義により、他の適当な作物に転換すべきこと、農閑期の余剰労働力の利用につき、徹底した対策をはかること、特に農業経営の合理的高度化に資するような利用対策を講ずべきことなしであろうと思います。  次に私どもが実地に調査いたしました十勝、北見の両畑作地帯、釧路の標茶、弟子屈の開拓地地帯及び旭川の水田地帯につきまして簡単に大要を申し上げたいと思います。  十勝は帯広を中心とする広漠たる平野でありまして、火山灰土から成る畑作地帯でありますが、農耕適地二十四万町歩のうち、現在約十六万町歩が耕作され、大豆、小別、菜豆等の豆類を第一位に、麦類、ばれいしよ、亜麻、ビート並びに飼料作物が栽培され、十年程度の長期輪作が、地方培養、労力配分の適正化、病虫害防除の上から見て妥当とされております。元来畑作地帯は商品作物を主体とするものであります関係上、農産物価格の騰落は特に農民の関心を引くのでありまするが、ばれいしよ及び雑穀の統制撤廃に伴いまして、これら農産物が業者から買いたたかれる傾向にあり、さらに最近鉄道輸送力が縮減いたしまして滞貨をもたらしたことと相まつて、販売価格を下落させ、農家経済の安定を脅かしていると言われております。このことは単に十勝のみでなく、札幌においても強調されておりました。この点につきましては、農業協同組合等に雑穀及びばれいしよの集荷資金の融資を行い、農協をして出まわり期に一時これを買い取らせ、価格支持の役目を果させることも一策かと考えるのであります。今後の全面的な自由経済の復帰に備え、今から十分なる対策を検討する必要があろうと考えるのであります。  なお十勝及び北見地帯はビートの栽培が相当盛んでありまして、特に帯広には日本甜菜製糖会社がありまして、ビート糖の製造を行つております。ビートの根は長さ三ないし四メートルにも達し、地方の増進を助長するものでありまして、ビートの後作に麦をつくりますと、ビート根の腐植のあとを伝わつて麦の根が深く伸びて行き、その成育を助けるばかりでなく、この地帯にしばしば起ります旱害の防止にも役立つと言われております。またビート糖製造の際できるビートパルプはりつぱな飼料となり、さらにビートの葉の部分ももちろん優秀な飼料でありますので、有畜農業並びに輪作体系確立上きわめて重要な役割を果しておるのであります。ただ惜むらくは、ビートの反収がなお低く、欧米のそれに比して約半分程度にしか達していないことでありますが、これは品種改良と耕作改善によつて解決できるものと考えられまするので、今後一段と研究を加え、新品種の育成、耕種法の改善によりまして、畑作農業経営の確立、農家経済の安定に資する必要があろうと思うのであります。  次に北見の畑作は、十勝のそれとはやや趣を異にいたしまして、十勝の豆類に対し、北見では麦類の比重が大きくなつております。またビートにかわるものとして、はつか、みぶよもぎ等があります。特にはつかは古くから本道の特産として有名であり、その大部分は海外に輸出され、外貨獲得に重要な役割を演じていたのでありますが、今次大戦の影響によりまして、その生産は十分の一以下に減少いたしました。最近ようやく増加の傾向に転じたとは言え、なお微々たるものでありますが、回復を阻害している最も大きな原因は、戦時中二千基に上る多数の蒸溜器を供出してしまいましたために、はなはだしく蒸溜器の不足を来しておる点であります。各農家は、蒸溜してはつか油にしたものを工場に持ち込むのでありますが、蒸留器一基の設備に約五十万円を要しますので、農家の貧弱な経済力をもつてしては、この設備ができないのであります。はつかを増産するために、これについて地元から五、六年ないし、七、八年程度の償還期限の資金融通をはかつてもらいたいという要望が寄せられたのであります。明年から五箇年計画で、現在の千五百町歩から二万三千町歩に増反をはかろうとしておるのでありまして、製品の八%以上は輸出されているのでありますから、農林漁業資金融通法等のわくを拡大するか、または別途に手段を講ずるかして、融資の道を開いてやらなければならぬものであると考えるのであります。  根釧原野地帯につきましては、標茶の開拓団をおとずれ、また地元官民から詳細な説明または要望を聴取いたしましたが、本地帯は常に濃霧に閉ざされ、日照時間がきわめて少いのでありまして、一般穀菽農業に不適であり、どうしても牛馬を主体とする畜産農業でなければ経営が成り立たないのであります。本地帯は開拓も新しく、自然条件に十分適応した経営形態が確立いたしておりません。特に家畜導入資金の下足が振興を阻害いたしておりますので、家畜導入資金の設定が特に肝要であります。