○野原
委員 北海道班の国政調査につきまして御報告いたします。
私
ども一行は、
千賀委員長並びに宇野、中馬、横田の四
委員に私を加えた五名、それに
事務局から藤井専門員が随行し、また林野庁からも特に杉山技官を派遣されまして、八日間にわたり調査をいたしました。
北海道は御
承知のごとく、鉱工業としましては、石炭及びパルプ、製紙工業が中心でありまして、いずれも
林業との
関係が特に密接であります。先般改正森林法案を初め、国有林野法案及び国有林野整備臨時
措置法案の通過を見た際でもありまするので、特に
林業関係に重点を置き、あわせて北海道農業の特質を
検討いたしまして、北海道農業の動向並びに開発上問題となる諸点を究明いたしまして、今後の立法及び農業政策の確立に資したいと存じたのであります。
まず
林業から御報告いたします。北海道
林業の最も大きい特徴は、大部分が国有林によ
つて占められ、民有林面積が僅少であるということであります。わが国林野総面積二千五百十五万町歩のうち、国有林野は三一%の七百八十三万町歩を占めているのでありますが、北海道における国有林は三百二十九万町歩で、全国有林の四割に達しておりまして、北海道全森林の六〇%にあたり、蓄積では七五%を占めているのであります。これから年間約七百十万石の木材を
生産し、パルプ、坑木、一般材等の需要に応ずるとともに、四百六十一万石の薪炭林を供給して、民生安定に貢献しているのでありまして、北海道産業経済上から見て、北海道森林の大部分は国有林をも
つて占めているとい
つても過言でないほど、北海道における国有林の存在価値は大きく、これが管理経営のいかんが北海道産業に及ぼす
影響もまた軽視することのできない特質を持
つているのであります。国有林以外に北海道有林一一・八%、約六十五万町歩がありまして、現林叢から見て道有林もまた国有林に次いで北海道
林業に重要な位置を占めております。
このように北海道
林業は大部分官有林を基盤として発達し、なお北海道林産物の
市場は、遠く京浜、阪神、中部地方で、一部インチ材等に海外
市場を持
つていた
関係上、道内自体における
生産と消費との
関連性が薄く、育成
林業の発達が遅れていたのであります。しかし終戦を契機として国内産業はもつばら国内資源に依存せざるを得ない宿命的結果になりまして、パルプ、抗木の需要の激増は急激に北海道
林業の重要性を高め、同時に積極的に諸施策が講ぜられるようにな
つたのであります。特に北海道は森林植物学上寒帯林及び温帯林でありまして、とど松、えぞ松、しなのき、なら、やちだも、かえで、かば、ぶな等の有用樹種が豊富にあり、今日なお原生林型を保持した群落がありまして、中央山岳地帯、日高地方には、いわゆる千古斧鉞を知らざるの密林を呈する所もあり、今後の開発と育成部面における集約的
林業の導入は、急速に着手しなければならない点であると痛感する次第であります。
北海道は戦時中に
相当の増伐を強制せられ、至便な里山に伐採が集中され、資源的に楽観を許さない事情にありまして、目下の緊急施策としては、
林業生産を標準の状態に矯正維持することが不可欠の要件で、今後の正常な姿において伐採を進めるとすれば、大体今後五箇年間の年平均伐採量は、用材におきまして国有林一千五十万石、道有林におきまして百二十万石、民有林二百万石、合計千三百七十万石、これは立木材石をも
つてするのであります。かように相なります。また薪材におきましては、国有林が四百四十万石、道有林九十万石、民有林百九十万石、合せて七百二十万石
程度の平均伐採量と相なるのであります。これに対しまして、年間需要は
生産量をはるかに上まわりまして、二十六
年度需要は、坑木二百八十一万石、パルプ四百八十五万石、一般材八百二十九万石、合計一千五百九十五万石余であ
つて、約六百万石近い不足であると言われているのでありますが、利用の合理化、代替品の使用等によ
つて、
相当量の木材の使用規正ができると思われます。しかしながらいまだ積極的具体的な施策はなく、製材加工の工程における歩どまりの向上、乾燥による耐用年限の増加、坑木、まくら木、電柱の防腐処理、カツペ採炭法の実施等による坑木の原単位引下げ、パルプ材の広葉樹使用、土木建築における代替品の使用等によ
つて二百万石くらいの調節ができても、年間二百万ないし三百万石
程度の不足量は避けられない事情にありますが、経済性からいいまして、供給の不足による木材
価格の
上昇は、必然的に消費節約、利用の合理化が真剣に考慮せられ、反面森林に対する施設が拡充強化されて、再