なお畜産に関しまして、全道の問題でありますが、冬期は寒気はげしいため、乳牛はいずれも乳量を激減いたし、夏期のそれに比して、最低五、六十パーセントの低下となつております。この対策としましては、畜舎の保温設備をすることであります。保温畜舎としまして、火山灰ブロツクまたはアツシユブロックによる建築が適しているものと思われます、これらブロック建築により保温をはかりますと、乳量は年間を通じてほぼ一定いたし、農家経済の安定のためにも製酪工場の生産価格引下げのためにも、はなはだ望ましいことと思います。なお火灰ブロックは、火山灰六、砂三、セメント一の割合で混合して型につくり、天火に乾燥してつくるものでありまして、製造工程がきわめて簡単で、これによりますと畜舎建築費坪当り二万七、八千円ででき、もし火山灰ブロツクを自家製造すれば、坪当り一万円程度で済むとも言われております。畜舎設備資金融通の道を講じますれば、おそらくまたたく間に全道の畜舎を衛生、保温の堅牢なブロツク建築にかえることができると思います。なおこのブロツク建築は必ずしも家畜のためのみではないのでありまして、いわゆる寒地住宅用として今後北海道のごとき地帯の住宅はこれらのブロック建築にかえるべきものでありまして、すでに苫小牧製紙の会社ではこれらのブロツク建築によりまして、燃料の節約をはかつておるのでありますが、これができますれば、北海道における家庭燃料の問題は非常に合理的に決できるものであると考えるのであります。  最後に、旭川地帯の東和土功組合の水温上昇施設について申し上げます。本組合は八千余町歩に灌漑するため大雪山から流出する忠別川の水を引いておるのであります。昭和十四年発電所設置により、五里にわたる隧道が設けられ、このため水温が低下しましたので、五箇所、総面積三十一町歩の遊水池をつくり、各遊水池にはそれぞれ整流口を設け、それによりまして水温を上げるようにいたしました。これによりまして約二度四分六里の上昇に成功しております。しかし北海道は一般に水温が低く、私どもが調査した六月二十九日におきましても、なお十度程度と思われる状況でありまして、石狩平野は本道全産米の三分の二を占めておりますので、水温上昇についてはさらに格段の努力を払い、冷害防止と生産増強をはかるべきものと思うのであります。  以上をもちまして大要の御報告を終るのでありますが、北海道農業は一般的に申しまして、今日なお少年期に当つておるのであります。適切な資本投下を行いますれば、まだまだ生産上昇の余地は十分にあると思います。ただその資本投下につきましては、経済効果と農民経済安定との両面から、総合的に考察、検討いたすべきことはもちろんでありますが、さらに農業部門内部の相互関係及び他産業との総合関係を十分考慮いたし、適切なる部門から漸次改善を施して行くことが肝要であろうと思うのであります。  今般の国政調査に当り、道地元民から寄せられました陳情要望は三十余件の多きに達しましたが、このうちの一部は今までの御報告の中で申し上げましたし、陳情書類等及び参考資料は専門員室に整理してありますので、それについてごらんをいただきたいと思います。  なお特にこの際申し上げたい点は、各地の陳情の中で特に農業委員会の書記の定員の問題について陳情があつたのであります。一町村について一・二名というものに対して、先般の第十国会において、農業委員会の問題の際において将来これを、二名にするという政府の公約はとつておるのでありまするが、北海道のごとき農業の地域が非常に広い地帯でありまするので、この二名ではとうてい農業委員会の運営をはかることはできないという要望が多かつたのであります。このことはきわめて北海道の特殊性を示すものでありまして、従来から農地委員会にいたしましても、あるいは農業調整委員会にいたしましても、それぞれ実情に応じまして、三名ないし五名も置いておるような地帯が相当あるのであります。従いまして、農業委員会の書記の定員等につきましても、内地と画一的に市町村二名というようなことを北海道に当てはめることは、これは非常な無理があると思うのであります。北海道の町村といえば、中には内地の一つの県以上の面積を占めておる村もあるのであります。それらの点を考えて、政府におきましては、特にこの農業委員会の書記の定員等につきましては、北海道の特殊事情を十分考えるようにわれわれは要望するのであります。  いろいろと御報告申し上げたい点もたくさんございますが、以上をもちまして簡単でありますが、北海道国政調査の御報告といたします。
  60. 千賀康治

    千賀委員長 以上野原君の御報告を農林委員会は了承することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 千賀康治

    千賀委員長 御異議なしと認めます。     —————————————
  62. 千賀康治

    千賀委員長 引続きこれより林業の問題について調査を進めます。  過般の第十回国会におきまして、森林関係法律が大きく改廃せられましたが、森林法の実施に伴う種々の政府準備、特に適正伐期の問題等森林法の運用について、政府方針についてまず政府説明を承りたいと思います。     〔委員長退席、野原委員長代理着席〕
  63. 横川信夫

    ○横川説明員 去る第十国会におきまして、御審議をいただきまして成立を見ました森林法につきましては八月一日から施行をいたしまする予定をもちまして、ただいまその準備を種々進めておるところでございます。ただいま全国を十五のブロックにわけまして、担当官を派遣いたしまして、森林法改正の要点等につきまして講習会を開催いたしておるのでございまして、二十六日をもちまして全国終了する予定でございます。省令、政令等の準備もただいま並行いたしまして取進めておるのでございまするが、特に委員長からもお話のございました適正伐期齢扱につきましては、資料として先般の国会での御審議の際に差上げてございますが、さらに念を入れまして、ただいま各都道府県に係官を派遣いたしまして十分地方の実情を調査いたしまして、真に適正な伐期齢を定めたいと考えまして、準備を進めておるところであります。適正伐期齢級の決定方針は御審議を願いました際にも申し上げております通りに、伐期平均成長量の最大の時期をもつて適正伐期齢とする。もつとも適正伐期齢は五箇年をもちまして一応区切つておりますので、そのできるだけ低い方に現在の木材需要の実情から決定をしたいということで、ただいま準備を進めておるところであります。いずれまた決定いたしますれば、当委員会に御報告を申し上げまして、いろいろ御指示をいただきたいと考えております。
  64. 井上良二

    ○井上(良)委員 この際林業関係関連しまして、林野庁では例の木炭の統制を撤廃をしたのですが、この冬の薪炭需給状況について一体どういうお見通しをお持ちになつておりますか。私ども実際に調査したところによりますと、木炭需給状況の現状は非常に苦しい見通しが立てられるように考えられる。このまま放任をしておきますと、この冬の最盛期には非常な混乱を生ずるのじやないかと思いますが、そういうことについて、政府で何か具体的な対策を、冬期の薪炭需要の最も旺盛なときに十分それをまかなえ得るだけの対策をお立てになつておるかどうか、これを一応伺いたいと思います。
  65. 横川信夫

    ○横川説明員 木炭の今冬の需給の見通しをどう考えるかという御質問でありまするが、かねていろいろお話を申し上げておりまするように、木材の利用の合理化ということにつきまして研究をいたしますと同時に、着々実現を得るものにつきましては実行に移しておるのでありますが、その一つといたしまして、各都市に約四万台ございまする木炭、まきの代燃車を液体燃料に切りかえることを取上げていただいておるのでありますが、その消費量はおおむね木炭に換算いたしますると約三十万トンに相当するのであります。年年の木炭の需要量は、生産量もそうでありまするが、大体百八十万トンであります。昭和二十五年度は少しく増産し得まして、二百二万トンほどになつたのでありまするが、そのうち約三十万トンというものが液体燃料に切りかえになる。私どもといたしましては、さような状態からいたしまして、むしろ今年の冬は木炭がだぶつきまして非常な値下りを示すのではないか。従つて奥山で非常に苦労をして木炭を生産しておりまする方々が、非常な打撃を受けるのではないか。むしろ私どもはそういう点でただいま懸念をいたしておりまして、できるだけ需要量はまかなわなければならないのでありますけれども、木材利用の合理化という面からいたしまして、過少な生産をいたさないようにという考えで現在はおるのでありますけれども、なお今後の生産需要の状況をよく見きわめまして、適当な量の生産を確保して参りたい、特に都市の燃料の確保をはかつて参りたい、かように考えております。ただいま昨年と同様に木炭の夏期の不需要期におきまする値段が割合に下つておりませんが、これはひとえに輸送が非常にきゆうくつであるという点にあるのではないか、山元には比較的品物があるというふうに私ども考えております。
  66. 平野三郎