生産を容易にし、末木枝条の利用、原資外蓄積の利用促進、不採算林分の採算化、植森撫育による成長量の増加等、
生産力の躍進的増加を期待し得るのであります。また極端なる過伐を回避いたしまして、必要な森林面積を確保する、森林の保続と国土保安の要請を全うすべきものでありますが、なかんずく二十億石の蓄積中その六〇%を占める広葉樹の合理的利用促進は北海道における大きな課題の
一つであると思うのであります。
次に奥地林の開発についてでありますが、北海道においては施設がなくて、十分開発できない有用樹種を持つ奥地の森林資源は
相当あるのでありまして、おもなるものは、知床半島、白糠奥地、大雪山を中心とする地帯、日高地方等がありまして、知床半島は森林資源といたしましては比較的小さいのでありますが、地下資源並びに根室地区の酪農開拓との
関連性においての開発と、水産資源等の総合的開発が
要求されておるのであります。白糠奥地は釧路と十勝の境界地帯で、釧路側を主とする地帯でありまして、面積的には比較的小さいのでありますが、ま
つたくの未開発状態であります。阿寒岳に近い北方の国有林と、音別に近い南部の民有林で、流域は分散しており、
林業のみでの開発は経済性において困難でありますが、面積約三万六千町歩、蓄積二千五百万石、年間
生産素材二十一万石、木炭三千五百トン、まき七万層積石を期待できるのであります。大雪山を中心とする地帯は、北海道中央高地に属する大雪山一帯であ
つて、石狩川上流と十勝川上流にまたがり、石狩川は大函小函の難所によ
つて、従来開発が進展せず、音更川三股方面は、鉄道の開設によ
つて開発が進められ、十勝川上流は昨
年度より林道が開設せられ、本格的開発の緒についたのでありますが、本地方は北海道中水力資源的に最も有望な地方であり、電源開発と相ま
つて緊急開発を要望せられておる地方でありまして、予定奥地面積は十一万町歩、蓄積七千八百万石、年間素材三十七万石余、木炭二千六百トン、まき六万五千層積石を期待できるのであります。開発の進展に伴
つて、
生産量の増加はなお見込まれると思うと同時に、本地方はほとんど全部が国有林であり、森林資源も豊富でありますので、
林業資本のみにても早期開発は採算的に十分できると思うのであります。日高地方は北海道中央山脈の背陵地帯を占め、北海道中開発が最も困難な地方でありまして、森林資源は十勝側よりも日高側に見るべきものがあり、面積約十九万町歩、蓄積一億一千万石に達し、年間素材
生産五十ないし六十万石は期待できるのであります。なお北海道
林業の大宗を占める国有林は、管理区域面積が広大であるにかかわらず、施設はそれに比較して微々たるもので、今後の開発の進捗
状況と集約
林業促進との観点から
相当充実する要があると認められるのであります。
今後の対策及び
林業界の要望でありますが、金融問題が第一にあげられるのであります。雑穀等の統制解除によ
つて、国家資金として道内に導入していた五十億円近くが民間資本に依存せざるを得ないために、全体的に資金難とな
つているため、木材金融も以前に増して
相当逼迫する事情にあるのであります。これが打開の道を早急に講ずる要ありと思うのでありますが、今後民間においても一段の努力を必要とし、国家としても木材
生産の重要性から見て、何らかの施策を考究すべきであります。また造林を急速に促進いたしますために、特に種苗養成資金について考慮を拂う必要があります。前にも述べたのでありますが、国有林としては、
増産あるいは積極的な奥地未利用林の開発によ
つて供給量の増加をはかり、
林業界の健全な発達を善導すべきであることはもちろんでありますが、なおこれから奥地林の開発にあた
つて、農業用水の水源を枯渇させないよう格段の注意を拂うべきであると思います。その他道有林につきましては、その性質上国有林に準ずべきものと
考えられますので、国有林同様の取扱いをする
措置を講ずること、すなわちこのたびの森林法の取扱いにつきましても、いわゆる基本計画等は国が立て、その実施計画等は、道有林に関しましては、国有林と同じように扱うようにいたしたいという道庁側の強い要望がありましたので、これは
政府でも十分
検討を要することありと思うのであります。なお北海道は、薪炭を使用することが非常に多いのでありまして、森林法の規定は、自家用林五反歩ということに相な
つておりますが、北海道のごとき事情を
考えますと、この五反歩はいかにも少いのでありますから、これらは十分実情に合うように
考えるべきであろうと思うのであります。
なお