    ○平野委員 実は私、今回国政調査に中国方面を主として森林法の施行後に伴う林野の関係について調査をいたして参つたのでありますが、その報告は目下まとめておりますので、明日の委員会におきまして御報告をいたす予定になつております。しかし幸い本日は林野庁の長官もお見えになつておりますので、今回の私の視察に伴つて特に感じました重大な点について、二、三お尋ねいたしてみたいと思います。  実は今回中国方面をまわりまして、私は今回ほど自分の視察したことについて意義の多かつたことはなかつたとさえ思つておりますのは、先般も本委員会において、しばしば林野庁の当局からも、中国方面に非常にパルプ会社が濫設をせられている、はなはだ遺憾であるというようなお話であつたのでありますが、今回行つてみましてその懸念たるや決して杞憂ではない。実に驚くべき重大な問題が山積しておるということを現実に見て参つたのであります。特に私が思いますることは、この森林法が施行せられましても、いわゆる頭隠してしり隠さずと申しまするか、森林の供給の方の抑制をするという措置を、政府が一応考えられたわけでありますけれども、それだけでは何にもならない。供給の方を抑制しながら、需要の方はまつたく野放しになつておるのであつて、これもいわゆる頭隠してしり隠さずということになるのではないかと思います。一例をあげますならば、あの方面に現在濫設されつつありますところのパルプ工場については、通産省の方では大体四工場であるというお話でありまして、その詳細なる資料も本委員会に提出をせられておつたのでありますが、その後聞くところによりますれば、広島県の呉にも計画があるというようなことを耳にいたしまして質問いたしましたところ、実はそういう計画もあるが、それは計画という程度であつて、まだきまつたわけではないというような御答弁であつたのであります。今回行つて見ますと、計画どころではない、ほとんど工場も完成の域に近づいて、近く操業をするというような段階にまで至つておるという実情を目撃しまして、実にどうも驚き入つた次第で、要するに政府の方では、全然その事情について承知していないということが明らかに暴露せられたのであります。ことに寒心にたえないことは、各府県ともいずれもこの工場誘致に狂奔いたしておるという状況であります。それは無理もない話でありまして、知事としては、県の財政が今日ほとんど国に依存しておりまして、県の収入というものはわずかに数億程度であります。ことに鳥取県のごときは、行つて見て驚いたのでありますが、県の収入はわずかに二億円、この工場が一つ設立されれば、県の収入が一億以上もふえるそうでありますので、この工場を誘致するやいなやということが、まさに県の死活問題というような状況のために、知事初め、この工場の誘致に全力を傾注しておるような実情にあるのでありまして、今日政府においては、全然これらの工場についての監督権がないけれども、県としては必死になつてその増設に努力しておるというような実情にあるのであります。しからばこの需給関係を見ると、県としては、自分らが誘致するところの工場については、その資材の確保について努力をするけれども、他の府県にあるところの工場の資材の供給については何も考えていない。むしろそれは極力抑制する、各府県ともいずれも——後ほどこまかく御報告いたしますが、大体大局的に申しますならば、県内の工場の需給関係だけは責任を持つてこれを見ることができる。しかしながら他の府県の方から買いに来るものについては全然確信は持てない。各府県の森林の蓄積等から見ますならば、この森林法を忠実に守つて行く上においては、中国地方全般の工場に対するところの供給を確保するなどということは、とうてい思いもよらないところである。しかしながら自分の県にできるものだけは確保しなければならぬというような関係で、各府県とも異口同音に同じようなことを言つておるのであります。すなわち、結局これは各府県が森林の政策に関してはモンロー主義に陥つておるということなのであつて、しかもこれは各府県としてはやむを得ないことでありますけれども政府の方は全体を統制するというような、今日監督権を全然持つていない。ただ農林省だけが、森林法という点においてこれを縛るのであります。そういう方法をとつて行けば、ただいたずらに農林省は森林法によつて木材の需給を縛つておりますけれども、一方通産省の方においては、全然工場に対するところの監督権がないのであつてどんどん濫設を見て行くいうような状態にあるのであります。これを放置するならば、今後ますますこの傾向ははげしくなるというような状況であつて、各会社とも今や資材の確保ということに狂奔しておる状況であります。私も今度行つて驚いたのでありますが、山口県の岩国にあります山陽パルプのごときは、現在その貯木場に五十万石以上の赤松が集積されておるのであります。会社の方では四十万石といつておりましたけれども、実質的にはおそらく五十万石を突破するでありましよう。実にこれだけの木材が一箇所に集中されておるのは壮観なものであります。しかもなおかつ全力をあげて、さらにこれらの入荷に努力しておる。各会社みなそういう状況にあるのでありまして、まつたく国がどうなるとか、森林法がどうなるというようなことは念頭にない。むしろ森林法が施行せられる前にどんどん集めて行こうというような状況にあるのであります。かような状態を放任しておいたのでは森林法をつくつてもとうてい実施は不可能である。どうしてもこれはこの際すみやかに何らかの手を打つ必要があるのではないか。すなわち森林法を一方において実施いたしましても、一方において木材の利用の合理化について、あるいはその消費の抑制について、何らか必要な手段を講ずるべきではないか。むしろこれは急遽立法的な措置をも必要とするのではないかということを痛感いたしたのでありますが、これらの点について、林野庁としてはどうお考えになつておられますか、お伺いいたします、
  67. 横川信夫