結論的に一言にして言うならば、北海道の
林業は非常に遅れておるといわざるを得ないのであります。国有林の管理経営におきましても、内地の国有林についてはすでに集約化され、管理経営も非常に適切妥当に行われていると申してもよかろうと思うのでありますが、北海道の場合は、非常に広大なる地域に対しまして営林署の数も非常に少なく、一担当区数万町歩の管理をしておるというような所もございまして、ま
つたく手の屈かないような状態が多いのであります。
従つて今後われわれは、この北海道の国有林の経営につきましては、その集約性を高めて、その経営の合理化を促進するために、来るべき林政機構あるいは行政簡素化等の場合においては、特に北海道のそうした特殊性を十分考慮して、むしろこの際北海道に対しては、ある
程度施設の拡充強化をはかる必要があろうと
考えるのであります。
次に一般農業について御報告申し上げます。まず北海道の農業の特質を簡単に申し上げますならば、その自然的条件が北方寒地農業地帯に属しております
関係上、平均気温が低く、大体関東地方の平均気温十四度に対し、北海道は五度ないし七度
程度とな
つております。また農業期間が短かく、大体百二、三十日でありまして、東京の二百二十日に比べまして、はなはだ短いのであります。降雨量も内地に比べまして非常に少く、大体千ミリ前後、十勝、網走方面は八百ミリないし九百ミリ
程度にすぎないのであります。このため十勝地帯はしばしば旱害による凶作を惹起しております。しかも降雨季の分布が、春夏の発芽生育期に少く、秋の成熟収穫期に集中いたします
関係上、農作業に種々なる支障をもたらしております。その上年々の気候に
変化が多く、ために冷害その他の被害による凶作もまれでなく、過去の統計は約四年半に一回の割合で凶作に見舞われていることを示しているのであります。さらに泥炭地、火山灰地、重粘土壌、酸性土壌等の特殊土壌が非常に多く、耕地の約八一%を占めており、この点からも、本道におきましては土地改良が特に重要性を帯びているのであります。かような自然条件に対応いたしますため、農業経営もまた都府県のそれとは異
つた様相を示しているのであります。すなわち第一には、一戸当りの経営面積が大きいことであります。水田経営で三町ないし五町、畑作地帯は十町前後、主畜農業になりますと十五町から二十町に及ぶのが標準の大きさと
考えられています。第二には地帯別の自然条件に適応した特殊な
作物がつくられていることであります。たとえばビート、亜麻、
はつか、みぶよもぎあるいはデントコーン、赤クローバー等の飼料
作物等がその地帯の自然条件と経営形態に応じてたくみに取入れられておるのであります。第三に、農繁期と農閑期の労働時間の差がはなはだしく、十一月から五月までの約七箇月間が農閑期とな
つているのであります。この農閑期の労働力利用は、今後における農業経営の集約化、合理化の上の大きな課題であると思います。第四としまして経営規模が大きい
関係上、牛馬等の大家畜による有畜農業を必須条件とし、さらに地帯別の自然条件、経営条件に即した長期輪作形態がとられなければならぬことであります。
以上のような諸特質を有する本道の農業に対しましては、一般的に言
つて次のような断定を下してさしつかえないのではないかと思います。すなわち北方寒地農業の自然的条件を背景に、畑作地帯は畜産または商品
作物を主体として、商業的性格が著しく、水田地帯は積雪寒冷単作農業であり、特に気温低下による冷害の危険に常にさらされているのであります。従いまして、これが対策といたしまして、適地適作主義の原則を堅持すること。畑作地帯においては地方培養、労力の適正配分のためばかりでなく、特に商業的性格の強い点にかんがみ、収入の恒常化、危険の分散等をも考慮して輪作体系を確立すべきこと、畜産の振興及び有畜
農家の育成をはかるごと、これがためには家畜の導入並びに飼育、施設の改善等につき補助政策を強化すること。
次に既耕地
生産力の昂揚を期することでありまして、畑作地帯については、輪作による牧草、緑肥栽培、厩堆肥の増投、防風林、防霧林の強化、土地改良等により
生産の恒常化をはかること、及び水田地帯については、土地改良、水温
上昇対策等による冷害防止に重点を注ぎ、収穫の恒常化をはかるべきであると思います。また北限にあ
つて無理な水稲栽培を
行つているものは、適地適作主義により、他の適当な
作物に転換すべきこと、農閑期の余剰労働力の利用につき、徹底した対策をはかること、特に農業経営の合理的高度化に資するような利用対策を講ずべきことなしであろうと思います。
次に私
どもが実地に調査いたしました十勝、北見の両畑作地帯、釧路の標茶、弟子屈の開拓地地帯及び旭川の水田地帯につきまして簡単に
大要を申し上げたいと思います。
十勝は帯広を中心とする広漠たる平野でありまして、火山灰土から成る畑作地帯でありますが、農耕適地二十四万町歩のうち、現在約十六万町歩が耕作され、大豆、小別、菜豆等の豆類を第一位に、麦類、ばれいしよ、亜麻、ビート並びに飼料
作物が栽培され、十年
程度の長期輪作が、地方培養、労力配分の適正化、病虫害防除の上から見て妥当とされております。元来畑作地帯は商品
作物を主体とするものであります
関係上、農産物
価格の騰落は特に
農民の関心を引くのでありまするが、ばれいしよ及び雑穀の統制撤廃に伴いまして、これら農産物が業者から買いたたかれる傾向にあり、さらに最近鉄道輸送力が縮減いたしまして滞貨をもたらしたことと相ま
つて、販売
価格を下落させ、
農家経済の安定を脅かしていると言われております。このことは単に十勝のみでなく、札幌においても強調されておりました。この点につきましては、農業協同組合等に雑穀及びばれいしよの集荷資金の融資を行い、農協をして出まわり期に一時これを買い取らせ、
価格支持の役目を果させることも一策かと
考えるのであります。今後の全面的な自由経済の復帰に備え、今から十分なる対策を
検討する必要があろうと
考えるのであります。
なお十勝及び北見地帯はビートの栽培が
相当盛んでありまして、特に帯広には日本甜菜製糖会社がありまして、ビート糖の製造を
行つております。ビートの根は長さ三ないし四メートルにも達し、地方の増進を助長するものでありまして、ビートの後作に麦をつくりますと、ビート根の腐植の
あとを伝わ
つて麦の根が深く伸びて行き、その成育を助けるばかりでなく、この地帯にしばしば起ります旱害の防止にも役立つと言われております。またビート糖製造の際できるビートパルプはりつぱな飼料となり、さらにビートの葉の部分ももちろん優秀な飼料でありますので、有畜農業並びに輪作体系確立上きわめて重要な役割を果しておるのであります。ただ惜むらくは、ビートの反収がなお低く、欧米のそれに比して約半分
程度にしか達していないことでありますが、これは品種改良と耕作改善によ
つて解決できるものと
考えられまするので、今後一段と研究を加え、新品種の育成、耕種法の改善によりまして、畑作農業経営の確立、
農家経済の安定に資する必要があろうと思うのであります。
次に北見の畑作は、十勝のそれとはやや趣を異にいたしまして、十勝の豆類に対し、北見では麦類の比重が大きくな
つております。またビートにかわるものとして、
はつか、みぶよもぎ等があります。特に
はつかは古くから本道の特産として有名であり、その大部分は海外に輸出され、外貨獲得に重要な役割を演じていたのでありますが、今次大戦の
影響によりまして、その
生産は十分の一以下に減少いたしました。最近ようやく増加の傾向に転じたとは言え、なお微々たるものでありますが、回復を阻害している最も大きな原因は、戦時中二千基に上る多数の蒸溜器を
供出してしまいましたために、はなはだしく蒸溜器の不足を来しておる点であります。各
農家は、蒸溜して
はつか油にしたものを工場に持ち込むのでありますが、蒸留器一基の設備に約五十万円を要しますので、
農家の貧弱な経済力をも
つてしては、この設備ができないのであります。
はつかを
増産するために、これについて地元から五、六年ないし、七、八年
程度の償還期限の資金融通をはか
つてもらいたいという要望が寄せられたのであります。明年から五箇年計画で、現在の千五百町歩から二万三千町歩に増反をはかろうとしておるのでありまして、製品の八%以上は輸出されているのでありますから、農林漁業資金融通法等のわくを拡大するか、または別途に手段を講ずるかして、融資の道を開いてやらなければならぬものであると
考えるのであります。
根釧原野地帯につきましては、標茶の開拓団をおとずれ、また地元官民から詳細な
説明または要望を聴取いたしましたが、本地帯は常に濃霧に閉ざされ、日照時間がきわめて少いのでありまして、一般穀菽農業に不適であり、どうしても牛馬を主体とする畜産農業でなければ経営が成り立たないのであります。本地帯は開拓も新しく、自然条件に十分適応した経営形態が確立いたしておりません。特に家畜導入資金の下足が振興を阻害いたしておりますので、家畜導入資金の