    ○横川説明員 先般の国会におきまして、当委員会において通産省との関係を申し上げまして、当委員会から通産省に対して十分御注意をいたされておつたのでありますが、その後通産省も非常に反省していただきまして、私どもと非常に綿密に連絡をその後とつていただくように相なりまして、感謝申し上げておるのであります。御質問のうちの、各府県のモンロー主義的な気風が非常に強くなつているのではないかという点でございますが、東北の某県でありますが、やはりお話のように、自分の県ではこれだけの木材の生産があるのだから、これを県内において消化するために、パルプ工場を増設いたしたいというような御意見を持つておられたところがあるのであります。ただいまのお話のように、さようなことになつて参りますと、きゆうくつな木材需給がさらにその度をひどくするというようなこともございますので、いろいろお話を申し上げて、とりやめていただいた例などもございます。さようなつもりで私どもいろいろ地方の方々とは話合いを進めておるのであります。森林法のほかに、木材利用合理化の法制化ということも考える必要があるのではないかという御意見でありますが、私ども経済安定本部ともいろいろ打合せをいたしまして、ただいま研究をいたしておるところでありまして、その内容につきましては、ただいま申し上げ得る段階には相なつておりません。それから消費の抑制をはかる必要があるのではないかというお話でございますが、不要不急の建築等の統制をするということも、新聞に一、二見えたようなこともあるのでありますが、まだ具体的には進んでおらないわけでありまして、いずれにいたしましても、特に御視察を願つた地域の坑木とパルプの競合の問題、あるいはパルプ会社相互間の競合の問題等につきましては、現地でさらによく実情を調査いたしまして、摩擦をできるだけ少くして参るよう努力いたしたいと考えております。
  68. 平野三郎

    ○平野委員 林産物の利用合理化については、この際立法手段を講じなければならぬと痛感いたしますゆえんは、たとえば各パルプ工場のごときも相当に闊葉樹を使うのだというような計画は持つております。またそうした意味の誠意も若干認められる点もあるのでありますが、実際問題として現在建設されているものについては、ほとんどそうした動きはありません。将来闊葉樹を使おうじやないかといつたような一応の希望があるだけであつて、現在の工場設備その他の関係を見ましても、いずれも針葉樹でもつてここ当分は間に合わせて行くというような計画にのみ進んでおるのであります。また坑木について見ましても、やはり鉄柱とか、カツペなんかも相当利用するような動きはありますが、この方は多少そういう計画も具体的に見て参りましたけれども、これは何分にも不自由な状態にあるので、しいてそれをやろうというような機運は認められない。どうしてもこれはやはり政府がある程度の強制的な方法によつて、そういう自然発生的になつておりますところの木材の利用化、合理化の方向に推進して行くという必要があるということを特に申し上げておきます。  なお、ここでもう一点お伺いしたいことは、坑木の関係ですが、石炭の増産ということは絶対確保しなければならないのであつて、それについては坑木についてもある程度確保しなければいかぬ。しかしながら坑木の伐期というものが自然短かくなりますので、どうしても坑木地帯におけるところの森林法施行に関する適正伐期齢級というものについては、特段の考慮が必要ではないか。またそういう要望が非常にありましたが、政府は特にそういう点についてお考えがあるかどうか、ちよつとお伺いいたします。
  69. 横川信夫