設定が特に肝要であります。なお畜産に関しまして、全道の問題でありますが、冬期は寒気はげしいため、乳牛はいずれも乳量を激減いたし、夏期のそれに比して、最低五、六十パーセントの低下とな
つております。この対策としましては、畜舎の保温設備をすることであります。保温畜舎としまして、火山灰ブロツクまたはアツシユブロックによる建築が適しているものと思われます、これらブロック建築により保温をはかりますと、乳量は年間を通じてほぼ一定いたし、
農家経済の安定のためにも製酪工場の
生産価格引下げのためにも、はなはだ望ましいことと思います。なお火灰ブロックは、火山灰六、砂三、セメント一の割合で混合して型につくり、天火に乾燥してつくるものでありまして、製造工程がきわめて簡単で、これによりますと畜舎建築費坪当り二万七、八千円ででき、もし火山灰ブロツクを自家製造すれば、坪当り一万円
程度で済むとも言われております。畜舎設備資金融通の道を講じますれば、おそらくまたたく間に全道の畜舎を衛生、保温の堅牢なブロツク建築にかえることができると思います。なおこのブロツク建築は必ずしも家畜のためのみではないのでありまして、いわゆる寒地住宅用として今後北海道のごとき地帯の住宅はこれらのブロック建築にかえるべきものでありまして、すでに苫小牧製紙の会社ではこれらのブロツク建築によりまして、燃料の節約をはか
つておるのでありますが、これができますれば、北海道における家庭燃料の問題は非常に合理的に決できるものであると
考えるのであります。
最後に、旭川地帯の東和土功組合の水温
上昇施設について申し上げます。本組合は八千余町歩に灌漑するため大雪山から流出する忠別川の水を引いておるのであります。昭和十四年発電所設置により、五里にわたる隧道が設けられ、このため水温が低下しましたので、五箇所、総面積三十一町歩の遊水池をつくり、各遊水池にはそれぞれ整流口を設け、それによりまして水温を上げるようにいたしました。これによりまして約二度四分六里の
上昇に成功しております。しかし北海道は一般に水温が低く、私
どもが調査した六月二十九日におきましても、なお十度
程度と思われる
状況でありまして、石狩平野は本道全産米の三分の二を占めておりますので、水温
上昇についてはさらに格段の努力を払い、冷害防止と
生産増強をはかるべきものと思うのであります。
以上をもちまして
大要の御報告を終るのでありますが、北海道農業は一般的に申しまして、今日なお少年期に当
つておるのであります。適切な資本投下を行いますれば、まだまだ
生産上昇の余地は十分にあると思います。ただその資本投下につきましては、経済効果と
農民経済安定との両面から、総合的に考察、
検討いたすべきことはもちろんでありますが、さらに農業部門内部の相互
関係及び他産業との総合
関係を十分考慮いたし、適切なる部門から漸次改善を施して行くことが肝要であろうと思うのであります。
今般の国政調査に当り、道地元民から寄せられました陳情要望は三十余件の多きに達しましたが、このうちの一部は今までの御報告の中で申し上げましたし、陳情書類等及び参考資料は専門員室に整理してありますので、それについてごらんをいただきたいと思います。
なお特にこの際申し上げたい点は、各地の陳情の中で特に農業
委員会の書記の定員の問題について陳情があ
つたのであります。一町村について一・二名というものに対して、先般の第十国会において、農業
委員会の問題の際において将来これを、二名にするという
政府の公約はと
つておるのでありまするが、北海道のごとき農業の地域が非常に広い地帯でありまするので、この二名ではとうてい農業
委員会の運営をはかることはできないという要望が多か
つたのであります。このことはきわめて北海道の特殊性を示すものでありまして、従来から農地
委員会にいたしましても、あるいは農業
調整委員会にいたしましても、それぞれ実情に応じまして、三名ないし五名も置いておるような地帯が
相当あるのであります。従いまして、農業
委員会の書記の定員等につきましても、内地と画一的に市町村二名というようなことを北海道に当てはめることは、これは非常な無理があると思うのであります。北海道の町村といえば、中には内地の
一つの県以上の面積を占めておる村もあるのであります。それらの点を
考えて、
政府におきましては、特にこの農業
委員会の書記の定員等につきましては、北海道の特殊事情を十分
考えるようにわれわれは要望するのであります。
いろいろと御報告申し上げたい点もたくさんございますが、以上をもちまして簡単でありますが、北海道国政調査の御報告といたします。