    ○横川説明員 ただいまお話のように、坑木のうちには特に齢級のおそいものもあるのであります。大体坑木には主として赤松を使用しておりますが、赤松の森林と申しますのは、御承知のように天然更新で成立をいたしましたものが大部分でございます。その天然林のうちには大きいものも小さなものも、年齢は同じでありましても、成長の関係で、いろいろまじつておるのでありまして、中国地方あるいは九州の北部等におきまする赤松の適正伐期齢級は、大体三十一年というのを見込んでおります。それ以上は届出によつて伐採ができるということでありまして、その森林のうちには、相当齢級の低いものも含んでいるわけであります。なお伐採許可をいたしまする際に、坑木確保にそう不自由のないように十分考慮をいたしまして、許可をして参るという処置を講じたいと考えております。
  70. 平野三郎

    ○平野委員 明日さらに詳細にお尋ねを申し上げますが、もう一点だけお伺いしておきたいことは、農林漁業資金融通法の関係であります。実はこれは地方で非常に要望があるというので、今回特に国会におきましても、この法律を成立せしめたわけでありますが、これが各府県の今日までの状況を見ると、割合に不徹底である。おそらく林業関係について申しまするならば、林道が五億、造林が七億、すずめの涙ほどのわずかな金であつて、とてもかくのごとき零細な金額では、需要の大海の一滴を満たすこともできぬというふうにわれわれは考える。今後これの増加について努力を払わなければならぬと信じておるのでありますが、しかしどうも各府県をまわつてみましても、一向にこれに対して申込みが出て来ておらない。私の行きました某府県のごときは、何らの申込みもない。すでに第一・四半期が終つておるのでありますが、この第一・四半期において、これは後ほど資料を要求いたしますが、どれだけ決定しておるか、どれだけ申込みがあるかということをお伺いしたいのであります。某府県のごときは、林道も造林も、何らの申込みが、農林中金に対しても、あるいは市中金融機関に対しても、府県に対しても、ない。またどうも今後もあるような見込みがないというような、きわめて心細い話で、意外に感じたのでありますが、これは要望がないわけではない、こういう法律があつて、こういうことができるのだということが十分周知徹底されていないのであつて、要望がないはずはないのであります。また今回森林法によつて幼壮齢林の金融措置についても二十億という一応のわくがきめられたのでありますが、これらに対しても、このままほうつておきますならば、おそらくは一般に周知不徹底になつて、結局せつかく制度も利用される道がない、ひいては農林漁業関係について今後資金の融通を増加して行くということが困難になるのではないかということを非常におそれたのでありますが、農地局長が見えたら土地改良関係についてもお尋ねをいたしたいと思いますが、山林関係については、第一・四半期においてどの程度決定を見ましたか、今後どういうふうにこの点をお考えになりますか、それを伺つて私は打切ります。
  71. 横川信夫

    ○横川説明員 ただいまの農林漁業融資特別会計の資金は六十億というわずかなわくを一応はめられておるのでありまして、そのうち林業関係は造林、林道を合せまして、十一億六千万円でありましたか、十二億にちよつと足りない数字であるのであります。何分最初のことでありまして、なかなかこの趣旨が徹底をいたしておりませんのでお話のように、わずか一、二の府県から申込みがあつただけでありまして、今後なおこの法律の周知徹底には、私ども努力をいたして参りたいと考えておるのであります。ただいま数字を持ち合せておりませんので、後刻取調べまして申し上げることにいたします。
  72. 野原正勝

    ○野原委員長代理 本日はこの程度にとどめまして、明日午前十時から開会いたします。     午後三時四十六分散会